説明

地下コンクリート構造物の継手構造とその施工方法

【課題】 施工が容易で簡単な構成で、良好な止水性を得ることのできる地下コンクリート構造物の継手構造を提供する。
【解決手段】 継手部20は、両函体11,11′の外周縁にそれぞれ形成された継手斜面11A,11A′によって囲まれた断面形状三角形の継手空間12の内部に、両継手斜面11A,11A′を連結する止水ゴム21が配設されると共に、少なくとも函体の下面側において止水ゴムの外周側の空間を埋める保持充填部材22が配設され、更に、隣接対向する函体11,11′の端面間に目地材24が介装されて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共同溝等の地下コンクリート構造物の延設方向に所定間隔で設けられて内外の止水を保ちつつ両側のコンクリート構造物を相対変位可能に連結する継手構造とその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば共同溝等の地中に構築される暗渠等の地下コンクリート構造物は、その延設方向に所定間隔毎で継手が介設され、内外を止水しつつその両側のコンクリート構造物の温度変化等に起因する伸縮等の相対変位を許容するように構成される。
【0003】
このような継手構造としては、例えば、特許文献1に開示のごとくコンクリート構造物の対向する端面間に止水板を介設したもの、特許文献2に開示のごとくコンクリート構造物の対向端部にそれぞれ設けられた枠体の内周部の間にゴム・合成樹脂等の弾性材による可撓止水部材を水密的に取り付けたもの等がある。
【0004】
特許文献1に示される止水板はコンクリート構造物を構築する際にコンクリートに打ち込まれ、また、特許文献2における枠体も一体に設けられたアンカーボルトがコンクリート打設時に打ち込まれて固定される。
【特許文献1】特開平9−144148号公報
【特許文献2】特開平10−88647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の止水板や特許文献2における枠体のアンカーボルトは、壁厚の中央又は内周側に配置されるため、コンクリート打設の際にその周囲の空気が抜けにくく、周囲に空気溜まりやジャンカを生じ易いという問題があった。その確認は困難で、万一空気溜まりやジャンカが生ずるとそこを伝って水漏れし、止水性が破綻する虞がある。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、簡単な構成で、良好な止水性を得ることのできる地下コンクリート構造物の継手構造とその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する請求項1に係る発明の地下コンクリート構造物の継手構造は、地下コンクリート構造物の延設方向に所定間隔で設けられて内外の止水を保ちつつ両側のコンクリート構造物を相対変位可能に連結する継手構造であって、対向する前記コンクリート構造物の外周縁にそれぞれ形成された所定角度の継手斜面に囲まれた外周側に広がる断面形状三角形の継手空間内に、前記対向する継手斜面を連結する可撓止水部材と、前記コンクリート構造物の少なくとも下面側において該可撓止水部材の外周側の空間を埋める保持充填部材とを備え、前記可撓止水部材は、U字状の屈曲部の両外縁から左右にそれぞれ所定幅の固定板部が前記継手斜面と対応する角度で斜めに延設された断面形状として弾性素材によって形成されて、前記左右の固定板部がそれぞれ接着部材を介して前記継手斜面に接着されて設けられ、前記保持充填部材は、内面が前記可撓止水部材の外面と略合致し、外面が前記コンクリート構造物の外面と略面一となる断面形状として弾性素材によって形成されていることを特徴とする。
【0008】
この構成では、可撓止水部材の固定板部の接着部材による継手斜面への接着によって止水すると共に、作用する外水圧が固定板部を継手斜面に押圧して止水する。両側のコンクリート構造物の離間変位時には、止水状態を保って屈曲部が弾性変形する。
【0009】
請求項2に係る発明は、上記可撓止水部材の固定板部の先端縁は、外面が所定勾配の斜めで肉厚が徐々に薄くなるリップ部となっていることを特徴とする。
【0010】
この構成により、リップ部が外水圧によって継手斜面により一層密着して大きな止水効果が得られる。
【0011】
