説明

地下かん水からのリン酸マグネシウムアンモニウムの製造装置および方法

【課題】 地下かん水にリン酸もしくはその塩を加えてリン酸マグネシウムアンモニウムを生成させてこれを分離することによるリン酸マグネシウムアンモニウムの製造方法および装置において、アルカリの使用量を削減しうる手段を提供する。
【解決手段】 上記課題は、アンモニウムイオン、マグネシウムイオンおよび炭酸イオンを含む地下かん水とリン酸が投入される脱炭酸塔と、該脱炭酸塔で脱炭酸処理された地下かん水を投入してアルカリを加えて反応させることによりリン酸マグネシウムアンモニウムを生成させる反応器と、該反応器で反応させた地下かん水からリン酸マグネシウムアンモニウムを分離する分離装置よりなる、地下かん水からのリン酸マグネシウムアンモニウム製造装置と方法によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下かん水からのリン酸マグネシウムアンモニウムの製造装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地下かん水は、淡水よりも塩分濃度が高いものであり、一般的には、特に食塩濃度が高い。この地下かん水には、有用成分、例えばヨウ素や天然ガスが含まれていることがあり、これらの有用成分を回収した後は海水と成分が似ているのでそのまま海に放流されたりしている。ところが、この地下かん水にアンモニウムが含まれていると海域の富栄養化につながるので予め除去する必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、天然ガス付随かん水中のアンモニア濃度を、イオン交換膜を用いて低減させる方法が開示されている。
本発明者らもこの問題に取組んで、アンモニウムイオンおよびマグネシウムイオンを含む地下かん水に、リン酸もしくはその塩を加え、pH7.5以上11.0以下のもとで、リン酸マグネシウムアンモニウムを含む固体を折出させて、固液分離する、地下かん水からのリン酸マグネシウムアンモニウムの製造方法を既に開発した(特許文献2)。
【0004】
この特許文献2には、装置は示されておらず、実施例ではビーカーに各液を投入し、生成したリン酸マグネシウムアンモニウムは、濾紙で濾過して分離している。
【0005】
【特許文献1】特開2002−177960号公報
【特許文献2】特開2007−804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、本発明者らが先に開発した方法は、pH調整に使用するアルカリ量が多く、そのコストの削減が求められていた。
本発明の目的は、地下かん水にリン酸もしくはその塩を加えてリン酸マグネシウムアンモニウムを生成させてこれを分離することによるリン酸マグネシウムアンモニウムの製造方法および装置において、アルカリの使用量を削減しうる手段を提供することにある。

