説明

地下式貯留槽

【課題】本発明は、上からの荷重を一個の単位部材でなく全体の単位部材で均一に支えられるようにして、個々の単位部材にかかる荷重を小さくすることで樹脂製単位部材を使用する地下式貯留槽の安全性を高める手段を提供するものである。
【解決手段】本発明は、地下に樹脂製の単位部材を上下左右に配列し貯留空間を形成し、当該貯留空間をシートで覆った貯留槽において、貯留空間と地表面の間に鉄筋コンクリート製の板を貯留空間の全体を覆うように配置した地下式貯留槽である。貯留空間の上全体に鉄筋コンクリート製の板を敷設することで、上からの荷重を単位部材一個もしくは数個が支えるのではなく、全ての単位部材が支えることで小さな荷重が均一に掛るようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製単位部材を用いた貯留槽の技術に属する。
【背景技術】
【0002】
雨水等の流出抑制を目的として、プラスチックなどで製造された単位部材を地下に配列充填し貯留空間を形成し、その周囲を透水性シート、あるいは遮水シートで覆った雨水等の貯留浸透槽が普及している。この目的のため各種の異なる形状の単位部材が例えば特開昭62-101097、特開昭62-126179、特開平9-296486、特開平10-252108、特開平10-115778、特開平11-43971、特開平11-222886などに提案且つ使用されている。いずれの方法においても貯留空間に一時貯留した雨水等を、地下水位の低い場所では透水性シートを介して地中に浸透させ、地下水位の高い場所では遮水シートで地下水の槽内への侵入を防ぎ、徐々に下水等に放流する。樹脂製単位部材を用いた地下式貯留・浸透槽は、軽量な単位部材を使用するため、短工期、重機の入らない狭い敷地での施工が可能なことなど多くの利点があるが、樹脂製のためプレキャストコンクリート製の槽に比べて重量車の出入りする駐車場、道路下などで使用する場合には強度的に問題がある。また、軽量のため浮力対策がより重要となる。
また、比較的小さな単位部材を配列して使用するため不均一な軟弱地盤上に設置する場合、上からの土被圧によって、不均一な沈下を起こす懸念もあった。また樹脂製のため上からの荷重により、例えば、土被、長期にわたる車の駐車などによるクリープの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62-101097
【特許文献2】特開昭62-126179
【特許文献3】特開平9-296486
【特許文献4】特開平10-252108
【特許文献5】特開平10-115778
【特許文献6】特開平11-43971
【特許文献7】特開平11-222886
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上からの荷重を一個の単位部材でなく複数もしくは全体の単位部材で均一に支えられるようにして、個々の単位部材にかかる荷重を小さくすることで樹脂製単位部材を使用する地下式貯留槽の安全性を高める手段を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本第1の発明は、地下に樹脂製の単位部材を上下左右に配列し貯留空間を形成し、当該貯留空間をシートで覆った貯留槽において、貯留空間と地表面の間に板材を複数の単位部材を覆うように貯留空間の全体に配置した地下式貯留槽である。
本第2の発明は、地下に樹脂製の単位部材を上下左右に配列し貯留空間を形成し、当該貯留空間をシートで覆った貯留槽における人孔側塊設置部に、人孔ますと単位部材との間に板材を複数の単位部材を覆うように配置した地下式貯留槽である。
貯留空間の上全体に強度を有する鉄筋コンクリート製の板、金属製の板、あるいは樹脂製の板を敷設することで、上からの荷重を一個の単位部材が支えるのではなく、複数の単位部材あるいは全ての単位部材が支えることで荷重が特定の単位部材でなく複数のあるいは全体の単位部材に均一に掛るようにした。
【発明の効果】
【0006】
本第1の発明は、貯留空間の上全体に鉄筋コンクリート製、あるいは樹脂製の板を各板が複数の単位部材を覆うように敷設したため、以下の効果がある。(1)上部に重量車が駐車している場合でも、荷重が敷設した板材を介して複数の単位部材全体に伝わるため、単位部材が支える荷重は均一となり、重量車からの荷重が平均化するため個々の単位部材にかかる荷重は小さくなる。また鉄筋コンクリートなど重量のある板を使用すれば(2)貯留空間を遮水シートで覆った貯留槽において、地下水が貯留空間の底部を超えた場合に発生する浮力も、土被りと板材の重量により抑えられる。また、鉄筋コンクリート製の一枚板として打設すれば(3)貯留槽の基礎が軟弱地盤で、且つその程度が不均一であっても上からの荷重が通常の土被に比べより均一化されるため地盤に与える荷重もより均一化される。
本第2の発明は、コンクリート製の人孔側塊を槽上に設ける場合、人孔側塊と単位部材の間に板材を敷設し、複数の単位部材で人孔側塊の重量を支えるため、個々の単位部材にかかる荷重は小さくなり、荷重を単位部材の許容応力以内に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】は、本発明の貯留空間の上部に鉄筋コンクリート製の板材を敷設した貯留槽の概念図を示す。
【図2】は、従来の貯留空間の下部に基礎としてコンクリートを打設した貯留槽の概念図を示す。
【図3】は、人孔側塊と単位部材との間に板材を敷設した例を示す概念図である。
【図4】は、貯留空間を形成する単位部材の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を図により詳細に説明する。
図1は、樹脂製単位部材で形成される貯留空間をシートで覆った貯留槽の上部に鉄筋コンクリート製の板材を槽上全体に敷設した状態を示している。