請求項3に係る発明は、前記コンクリート構造物の少なくとも下面側において、可撓止水部材ずれ防止用のピンが、その一部が前記可撓止水部材の前記左右の固定板部に周方向に所定の間隔で形成されたピン挿入孔に挿入固定され、残部が前記継手斜面の内側の前記コンクリート構造物に固定されるようにして設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、前記コンクリート構造物の少なくとも下面側において、前記可撓止水部材の前記左右の固定板部から継手斜面側に突出するようにして周方向に延長する板状の基部と該基部の先端に形成された膨出部を備える可撓止水部材ずれ防止用の板状アンカー部が前記左右の固定板部と一体的に形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明は、前記板状アンカー部には周方向に所定の間隔で空気抜き用の切欠部が形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項6に係る発明は、前記可撓止水部材の前記屈曲部はその屈曲した先端部近傍の厚みよりもその反対端部側の厚みが大きいことを特徴とする。
【0015】
請求項7に係る発明は、上記継手構造の施工方法として、上記地下コンクリート構造物を構築するコンクリート打設前に、対向する一方のコンクリート構造物の端面を形成する妻型枠に上記屈曲部を被せて上記可撓止水部材を予め所定位置に配置すると共に、その外周側に上記保持充填部材を配置し、その後コンクリートを打設することを特徴とする。
【0016】
この施工方法によれば、可撓止水部材の固定板部が型枠として機能して、継手斜面を形成する。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明の地下コンクリート構造物の継手構造によれば、対向するコンクリート構造物の連結外周部位に形成された外周側に広がる断面形状三角形の継手空間内に前記コンクリート構造物の少なくとも下面側において可撓止水部材とその外周側の空間を埋める保持充填部材とが配設され、可撓止水部材の固定板部は接着部材によって継手斜面に接着されていることにより、固定板部の継手斜面への接着と、外水圧による固定板部の継手斜面への圧接とで二重の止水効果が得られ、良好に止水することができ、両側のコンクリート構造物の離間変位に際しては可撓止水部材の屈曲部の弾性変形によって止水状態を保って追従することができる。また、継手斜面は外周側に広がる方向の傾斜面であるためにコンクリート打設時に空気の抜けが良くジャンカの発生を抑えることができ、可撓止水部材の固定板部と密着性が良く良好な止水性を得ることができる。更に、継手斜面は外周側に開放しているために外周側からその面状態を確認することもでき、必要があれば補修することも可能である。即ち、簡単な構成で、良好な止水性を得ることのできるものである。
【0018】
また、請求項2の発明によれば、可撓止水部材の固定板部の先端のリップ部が外水圧によって継手斜面に密着し易く、より良好な止水性を得ることができる。
【0019】
また、請求項3の発明によれば、前記コンクリート構造物の少なくとも下面側において可撓止水部材ずれ防止用のピンが、その一部が前記可撓止水部材の前記左右の固定板部に周方向に所定の間隔で形成されたピン挿入孔に挿入固定され、残部が前記継手斜面の内側の前記コンクリート構造物に固定されるようにして設けられているので、対向するコンクリート構造物間の変位により固定部にかかる引張力に抵抗し接着部材に生じる剪断力を低減し可撓止水部材の継手斜面に対するずれを防止することができ、止水をより一層確実なものとすることができる。
【0020】
また、請求項4の発明によれば、コンクリート構造物の少なくとも下面側において、前記可撓止水部材の前記左右の固定板部から継手斜面側に突出するようにして周方向に延長する板状の基部と該基部の先端に形成された膨出部を備える可撓止水部材ずれ防止用の板状アンカー部が前記左右の固定板部と一体的に形成されているので、対向するコンクリート構造物間の変位により固定部にかかる引張力に抵抗し接着部材に生じる剪断力を低減する効果が前記ピンによるずれ防止構造よりもさらに高く可撓止水部材の継手斜面に対するずれ防止を一層確実にすることができ、止水をより一層確実なものとすることができる。
【0021】
また、請求項5の発明によれば、前記板状アンカー部には周方向に所定の間隔で空気抜き用の切欠部が形成されているので、板状アンカー部の周囲に空気溜りが形成されることを有効に防止することができる。
【0022】