【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討の結果、地下かん水に含まれている炭酸イオン(重炭酸イオンを含む。)に注目し、これを予め除去できればアルカリの使用量を削減できるのではないかと考えた。そして、これを安価に除去できる手段を種々考えた挙句、リン酸マグネシウムアンモニウム生成のために添加しているリン酸もしくはその塩に着目して、これにリン酸を用いて、これを予め加えることによる脱炭酸を行った。
【0008】
その結果、この脱炭酸は効率よく行うことができ、これでアルカリ使用量を大幅に削減できることを見出して本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、アンモニウムイオン、マグネシウムイオンおよび炭酸イオンを含む地下かん水とリン酸が投入される脱炭酸塔と、該脱炭酸塔で脱炭酸処理された地下かん水を投入してアルカリを加えて反応させることによりリン酸マグネシウムアンモニウムを生成させる反応器と、該反応器で反応させた地下かん水からリン酸マグネシウムアンモニウムを分離する分離装置よりなる、地下かん水からのリン酸マグネシウムアンモニウム製造装置と、アンモニウムイオン、マグネシウムイオンおよび炭酸イオンを含む地下かん水に、リン酸を加えて脱炭酸し、次いで、これにアルカリを加えてpHを7.5以上11.0以下にしてリン酸マグネシウムアンモニウムを折出させ、これを分離することを特徴とする、地下かん水からのリン酸マグネシウムアンモニウムの製造方法を提供するものである。
【0010】
そして、さらに、上記アルカリに水酸化マグネシウムを使用すれば、地下かん水中のマグネシウム濃度を高めて、リン酸マグネシウムアンモニウムの生成を促進することができ、地下かん水中に残存するリン酸濃度およびアンモニウム濃度も低下させることができる。
【0011】
従って、本発明では、上記の方法において、アルカリに水酸化マグネシウムを用いる方法も提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、地下かん水からリン酸マグネシウムアンモニウムを製造して、地下かん水中のアンモニウム分を安価に取除くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
地下かん水とは、淡水より塩分濃度が高い地下水であり、本発明が適用されるのは、アンモニウムイオン、マグネシウムイオンおよび炭酸イオン(重炭酸イオンも含まれる。)を含むものである。この地下かん水には、地下から汲み上げたものの外、地下かん水が天然ガスやヨウ素などの有用成分を含む場合、それらを回収した排かん水も含まれる。
【0014】
本発明が適用される地下かん水を例示すれば以下の成分を有するものである。
Cl4,000−22,000mg/l
Na 2,000−13,000 〃
50−450 〃
Ca2+ 100−300 〃
Mg2+ 300−700 〃
HCO 600−2,000 〃
NH 70−300 〃
pH 6.9−8.4
【0015】
リン酸は、通常は水溶液の状態で使用される。本発明では、リン酸は、地下かん水を酸性にして脱炭酸を行う作用と、地下かん水中のマグネシウム、アンモニウムと反応してリン酸マグネシウムアンモニウムを生成させる作用の2つを有しており、後者の目的で使用される分は、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等の塩であってもよい。すなわち、地下かん水を脱炭酸できるpHにしうる量のリン酸があれば、残余はリン酸塩でもよい。
【0016】
本発明では、地下かん水にまずリン酸を加えて脱炭酸を行う。そのために、地下かん水をpH6.0以下、好ましくは5.5以下にする。リン酸マグネシウムアンモニウムを生成させるために使用するリン酸の全量を加えても上記pHにならない場合、あるいは他の目的により、一部をリン酸以外の酸、例えば塩酸などを使用することもできる。脱炭酸を効率よく行わせるために攪拌を行うことが好ましい。脱炭酸に要する時間は通常10〜20分程度あればよい。
脱炭酸を行った地下かん水は、次いで、アルカリを加えてpHを7.5以上11.0以下の範囲にして、リン酸マグネシウムアンモニウムを生成させる。
【0017】
この反応は次のように起こるものと考えられる。
PO3−+NH+Mg2++6H0→MgNHPO・6H
【0018】
このリン酸マグネシウムアンモニウムの折出率を高める点でpH7.5以上とするか、好ましくは8.0以上、より好ましくは8.5以上である。一方、pHの上限は11.0であるが、折出したリン酸マグネシウムアンモニウム分離後放流するにはpHを中性に戻さなければならず、この点で、好ましくはpH10以下、より好ましくは9以下である。
【0019】
このために加えるアルカリは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等を用いることができる。これらのなかで、取扱いが容易であることから水酸化ナトリウムが好ましいが、一方、水酸化マグネシウムは、コスト及び使用量が少なくすむ点、さらにその添加によって、マグネシウム濃度が高まるので、リン酸マグネシウムアンモニウムの生成率を高め、従って、アンモニウムの除去率も高めることができるので、使用するアルカリとして最も好ましい。
【0020】
この点で、水酸化マグネシウムを他のアルカリ、例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウムと併用することも好ましい。いずれにしても、地下かん水のマグネシウム分がアンモニウム分と等モルより少なければ、マグネシウムを補うことが好ましい。このアルカリも操作性の点で水溶液として加えることが好ましい。
【0021】
いずれにしても、アルカリを添加して上記のリン酸マグネシウムアンモニウムを生成させる際に、リン酸あるいはマグネシウムがあまり不足していると反応が充分進行しないので、いずれもアンモニウムの0.8当量、好ましくは1当量以上、さらに好ましくは1.2当量以上存在するよう不足分は補充することが好ましい。
【0022】
リン酸マグネシウムアンモニウム生成反応を円滑に行わせるために攪拌することが好ましい。この反応を行わせる反応塔は後述するように既に開発されているのでそれを用いることもできる。
【0023】
生成したリン酸マグネシウムアンモニウムは、沈降、遠心分離、スクリーン分離などで分離する。
こうして、リン酸マグネシウムアンモニウムを分離した地下かん水は、さらに他の成分を分離するなど有効利用してもよく、あるいは中和又は必要に応じて残留リン酸を脱りん処理後、海に放流することもできる。
【0024】
一方、分離したリン酸マグネシウムアンモニウムは、肥料成分の窒素、リン酸分、マグネシウム分を含み、化成肥料として肥料に用いることができる。
【0025】
上記の方法を遂行する装置は、本発明が適用される地下かん水とリン酸を投入して脱炭酸を行わせる脱炭酸塔と、そこで脱炭酸処理された地下かん水を投入してアルカリを加えて反応させる反応器、および該反応器で反応させた地下かん水からリン酸マグネシウムアンモニウムを分離する分離装置で構成される。
【0026】
脱炭酸塔は、地下かん水とリン酸の入口と脱炭酸された地下かん水と炭酸ガスの出口を有し、さらに好ましくは、塔内の地下かん水の攪拌機構とpH計を備えている。リン酸の入口と地下かん水の入口は別個に設ける外、リン酸の供給管を地下かん水の供給管に接続する等して共用させることもできる。また、炭酸ガスを特に回収する必要がなければ、脱炭酸塔を開放型の槽とすることもできる。攪拌機構は、プロペラ式等の攪拌機、ポンプ等を用いた噴流式などいずれの手段によってもよいが炭酸ガスの発生を促す点で空気等を吹込む気体による攪拌方式が好ましい。
【0027】
反応器は、脱炭素処理された地下かん水とアルカリの入口と、反応させた地下かん水の出口を有するものであり、反応器内に生成したリン酸マグネシウムアンモニウムを分離できる機構が備えられているときは、さらに、このリン酸マグネシウムアンモニウムの出口も設けられる。また、好ましくはpH計や攪拌機構も設けられる。この反応器は、特開平1−119392号公報、特開平9−117774号公報などに記載されているものを使用できる。
【0028】
分離装置は、反応器で反応させた地下かん水からリン酸マグネシウムアンモニウムを分離するものであり、沈降分離の場合は沈降槽、濾過の場合は濾過機、又はスクリーン分離機そして遠心分離の場合は遠心分離機が用いられる。
【実施例】
【0029】
図1に示す装置を用いた。この装置は、脱炭酸塔1と、反応器2と、分離装置3よりなっている。
脱炭酸塔1は、開放型の箱型の塔で、原水である地下かん水の投入管11、リン酸貯槽12からリン酸投入管、脱炭酸処理された地下かん水の排出管13、脱炭酸塔1内の液を攪拌するためのブロワ14に接続された散気装置15およびpH計16が取り付けられている。
【0030】
反応器2は、本体21の外形が上部が大径の2段の異径筒状をしており、中心部縦方向に整流筒22が、大径部にはそれより一回り大きい仕切筒23が設置されている。この反応器2には、脱炭酸塔1からの地下かん水の排出管13、アルカリ貯槽24からのアルカリ投入管、反応を行わせた地下かん水の排出管25、反応器2内で生成したリン酸マグネシウムアンモニウムを排出するために底部に接続されたMAP排出管26、反応器2内に循環流を形成するための気泡を送り込む、ブロワ27に接続された送気管および反応器2内の液のpHを測定するpH計28が取付けられている。
【0031】
スクリーン分離の場合、分離装置3は、ドラムスクリーンで構成する本体31で、反応器2からのMAP排出管26と分離したMAPを受けるMAP受槽32と分離液を反応器2返送する返送管33が接続されている。
この装置を用いて、地下かん水を処理した。処理条件としては通液量1m/日、リン酸添加濃度800mg/lとし、アルカリとして苛性ソーダ(濃度25wt%)を用いてpH8.5に制御した。
【0032】

