説明

地下埋設型雨水利用槽

【課題】雨水利用槽内部のスペースを有効利用することができると共に、手動ポンプが故障したような場合でも対応することができ、使い勝手のよい地下埋設型雨水利用槽を提供する。
【解決手段】地下埋設型雨水利用槽1は槽本体2と、槽本体2の上部に設けられ天井部が開閉可能な桝7とで構成される。桝7は点検口として機能すると共に、その内部に、雨水Wを汲み上げるための揚水手段である手動ポンプ12又はバケツを備える。さらに、桝7の内部に、手動ポンプ12に接続されたホースや槽本体2から揚水した雨水Wを利用して物体を洗浄した際に生じた異物が槽本体2内に落下するのを防止する手段(ごみ除去フィルタ)を設けてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水を貯留して災害時等に利用するために用いられる地下埋設型の雨水利用槽に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地震等の災害が発生した際に、生活用水を確保するため、住宅地内や公園内に雨水を貯留する必要性が高まってきている。このような貯留設備の中で、貯留水を散水やトイレなどに利用する場合には、100L〜200L程度の地上設置型のタンクが一般的に用いられるが、これだけの容量では大規模な災害時には不十分である。
【0003】
しかし、都市部の住宅地等では、大容量の貯留設備を設置するための広い土地を確保すること自体が困難である。また、設置スペースを確保することができても、貯留設備が周囲の景観を損ねることや、日光等の自然環境が貯留水の水質を悪化させる虞があることなどから、大容量の地上設置型の貯留設備は導入が進んでいない。
【0004】
そこで、これらの問題を解決するため、特許文献1には、取り込んだ雨水や生活排水を減菌して貯留し、減菌後の貯留水を電動式ポンプで汲み上げ、水洗トイレ用水、洗車、散水等に利用するための地下埋設型の大型雨水利用槽が記載されている。
【0005】
しかし、特許文献1に記載のような、電動ポンプを用いて貯留水を汲み上げる貯留槽では、災害等により停電した場合に貯留水を汲み上げることができないという問題がある。
【0006】
そこで、特許文献2には、停電等に備え、雨水貯留槽の上部に接続された桝に手動ポンプを設置し、雨水貯留槽内の雨水を手動で汲み上げる地下埋設型雨水貯留施設が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3530441号公報
【特許文献2】特許第4603449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献2に記載の地下埋設型雨水貯留施設においても、雨水貯留槽の上部の桝に手動ポンプを設置するため、地下埋設型雨水貯留施設の一部が手動ポンプに専有されるという問題がある。
【0009】
これに加え、手動ポンプが故障したり、動作不良に陥った場合には、貯留した雨水を利用することができないという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、雨水利用槽内部のスペースを有効利用することができると共に、手動ポンプが故障したような場合でも対応することができるなど、使い勝手のよい地下埋設型雨水利用槽を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、地下埋設型雨水利用槽であって、雨水利用槽の上部に、天井部が開閉可能な桝を備え、該桝は、点検口として機能すると共に、内部に、前記雨水利用槽から雨水を汲み上げるための揚水手段を備えることを特徴とする。
【0012】
そして、本発明によれば、点検口として機能する桝に、雨水利用槽から雨水を汲み上げるための揚水手段を設けたため、雨水利用槽内部のスペースを有効利用することができると共に、貯留した雨水を容易に汲み上げることができる。また、点検口として機能する桝の内部は、比較的広い空間となっているため、揚水手段を容易に出し入れすることができる。
【0013】
上記地下埋設型雨水利用槽において、前記揚水手段を手動ポンプ又はバケツとすることができ、バケツを設置することで、手動ポンプが故障したような場合でも容易に対応することができる。
【0014】
また、上記地下埋設型雨水利用槽において、前記桝の内部に、前記手動ポンプに接続されたホースを備えることができ、予めホースを接続しておくことで、ホースを利用して雨水利用槽内の雨水を迅速に使用することができる。
【0015】
