説明

地下室の内部耐力壁と防水層の構造と施工方法

【課題】 地下室を構築する際、外壁と内部壁を一体として構築することにより、外壁の厚さを薄くする事が出来るようになると共に、防水層に負担のかからない、地下室の内部耐力壁と防水層の構造と施工方法を提供することを課題としている。
【解決手段】 耐圧盤と外壁との接合部に止水板を設けると共に、耐圧盤と外壁の接する床下角部の全周に防水層を構築し、セパレータを用いた内部耐力壁の壁側床部を防水層と接しないように空間を開け、内部耐力壁と外壁とを一体として構築した地下室の内部耐力壁と防水層の構造と施工方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地下室を構築する際の、外壁と内部壁の構造と施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地下室は、建築基準法において容積率の緩和が認められているため、地価の高い土地や、または狭い土地に建物を建築する際、基準となる土地の容積率に対して建物の建築面積を大きく取ることが可能となると共に、音漏れが少ないので、夜遅くでも安心して大音量での楽器の練習や、音楽、DVD鑑賞が出来るようになるため、日本のような、特に都市部の地価が高い土地や、建ぺい率が狭い土地に住宅を建設する際には、最も適している構造形態であるといえる。
【0003】
従来、このような狭小地で比較的小規模な建物の地下室を構築する場合、図1、図2に示すように、地表面15を地下室下部まで掘削し、鋼管杭(図示せず)や柱状改良12により基礎を構築すると共に、その上部に捨てコンクリート14を打ち込み、耐圧盤5を構築し、さらに耐圧盤5と外壁3との間に止水板11を埋め込むと共に、外壁3と内部壁4と地下天井16に仮枠と鉄筋を構築し、その仮枠内に生コンクリートを打ち込む事により地下室の躯体を構築していた。なお、内部壁4は、完成した躯体の耐圧盤5と外壁3の当接するL字形の室内面に防水層10を施工するため、外壁3と内部壁4の間に空間を設けて施工すると共に、防水層10を施工後、防水層10の上部の空間はコンクリートブロック2を積み重ねて塞いでいた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような、従来のものにあっては、コンクリートの内部壁4と外壁3が連結されず、内部壁4が内部耐力壁としての機能を果さないため、外壁3を設計する際、独立した壁として土圧を考慮して設計した為に、外壁の厚さが厚くなると共に鉄筋量も大幅に増量した。
【0005】
さらに、外壁3と内部壁4との間に設けた防水層10の上部にコンクリートブロック2を積み重ねたため、コンクリートブロック2の重さで防水層10が損傷し地下水が侵入すると云う問題が発生していた。
【0006】
そこで、この発明は、地下室を構築する際、外壁と内部壁を一体として構築することにより、内部壁を内部耐力壁として活用する事が可能となり、外壁の厚さを薄くする事が出来るようになると共に、防水層に負担のかからない地下室の内部耐力壁と防水層の構造と施工方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を達成するために、請求項1に記載の発明は、耐圧盤を有する地下室構造において、耐圧盤と外壁との接合部に止水板を設けると共に、耐圧盤と外壁の接する床下角部の全周に防水層を構築し、セパレータを用いた内部耐力壁の外壁側床部に防水層と接しないような空間を開け、内部耐力壁と外壁とを一体として構築した事を特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、内部耐力壁と外壁を連結させ、内部耐力壁の外壁側床部に防水層と接しないような空間を開けたため、従来のように、外壁を設計する際、独立した壁として土圧を考慮して、壁の厚さを厚くし、鉄筋量も大幅に増量したものが、本発明により、外壁の厚さを薄くする事が出来るようになると共に、防水層にかかる負担が減少し、外壁の鉄筋とコンクリートの量を大幅に減らすことが可能となり、コストの削減を図ることが出来る。
【実施例1】
【0009】
以下、この発明の実施の形態1について説明する。
【0010】
図3及至図7には、この発明の実施の形態1を示す。
【0011】
図3は、地下室内部20の立体図である。外壁26と内部耐力壁22、内部耐力壁23、内部耐力壁24が一体で構築されると共に、内部耐力壁22、内部耐力壁23、内部耐力壁24の下面の外壁26側に三角形の防水層空間21が構成される。
【0012】
図4は、地下室の内部耐力壁と外壁の断面図である。地下室を構築するためには、まず地表面28を地下室下部まで掘削し、柱状改良32により基礎を構築すると共に、砕石33を敷き、その上部に捨てコンクリート34を打ち込み、つづいて耐圧盤27を構築し、さらに図6に示すように内部耐力壁用仮枠48と外壁用仮枠40を構築し、その仮枠内部に鉄筋29を配筋し、耐圧盤27と外壁26の継目に止水板31を地下室の全周に切れ目無く埋め込むと共に、仮枠内に生コンクリートを流し込む事により地下室の躯体が完成する。この際、内部耐力壁用仮枠48の下部の耐圧盤27と外壁用仮枠40が接する角部に、図7で示す防水層30を塗布するための三角形の防水層空間21を設ける。
