説明

地下室付き鉄骨造りユニット式住宅建物

【課題】 工期の短縮、工費の節減、耐力及び耐震性の向上、柱形や梁形が室内に存在せず間取り等に自由性がある等のユニット式本来の利点を確保しつつ、地熱を最大限有効利用して空調負荷を低減し、快適な居住性を経済的に確保する。
【解決手段】 芯材鉄骨5外側に金属製外板6が固定された壁構造体7W,天井構造体7C及び床構造体7Fを組立てて梁間方向にラーメン構造かつ耐震パネル構造の地下室用ユニット1U上に、該ユニット1Uと同一仕様の壁構造体8W及び天井構造体8Cを組立ててラーメン構造かつ耐震パネル構造の地上階用ユニット2Uを積み重ねて一体架構し、地下室用ユニット1Uにおける床構造体7Wの床下水平空間部20hに詰め込んだ栗石22に地熱を蓄熱させ、この蓄熱層部への外気導入によりほぼ地熱温度に調整された空気を壁内垂直空間部20v,23vを経て地上階室F1,F2に供給可能としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地下室付き鉄骨造りユニット式住宅建物に関する。詳しくは、工場で予め製作した複数個の鉄骨造りユニットを大型トラック等で建設現場に搬入し、それら搬入されたユニットの一つを地下に埋設するとともに、残りのユニットを縦(上下)方向に積み重ね接合することにより地下階と地上階とが構築されている地下室付き鉄骨造りユニット式住宅建物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地下室付きの鉄骨造り住宅建物として、従来一般には、建設現場で地下掘削を含めた基礎工事を行い、その地下基礎上に建物の最上端に達するまでの高さの鉄骨柱を建込むとともに、その鉄骨柱に鉄骨梁を掛架して骨組構造体を施工し、しかる後、その骨組構造体に対して地下階及び地上階それぞれの壁、床、天井、屋根等の各パネルを順次取り付けるといったように、全面現場施工によって構築するものが主流である。しかし、このような全面現場施工方式の地下室付きの鉄骨造り住宅建物は、現場工事が非常に多大かつ煩雑であって、長い工期及び膨大な工費を要する。また、都心部のような住宅密集地では工事に伴う騒音や振動など周辺住宅への悪影響も絶大である。その上、地下階及び地上階のいずれにも柱形や梁形が室内に突出状態で存在するために、室内スペースが狭められ、間取り等にも自由性がないといった難点がある。
【0003】
このような全面現場施工方式の地下室付きの鉄骨造り住宅建物に代わるものとして、本出願人は、特願2001−205438に示すようなユニット式住宅建物を既に提案している。その既提案の地下室付き鉄骨造り住宅建物は、複数の芯材鉄骨の外側に金属製外板が固定され、芯材鉄骨を取り囲む箇所及び外板の内面に現場発泡樹脂による断熱層が形成される壁構造体と天井構造体及び床構造体とを工場で組立てて梁間方向にラーメン構造かつ桁行方向に耐震パネル構造のボックスユニットを構成(工場製作)し、このような同一仕様、同一構造の複数個のボックスユニットを建設現場に搬入し、そのうちの一つのボックスユニットを地下に埋設して地下室を施工するとともに、その地下室用ボックスユニットの上に残りのボックスユニットを順次積み重ね、かつ、上下に隣接するボックスユニット同士を各ボックスユニットにおける芯材鉄骨の上,下端部の突き合わせ状態でのボルト締め及び芯材鉄骨と金属製外板との現場溶接等を介して固定接合することによって、地下を含んで複数階建てに構築される地下室付き鉄骨造りユニット式住宅建物であって、各ボックス型ユニットの天井、壁及び床の各構造体における金属製外板と床板や内装材との間の空間部を互いに接続して各ユニット毎にその外周を取り巻く循環通風路を形成するとともに、各ユニットの循環通風路同士をダクト接続して地下室用ボックスユニットの循環通風路内の空気を地上階用ボックスユニットの循環通風路に強制循環可能に構成したものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した本出願人による既提案の地下室付き鉄骨造りユニット式住宅建物(以下、既提案技術という)は、全面現場施工方式の従来一般の鉄骨造り住宅建物に比べて、現場工事が非常に少なく、大幅な工期短縮及び工費の節減が図れるとともに、都心部のような住宅密集地でも騒音や振動などによる周辺住宅に対する悪影響のほとんどない状態で構築することが可能である。