また、可撓止水部材に大きな外水圧がかかった場合には、可撓止水部材の屈曲部が反転することにより固定部にかかる引張り力が増大し接着部材にかかる剪断力が増大するが、請求項6の発明によれば、可撓止水部材の屈曲部はその屈曲した先端部近傍の厚みよりもその反対端部側の厚みが大きいので、可撓止水部材に大きな外水圧がかかった場合でも屈曲部が反転しづらく、したがって、固定部にかかる引張り力の増大を防止することができ、可撓止水部材の継手斜面に対するずれ防止を一層確実にすることができ、止水をより一層確実なものとすることができる。
【0023】
更に、請求項7に係る上記継手構造の施工方法によれば、地下コンクリート構造物を構築するコンクリート打設前に、対向する一方のコンクリート構造物の端面を形成する妻型枠に屈曲部を被せて可撓止水部材を予め所定位置に配置すると共に、その外周側に保持充填部材を配置し、その後コンクリートを打設することにより、可撓止水部材の固定板部が型枠として作用して継手斜面を形成することができるため、極めて容易に施工できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は本発明に係る地下コンクリート構造物の継手構造の一構成例を適用した地下コンクリート構造物である共同溝の斜視図,図2は図1のA−A断面図である。
【0025】
コンクリート構造物である共同溝10は、断面形状が矩形で所定長さの函体11,11′が、本発明における継手構造の一構成例である継手部20で連結されて構成されており、開削工法によって均しコンクリート1(図1には示さず)の上面に現場打ちによって所定長さ毎(函体毎)に継手部20を介設して打ち継がれて構築され、完成後は所定深さの地中に埋め戻されるものである。
【0026】
継手部20は、図2のX部拡大図(下面側の拡大断面図)である図3(A)に示すように、両函体11,11′の外周縁にそれぞれ面取り状に形成された継手斜面11A,11A′に囲まれた外周側に広がる断面形状三角形の継手空間12の内部に、両継手斜面11A,11A′を連結する可撓止水部材としての止水ゴム21が配設されると共に、その外周側に保持充填部材22が配設され、更に、隣接対向する函体11,11′の端面間に例えば鉄板にゴムライニングを施した目地材24が介装されて構成されている。また、この継手部20の外周は、設置面である均しコンクリート1と接する下面を除いて保護板25によって覆われている。
【0027】
函体11,11′の外周縁に形成された継手斜面11A,11A′の角度は、本構成例では45°に設定されており、従って、継手空間12の頂角は90°となっている。尚、この角度は適宜変更可能なものであるが、コンクリート打設時に空気が抜け易く空気溜まりやジャンカの発生を防ぐためには60°−150°の範囲が好ましい。
【0028】
止水ゴム21は、図4にその単体の断面図を示すように、内面側(図4中上側)に開放する断面形状U字状の屈曲部21Aの左右両端縁から、それぞれ所定幅の固定板部21Bが斜め外周側(図4中下側)に延設された形状に、ゴム・合成樹脂等の可撓性素材によって形成されている。屈曲部21Aの内部所定幅で所定深さのスリット部21Sとなっている。また、左右の固定板部21Bは、継手空間12の頂角と等しい角度(90°)で外面側(図4中下側)に開くV字状を成しており、その先端は外周側の傾斜面で先鋭化したリップ部21Lとなっている。当該止水ゴム21は、このリップ部21Lを除いて全体が略均一な肉厚に形成されている。
【0029】
このような止水ゴム21は、図3(A)に示すようにその左右の固定板部21Bの内面(図3及び図4中上側の面)が、それぞれ接着部材としての非加硫のブチルゴムシート23を介して両側の函体11,11′の継手斜面11A,11A′に接着され両側の函体11,11′を繋ぎ、また、目地材24は両面ブチルシートで被覆して函体11、11′を繋いでいる。尚、固定板部21Bの継手斜面11A,11A′への接着はブチルゴムシートに限らず、他の接着剤によっても良い。
【0030】
保持充填部材22は、図5(A)にその単体の断面図を示すように、内面は止水ゴム21の外面側の凹凸と略対応する形状で、外面は内面22Aが止水ゴム21の外面に嵌った状態で函体11,11′の外面と面一と成る平面状に、スポンジゴム等の弾性素材によって形成されている。即ち、内面には、左右に止水ゴム21の屈曲部21Aと固定板部21Bの間に嵌る凸部22Aが突設されてその間に止水ゴム21の屈曲部21Aが嵌る凹部22Bが形成されているものである。尚、その形成は、型によって一体成形しても、図5(B)に示すように基板部22′と凸部22Aとを別個に形成して接着しても何れでも良いものである。
【0031】
