地下室用床下換気構造
【課題】 地下室の床下換気構造の構築にあたり、構造が簡単で、地下室の置床の下側を換気して地下室の床を乾燥した状態に維持することができる地下室用床下換気構造を提供する。
【解決手段】地下室のスラブ21上に一定間隔をおいて置床20が配設され、前記置床20に、地下室10内から置床20の下側に空気を導入する導入口12が設けられ、置床20の下側の空気を地下室10外へ排出する排気手段21,17が設けられている地下室用床下換気構造を構成する。
【解決手段】地下室のスラブ21上に一定間隔をおいて置床20が配設され、前記置床20に、地下室10内から置床20の下側に空気を導入する導入口12が設けられ、置床20の下側の空気を地下室10外へ排出する排気手段21,17が設けられている地下室用床下換気構造を構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建造物地下室の床下の空気を換気する地下室用床下換気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、高気密・高断熱住宅では、気密性が良すぎて自然換気が期待できない状態になっており、炭酸ガス、たばこの煙、ホルムアルデヒド等による室内汚染、湿気による結露、かびの発生、又は、においの問題等、そこに住む人にとって深刻な事態が発生する場合がある。
【0003】
例えば、近年問題となっているシックハウス症候群は、住宅の内装材等から発生する化学物質を体内に取り込むと発症すると言われており、頭痛や目がちかちかするといった症状が多い。代表的な化学物質としては、建材の接着剤に使われるホルムアルデヒド等がある。
【0004】
このような状況の下、2003年7月から改正後の建築基準法が施行されており、原則として2時間で室内の空気を全部入れ替える換気能力が必要とされ、室内換気の重要性はますます高まってきている。また、住宅の中でも特に地下室は、地上の部屋に比較して自然換気が期待できないので、室内換気の必要性が高い。
【0005】
この地下室内の換気を目的とした発明は、従来にもあり、特許文献1に記載されたようなものがある。この特許文献1には、「立設された基礎と前記基礎上に構築された床部とに囲まれた床下部の換気構造において、前記床部上に構築された壁部と、前記壁部の外面に上下方向にわたって配設された胴縁を介して取付けられた外装材との間に形成され、軒裏において建物外方と連通する間隙からなる通気部と、前記基礎外面に設けられ、前記間隙と連通する連通部と、を含み、前記連通部は、前記基礎を貫通して形成され、前記床下部と連通する開口部を有し、前記通気部と前記連通部を介して、前記床下部と前記建物外方とを連通させたことを特徴とする床下部の換気構造。」が紹介されている。
【0006】
これによれば、「湿気等の障害から建物を保護する床下スペースの換気、特に、建物の床下スペースに地下室を形成して物入れ等に利用する場合に人が出入りする空間として、確実な換気が可能となる。」旨記載されている。
【特許文献1】特開平08−209814号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来のものは、1階部分の床下が半地下室となっていて人が出入りすることができる地下室の換気を目的としたものとなっており、床下の換気といっても、それは、1階部分の床下にあたる地下室の室内自体の換気を目的としたものであるから、これを直接に地下室の床下構造に当てはめることは困難である。
【0008】
また、一般に、住宅用地下室においてスラブ上に置床を配設する場合に、置床とスラブとの間の空間までは換気されていないから、床が湿気を帯びてカビが生える虞がある。その他にも、前述したような炭酸ガス、ホルムアルデヒド等による室内汚染、湿気による結露、又は、においの問題等、そこに住む人にとって深刻な事態が発生する虞もある。
【0009】
そこで、この発明は、地下室の床下換気構造の構築にあたり、構造が簡単で、地下室の置床の下側を換気して地下室の床を乾燥した状態に維持することができる地下室用床下換気構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を達成するために、請求項1に記載の発明は、地下室のスラブ上に一定間隔をおいて置床が配設され、前記置床に、前記地下室内から前記置床の下側に空気を導入する導入口が設けられ、前記置床の下側の空気を前記地下室外へ排出する排気手段が設けられている地下室用床下換気構造としたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記導入口は、前記置床の複数の角部に形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構成に加え、前記排気手段は、前記置床下側の空気を地下室外部へと導く排気通路と、建造物の地上部分の壁