説明

地下埋設管を被覆するポリエチレンスリーブの締付け止具

【目的】 地下埋設管保護のポリエチレンスリーブの締め付け止め具の改善
【構成】 耐食性材質の締め具1は中抜きの角板で、その中空部を仕切る2個の仕切り辺11A、12を具え、一方の側辺13の底面と、隣接する仕切り辺11Aの上面に鋸刃状の咬止面14、15を形成している。紐体2は他方の側辺16を潜って仕切り辺12を巻き回して折り返す固定端21と、側辺13を潜って仕切り辺11Aを巻き回して折り返す自由端22よりなる。
【効果】 紐体の自由端は咬止面で上下から咬止されて緩むことがないから、どの管径の地下埋設管3にポリエチレンスリーブ4を被覆するときでも対応できる。また、埋設後も従来のゴムバンドのように弾性低下による緊縛機能の低下がなく、長期に亘って保護作用の維持を保証する。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は締め付け止め具、特に地下埋設管の外面を被覆するポリエチレンスリーブを離脱しないように係止する締め付け止め具に係る。
【0002】
【従来の技術】
地下埋設管は地下水や腐食性の土壌の雰囲気、地中を伝播する迷走電流などの腐食作用を受けて表面から腐食減耗する可能性が否定できないから、水道管路の主流を占めるダクタイル鋳鉄管の外周面には耐食性塗料を塗布するが、さらに苛酷な条件が予想される箇所については、管を埋設する前に管の外周をすべてポリエチレンスリーブで被覆して直接外部と接触しないように遮蔽する、いわゆるポリエチレンスリーブ工法が指示されるケースが増加している。
【0003】
ポリエチレンスリーブ工法は図5の(A)に示すように地下埋設管3aを布設する前にその全周に亘ってポリエチレンスリーブ4aを巻き回して外周面を被覆し、適宜重ね合わせた端部に粘着テープ5aでスリーブが抜け落ちないように係止した後、図(B)のようにポリエチレンスリーブ4aの端部にゴムバンド101を嵌め込んで、埋設後ポリエチレンスリーブが外れて周囲の土砂中から地下水が管とスリーブの間に浸入しないように密着させている。または図(C)のように端部を全周に亘って粘着テープ102を添着して離脱防止と浸水防止とを図っている。ここで使用されるゴムバンド101と止め具103に関しては、当業者による団体で作成した技術的な内部規定があり、図6(A)(B)に示すゴムバンド101の形状、寸法と、同図((C)(D)に示す止め具103の寸法形状が信頼性の高いポリエチレンスリーブ工法の条件として適用している。
【0004】
粘着テープの粘着力102は土中の多湿雰囲気や土砂内の伏流地下水の豊富な箇所、または寒冷地では急減し、ポリエチレンスリーブを係止する作用が著しく劣化する懸念が大きいから、たとえ単価が安くても埋設後の耐食性に関する信頼性から見れば、余り推奨できる方法とは言えない。一方、ゴムバンド101を止め具103で固定する方法についても幾つかの課題があり、また、その課題を解決するための提案も見出される。
【0005】
図7に示す実公昭62−40164号公報は、ゴムバンド自体の抱える課題の解決を目指した従来技術である。すなわち、一般的にゴムバンドによるポリエチレンスリーブの固定方法は図8に示すように地下埋設管3bの外周面上へ被せたポリエチレンスリーブ4bの上の要所からゴムバンド101を巻き回して、最後にバンドの両端に取り付けた止め具103を相互に締結するのであるが、ゴムバンドを弾性変形しつつ伸張するときは多大の引張力を要し、しかも、その過大な外力によってバンドは全長が均等に伸びるのではなくて、局部的に接触摩擦しながら変形して伸びるために、伸びの集中した箇所ではゴム質の劣化が起こりやすく、耐用年数が意外に短くなる点を課題としている。そのために図7の従来技術では、ゴムバンド101の外周を低摩擦性のチューブ104で被覆し、ゴムバンドをポリエチレンスリーブ4bの表面に巻き回すときに余分の摩擦が働かず、スムースに巻き回し、かつゴムバンドが全長に亘って均等に伸張すると謳っている。
【0006】