上記のごとき構成の継手部20は、止水ゴム21の左右の固定板部21Bがそれぞれ両側の函体11,11′の継手斜面11A,11A′にブチルゴムシート23で接着されて、函体11,11′の間を止水する。また、外部から作用する外水圧は、固定板部21Bを継手斜面11A,11A′に押圧して密着させ、より一層止水性を高める。つまり、ブチルゴムシート23による接着と、外水圧による圧接によって二重の止水効果を得ることができるようになっているものである。
【0032】
継手斜面11A,11A′は外周側に広がる方向の傾斜面であるためにコンクリート打設時に空気の抜けが良くジャンカの発生を抑えることができ、固定板部21Bと密着性が良く良好な止水性を得ることができる。また、外周側からその面状態を確認することもでき、必要があれば補修することも可能である。
【0033】
両側の函体11,11′の離間変位に際しては、図3(B)に示すように、止水ゴム21の屈曲部21Aが伸展することで止水性を保ってこれを許容する。この時、弾性素材によって形成された保持充填部材22も共に変形するため、止水ゴム21の伸展変形を妨げることはない。
【0034】
次に、上記のごとき継手部20を構成する施工方法を説明する。まず、図2と対応する施工途中の図である図6に示すように、前工程の函体11の内型枠13に固定されて端面を形成する妻型枠14を、止水ゴム21のスリット部21Sに嵌め込んで、妻型枠14によって止水ゴム21を支持させると共に、その外周側に保持充填部材22を被せ、更に、上面及び側面はその外周を外型枠15で押さえる(下面は均しコンクリート1の上面に載置された状態となるので不要)。
【0035】
これによって止水ゴム21は移動不能となり、この状態でコンクリートを打設することで函体11を構築し、その後、妻型枠14を外し、ここに目地材24を硬化したコンクリート面に接着して妻型枠とし、次いで型枠13を外して函体11’の同じ位置に設置して函体11′を打ち継ぐ。そして、コンクリートが硬化して外型枠15を外した後、下面を除く継手部20の外面に土砂の侵入を防ぐ保護板25を設けるものである。
【0036】
このような施工方法により、止水ゴム21の固定板部21Bが型枠として機能して函体11,11′の継手斜面11A,11A′を形成するため、別途型枠によって継手斜面11A,11A′を形成した後、止水ゴム21及び保持充填部材22を装着する手間がなく、作業性が良いものである。特に、下面側は、均しコンクリート1に保持充填部材22と止水ゴム21を載置するのみで良く、極めて作業性に優れる。この下面側の継手斜面11A,11A′の面状態を確認することはできないが、止水ゴム21の固定板部21Bは所定角度(60°−150°)の山形を呈するため、当該固定板部21Bによって形成する継手斜面11A,11A′に空気溜まりやジャンカを生じさせることがなく、固定板部21Bと継手斜面11A,11A′とが密着して良好な止水性を得ることができるものである。
【0037】
尚、函体11,11′の上面および側面に関しては、前述のように止水ゴム21の固定板部21Bによって継手斜面11A,11A′を形成することなく、図7に示すように外型枠15に固定した継手空間型16によって継手斜面11A,11A′を形成し、コンクリート打設後に外型枠15、妻型枠14、型枠13及び継手空間型16を外して継手斜面11A,11A′の表面の確認及び必要な場合には手直しを行った後、止水ゴム21を装着しても良い。この場合上面および側面には保持充填部材22は装着せず、そのかわりに砂を充填すればよい。この実施形態においても、継手空間12は外周側に開放するため、外側から容易に作業が行える。
【0038】
更に、継手斜面11A,11A′の形成方法として、図8に完成状態の断面図を示すように、函体11,11′の打設の際に継手斜面11A,11A′の形成部位を所定の大きさに箱抜きし(箱抜き部17)、そこに型枠を設けてモルタル18を充填して継手斜面11A,11A′を形成した後止水ゴム21を装着してもよい。この場合も上面および側面には保持充填部材22は装着せず、そのかわりに砂28を充填すればよい。この実施形態によれば極めて平滑な継手斜面11A,11A′を形成でき止水ゴム21の固定板部21Bと密着して良好な止水性が得られるものである。
【0039】
図9は本発明の他の実施形態を示す図3(A)と同様の継手部の拡大図である。この実施形態において、図3の実施形態の同一構成要素は同一符号で示し、その説明を省略する。
【0040】