に設けられて前記排気通路に導かれた空気の排気を行う排気口とを備えていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一つに記載の構成に加え、前記建造物の地上部分の壁に設けられて空気の吸気を行う吸気口と、該吸気口から前記地下室へと空気を導く吸気通路と、該吸気通路により導かれた空気を前記地下室内へと進入させる地下室進入口とを備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、地下室のスラブ上に一定間隔をおいて置床が配設され、前記地下室外から前記置床の下側に外の空気を吸入する吸気手段が設けられ、前記置床に、前記置床の下側の空気を前記地下室内へ導出する導出口が設けられていることを特徴とする地下室用床下換気構造としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、置床に、地下室内から置床の下側に空気を導入する導入口が設けられ、置床の下側の空気を地下室外へと排出する排気手段が設けられていることから、地下室の気密性が良いために自然換気が期待できない状態であっても、地下室の置床下側の換気をすることができるので、置床の上下の空気が換気され、置床において、湿気による結露、カビの発生、又は臭いの発生等が生じにくくなる。また、炭酸ガス、ホルムアルデヒド等による室内汚染も生じにくくなる。さらに、置床が乾燥した状態にできることから、置床から地下室の側壁等への汚染が進むことも防止できるので、地下室内全体の汚染も防止されて地下室内を適度の乾燥した健全な状態に維持することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、導入口が置床の複数の角部に設けられているから、地下室床下空間の隅々まで換気できるので、特に湿気の溜まりやすい地下室の床の角部においても、カビの発生を防止することができる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、排気手段は、置床下側の空気を地下室外部へと導く排気通路と、建造物の地上部分に構築される壁に設けられて排気通路に導かれた空気の排気を行う排気口とを備えているから、置床下側を換気した空気を直ちに外部に放出することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、建造物の地上部分の壁に設けられて空気の吸気を行う吸気口と、吸気口から地下室へと空気を導く吸気通路と、吸気通路により導かれた空気を地下室内へと進入させる地下室進入口とを備えるから、外部の空気は、まず、居住空間である地下室内を循環し、その地下室内を循環した空気は、導入口から置床の下側へ進入されるので、置床の下側を換気する前に、地下室内も換気することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、外の空気を、地下室の置床の下側を通してから地下室内へと進入させて、地下室用床下換気構造を地熱利用による冷暖房換気構造として使用することができるから、地下室外から外気をそのまま地下室内に進入させる場合に比較して、地下室内は、冬には更に室温を上昇させて暖かくすることができるので暖房効率が良く、夏には更に室温を下降させて涼しくすることができるので冷房効率が良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
[発明の実施の形態1]
【0021】
図1乃至図3には、この発明の実施の形態を示す。
【0022】
まず構成を説明すると、図1及び図3で示すように、住宅の地下室10は、地下室10のスラブ22上に一定間隔をおいて置床20が配設され、置床20に形成されて地下室10内から置床20の下側に空気を導入する導入口としての床ガラリ12が設けられ、空気の吸気及び排気をする吸気排気部11が設けられ、床下の隙間23及び地下室10内を換気する地下室用床下換気構造を構成する。
【0023】
置床20は、スラブ22上で支持金具によって支持されて配設される複数の床パネルにより構成され、置床20とスラブ22との間には、10cm位の隙間23が形成される。
【0024】
前記導入口である床ガラリ12は、地下室10内から置床20の下側に空気を導入する開口であり、図1で示すように、地下室10の置床20の3つの角部に形成される。床ガラリ12は、置床20上において、吸気排気部11から遠方の角に優先して設けられ、近傍の角に設けないようにされており、遠方の床ガラリ12から空気を吸気する吸気力が弱くならないように配設されている。
【0025】
また、この吸気排気部11は、1階の側壁9に隣接して設けられ、外部の空気を地下室10内へと吸気する機能及び地下室10内の空気を外部へと排気する機能を有する。図2で示すように、側壁9を貫通して外部から空気の吸気を行う入口である吸気口16と外部へと空気の排気を行う出口である排気口17とが形成されている。
