説明

在宅健康管理システム

【課題】在宅委託者の健康管理上に必要な基本データの測定機器が在宅でも個別の医療機関でも使用できるよう集合的にまとめられ、在宅委託者の入出力情報として課金処理を伴う診断情報が提供され、基本データが個別の医療機関や要介護支援にも活用できる在宅健康管理システムを提供する。
【解決手段】在宅健康管理システムAは、在宅委託者(要介護者を含む)1の健康上の基本データを測定する測定機が、各種測定手段を有する移動固定自在な測定部6から成り、測定部6により測定された基本データによる健康管理センター(要介護診断センターを含む)2からの診断結果に基づき、課金処理を伴って疾病ある場合は薬剤入手に至る健康管理情報が入手され、要介護の場合には要介護度が入手される。このほか、各在宅委託者1の基本データは、各個の医療機関19やケアーセンターにおいて入手され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、在宅で健康管理を委託する在宅健康管理委託者(以下、単に在宅委託者とする。)が、在宅で健康診断を受けられるとともに、投薬入手までの健康管理が達成され、在宅で測定された健康上の基本データが、在宅委託者の疾病時に個別の医療機関で広く活用できる上、要介護支援にも活用できる在宅健康管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本件出願人に係る先の出願、特願2007−294122(特許文献1)では、測定機器の特定と、在宅委託者の健康管理上に必要なデータの処理と、通信回線を介する入出力情報に対する課金処理などの点が未解決であった。また、介護に関する技術として提案された特開2006−18768号公報(特許文献2)は、要介護者(利用者)の介護評価に関する技術を開示したものであり、さらに、特開2001−275997号公報(特許文献3)に開示された技術は、公的な保健福祉機関と利用者とが情報通信ネットワークで接続された健康管理情報システムであって、要介護度認定情報が各ケアーセンター(介護現場)へ開示されるシステムが完成されていないものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−294122号公報
【特許文献2】特開2006−18768号公報
【特許文献3】特開2001−275997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記に鑑みて、在宅委託者の健康管理上に必要な基本データを測定する測定機器が、在宅でも個別の医療機関でも使用できる形態に各種測定手段が集合的にまとめられ、前記基本データの測定には全自動化を除き、一部に測定介助人(看護師、医療技術者等)を要し、在宅委託者の通信回線による入出力情報として課金処理が介在する診断情報が提供され、基本データが個別の医療機関で広く活用できる上、要介護支援にも活用できる在宅健康管理システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に記載した在宅健康管理システムは、在宅で健康管理を委託する在宅委託者の健康上の基本データを測定する測定機器と、該測定機器による基本データを処理する在宅側端末機と、該基本データを通信回線を介してホストコンピュータの記憶装置に蓄積する健康管理センターとを要部とする在宅健康管理システムにおいて、
前記測定機器が、各種測定手段を有する移動固定自在な測定部から成り、前記在宅側端末機による健康管理センターからの診断結果に基づき、課金処理を伴って在宅で薬剤入手に至る健康管理情報が入手され、健康管理が達成されて成る。
また、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した在宅健康管理システムにおいて、
前記測定部が、リハビリテーション(以下、省略してリハビリとする。)における各種身体運動能力測定部から成り、前記健康管理センターが要介護診断センターから成る。
また、請求項3に記載した発明は、請求項1に記載した在宅健康管理システムにおいて、
前記健康管理センターのホストコンピュータに蓄積される各在宅委託者の基本データが、各個の医療機関において、通信回線を介して各在宅委託者特定の本人特定データによって入手されて成る。
さらに、請求項4に記載した発明は、請求項2に記載した在宅健康管理システムにおいて、
前記各種身体運動能力測定部による基本データに基づき、要介護診断センターからの要介護度情報が公共福祉機関の端末機に入力され、該公共福祉機関の端末機から在宅委託者の端末機に要介護度認定情報が入力され、該要介護度認定情報が在宅委託者の端末機及び/又は要介護診断センターを介して本人特定データによって各個のケアーセンターの端末機から入手されて成る。
【発明の効果】
【0006】