【表1】

【0033】
苛性ソーダの消費量は1.86l/日であった。
比較のために、脱炭素塔を使用せず、リン酸は直接反応器に加えた外は同様にして地下かん水を処理し、表2の結果を得た。
【0034】

【表2】

【産業上の利用可能性】
【0035】
アンモニア分を含む地下かん水を安価に効率よく脱アンモニア処理したのち、海に排出することで、海域の富栄養化を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明のリン酸マグネシウムアンモニウム製造装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
1 脱炭酸塔
11 地下かん水投入管
12 リン酸貯槽
13 地下かん水の排出管
14 ブロワ
15 散気装置
16 pH計
2 反応器
21 本体
22 整流筒
23 仕切筒
24 アルカリ貯槽
25 地下かん水の排出管
26 MAP排出管
27 ブロワ
28 pH計
3 分離装置
31 本体
32 MAP受槽
33 返送管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニウムイオン、マグネシウムイオンおよび炭酸イオンを含む地下かん水とリン酸が投入される脱炭酸塔と、該脱炭酸塔で脱炭酸処理された地下かん水を投入してアルカリを加えて反応させることによりリン酸マグネシウムアンモニウムを生成させる反応器と、該反応器で反応させた地下かん水からリン酸マグネシウムアンモニウムを分離する分離装置よりなる、地下かん水からのリン酸マグネシウムアンモニウムの製造装置
【請求項2】
アンモニウムイオン、マグネシウムイオンおよび炭酸イオンを含む地下かん水に、リン酸を加えて脱炭酸し、次いで、これにアルカリを加えてpHを7.5以上11.0以下にしてリン酸マグネシウムアンモニウムを折出させ、これを分離することを特徴とする、地下かん水からのリン酸マグネシウムアンモニウムの製造方法
【請求項3】
アルカリが水酸化マグネシウムである請求項2に記載の方法

【図1】
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【公開番号】特開2008−303074(P2008−303074A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−148762(P2007−148762)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【出願人】(000157108)関東天然瓦斯開発株式会社 (11)
【Fターム(参考)】