説明

地下室構造

【目的】 少ない数量の地下室用建物ユニットで大空間の地下室を形成することができるようになる地下室構造を提供する。
【構成】 地下室用の建物ユニット30,30を間隔をあけて並べ、これらの建物ユニット30同士を垂直のパネル10で連結し、地下室3を構成する。パネル10は、水平の梁14で補強してもよい。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、地下室構造に係り、例えば地下室用建物ユニットを使用して地下室を設ける際に利用できる。
【0002】
【背景技術】例えば新しい居住方式の実現、自然条件を克服する快適な住居の確保、効率的な居住システムの実現等の観点から、地下室を備えた住宅が注目されてきている。そして、このような地下室として、この地下室の上の地上用建物と同様に建物ユニットを利用することがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、建物ユニットを利用して大空間の地下室を形成する場合には、多くの地下室用建物ユニットを組み合わせなくてはならないので、地下室用建物ユニットの数量が増えるという問題があった。
【0004】本発明の目的は、少ない数量の地下室用建物ユニットで大空間の地下室を形成することができるようになる地下室構造を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明に係る地下室構造は、地下室を複数の建物ユニットで構成する地下室構造であって、複数の建物ユニットを間隔をあけて並べるとともに、これらの建物ユニット同士を垂直のパネルで連結したことを特徴とするものである。
【0006】この地下室構造において、垂直のパネルは、このパネルと直交する水平の補強部材で補強されていてもよい。
【0007】また、本発明に係る他の地下室構造は、地下室用の擁壁内にこの擁壁から間隔をあけて地下室用建物ユニットが配置されていることを特徴とするものである。この場合、擁壁と地下室用建物ユニットとの間には垂直のパネルが配置されていてもよく、また、地下室用建物ユニットおよび擁壁の上には、これらに跨がって地上用の建物ユニットが設置されていてもよい。
【0008】
【作用】このような本発明では、間隔をあけて並べられた建物ユニットを垂直のパネルで連結すれば、このパネルで囲まれた部分も地下室とでき、これにより、少ない数量の地下室用建物ユニットで大空間の地下室を形成することができるようになる。
【0009】この地下室構造において、垂直のパネルが、このパネルと直交する水平の補強部材で補強されている場合には、パネルの強度が増すため、土圧に充分に対抗できる。
【0010】本発明の他の地下室構造では、地下室用建物ユニットが擁壁から間隔をあけて擁壁内に配置され、この建物ユニットが擁壁の内部空間とともに地下室を構成するので、少ない数量の地下室用建物ユニットで大空間の地下室を形成することができるようになる。また、この地下室構造において、擁壁と地下室用建物ユニットとの間に垂直のパネルが配置されている場合には、パネルによって擁壁の内部空間を区画でき、これにより、目的に対応した地下室を容易につくれる。さらに、この地下室構造において、地下室用建物ユニットおよび擁壁の上に、これらに跨がって地上用の建物ユニットが設置されている場合には、擁壁を地上用の建物ユニットの基礎としても使用できるため、地上用の建物ユニットの基礎を別個に設けなくてもよい。
【0011】
【実施例】以下に本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1〜3には第1実施例が示されている。図1において、ユニット式建物1は、地上用建物2と、この地上用建物2の下に設けられた地下室3とを備えて構成されている。地上用建物2は、予め工場で生産された複数の下階および上階建物ユニット20,21で構成されており、また、地下室3は、複数の地下室用建物ユニット30を組み合わせて構成されている。
【0012】地下室3は、図2にも示すように、2つの地下室用建物ユニット30をそれぞれの長辺方向を対向させ、かつ、間を明けて並べるとともに、これらの建物ユニット30,30を垂直のパネル10で連結することにより形成されている。この2つの地下室用建物ユニット30の間の間隔は、建物ユニット30の短辺方向の幅とほぼ同一となっている。
【0013】このような地下室用建物ユニット30は、図3に示すように、四隅に立設された4本の柱31と、これらの柱31の上下端間を結合する各4本の上梁(図略)および下梁32からなる骨組み33を備え、このような骨組み33に外壁34や内壁35、天井面材、床面材等を取り付けることによって形成されている。なお、図示しないが、地下室用の縦穴の底部には栗石が配置され、さらに、この栗石の上に捨てコンクリートが打設されており、地下室用建物ユニット30は、このような捨てコンクリートの上に設置されるようになっている。また、図示しないが、前記地上用建物2の各建物ユニット20,21も上記地下室用建物ユニット30と同様の構成となっている。また、地下室3と地上用建物2の下階建物ユニット20とは、図示しない階段または梯子等で行き来できるようになっている。