【0026】
吸気口16は、地下室10へ空気を導く吸気通路18へと繋がっており、吸気通路18の途中に空気を地下室10内へと進入させる地下室進入口である吸気ガラリ19が設けられている。
【0027】
排気口17は、置床20の床下の隙間23と排気通路21で繋がれ、図示しないファンが取り付けられているので、ファンの回転によって、置床20の下側の空気を強制的に排気通路21を通して排気口17から外部へと排気できるようにされている。また、ファンは、少なくとも、地下室内の24時間換気が可能な程度の耐久性のものが使用される。
【0028】
地下室10内では、階段部13が、吸気排気部11と、これに取り付けられたドア14と、ボード15a,15bとによって区画されている。このように区画されて地下室10が壁によって隔てられた状態に構成し、吸気排気部11から吸気された空気が、階段から上方へと逃げることがないようにされ、区画しない場合に比較して地下室10内の空気の換気及び地下室10の床下における空気の換気が効率よくできるように構成されている。
【0029】
次に、地下室用床下換気構造における換気方法を述べる。
【0030】
まず、排気口17の図示しないファンが駆動されると、外部の空気が、図2で示す吸気口16から進入し、吸気通路18を通って地下室進入口である吸気ガラリ19から地下室10内へと導かれる。そして、この空気は、図1の実線矢印で示すように、地下室10内を循環してこの地下室10内を換気した後、床ガラリ12を介して置床20の下側の隙間23へと吸い込まれる。そして、図2及び図3の破線矢印で示すように隙間23を通って吸気排気部11へと流れて行き、図2で示すように排気通路21を通って排気口17に備えられるファンの動力によって外部へと放出される。
【0031】
また、このような換気は、最低限、24時間換気が可能な程度に行われる。
【0032】
このような地下室用床下換気構造によれば、地下室10の気密性が良いために自然換気が期待できない状態であっても、地下室10内の空気を換気することができると共に、その換気に用いた空気を利用して地下室10の置床20の下側における隙間23の空気の換気も行うことができるので、置床20の上下の空気が換気され、置床20において、湿気による結露、カビの発生、又はにおいの発生等が生じにくくなり、又、炭酸ガス、ホルムアルデヒド等による室内汚染も生じにくくなる。
【0033】
また、ファンを24時間換気に十分な程度に稼働させれば、地下室10内の24時間換気が可能になると共に、地下室10の床下の隙間23における24時間換気も可能になる。
【0034】
さらに、置床20が乾燥した状態にできることから、置床20から地下室10の側壁等へ汚染が進むことも防止でき、地下室10内の全体を適度の乾燥した状態に維持することができる。
【0035】
また、地下室10の床下空間の隅々まで空気の換気ができるので、特に湿気の溜まりやすい地下室10における床の角部においても、カビの発生を防止できる。
【0036】
なお、この発明の実施の形態では、吸気排気部11は、階段を登り切った位置に設けられているが、上記実施の形態に限られず、床下の隙間23の換気を行うことができるものであれば、地下室10内のボード15a又はボード15bの内部を空洞にして吸気通路18及び排気通路21が設けられるようにする等、地下室10内の他のものを利用して空気の吸気排気を行う構成にしても良い。また、吸気通路18と排気通路21とを別々の場所から行えるように、例えば、吸気通路18を吸気排気部11の位置に設け、排気通路18をボード15bの位置に設ける等、地下室の間取りによって、適宜、吸気排気の位置を変更して構成しても良い。
【0037】
さらに、この発明の実施の形態では、階段部13は、吸気排気部11、ドア14、ボード15a,15bによって区画され、空気が、吸気排気部11の吸気口16、吸気通路18、吸気ガラリ19を通って地下室10内に進入するようにされているが、上記実施の形態に限られず、空気が地下室10内へと導かれるのであれば、他の部分から空気が地下室10内に進入するように構成しても良い。例えば、地下室10に、ボード15a,15b、ドア14を設けない場合に、空気が、上層階から階段を通って地下室10内へと吸気されるように構成しても良い。この場合には、吸気口16が上層階に設けられるが、吸気通路18及び吸気ガラリ19が省略でき、これらを階段によって代用することができる。
[発明の実施の形態2]
【0038】
次に、この発明の実施の形態2について説明する。
【0039】
この実施の形態2が実施の形態1と異なるのは、実施の形態1で使用された排気口17のファンが逆回転するという点と、実施の形態1で使用された導入口である床ガラリ12が導出口として、吸気口16が排気口として、排気口17が吸気手段である吸気口として、吸気通路18が排気通路として、地下室進入口である吸気ガラリ19が地下室進出口である排気ガラリとして、排気通路21が吸気手段である吸気通路として機能する点である。
