説明

地上子支障箇所用鉄道車両逸脱防止ガード

【課題】地上子に電気的影響を与えない地上子支障箇所用鉄道車両逸脱防止ガードの提供。
【解決手段】対の走行レール12A、12B同士の間に配置された地上子15と、地上子15と走行レール12A、12Bとの間に配置された絶縁性のガード構造16を有する。ガード構造16は、一方の走行レールと接する第1のガード材161と、他方の走行レールに接する第2のガード材162を有し、地上子15は第1のガード材161および第2のガード材162の間に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上子の敷設箇所に適用される地上子支障箇所用鉄道車両逸脱防止ガードに関する。
【背景技術】
【0002】
地震時等で列車が脱線した場合に被害拡大を防止するために、線路に逸脱防止ガードを設置し、一定の範囲以上の列車の逸脱を防止する対策工がある(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−63910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、地上子敷設箇所で地上子の検知性能に悪影響を及ぼすため、直近に鋼材等の電気的影響を与える材料を用いることができない。
【0005】
そこで、本発明の目的は、地上子に電気的影響を与えない地上子支障箇所用鉄道車両逸脱防止ガードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、符号を付して本発明の特徴を説明する。なお、符号は参照のためであり、本発明を実施形態に限定するものでない。
【0007】
本発明の特徴に係わる地上子支障箇所用鉄道車両逸脱防止ガードは、対の走行レール(12A、12B)同士の間に配置された地上子(15)と、地上子(15)と走行レール(12A、12B)との間に配置された絶縁性のガード構造(16)を有する。
【0008】
以上の特徴にあって、ガード構造(16)は一方の走行レール(12A)と接する第1のガード材(161)と、他方の走行レール(12B)に接する第2のガード材(162)を有し、地上子(15)は第1のガード材(161)および第2のガード材(162)の間に配置された。
【0009】
ガード構造(16)は第1のガード材(161)および第2のガード材(162)同士の間に配置されると共に第1のガード材(161)および第2のガード材(162)を支持する間隔機構(163、164)を有する。
【0010】
間隔機構(163、164)は、第1のガード材(161)に接する第1の間隔材(165)と、第2のガード材(162)に接すると共に第1の間隔材(165)と並行に配置された第2の間隔材(166)と、第1の間隔材(165)および第2の間隔材(166)の間に配置されると共に第1の間隔材(165)および第2の間隔材(166)同士の間隔に応じて位置変更可能な受け台(167)を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の特徴によれば、ガード構造は、地上子に電気的な影響を及ぼさないので、地上子の検知性能を妨害しない。
【0012】
間隔機構は、受け台の位置変更により、ガード材同士の間隔に応じて設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係るスラブ軌道を示す平面図である。
【図2】(A)は図1に示すガード材のIIAで示す一点鎖線に沿った断面図であり、(B)は図1に示す固定部のIIBに沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して実施の形態を詳細に説明する。
【0015】
図1に示すように、スラブ軌道10は、プレキャストコンクリートからなる軌道スラブ11A、11Bと、軌道スラブ11A、11Bの上に並行に配置された対のレール12A、12Bと、レールを軌道スラブ11A、11Bに締結する締結装置13A・・・13Hと、走行レール12A、12B同士の間に配置された一般構造用ガード構造14A、14Bと、一般構造用ガード構造14A、14B同士の間に配置された地上子15と、地上子15と走行レール12A、12Bとの間に配置された地上子支障箇所用ガード構造16を有する。
【0016】
ここで、各締結装置13A・・・13Hは、軌道スラブ11A、11Bの上に配置された絶縁板と、絶縁板の上に配置されたタイプレートと、タイプレートと走行レール12A、12Bとの間に配置された弾性材を有する。タイプレートは、ボルトで軌道スラブ11A、11Bに固定されると共に、走行レール12A、12Bを両側から弾発的に固定する。
【0017】
一般構造用ガード構造14A、14Bは、走行レール12A、12Bと並行に配置されたガード材141、142と、ガード材141、142同士の間に配置された支持材143を有する。ガード材141、142および支持材143は中空で断面矩形の角型鋼管である。一般構造用ガード構造14A、14Bは、ガード材141、142の端から長手方向に延びると共に貫通孔を有する固定部としての延出部144、145を有する(図2(B)参照)。
【0018】
地上子15は、例えば、ATS(Automatic Train Stop System)システムなどで車上子との間で情報を送受信するために地上に設置された装置である。地上子15は、例えば、電線をループ状に巻いたコイルなどで構成され、軌道スラブ11A、11Bに取り付けられる。
【0019】
地上子支障箇所用ガード構造16は、地上子15の両側に並行に配置された直線状のガード材161、162と、ガード材161、162を支持する間隔機構163、164を有する。
【0020】
