説明

地下ピット内に設置した水槽からの漏洩監視方法及び漏洩監視システム

【課題】地下ピット内に設置した水槽からの放射性物質含有排水等の漏洩を監視する従来の方法では、底部に水が溜まった場合に、まずその水が水槽から漏洩したものかを判定する必要があり、操作が煩雑であると共に、迅速な対処が困難である。
【解決手段】そこで、本発明では,水槽2を設置した地下ピット1内の底部に漏洩水センサー3を設置すると共に、地下ピットと水槽との間の空間8の上部を蓋7により密閉して、圧縮空気源9により加圧可能とし、空間の圧力を、地下ピット内の底部に対しての地下水の水圧以上に維持した状態で漏洩水を監視することとした漏洩監視方法と、これを適用するシステムを提案するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,地下ピット内に設置した水槽からの漏洩監視方法及び漏洩監視システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば放射性物質含有水の排水設備では、排水槽としてステンレス製のパネルタンクが使用される場合が多く、腐食等が原因となる漏洩には十分配慮されている。そしてこのような水槽はコンクリート製の地下ピット内に設置されることが多い。
【0003】
地下ピット内の底部には漏洩水センサーを設置して水槽からの漏洩水を監視する構成としているが、地下ピット内には地下水が滲入する場合があるため、地下ピット内の底部に水が溜まった場合には、まず、それを放射能検知器で検査し、放射線を検出した場合には水槽からの漏洩と判定して所定の処理を行い、また放射線を検出しない場合には地下水の滲入と判定して、他の所定の処理を行う。
【0004】
尚、地下に設置したタンクに貯蔵された液体の漏洩の有無を検査するための従来技術としては、タンクを地下ピット内に設置したものではないが、例えば特許文献1に示すようなものがある。
【特許文献1】特開2005−292091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したとおり、地下ピット内に設置した水槽からの放射性物質含有排水等の漏洩を監視する従来の方法では、地下ピット内の底部に水が溜まった場合に、まずその水が放射能を有しているか否かを放射能検知器で検査して判定する必要があるため、操作が煩雑であると共に、水槽からの放射性物質含有排水であった場合の迅速な対処が困難である。
そこで本発明では、このような課題を解決した地下ピット内に設置した水槽からの漏洩監視方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために本発明では,水槽を設置した地下ピット内の底部に漏洩水センサーを設置すると共に、地下ピットと水槽との間の空間の上部を蓋により密閉して、圧縮空気源により加圧可能とし、上記空間の圧力を、地下ピット内の底部に対しての地下水の水圧以上に維持した状態で漏洩水センサーにより漏洩水を監視することとした地下ピット内に設置した水槽からの漏洩監視方法を提案する。
【0007】
また本発明では、上記漏洩監視方法において、地下ピットに近接して地下水位計を設置し、地下水位計により計測した地面から地下水面までの高さと、水槽内の水面高さと、水面から地面までの高さから地下水の水圧を導出して、上記空間の圧力を、地下ピット内の底部に対しての地下水の水圧以上に維持することとした地下ピット内に設置した水槽からの漏洩監視方法を提案する。
【0008】
更に本発明では、水槽を設置した地下ピット内の底部に漏洩水センサーを設置し、この漏洩水センサーからの信号により漏洩検知信号を発する漏洩検知機を設けると共に、地下ピットと水槽との間の空間の上部を蓋により密閉して、この空間内に加圧空気を供給する空気圧縮機と、空間内の圧力センサーを設け、更に地下ピットに近接して地下水位計を設け、空気圧縮機は、上記圧力センサー及び地下水位計からの信号と、水面から地面までの高さに対応する設定値に基づいて導出した圧力以上の圧力を目標として空間内に空気を供給する構成とした地下ピット内に設置した水槽からの漏洩監視システムを提案するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の漏洩監視方法及びシステムでは、地下ピットと水槽との間の、蓋によって密閉した空間の圧力を、圧縮空気源により地下ピット内の底部に対しての地下水の水圧以上に維持しているため、地下ピットに水が滲入可能な個所が存在したとしても、地下水が滲入することはない。
【0010】
従って漏洩水センサーにより地下ピットの底部に水を検出した場合には、その水は、水槽からの漏洩水であると即座に判定することができ、所定の対処を迅速に行うことができる。
【0011】
地下ピットと水槽との間の空間を維持する圧力は、地下ピットに近接して地下水位計を設置し、地下水位計により計測した地面から地下水面までの高さと、水槽内の水面高さと、水面から地面までの高さから地下水の水圧を導出することにより容易に行うことができる。この際、水面から地面までの高さは、例えば水槽の底部から地面までの高さは既知であるので、これに関する設定値と、水槽内の水面高さから容易に導出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に,本発明の実施の形態を図1を参照して説明する。
図1は本発明に係る地下ピット内に設置した水槽からの漏洩監視システムを概念的に示すものである。
