説明

地上設置型変圧器装置

【課題】地上設置型変圧器装置の変圧器タンクと一次側開閉装置(LBS)との接続部に設けられるパッキンの温度が上昇して早期に劣化するのを防止する。
【解決手段】変圧器タンク6の側壁6b1に、LBSの開閉器ケース201に設けたブッシング取付け部201b2をパッキン16を介して接続し、ブッシング取付け部に取り付けた一次ブッシング端子14u〜14wを、側壁6b1に設けたブッシング導入用窓部6hを通して変圧器タンク6内に導入する。窓部6hの周辺部を覆う断熱板21を変圧器タンク6の内側に配置してパッキン16の温度上昇を抑制する。一次ブッシング端子14u〜14wの油中貫通部のLBS寄りの部分を隔離対象部14B1として、この隔離対象部を変圧器タンク内で生じる絶縁油7の対流から隔離するブッシング端子隔離部25を設け、絶縁油が一次ブッシング端子を加熱するのを抑制して、パッキン16の温度上昇を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路沿いの歩道上などに設置される地上設置型変圧器装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、都市部においては、配電線の地中化に伴い、地上設置型変圧器装置を、道路沿いの歩道上などに設置している。この種の変圧器装置は例えば、特許文献1に示されている。
【0003】
一般に、地上設置型変圧器装置は、変圧器本体を絶縁油とともに変圧器タンク内に収容して構成した変圧器を、保護用機器とともに外箱内に収容した構成を有する。保護用機器としては、地下の配電線から引込まれた高圧ケーブルと一次ブッシング端子との間に設けられる一次側開閉装置(LBS)、一次ブッシング端子と変圧器本体の一次側端子との間に挿入される高圧限流ヒューズ、及び変圧器の二次ブッシング端子と外部に引き出される複数本の配電用低圧ケーブルとの間にそれぞれ挿入される配線用遮断器等が設けられる。
【0004】
LBSは、真空バルブ等からなる三相のスイッチと該スイッチを操作する操作機構とを備えた開閉装置本体を箱形の開閉器ケース内に収容して、高圧ケーブルを三相のスイッチに接続するためのコネクタをケースの前面の下部または底部を貫通させて取り付け、三相のスイッチと変圧器の一次側との間を接続する三相の一次ブッシング端子を、開閉器ケースの背面に設けたブッシング取付部を貫通させて取り付けた構造を有する。
【0005】
LBSが取り付けられる変圧器タンクの一側壁には、開閉器ケースの背面に取り付けられた一次ブッシング端子を導入するためのブッシング導入用窓部が設けられ、この窓部の周辺部に開閉器ケースのブッシング取付部がパッキンを介して当接されて、開閉器ケースのブッシング取付部に取り付けられた三相の一次ブッシング端子の油中貫通部(開閉器ケースのブッシング取付部から外方に突出した部分)が、変圧器タンクのブッシング導入用窓部内を通して変圧器タンク内に挿入される。この状態で、変圧器タンクのブッシング導入用窓部の周辺部が、開閉器ケースのブッシング取付部にボルトにより締結されることにより、LBSが変圧器タンクに取り付けられる。一次ブッシング端子の油中貫通部は、変圧器タンク内の絶縁油中に浸漬される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−168211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の地上設置形変圧器装置においては、変圧器タンクの側壁のブッシング導入用窓部の周辺部に開閉器ケースのブッシング取付部が締結されているため、変圧器タンク内の絶縁油の熱が、変圧器タンクの側壁から開閉器ケースのブッシング取付部及びパッキンに伝達されると共に、一次ブッシング端子の油中貫通部を通して開閉器ケースのブッシング取付部に伝達される。一次ブッシング端子の油中貫通部は、変圧器タンク内を対流している熱い絶縁油に絶えず接触しているため、変圧器タンク内の絶縁油から開閉器ケースに多くの熱が伝達され、この熱伝達により開閉器ケースのブッシング取付部の温度が上昇する。
【0008】