また、全てのユニットが工場製作されるものであるから、強度及び品質が安定しているとともに、各階の柱、梁は同部材で梁間方向にラーメン構造かつ桁行方向に耐震パネル構造となるため、部材剛性のばらつき等に起因すね応力集中の恐れもなく、膨大な耐力を有し、かつ、耐震性にも非常に優れ、さらに、地下室及び地上室のいずれにも柱形や梁形が室内に突出状態で存在しないために、室内スペースの無駄がなく、間取り等に自由性がある。加えて、年間を通じて17〜25℃の温度範囲に安定している地下室用ユニットにおける循環通風路内の空気をダクトファン等を介して地上階用ユニットにおける循環通風路に強制循環させることにより、地上階用ユニットにおける各構造体の温度変化を小さく抑え、その分だけ空調(冷暖房)負荷を減少し、快適な居住性の確保に要する空調費用の低減化が図れる等々の多くの利点を有している。
【0005】
しかしながら、地下室用ユニットにおいて、その外周を取り巻くように形成された循環通風路内の空気をダクトファン等を介して地上階用ユニットにおける循環通風路に強制循環させるだけの本出願人による既提案技術では、地下室用ユニットにおける循環通風路内の圧力低下に伴い該循環通風路内に外気に入り込んで夏は空気が次第に昇温し、冬は空気が次第に降温するといつたように、循環空気の温度変化は避けられず、その結果、年間を通じて温度の安定している地熱の有効利用による空調負荷の減少及びそれに伴う空調費用の低減効果にも自ずと限界があり、この点で改善の余地が残されていた。
【0006】
本発明は上記のような実情に鑑みてなされたもので、工期の短縮、工費の大幅節減、耐力及び耐震性の向上、柱形や梁形が室内に存在せず間取り等に自由性がある等のユニット式本来の利点を確保しつつ、地下室だけでなく建物全体を温度の安定している地熱で包み込んで空調負荷を常に小さく保ち、快適な居住性を確保するための空調費用の著しい低減を達成することができる地下室付き鉄骨造りユニット式住宅建物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る地下室付き鉄骨造りユニット式住宅建物は、同一面上に所定間隔を隔てて並列させた複数の芯材鉄骨の外側に金属製外板が固定された壁構造体と天井構造体と床構造体とを工場で組立てて梁間方向にラーメン構造かつ桁行方向に耐震パネル構造に構成される地下室用ユニットと、この地下室用ユニットにおける壁構造体及び天井構造体と同一仕様の壁構造体と天井構造体とを工場で組立てて梁間方向にラーメン構造かつ桁行方向に耐震パネル構造に構成される地上階用ユニットとからなり、それら両種ユニットを建設現場に搬入して地下室用ユニットが地下に埋設されるとともに、その地下室用ユニット上に地上階用ユニットを積み重ねた上、地下室用ユニットと地上階用ユニット及び上下に隣接する地上階用ユニット同士がそれらの壁構造体の端部突き合わせ状態での溶接により一体架構され、かつ、各ユニットにおける芯材鉄骨を取り囲む箇所及び外板の内面には現場発泡樹脂による断熱層が形成されてなる地下室付き鉄骨造りユニット式住宅建物であって、前記地下室用ユニットの床構造体における金属製外板と床板との間の床下水平空間部には熱容量の大きい蓄熱物質が詰め込まれ、この床下水平空間部に外気を強制導入して前記蓄熱物質との熱交換により温度調整された後の空気を地下室用ユニットの壁構造体における金属製外板と壁材との間の壁内垂直空間部及び地上階用ユニットの壁構造体における金属製外板と壁材との間の壁内垂直空間部を通して地上階室内に供給し、かつ、外部に排気する換気通路が形成されていることを特徴としている。
【0008】
上記構成の本発明によれば、全面現場施工方式の従来一般の地下室付き鉄骨造り住宅建物に比べて、工期の著しい短縮及び工費の大幅な節減が図れるとともに、騒音や振動などによる周辺住宅に対する悪影響もほとんどない状態で構築可能である。また、工場製作により強度及び品質が安定化していることと、各階の柱、梁が梁間方向にラーメン構造かつ桁行方向に耐震パネル構造であることによって、膨大な耐力を有し、かつ、耐震性にも非常に優れている。さらに、地下室及び地上階室のいずれにも柱形や梁形が室内に存在しないために、間取り等に自由性があり、住宅建物として最も望ましい快適な居住空間が得られる等々のユニット式本来の多くの利点を有している。