ガード材161、162は絶縁材料からなる梁であり、地上子15と接触しない形状を有する。絶縁材料は、例えば、ガラス繊維と発砲ポリウレタンとの合成材料である。また、絶縁材料は、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、エポキシ、メラニン、フェノール等の合成樹脂、マイカ、石綿等の無機材料、天然ゴムを用いてもよい。ガード材161、162は鉄道車両から作用する水平荷重(想定荷重200kN)に耐える強度を有する。図2(A)に示すように、ガード161を例にとると、ガード材161の横断面は、一端から中央まで延びる本体部161aと、本体部161aから段差を付けた段差部161bと、段差部161bから反対端まで段差部161bに対して斜めに延びる斜面部161cを有する。段差部161bおよび斜面部161cはガード材161と地上子15との接触を防止する。図2(B)に示すように、ガード材161は、両端から長手方向へ延びると共に貫通孔を有した固定部としての延出部161dを有する。この延出部161dは一般構造用ガード構造14Bの延出部145とともにボルトB1で軌道スラブ11Bに固定される。
【0021】
間隔機構163、164は、ガード材161、162の延出部同士の間に配置される。間隔機構163、164は、それぞれガード材161、162に接する対をなす間隔材165、166と、間隔材165、166同士の間に配置される受け台167を有する。間隔材165、166と受け台167とはボルトで留められている。間隔材165、166は平面直角三角形であり、直角をなす2辺に対して斜めに延びる斜辺を有する。受け台167は平面等脚台形であり、上底および下底を繋ぐ一対の斜辺を有する。間隔材165、166の斜辺と受け台167の斜辺とは接する。間隔材165、166同士の間隔が大きくなるにつれて、受け台167を間隔材165、166の先端側へ位置変更させる。これにより、ガード材161、162同士の間隔に応じて、間隔機構163、164を設置することができる。
【0022】
次に、地上子支障箇所用ガード構造16の作用を説明する。
【0023】
鉄道車両が走行レール12A、12B上を走行し、地上子15を通過する。ここで、地上子15が鉄道車両の車上子と通信するとき、絶縁性のガード材161、162は、地上子15に電気的な影響を及ぼさず、地上子15の検知性能を妨害しない。
【0024】
鉄道車両が走行レール12A、12Bから脱線すると、鉄道車両の左右の走行車輪のうち一方の走行車輪W1が一方の走行レール12Aから外側に逸脱し、他方の走行車輪W2が他方の走行レール12Bの内側に逸脱する。このとき、走行車輪W2は地上子支障箇所用ガード構造16のガード材162と走行レール12Bとの間に入る。走行車輪W2がガード材162に当たったとき、ガード材162は鉄道車両から作用する水平荷重に耐える。
【0025】
また、ガード材161、162同士の間隔が変更されるときは、間隔機構163、164の受け台167を間隔材165、166の間で位置変更させる。これにより、ガード材161、162同士の間隔に応じて、間隔材165、166同士の間隔も調整される。
【0026】
以上の実施形態によれば、地上子支障箇所用ガード構造16のガード材161、162は、地上子15に電気的な影響を及ぼさず、地上子15の検知性能を妨害しない。
【0027】
間隔機構163、164は、ガード材161、162同士の間隔に応じて設置することができる。
【0028】
なお、本発明は本実施形態に限定されず、また、各実施形態は発明の趣旨を変更しない範囲で変更、修正可能である。すなわち、本発明のガード構造は、ATSの地上子以外にも、電気的影響を受けるATC(Automatic Train Control)の地上子、列車位置検知用の地上子にも適用してもよい。
【符号の説明】
【0029】
10 スラブ軌道
11A、11B 軌道スラブ
12A、12B 走行レール
13A〜13H 締結装置
15 地上子
16 地上子支障箇所用ガード構造
161、162 ガード材
163、164 間隔機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対の走行レール同士の間に配置された地上子と、
前記地上子と走行レールとの間に配置された絶縁性のガード構造を有する、
地上子支障箇所用鉄道車両逸脱防止ガード。
【請求項2】
前記ガード構造は、一方の走行レールと接する第1のガード材と、他方の走行レールに接する第2のガード材を有し、
前記地上子は第1のガード材および第2のガード材の間に配置された、
請求項1に記載の地上子支障箇所用鉄道車両逸脱防止ガード。
【請求項3】
前記ガード構造は前記第1のガード材および第2のガード材同士の間に配置されると共に前記第1のガード材および第2のガード材を支持する間隔機構を有する、
請求項2に記載の地上子支障箇所用鉄道車両逸脱防止ガード。
【請求項4】
前記間隔機構は、第1のガード材に接する第1の間隔材と、第2のガード材に接すると共に第1の間隔材と並行に配置された第2の間隔材と、第1の間隔材および第2の間隔材の間に配置されると共に第1の間隔材および第2の間隔材同士の間隔に応じて位置変更可能な受け台を有する、
請求項3に記載の地上子支障箇所用鉄道車両逸脱防止ガード。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−19096(P2013−19096A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150646(P2011−150646)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【出願人】(000196587)西日本旅客鉄道株式会社 (202)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【出願人】(502316913)大和軌道製造株式会社 (25)
【Fターム(参考)】