符号1はコンクリート製の地下ピットであり、この地下ピット1内にステンレス製の水槽2を設置している。また地下ピット1内の底部には漏洩水センサー3を設置し、この漏洩水センサー3からの信号により漏洩水を検出する漏洩検知機4を地上に設置している。
【0013】
符号5は水槽1内の水面を示すもので、その水面高さは図中H1で示している。水槽2には図示を省略しているが、水位、そして水面高さH1を測定するための手段が設置されている。また、符号6は地面を示すものであり、この地面6から水槽2の底部までの高さは既知であるから、地面6から水面5までの高さH3は、水面高さH1と予め設定された、例えば地面6から水槽2の底部までの高さから容易に導出することができる。
【0014】
符号7は地下ピット1と水槽2との間の空間8を密閉する蓋であり、この蓋7により密閉された空間8内に加圧空気を供給する空気圧縮機9と、空間8内の圧力センサー10を設けている。
【0015】
また符号11は地下ピット1に近接して設置した地下水位計であり、符号12は地下水位を示している。
【0016】
以上の構成において、空気圧縮機9は、上記圧力センサー10及び地下水位計11からの信号と、水面5から地面6までの高さH3に対応する設定値に基づいて導出した圧力ΔH以上の圧力を目標として空間8内に空気を供給する構成としている。
【0017】
即ち、地下ピット1内の底部に対しての地下水の圧力ΔHは、水槽2の液面高さH1に対応する圧力から、水面5から地下水位12までの高さH2に相当する圧力を減じて得られる。
即ち、 ΔH=H1−H2 である。
そして水面5から地下水位12までの高さH2は、地下水位計11によって得られる地面6から地下水位12までの高さH0から、水面5から地面6までの高さH3を減じて得られるため、結局、地下ピット1内の底部に対しての地下水の圧力ΔHは次式により求めることができる。
ΔH=H1−H2=H1−(H0−H3)
【0018】
こうして空気圧縮機9は、上記圧力センサー10及び地下水位計11からの信号と、水面5から地面6までの高さH3に対応する設定値に基づいて導出した圧力ΔHを目標として、又はこの圧力ΔHを適宜越えた圧力を目標として、空間8内に加圧空気を供給して、空間8内を圧力ΔH以上に維持する。
【0019】
こうして本発明の漏洩監視方法及びシステムでは、地下ピット1と水槽2との間の、蓋7によって密閉した空間8の圧力を、圧縮空気源9により地下ピット1内の底部に対しての地下水の水圧以上に維持しているため、地下ピット1に水が滲入可能な個所が存在したとしても、地下水が滲入することはない。
【0020】
従って漏洩水センサー3からの信号により漏洩検知機4が、地下ピット1の底部に水13を検出した場合には、その水13は、水槽2からの漏洩水であると即座に判定することができ、所定の対処を迅速に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は以上の通りであるので、地下ピット内の底部に水が溜まった場合に、まずその水が水槽から漏洩したものか否かを判定するステップは不要で、即座に水槽からの漏洩であると確実に判定できる。
【0022】
従って操作が煩雑でなく、例えば水槽からの放射性物質含有排水の漏洩に対して迅速な対処が困難である。
【0023】
本発明は以上のことから、ガンマ線照射施設の線源プールへの利用の他、漏洩すると危険な物質を含む排水の施設等に応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る地下ピット内に設置した水槽からの漏洩監視システムを概念的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0025】
1 地下ピット
2 水槽
3 漏洩水センサー
4 漏洩検知機
5 水面
6 地面
7 蓋
8 空間
9 空気圧縮機
10 圧力センサー
11 地下水位計
12 地下水位
13 水(漏洩水)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽を設置した地下ピット内の底部に漏洩水センサーを設置すると共に、地下ピットと水槽との間の空間の上部を蓋により密閉して、圧縮空気源により加圧可能とし、上記空間の圧力を、地下ピット内の底部に対しての地下水の水圧以上に維持した状態で漏洩水センサーにより漏洩水を監視することを特徴とする地下ピット内に設置した水槽からの漏洩監視方法。
【請求項2】
地下ピットに近接して地下水位計を設置し、地下水位計により計測した地面から地下水面までの高さと、水槽内の水面高さと、水面から地面までの高さから地下水の水圧を導出して、上記空間の圧力を、地下ピット内の底部に対しての地下水の水圧以上に維持することを特徴とする請求項1に記載の地下ピット内に設置した水槽からの漏洩監視方法。
【請求項3】
水槽を設置した地下ピット内の底部に漏洩水センサーを設置し、この漏洩水センサーからの信号により漏洩検知信号を発する漏洩検知機を設けると共に、地下ピットと水槽との間の空間の上部を蓋により密閉して、この空間内に加圧空気を供給する空気圧縮機と、空間内の圧力センサーを設け、更に地下ピットに近接して地下水位計を設け、空気圧縮機は、上記圧力センサー及び地下水位計からの信号と、水面から地面までの高さに対応する設定値に基づいて導出した圧力以上の圧力を目標として空間内に空気を供給する構成としたことを特徴とする地下ピット内に設置した水槽からの漏洩監視システム。

【図1】
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