従来の地上設置型変圧器装置においては、変圧器タンクから開閉器ケース側への熱伝達を抑制するための配慮が特になされていなかったため、開閉器ケースのブッシング取付部と変圧器タンクの側壁との間に介在しているパッキンが加熱されるのを避けられなかった。そのため、パッキンが短期間で劣化して、開閉器ケースと変圧器タンクとの接続部のシールが損なわれるおそれがあった。開閉器ケースと変圧器タンクとの接続部のシールが短期間で損なわれるおそれがあると、保守点検を行なう頻度を高くする必要があるため、メンテナンスが面倒になり、メンテナンスに要する費用が高くなるのを避けられない。開閉器ケースと変圧器タンクとの接続部のシールが短期間で損なわれるのを防ぐため、パッキンとして耐熱性が高いものを用いることが考えられるが、耐熱性が高いパッキンを用いると、コストが高くなるのを避けられない。またパッキンは常に高温に晒されるので、耐熱性が高いパッキンを用いる場合でも、信頼性を維持するためには、高い頻度で保守点検を行なうことが必要になる。
【0009】
本発明の目的は、開閉器ケースのブッシング取付け部と変圧器タンクとの接続部をシールするパッキンの温度上昇を抑えることができるようにした地上設置型変圧器装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、変圧器タンクと該変圧器タンク内に収容された変圧器本体とを有する変圧器と、高圧ケーブルが接続される高圧ケーブル接続部と変圧器本体の一次側に接続される一次ブッシング端子が取り付けられたブッシング取付け部とを有する開閉器ケース内に、高圧ケーブルと一次ブッシング端子との間を開閉するスイッチを収容してなる一次側開閉装置とを備えた地上設置型変圧器装置を対象とする。本発明が対象とする地上設置型変圧器装置においては、開閉器ケースのブッシング取付け部が変圧器タンクの一側壁に設けられたブッシング導入用窓部の周辺部にパッキンを介して突き当てられて、ブッシング導入用窓部の周辺部がブッシング取付け部に締結されることにより一次側開閉装置が変圧器に支持される。一次ブッシング端子は、ブッシング導入用窓部を通して変圧器タンク内に導入されて変圧器タンク内の絶縁油に浸漬される。
【0011】
本発明においては、変圧器タンクの一側壁の内側でブッシング導入用窓部の周辺部を覆う断熱板が、変圧器タンクの一側壁の内面に添わせた状態で配置される。また一次ブッシング端子の絶縁油中に浸漬される部分の少なくともブッシング取付け部寄りの部分を隔離対象部分として、該一次ブッシング端子の隔離対象部分を変圧器タンク内で生じる絶縁油の対流から隔離するブッシング端子隔離部を変圧器タンクに取り付ける。ここで、「隔離対象部分を変圧器タンク内で生じる絶縁油の対流から隔離する」とは、隔離対象部分が、変圧器タンク内で生じる絶縁油の対流に直接接触することがないようにすることを意味する。
【0012】
上記のように、変圧器タンクの一側壁の内側でブッシング導入用窓部の周辺部を覆う断熱板を、変圧器タンクの一側壁の内面に添わせた状態で配置しておくと、変圧器タンク内の絶縁油の熱がパッキンに伝達されるのを抑制して、パッキンの温度上昇を抑えることができる。
【0013】
また上記のように、一次ブッシング端子の隔離対象部分を変圧器タンク内で生じる絶縁油の対流から隔離するブッシング端子隔離部を変圧器タンクに取り付けて、変圧器タンク内で生じる絶縁油の対流が一次ブッシング端子の隔離対象部分に直接接触することがないようにしておくと、一次ブッシング端子の隔離対象部分(一次ブッシング端子の一次側開閉装置寄りの部分)が熱い絶縁油の流れに直接触れて加熱されるのを防ぐことができるため、一次ブッシング端子を通してブッシング取付け部に伝達される熱量を少なくして、開閉器ケースのブッシング取付け部の温度上昇を抑え、パッキンの温度上昇を抑えることができる。
【0014】
ブッシング端子隔離部は、変圧器タンクの内側に設けてもよく、外側に設けてもよい。本発明の一態様では、ブッシング端子隔離部が断熱材からなっていて、変圧器タンクの内側で一次ブッシング端子の隔離対象部分を間にして上下に相対するように設けられて基部が変圧器タンクのブッシング導入用窓部の周辺部に固定された一対の障壁部と、該一対の障壁部の先端部間を連結するように設けられた端部壁とを一体に有しており、端部壁に一次ブッシング端子を貫通させる孔が設けられている。
【0015】
ブッシング端子隔離部を上記のように構成すると、一次ブッシング端子の油中に浸漬される部分の周囲に絶縁油が流入するのを妨げることなく、一次ブッシング端子の隔離対象部分を絶縁油の対流から隔離することができるため、絶縁油からブッシング取付け部への熱伝達を抑えて、温度上昇を抑制することができる。
【0016】
