説明

地上機器の設置位置が調整可能な電線共同溝装置

【課題】歩道域内に設置した電線共同溝に据え付ける地上機器を、車道側に近寄せて電線共同溝位置からずらして配置し、狭い歩道でも広く使用できるようにする。
【解決手段】歩道域W内に埋設する電線共同溝本体1と、この電線共同溝本体1の上部に配置する地上機器Pを支持する蓋体10とから成る。電線共同溝本体1の上部開口位置で形成した左右の支持縁7と、支持縁7に沿って地上機器Pを位置決め調整したときの各種ケーブルCを挿通させるケーブル挿通部42と、電線共同溝本体1の上部開口を閉塞する蓋体10に形成した位置決め調整部6と、地上機器Pを支持する機器支持縁を備え、位置決め調整部6に位置決め固定する機器支持蓋20とを形成する。機器支持蓋20は、支持縁7上で位置決め調整する支持枠部と、地上機器Pを載置させる機器支持縁と、位置決め調整方向に沿って位置決め後に支持縁7にネジ止め固定するようにして成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線共同溝に関連して地上に据え付ける変圧器、開閉器等の地上機器を歩道、特に狭幅員歩道上に設置するとき、電線共同溝本体の左右の支持縁による地上機器の支持及び電線共同溝本体に対するケーブル挿通部の形成と共に、それらの地上機器を車道側にずらせ、例えば縁石に近づけて配置できるように蓋部材の一部が位置決め調整機能を備えている地上機器の設置位置が調整可能な電線共同溝装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、地下に構築される電線共同溝に関連して地上に各種の地上機器が設置されるとき、これらの地上機器は電線共同溝における地上面の開口部で施蓋される蓋上に据え付けられる。例えば特許文献1において開示されている地上機器の受枠に支持されるものとしたり、特許文献2において開示されている通行者向けのベンチを模した付加設備のものとしたり、特許文献3において開示されている上下昇降出没式のボックス装置のものとしたりしている。
【0003】
すなわち、特許文献1における開閉器塔や変圧器塔等の地上機器の受枠及びこの受枠におけるケーブル配線用のアダプタは、共同溝に載せた受枠本体の開口に被せて固定した取付け蓋に、地上機器の底面に含まれる領域に対する部分を開放した開口を設け、この開口にケーブル拘束のためのアダプタを交換可能に備えるものである。特許文献2における地中配線の地上機器装置は、歩道に設置される通行者向け付加設備(ベンチ)が見掛け上は付加設備の構造体の一部として構成される収納箱体に地中配線用の地上機器を収設したものである。特許文献3における可動形作業用ボックス装置は、上面閉鎖の地中埋設される収容ボックス内に、機器部を搭載した基盤を地上側に出入り可能に設け、地上側に設置の入力部を介した人力操作で昇降移動できるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−126941号公報
【特許文献2】特開2000−188818号公報
【特許文献3】特開2006−6020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、地上機器自体は交通往来上の制約から歩道上に配置されるのが一般的であり、上述した従来から提案されている地上機器を設置するための諸装置・機構においても、歩道に設けた共同溝自体の蓋上に地上機器を支持している。このように地上機器を歩道上に設置するとき、車道等の道路のカーブや障害物・埋設物等で車道側に寄らずに歩車道境界から離れた歩道中央側にずれてしまうことがある。また、これらは道路が直線の場合、曲線の場合でも異なり、曲線の場合の内回り部分に設置されるとき、あるいは車道側に例えば水道管その他のいわゆるライフライン設備が埋設されるとき等では、歩道中央側にずれてしまうのである。そうすると、歩道が狭くなってしまうから、特に歩道幅員が狭い場所すなわち狭幅員歩道では、有効な歩道幅を確保するために地上機器は可能な限り車道側に寄せるようにする必要がある。