一方、図9に示す実公昭63−17845号公報による従来技術では、止め具についての課題解決を目指した提案を行なっている。すなわち、伸縮バンドの止め具は2個1組で構成し、何れも張力に耐える強度を具えた基板105、106の中心軸を挟んだ両側に2個一対をなす貫通孔107と、軸から離れた位置に対称的に2個一対をなす別の貫通孔108を穿孔し、それぞれ2本のゴムバンド101を貫通孔108に挿入した後、再び貫通孔108を通り抜けて端末で固定される方式を提示している。この構成であると、土砂との接触などの外力で何れか一方のゴムバンドが切断したとしても、基板の支持点が近接しているから殆ど偶力が生じないため、残る1本のゴムバンドが外れることがなく十分な締め付け力が発揮されると謳っている。
【0007】
【考案が解決しようとする課題】
引用した従来技術はゴムバンドによる地下埋設管を被覆するポリエチレンスリーブの締め付け止め具に係る改善であるが、従来からポリエチレンスリーブの締め付け止め具を粘着テープ、またはゴムバンドの両端係止という方式に統一していること自体を見直すべきではなかろうか。粘着テープについては既に述べた通り地下水などの水分や寒暑の著しい温度差に遭遇する環境では、粘着力の低下は看過し難い程に大きいから、到底ポリエチレンスリーブを締め付けるという役割を長期に亘って保証することは難しい。
【0008】
一方ゴムバンドの両端に係脱自在の止め具を固定し、ポリエチレンスリーブの外周を巻き回して相互に係止する方式は、種々の改良も提示されてはいるものの、周知のように現在、各地で布設されている地下埋設管の種類は数十種に及び、それぞれの都市で需給計画の下に立案された最良の管路を形成するために管種が選ばれている。管の口径は多岐に及ぶから、厳密に言えば管種毎に異なる全長を具え、両端に相互に係脱する止め具を固定した締め付け止め具がなければ最適の弾性変形を維持することはできず、多少の管径の変動はゴムの弾性変形量の多少で対応できるとしても、全管種をカバーするには相当多種類の長さのゴムバンドを準備しなければならない。
【0009】
図7に示した従来技術では、この点について前記のゴムバンドを被覆するチューブ104を蛇腹式、またはピストン式として、長さの調整を可能とする実施例を示しているが、ゴムバンド自体の長さの調整については何ら言及がなく、専らゴムの弾性変形に依存するものと解釈される。しかし、過大な伸びの集中が締め付け力の低下する原因として自ら課題に取り上げている以上、多種類に及ぶ管径に適用できるゴムバンドの長さも、また、多数準備してその都度選択しない限り、課題の解決とは矛盾する結果となるのではないか。
【0010】
また、このような止め具は一旦地下に埋設すれば、再び掘削して再使用するものではないから、できるだけ費用の負担の軽いことが望まれるが、図6(B)(C)に示した汎用品の止め具に比べると構成が複雑となり、手作業でゴムバンドを基板の孔に挿し通して組み立てるので、製作に要する手間が無視できない程度に煩瑣となる懸念も否定できない。
【0011】
一般に従来技術ではポリエチレンスリーブの締め付けを十分に維持し、外部から地下水の浸入を防止する機能が、ゴムの弾性力に依存している点も課題の一つと考えざるを得ない。ゴム質は土砂中の湿度の高い雰囲気中で寒暑の差が著しい我が国の風土では容易に変質してその弾性を失いやすいから、ポリエチレンスリーブを緊縛して地下水の浸入をいつまでも防止できるか甚だ疑問である。合成ゴムの場合には、材質自体が腐食を免れたとしても、応力が定常的に負荷した緊張状態下では、その弾性が急速に低下することは比較的短時間内に起こり得ると予測できるので、長期に亘る緊縛機能を期待できないと判断する方がむしろ妥当ではあるまいか。
【0012】