本発明の他の態様では、変圧器タンクの一側壁に設けられたブッシング導入用窓部が、該変圧器タンクの一側壁から一次側開閉装置側に突出したダクト状の突出壁部を有して、該突出壁部の先端にフランジが設けられ、ブッシング導入用窓部の突出壁部の先端にパッキンを介して開閉器ケースのブッシング取付け部が当接されて、突出壁部の先端のフランジがブッシング取付け部に締結される。この場合、一次ブッシング端子は突出壁部の内側を通して変圧器タンク内に導入され、突出壁部によりブッシング端子隔離部が構成される。また断熱板は、変圧器タンクの内側からブッシング導入用窓部の周辺部を覆って該窓部を塞ぐように設けられ、該断熱板のブッシング導入用窓部を塞ぐ部分に一次ブッシング端子を貫通させるブッシング貫通孔が設けられている。一次ブッシング端子は、断熱板のブッシング貫通孔を通して前記変圧器タンク内に導入される。また断熱板には、ブッシング端子隔離部を構成する突出壁部の内側に変圧器タンク内の絶縁油が流入するのを許容する手段が設けられる。
【0017】
上記断熱板は、プレスボード、木材、樹脂、無機質系繊維材、プラスチック系繊維材及びこれらを組み合わせた複合材料からなる材料群の中から選択された材料であって、変圧器タンクよりも熱伝導性が低い材料により構成することができる。またブッシング端子隔離部を変圧器タンクの内側に設ける場合、該ブッシング端子隔離部は、プレスボード、木材、樹脂、無機質系繊維材、プラスチック系繊維材及びこれらを組み合わせた複合材料からなる材料群の中から選択された材料により構成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明においては、変圧器タンクの一側壁の内側で少なくともブッシング導入用窓部の周辺部を覆う断熱板を、変圧器タンクの一側壁の内面に添わせた状態で配置したので、変圧器タンク内の絶縁油の熱がパッキンに伝達されるのを抑えることができる。また一次ブッシング端子の隔離対象部分を内部に収容するブッシング端子隔離部を変圧器タンクに取り付けて、ブッシング端子隔離部により、変圧器タンク内で生じる絶縁油の対流が一次ブッシング端子の隔離対象部分に直接接触するのを防ぐ構造にしたので、一次ブッシング端子のブッシング取付け部寄りの部分が熱い絶縁油に直接触れて加熱されるのを防いで、ブッシング取付け部に伝達される熱量を少なくすることができ、このことと、断熱板によりパッキンへの熱伝達が抑えられていることとが相俟って、パッキンの温度上昇を抑制することができる。
【0019】
本発明によれば、上記のように、パッキンの温度上昇を抑えることができるため、パッキンとして耐熱性が高い高価なものを用いなくても、パッキンが早期に劣化して寿命に達するのを防ぐことができ、地上設置型変圧器装置のメンテナンスを容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係わる地上設置型変圧器装置の一実施形態を示した縦断面図である。
【図2】図1の実施形態で用いる一次側開閉装置の背面図である。
【図3】図1に示された地上設置型変圧器装置の一次側開閉装置と変圧器タンクとの接続部を示した拡大断面図である。
【図4】図1に示された地上設置型変圧器装置の一次ブッシング端子の変圧器タンク内への導入部付近を示した正面図である。
【図5】本発明に係わる地上設置型変圧器装置の他の実施形態の要部を示した断面図である。
【図6】地上設置型変圧器装置の電気的な構成の一例を示した単線結線図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下図面を参照して、本発明の一実施形態を詳細に説明する。図1ないし図4は本発明の第1の実施形態を示したものである。これらの図において、1は変圧器、2は変圧器1の一次側と配電線から引き込まれた三相の高圧ケーブル3uないし3wとの間を開閉する一次側開閉装置(以下LBSともいう。)、4は変圧器1と一次側開閉装置2とを収容した外箱である。図示してないが、外箱4内には、変圧器1の二次側と外部に引出される配電用低圧ケーブルとの間に挿入される配線用遮断器等の他の必要機器が更に収容され、外箱4とその内部に収容された機器とにより地上設置型変圧器装置5が構成されている。
【0022】
変圧器1は、変圧器タンク6と、変圧器タンク6内に絶縁油7とともに収容された三相変圧器本体8と、変圧器タンク6の上部に取り付けられた三相のヒューズホルダ9uないし9wと、変圧器タンク6の一つの側壁の上部に取り付けられた三相の二次ブッシング端子11uないし11w及び二次中性点端子11nとを備えている。三相のヒューズホルダ9uないし9wの内部にはそれぞれ三相の高圧限流ヒューズ12uないし12wが収容されている。
【0023】