【0006】
ところが、このように地上機器を車道側に寄せるには、上述した従来の諸装置・機構では、共同溝自体の直上で地上機器を支持するのみであり、また地上機器自体を目立たなくしても、必要な歩道幅は確保できず、更に共同構内の機器点検作業の効率性を考慮しても、支持した地上機器がその占有面積によって歩道を実質的に狭くしていることに変わりはない。一方、近時は無電柱化推進計画が進められており、これには道路の歩道有効幅員が2.0m以上であることの規定があることを鑑みると、この規定には対応できないものとなっている。
【0007】
そこで本発明は叙上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、地中に埋設される電線共同溝における開口部の地上面で支持されて歩道上に配置される変圧器、開閉器等の地上機器を、例えば道路のカーブ、障害物・埋設物等があっても、また狭幅員歩道にあっても、電線共同溝の左右の支持縁による地上機器の支持及び電線共同溝本体に対するケーブル挿通部の形成と共に、車道側に寄せるようにずらして、例えば縁石に近づけて位置決め設置でき、その結果、歩道を広くして使用でき、歩行の障害にならないようにした地上機器の設置位置が調整可能な電線共同溝装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、本発明にあっては、歩道域W内に埋設される電線共同溝本体1と、この電線共同溝本体1の上部に配置する地上機器Pを支持する蓋体10とから成り、電線共同溝本体1の上部開口位置で地上機器Pを支持する左右の支持縁7と、支持する地上機器Pの少なくとも一部を電線共同溝本体1上から外方に配置したときの各種ケーブルCを挿通させるよう電線共同溝本体1に形成したケーブル挿通部42と、電線共同溝本体1の上部開口を閉塞する蓋体10の一部に形成した位置決め調整部6と、地上機器Pを支持する機器支持縁22を備えていて、位置決め調整部6に位置決め調整自在にして固定される機器支持蓋20とから成ることを特徴とする。
電線共同溝本体1は、位置決め調整部6における機器支持蓋20の位置決め調整側の側壁1Aにケーブル挿通部42を形成してあり、より具体的には、ケーブル挿通部42は、側壁1Aを肉薄に形成するか、側壁1Aを開口部に至るに伴ない次第に肉薄にして傾斜面状とするか、側壁1Aの一部を切除して電線共同溝本体1外側に妻壁材40を配装するか、延長ボックス41を連結するかして成る。
位置決め調整部6は、歩道域Wにおける車道Tとの境界側の電線共同溝本体1の上部開口に配置形成することができ、また、機器支持蓋20の地上機器P設置側に沿う側縁に、位置決め調整部6内方に張り出すことで機器支持蓋20を支持する左右の支持縁7を有し、立脚状の側縁に複数の調整位置決め孔8を位置決め調整方向に沿って開穿配列して構成することができる。
機器支持蓋20は、支持すべき地上機器Pの底部における外形に対応して、これを囲繞し、位置決め調整部6における支持縁7上で位置決め調整する支持枠部21と、地上機器Pを載置させるよう支持枠部21の内側面に張り出し状に形成した機器支持縁22と、支持枠部21においての位置決め調整方向に沿って複数の位置決め調整孔24を開穿配列して構成することができる。
調整位置決め孔8と位置決め調整孔24とは、ナット26止めされる取付ボルト25が挿通されるに足る直径を有し、少なくともいずれか一方は円孔状に開穿配列され、いずれか他方は位置決め調整方向に沿う長孔状にして開穿されていることで構成することができる。
更には、機器支持蓋20を位置決め調整したときの空隙部分を閉塞するスペーサー30を備えることができ、このスペーサー30は、所定間隔を隔てている前後壁31と、この前後壁31端面相互で架装されて端面開口を閉塞し、位置決め調整部6の立脚側縁に当接する左右側壁32とから平面で長矩形状を呈し、内部には、充填されるモルタル材等を支持する支持底板33を備えることで構成することができる。