【0040】
吸気手段である吸気口及び吸気通路は、地下室10の外から置床20の下側に外の空気を吸入する機能を有する。また、導出口は、置床20の下側の空気を地下室10内へ導出する機能を有する。その他の構成については、実施の形態1と同じである。
【0041】
この地下室用床下換気構造における換気方法を述べる。
【0042】
換気を行うための空気の流れは、実施の形態1の地下室用床下換気構造の場合と反対向きになる。すなわち、外の空気は、排気口17のファンが逆回転することによって吸気され、排気通路21を図2で示す破線矢印の逆方向に進んで隙間23へと吸い込まれる。その空気は、隙間23内を図2及び図3で示す破線矢印の逆方向に進み、床ガラリ12を介して地下室10へと導出される。この床ガラリ12は、置床20の下側のゴミ等を通さないフィルターとしても機能するものが用いられる。外の空気は、排気口17から地下室10内へと進む間に地熱によって、冬は暖められ、夏は冷やされることになる。
【0043】
次に、その空気は、図1で示すように、実線矢印を逆方向に進んで地下室10内を循環する。地下室10内では、温度の高い空気が室内の天井側に溜まり、温度の低い空気が室内の床側に溜まる。
【0044】
夏に地下室10内の温度を下げたい場合には、図2で示すように吸気ガラリ19は、地下室10の天井の近傍に設けられていることから、その高さの位置に溜まる暖かい空気が優先して吸気ガラリ19から吸気通路18を通って吸気口16で排気される。
【0045】
冬に地下室10内の温度を上げたい場合には、吸気ガラリ19は、図示しない地下室10の床の近傍に設けられ、その高さの位置に溜まる冷たい空気が優先して吸気ガラリ19から吸気通路18を通って吸気口16で排気される。
【0046】
地熱は外気に比較して四季を通じて温度が一定であるから、地下室10は元々、夏には涼しく、冬には暖かくなる特徴があるが、この発明の実施の形態2によれば、外気を地下室10の外からそのまま地下室10内に進入させる場合に比較して、冬は、外気が排気口17から床ガラリ12を通るまでの間に暖められて地下室10内へと進入し、地下室10の床側に溜まる冷えた空気は吸気ガラリ19を通して排気されるから室温を上昇することができるので暖房効率が良く、夏は、外気が排気口17から床ガラリ12を通るまでの間に冷やされて地下室10内へと進入し、地下室10の天井側に溜まる暖かい空気は吸気ガラリ19を通って排気されるから室温を下降することができるので冷房効率が良い。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】この発明の実施の形態に係る地下室用床下換気構造が適用される地下室の平面図である。
【図2】同実施の形態に係る図1中のA−A線に沿う断面図である。
【図3】同実施の形態に係る図1中のB−B線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0048】
10 地下室
11 吸気排気部
12 床ガラリ
13 階段部
14 ドア
15a,15b ボード
16 吸気口
17 排気口
18 吸気通路
19 吸気ガラリ
20 置床
21 排気通路
22 スラブ
23 隙間
【技術分野】
【0001】
この発明は、建造物地下室の床下の空気を換気する地下室用床下換気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、高気密・高断熱住宅では、気密性が良すぎて自然換気が期待できない状態になっており、炭酸ガス、たばこの煙、ホルムアルデヒド等による室内汚染、湿気による結露、かびの発生、又は、においの問題等、そこに住む人にとって深刻な事態が発生する場合がある。
【0003】
例えば、近年問題となっているシックハウス症候群は、住宅の内装材等から発生する化学物質を体内に取り込むと発症すると言われており、頭痛や目がちかちかするといった症状が多い。代表的な化学物質としては、建材の接着剤に使われるホルムアルデヒド等がある。
【0004】
このような状況の下、2003年7月から改正後の建築基準法が施行されており、原則として2時間で室内の空気を全部入れ替える換気能力が必要とされ、室内換気の重要性はますます高まってきている。また、住宅の中でも特に地下室は、地上の部屋に比較して自然換気が期待できないので、室内換気の必要性が高い。
【0005】
この地下室内の換気を目的とした発明は、従来にもあり、特許文献1に記載されたようなものがある。この特許文献1には、「立設された基礎と前記基礎上に構築された床部とに囲まれた床下部の換気構造において、前記床部上に構築された壁部と、前記壁部の外面に上下方向にわたって配設された胴縁を介して取付けられた外装材との間に形成され、軒裏において建物外方と連通する間隙からなる通気部と、前記基礎外面に設けられ、前記間隙と連通する連通部と、を含み、前記連通部は、前記基礎を貫通して形成され、前記床下部と連通する開口部を有し、前記通気部と前記連通部を介して、前記床下部と前記建物外方とを連通させたことを特徴とする床下部の換気構造。」が紹介されている。
