説明

地上式搬送装置

【課題】全重量を軽くでき、被検車両の前輪を持ち上げて牽引してもフレームの変形が少なく、フレームの変形を規制するガイドが不要であり、重負荷により破損する可能性がある構成部材がなく、メンテナンスの必要性が低い地上式搬送装置を提供する。
【解決手段】被検車両1の搬送通路2に沿って被検車両の外側に位置し搬送方向3に水平に延びる左右の走行レール12と、同一の姿勢を保持しかつ互いに同期して各走行レール上を移動可能な左右の移動台車20と、各移動台車に設けられ、被検車両の前輪を昇降可能であり、かつ被検車両と干渉しない退避位置に退避可能な左右の前輪昇降装置30と、各移動台車を連結する連結位置と被検車両と干渉しない退避位置との間で移動可能な連結装置40とを備える。連結装置40は、前輪昇降装置30による被検車両1の前輪1aの昇降時に、左右の移動台車20を連結して各移動台車に作用する転倒モーメントを支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線検査のためコンテナを搭載した車両の前輪を持ち上げて搬送する地上式搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンテナを搭載した車両をX線検査する場合には、車両を搬送するための搬送装置が用いられている。かかる搬送装置は、車両の前輪又は後輪を持ち上げつつ自走可能に構成されるものであり、車両及びコンテナをX線が照射される遮蔽室内を通過させて、車両及びコンテナのX線検査を行うものであり、例えば、特許文献1,2に開示されている。
【0003】
特許文献1の「X線検査方法」は、X線を照射する遮蔽室の下方に、台車用通路を形成し、その通路を自走する搬送台車で、車両の前輪を持ち上げて、遮蔽室を通過させるものである。以下、この方式の搬送装置を「地下式搬送装置」と呼ぶ。
【0004】
特許文献2の「搬送装置」は、X線を照射する遮蔽室の下方には台車用通路を形成せず、車両の前方から車両の前輪を持ち上げて自走する地上牽引式搬送台車である。以下、この方式の搬送装置を「地上式搬送装置」と呼ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−287507号公報、「X線検査方法」
【特許文献2】特開2007−331852号公報、「搬送装置」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の地下式搬送装置は、X線を照射する遮蔽室の地下に台車用通路を形成し、その台車用通路に搬送台車を配置する必要があるため、台車用通路を形成するためのコストがかかるという問題点があった。
【0007】
これに対し、特許文献2の地上式搬送装置は、地下の台車用通路が不要であるため、地下式搬送装置に比較して低コストにできる特徴がある。しかし、特許文献2の地上式搬送装置には、以下の問題点があった。
【0008】
特許文献2の地上式搬送装置は、左右の台車フレームを固定連結する門型フレームを必要とする。この門型フレームは、左右の台車フレームにそれぞれ下端が固定され上方に延びる2本の柱部材と、2本の柱部材の上端を水平に連結する水平部材とからなる。
(1)しかしコンテナを搭載した車両(以下、「被検車両」と呼ぶ)は全高が高いため、門型フレームが被検車両と干渉しないために水平部材の高さは非常に高くなる(例えば約5m)。そのため門型フレームの重量が大きくなり、装置の全重量が大きくなる。
【0009】
(2)門型フレームの水平部材の高さが高いため、被検車両を牽引するために検査車両の前輪を持ち上げると、柱部材に作用するモーメントが大きく、重量が大きいにも関らず、門型フレームの柱部材の変形が大きい。
(3)柱部材の変形のため、左右の台車フレームが幅方向に移動し、安定走行が困難となる。そのため、幅方向の移動を規制するガイド(例えばカムフォロア)が必要になる。またこのガイドは、重負荷のため寿命が短く、頻繁に交換する必要があった。
【0010】