また、同様に、隙間閉塞板35を備えることもでき、この隙間閉塞板35は、位置決め調整部6裏面あるいは機器支持蓋20裏面に、機器支持蓋20の位置決め調整方向に沿って出没するように支持固定されるものとなっている。
【0009】
以上のように構成された本発明に係る地上機器の設置位置が調整可能な電線共同溝装置にあって、歩道域Wに埋設される電線共同溝本体1の上部開口に、電線共同溝本体1内の各種ケーブルCに関連して設置される地上機器Pを、電線共同溝本体1に形成の支持縁7及びケーブル挿通部42によって、上部開口面で位置決め調整可能な機器支持蓋20に支持できるのであり、機器支持蓋20による移動位置決め調整、更には移動調整後で設置支持される地上機器P内との各種ケーブルCの挿通空間の確保等で地上機器Pを例えば車道T側の縁石Bに近接させて位置決め固定させる。
また、電線共同溝本体1のケーブル挿通部42は、地上機器Pが車道T側に位置決め調整されたときの電線共同溝本体1と地上機器Pとの間での各種ケーブルCの挿通案内を円滑、確実にさせる。そして、左右の支持縁7による地上機器Pの荷重を十分に支持した状態で地上機器Pの位置決め調整でき、その位置決め調整されるときの電線共同溝本体1外への配置のはみ出し長さ・幅等に対応して、地上機器Pの支持側の側壁1Aを肉薄にするか、傾斜面状とするか、切除して妻壁材40を配装するか、延長ボックス41を連結するかの予めの選択を可能にする。しかも、このように電線共同溝本体1外にはみ出すようになる地上機器Pの荷重は、位置決め調整部6、機器支持蓋20それぞれにおける左右部分で支持されており、地上機器Pを位置決め調整するときの位置決め方向の前後に部材がないことで、その位置を自在に調整設定させる。
機器支持蓋20を支持する位置決め調整部6は、その支持縁7上で機器支持蓋20を位置決め移動調整させて所定位置で据え付けさせるものとし、その位置決め部位で合致する調整位置決め孔8と位置決め調整孔24とに挿通させる取付ボルト25をナット26止めすることで固定させる。このときの調整位置決め孔8、位置決め調整孔24の何れかは長孔状であることで、対応合致を円滑にさせる。
スペーサー30、隙間閉塞板35は、位置決め調整後で生じ得る空隙部分を閉塞し、モルタル材等の充填で歩道面と同様な体裁のものとして形成させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は以上説明したように構成されているため、歩道域W内に埋設される電線共同溝本体1上で所定の地上機器Pが据え付けられ、その据え付け位置が車道T境界から離れることで歩道側が狭くなる場合、あるいは狭幅員歩道である場合等で、電線共同溝本体1の左右の支持縁7による地上機器Pの支持及び電線共同溝本体1に対するケーブル挿通部42の形成と共に、地上機器Pを車道T側の縁石Bに近接するように寄せて配置でき、所定の歩道幅員を確保し、歩道側を広くすることができる。そのため、道路がカーブしている場合や障害物・埋設物等で電線共同溝本体1を車道から離れて埋設した場合でも、その埋設位置にかかわらず、電線共同溝本体1上に据え付ける地上機器Pを車道T側に寄せて、例えば縁石Bに近づけて設置することができる。
【0011】
すなわちこれは、本発明において、歩道域W内に埋設される電線共同溝本体1の上部に蓋体10によって地上機器Pを配置するとき、地上機器Pの荷重を支持する左右の支持縁7と、各種ケーブルCを挿通させるよう電線共同溝本体1に形成したケーブル挿通部42と、電線共同溝本体1の上部開口を閉塞する蓋体10の一部に形成した位置決め調整部6と、地上機器Pを左右側部で支持する機器支持縁22を備えていて、位置決め調整部6に位置決め調整自在にして固定される機器支持蓋20とから成るものとすることで、地上機器Pを電線共同溝本体1外にはみ出すように位置決め調整可能で、また、はみ出してもその荷重等を十分に支持可能にしたからである。そのため、電線共同溝本体1への支持縁7による地上機器Pの支持、ケーブル挿通部42を経ての地上機器Pとの各種ケーブルCの挿通支持、地上機器Pの位置決め調整による車道T側にずらした配置、位置決め調整後の固定支持を可能にし、しかもこれらは現場対応での調整後の位置決め等をも可能にしている。