【0006】
これによれば、「湿気等の障害から建物を保護する床下スペースの換気、特に、建物の床下スペースに地下室を形成して物入れ等に利用する場合に人が出入りする空間として、確実な換気が可能となる。」旨記載されている。
【特許文献1】特開平08−209814号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来のものは、1階部分の床下が半地下室となっていて人が出入りすることができる地下室の換気を目的としたものとなっており、床下の換気といっても、それは、1階部分の床下にあたる地下室の室内自体の換気を目的としたものであるから、これを直接に地下室の床下構造に当てはめることは困難である。
【0008】
また、一般に、住宅用地下室においてスラブ上に置床を配設する場合に、置床とスラブとの間の空間までは換気されていないから、床が湿気を帯びてカビが生える虞がある。その他にも、前述したような炭酸ガス、ホルムアルデヒド等による室内汚染、湿気による結露、又は、においの問題等、そこに住む人にとって深刻な事態が発生する虞もある。
【0009】
そこで、この発明は、地下室の床下換気構造の構築にあたり、構造が簡単で、地下室の置床の下側を換気して地下室の床を乾燥した状態に維持することができる地下室用床下換気構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を達成するために、請求項1に記載の発明は、地下室のスラブ上に一定間隔をおいて置床が配設され、前記置床に、前記地下室内から前記置床の下側に空気を導入する導入口が設けられ、前記置床の下側の空気を前記地下室外へ排出する排気手段が設けられている地下室用床下換気構造としたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記導入口は、前記置床の複数の角部に形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構成に加え、前記排気手段は、前記置床下側の空気を地下室外部へと導く排気通路と、建造物の地上部分の壁に設けられて前記排気通路に導かれた空気の排気を行う排気口とを備えていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一つに記載の構成に加え、前記建造物の地上部分の壁に設けられて空気の吸気を行う吸気口と、該吸気口から前記地下室へと空気を導く吸気通路と、該吸気通路により導かれた空気を前記地下室内へと進入させる地下室進入口とを備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、地下室のスラブ上に一定間隔をおいて置床が配設され、前記地下室外から前記置床の下側に外の空気を吸入する吸気手段が設けられ、前記置床に、前記置床の下側の空気を前記地下室内へ導出する導出口が設けられていることを特徴とする地下室用床下換気構造としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、置床に、地下室内から置床の下側に空気を導入する導入口が設けられ、置床の下側の空気を地下室外へと排出する排気手段が設けられていることから、地下室の気密性が良いために自然換気が期待できない状態であっても、地下室の置床下側の換気をすることができるので、置床の上下の空気が換気され、置床において、湿気による結露、カビの発生、又は臭いの発生等が生じにくくなる。また、炭酸ガス、ホルムアルデヒド等による室内汚染も生じにくくなる。さらに、置床が乾燥した状態にできることから、置床から地下室の側壁等への汚染が進むことも防止できるので、地下室内全体の汚染も防止されて地下室内を適度の乾燥した健全な状態に維持することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、導入口が置床の複数の角部に設けられているから、地下室床下空間の隅々まで換気できるので、特に湿気の溜まりやすい地下室の床の角部においても、カビの発生を防止することができる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、排気手段は、置床下側の空気を地下室外部へと導く排気通路と、建造物の地上部分に構築される壁に設けられて排気通路に導かれた空気の排気を行う排気口とを備えているから、置床下側を換気した空気を直ちに外部に放出することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