【0009】
その上、本発明では、地下室用ユニットの床構造体における金属製外板と床板との間の床下水平空間部に熱容量の大きい蓄熱物質を詰め込むことで、その床下水平空間部に地下の熱エネルギーを十分に蓄熱可能な蓄熱層を形成して、その蓄熱層部に強制導入される外気を直ちに地熱温度またはほぼ地熱温度に調整した後、その温度調整された空気を地上階室内に供給し排気させることが可能であるから、地下室のみならず、地上階室を含めて建物全体を温度変化の少ない地熱で包み込んで空調(冷暖房)負荷を常に小さく保ち、したがって、快適な居住性を確保するための空調費用の著しい低減を図ることができるという効果を奏する。
【0010】
本発明に係る地下室付き鉄骨造りユニット式住宅建物における蓄熱物質としては、請求項2に記載のように、栗石または栗石に木炭、竹炭等の炭化物を混在させたもの、のいずれを使用してもよいが、特に、栗石に木炭、竹炭等の炭化物を混在させたものを使用するときは、調温作用以外にも外気に対する調湿作用、脱臭・殺菌作用を同時に行えるので、居住性の一層の向上を図ることができる。
【0011】
また、本発明に係る地下室付き鉄骨造りユニット式住宅建物において、熱の出入りが最も多い所が窓やドア等の開口部であることに着目して、請求項3に記載のように、地上階用ユニットの壁構造体に設けられる開口部に、二枚のガラス間に空気層もしくは真空層が形成された複層ガラスまたはガラス内部に真空層と断熱ガス層を形成し、かつ、内面に放射熱を抑制する二重の金属膜を付設した高断熱ガラスを使用することによって、夏に開口部を通して地上階室内に入り込む熱及び冬に開口部を通じて外部に逃げ出す熱を最少限に抑えて、鉄骨造りでありながらも、高い断熱効果を維持し、特に地上階室内の居住性を一層高め、かつ、空調費用の一層の低減を図ることができる。
【0012】
さらに、本発明に係る地下室付き鉄骨造りユニット式住宅建物において、請求項4に記載のように、上記地下室用ユニットを、鉄筋コンクリート造りベタ基礎上に設置するとともに、その壁構造体の地下埋設部分の外周にコンクリート壁を被覆することによって、地下室用ユニットの外周面に要求される防錆・防食性能を鉄筋コンクリート造りベタ基礎及びコンクリート壁といった簡単な現場施工によって確保することが可能となり、したがって、材料的にも作業技術的にも高価な厚膜型の防錆・防食塗装工事が不要となり、建物全体の耐久性向上を経済的に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係る地下室付きユニット式鉄骨造り2階建て住宅建物の外観正面図、図2はその縦断正面図であり、この地下室付きユニット式鉄骨造り2階建て住宅建物は、寸法や形状などを標準化した部材を用いて工場製作された単一の地下室用ユニット1Uと、同じく標準化した部材を用いて同一仕様、同一構造に工場製作された二つの地上階(一階及び二階)用ユニット2Uとを、大型トラック等を介して住宅建設現場に搬入し、そのうち、単一の地下室用ユニット1Uを鉄筋コンクリート造りベタ基礎3上に設置させて地下に埋設するとともに、二つの地上階用ユニット2Uを、地下室用ユニット1Uを基礎としてその上に順次積み重ね、かつ、固定接合することにより、地下室BRと地上一階室F1及び地上二階室F2とを有する状態に構築されている。なお、地上二階用ユニット2Uの上部には、コンクリート壁4が設けられて、例えば陸屋根仕様の屋上緑化や家庭菜園など多目的に使用可能とされている。
【0014】
上記地下室用ユニット1Uは、図3にその要部の断面を示すように、同一面上に所定間隔を隔てて並列されたチャンネルやH型鋼などの複数の芯材鉄骨5の外側に鋼板等の金属製外板6が固定されてなる四枚の壁構造体7Wと天井構造体7Cと床構造体7Fとを工場で組立てて梁間方向にラーメン構造で、かつ、桁行方向に耐震パネル構造の複合構造を有し、縦断面形状において図2に示すように、略コ字型に構成された左右一対の分割ユニット1u,1uからなる。
【0015】