在宅委託者の基本データは課金処理を伴って健康管理センターからの診断情報を引き出すとともに、ホストコンピュータの記憶装置に蓄積されるから、健康管理センターとネットワークが構築される各個の医療機関に広く利用され得ることとなり、該医療機関における基本データの入手に要するコストが低減されて医療費の削減に寄与し、併せて個別医療機関相互の連係も密になって病気治療の効率化が図られる。また、在宅委託者の基本データを測定する測定部は、各種測定手段が集合状態にまとめられたものであるから、基本データの測定と入力が簡易化され、さらに、移動固定自在であるから、在宅のみならず車載状態で地域医療にも利用できるほか、各個の医療機関においても特定の施設を要せず、総合健康診断には極めて便益性の高いものとなる。また、要介護診断センターにおける要介護診断では、在宅で要介護度が認定される上(公共福祉機関の確認を伴う)、各種の身体運動能力に関する基本データは要介護診断センターから、各個のケアーセンター(介護現場)で取得されるから、要介護度に適応したきめ細かな介護サービスが受けられる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の在宅健康管理システムAの在宅健康管理委託のフローチャート。
【図2】測定部6の説明図。
【図3】在宅健康管理システムAの概略説明図。
【図4】本発明の在宅健康管理システムBの概略説明図。
【図5】在宅健康管理システムBの要介護度認定のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
測定部における心電図測定手段、X線撮影手段、超音波診断手段では基本データが画像処理の状態で健康管理センターのホストコンピュータの記憶装置に蓄積され、身長測定手段、体重測定手段、血圧測定手段、体温測定手段、血液測定手段、尿測定手段では数値として自動又は手動で入力されるものである。
そして、前記各手段が自動化された場合は、測定部がロボットとして在宅のみならず、各個の医療機関において、健康診断に極めて有益に貢献できるものである。また、診断希望の場合では問診表をプリントアウトするだけでなく、ディスプレイ表示による応答に代えることもでき、さらに、投薬なしの場合でのアドバイスでは紙出力のみならず、ディスプレイ表示と併用できるものに代えることもできる。また、要介護診断の基本となった各種の身体運動能力に関する基本データは、ケアーセンターにおいてリハビリのケアー手段の足掛りとして活用される。
【実施例】
【0009】
本発明を実施例により説明すると、在宅で健康管理を委託する在宅委託者1は、健康管理センター2に対して「在宅健康管理委託」への加入申し込みをするが、この加入時に本人特定データとして住所、氏名、性別、年齢、被保健者番号等が登録され、指定銀行口座開設後、健康管理センター2から加入者番号とインターネットIDが付与される。
利用時には図1に示すように、在宅側端末機3のディスプレイ3aに健康管理センター2のホームページを開き、「在宅健康管理委託」をスタートし、加入者番号、インターネットID及び前記指定銀行口座開設時に決定したパスワード等の本人特定情報4を入力し、次いでログインして基本データ5の測定に進む。
【0010】
ここで、測定部6について説明すると、図2に示すように、移動固定自在な台車6aには肘掛け椅子7が背もたれ7aをベッド状に姿勢変更自在として設けられ、その側方に(1)身長測定手段としての身長測定器8が立設され、肘掛け椅子7の足元の前方に(2)体重測定手段としての体重計9が起伏自在に設けられ、肘掛け椅子7の肘掛け7bには(3)血圧測定手段としての血圧計10が設置され、前方に設けたキャビネット11には(4)体温測定手段としての体温計や(5)血液測定手段としての採血針や小型血糖測定機セットや(9)尿測定手段としての採尿用具等が収納され、これらの(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(9)による基本データは在宅側端末機3から数値で入力され、(6)心電図測定手段、(7)X線撮影手段、(8)超音波診断手段による基本データ5は画像データとしてそれぞれ健康管理センター2のホストコンピュータ2aの記憶装置2bに蓄積されるものである。(6)心電図測定手段は図外であるが、(7)X線撮影手段12は背もたれ7aに設けられたカセッテ型放射線画像検出器と台車6a上に移動固定自在に載置されたコントローラ12bに搭載されたX線発生装置12cとから成り、撮影時には遮蔽膜12dで測定部6が覆われるものであり、(8)超音波診断手段13はディスプレイ13aと装置本体13bとセンサ13cとから成り肘掛け椅子7の前部側方に設けられ、在宅側端末機3は肘掛け椅子7の前方に立設した台座14に記憶装置3baを内蔵した制御部本体3bが回動自在に軸支され、該制御部本体3bに対してディスプレイ3aが開閉自在に設けられる。