本発明は、上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、全重量を軽くでき、被検車両の前輪を持ち上げて牽引してもフレームの変形が少なく、フレームの変形を規制するガイドが不要であり、重負荷により損傷する可能性がある構成部材がなく、煩雑なメンテナンスの必要性が低い地上式搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、被検車両を搬送しながら被検車両をX線検査するための地上式搬送装置であって、
被検車両の搬送通路に沿って被検車両の外側に位置し搬送方向に水平に延びる左右の走行レールと、
同一の姿勢を保持しかつ互いに同期して各走行レール上を移動可能な左右の移動台車と、
各移動台車に設けられ、被検車両の前輪を昇降可能であり、かつ被検車両と干渉しない退避位置に退避可能な左右の前輪昇降装置と、
各移動台車を連結する連結位置と被検車両と干渉しない退避位置との間で移動可能な連結装置とを備え、
連結装置は、前輪昇降装置による前記前輪の昇降時に、左右の移動台車を連結して各移動台車に作用する転倒モーメントを支持する、ことを特徴とする地上式搬送装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
上記本発明の構成によれば、前輪昇降装置と連結装置を被検車両と干渉しない退避位置に移動できるので、この状態で被検車両と干渉することなく、左右の移動台車を各走行レール上で自由に移動することができる。
また、前輪昇降装置で被検車両の前輪を昇降可能であり、連結装置により、前輪昇降装置による前記前輪の昇降時に、左右の移動台車を連結して各移動台車に作用する転倒モーメントを支持することができる。
【0013】
連結装置は、前輪昇降装置による前記前輪の昇降時のみに左右の移動台車を連結するので、従来の門型フレームのように被検車両と干渉しない高さ(例えば約5m)にする必要がない。従って、低い位置で左右の移動台車を連結できるので、連結装置を小型化、軽量化でき全重量を軽くできる。
また、連結装置は、各移動台車に作用する転倒モーメントのみを支持するので、被検車両の前輪を持ち上げて牽引してもフレームの変形が少ない。従って、フレームの変形を規制するガイドが不要となり、重負荷により破損する可能性がある構成部材がなく、メンテナンスの必要性を低減できる。

【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態における地上式搬送装置の平面図である。
【図2】図1を左側から見た側面図である。
【図3】図1を上側から見た正面図である。
【図4】姿勢保持装置の別の構成図である。
【図5】係合部の別の構成図である。
【図6】本発明の第2実施形態における地上式搬送装置の平面図(A)と部分側面図(B)である。
【図7】本発明の第3実施形態における地上式搬送装置の平面図である。
【図8】本発明の第4実施形態における地上式搬送装置の平面図(A)と側面図(B)である。
【図9】本発明の第5実施形態における地上式搬送装置の平面図(A)とB−B矢視図(B)である。
【図10】連結装置のその他の構成を示す模式図である。
【図11】本発明の第6実施形態における地上式搬送装置の平面図である。
【図12】図11を左側から見た側面図である。
【図13】図11を上側から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して説明する。なお各図において、共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0016】
図1は、本発明の第1実施形態における地上式搬送装置の平面図である。
この図において、地上式搬送装置10は、被検車両1を搬送しながら被検車両1をX線検査するための装置であり、左右の走行レール12、左右の移動台車20、左右の前輪昇降装置30、及び連結装置40を備える。
【0017】
被検車両1は、例えばコンテナを搭載した車両である。被検車両1は、前輪1aを有し、地上式搬送装置10は、被検車両1の前輪1aを持ち上げて搬送するようになっている。
【0018】