また、二つの地上階用ユニット2Uはそれぞれ、上記地下室用ユニット1Uにおける壁構造体7W及び天井構造体7Cと同一仕様(図3参照)の壁構造体8Wと天井構造体8Cとを工場で組立てて梁間方向にラーメン構造で、かつ、桁行方向に耐震パネル構造の複合構造を有し、縦断面形状において図2に示すように、略L字型に構成された左右一対の分割ユニット2u,2uからなる。
【0016】
上記地下室用ユニット1Uにおける縦断面形状が略コ字型の左右一対の分割ユニット1u,1uは、両分割ユニット1u,1uの開口部同士を対向させて既述の鉄筋コンクリート造りベタ基礎3上に設置した上、それら開口部周りで各構造体7W,7C,7Fの端部同士を接合して縦断面形状略ロ型に組付けられた後、各構造体7W,7C,7Fの芯材鉄骨5の内側に、図3に示すように、下地材14を介して壁材7w,天井材7c,床材7fを固定することにより、所定の地下室BRが施工されている。
【0017】
この地下室用ユニット1Uの床構造体7Fを構成する芯材鉄骨5の周囲及び隣接する芯材鉄骨5間の金属製外板6の内面部分には、図4に明示するように、例えば発泡ウレタンの現場吹付けによって断熱層13が形成され、この断熱層13の形成部分を除く前記金属製外板6とフローリング等の床材7fとの間の床下水平空間部20hには、熱容量の大きい蓄熱物質、例えば栗石22と木炭や竹炭、セラミック炭等の炭化物16が混在状態で詰め込まれているとともに、該地下室用ユニット1Uの壁構造体7Wを構成する芯材鉄骨5の周囲及び隣接する芯材鉄骨5間の金属製外板6の内面部分には、前記と同様な断熱層13が形成され、この断熱層13の形成部分を除く金属製外板6と壁材7wとの間の壁内垂直空間部20vには、図5に明示するように、ダクト状ファン21を介して地上部から外気OAを吸引しその吸引外気0Aを前記床下水平空間部20hに強制的に導入する外気導入パイプ12が挿設されている。
【0018】
また、この地下室用ユニット1Uにおける壁構造体7Wの地下埋設部分の外周には、現場でのコンクリート打設により、図2に示すように、上記鉄筋コンクリート造りベタ基礎3に連なる状態の無筋コンクリート壁10が被覆形成され、これによって、地下室用ユニット1U全体に対する防錆防食処理が施されている。
【0019】
一方、上記地上一階用ユニット2Uにおける縦断面形状が略L字型の左右一対の分割ユニット2u,2uは、両分割ユニット2u,2uの壁構造体8W,Wが地下室用ユニット1Uにおける壁構造体7W,7Wと同一面内に位置するように地下室用ユニット1U上に積み重ねるとともに、両分割ユニット2u,2uの天井構造体8C,8Cの端部同士を接合して縦断面形状略下向き開口コ字型に組付けられた後、各構造体8W,8Cの芯材鉄骨5の内側に、図3に示すように、下地材15を介して壁材8w,天井材8cを固定することにより、上述したと同様な断熱層13付きの壁内垂直空間部23v及び天井裏水平空間部23hを有し、また、一方の壁構造体7Wの下方部には壁内垂直空間部23vに接続された空気吹込口24が、かつ、他方の壁構造体7Wの上方部には壁内垂直空間部23vに接続された排気口25が設けられた地上一階室F1が施工されている。
【0020】
また、地上二階用ユニット2Uにおける縦断面形状が略L字型の左右一対の分割ユニット2u,2uも上記地上一階用ユニット2Uとほぼ同様な手段により地上一階用ユニット2U上に縦断面形状略下向き開口コ字型に組付けられた後、各構造体8W,8Cの芯材鉄骨5の内側に、図3に示すように、下地材15を介して壁材8w,天井材8cを固定することにより、地上一階用ユニット2Uと同様に、断熱層13付きの壁内垂直空間部23v及び天井水平空間部23hを有し、また、空気吹込口24及び排気口25が設けられた地上二階室F2が施工されている。なお、これら地上一階及び二階用ユニット2Uにおける壁構造体8Wの金属製外板6の外面には、それぞれエキスパンドメタルを溶着した上、モルタルを塗布する又はラスモル下地に吹付け塗装して防錆防食処理が施されている。
【0021】