変圧器タンク6は、長方形状の底壁部6aと、底壁部6aの奥行き方向(長辺が沿う方向、図1の左右方向)に相対する一端及び他端からそれぞれ垂直に立ち上がった側壁6b1及び6b2と、底壁部6aの幅方向(図1の紙面と直角な方向)の一端及び他端からそれぞれ垂直に立ち上がった図示しない側壁とを備えており、底壁部6aと側壁の隣接する縁部同士が溶接されることにより液密構造のタンク本体600が構成されている。このタンク本体の上端の開口部に設けられたフランジ601に天板6cがパッキンを介して載せられ、天板6cがフランジ601に締結されることにより、タンク本体600の上端開口部が閉鎖されている。変圧器タンク6の側壁6b1の上下方向の中間部よりもやや上側に寄った部分には、後記する一次開閉装置2の開閉器ケースの背面に取付けられた三相の一次ブッシング端子を導入するために用いる矩形状のブッシング導入用窓部6h(図3参照)が形成されている。
【0024】
図示の三相変圧器本体8は、巻鉄心を組み合わせて構成した3脚鉄心Iに三相のコイルCu,Cv及びCwを巻装した公知のものである。変圧器本体8は、変圧器タンク6の底壁部6aの上に固定されている。三相のコイルCuないしCwのそれぞれは、内側に巻回された二次コイルと、二次コイルの外側に巻回された一次コイルとからなっている。本発明において、変圧器の三相コイルの結線は任意であるが、本実施形態では、三相の一次コイルがデルタ結線され、二次コイルがスター結線されている。変圧器本体の二次側の三相の非中性点側の端子がそれぞれ二次ブッシング端子11uないし11wに接続され、中性点が中性点端子11nに接続されている。変圧器タンク6内には、その上端寄りのレベルまで油面7aが達するように絶縁油7が注入され、絶縁油7中に変圧器本体8が浸漬されている。
【0025】
一次側開閉装置(LBS)2は、高圧ケーブル3uないし3wと変圧器の一次側との間を開閉するスイッチを、その操作機構と共に開閉器ケース201内に収容したものである。
【0026】
開閉器ケース201は、奥行き方向(図1において左右方向)に相対する前面201a及び背面201bと、幅方向(図1の紙面と直角な方向)に相対する一対の側面201c,201d(図2参照)と、上下方向に相対する上面201e及び下面201fとを有するほぼ箱形のケースである。
【0027】
開閉器ケース201の下端の背面201b寄りの部分から下方に突出させて、中空の高圧ケーブル接続部201gが形成され、この高圧ケーブル接続部201gの前面に、三相の高圧ケーブル3uないし3wをそれぞれ接続するコネクタ13uないし13wが、横方向(図1の紙面と直角な方向)に並べた状態で取り付けられている。
【0028】
開閉器ケース201の前面201aには、前方(図1において左側)に開口した開口部が設けられていて、この開口部が、着脱可能な蓋板203により閉じられている。
【0029】
図2及び図3に示されているように、開閉器ケースの背面201bの周縁部には、変圧器タンク側に突出した周壁部201b1が形成されている。開閉器ケースの背面201bにはまた、周壁部201b1よりも内側に位置させて、肉厚に形成されたブッシング取付け部201b2が、周壁部201b1よりも変圧器タンク側に突出させた状態で形成されている。ブッシング取付け部201b2を貫通させて、3つのブッシング取付け孔201hが、横方向に並べて設けられ、これら3つのブッシング取付け孔をそれぞれ貫通させて三相の一次ブッシング端子14uないし14wが取り付けられている。
【0030】
図3に示されているように、各一次ブッシング端子は、絶縁物からなるブッシング14aと、ブッシング14aを軸線方向に貫通したブッシング導体14bとを有する周知の構造を有するもので、ブッシング導体14bの一端及び他端に、他の導体を接続するための端子部14c及び14dが設けられている。図示の例では端子部14c及び14dがそれぞれ雄ネジ部及び雌ネジ部からなっていて、雄ネジ部からなる端子部14cが、開閉器ケース201内に収容されたスイッチの一端に図示しない接続導体を介して接続され、雌ネジ部からなる端子部14dが、変圧器本体8の一次側に図示しない接続導体を介して接続されている。
【0031】
各一次ブッシング端子のブッシング14aの中間部の外周には、フランジ14eが形成され、ブッシングのフランジ14eよりも端子部14c側の部分及び端子部14d側の部分がそれぞれ気中貫通部14A及び油中貫通部14Bとなっている。各一次ブッシング端子の気中貫通部14Aは、対応するブッシング取付け孔201hを貫通して開閉器ケース201内に挿入され、油中貫通部14Bは、変圧器タンク6のブッシング導入用窓部6hを通して変圧器タンク6内に導入されて、該変圧器タンク内の絶縁油7中に浸漬される。
【0032】