本考案は以上に述べた課題を解決するために、管径がさまざまに異なる布設工事に当って、どのような管種であっても一律に適用できるとともに、地下に埋設後もポリエチレンスリーブの締め付け機能が長期に亘って維持され、地下埋設管の腐食防止という目的達成に十分応える地下埋設管を被覆するポリエチレンスリーブの締め付け止め具を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本考案に係る地下埋設管3を被覆するポリエチレンスリーブ4の締め付け止め具は、額縁状に中抜きした角板の中空範囲を分割する2条の仕切り辺11A、12を具え、該角板の一方の側辺13の底面と、該側辺と隣接する一方の仕切り辺11Aの上面にそれぞれ鋸刃状の咬止面14、15を形成した耐食性材料よりなる締め具1と、該締め具1の他方の仕切り辺12を巻き回して折り返し他方の側辺16外で相互に重合する固定端21を具え、逆方向に前記仕切り辺11を巻き回して折り返し係脱自在に側辺13外へ放出する自由端22を具えた紐体2よりなることによって前記の課題を解決した。
【0014】
また、この構成において、具体的には紐体2は粗い織目模様によって全面に細かい凹凸を多数刻設する非伸張性の合成繊維材よりなることが優れた実施例である。また、仕切り辺に関しては一方の仕切り辺11Bが、側辺17、18に穿孔した長孔19内で両端を摺動可能に嵌入したこと、あるいは角板の中空部を分割するのが1個の仕切り辺11Cであってもよい。
【0015】
【作用】
基本的な構成によれば、額縁状に中抜きの角板の側辺16側に紐体2の固定端21が係止している。すなわち、固定端21は締め具1の外方から側端16の下を潜って締め具内へ進入し、仕切り辺12を巻き回して方向を転換して再び側辺16の下を潜って締め具外で重なり合って相互に固着している。
【0016】
紐体2の他端は自由端22である。すなわち、締め付けるべきポリエチレンスリーブの外周を一回りして締め具1のもう一方の側辺13に達し、側辺の底面を通り抜けてから仕切り辺11Aを巻き回して再び進入方向に向きを変えて折り重なって側辺13の下を潜って締め具外へ出る。この場合に側辺13の底面と仕切り辺11Aの上面は、それぞれ紐体を咬持する鋸刃状の咬止面14、15を形成しているから、この両面に咬み込まれた紐体は完全に拘束されて容易に解けることなく、ポリエチレンスリーブの外周を緊縛する作用が発揮される。
【0017】
紐体の一方は自由端であるから、管径の如何に拘らず、どのような管種に対しても適用できる。また、紐体自体は弾性体である必要がないから、一旦ポリエチレンスリーブを締め付ければ、埋設した後も周囲の条件如何に拘らず紐体自体が腐食しない限り咬止作用を低下させる要素がなく、いつまでも該緊縛作用が持続する。紐体が耐食性の高い合成繊維質で製作されておれば、最早緊張の弛緩する可能性はゼロに等しい。
【0018】
【実施例】
図1、図2は本考案の実施例を示す。図1は本実施例を使用した状態を示す縦断正面図である。また、図2(A)は締め具の平面図、図(B)は正面図、図(C)は裏面図であり、図(D)は図(A)におけるA−A断面、図(E)は図(C)におけるB−B断面をそれぞれ示す。各図において、額縁状に中抜きの角板よりなる締め具1は四方の側辺13、16、17、18で形成され、その中空部を分割する2個の仕切り辺11A、12が側辺17、18を繋いで連結している。図(D)と図(E)でその断面を示すように、側辺13の底面と仕切り辺11Aの上面は紐体の進行方向と直交する方向に刻設した鋸刃状の咬止面14と15とが形成されている。締め具1の材質は耐食性の高い合成樹脂、例えばポリエチレン、ポリプロピレン樹脂、ポリアセタール樹脂などの他、金属ならばステンレス鋼、樹脂コーティングした炭素鋼でもよい。また、紐体は非伸張性の合成樹脂材、特にナイロン、ポリエステルを織成した繊維体が望ましい。
【0019】
図3(A)(B)(C)は本考案の別の実施例を示し、前例との差は仕切り辺11Bの両端が側辺17、18の内部へ穿孔した長孔19内へ嵌入し、作業員の手動によって適宜その位置を変えることができる方式となっている。この方式であれば、一方の側辺13の底面を潜って締め具1の内部へ進入してきた紐体は、側辺との間隔を広げられた可動性の仕切り辺11Bとの間に容易に入り込み、巻き回して方向転換して再び出て行くときに仕切り辺11Bを側辺側へ摺動すれば、咬止面14と15とは殆ど隣接して紐体を上下から咬み込むから、その咬止作用は一層強化する作用が発揮する。