左右の走行レール12は、被検車両1の搬送通路2に沿って被検車両1の外側に位置し、搬送方向に水平に延びる。搬送通路2はこの図において上下方向に直線的に延びる水平な通路であり、搬送方向は矢印3で示すように、この図において下から上に向かう方向である。
【0019】
左右の移動台車20は、同一の姿勢を保持し、かつ互いに同期して各走行レール12上を移動可能に構成されている。
【0020】
左右の前輪昇降装置30は、各移動台車20に設けられ、被検車両1の前輪1aを昇降可能であり、かつ被検車両1と干渉しない退避位置に退避可能に構成されている。
【0021】
連結装置40は、各移動台車20を連結する「連結位置」と、被検車両1と干渉しない「退避位置」との間で移動可能に構成されている。また、連結装置40は、前輪昇降装置30により被検車両1の前輪1aを昇降時に、各移動台車20を連結して、各移動台車20に作用する転倒モーメントを支持するように構成されている。
【0022】
図2は、図1を左側から見た側面図であり、図3は、図1を上側から見た正面図である。
図2において、各移動台車20は、台車フレーム22、前車輪24、及び後車輪26を有する。
【0023】
台車フレーム22は、走行レール12に沿って搬送方向に水平に延びる部材である。台車フレーム22は、被検車両1の前輪1aを持ち上げて搬送する際に作用する転倒モーメントで変形しない高いねじれ剛性を有する。
この例では、台車フレーム22は、一体に構成された断面一定の矩形部材であるが、分割構造であっても、断面形状が変化してもよい。
【0024】
前車輪24は、台車フレーム22の下部前方に取り付けられた前後一対の車輪である。
また、後車輪26は、台車フレーム22の下部後方に取り付けられた前後一対の車輪である。後車輪26は、被検車両1の前輪1aを持ち上げる位置に設けるのが好ましい。
なお、前車輪24及び後車輪26は、前後一対の車輪に限定されず、単独の車輪でも3以上の車輪でもよい。
【0025】
前車輪24及び後車輪26は、走行レール12の上面に沿って走行レール12により案内され、台車フレーム22に作用する下向き荷重を支持する。
またこの例で前車輪24は駆動輪であり、車輪駆動装置25により回転駆動され、台車フレーム22を走行レール12に沿って前進又は後進させるようになっている。また、後車輪26は従動輪であり、台車フレーム22の移動に追従して空転するようになっている。
なお、後車輪26を駆動輪にしてもよく、前車輪24と後車輪26の両方を駆動輪にしてもよい。
【0026】
この例において、左右の車輪駆動装置25は、駆動輪(前車輪24)を同期して駆動するようになっており、左右の移動台車20は、常に互いに同期して各走行レール12上を移動するようになっている。
左右の移動台車20を同期させる同期機構は、エンコーダを用いた電気的同期、レーザー光を用いた光学的同期、或いは周知の他の同期であってもよい。
【0027】
図3において、各移動台車20は、同一の姿勢を保持するための姿勢保持装置28をそれぞれ有する。
姿勢保持装置28は、この例において、鉛直軸を中心に回転可能な1対のカムフォロア28aと、カムフォロア28aを台車フレーム22に固定する支持フレーム28bとからなる。
1対のカムフォロア28aは、幅方向に一定の間隔を隔てている。また1対のカムフォロア28aの間に挟まれたガイド板4が、搬送通路2を囲む壁5に取り付けられている。
この構成により、地上式搬送装置10が、被検車両1の前輪1aを持ち上げていない通常の走行状態において、1対のカムフォロア28aをガイド板4で案内することにより、移動台車20の姿勢を常に同一に保持することができる。
【0028】
図4は、姿勢保持装置の別の構成図である。
この例において、各走行レール12は、互いに平行な主レール12aと1対の補助レール12b,12cからなる。補助レール12bは主レール12aの外側下部に位置し、補助レール12cは補助レール12bの上部に対向して位置する。また、補助レール12bを支持するために、搬送通路2の外側にコの字状の反力壁6が設けられている。