【0012】
また、電線共同溝本体1の上部開口位置で地上機器Pを支持する左右の支持縁7を設けてあるから、電線共同溝本体1上で、この支持縁7に沿った地上機器Pの移動調整を可能にする。しかも、その移動側で地上機器Pの荷重に影響がない側壁1Aにケーブル挿通部42を形成できることで、移動量の大小にかかわらず、ケーブル挿通部42を経ての地上機器Pとの各種ケーブルCの挿通支持を円滑にでき、その結果、地上機器Pの位置決め調整による車道T側にずらした配置、位置決め調整後の固定支持を可能にする。
【0013】
このように形成した電線共同溝本体1のケーブル挿通部42は、位置決め調整部6によって機器支持蓋20を所定の移動量で車道T側に移動設置しても、地中に埋設固定される電線共同溝本体1と、この電線共同溝1上で移動調整した位置決め後の機器支持蓋20に設置支持される地上機器Pとの間に挿通させる各種テーブルCは円滑、確実に引入れできる。しかも、そのはみ出し間隔が小さい場合には電線共同溝本体1の側壁1Aを肉薄に形成したり、傾斜面状とすることで、大きい場合には側壁1Aの一部を切除して妻壁材40を配装するか、延長ボックス41を連結するかすることで対応できる。そのため、電線共同溝本体1の直上に地上機器Pを載置する場合に限らず、カーブした車道Tの内側に設置する場合、更には車道T側の歩道域Wに各種のいわゆるライフライン設備等が埋設されていて、これらを回避するように、電線共同溝本体1外にはみ出すように設置する場合等でも、これらの様々な事情に対応できる。
【0014】
位置決め調整部6は、その左右の支持縁7によって機器支持蓋20を位置決め調整させて支持できる。そして、立脚状の側縁に開穿配列した調整位置決め孔8に対して、位置決め移動調整後の機器支持蓋20における支持枠部21に開穿配列した位置決め調整孔24が合致した位置で取付ボルト25、ナット26にて取り付けできるから、機器支持蓋20は位置決め調整部6上の所定位置で確実に支持固定でき、振動その他によって離反、解体されることもない。
【0015】
調整位置決め孔8、位置決め調整孔24による機器支持蓋20の移動位置決め固定に際し、いずれか一方は長孔状であるから、適切な地上機器P位置とさせるために移動すべき機器支持蓋20の位置決め調整長さが種々に異なることになっても適確に合致でき、取付ボルト25、ナット26によって確実に支持固定できる。
【0016】
機器支持蓋20を移動位置決め調整したとき、特に電線共同溝本体1の外方に大きくはみ出すことがあっても、電線共同溝本体1の上部開口で生じる空隙部分を閉塞するスペーサー30、隙間閉塞板35を備えているから、位置決め調整部6上で機器支持蓋20位置を位置決め調整したとき、これが相当な長さの程度で車道T側に寄せられることで機器支持蓋20後方に空隙部分が生じても、スペーサー30、隙間閉塞板35によってそれを閉塞でき、所定のモルタル材等の充填で、歩道面と同様な体裁とすることができ、何らの違和感も生じさせない。
【0017】
尚、上記の課題を解決するための手段、発明の効果の項それぞれにおいて付記した符号は、図面中に記載した構成各部を示す部分との参照を容易にするために付した。本発明は、これらの記載、図面中の符号等によって示された構造・形状等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を実施するための最良の形態を示す地上機器の設置位置を変更調整したときの断面図で、その(a)は例えば0〜100mmの範囲で変更した場合、(b)は例えば100〜200mmの範囲で変更した場合、(c)は例えば200〜300mmの範囲で変更した場合である。
【図2】同じく歩道上において配置位置を変更調整する場合の図1中における(a),(b),(c)に対応した地上機器のそれぞれの位置を示す概略平面図である。
【図3】同じく蓋体部分の分解斜視図である。
【図4】同じく図3におけるX−X線に沿う断面図である。