図9の実施形態においては、可撓止水部材ずれ防止用のピン26が設けられている。各ピン26は鋼材又はプラスチック材でできており、その一部は、止水ゴム21の左右の固定板部21Bに周方向に所定の間隔で形成されたピン挿入孔27に挿入され、ピン26に塗られた接着剤によりピン挿入孔27に固定されている。またピン26の残部は、継手斜面11A,11A′内側の函体11、11′に固定されている。
【0041】
この実施形態の継手を施工する場合は、止水ゴム21にピン挿入孔27を形成しておき、ピン26に接着剤を塗りピン挿入孔27に挿入した後ブチルゴムシート23を貼り、ピン26が挿入された状態でコンクリートの打設を行う。
【0042】
なお、図3の実施形態においては、ピン26は函体の下面側のみならず上面側および側面側、すなわち函体の全周にわたり取付けることができるが、図7および図8の実施形態においては、可撓止水部材を配置する前にコンクリートを打設するので、函体の上面側および側面側にはピン26を取付けることはできず、コンクリートを打設しない函体の下面側にのみ取付けることができる。
【0043】
図10は本発明の継手の他の実施形態を示す拡大図であり、図11はこの継手をブチルゴムシート23を取り外した状態で継手軸方向に見た側面図である。
【0044】
この継手においては、止水ゴム21の左右の固定板部21Bから継手斜面側に突出するようにして周方向に延長する板状の基部29Aと該基部の先端に形成された断面多角形状の膨出部29Bを備える可撓止水部材ずれ防止用の板状アンカー部29が左右の固定板部21Bと一体的に形成されている。図11に示すように、板状アンカー部29には周方向に所定の間隔で空気抜き用の切欠部29Cが形成されている。
【0045】
この実施形態においては、板状アンカー部29には膨出部29Bが形成されているので、対向するコンクリート構造物間の変位により固定部にかかる引張力に抵抗し接着部材に生じる剪断力を低減する効果が前記ピンによるずれ防止構造よりも高く、屈曲部が外水圧により反転して固定部に大きな引張力が作用した場合でも板状アンカー部29が抜け出すことがなく、止水ゴム21の継手斜面11A、11A′に対するずれを一層確実に防止することができ、止水をより一層確実なものとすることができる。また、板状アンカー部29には周方向に所定の間隔で空気抜き用の切欠部29Cが形成されているので、板状アンカー部29周辺に空気溜りが発生することを有効に防止することができ、止水ゴム21の固定部21Bと傾斜斜面11A,11A′との密着性を向上させることができる。
【0046】
図12は図11の実施形態の変更例を示す図である。この実施形態においても、図10の実施形態同様に、板状の基部30Aと膨出部30Bからなる板状アンカー部30が固定部21Bと一体的に形成されているが、この板状アンカー部30においては、膨出部30Bは断面円形であり、また図11の断面多角形の膨出部29Bよりも大径に形成されている。この膨出部30Bは断面円形であるので押し出し成形で作りやすくかつ仕上がりがよいという長所があり、また大径に作られているので引き抜きに対する抵抗力も大きく、アンカー部30の抜け出しを有効に防止することができる。
【0047】
なお、板状アンカー部の膨出部は図10、12に示す断面形状のほか楕円形等種々の形状に成形することができる。
【0048】
また、この実施形態においては、止水ゴム21の屈曲部21Aはその屈曲した先端部近傍の厚みt2よりもその反対端部側(根本側)の厚みt1が大きくなるように先端屈曲部からその反対端部側に向けて厚みが漸増するように形成されている。この構成により、止水ゴム21に大きな外水圧がかかった場合でも屈曲部21Aが反転しづらく、したがって、固定部21Bにかかる引張り力の増大を防止することができ、止水ゴム21の継手斜面11A、11A′に対するずれを一層確実に防止することができ、止水をより一層確実なものとすることができる。なお、この構成は図12の実施形態のみならず、図3等他の実施形態の止水ゴム21に適用しても同様の効果を挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は本発明係る地下コンクリート構造物の継手構造の一構成例を適用した地下コンクリート構造物である共同溝の斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】(A)は図2のX部に相当する継手部の拡大図,(B)はそれから函体が離間変位した状態を示す図である。
【図4】止水ゴムの断面図である。
【図5】(A)は保持充填部材の断面図,(B)はその分解図である。
【図6】施工工程を示す共同溝の断面図である。