【0014】前記垂直のパネル10は、図3に示すように、例えば内部に鉄筋11が縦横に配置されたコンクリート板で形成されており、このパネル10は、2つの地下室用建物ユニット30のそれぞれの外壁34と連続して配置されるようになっている。すなわち、各建物ユニット30,30において互いに対向する側面の柱31には、予め工場で断面L字の取付具12が柱31の上下方向に複数設けられている。一方、パネル10において室内側の一側面には予め図示しないナットが埋め込まれており、現場において、取付具12側から図示しない固定ボルトを差し込むとともに、この固定ボルトを上記ナットに螺合させることにより、パネル10は各建物ユニット30,30の柱31に取り付けられるようになっている。パネル10の内側には前記内壁35が設けられ、これにより、2枚のパネル10と建物ユニット30の間の空間も建物ユニット30と同様に地下空間として使用できることになる。また、2枚のパネル10は、例えばその上下を、パネルと直交する水平の補強部材である梁14で補強してもよい。
【0015】前述のような本実施例によれば次のような効果がある。すなわち、■地下室3は、2つの地下室用建物ユニット30,30を間をあけて並べるとともに、これらの建物ユニット30をパネル10で連結することにより、建物ユニッ30,30の間の空間も地下室3の一部とすることができる。このため、少ない地下室用建物ユニットで大空間の地下室を得ることができる。また、■パネル10の内部には縦横の鉄筋11が配置されるとともに、両端は取付具12を介して、地下室用建物ユニット30,30の柱31に支持されているので、パネル10の強度が増し、土圧に充分に対抗できるようになる。さらに、■パネル10同士を梁14で補強した場合には、パネル10の強度が一層増し、この結果、土圧への対抗力が充分となる。
【0016】図4には、本発明の第2実施例が示されている。この実施例の地下室4は、前記地下室用建物ユニット30を、地下室用の穴の四隅とほぼ中央部とに配置して構成されている。そして、対向する2つの建物ユニット30の短辺方向同士において外側のみが前記パネル10よりも幅寸法が広い(建物ユニット30の長辺方向とほぼ同じ寸法)パネル10’で、対向する2つの建物ユニット30の長辺方向同士において室外側のみが前記パネル1でそれぞれ連結されている。このパネル10とパネル10’とは幅寸法が異なるだけで構造的にはまったく同じである。従って、パネル10’の詳細な説明は省略する。なお、パネル10’はそこから中央部の建物ユニット30とに架けわたされた梁14’で補強されており、この梁14’は前記梁14より長さ寸法が短いものである。
【0017】このような本実施例でも前記実施例の■、■と同様の効果がある他、■地下室用建物ユニット30の中央部にも建物ユニット30が配置されているため、パネル10および10’は、2つの建物ユニット30の短辺、長辺方向における室外側にのみ配置すればよく、室内側の分が不要となるので、その分、材料の節約となるという効果がある。
【0018】図5には、本発明の第3実施例が示されている。この実施例の地下室5は、前記第2実施例における中央部の建物ユニット30を取り除いたもの、すなわち地下室の穴の四隅に地下室用建物ユニット30を設置し、これらの建物ユニット30間を前記パネル10,10’と間仕切り壁13,13’とで連結したものである。間仕切り壁13と13’とは長さ寸法が異なるだけである。なお、間仕切り壁13,13’は、例えば木材からなる下地材とこの下地材の両面に張りつけられた面材とで形成されており、このような間仕切り壁13,13’のうちいずれかの間仕切り壁13,13’にドア等を取り付け、他の建物ユニット30との間で連通状態としてもよい。このような第3実施例でも前記第1実施例の■、■と同様の効果がある他、■任意の間仕切り壁13にドア等を取り付けることにより、建物ユニット30とパネル10,10’および間仕切り壁13とで囲まれた空間を自在に連通させることができ、これにより、目的に対応した地下室を容易に構成することができる。
【0019】図6には、本発明の第4実施例が示されている。この実施例の地下室6は、長辺方向が隣接した2つの前記地下室用建物ユニット30を、その長辺方向に沿って間隔をあけて設置するとともに、これらの建物ユニット30の対向する短辺方向における室外側同士を前記パネル10’で連結したものである。そして、パネル10’同士を、2個の建物ユニット30における短辺方向の長さとほぼ等しい梁14''で補強してもよい。なお、以上の第2〜4実施例において、第1実施例と同一構造、同一部材には同一符号を付し、構造等の詳細な説明は省略または簡略化してある。このような第4実施例でも前記第1実施例の■、■とと同様の効果がある他、■パネル10’は建物ユニット30の対向する短辺方向における室外側に配置され、室内側には配置されないので、室内側の分だけ材料の節約が可能となる。
【0020】図7,8には、本発明の第5実施例が示されている。この実施例の地下室7は、地下室用の擁壁40の内部空間に1個の前記地下室用建物ユニット30を設置したものである。すなわち、擁壁40はほぼ四角形のリング状に形成されており、このような擁壁40の下部には床板41が打設されている。これらの擁壁40、床板41の内部には、図8に示すように鉄筋42が縦横に配置され、これにより、土圧に充分に対抗できるようになっている。このような擁壁40の内側には内壁43が取り付けられ、また、床板41の上面には床面材44が張り付けられるようになっている。従って、擁壁40の内部を地下室として使用できる。