さらに、前記桝の内部に、該桝の内部で前記雨水利用槽から揚水した雨水を利用して物体を洗浄した際に生じた異物が前記雨水利用槽に落下するのを防止する手段を備えることができる。これによって、雨水利用槽内の雨水を物体の洗浄に利用することができると共に、その際に生じた異物が雨水利用槽に落下するのを防止することで、雨水利用槽に貯留した雨水の利用の際に妨げとなるのを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る地下埋設型雨水利用槽の第1の実施形態を示す図であって、(a)は正面図、(b)は上面図、(c)は底面図である。
【図2】図1の地下埋設型雨水利用槽を埋設した状態を示す断面図である。
【図3】本発明に係る地下埋設型雨水利用槽の第2の実施形態を示す図であって、(a)は正面断面図、(b)は上面図である。
【図4】本発明に係る地下埋設型雨水利用槽の第3の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明に係る地下埋設型雨水利用槽(以下、「雨水利用槽」と略称する)の第1の実施形態を示し、この雨水利用槽1は、大別して、面板部材3〜5と、側板部材9とを組み合わせて形成された槽本体2と、槽本体2の上部に設けられ、天井部が開閉可能な2つの桝7(7A、7B)とで構成される。尚、図1(b)は、図1(a)に示した桝7の蓋7aを外した状態を示している。
【0019】
面板部材3〜5、及び側板部材9は、プラスチック材料や、プラスチック材料と無機粉体とを混合した複合材料で成形され、これらの使用枚数を増減することで、雨水利用槽1の全体寸法を適宜調整することができる。
【0020】
面板部材3は、全体的に略々正四角形状に形成され、少なくとも2組の対向辺組を有する。面板部材3には、多数の開口部3aが穿設されると共に、相対向する2辺は互いに対応する位置に凸部3b及び凹部3cを有する。
【0021】
面板部材4も、面板部材3と同様に、全体的に略々正四角形状に形成され、少なくとも2組の対向辺組を有する。面板部材4には、多数の開口部4aが穿設されると共に、相対向する2辺は互いに対応する位置に凸部4b及び凹部4cを有する。図1(b)において、右上に位置する面板部材4の中央部には、円形の開口部4dが穿設される。また、開口部4dには、支持部材4eの中央部に手動ポンプ取付口4fが穿設される。一方、左下に位置する面板部材4の開口部4hには、底版フィルタ4gが設けられる。
【0022】
面板部材5も、面板部材3、面板部材4と同様に、全体的に略々正四角形状に形成され、少なくとも2組の対向辺組を有する。面板部材5には、多数の開口部5aが穿設されると共に、相対向する2辺は互いに対応する位置に凸部5b及び凹部5cを有する。面板部材5の中央部には、コーナー部を有する正方形状に開口部5dが穿設される。
【0023】
上記面板部材3及び面板部材4は、各々の凸部3bと凹部4cとが、また、凹部3cと凸部4bとが鳩尾継を構成して結合される。また、隣接する面板部材5も、凸部5bと凹部5cとが、鳩尾継を構成して結合される。
【0024】
側板部材9は、多数の開口部9aを有すると共に、コーナーアングル9bを介して直交する2つの面を含むL形の形状を有する。側板部材9をL形ではなく、平板状に形成してもよい。側板部材9は、面板部材3〜5の一面と、凹凸嵌合により結合される。隣接する上下の側板部材9は、中間板10によって連結される。
【0025】
上記のようにして組み立てられた槽本体2の上部には、面板部材4の開口部4d及び開口部4hの開口形状に合わせて形成された桝7が設けられる。桝7の天井部には、開閉可能な蓋7aが装着される。槽本体2の桝7の部分を除く全面は、遮水シート11で覆い、槽本体2に貯留した雨水が漏れないように構成される。
【0026】
図1(b)において、右上に位置する桝7Aは、取水用の点検口として機能する。また、左下に位置する桝7Bには、流入管(不図示)が接続されると共に、桝7Bは、流入管接続用の点検口として機能する。
【0027】
図2は、上記構成を有する雨水利用槽1を地下に埋設した状態を示し、桝7の蓋7aが地面Gと同一レベルになるように埋設される。手動ポンプ取付口4fに手動ポンプ12が装着され、手動ポンプ12を操作することで、槽本体2の内部に貯留された雨水Wを矢印方向に排出することができる。
【0028】
上記構成を有する雨水利用槽1は、図2に示した状態で埋設され、地上に降った雨水が桝7(図1(b)において左下に位置する桝7B)に接続された流入管(不図示)から槽本体2の内部に流入し、貯留される。そして、地震等の災害が発生した際には、蓋7aを開けて手動ポンプ12を操作し、汲み上げた雨水Wを生活用水として利用することができる。
【0029】