そして、地下室用ユニット1Uと地上一階用ユニット2U及び上下に隣接する二つの地上階用ユニット2U同士を、図6に明示するように、各ユニット1U,2Uにおける壁構造体7W,8Wの芯材鉄骨5の上端部及び下端部に工場製作の段階で固定されている金属板部材11,11同士の突き合わせ状態で現場において隅肉溶接26して剛に固定接合することによって、地下室用ユニット1Uと二つの地上階用ユニット2Uとが一体架構されている。
【0022】
また、上記のような地下室用ユニット1Uと二つの地上階用ユニット2Uとの一体架構により、前記地下室用ユニット1Uの床構造体7Fにおける床下水平空間部20h及び壁構造体7Wにおける壁内垂直空間部20vと地上一階及び二階用ユニット2Uの壁構造体8Wにおける壁内垂直空間部23v及び天井構造体8Cにおける天井裏水平空間部23hとは気密状態に接続されることとなり、これによって、ダクト状ファン21及びパイプ22を経て地下室用ユニット1Uの床構造体7Fにおける床下水平空間部20hに強制導入される外気0Aと該床下水平空間部20h内の栗石22との熱交換により温度調整され、かつ、炭化物16との接触により調湿及び脱臭・殺菌された後の空気が、地下室用ユニット1Uの壁構造体7Wにおける壁内垂直空間部20vを通して地上一階及び二階用ユニット2Uの壁構造体8Wにおける壁内垂直空間部23v及び天井構造体8Cにおける天井水平空間部23hに循環され、その循環空気の一部を空気吹込口24から地上一階室F1及び地上二階室F2に吹き込み供給し、かつ、排気口25から外部に排気する換気通路が形成されている。
【0023】
上記のように構築された地下室付きユニット式鉄骨造り2階建て住宅建物は、標準化した部材を用いて工場製作された単一の地下室用ユニット1Uと、同じく標準化した部材を用いて同一仕様、同一構造に工場製作された二つの地上階用ユニット2Uとを、大型トラック等を介して住宅建設現場に搬入して順次積み重ね、かつ、固定接合するというユニット接合工事を行なうだけでよく、全面的現場施工により構築される従来一般の鉄骨造りの複数階建て住宅建物に比べて、工期の著しい短縮及び工費の大幅な節減が図れるとともに、騒音や振動などによる周辺住宅に対する悪影響もほとんどない状態で構築可能である。
【0024】
また、各ユニット1U,2U共に工場製作により強度及び品質が安定化しているとともに、各階の柱、梁が梁間方向にラーメン構造かつ桁行方向に耐震パネル構造であることによって膨大な耐力を有し、かつ、地上居室用ユニット2Uが地下室用ユニット1Uを深基礎として地盤に強固に支持されるため、地震発生時の地上居室用ユニット2Uの揺れを小さく抑えるといった非常に優れた耐震性、耐久性も確保することが可能である。さらに、地下室BR及び地上階室F1,F2のいずれにも柱形や梁形が室内に存在しないために、間取り等に自由性があり、住宅建物として最も望ましい快適な居住空間が得られる。
【0025】
さらに、地下室用ユニット1Uと地上階用ユニット2Uとは、それらの芯材鉄骨5,5に固定されている金属板部材11,11同士の突き合わせ状態での現場隅肉溶接12により一体構造とされているため、年間を通じて温度変化の少ない地熱が熱伝導に優れた芯材鉄骨5,5及び金属製外板6,6を通じて地上階用ユニット2Uに伝わり、それら地上階用ユニット2Uの内壁面温度が常に地熱温度(17〜25℃)またはほぼ地熱温度に保たれる。
【0026】
加えて、地下室用ユニット1Uの床構造体7Fにおける床下水平空間部20h内には熱容量の大きい栗石22が詰め込まれて、その床下水平空間部20hには年間を通じて温度の安定している地下の熱エネルギーが十分に蓄熱されているので、その地熱エネルギーの蓄熱層部に外気OAを強制導入して該外気OAと栗石22とを熱交換させることにより、導入外気OAを直ちに地熱温度またはほぼ地熱温度に調整し、その温度調整された空気、つまり、夏は外気より冷たく、かつ、冬は外気より暖かい空気が地下室用ユニット1Uの壁構造体7Wにおける壁内垂直空間部20vを通して地上一階及び二階用ユニット2Uの壁構造体8Wにおける壁内垂直空間部23v及び天井構造体8Cにおける天井水平空間部23hに循環されるとともに、その循環空気の一部が空気吹込口24から地上一階室F1及び地上二階室F2に吹き込み供給され、かつ、排気口25から外部に排気されることになる。
【0027】