【図5】同じく図3におけるY−Y線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下図面を参照して本発明を実施するための最良の一形態を説明すると、図において示される符号1は地中に埋設されるボックス状の電線共同溝本体であり、この電線共同溝本体1は、例えば歩道域Wにおける車道Tとの境界である縁石B側に寄せた位置に設置され、その上部開口は地上面に位置していて、例えば歩道面と同様な体裁としてある表面を備えた蓋体10によって施蓋されている(図1、図2参照)。
【0020】
蓋体10は、電線共同溝本体1の上部開口を閉塞すると共に、その上面の所定位置に、地中配線の各種ケーブルCに関連して据え付けられる変圧器、開閉器等の地上機器Pを支持している。すなわち、蓋体10自体は、電線共同溝本体1の上部開口に設けられた蓋受枠体2によって支持され、例えば図示のように、電線共同溝本体1内自体の点検、保守等のために開閉されるよう、施錠可能にして着脱される固定蓋11と、地上機器Pを左右の支持縁7によって支持固定させて、電線共同溝本体1における上部開口面で支持位置が位置決め調整される機器支持蓋20とによって、形成されている。
【0021】
支持縁7自体は、電線共同溝本体1の上部開口縁に直接的に形成することも、機器支持蓋20を支持する後述の位置決め調整部6における左右縁部位に形成されることもあり、いずれにしても、地上機器Pを位置決めさせるときの変更調整が支持縁7に沿って可能なように位置決め調整手段9によって設けられる。そして、その設置位置の変更は電線共同溝本体1が埋設された歩道域W内の位置に比し、多くは車道T側に寄せ、その縁石Bに近接させた位置とされ、地上機器Pの一部でも電線共同溝本体1の外方にはみ出している。それに伴い、地上機器Pの荷重を支持する左右の支持縁7には影響がない、地上機器Pが配置される支持側の側壁1Aには、電線共同溝本体1内と地上機器P内とで各種ケーブルCを通線させる挿通区域であるケーブル挿通部42を形成してある。このケーブル挿通部42自体は、機器支持蓋20の位置決め調整によって予定される位置決め調整変更後の長さ・幅に相当する分に対応した種々なタイプのものとして形成された電線共同溝本体1が用意される。
【0022】
また、地上機器Pが位置決め調整されて所定位置に固定されるとき、地上機器P自体はその一部でも機器支持蓋20によって電線共同溝本体1の外方に位置することになる。こうした場合に、機器支持蓋20上に据え付けられる地上機器P内と、電線共同溝本体1内との間で通線される各種ケーブルCの円滑配線、更には機器支持蓋20の支持安定性等を図るために、電線共同溝本体1には、地上機器Pを移動させた側の電線共同溝本体1の側壁1Aにケーブル挿通部42を形成してある。このケーブル挿通部42は、側壁1Aを内側部分あるいは外側部分で切除等することで肉薄状に形成するか、側壁1Aを開口部に至るに伴ない次第に肉薄にして内側面を傾斜面状とするか(図1(a)参照)、側壁1Aの一部を切除して電線共同溝本体1外側に妻壁材40を例えばアンカーボルト等を介して固定配装するか(図1(b)参照)、延長ボックス41を一体的に連結するか(図1(c)参照)して成る。尚、場合によっては、側壁1Aを切除しないときでも、側壁1A外側面に重ねるようにして妻壁材40を配装することができる。
【0023】
このような種々のタイプの電線共同溝本体1の採用は、図2中の(a),(b),(c)に示すように、歩道域Wにおける幅員の相違、直線状であるか、曲線状であるか、地下埋設物等の有無その他の現場状況によって選択される。いずれにしても、機器支持蓋20の位置決め調整移動量、電線共同溝本体1のタイプの選択、その組合せによって、地上機器Pは縁石Bに可能な限り近づけられて設置されるものとしてある。
【0024】