各一次ブッシング端子は、その気中貫通部14Aを、開閉器ケース201の背面のブッシング取付け孔201h内を通して開閉器ケース201内に挿入した状態で配置され、各一次ブッシング端子のブッシングのフランジ14eと、ブッシング取付け部201b2との間にはOリング203が挿入されている。
【0033】
各一次ブッシング端子をブッシング取付け部201b2に固定するため、三相の一次ブッシング端子14uないし14wの油中貫通部14Bをそれぞれ貫通させた3つの孔204aを有する矩形状のブッシング固定板204が設けられ、このブッシング固定板204がボルト205により、開閉器ケース201のブッシング取付け部201b2に締結されている。これにより、各一次ブッシング端子が開閉器ケース201のブッシング取付け部201b2に油密にシールされた状態で固定されている。
【0034】
開閉器ケース201のブッシング取付け部201b2の周縁部寄りの部分に、パッキン収容溝201iが周設されていて、このパッキン収容溝内にパッキン16が収容されている。ブッシング取付け部201b2の、パッキン収容溝201iの内径側に位置する領域には、パッキン収容溝201iに沿って並ぶ多数のネジ孔201j(図2参照)が形成されている。そして、開閉器ケース201のブッシング取付け部201b2がパッキン16を介して変圧器タンク6の側壁6b1のブッシング導入用窓部6hの周辺部に突き当てられて、三相の一次ブッシング14uないし14wの油中貫通部14Bが変圧器タンク6内に導入されている。
【0035】
図3に示されているように、ブッシング導入用窓部6hが設けられた変圧器タンク6の側壁6b1の内面には、ブッシング導入用窓部6hの周辺部の少なくともパッキン16の内側に位置する部分を覆う断熱板21が、変圧器タンクの側壁6b1の内面に添わせた状態で配置されている。図示の例では、断熱板21が、変圧器タンク6の側壁6b1の内面の、パッキン16に相対する部分を越えて、側壁6b1の開閉器ケース201の背面201bに対向する部分のほぼ全体を覆うように設けられている。
【0036】
本発明においては、一次ブッシング端子14uないし14wの絶縁油中に浸漬される部分(油中貫通部)の少なくともLBS寄りの部分を、絶縁油の対流から隔離する隔離対象部分14B1として、この隔離対象部分14B1を内部に収容して、絶縁油の対流から隔離するように構成されたブッシング端子隔離部25が変圧器タンク6に取り付けられる。
【0037】
図示のブッシング端子隔離部25は断熱材からなっていて、変圧器タンク6の内側で一次ブッシング端子14uないし14wの隔離対象部分14B1を間にして上下に相対するように設けられて基部が変圧器タンクのブッシング導入用窓部の周辺部に固定される一対の障壁部25a,25bと、一対の障壁部25a,25bの先端部間を連結するように設けられた端部壁25cとを一体に有し、端部壁25cには、一次ブッシング端子14uないし14wをそれぞれ貫通させる3つの孔25dが設けられている。ブッシング端子隔離部25の横方向の両端25e,25f(図4参照)には開口部が形成され、これらの開口部から変圧器タンク6内の絶縁油がブッシング端子隔離部25内に流入し得るようになっている。
【0038】
図示の例では、ブッシング端子隔離部25の障壁部25a,25bの基部に、断熱板21の板面に沿う張出し部25a1,25b1が形成され、これらの張出し部25a1,25b1が、ブッシング固定板204の上下の端部に隣接する位置で断熱板21に当接されている。
【0039】
変圧器タンク6の内側から、ブッシング端子隔離部25の障壁部25a,25bの基部の張出し部25a1,25b1と、断熱板21と、変圧器タンク6の側壁6b1とを貫通させて、開閉器ケース201のブッシング取付部201b2に設けられた一連のネジ孔201j,201j,…(図2参照)にボルト22,22,…がねじ込まれ、これらのボルト22により、開閉器ケース201が変圧器タンク6に締結されるとともに、断熱板21とブッシング端子隔離部25とが変圧器タンク6に対して固定されている。本実施形態ではまた開閉器ケース201の背面側の上端及び下端に耳部201k(図2参照)が溶接され、これらの耳部がボルトにより変圧器タンク6の側壁6b1に締結されている。ブッシング端子隔離部25は、変圧器タンク6内に導入された一次ブッシング端子14uないし14wの油中貫通部14Bとともに変圧器タンク内の絶縁油7中に浸漬されている。
【0040】