その結果、地下室BRのみならず、地上階室F1,F2を含めて建物全体を温度変化の少ない地熱で包み込んで空調(冷暖房)負荷を常に小さく保つことが可能となり、したがって、快適な居住性を確保するための空調費用の著しい低減を図ることが可能である。
【0028】
特に、上記実施の形態のように、地下室用ユニット1Uの床構造体7Fにおける床下水平空間部20hに、木炭や竹炭、セラミック炭等の炭化物16を熱容量の大きい栗石22と混在状態で詰め込むことによって、外気を地熱温度またはほぼ地熱温度に調整する調温作用以外にも外気に対する調湿作用、脱臭・殺菌作用を同時に行えるので、居住性の一層の向上を図ることができる。
【0029】
また、地上一階及び二階用ユニット2Uの壁構造体8Wに設ける窓等の開口部27(図1参照)として、二枚のガラス間に密閉空気層もしくは真空層が形成された複数ガラスまたはガラス内部に真空層とアルゴンなどの断熱ガス層を形成するとともに、放射熱を抑制する金属膜を二重に付設してなる高断熱ガラス28を使用することによって、夏に開口部27を通して地上階室1F,2F内に入り込む熱及び冬に開口部27を通じて外部に逃げ出す熱を最少限に抑えることが可能であり、壁構造体8Wにおける壁内垂直空間部23v内に空気層が存在することによる内外方向での熱貫流率の低減と相俟って、建物全体が鉄骨造りでありながらも、高い断熱効果を維持し、特に地上階室1F,2F内の居住性を一層高め、かつ、空調費用の一層の低減を図ることができる。
【0030】
また、上記実施の形態で示したとおり、地上階用ユニット2Uをボックス形でなく、縦断面形状が略下向き開放のコ字型を左右に分断した略L字型の一対の分割ユニット2u,2uから構成することにより、これら地上階用ユニット2Uを地下室用ユニット1U上に順次積み重ねて地下室付き複数階建て住宅建物を構築した場合、地下室用ユニット1Uの天井構造体7Cを地上一階用ユニット2Uの床構造体に、また、地上一階用ユニット2Uの天井構造体8Cを地上二階用ユニット2Uの床構造体に兼用することが可能となり、したがって、二重構造による材料的な無駄及び過剰強度部分の発生をなくし、その分だけユニット2Uの製作コスト、ひいては、住宅建物全体の構築コストの低減を図ることが可能である。
【0031】
同時に、二つの地上階用ユニット2Uを、縦断面形状において略L字型の左右一対の分割ユニット2u,2uから構成することで、トラック等の荷台に積載して運搬する際の運搬の限界高さ(一般的には、2900mm)に制約されることなく、それら地上階用ユニット2Uの全高を任意に設定することが可能となり、その結果として、天井高の高い快適かつ開放的な居住空間を得ることができる。さらに、二つの地上階用ユニット2Uをトラック等の荷台上に積載して運搬する場合、略L字型の分割ユニット2u,2uの複数個を積層するなどして運搬時の積載所要スペースをほぼ半減化し運搬費用の著しい低減を図ることが可能である。
【0032】
なお、上記実施の形態では、地下室用ユニット1Uを縦断面形状が略コ字型の左右一対の分割ユニット1u,1uから構成したものについて説明したが、そのユニット全高を運搬の限界高さ(一般的には、2900mm)以内に設定する場合であれば、縦断面形状略ロ字型の単一ユニットに構成してもよく、また、地上階用ユニット2Uを縦断面形状が略L字型の左右一対の分割ユニット2u,2uから構成したものについて説明したが、そのユニット全高を運搬の限界高さ(一般的には、2900mm)以内に設定する場合であれば、縦断面形状略下向き開放のコ字型の単一ユニットに構成してもよい。
【0033】
さらに、上記実施の形態に示したように、地下室用ユニット1Uを、鉄筋コンクリート造りベタ基礎3上に設置するとともに、その壁構造体7Wの地下埋設部分の外周に上記鉄筋コンクリート造りベタ基礎3に連なる状態の無筋コンクリート壁10を被覆形成することによって、地下室用ユニット1U全体に対する防錆防食性能を簡単な現場施工により確保することが可能であり、建物全体の耐久性向上を経済的に実現することができる。
【0034】
さらにまた、上記実施の形態では、地下室付き鉄骨造りユニット式2階建て住宅建物に適用して説明したが、地下室付き鉄骨造りユニット式平屋建て住宅建物あるいは地下室付き鉄骨造りユニット式3階以上の住宅建物に適用実施してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】 本発明に係る地下室付き鉄骨造りユニット式2階建て住宅建物の外観正面図である。