また、図示例にあっては、車道Tに沿って長手方向が合致されて歩道脇に配置された直方体ボックス状の電線共同溝本体1における上部開口の一半部側では固定蓋11によって施蓋され、他半部側では、その歩道側半分が同様に固定蓋11によって施蓋され、車道側半分が機器支持蓋20によって施蓋されることで地上機器Pを支持する部位となっている。また、蓋受枠体2は、これに対応して一半部側の固定蓋11を支持載置させる固定蓋支持枠部3と、他半部側の固定蓋11、機器支持蓋20を支持載置させる機器支持蓋支持枠部4とに分割されていて、これらの分割部分は、場合によれば相互にボルト、ナットによって締結一体化されるものとなっている。このような分割、結合形態を採用することで、地上機器Pの配置位置を位置決め調整させるための機器支持蓋20の使用の要否を現場において選択し得るようにしている。尚、固定蓋11、機器支持蓋20それぞれは、固定蓋支持枠部3、機器支持蓋支持枠部4それぞれにおいて、それらの内側に形成された断面でほぼL字状の支持縁7上に載置されることで支持されるものとなっている。
【0025】
図3乃至図5に示すように、位置決め調整手段9において、機器支持蓋支持枠部4は、前記蓋受枠体2上にネジ止め等によって固定され、固定蓋11を支持固定する蓋固定部5と、機器支持蓋20を位置決め調整して支持固定する位置決め調整部6とを有する。位置決め調整部6は、機器支持蓋20の位置決め調整方向に沿う側縁に、位置決め調整部6内方に張り出すことで機器支持蓋20を支持する左右の支持縁7を有し、立枠状の側縁に複数の調整位置決め孔8を位置決め調整方向に沿って開穿配列して成り、歩道域Wにおける車道Tとの境界側に位置させて電線共同溝本体1の上部開口に配置形成してある。また、位置決め調整部6は、機器支持蓋20の移動位置決め調整を円滑にするため、位置決め調整方向の前方にはこれを阻害する何らかの部材等は設けられておらず、機器支持蓋20の左右両縁のみで支持縁7上に位置決め固定できるようにしてある。
【0026】
機器支持蓋20は、支持すべき地上機器Pの底部における外形に対応して、これを囲繞し、位置決め調整部6における支持縁7上で位置決め調整する立枠状の支持枠部21と、地上機器Pを載置させるよう支持枠部21の例えば半ば高さ位置の内側面に張り出し状に形成した機器支持縁22と、この機器支持縁22を下方から支持している例えば三角形状の梁片23とを備え、支持枠部21においての位置決め調整方向に沿って複数の位置決め調整孔24を開穿配列して成る。
【0027】
位置決め調整部6における調整位置決め孔8と、機器支持蓋20における位置決め調整孔24とは、機器支持蓋20が位置決め調整部6に載置されたときに互いに合致する高さ位置としてあると共に、機器支持蓋20の位置決め移動調整によっても、いずれかの位置の位置決め調整孔24と位置決め調整部6とが合致するようにしてある。また、調整位置決め孔8と位置決め調整孔24とは、ナット26止めされる取付ボルト25が挿通されるに足る直径を有し、例えばいずれか一方は例えば40mmの等間隔で開穿配列され、いずれか他方は位置決め調整方向に沿う長孔状にして開穿されている。図示にあっては、調整位置決め孔8が等間隔で開穿された円孔状に形成され、位置決め調整孔24が2個の長孔状に形成されているも、長孔と円孔との組合せは適宜に設定されるのは勿論である。
【0028】
図中符号15は、機器支持蓋支持枠部4における蓋固定部5と位置決め調整部6とを区画している二重の区画壁であり、区画壁15相互間には、歩道面と同様な体裁となし得るよう充填されるモルタル材等を支持する支持底片16を配装してある。
【0029】
また、位置決め調整部6上で機器支持蓋20の支持位置が位置決め移動調整されるとき、機器支持蓋20が前方位置に設定される等で区画壁15と機器支持蓋20との間が空隙となる場合に、その空隙部分を閉塞するスペーサー30が用意されている。このスペーサー30は、機器支持蓋20外側面、区画壁15外側面にそれぞれ当接されるよう所定間隔を隔てている前後壁31と、この前後壁31端面相互で架装されて端面開口を閉塞し、位置決め調整部6の立脚側縁に当接する左右側壁32とから平面で長矩形状を呈し、内部には、充填されるモルタル材等を支持する支持底板33を備える。このスペーサー30は、前後壁31間隔を一定の例えば100mmの幅員としてあって、空隙幅員に対応して所定数で区画壁15と機器支持蓋20との間に介装される。もとより、スペーサー30の前後壁31の間隔幅員はこれに限定されるものではない。