本実施形態において、断熱板21及びブッシング端子隔離部25は、変圧器タンク(通常鉄板からなる)6よりも熱伝導性が低い低熱伝導性素材により構成する。断熱板21及びブッシング端子隔離部25は、絶縁油中に浸漬されるので、これらを構成する低熱伝導性素材としては、絶縁油中での耐久性が実証されているプレスボードが最も好ましいが、本発明はこれらをプレスボードにより構成する場合に限定されない。断熱板21及びブッシング端子隔離部25を構成する低熱伝導性素材は、プレスボード、木材(単板または合板)、エポキシ樹脂やフェノール樹脂等の樹脂、ガラス繊維や、炭素繊維等の無機質系繊維材、プラスチック系繊維材及びこれらを組み合わせた複合材料(例えば繊維強化プラスチック)からなる材料群の中から、耐油性を考慮して適宜に選択することができる。なお断熱板21及びブッシング端子隔離部25は、同種の材料により構成してもよく、異種材料により構成してもよい。
【0041】
本実施形態では、高圧ケーブル3uないし3wと変圧器本体8の一次側との間を開閉する三相のスイッチとして真空バルブが用いられ、これらの真空バルブと、それぞれを操作する操作機構とが開閉器ケース201内に収容されている。図2において、スイッチの操作機構は自動操作と手動操作との双方が可能なように構成されていて、スイッチを手動操作する際に回転操作される操作軸210(図2参照)が開閉器ケース201の側面から外部に導出され、この操作軸に操作ハンドル211が取り付けられている。
【0042】
変圧器タンク6の少なくとも一つの側壁には、絶縁油7と変圧器タンクの外側の空気との間で熱交換を行わせるための放熱器30が取り付けられている。図示してないが、変圧器タンク6の側壁6b4の外側に、複数の三相用の配線用遮断器(ブレーカ)が設けられ、三相の二次ブッシング端子11uないし11wが各配線用遮断器を通して需要家につながる三相低圧ケーブルに接続されている。低圧ケーブルは、地下のケーブルピット内を通して配電線に接続される。二次中性点端子11nは、図示しない接地線を通して接地電位部に接続されている。
【0043】
本実施形態の電気的構成を示す単線結線図を図6に示した。同図において、SWは真空バルブからなるスイッチであり、31aないし31eは配線用遮断器、32aないし32eは低圧ケーブルである。
【0044】
本実施形態のように、変圧器タンクの一側壁の内側で少なくともブッシング導入用窓部の周辺部を覆う断熱板21を、変圧器タンクの一側壁の内面に添わせた状態で配置しておくと、変圧器タンク内の絶縁油の熱がパッキン16に伝達されるのを抑制して、パッキン16の温度上昇を抑えることができる。
【0045】
また本実施形態のように、一次ブッシング端子14uないし14wのLBS寄りの部分を隔離対象部分14B1として、一次ブッシング端子14uないし14wの隔離対象部分14B1を内部に収容するブッシング端子隔離部25を変圧器タンクに取り付けることにより、変圧器タンク6内で生じる絶縁油7の対流が一次ブッシング端子の隔離対象部分に直接接触するのを妨げるようにしておくと、一次ブッシング端子14uないし14wの隔離対象部分が熱い絶縁油の流れに直接触れて加熱されるのを防ぐことができるため、一次ブッシング端子14uないし14wを通してブッシング取付け部201b2に伝達される熱量を少なくして、開閉器ケース201のブッシング取付け部201b2の温度上昇を抑え、パッキン16の温度上昇を抑えることができる。
【0046】
本発明によれば、パッキン16の温度上昇を抑えることができるため、パッキン16として耐熱性が高い高価なものを用いなくても、パッキンが早期に劣化して寿命に達するのを防ぐことができる。
【0047】
上記の実施形態では、断熱板21及びブッシング端子隔離部25をボルトにより変圧器タンクに締結しているが、断熱板21及びブッシング端子隔離部25を変圧器タンクに固定する方法は、上記の実施形態に示したものに限定されない。
【0048】
上記の実施形態では、ブッシング端子隔離部25の横方向の両端が変圧器タンク内に開口しているが、一次ブッシング端子の隔離対象部14B1の全体を囲むようにブッシング端子隔離部25を構成してもよい。例えば、上記の実施形態において、ブッシング端子隔離部25の横方向の両端を閉鎖する壁部を更に設けるようにしてもよい。但し、一次ブッシング端子の隔離対象部14B1の全体を囲むようにブッシング端子隔離部25を構成する場合には、ブッシング端子隔離部25内を絶縁油で満たすために(一次ブッシング端子の油中貫通部を絶縁油中に浸漬するために)、ブッシング端子隔離部25内の空間と変圧器タンク6内の空間とを連通させる連通路をブッシング端子隔離部25の壁部を貫通させて設けておく必要がある。この連通路は、例えば、一次ブッシング端子の油中貫通部14Bを貫通させるためにブッシング端子隔離部25の端部壁25cに設ける孔25dの内周と一次ブッシング端子との間に形成した隙間により構成することができる。