この例において、前車輪24(又は後車輪26)は、主輪27aと補助輪27bとを有する。主輪27aと補助輪27bはこの例では同軸であるが、別軸であってもよい。また、主輪27aと補助輪27bは、支持する荷重に応じて複数設けるのがよい。
【0029】
主輪27aと補助輪27bは、被検車両1の前輪1aを支持していない通常走行時には、下向きの荷重を支持しながら、主レール12aと補助レール12bに沿って移動台車14を案内する。
上述した図4の構成により、地上式搬送装置10が、被検車両1の前輪1aを持ち上げていない通常の走行状態において、補助輪27bを1対の補助レール12b,12cで案内することにより、移動台車20の姿勢を常に同一に保持することができる。
【0030】
図1、図2において、各前輪昇降装置30は、昇降フレーム32、昇降駆動装置34、車輪支持アーム36、及び旋回駆動装置38を有する。
【0031】
昇降フレーム32は、搬送方向に間隔を隔てた1対の昇降ガイド33により、台車フレーム22に対して上下に昇降可能に構成されている。
昇降駆動装置34は、例えば台車フレーム22に設けられた液圧シリンダ又は空圧シリンダであり、昇降フレーム32を上下に昇降駆動する。
車輪支持アーム36は、搬送方向に間隔を隔てた1対の水平アーム36a,36bであり、それぞれ一端が鉛直軸を中心に水平に旋回可能に昇降フレーム32に取り付けられている。1対の水平アーム36a,36bの旋回方向は互いに反対である。
旋回駆動装置38は、例えば昇降フレーム32に取り付けられた1対の液圧シリンダ又は空圧シリンダであり、1対の水平アーム36a,36bを被検車両と干渉しない退避位置と、被検車両1の前輪1aの前後に位置してこれを昇降可能な昇降位置との間で旋回駆動するようになっている。
【0032】
上述した前輪昇降装置30の構成により、1対の水平アーム36a,36bを旋回駆動装置38により旋回駆動して被検車両1の前輪1aの前後に位置決めし、次いで昇降駆動装置34により昇降フレーム32を上昇させて昇降フレーム32とともに1対の水平アーム36a,36bさせて、被検車両1の前輪1aを持ち上げることができる。
また、逆に被検車両1の前輪1aを持ち上げた状態から、昇降駆動装置34により昇降フレーム32を下降させて前輪1aを搬送通路2に降ろし、次いで、1対の水平アーム36a,36bを旋回駆動装置38により旋回駆動して被検車両1と干渉しない退避位置に退避させることができる。
【0033】
なお、前輪昇降装置30は上述した構成に限定されず、被検車両1の前輪1aを昇降可能であり、かつ被検車両1と干渉しない退避位置に退避可能な限りで他の構成であってもよい。
【0034】
図1、図3において、連結装置40は、左右の連結フレーム42と、左右の旋回駆動装置44を有する。
左右の連結フレーム42は、各移動台車20に一端が鉛直軸41を中心に水平に旋回可能に取り付けられ、他端に転倒モーメントを支持する係合部43を有する。
左右の旋回駆動装置44は、鉛直軸41を中心に各連結フレーム42を水平に旋回させる。
各連結フレーム42は、被検車両1と干渉しない退避位置において走行レール12に沿って位置する。また各連結フレーム42は、各移動台車20を連結する連結位置において走行レール12に直交する方向に位置し、左右の係合部43が互いに係合して転倒モーメントを支持する。
左右の係合部43は、この例では連結位置において互いに上下に積層され上下の面が密着する複数の平板部43aからなる。
【0035】
図5は、係合部の別の構成図であり、(A)は平面図、(B)は正面図である。
この例で、左右の係合部43は、連結位置において互いに前後に嵌合するL字部分からなる。この場合、左右の連結フレーム42は同期せず、図で右側の連結フレーム42が先に連結位置に位置し、次いで左側の連結フレーム42が連結位置に位置して、左右の係合部43が互いに係合して転倒モーメントを支持する。
この構成によっても、前輪昇降装置30により被検車両1の前輪1aを昇降時に、各移動台車20を連結して各移動台車20に作用する転倒モーメントを支持することができ、同様の効果が得られる。
【0036】
図6は、本発明の第2実施形態における地上式搬送装置の平面図(A)と部分側面図(B)である。
【0037】