以上のように、上記実施の形態においては、槽本体2の上部に位置し、点検口として機能する桝7に槽本体2から雨水を汲み上げるための揚水手段としての手動ポンプ12を設けたため、雨水利用槽1の内部のスペースを有効利用することができると共に、貯留した雨水Wを容易に汲み上げることができる。
【0030】
尚、上記実施の形態においては、桝7に手動ポンプ12を設けたが、手動ポンプ12と共に、あるいは手動ポンプ12に代えてバケツを収容しておくことで、手動ポンプ12が故障した場合にバケツを利用して槽本体2から雨水Wを汲み上げることができる。
【0031】
図3は、本発明に係る雨水利用槽の第2の実施形態を示し、この雨水利用槽31は、上記第1の実施形態における雨水利用槽1と同様に構成された槽本体2及び桝7を備え、左側の桝7Bに手動ポンプ12と、手動ポンプ12に接続されたホース32とを備えることが雨水利用槽1と異なる。
【0032】
この雨水利用槽31の桝7Bは、流入管(不図示)が接続されると共に、流入管接続用の点検口として機能すると共に、上述のように、手動ポンプ12に接続されたホース32を収容しているため、雨水利用槽31の内部のスペースを有効利用することができると共に、貯留した雨水Wをホース32を利用して迅速に使用することができる。
【0033】
図4は、本発明に係る雨水利用槽の第3の実施形態を示し、この雨水利用槽41は、上記第3の実施形態における雨水利用槽31の構成に加え、桝7Aの内部にバケツ42と、底部に網目の細かいプラスチック製の網状又は金網状のごみ除去フィルタ43とを備え、バケツ42を用いて、桝7Aの内部で手動ポンプ12によって揚水した雨水Wを利用して汚れた物を洗浄し、その際に生じた異物をごみ除去フィルタ43によって槽本体2の内部に落下するのを防止することができ、雨量の少ない時期に槽本体2に貯留した雨水Wを再利用して、雨水Wを効率よく利用することができる。
【0034】
尚、上記実施の形態においては、面板部材3〜5と、側板部材9とを組み合わせて形成された槽本体2を有する雨水利用槽1等を例示したが、槽本体2の構造は、上記実施の形態に限定されることなく、雨水利用槽として利用することができる槽本体であれば、本発明を適用することができる。
【0035】
また、桝7の設置数も2つに限定されることなく、1つであっても3つ以上であっても、点検口として機能する桝であれば、槽本体2に貯留された雨水を汲み上げる手動ポンプ12等の揚水手段を収容し、本発明に係る地下埋設型雨水利用槽を構成することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 地下埋設型雨水利用槽
2 槽本体
3 面板部材
3a 開口部
3b 凸部
3c 凹部
4 面板部材
4a 開口部
4b 凸部
4c 凹部
4d 開口部
4e 支持部材
4f 手動ポンプ取付口
4g 底版フィルタ
4h 開口部
5 面板部材
5a 開口部
5b 凸部
5c 凹部
5d 開口部
7(7A、7B) 桝
7a 蓋
9 側板部材
9a 開口部
9b コーナーアングル
10 中間板
11 遮水シート
12 手動ポンプ
31 地下埋設型雨水利用槽
32 ホース
41 地下埋設型雨水利用槽
42 バケツ
43 ごみ除去フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雨水利用槽の上部に、天井部が開閉可能な桝を備え、
該桝は、点検口として機能すると共に、内部に、前記雨水利用槽から雨水を汲み上げるための揚水手段を備えることを特徴とする地下埋設型雨水利用槽。
【請求項2】
前記揚水手段は、手動ポンプ又はバケツであることを特徴とする請求項1に記載の地下埋設型雨水利用槽。
【請求項3】
前記桝の内部に、前記手動ポンプに接続されたホースを備えることを特徴とする請求項2に記載の地下埋設型雨水利用槽。
【請求項4】
前記桝の内部に、該桝の内部で前記雨水利用槽から揚水した雨水を利用して物体を洗浄した際に生じた異物が前記雨水利用槽に落下するのを防止する手段を備えることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の地下埋設型雨水利用槽。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−96076(P2013−96076A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237053(P2011−237053)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(591084654)エバタ株式会社 (35)