説明

地上装置および列車制御装置

【課題】 電源波送信用アンテナや電源部が不要であり、装置の小型化、軽量化を図ることのできる地上装置を提供する。
【解決手段】 列車1の走行するレール3に沿って設けられ列車1の車上子5と電磁結合して信号を送受信する地上側送受信アンテナ9と、所定の情報波信号を出力する情報部10と、情報部10から出力される情報波信号を変調、増幅して地上側送受信アンテナ9に送る変調・増幅部11と、レール3の振動により電力を発生し変調・増幅部11に電力を供給する圧電素子13と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地上装置および列車制御装置に係り、特に、電力波送信用アンテナや電源部が不要であり、装置の小型化、軽量化を図ることを可能とした地上装置および列車制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ATSなどの列車制御装置においては、列車に搭載された車上子と、軌道に沿って配置された地上子とを電磁結合させることにより、車上側から地上側に信号を送信し、地上側において所定の制御を行うとともに、地上側から車上側に信号を送信し車上側で所定の制御を行うことが行われている。
【0003】
このような列車制御装置として、ATSシステムと称されるものと、ATS−Pシステムと称される2つのタイプが知られている。ATSシステムは、停止を現示する信号機に列車が接近したときに、乗務員に注意を促すとともに、一定時間経過しても乗務員のブレーキ手配がなかったときは、自動的にブレーキを作動させて車両を安全に停止させるシステムである。このATSシステムとしては、車上子が地上子と結合していないときと、結合しているときとで、地上装置の発振周波数に差を持たせるいわゆる変周式ATSシステムがよく知られている。一方、ATS−Pシステムは、ATSシステムを更に進化させたもので、トランスポンダ式の地上子からのデジタル伝送情報によって車上側で車上速度パターンを発生させ、この速度パターンと実際の車両速度を照査しながら、車両を制御するシステムである。
【0004】
このようなATS−Pシステムを用いた技術として、従来から、電力波送信用アンテナから送信された電力波を受信する電力波受信用アンテナと、車上情報波送受信用アンテナとの間で、情報波送受信を行う地上情報波送受信用アンテナとを備え、電力波受信用アンテナで受信された電力波から、電源部により電源を生成し、電源部から供給される電源によって動作する送受信部により、地上情報波送受信用アンテナに情報波送信信号を供給し、地上情報波送受信用アンテナから情報波受信信号を供給し、さらに、信号処理部および送受信部により、車上情報波送受信用アンテナと、地上情報波送受信用アンテナとの情報波送受信により、電力波送信用アンテナによる電力波送信タイミングを決定するようにした技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−094174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1に記載の発明によれば、電力波送信用アンテナから送信される電力波を用いて電源部により電源を生成するものであるため、地上装置に電源を供給する必要がなく、地上装置を無電源で動作させることが可能であるが、無電源で動作させるために、電力波送信用アンテナおよび電源部を設ける必要があるため、地上装置が大型化してしまうという問題を有している。地上装置は、レールの間に設置するのが一般的であるため、建築限界や車両限界、設置の容易性などを考慮した場合、地上装置は、より小型化、軽量化された方が好ましい。
【0007】
本発明は前記した点に鑑みてなされたものであり、電力波送信用アンテナや電源部が不要であり、装置の小型化、軽量化を図ることのできる地上装置および列車制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記目的を達成するために、請求項1の発明に係る地上装置は、列車の走行するレールに沿って設けられ前記列車の車上子と電磁結合して信号を送受信する地上側送受信アンテナと、
所定の情報波信号を出力する情報部と、
前記情報部から出力される情報波信号を変調、増幅して前記地上側送受信アンテナに送る変調・増幅部と、
前記レールの振動により電力を発生し前記変調・増幅部に電力を供給する圧電素子と、
を備えていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記圧電素子により発生した電力を安定化させて前記変調・増幅部に供給する安定化回路をさらに備えていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2において、前記安定化回路は、前記圧電素子により発生した電力を一時的に蓄電するための蓄電部をさらに備えていることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明に係る列車制御装置は、前記請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の地上装置と、
前記地上側送受信アンテナと電磁結合して情報波信号の送受信を行う車上側送受信アンテナと、前記地上側送受信アンテナから送られる情報波信号に基づいて列車制御信号を生成するとともに、前記地上装置に送信するための情報波信号を生成する信号処理部とを備えた車上装置と、
を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、レールを走行する列車の振動により、発電を行う圧電素子を設け、この圧電素子により発電された電力により変調・増幅部を動作させるようにしているので、地上装置に、電力波信号を受信するための電力波信号アンテナおよび電源部が不要となり、地上装置の小型化、軽量化を図ることができる。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、圧電素子により発生した電力を安定化させて変調・増幅部に供給する安定化回路を設けるようにしているので、圧電装置により発電された電力を安定した状態で、変調・増幅部に供給することができる。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、安定化回路に圧電素子により発生した電力を一時的に蓄電するための蓄電部を設けるようにしているので、変調・増幅部に、より安定して電力を供給することができる。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、レールを走行する列車の振動により、発電を行う圧電素子を設け、この圧電素子により発電された電力により変調・増幅部を動作させるようにしているので、車上装置に電力波信号を出力するための装置が不要となるとともに、地上装置に、電力波信号を受信するための電力波信号アンテナおよび電源部が不要となり、車上装置の小型化、軽量化、省電力化を図ることができ、地上装置の小型化、軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る地上装置を適用した列車制御装置の実施形態を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、本発明に係る地上装置を用いた車両制御装置の実施形態を示す概略構成図であり、この車両制御装置は、列車1に搭載される車上装置2と、軌道を構成する2本のレール3の間に設置される地上装置4とを備えている。