図6において、各移動台車20の前車輪24及び後車輪26はそれぞれ単独の車輪であるが、基本構成は第1実施形態と同様である。
また、各前輪昇降装置30の昇降駆動装置34はそれぞれ複数(2本)であるが、基本構成は第1実施形態と同様である。
この例で、姿勢保持装置28は、水平軸を中心に回転可能な1対のカムフォロア28aを有する。後述する図9に示すように、1対のカムフォロア28aは、上下方向に一定の間隔を隔てている。また1対のカムフォロア28aの間に挟まれたガイド板4が、搬送通路2を囲む壁5に取り付けられている。
【0038】
図6の例において、連結装置40は、連結フレーム46、旋回駆動装置48、及び係合金具50を有する。
【0039】
連結フレーム46は、一方(図で左)の移動台車20に一端が第1鉛直軸45を中心に水平に旋回可能に取り付けられ、他端に転倒モーメントを支持する係合部47を有する。係合部47は、この例では、後方に向けて開口したU字状の凹溝を有する。
旋回駆動装置48は、一方(図で左)の移動台車20に設けられ、第1鉛直軸45を中心に連結フレーム46を水平に旋回させる。旋回駆動装置48は、この例では旋回駆動モータであるが、液圧シリンダ又は空圧シリンダであってもよい。
係合金具50は、他方(図で右)の移動台車20に設けられ連結位置において係合部47と係合する。係合金具50は、この例では係合部47のU字状の凹溝と嵌合する円柱部材である。
【0040】
上述した構成により、連結フレーム46が、退避位置において走行レール12に沿って位置することにより、被検車両1と干渉することなく、左右の移動台車20を各走行レール12上で自由に移動することができる。
また、前輪昇降装置30により被検車両1の前輪1aを昇降時に、係合部47が係合金具50と係合して各移動台車20に作用する転倒モーメントを連結フレーム46で支持することができる。
【0041】
図7は、本発明の第3実施形態における地上式搬送装置の平面図である。
この例において、連結フレーム46は、第1連結フレーム46Aと第2連結フレーム46Bからなる。第1連結フレーム46Aの一端は第1鉛直軸45を中心に水平に旋回可能に取り付けられている。また、第2連結フレーム46Bの他端に転倒モーメントを支持する係合部47を有する。旋回駆動装置48は、この例では液圧シリンダ又は空圧シリンダであるが、旋回駆動モータであってもよい。
【0042】
また第1連結フレーム46Aの他端と第2連結フレーム46Bの一端は、第2鉛直軸49を中心に水平に旋回可能に連結されている。
さらに第1連結フレーム46Aに取り付けられ、第2連結フレーム46Bを第2鉛直軸49を中心に旋回させる第2旋回駆動装置51を備える。第2旋回駆動装置51は、この例では液圧シリンダ又は空圧シリンダであるが、旋回駆動モータであってもよい。
【0043】
その他の構成は、第2実施形態と同様である。
上述した構成により、連結フレーム46が、退避位置において走行レール12に沿って位置することにより、被検車両1と干渉することなく、左右の移動台車20を各走行レール12上で自由に移動することができる。
また、前輪昇降装置30により被検車両1の前輪1aを昇降時に、旋回駆動装置48と第2旋回駆動装置51を連動させて、係合部47を係合金具50と係合させることにより、各移動台車20に作用する転倒モーメントを連結フレーム46で支持することができる。
【0044】
図8は、本発明の第4実施形態における地上式搬送装置の平面図(A)と(A)を左側から見た側面図(B)である。
【0045】
図8において、各移動台車20の前車輪24及び後車輪26はそれぞれ単独の車輪であるが、基本構成は第1実施形態と同様である。
また、各前輪昇降装置30の昇降駆動装置34はそれぞれ複数(2本)であるが、基本構成は第1実施形態と同様である。
姿勢保持装置28は、第2実施形態と同様である。
【0046】
図8の例において、連結フレーム42は、その下面に取り付けられ、搬送通路に接触して移動台車に作用する転倒モーメントを支持するモーメント支持車輪52を有する。モーメント支持車輪52は従動輪であり、連結フレーム42の移動に追従して空転するようになっている。