【図2】 同上住宅建物の縦断正面図である。
【図3】 各ユニットにおける壁、天井及び床の各構造体の構成を説明する要部の拡大断面図である。
【図4】 地下室用ユニットにおける床構造体の要部拡大縦断面図である。
【図5】 地下室用ユニットにおける壁構造体及び床構造体の要部拡大縦断面図である。
【図6】 上下隣接するユニット同士の接合構造を説明する要部の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1U 地下室用ユニット
1u 左右分割ユニット
2U 地上階E用ユニット
2u 左右分割ユニット
3 鉄筋コンクリート造りベタ基礎
5 芯材鉄骨
6 金属製外板
7W,8W 壁構造体
7w,8w 壁材
7C,8C 天井構造体
7F 床構造体
7f 床材
10 コンクリート壁
13 断熱層
20h 床下水平空間部
20v,23v 壁内垂直空間部
22 栗石(熱容量の大きい蓄熱物質の一例)
27 開口部
28 複層ガラスまたは高断熱ガラス
BR 地下室
F1,F2 地上階室
OA 外気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一面上に所定間隔を隔てて並列させた複数の芯材鉄骨の外側に金属製外板が固定された壁構造体と天井構造体と床構造体とを工場で組立てて梁間方向にラーメン構造かつ桁行方向に耐震パネル構造に構成される地下室用ユニットと、この地下室用ユニットにおける壁構造体及び天井構造体と同一仕様の壁構造体と天井構造体とを工場で組立てて梁間方向にラーメン構造かつ桁行方向に耐震パネル構造に構成される地上階用ユニットとからなり、それら両種ユニットを建設現場に搬入して地下室用ユニットが地下に埋設されるとともに、その地下室用ユニット上に地上階用ユニットを積み重ねた上、地下室用ユニットと地上階用ユニット及び上下に隣接する地上階用ユニット同士がそれらの壁構造体の端部突き合わせ状態での溶接により一体架構され、かつ、各ユニットにおける芯材鉄骨を取り囲む箇所及び外板の内面には現場発泡樹脂による断熱層が形成されてなる地下室付き鉄骨造りユニット式住宅建物であって、
前記地下室用ユニットの床構造体における金属製外板と床板との間の床下水平空間部には熱容量の大きい蓄熱物質が詰め込まれ、この床下水平空間部に外気を強制導入して前記蓄熱物質との熱交換により温度調整された後の空気を地下室用ユニットの壁構造体における金属製外板と内装材との間の壁内垂直空間部及び地上階用ユニットの壁構造体における金属製外板と内装材との間の壁内垂直空間部を通して地上階室内に供給し、かつ、外部に排気する換気通路が形成されていることを特徴とする地下室付き鉄骨造りユニット式住宅建物。
【請求項2】
上記蓄熱物質として、栗石または栗石に木炭、竹炭等の炭化物を混在させたものを使用している請求項1に記載の地下室付き鉄骨造りユニット式住宅建物。
【請求項3】
上記地上階用ユニットの壁構造体には、二枚のガラス間に空気層もしくは真空層が形成された複層ガラスまたはガラス内部に真空層と断熱ガス層を形成し、かつ、内面に放射熱を抑制する二重の金属膜を付設した高断熱ガラスを使用した開口部が設けられている請求項1または2に記載の地下室付き鉄骨造りユニット式住宅建物。
【請求項4】
上記地下室用ユニットは、鉄筋コンクリート造りベタ基礎上に設置されるとともに、その壁構造体の地下埋設部分の外周にはコンクリート壁が被覆されている請求項1〜3のいずれかに記載の地下室付き鉄骨造りユニット式住宅建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−90113(P2006−90113A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−311543(P2004−311543)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(502318788)
【Fターム(参考)】