【0019】
車上装置2は、トランスポンダ式の車上子5を備えている。また、車上子5は、車上側送受信アンテナ6を備えており、この車上側送受信アンテナ6は、後述する地上子とデジタル情報の送受信を行うものである。また、車上装置2は、信号処理部7を備えており、この信号処理部7は、車上側送受信アンテナ6に情報波信号を送るとともに、車上側送受信アンテナ6から供給された情報波信号を処理し、列車制御信号を生成するものである。
【0020】
また、地上装置4は、地上子8を備えており、地上子8は、車上側送受信アンテナ6と電磁結合することにより情報波信号の送受信を行うための地上側送受信アンテナ9を備えている。また、地上装置4は、情報を生成する情報部10を備えており、地上装置4は、情報部10から送られる情報波信号を変調、増幅して地上側送受信アンテナ9に送る変調・増幅部11を備えている。
【0021】
そして、車上側送受信アンテナ6は、レール3に設置された地上側送受信アンテナ9と電磁結合したときに、車上側送受信アンテナ6を介して信号処理部7から送られた情報波信号を地上側送受信アンテナ9に送信するようになっている。同時に、地上側送受信アンテナ9から送られた情報波信号を信号処理部7に送り、信号処理部7により、列車制御信号を生成するように構成されている。
【0022】
さらに、変調・増幅部11には、圧電体発電部12から電源が供給されるように構成されている。本実施形態においては、圧電体発電部12には、圧電素子13が内蔵されており、この圧電素子13は、列車1がレール3を走行する際に発生する振動により変位することにより、一定の電圧を発生することができるように構成されている。一般に、列車1が走行する際には、レール3に約100G程度の振動が発生することが確認されている。そのため、列車1が走行する際に発生する振動により、圧電素子13により電圧を発生させて、これにより、発電が行われるものである。
【0023】
また、圧電素子13には、安定化回路14が接続されており、この安定化回路14に変調・増幅部11が接続されるようになっている。そして、安定化回路14は、圧電素子13により発生した電圧を所定の電圧値に安定化させた状態で、変調・増幅部11に供給するように構成されており、変調・増幅部11は、安定化回路14から電力が供給されると、動作が開始されるように構成されている。さらに、本実施形態においては、安定化回路14には、蓄電部15が設けられており、この蓄電部15は、圧電素子13により送られる電力を一時的に蓄電するように構成されている。これにより、より安定して変調・増幅部11に電力を供給することができるものである。
【0024】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0025】
本実施形態においては、レール3上を列車1が走行していない状態では、圧電素子13による発電は行われておらず、変調・増幅部11すなわち地上装置4は停止した状態となっている。
【0026】
そして、レール3上を列車1が走行してくると、レール3が振動され、列車1が近づくにつれてその振動は大きくなってくる。レール3が振動されると、圧電素子13に振動が伝達され、この振動により圧電素子13が変位して所定の電圧が発生する。この電圧は、安定化回路14により安定化されて変調・増幅部11に供給され、変調・増幅部11が駆動される。この変調・増幅部11の駆動により、地上装置4の情報部10から送られる情報波信号を変調して増幅し、地上側送受信アンテナ9に送る。
【0027】
そして、車上側送受信アンテナ6が、地上側送受信アンテナ9と電磁結合した場合に、情報部10からの情報波信号が車上側送受信アンテナ6に送られ、車上装置2の信号処理部7により列車制御信号を生成するようになっている。一方、車上装置2の信号処理部7から送られた情報波信号を地上側送受信アンテナ9を介して地上装置4に送るようになっている。
【0028】
列車1が地上装置4から遠ざかっていくにつれて、レール3の振動が小さくなり、振動がなくなると、圧電素子13が変位しなくなり、発電が停止され、これに伴って、変調・増幅部11も停止される。
【0029】
以上述べたように、本実施形態においては、レール3を走行する列車1の振動により、発電を行う圧電素子13を設け、この圧電素子13により発電された電力により変調・増幅部11を動作させるようにしているので、車上装置2に電力波信号を出力するための装置が不要となるとともに、地上装置4に、電力波信号を受信するための電力波信号アンテナおよび電源部が不要となり、車上装置2の小型化、軽量化、省電力化を図ることができ、地上装置4の小型化、軽量化を図ることができる。
【0030】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 列車
2 車上装置
3 レール
4 地上装置
5 車上子
6 車上側送受信アンテナ
7 信号処理部
8 地上子
9 地上側送受信アンテナ
10 情報部
11 変調・増幅部
12 圧電体発電部
13 圧電素子
14 安定化回路
15 蓄電部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車の走行するレールに沿って設けられ前記列車の車上子と電磁結合して信号を送受信する地上側送受信アンテナと、
所定の情報波信号を出力する情報部と、
前記情報部から出力される情報波信号を変調、増幅して前記地上側送受信アンテナに送る変調・増幅部と、
前記レールの振動により電力を発生し前記変調・増幅部に電力を供給する圧電素子と、
を備えていることを特徴とする地上装置。
【請求項2】
前記圧電素子により発生した電力を安定化させて前記変調・増幅部に供給する安定化回路をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の地上装置。
【請求項3】
前記安定化回路は、前記圧電素子により発生した電力を一時的に蓄電するための蓄電部をさらに備えていることを特徴とする請求項2に記載の地上装置。
【請求項4】
前記請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の地上装置と、
前記地上側送受信アンテナと電磁結合して情報波信号の送受信を行う車上側送受信アンテナと、前記地上側送受信アンテナから送られる情報波信号に基づいて列車制御信号を生成するとともに、前記地上装置に送信するための情報波信号を生成する信号処理部とを備えた車上装置と、
を備えていることを特徴とする列車制御装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−171561(P2012−171561A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37666(P2011−37666)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】