、建造物の地上部分の壁に設けられて空気の吸気を行う吸気口と、吸気口から地下室へと空気を導く吸気通路と、吸気通路により導かれた空気を地下室内へと進入させる地下室進入口とを備えるから、外部の空気は、まず、居住空間である地下室内を循環し、その地下室内を循環した空気は、導入口から置床の下側へ進入されるので、置床の下側を換気する前に、地下室内も換気することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、外の空気を、地下室の置床の下側を通してから地下室内へと進入させて、地下室用床下換気構造を地熱利用による冷暖房換気構造として使用することができるから、地下室外から外気をそのまま地下室内に進入させる場合に比較して、地下室内は、冬には更に室温を上昇させて暖かくすることができるので暖房効率が良く、夏には更に室温を下降させて涼しくすることができるので冷房効率が良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
[発明の実施の形態1]
【0021】
図1乃至図3には、この発明の実施の形態を示す。
【0022】
まず構成を説明すると、図1及び図3で示すように、住宅の地下室10は、地下室10のスラブ22上に一定間隔をおいて置床20が配設され、置床20に形成されて地下室10内から置床20の下側に空気を導入する導入口としての床ガラリ12が設けられ、空気の吸気及び排気をする吸気排気部11が設けられ、床下の隙間23及び地下室10内を換気する地下室用床下換気構造を構成する。
【0023】
置床20は、スラブ22上で支持金具によって支持されて配設される複数の床パネルにより構成され、置床20とスラブ22との間には、10cm位の隙間23が形成される。
【0024】
前記導入口である床ガラリ12は、地下室10内から置床20の下側に空気を導入する開口であり、図1で示すように、地下室10の置床20の3つの角部に形成される。床ガラリ12は、置床20上において、吸気排気部11から遠方の角に優先して設けられ、近傍の角に設けないようにされており、遠方の床ガラリ12から空気を吸気する吸気力が弱くならないように配設されている。
【0025】
また、この吸気排気部11は、1階の側壁9に隣接して設けられ、外部の空気を地下室10内へと吸気する機能及び地下室10内の空気を外部へと排気する機能を有する。図2で示すように、側壁9を貫通して外部から空気の吸気を行う入口である吸気口16と外部へと空気の排気を行う出口である排気口17とが形成されている。
【0026】
吸気口16は、地下室10へ空気を導く吸気通路18へと繋がっており、吸気通路18の途中に空気を地下室10内へと進入させる地下室進入口である吸気ガラリ19が設けられている。
【0027】
排気口17は、置床20の床下の隙間23と排気通路21で繋がれ、図示しないファンが取り付けられているので、ファンの回転によって、置床20の下側の空気を強制的に排気通路21を通して排気口17から外部へと排気できるようにされている。また、ファンは、少なくとも、地下室内の24時間換気が可能な程度の耐久性のものが使用される。
【0028】
地下室10内では、階段部13が、吸気排気部11と、これに取り付けられたドア14と、ボード15a,15bとによって区画されている。このように区画されて地下室10が壁によって隔てられた状態に構成し、吸気排気部11から吸気された空気が、階段から上方へと逃げることがないようにされ、区画しない場合に比較して地下室10内の空気の換気及び地下室10の床下における空気の換気が効率よくできるように構成されている。
【0029】
次に、地下室用床下換気構造における換気方法を述べる。
【0030】
まず、排気口17の図示しないファンが駆動されると、外部の空気が、図2で示す吸気口16から進入し、吸気通路18を通って地下室進入口である吸気ガラリ19から地下室10内へと導かれる。そして、この空気は、図1の実線矢印で示すように、地下室10内を循環してこの地下室10内を換気した後、床ガラリ12を介して置床20の下側の隙間23へと吸い込まれる。そして、図2及び図3の破線矢印で示すように隙間23を通って吸気排気部11へと流れて行き、図2で示すように排気通路21を通って排気口17に備えられるファンの動力によって外部へと放出される。
【0031】
また、このような換気は、最低限、24時間換気が可能な程度に行われる。
【0032】
このような地下室用床下換気構造によれば、地下室10の気密性が良いために自然換気が期待できない状態であっても、地下室10内の空気を換気することができると共に、その換気に用いた空気を利用して地下室10の置床20の下側における隙間23の空気の換気も行うことができるので、置床20の上下の空気が換気され、置床20において、湿気による結露、カビの発生、又はにおいの発生等が生じにくくなり、又、炭酸ガス、ホルムアルデヒド等による室内汚染も生じにくくなる。