【0020】
図4(A)(B)はさらに別の実施例の締め具を示し、既述の基本的な構成が2個の仕切り辺11、12を差し渡していたものを、一方の仕切り辺11Cだけに限ったもので、締め付け止め具の組み立て手順を省略して費用の軽減化を図った例である。
【0021】
【考案の効果】
本考案は以上述べた通り、締め具の長さを一定に製作していても、一端が自由端であるから、どのような管径の管種に対しても適用できるから、大量生産によるコスト軽減の効果が大きい。しかも、構成自体が簡単であり、現地施工時においてもポリエチレンスリーブの外周を巻き回すために大きな引張り力を必要としないから、製作費、施工費ともに従来技術より大幅に有利である。一旦地下に埋設した後は外部の悪条件に取り囲まれたとしても、そのためにポリエチレンスリーブを緊縛する機能の衰えは全く現れず、地下埋設管3の被覆によるポリエチレンスリーブの保護を長期に亘って変ることなく持続する作用を支えるから、今後の地下埋設管の布設工事には必須の部材となる可能性が高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案実施例の使用状態を示す縦断正面図である。
【図2】同実施例の締め具だけの平面図(A)、正面図(B)、裏面図(C)、図(A)におけるA−A断面(D)、図(C)におけるB−B断面(E)である。
【図3】別の実施例を示す平面図(A)、正面図(B)、裏面図(C)、図(A)におけるA−A断面(D)、図(C)におけるB−B断面(E)である。
【図4】さらに別の実施例を示す平面図(A)と縦断正面図(B)である。
【図5】従来技術の斜視図(A)と端面係止の二例を示す縦断正面図(B)(C)である。
【図6】従来技術の標準を示すゴムバンドの正面図(A)、断面図(B)と、止め具の正面図(C)と側面図(D)である。
【図7】別の従来技術を示す一部縦断正面図である。
【図8】従来技術の課題を示す斜視図である。
【図9】さらに別の従来技術を示す正面図(A)と側面図(B)である。
【符号の説明】
1 締め具
2 紐体
3 地下埋設管
4 ポリエチレンスリーブ
11 仕切り辺
12 仕切り辺
13 側辺
14 咬止面
15 咬止面
16 側辺
17 側辺
18 側辺
19 長孔
21 固定端
22 自由端

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 地下埋設管3を被覆するポリエチレンスリーブ4の締め付け止め具において、額縁状に中抜きした角板の中空範囲を分割する2条の仕切り辺11A、12を具え、該角板の一方の側辺13の底面と、該側辺と隣接する一方の仕切り辺11Aの上面にそれぞれ鋸刃状の咬止面14、15を形成した耐食性材料よりなる締め具1と、該締め具1の他方の仕切り辺12を巻き回して折り返し他方の側辺16外で相互に重合する固定端21を具え、他端側は前記仕切り辺11Aを巻き回して折り返し係脱自在に側辺13外へ放出する自由端22を具えた紐体2よりなることを特徴とする地下埋設管を被覆するポリエチレンスリーブの締付け止具。
【請求項2】 請求項1において、紐体2は粗い織目模様によって全面に細かい凹凸を多数刻設する非伸張性の合成繊維材よりなることを特徴とする地下埋設管を被覆するポリエチレンスリーブの締付け止具。
【請求項3】 請求項1または2において、一方の仕切り辺11Bが、側辺17、18に穿孔した長孔19内で両端を摺動可能に嵌入したことを特徴とする地下埋設管を被覆するポリエチレンスリーブの締付け止具。
【請求項4】 請求項1または2において、角板の中空部を分割するのが1個の仕切り辺11Cであることを特徴とする地下埋設管を被覆するポリエチレンスリーブの締付け止具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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