【0049】
ブッシング端子隔離部25内の絶縁油の熱は、一次ブッシング端子を開閉器ケース201のブッシング取付け部201b2に固定するボルト205を通して、開閉器ケース20に伝達されるので、上記のように一次ブッシング端子の隔離対象部の全体を囲むようにブッシング端子隔離部を構成しても、その内側に熱がこもることはない。
【0050】
上記の実施形態では、ブッシング端子隔離部25を変圧器タンクの内側に設けたが、ブッシング端子隔離部を変圧器タンクの外側に設けることもできる。図5は、変圧器タンク6の外側にブッシング端子隔離部25′を設けた本発明の第2の実施形態の要部を示したものである。この実施形態においては、変圧器タンク6の一側壁6b1に設けられたブッシング導入用窓部40が、該変圧器タンクの一側壁6b1を貫通して形成された矩形状の開口部41と、開口部41の周辺部からLBS側に突出したダクト状の突出壁部42とからなっている。本実施形態では、突出壁部42が変圧器タンク6を構成する金属材料と同じ金属材料からなっていて、突出壁部42が変圧器タンク6に溶接により取り付けられている。突出壁部42の先端には、フランジ42aが設けられていて、開閉器ケース201のブッシング取付け部201b2が、突出壁部42の先端にパッキン16を介して当接され、突出壁部42の先端のフランジ42aがボルト43によりブッシング取付け部201b2に締結されて、開閉器ケース201がブッシング導入用窓部40に接続されている。
【0051】
一次ブッシング端子14uないし14wは、突出壁部42の内側を通して変圧器タンク6内に導入されている。本実施形態では、ブッシング導入用窓部40の突出壁部42により、ブッシング端子隔離部25′が構成されている。
【0052】
本実施形態においても、変圧器タンク6の内側からブッシング導入用窓部の周辺部を覆う断熱板44が、変圧器タンク6の側壁6b1の内面に添わせて配置され、この断熱板により窓部40の変圧器タンク内への開口部が塞がれている。断熱板44は、接着やボルト止め等の適宜の手段により側壁6b1に固定されている。断熱板44のブッシング導入用窓部の変圧器タンク内への開口部を塞ぐ部分に、一次ブッシング端子14uないし14wを貫通させるブッシング貫通孔45が設けられ、一次ブッシング端子14uないし14wが、断熱板44のブッシング貫通孔45を通して変圧器タンク6内に導入されている。
【0053】
本実施形態においては、ブッシング端子隔離部25′を構成する突出壁部42内を絶縁油7で満たすため、突出壁部42の内側に変圧器タンク6内の絶縁油7が流入するのを許容する手段が断熱板44に設けられる。図示の例では、ブッシング貫通孔45の内径が大きめに設定されて、該貫通孔45の内周とブッシング14uないし14wとの間に隙間が形成され、この隙間により、突出壁部42の内側に絶縁油7が流入するのを許容する手段が構成されている。
【0054】
図5に示すように構成した場合も、一次ブッシング端子の油中貫通部14Bの隔離対象部分14B1が変圧器タンク6内で生じる絶縁油の対流から隔離され、熱せられた絶縁油の対流が一次ブッシング端子のブッシング取付け部寄りの部分に直接接触するのが阻止されるため、絶縁油7から開閉器ケースのブッシング取付け部201b2に伝達される熱量を少なくして、ブッシング取付け部201b2の温度上昇を抑制することができる。また断熱板44により、絶縁油7から変圧器タンクの側壁6b1と突出壁部42とを通してパッキン16に伝達される熱量を少なくすることができるため、ブッシング取付け部201b2の温度上昇が抑制されることと相俟って、パッキン16の温度上昇を抑制することができる。
【0055】
図5に示した実施形態において、断熱板44は、プレスボード、木材、樹脂、無機質系繊維材、プラスチック系繊維材及びこれらを組み合わせた複合材料からなる材料群の中から選択された材料であって、変圧器タンクよりも熱伝導性が低い材料により構成することができる。
【0056】
なお図5には図示してないが、開閉器ケース201の上部及び下部と変圧器タンク6の側壁6b1との間を機械的に結合して、開閉器ケース201を変圧器タンク6に対して強固に支持する手段を更に設けておくのが好ましい。
【符号の説明】
【0057】
1 変圧器
2 一次側開閉装置
201 開閉器ケース
201a1 高圧ケーブル接続部
201b 開閉器ケースの背面
201b2 ブッシング取付け部
3uないし3w 高圧ケーブル
4 外箱
6 変圧器タンク
6b1 変圧器タンクの側壁
6h 一次ブッシング導入用窓部
7 絶縁油
8 変圧器本体
9uないし9w ヒューズホルダ