【0033】
また、ファンを24時間換気に十分な程度に稼働させれば、地下室10内の24時間換気が可能になると共に、地下室10の床下の隙間23における24時間換気も可能になる。
【0034】
さらに、置床20が乾燥した状態にできることから、置床20から地下室10の側壁等へ汚染が進むことも防止でき、地下室10内の全体を適度の乾燥した状態に維持することができる。
【0035】
また、地下室10の床下空間の隅々まで空気の換気ができるので、特に湿気の溜まりやすい地下室10における床の角部においても、カビの発生を防止できる。
【0036】
なお、この発明の実施の形態では、吸気排気部11は、階段を登り切った位置に設けられているが、上記実施の形態に限られず、床下の隙間23の換気を行うことができるものであれば、地下室10内のボード15a又はボード15bの内部を空洞にして吸気通路18及び排気通路21が設けられるようにする等、地下室10内の他のものを利用して空気の吸気排気を行う構成にしても良い。また、吸気通路18と排気通路21とを別々の場所から行えるように、例えば、吸気通路18を吸気排気部11の位置に設け、排気通路18をボード15bの位置に設ける等、地下室の間取りによって、適宜、吸気排気の位置を変更して構成しても良い。
【0037】
さらに、この発明の実施の形態では、階段部13は、吸気排気部11、ドア14、ボード15a,15bによって区画され、空気が、吸気排気部11の吸気口16、吸気通路18、吸気ガラリ19を通って地下室10内に進入するようにされているが、上記実施の形態に限られず、空気が地下室10内へと導かれるのであれば、他の部分から空気が地下室10内に進入するように構成しても良い。例えば、地下室10に、ボード15a,15b、ドア14を設けない場合に、空気が、上層階から階段を通って地下室10内へと吸気されるように構成しても良い。この場合には、吸気口16が上層階に設けられるが、吸気通路18及び吸気ガラリ19が省略でき、これらを階段によって代用することができる。
[発明の実施の形態2]
【0038】
次に、この発明の実施の形態2について説明する。
【0039】
この実施の形態2が実施の形態1と異なるのは、実施の形態1で使用された排気口17のファンが逆回転するという点と、実施の形態1で使用された導入口である床ガラリ12が導出口として、吸気口16が排気口として、排気口17が吸気手段である吸気口として、吸気通路18が排気通路として、地下室進入口である吸気ガラリ19が地下室進出口である排気ガラリとして、排気通路21が吸気手段である吸気通路として機能する点である。
【0040】
吸気手段である吸気口及び吸気通路は、地下室10の外から置床20の下側に外の空気を吸入する機能を有する。また、導出口は、置床20の下側の空気を地下室10内へ導出する機能を有する。その他の構成については、実施の形態1と同じである。
【0041】
この地下室用床下換気構造における換気方法を述べる。
【0042】
換気を行うための空気の流れは、実施の形態1の地下室用床下換気構造の場合と反対向きになる。すなわち、外の空気は、排気口17のファンが逆回転することによって吸気され、排気通路21を図2で示す破線矢印の逆方向に進んで隙間23へと吸い込まれる。その空気は、隙間23内を図2及び図3で示す破線矢印の逆方向に進み、床ガラリ12を介して地下室10へと導出される。この床ガラリ12は、置床20の下側のゴミ等を通さないフィルターとしても機能するものが用いられる。外の空気は、排気口17から地下室10内へと進む間に地熱によって、冬は暖められ、夏は冷やされることになる。
【0043】
次に、その空気は、図1で示すように、実線矢印を逆方向に進んで地下室10内を循環する。地下室10内では、温度の高い空気が室内の天井側に溜まり、温度の低い空気が室内の床側に溜まる。
【0044】
夏に地下室10内の温度を下げたい場合には、図2で示すように吸気ガラリ19は、地下室10の天井の近傍に設けられていることから、その高さの位置に溜まる暖かい空気が優先して吸気ガラリ19から吸気通路18を通って吸気口16で排気される。
【0045】
冬に地下室10内の温度を上げたい場合には、吸気ガラリ19は、図示しない地下室10の床の近傍に設けられ、その高さの位置に溜まる冷たい空気が優先して吸気ガラリ19から吸気通路18を通って吸気口16で排気される。
【0046】
地熱は外気に比較して四季を通じて温度が一定であるから、地下室10は元々、夏には涼しく、冬には暖かくなる特徴があるが、この発明の実施の形態2によれば、外気を地下室10の外からそのまま地下室10内に進入させる場合に比較して、冬は、外気が排気口17から床ガラリ12を通るまでの間に暖められて地下室10内へと進入し、地下室10の床側に溜まる冷えた空気は吸気ガラリ19を通して排気されるから室温を上昇することができるので暖房効率が良く、夏は、外気が排気口17から床ガラリ12を通るまでの間に冷やされて地下室10内へと進入し、地下室10の天井側に溜まる暖かい空気は吸気ガラリ19を通って排気されるから室温を下降することができるので冷房効率が良い。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】この発明の実施の形態に係る地下室用床下換気構造が適用される地下室の平面図である。