【図7】他の継手斜面の形成方法を示す断面図である。
【図8】他の方法によって形成された継手斜面による継手部の断面図である。
【図9】本発明の他の実施形態の継手部の拡大図である。
【図10】本発明の他の実施形態の継手部の拡大図である。
【図11】図10の実施形態を継手軸方向に見た側面図である。
【図12】本発明の他の実施形態の継手部の拡大図である。
【符号の説明】
【0050】
10 共同溝(地下コンクリート構造物)
11,11′ 函体
11A,11A′ 継手斜面
12 継手空間
14 妻型枠
20 継手部
21 止水ゴム(可撓止水部材)
21A 屈曲部
21B 固定板部
21L リップ部
22 保持充填部材
26 可撓止水部材ずれ防止用のピン
29、30 板状アンカー部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下コンクリート構造物の延設方向に所定間隔で設けられて内外の止水を保ちつつ両側のコンクリート構造物を相対変位可能に連結する継手構造であって、
対向する前記コンクリート構造物の外周縁にそれぞれ形成された所定角度の継手斜面に囲まれた外周側に広がる断面形状三角形の継手空間内に、前記対向する継手斜面を連結する可撓止水部材と、前記コンクリート構造物の少なくとも下面側において該可撓止水部材の外周側の空間を埋める保持充填部材とを備え、
前記可撓止水部材は、U字状の屈曲部の両外縁から左右にそれぞれ所定幅の固定板部が前記継手斜面と対応する角度で斜めに延設された断面形状として弾性素材によって形成されて、前記左右の固定板部がそれぞれ接着部材を介して前記継手斜面に接着されて設けられ、
前記保持充填部材は、内面が前記可撓止水部材の外面と略合致し、外面が前記コンクリート構造物の外面と略面一となる断面形状として弾性素材によって形成されていることを特徴とする地下コンクリート構造物の継手構造。
【請求項2】
上記可撓止水部材の固定板部の先端縁は、外面が所定勾配の斜めで肉厚が徐々に薄くなるリップ部となっていることを特徴とする請求項1に記載の地下コンクリート構造物の継手構造。
【請求項3】
前記コンクリート構造物の少なくとも下面側において、可撓止水部材ずれ防止用のピンが、その一部が前記可撓止水部材の前記左右の固定板部に周方向に所定の間隔で形成されたピン挿入孔に挿入固定され、残部が前記継手斜面の内側の前記コンクリート構造物に固定されるようにして設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の地下コンクリート構造物の継手構造。
【請求項4】
前記コンクリート構造物の少なくとも下面側において、前記可撓止水部材の前記左右の固定板部から継手斜面側に突出するようにして周方向に延長する板状の基部と該基部の先端に形成された膨出部を備える可撓止水部材ずれ防止用の板状アンカー部が前記左右の固定板部と一体的に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の地下コンクリート構造物の継手構造。
【請求項5】
前記板状アンカー部には周方向に所定の間隔で空気抜き用の切欠部が形成されていることを特徴とする請求項4記載の地下コンクリート構造物の継手構造。
【請求項6】
前記可撓止水部材の前記屈曲部はその屈曲した先端部近傍の厚みよりもその反対端部側の厚みが大きいことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の地下コンクリート構造物の継手構造。
【請求項7】
上記地下コンクリート構造物を構築するコンクリート打設前に、対向する一方のコンクリート構造物の端面を形成する妻型枠に上記屈曲部を被せて上記可撓止水部材を予め所定位置に配置すると共に、その外周側に上記保持充填部材を配置し、その後コンクリートを打設して、前記可撓止水部材の固定板部によって上記継手斜面を形成することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の地下コンクリート構造物の継手構造の施工方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−144534(P2006−144534A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−53581(P2005−53581)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000196624)西武ポリマ化成株式会社 (60)
【Fターム(参考)】