板材は現場でコンクリートを打設することで形成するものであっても、工場で製造した板材を敷設してもよい。また図では板材は槽上に接するように敷設されているが、槽とは間隔を開け敷設してもよく、地表面を含め地表面と槽上面の間にあればよい。
【0009】
土被が一定であれば単位部材は全体としては、ほぼ均一に上からの荷重を受けている。しかし個々の単位部材にかかる荷重は、土被りの締固めのばらつき、個々の単位部材間にかかる荷重、単位部材の隙間にかかる荷重など厳密にいえば均等とはいい難い。貯留空間上の全体を覆うように鉄筋コンクリート製の板を敷設することで上からの荷重をより均一化することができる。
上が駐車場あるいは車道などの場合、車による荷重が貯留空間を形成する単位部材に加わる。一般的には荷重は45度分散で下の貯留空間を形成する単位部材に伝わる。車による追加の荷重は、鉄筋コンクリート製の板材を介して、荷重は平均化されて単位部材に伝わる。そのため車による荷重が平均化され、小さくなって伝えられる。
【0010】
図1では板材は一枚の板となるように示してあるが、複数の単位部材を覆う大きさの板を複数敷設することでもよい。この場合可能な限り多くの単位部材を覆うよう広い板で貯留槽全体を隙間なく均一に敷設することが好ましい。この際、複層に敷設し、上層の板材で下層の板材の隙間を覆うように配置することができる。また図では鉄筋コンクリート製の板としているが、荷重を支えられる樹脂製の板、ステンレス製等の金属製の板であってもよい。
荷重を均一に支えられればよいので、リブで構成された板であってもよい。
【0011】
図2は、鉄筋コンクリート製の板のない従来の貯留槽である。この場合上に車が駐車しているとその荷重は、一般的には45度分散で下の貯留空間を形成する単位部材に伝わるが、その範囲は限定され、上記鉄筋コンクリート製の板のない場合に比べ小数の単位部材で支えることとなり単位部材にかかる荷重は大きくなる。
【0012】
なお、貯留空間を遮水シートで覆った貯留槽では、槽の底部以上に地下水位が上昇すると浮力が発生するが、一般的には土被の厚さで浮力を抑えている。槽を設置する場所によっては土被を厚くすることのできない例があり、この場合鉄筋コンクリート製の板材を槽の上部に敷設することで、土被厚を小さくすることができる。
【0013】
鉄筋コンクリート製の板材の厚みは、上に駐車する車の重量によって、板の端部に掛る偏荷重で破損しないよう、かつ鉄筋コンクリート製の板の厚みを含めた上からの荷重が単位部材の許容応力値以上にならないように定める。鉄筋コンクリート製の板は、上からの偏荷重によって割れたり曲がったりしない必要から使用するものであり、本目的を満たすものであれば鉄筋コンクリート製の板に限定されない。使用する単位部材も図4に示した例に限らず、雨水等の貯留槽用に使用される単位部材は使用可能である。
【0014】
図3は、人孔を本地下式貯留槽に設けた場合の例を示している。
人孔側塊は通常コンクリート製で重量物である。人孔側塊を、単位部材を縦に除いた穴の上に設置する。この時、人孔側塊の重量を受ける単位部材が複数個となるように板を敷き設し荷重を均等に支えられるようにする。
図では一枚のコンクリート製で中央に穴の開いた板材を半分の単位部材を含み14個の単位部材を覆うように敷設した例を示している。板材を介して人孔側塊を支えるため、個々の単位部材にかかる荷重は人孔側塊の重量の14分の1となる。単位部材が受ける荷重がその許容応力となるよう覆う単位部材の数を調節することができる。
【0015】
貯留空間は、樹脂製の単位部材を上下左右に配列したものであり、貯留空間をその使用する目的に応じて浸透シート、遮水シートで覆い浸透槽あるいは貯留槽とする。泥だめ枡、流入管、溢流管、オリフィスますなど付帯設備を設けて、流出抑制用の雨水等の貯留・浸透槽あるいは雨水利用のための貯留槽として使用することは従来通りである。
【0016】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されることはない。本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内で変更が可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0017】
単位部材を使用する流出抑制施設として雨水を一時的に貯留する貯留槽、貯留・浸透槽あるいは雨水を有効利用するための利水槽として使用できる。
【符号の説明】
【0018】
1 貯留空間
2 鉄筋コンクリート製の板
3 コンクリート基礎
4 人孔側塊
5 人孔側塊用板
6 単位部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に樹脂製の単位部材を上下左右に配列し貯留空間を形成し、当該貯留空間をシートで覆った貯留槽において、貯留空間と地表面の間に板材を複数の単位部材を覆うように貯留空間の全体に配置した地下式貯留槽。
【請求項2】
地中に樹脂製の単位部材を上下左右に配列し貯留空間を形成し、当該貯留空間をシートで覆った貯留槽における人孔側塊設置部に、人孔側塊と単位部材との間に板材を複数の単位部材を覆うように配置した地下式貯留槽。

【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−108340(P2013−108340A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−130257(P2012−130257)
【出願日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【出願人】(306024805)株式会社 林物産発明研究所 (155)
【Fターム(参考)】