【0011】
次に、在宅委託者1の健康診断の状態を図2のフローチャートにより説明すると、在宅側端末機3をスタートさせて健康管理センター2のホームページを開き、「在宅健康管理委託」をスタートし、前記の加入者番号、インターネットID、パスワード等の本人特定情報4を入力し、次いでログインして基本データ入力の画面を開く。該画面には基本データ5別の課金が表示されるから確認の上で基本データ5は入力されるが、該基本データ5は前記の各測定手段と整合させて示すと、(1)身長、(2)体重、(3)血圧、(4)体温、(5)血糖値、(6)心電図、(7)X線画像、(8)人体要部の超音波画像、(9)尿数値、このほか、(10)血液で調べる諸主要値などが挙げられ、(6)乃至(10)のデータ測定及び入力に関しては、医師又は看護師、医療技術者などの測定介助人が要される。
前記基本データ5は図3に示すように、在宅側端末機3から通信回線Tを介して健康管理センター2のホストコンピュータ2aの記憶装置2bに蓄積される。
基本データ5の入力終了後、健康管理センター2から「診断希望か」と、基本データ5の利用に関して問いかけられるから、データ入力のみの場合は(NO)へ進み課金処理OKで終了し、診断希望の場合は(YES)へ進むと、健康上の生活状況(妊娠の有無、既往症の有無、症別等)や生活習慣情報(喫煙の有無とその量、飲酒の有無とその量等)などがリストアップされた問診表15がプリンター3cから提示され(問診表15をディスプレイ3aに表示して処理される場合もある。)、各事項に関して応答事項15aを入力し、課金処理すると、投薬必要な診断の場合には投薬希望か否かが問われるから、「否」のときは(NO)で終了するが、希望するときは(YES)へ進むと、薬剤リスト16がプリンター3cから提示されるから課金処理する。次いで薬剤の宅配希望を問われるから「必要ないとき」は(NO)で終了し、希望するときは(YES)へ進み、課金処理すると領収証がプリンター3cから発行されて終了する。
なお、問診表15に対する応答で投薬不要の診断の場合は、課金処理後、食事療法指導や生活態度指導等のアドバイス18が提示される。また、課金処理に関しては指定銀行口座に予納される金額内で処理され、不足の場合には以降のサービスが停止される。
以上の流れで健康管理センター2のホストコンピュータ2aの記憶装置2bに蓄積された基本データ5は図3に示すように、在宅委託者1の健康状態が通信回線Tを介して各個の医療機関19でその端末機19aから被保健者番号などの本人特定データを介して把握できるから、疾病発症時には基本データ5の入手などの労力が軽減されるとともに、精密検査等の段取りが早まり、早期治療は勿論のこと、医療費の削減にも資することとなる。
【0012】
次に健康管理センター2が、要介護診断センター20である場合の在宅健康管理システムBについて説明すると、前記と同様の手続きで在宅委託者1には、要介護診断センター20から加入者番号とインターネットIDが付与される。
そして、図4に示すように、在宅委託者1は各種身体運動能力測定部(以下、単に測定部とする。)21で該能力が測定(測定介助者による測定も含まれる。)され、得られた身体運動能力値(前記と同様に基本データ5とする。)は、在宅側端末機3から通信回線Tを介して要介護診断センター20のホストコンピュータ20aの記憶装置20bに蓄積される。
【0013】
ここで、要介護診断の流れを説明すると、図5に示すように、前記基本データ5の入力を受けて要介護診断センター20からは要介護度診断の要否が問われ、診断を要しない場合(NO)は基本データ5の蓄積のみ(事後の診断の参考となる。)の課金処理をして終了するが、診断を必要とする場合(YES)は、要介護診断センター20から前記したと同様の健康上の生活状況(既往症の有無、症別等)や生活習慣情報(喫煙の有無とその量、飲酒の有無とその種類や量等)などがリストアップされた問診表15がプリンター3cから提示(問診表15をディスプレイ3aに表示して処理される場合もある。)され、各事項に関して応答事項15aを入力し、課金処理すると、要介護診断センター20からは要介護度22が書面で通知されて終了する。
一方、要介護診断センター20においては、前記基本データ5に加えて応答事項15a及び要介護度22等の情報がホストコンピュータ20aの記憶装置20bに蓄積されるとともに、公共福祉機関23に対して在宅委託者1に関する要介護度診断(意見書)が端末機23aに通信回線Tを介して通知される。
また、各個のケアーセンター24の端末機24aからも、要介護度22の認定された各在宅委託者1のリハビリに関して要介護診断センター20のホストコンピュータ20aにアクセスできるものであり、特定在宅委託者1の本人特定データによってセキュリティが保持されて各個のケアーセンター24において、在宅委託者1のケアー状況を把握できるものである。したがって、選択されたケアーセンター24では在宅委託者1の介護要望にきめ細かに即応できることとなる。