【図2】同実施の形態に係る図1中のA−A線に沿う断面図である。
【図3】同実施の形態に係る図1中のB−B線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0048】
10 地下室
11 吸気排気部
12 床ガラリ
13 階段部
14 ドア
15a,15b ボード
16 吸気口
17 排気口
18 吸気通路
19 吸気ガラリ
20 置床
21 排気通路
22 スラブ
23 隙間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下室のスラブ上に一定間隔をおいて置床が配設され、前記置床に、前記地下室内から前記置床の下側に空気を導入する導入口が設けられ、前記置床の下側の空気を前記地下室外へ排出する排気手段が設けられていることを特徴とする地下室用床下換気構造。
【請求項2】
前記導入口は、前記置床の複数の角部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の地下室用床下換気構造。
【請求項3】
前記排気手段は、前記置床下側の空気を地下室外部へと導く排気通路と、建造物の地上部分の壁に設けられて前記排気通路に導かれた空気の排気を行う排気口とを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の地下室用床下換気構造。
【請求項4】
前記建造物の地上部分の壁に設けられて空気の吸気を行う吸気口と、該吸気口から前記地下室へと空気を導く吸気通路と、該吸気通路により導かれた空気を前記地下室内へと進入させる地下室進入口とを備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の地下室用床下換気構造。
【請求項5】
地下室のスラブ上に一定間隔をおいて置床が配設され、前記地下室外から前記置床の下側に外の空気を吸入する吸気手段が設けられ、前記置床に、前記置床の下側の空気を前記地下室内へ導出する導出口が設けられていることを特徴とする地下室用床下換気構造。
【請求項1】
地下室のスラブ上に一定間隔をおいて置床が配設され、前記置床に、前記地下室内から前記置床の下側に空気を導入する導入口が設けられ、前記置床の下側の空気を前記地下室外へ排出する排気手段が設けられていることを特徴とする地下室用床下換気構造。
【請求項2】
前記導入口は、前記置床の複数の角部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の地下室用床下換気構造。
【請求項3】
前記排気手段は、前記置床下側の空気を地下室外部へと導く排気通路と、建造物の地上部分の壁に設けられて前記排気通路に導かれた空気の排気を行う排気口とを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の地下室用床下換気構造。
【請求項4】
前記建造物の地上部分の壁に設けられて空気の吸気を行う吸気口と、該吸気口から前記地下室へと空気を導く吸気通路と、該吸気通路により導かれた空気を前記地下室内へと進入させる地下室進入口とを備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の地下室用床下換気構造。
【請求項5】
地下室のスラブ上に一定間隔をおいて置床が配設され、前記地下室外から前記置床の下側に外の空気を吸入する吸気手段が設けられ、前記置床に、前記置床の下側の空気を前記地下室内へ導出する導出口が設けられていることを特徴とする地下室用床下換気構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2006−2385(P2006−2385A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178030(P2004−178030)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(504196492)株式会社 ▲高▼▲橋▼監理 (33)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(504196492)株式会社 ▲高▼▲橋▼監理 (33)
【Fターム(参考)】
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