【0013】
なお、防水層30の巾は、図7で示すように、外壁26の立ち上り面と耐圧盤27面に対して共に約50センチメートル塗布するため、防水層空間21の三角形の開口部は外壁26と耐圧盤27に対して各々60センチメートル開口することが望ましい。
【0014】
図5は、山留めと仮枠と鉄筋の関係を示す。山留用H型鋼44と山留用平板鋼板43で構成された山留めの内側に、山留用平板鋼板43と生コンクリートとの接着を防ぐためのベニヤ板41を挟み込み、その仮枠内部に鉄筋29と外壁用仮枠40と内部耐力壁用仮枠48を構築し、さらに外壁を構築する鉄筋29には、ベニヤ板41と外壁用仮枠40と鉄筋29との間隔を一定に安定させ、地下水の浸入を防ぐためスペーサー42を取付る。また内部耐力壁用仮枠48はセパレーター46と締付け金物47により構築され、内部に鉄筋29を配筋する。このようにして構成された外壁用仮枠40と内部耐力壁用仮枠48に生コンクリートを流し込む事により、図7で示すように、外壁26と内部耐力壁22が構築される。
【0015】
図7は、外壁26と内部耐力壁22で構築された地下室下部の止水板31と止水層30との関係を立体図で表す。止水層30は内部耐力壁22の下部に構築された、三角形の防水層空間21にも連続して施工され、止水層30面には一切の荷重が載らないため、止水層30の止水効果が長期的に持続する。
【実施例2】
【0016】
以下、この発明の実施の形態2について説明する。
【0017】
図8には、この発明の実施の形態2を示す。上記発明の実施の形態1では、図7で示すように、防水層空間21が三角形の形状で構成されていたのに対して、この発明の実施の形態2では、図8に示すように、防水層空間53が四角形に構成される。その他の地下室の内部耐力壁と防水層の構造と施工方法は、この発明の実施の形態1と同様である。
【0018】
以上、実施の形態に基づいて、本発明に係る地下室の内部耐力壁と防水層の構造と施工方法について詳細に説明してきたが、本発明は、以上の実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において各種の改変をなしても、本発明の技術的範囲に属するのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の実施の形態1に係る従来の地下室の外壁と内部壁の立体構造図である。
【図2】同実施の形態に係る従来の地下室の断面図である。
【図3】同実施の形態に係る地下室の内部耐力壁と外壁との立体構造図である。
【図4】同実施の形態に係る地下室の内部耐力壁と外壁の断面図である。
【図5】同実施の形態に係る鉄筋と仮枠との関係を示す断面図である。
【図6】同実施の形態に係る鉄筋と仮枠との関係を示す立体図である。
【図7】同実施の形態に係る外壁と内部耐力壁との関係を示す立体図である。
【図8】この発明の実施の形態2に係る外壁と内部耐力壁との関係を示す立体図である。
【符号の説明】
【0020】
1 地下室内部
2 コンクリートブロック
3 外壁
4 内部壁
5 耐圧盤
6 階段
7 出入口
8 鉄筋
10 防水層
11 止水板
12 柱状改良
13 砕石
14 捨てコンクリート
15 地表面
16 地下天井
20 地下室内部
21 防水層空間
22 内部耐力壁
23 内部耐力壁
24 内部耐力壁
25 階段
26 外壁
27 耐圧盤
28 地表面
29 鉄筋
30 防水層
31 止水板
32 柱状改良
33 砕石
34 捨てコンクリート
35 地下天井スラブ
40 外壁用仮枠
41 ベニヤ板
42 スペーサー
43 山留用平板鋼板
44 山留用H型鋼
45 受け木
46 セパレーター
47 締付け金物
48 内部耐力壁用仮枠
49 受け木
50 パイプサポート
51 内部仮枠壁側下部
52 内部耐力壁
53 防水層空間
54 耐圧盤
55 鉄筋
56 捨てコンクリート
57 砕石
58 止水板
59 防水層
60 外壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐圧盤を有する地下室構造において、耐圧盤と外壁との接合部に止水板を設けると共に、耐圧盤と外壁の接する床下角部の全周に防水層を構築し、セパレータを用いた内部耐力壁の外壁側床部に防水層と接しないような空間を開け、内部耐力壁と外壁とを一体として構築した事を特徴とする地下室の内部耐力壁と防水層の構造と施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−121394(P2008−121394A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−332553(P2006−332553)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(504196492)株式会社 ▲高▼▲橋▼監理 (33)
【Fターム(参考)】