その他の構成は、第1実施形態と同様である。また、第2、第3実施形態における連結フレーム46の下面に同様のモーメント支持車輪52を設けてもよい。
【0047】
上述したモーメント支持車輪52を設けることにより、前輪昇降装置30により被検車両1の前輪1aを昇降時に、各移動台車20に作用する転倒モーメントをモーメント支持車輪52により支持することができる。従って、上述した第1〜第3実施形態における係合部の負荷を軽減し、或いは無くすことができる。
【0048】
図9は、本発明の第5実施形態における地上式搬送装置の平面図(A)とB−B矢視図(B)である。
【0049】
図9において、各移動台車20の前車輪24及び後車輪26はそれぞれ単独の車輪であるが、基本構成は第1実施形態と同様である。
また、各前輪昇降装置30の昇降駆動装置34はそれぞれ複数(2本)であるが、基本構成は第1実施形態と同様である。
この例で、姿勢保持装置28は、水平軸を中心に回転可能な1対のカムフォロア28aを有する。1対のカムフォロア28aは、上下方向に一定の間隔を隔てている。また1対のカムフォロア28aの間に挟まれたガイド板4が、搬送通路2を囲む壁5に取り付けられている。
【0050】
図9の例において、連結装置40は、連結フレーム46、旋回駆動装置48、及び係合金具50を有する。
【0051】
連結フレーム46は、一方(図で左)の移動台車20に一端が水平軸54を中心に垂直に旋回可能に取り付けられ、他端に転倒モーメントを支持する係合部47を有する。係合部47は、この例では、下方に向けて開口したU字状の凹溝を有する。
旋回駆動装置48は、一方(図で左)の移動台車20に設けられ、水平軸54を中心に連結フレーム46を垂直に旋回させる。旋回駆動装置48は、この例では旋回駆動モータであるが、液圧シリンダ又は空圧シリンダであってもよい。
係合金具50は、他方(図で右)の移動台車20に設けられ連結位置において係合部47と係合する。係合金具50は、この例では係合部47のU字状の凹溝と嵌合する円柱部材である。
【0052】
上述した構成により、連結フレーム46が、退避位置において走行レール12に沿って位置することにより、被検車両1と干渉することなく、左右の移動台車20を各走行レール12上で自由に移動することができる。
また、前輪昇降装置30により被検車両1の前輪1aを昇降時に、係合部47が係合金具50と係合して各移動台車20に作用する転倒モーメントを連結フレーム46で支持することができる。
【0053】
図10は、連結装置のその他の構成を示す模式図である。
図10(A)は平面図であり、連結フレーム46を水平旋回させる水平旋回式である。この図で、連結フレーム46は旋回駆動装置48(旋回駆動モータ)で水平旋回し、その先端部が、他方(図で上)の移動台車20に設けられたストッパ56に当接して位置決めされるようになっている。
【0054】
図10(B)は正面図であり、連結フレーム46を垂直旋回させる垂直旋回式である。この図で、連結フレーム46は旋回駆動装置48(旋回駆動モータ)で垂直旋回し、その先端部が、他方(図で右)の移動台車20に設けられたストッパ56に当接して位置決めされるようになっている。
【0055】
図10(C)は平面図であり、連結フレーム42を水平旋回させる旋回駆動装置48が液圧シリンダ又は空圧シリンダである例である。この図で、一方の連結フレーム42がストッパ56に当接して位置決めされ、他方の連結フレーム42は一方の連結フレーム42に当接して位置決めされるようになっている。
【0056】
図10(D)は平面図であり、第1連結フレーム46Aに沿って第2連結フレーム46Bが液圧シリンダ又は空圧シリンダにより伸縮し、第2連結フレーム46Bの先端がストッパ56に当接して位置決めされるようになっている。
【0057】
図11は、本発明の第6実施形態における地上式搬送装置の平面図である。
この実施形態は、上述した連結装置40と水平アーム36aを合体させ、連結装置40と水平アーム36aの旋回駆動装置を兼用とし、旋回駆動装置は38のみとするものである。