【0030】
更には、予め用意されたスペーサー30によっては空隙部分が閉塞されない場合には、空隙部分を閉塞するプレート状の隙間閉塞板35が用意されている。この隙間閉塞板35は、位置決め調整部6すなわち機器支持蓋支持枠部4における蓋固定部5裏面、あるいは機器支持蓋20裏面に、位置決め調整部6上で機器支持蓋20の位置決め調整方向に沿って出没、スライドするように支持固定され、必要あれば、蓋固定部5、機器支持蓋20相互間の裏面で架装される。尚、前記スペーサー30はこの隙間閉塞板35上で支持されるようになっていてもよい。
【0031】
尚、図中符号Gは所定高さを備えた支柱状のガードポストであり、例えば地上機器Pの両脇に配置されることで、車道Tから逸脱進入することがある各種車両による衝突等から地上機器Pを保護するようにしている。
【0032】
次にこれの使用の一例を説明すると、図2に示すように歩道域W内に埋設された電線共同溝本体1における地上機器Pが歩道面に配置されるとき、それが例えば道路のカーブ位置にある場合に電線共同溝本体1の埋設位置は歩道の内側に位置決めされ、その結果、地上機器Pも歩道の内側寄りに配置されることになる。こうしたとき、地上機器Pを支持する電線共同溝本体1の上部開口における機器支持蓋20を歩道の外側である車道T側に寄せるように位置決め移動調整することで、歩道側を広くする。
【0033】
すなわち、電線共同溝本体1の蓋受枠体2に、上部開口の一半部側では固定蓋支持枠部3によって固定蓋11を配置固定し、他半部側では機器支持蓋支持枠部4のその歩道側に固定蓋11を、車道側に機器支持蓋20を配置する。そして、車道側へ寄せるのに必要とする間隔で、例えば位置決め調整範囲が0〜100乃至200mmであれば側壁1Aを肉薄に形成したり、側壁1Aの一部を傾斜面としたり(図1(a)、図2中の(a)参照)、妻壁材40を電線共同溝本体1外側面に設けたり、(図1(b)、図2中の(b)参照)0〜300mmであれば電線共同溝本体1の外側壁の一部を除去して延長ボックス41を取り付ける(図1(c)、図2中の(c)参照)等によって、ケーブル挿通部42を形成する。
【0034】
尚、ケーブル挿通部42の構成が異なる電線共同溝本体1の各タイプのいずれかが、設置現場における地上機器Pの設置位置に対応するケーブル挿通部42を備えたものとして予じめ選択されており、工場サイドで成型等されることで現場に搬入される。
【0035】
一方、位置決め調整手段9において、機器支持蓋20は、機器支持蓋支持枠部4の位置決め調整部6上の左右で位置決め移動調整し、所定位置の位置決め調整孔24と調整位置決め孔8と合致させて取付ボルト25、ナット26にて位置決め調整部6に固定する。こうした左右での位置決め調整による固定支持でも、地上機器Pの荷重は電線共同溝本体1上で十分に支持可能である。そして、位置決め調整間隔に対応して所定数のスペーサー30を区画壁15と機器支持蓋20との間に介装し、スペーサー30、隙間閉塞板35上にモルタル材等を充填し、歩道面と同様な体裁とさせる。
【0036】
このように、地上機器Pを設置すべき位置に対応して移動調整されることで位置決めされた機器支持蓋20上に地上機器Pを据え付け、電線共同溝本体1内との間ではケーブル挿通部42を利用して所定の通線工事を施工する。こうして電線共同溝本体1の上部開口で地上機器Pを支持するにつき、電線共同溝本体1上の左右で地上機器Pの荷重を支持できることで、地上機器Pの設置位置を前後に変更調整して位置決めでき、また各種ケーブルCの挿通にも何らの障害も生じないのである。
【符号の説明】
【0037】
B…縁石 C…各種ケーブル
G…ガードポスト P…地上機器
T…車道 W…歩道域
1…電線共同溝本体 1A…側壁
2…蓋受枠体 3…固定蓋支持枠部
4…機器支持蓋支持枠部 5…蓋固定部
6…位置決め調整部 7…支持縁
8…調整位置決め孔 9…位置決め調整手段
10…蓋体 11…固定蓋
15…区画壁 16…支持底片
20…機器支持蓋 21…支持枠部
22…機器支持縁 23…梁片