【0014】
前記測定部21で測定されるリハビリに関する基本データ5を説明すると、握力測定器による握力や、足関節底屈筋力、足関節背屈筋力、膝関節伸展筋力、股関節屈曲筋力、股関節内転筋力、股関節外転筋力、手指筋力計測器による手指筋力、肩関節水平屈曲度、肩関節伸展度、肩関節外転度、肩甲帯挙上度、肩甲帯引き下げ度、肩関節外旋度、前腕回外度、股関節内転度、股関節屈曲度、股関節伸展度、股関節外旋度等である。これ等は握力や筋肉のかたさ、肩こりの度合、手足の運動機能等を把握するためのものであるが、このほか、首、手足のしびれ、手足の指先の硬直度、起居動作の難易度が測定判断されるものである。
上記した実施例では、健康管理センター2と要介護診断センター20とを別個のセンターとして説明したが、本発明はこのものに限定されるものではなく、両者の複合したセンターとして存在できることは本発明の趣旨から明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明によれば、健康上必要な基本データを測定する測定部は各種測定手段が集合状態でまとめられ、かつ、移動固定自在であるから、在宅のみならず車載状態で地域医療にも利用できるほか、各個の医療機関においても特定の施設に代えて簡易に利用できるから、医療費削減の点でその需要は大いに期待される上、測定部のロボット化への指針として測定機器メーカーの活性化に貢献するものである上、要介護者に対する介護福祉サービスの事業分野でも貢献できるものである。
【符号の説明】
【0016】
1:在宅委託者
2:健康管理センター
3:在宅側端末機
3a:ディスプレイ
3b:制御部本体
3ba:記憶装置
3c:プリンター
4:本人特定情報
5:基本データ
6:測定部
6a:台車
7:肘掛け椅子
7a:背もたれ
7b:肘掛け
8:身長測定器
9:体重計
10:血圧測定器
11:キャビネット
12:X線撮影手段
12a:カセッテ型放射線画像検出器
12b:コントローラ
12c:X線発生装置
12d:遮蔽膜
13:超音波診断手段
13a:ディスプレイ
13b:装置本体
13c:センサ
14:台座
15:問診表
15a:応答事項
16:薬剤リスト
17:領収証
18:アドバイス
19:医療機関
19a:端末機
20:要介護診断センタ−
20a:ホストコンピュータ
20b:記憶装置
21:測定部
22:要介護度
23:公共福祉機関
23a:端末機
24:ケアーセンター
24a:端末機
T:通信回線
A:在宅健康管理システム
B:在宅健康管理システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
在宅で健康管理を委託する在宅委託者の健康上の基本データを測定する測定機器と、該測定機器による基本データを処理する在宅側端末機と、該基本データを通信回線を介してホストコンピュータの記憶装置に蓄積する健康管理センタ−とを要部とする在宅健康管理システムにおいて、
前記測定機が、各種測定手段を有する移動固定自在な測定部から成り、前記在宅側端末機による健康管理センターからの診断結果に基づき、課金処理を伴って在宅で薬剤入手に至る健康管理情報が入手され、健康管理が達成されて成る在宅健康管理システム。
【請求項2】
前記測定部が、リハビリテーション(以下、省略してリハビリとする。)における各種身体運動能力測定部から成り、前記健康管理センターが要介護診断センターから成る在宅健康管理システム。
【請求項3】
前記健康管理センターのホストコンピュータに蓄積される各在宅委託者の基本データが、各個の医療機関において、通信回線を介して各在宅委託者特定の本人特定データによって入手されて成る請求項1記載の在宅健康管理システム。
【請求項4】
前記各種身体運動能力測定部による基本データに基づき、要介護診断センターからの要介護度情報が公共福祉機関の端末機に入力され、該公共福祉機関の端末機から在宅委託者の端末機に要介護度認定情報が入力され、該要介護度認定情報が在宅委託者の端末機及び/又は要介護診断センターを介して本人特定データによって各個のケアーセンターの端末機から入手されて成る請求項2記載の在宅健康管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−165137(P2010−165137A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−6263(P2009−6263)
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(507376015)
【Fターム(参考)】