この図は、連結装置40と水平アーム36aを合体したものを格納した状態を破線で示している。
【0058】
図12は、図11を左側から見た側面図である。
この図は、図11の格納状態を示している。格納時に旋回駆動装置と干渉することを避けるために、前側の旋回駆動装置38を上に移設している。また、連結装置40と水平アーム36aを合体したものを格納するために、移動台車40、台車フレーム22の構造を変更している。
【0059】
図13は、図11を上側から見た正面図である。
この図は、連結装置40と水平アーム36aを合体したものが連結された状態の正面図である。
【0060】
第6実施形態において連結装置40は、各前輪昇降装置30の水平アーム36aに水平に旋回可能に取り付けられた左右の連結フレーム42を有する。各連結フレーム42は、その他端に転倒モーメントを支持する係合部43を有する。
また各連結フレーム42は、各前輪昇降装置30の作動に連動して、退避位置において走行レール12に沿って位置し、連結位置において走行レール12に直交する方向に位置し、左右の係合部43が互いに係合して転倒モーメントを支持するようになっている。
【0061】
その他の構成は、第1実施形態と同様である。
上述した第6実施形態の構成により、旋回駆動装置48が省略でき、コスト低減が可能となる。
【0062】
上述した各実施形態の構成によれば、前輪昇降装置30と連結装置40を被検車両1と干渉しない退避位置に移動できるので、この状態で被検車両1と干渉することなく、左右の移動台車20を各走行レール12上で自由に移動することができる。
また、前輪昇降装置30で被検車両1の前輪1aを昇降可能であり、連結装置40により前輪1aの昇降時に、左右の移動台車20を連結して各移動台車20に作用する転倒モーメントを支持することができる。
【0063】
連結装置40は、前輪昇降装置30による前輪1aの昇降時のみに左右の移動台車20を連結するので、従来の門型フレームのように被検車両1と干渉しない高さ(例えば約5m)にする必要がない。従って、低い位置で左右の移動台車20を連結できるので、連結装置40を小型化、軽量化でき全重量を軽くできる。
また、連結装置40は、各移動台車20に作用する転倒モーメントのみを支持するので、被検車両1の前輪1aを持ち上げて牽引してもフレーム(台車フレーム22)の変形が少ない。従って、フレーム(台車フレーム22)の変形を規制するガイドが不要となり、重負荷により破損する可能性がある構成部材がなく、メンテナンスの必要性を低減できる。
【0064】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々に変更することができることは勿論である。
【符号の説明】
【0065】
1 被検車両、1a 前輪、2 搬送通路、
3 搬送方向、4 ガイド板、5 壁、6 反力壁、
10 地上式搬送装置、12 走行レール、
12a 主レール、12b,12c 補助レール、
20 移動台車、22 台車フレーム、
24 前車輪、26 後車輪、28 姿勢保持装置、
28a カムフォロア、28b 支持フレーム、
30 前輪昇降装置、32 昇降フレーム、
33 昇降ガイド、34 昇降駆動装置、
36 車輪支持アーム、36a,36b 水平アーム、
38 旋回駆動装置、
40 連結装置、41 鉛直軸、42 連結フレーム、
43 係合部、43a 平板部、44 旋回駆動装置、
45 第1鉛直軸、46 連結フレーム、
46A 第1連結フレーム、46B 第2連結フレーム、
47 係合部、48 旋回駆動装置、49 第2鉛直軸、
50 係合金具、51 第2旋回駆動装置、
52 モーメント支持車輪、54 水平軸、56 ストッパ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検車両を搬送しながら被検車両をX線検査するための地上式搬送装置であって、
被検車両の搬送通路に沿って被検車両の外側に位置し搬送方向に水平に延びる左右の走行レールと、
同一の姿勢を保持しかつ互いに同期して各走行レール上を移動可能な左右の移動台車と、
各移動台車に設けられ、被検車両の前輪を昇降可能であり、かつ被検車両と干渉しない退避位置に退避可能な左右の前輪昇降装置と、