【0021】建物ユニット30は、擁壁40内のほぼ中央部に、すなわち、擁壁40から間隔をあけて設置されている。この際、建物ユニット30と擁壁40の外周との間隔は、図8に示すように、建物ユニット30の幅寸法とほぼ同一となっており、従って、このような建物ユニット30および擁壁40の上には、これら30,40に跨がって地上用の建物ユニット45が設置されている。これにより、擁壁40は地上用の建物ユニット45の基礎を兼ねていることになる。このような地下室7において、建物ユニット30と擁壁40との間の任意の位置に、図7に想像線で示すように、前記間仕切り壁13と同様の構造となった垂直のパネル50を設けてもよい。
【0022】このような第5実施例によれば次のような効果がある。すなわち、■擁壁40の空間内に1つの地下室用建物ユニット30を設置しただけで地下室7を形成でき、これにより、少ない建物ユニットで大空間の地下室7を形成できる。また、■建物ユニット30と擁壁40との間の任意の位置にパネル50を設けた場合には、擁壁40と建物ユニット30との間の空間を自在に区画でき、これにより、変化に富んだ地下室7となる。さらに、■建物ユニット30と擁壁40との上面には、これら30,40に跨がって地上用の建物ユニット45が設置されているので、擁壁40は地上用の建物ユニット45の基礎を兼ねていることになり、地上用の建物ユニット45用の基礎を別個に設けなくてもよく、その分の手間と材料とが省ける。
【0023】なお、本発明は前述の各実施例に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲であれば次に示すような変形例を含むものである。例えば、前記第1〜4実施例では、パネル10,10’の補強部材として梁14,14’,14''としたが、これに限らず、補強部材はパイプ状部材、角柱状部材等でもよい。
【0024】また、前記第3,5実施例では、パネルとしての間仕切り壁13,13’を使用したが、これに限らず、例えば対向する建物ユニット30の上下部に配置された水平梁、パイプ状部材等を使用してもよい。さらに、前記第1〜4実施例でパネル10,10’を上下1本ずつの梁14,14’,14''で補強したが、これに限らず、例えばパネル10,10’の上下を2本ずつで補強してもよい。また、前記第5実施例で建物ユニット30を擁壁40の内部空間のほぼ中央部に設置したが、これに限らず、内部空間の任意の位置に設置してもよい。要するに、本発明では、建物ユニット30が擁壁40から間隔を明けて設置されていればよい。
【0025】
【発明の効果】以上で説明したように、本発明の地下室構造によれば、間隔をあけて並べられた建物ユニットを垂直のパネルで連結すれば、このパネルで囲まれた部分も地下室とでき、これにより、少ない数量の地下室用建物ユニットで大空間の地下室を形成することができるようになる。
【0026】本発明の他の地下室構造によれば、地下室用建物ユニットが擁壁から間隔をあけて擁壁内に配置され、この建物ユニットが擁壁の内部空間とともに地下室を構成するので、少ない数量の地下室用建物ユニットで大空間の地下室を形成することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に係るユニット式建物を示す斜視図である。
【図2】本実施例の地下室構造を示す平面図である。
【図3】図2の詳細を示す平面図である。
【図4】本発明の第2実施例に係る地下室構造を示す平面図である。
【図5】本発明の第3実施例に係る地下室構造を示す平面図である。
【図6】本発明の第4実施例に係る地下室構造を示す平面図である。
【図7】本発明の第5実施例に係る地下室構造を示す斜視図である。
【図8】図7の断面図である。
【符号の説明】
1 ユニット式建物
2 地上用建物
3〜7 地下室
10,10’ 垂直のパネル
13,13’ パネルとなる間仕切り壁
14,14’,14'' 水平の補強部材である梁
30 地下室用建物ユニット
40 擁壁
45 地上用建物ユニット
50 垂直のパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】 地下室を複数の建物ユニットで構成する地下室構造であって、前記複数の建物ユニットを間隔をあけて並べるとともに、これらの建物ユニット同士を垂直のパネルで連結したことを特徴とする地下室構造。
【請求項2】 請求項1に記載の地下室構造において、前記垂直のパネルは、このパネルと直交する水平の補強部材で補強されていることを特徴とする地下室構造。
【請求項3】 地下室用の擁壁内にこの擁壁から間隔をあけて地下室用建物ユニットが配置されていることを特徴とする地下室構造。
【請求項4】 請求項3に記載の地下室構造において、前記擁壁と前記地下室用建物ユニットとの間には垂直のパネルが配置されていることを特徴とする地下室構造。
【請求項5】 請求項3または4に記載の地下室構造において、前記地下室用建物ユニットおよび擁壁の上には、これらに跨がって地上用の建物ユニットが設置されていることを特徴とする地下室構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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