11uないし11w 二次ブッシング端子
11n 中性点端子
13uないし13w 高圧ケーブルを接続するコネクタ
14uないし14w 一次ブッシング端子
14A 気中貫通部
14B 一次ブッシング端子の油中貫通部
14B1 一次ブッシング端子の隔離対象部
16 パッキン
21 断熱板
25,25′ ブッシング端子隔離部
25a,25b 障壁部
25c 端部壁
25d 一次ブッシングを貫通させる孔
40 ブッシング端子導入用窓部
41 開口部
42 突出壁部
42a フランジ
44 断熱板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変圧器タンクと該変圧器タンク内に収容された変圧器本体とを有する変圧器と、高圧ケーブルが接続される高圧ケーブル接続部と前記変圧器本体の一次側に接続される一次ブッシング端子が取り付けられたブッシング取付け部とを有する開閉器ケース内に前記高圧ケーブルと一次ブッシング端子との間を開閉するスイッチを収容してなる一次側開閉装置とを備え、前記開閉器ケースのブッシング取付け部が前記変圧器タンクの一側壁に設けられたブッシング導入用窓部の周辺部にパッキンを介して突き当てられて、前記ブッシング導入用窓部の周辺部が前記ブッシング取付け部に締結されることにより前記一次側開閉装置が前記変圧器に支持され、前記一次ブッシング端子が前記ブッシング導入用窓部を通して前記変圧器タンク内に導入されて前記変圧器タンク内の絶縁油に浸漬されている地上設置型変圧器装置において、
前記変圧器タンクの前記一側壁の内側で前記ブッシング導入用窓部の周辺部を覆う断熱板が、前記変圧器タンクの一側壁の内面に添わせた状態で配置され、
前記一次ブッシング端子の前記絶縁油中に浸漬される部分の少なくとも前記一次側開閉装置寄りの部分を隔離対象部分として、前記一次ブッシング端子の隔離対象部分を前記変圧器タンク内で生じる絶縁油の対流から隔離するブッシング端子隔離部が前記変圧器タンクに取り付けられていること、
を特徴とする地上設置型変圧器装置。
【請求項2】
前記ブッシング端子隔離部は、断熱材からなっていて、前記変圧器タンクの内側で前記一次ブッシング端子の隔離対象部分を間にして上下に相対するように設けられて基部が前記変圧器タンクのブッシング導入用窓部の周辺部に固定された一対の障壁部と、該一対の障壁部の先端部間を連結するように設けられた端部壁とを一体に有し、前記端部壁に前記一次ブッシング端子を貫通させる孔が設けられている請求項1に記載の地上設置型変圧器装置。
【請求項3】
前記変圧器タンクの一側壁に設けられたブッシング導入用窓部は、該変圧器タンクの一側壁から前記一次側開閉装置側に突出したダクト状の突出壁部を有して、該突出壁部の先端にフランジが設けられ、
前記ブッシング導入用窓部の突出壁部の先端に前記パッキンを介して前記開閉器ケースのブッシング取付け部が当接されて、前記突出壁部の先端のフランジが前記ブッシング取付け部に締結され、
前記一次ブッシング端子は前記突出壁部の内側を通して前記変圧器タンク内に導入されていて、前記突出壁部により前記ブッシング端子隔離部が構成され、
前記断熱板は前記変圧器タンクの内側から前記ブッシング導入用窓部の周辺部を覆って該窓部を塞ぐように設けられて、該断熱板の前記ブッシング導入用窓部を塞ぐ部分に前記一次ブッシング端子を貫通させるブッシング貫通孔が設けられ、
前記ブッシング端子隔離部を構成する前記突出壁部の内側に前記変圧器タンク内の絶縁油が流入するのを許容する手段が前記断熱板に設けられていること、
を特徴とする請求項1に記載の地上設置型変圧器装置。
【請求項4】
前記断熱板は、プレスボード、木材、樹脂、無機質系繊維材、プラスチック系繊維材及びこれらを組み合わせた複合材料からなる材料群の中から選択された材料であって、前記変圧器タンクよりも熱伝導性が低い材料からなっている請求項1,2または3に記載の地上設置型変圧器装置。
【請求項5】
前記ブッシング端子隔離部は、プレスボード、木材、樹脂、無機質系繊維材、プラスチック系繊維材及びこれらを組み合わせた複合材料からなる材料群の中から選択された材料からなっている請求項2に記載の地上設置型変圧器装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−151201(P2012−151201A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7569(P2011−7569)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】