各移動台車を連結する連結位置と被検車両と干渉しない退避位置との間で移動可能な連結装置とを備え、
連結装置は、前輪昇降装置による前記前輪の昇降時に、左右の移動台車を連結して各移動台車に作用する転倒モーメントを支持する、ことを特徴とする地上式搬送装置。
【請求項2】
連結装置は、
各移動台車に一端が鉛直軸を中心に水平に旋回可能に取り付けられ、他端に転倒モーメントを支持する係合部を有する左右の連結フレームと、
前記鉛直軸を中心に各連結フレームを水平に旋回させる左右の旋回駆動装置と、を有し、
各連結フレームは、退避位置において走行レールに沿って位置し、連結位置において走行レールに直交する方向に位置し、左右の係合部が互いに係合して転倒モーメントを支持する、ことを特徴とする請求項1に記載の地上式搬送装置。
【請求項3】
左右の係合部は、連結位置において互いに上下に積層され上下の面が密着する複数の平板部からなる、ことを特徴とする請求項2に記載の地上式搬送装置。
【請求項4】
左右の係合部は、連結位置において互いに前後に嵌合するL字部分からなる、ことを特徴とする請求項2に記載の地上式搬送装置。
【請求項5】
連結装置は、
一方の移動台車に一端が第1鉛直軸を中心に水平に旋回可能に取り付けられ、他端に転倒モーメントを支持する係合部を有する連結フレームと、
一方の移動台車に設けられ第1鉛直軸を中心に連結フレームを水平に旋回させる旋回駆動装置と、
他方の移動台車に設けられ連結位置において前記係合部と係合する係合金具と、を有し、
連結フレームは、退避位置において走行レールに沿って位置し、連結位置において走行レールに直交する方向に位置し、係合部が係合金具と係合して転倒モーメントを支持する、ことを特徴とする請求項1に記載の地上式搬送装置。
【請求項6】
連結フレームは、一端が第1鉛直軸を中心に水平に旋回可能に取り付けられた第1連結フレームと、他端に転倒モーメントを支持する係合部を有する第2連結フレームとからなり、第1連結フレームの他端と第2連結フレームの一端は第2鉛直軸を中心に水平に旋回可能に連結されており、
さらに第1連結フレームに取り付けられ、第2連結フレームを第2鉛直軸を中心に旋回させる第2旋回駆動装置を備える、ことを特徴とする請求項5に記載の地上式搬送装置。
【請求項7】
連結フレームは、その下面に取り付けられ、搬送通路に接触して移動台車に作用する転倒モーメントを支持するモーメント支持車輪を有する、ことを特徴とする請求項2に記載の地上式搬送装置。
【請求項8】
連結装置は、
一方の移動台車に一端が水平軸を中心に垂直に旋回可能に取り付けられ、他端に転倒モーメントを支持する係合部を有する連結フレームと、
一方の移動台車に設けられ前記水平軸を中心に連結フレームを垂直に旋回させる旋回駆動装置と、
一方の移動台車に設けられ連結位置において前記係合部と係合する係合金具と、を有し、
連結フレームは、退避位置において走行レールに沿って位置し、連結位置において走行レールに直交する方向に位置し、係合部が係合金具と係合して転倒モーメントを支持する、ことを特徴とする請求項1に記載の地上式搬送装置。
【請求項9】
連結装置は、
各前輪昇降装置に水平に旋回可能に取り付けられ、他端に転倒モーメントを支持する係合部を有する左右の連結フレームを有し、
各連結フレームは、各前輪昇降装置の作動に連動して、退避位置において走行レールに沿って位置し、連結位置において走行レールに直交する方向に位置し、左右の係合部が互いに係合して転倒モーメントを支持する、ことを特徴とする請求項1に記載の地上式搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−3030(P2013−3030A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135929(P2011−135929)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000198318)株式会社IHI検査計測 (132)
【Fターム(参考)】