24…位置決め調整孔 25…取付ボルト
26…ナット 30…スペーサー
31…前後壁 32…左右側壁
33…支持底板 35…隙間閉塞板
40…妻壁材 41延長ボックス
42…ケーブル挿通部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩道域内に埋設される電線共同溝本体と、この電線共同溝本体の上部に配置する地上機器を支持する蓋体とから成り、電線共同溝本体の上部開口位置で地上機器を支持する左右の支持縁と、支持する地上機器の少なくとも一部を電線共同溝本体上から外方に配置したときの各種ケーブルを挿通させるよう電線共同溝本体に形成したケーブル挿通部と、電線共同溝本体の上部開口を閉塞する蓋体の一部に形成した位置決め調整部と、地上機器を支持する機器支持縁を備えていて、位置決め調整部に配置位置を位置決め調整自在にして固定される機器支持蓋とから成ることを特徴とする地上機器の設置位置が調整可能な電線共同溝装置。
【請求項2】
電線共同溝本体は、位置決め調整部における機器支持蓋の地上機器の支持側の側壁にケーブル挿通部を形成してある請求項1に記載の地上機器の設置位置が調整可能な電線共同溝装置。
【請求項3】
ケーブル挿通部は、側壁を肉薄に形成するか、側壁を開口部に至るに伴ない次第に肉薄にして傾斜面状とするか、側壁の一部を切除して電線共同溝本体外側に妻壁材を配装するか、延長ボックスを連結するかして成る請求項1または2に記載の地上機器の設置位置が調整可能な電線共同溝装置。
【請求項4】
位置決め調整部は、歩道域における車道との境界側の電線共同溝本体の上部開口に配置形成してある請求項1乃至3のいずれかに記載の地上機器の設置位置が調整可能な電線共同溝装置。
【請求項5】
位置決め調整部は、機器支持蓋の地上機器設置側に沿う側縁に、位置決め調整部内方に張り出すことで機器支持蓋を支持する左右の支持縁を有し、立脚状の側縁に複数の調整位置決め孔を位置決め調整方向に沿って開穿配列して成る請求項1乃至4のいずれかに記載の地上機器の設置位置が調整可能な電線共同溝装置。
【請求項6】
機器支持蓋は、支持すべき地上機器の底部における外形に対応して、これを囲繞し、位置決め調整部における支持縁上で位置決め調整する支持枠部と、地上機器を載置させるよう支持枠部の内側面に張り出し状に形成した機器支持縁と、支持枠部においての位置決め調整方向に沿って複数の位置決め調整孔を開穿配列して成る請求項1乃至5のいずれかに記載の地上機器の設置位置が調整可能な電線共同溝装置。
【請求項7】
調整位置決め孔と位置決め調整孔とは、ナット止めされる取付ボルトが挿通されるに足る直径を有し、少なくともいずれか一方は円孔状に開穿配列され、いずれか他方は位置決め調整方向に沿う長孔状にして開穿されて成る請求項5または6に記載の地上機器の設置位置が調整可能な電線共同溝装置。
【請求項8】
機器支持蓋を位置決め調整したときの空隙部分を閉塞するスペーサーを備えている請求項1乃至7のいずれかに記載の地上機器の設置位置が調整可能な電線共同溝装置。
【請求項9】
スペーサーは、所定間隔を隔てている前後壁と、この前後壁端面相互で架装されて端面開口を閉塞し、位置決め調整部の立脚側縁に当接する左右側壁とから平面で長矩形状を呈し、内部には、充填されるモルタル材等を支持する支持底板を備えている請求項8に記載の地上機器の設置位置が調整可能な電線共同溝装置。
【請求項10】
機器支持蓋を位置決め調整したときの空隙部分を閉塞する隙間閉塞板を備えている請求項1乃至9のいずれかに記載の地上機器の設置位置が調整可能な電線共同溝装置。
【請求項11】
隙間閉塞板は、位置決め調整部裏面あるいは機器支持蓋裏面に、機器支持蓋の位置決め調整方向に沿って出没するように支持固定されるものとなっている請求項10に記載の地上機器の設置位置が調整可能な電線共同溝装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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