説明

地下構造体の施工方法及び該方法によって得られる地下構造体並びに地下立地式原子力発電所

【課題】
排土量、施工機材、工費、周辺地山への環境影響が最小限の規模であって、超長期間運用可能な大断面地下構造体の施工方法を提供する。
【解決手段】
構築しようとする地下構造体の所定相当領域に作業坑道を掘削する第1工程と、この作業坑道内壁面の一方側の地山に所定容積の空領域を形成した後、前記一方側の地山と対向する前記所定容積と略同等容積部位に、前記地下構造体の一部を構成する構成部材が少なくとも含まれている充填物で充填領域を形成する第2工程と、該第2工程を地下構造体の所定相当領域内において複数回繰り返し、該地下構造体が順次新たに形成される充填領域の充填物により施工される第3工程とを含むことを特徴とする地下構造体の施工方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は以下の地下構造体を施工するための工法および該工法により施工される地下構造体に関する。
(a)板体形状地下構造体:農業灌漑用地下ダム、塩害土壌脱塩用高透水暗渠、土壌汚染拡散防止遮水壁、地盤液状化防止遮水壁。
(b)管体形状地下構造体:トンネル、地下河川、多目的大深度大断面地下輸送施設、地面効果浮上高速走行体(エアロトレイン)用大深度地下設置式超高直線度走行路、大断面水平式トンネル運河。
(c)殻体形状地下構造体:大深度地下構造体、地下貯水槽、地下遊水槽、化石燃料用地下貯留槽、核燃料用地下貯留槽、二酸化炭素貯留地下タンク、冷熱貯蔵地下タンク、温熱貯蔵地下タンク、食糧貯蔵地下タンク、種子貯蔵地下タンク、金属備蓄地下タンク、エネルギー蓄積型ガスタービン発電設備用地下併置高圧空気タンク、風洞実験用高圧空気地下タンク、地中浸透貯留槽(殻体内に地山を包含したままでその土壌粒子の間隙に気体燃料、液体燃料、二酸化炭素、冷媒、熱媒、菌種などを貯留)、地下立地式電力貯蔵システム、地下設置型超低振動要求施設、廃棄物地下最終処分場、高レベル放射性廃棄物地層処分場、低レベル放射性廃棄物地層処分場、原子炉解体放射性廃棄物地層処分場、核兵器解体放射性廃棄物地層処分場、地下立地式原子力発電所、超大型水チェレンコフ宇宙素粒子観測施設(ハイパーカミオカンデ)、地下核シェルター、地中埋設大型タイムカプセル。
(d)深皿様殻体形状地下構造体:浸透貯留型地下溜池、地上設置型超低振動要求施設のための地震振動遮断地下隔壁。
【背景技術】
【0002】
地下ダムの工法としては、鋼矢板連続打設、鋼管矢板連続打設、鉄筋コンクリート壁打設、柱列状にモルタル杭を連続打設(非特許文献1)、掘削孔からグラウトを注入し地盤を固化させる、コンクリート製ダムを地下に施工する、掘削溝の一部にアースダムを施工し埋め戻す、などの工法(非特許文献2)や、ベントナイト地中連続壁工法(特許文献1、2)、圧密粘土壁打設、加圧泥魂積み重ね、モルタル接続煉瓦積み重ね、モルタル接続石魂積み重ね、プラスチックキャンバス埋込などの工法(非特許文献3、4、5)があるが、開削工法、注入工法、矢板工法、地下連続壁工法に大別される(非特許文献6)。これらの例を図105(a)(非特許文献2)、図105(b)(非特許文献3の記述を図式化したもの。)に示す。
【0003】
最近採用されているトンネルの工法としては、シールド工法、TBM(Tunnel Boring Machines)工法、NATM(New Austrian Tunneling Method )工法が一般的だが、最初に外側の環状部分を掘削、シールドし、その後内側を掘削排土するMMST(Multi-Micro Shield Tunnel)工法(図106)などがある(特許文献3〜6、9、非特許文献8)。現状TBMの最大直径は15mクラス(掘削面面積約180m)である。
【0004】
種々の流体の地下貯留技術の現状を以下に記す。
石油は常温、常圧で、容量150〜175万m(断面積約300m)、プロパンガスは常温、圧力0.98MPaGで、容量63万m(断面積約650m)、ブタンガスは常温、圧力0.23MPaGで容量28万m(断面積約650m)の地下備蓄では、水封式岩盤貯槽方式が採用されている(非特許文献9〜14)。その例を図107(非特許文献12)に示す。
天然ガスの地下式タンクでは、マイナス162℃、常圧で、容量20万m(直径70m、高さ50m余)のステンレス鋼内張コンクリートタンク方式が採用されている(非特許文献15)。欧米では年間消費量の20〜40%の天然ガスを地下貯蔵しており、貯蔵量の約8割は生産減退後などの油・ガス田で、1割が地下帯水層、残り1割が地下石灰岩層への圧入浸透貯留である(非特許文献16)。他に高圧気体あるいは液体としての地中貯蔵の検討や岩塩ドーム内への貯蔵の例が示されている(非特許文献13、17)。
ジメチルエーテル(DME)を常圧でマイナス27℃の低温液化状態で水封式岩盤貯槽方式による地下貯蔵が机上検討され、地上貯蔵より経済的に有利となる可能性が示された(非特許文献18)。
圧縮空気貯蔵ガスタービン(Compressed Air Energy Storage Gas Turbine: CAES-G/T)発電パイロットプラントとして、軟質岩盤帯での施工が想定され、8MPaの地中高圧タンクとして周方向16分割のコンクリート覆工板をゴムシートで内張し外側をコンクリート裏込めとした圧縮空気貯蔵施設で実証試験が実施された。出力2MWの発電機で直径6m、長さ57m、容量1,600mのパイロットプラントである(非特許文献19、20)。
地球温暖化対策のための二酸化炭素削減技術開発の一環として、年間百万トン規模の二酸化炭素を地中帯水層内に圧入貯留する技術の確立を目指し、その長期安定性(1,000〜10,000年)・安全性・環境影響および経済性に関する定量的な検討が実施されている(非特許文献21〜26)。2005年1月時点で、32℃、圧力7〜11MPaの超臨界状態の総量約1万トンの二酸化炭素を18ヶ月間の期間に深度1,100mの地下帯水層内へ圧入する作業が終了し、圧入された二酸化炭素の挙動をモニタリング中である(非特許文献23、26)。
【0005】
放射性廃棄物の処理技術の現状を以下に記す。
原子力発電所から排出される使用済み核燃料は、再処理工場へ送られる。そこでウラン、プルトニウムを回収しこれを燃料加工工場へ送り核燃料として再利用されるが、その際に高レベル放射性廃液が排出される。この高レベル放射性廃液を溶融ほう珪酸ガラスと共に、直径0.43m、長さ1.34m、厚さ5mmのステンレス鋼円筒形容器(キャニスター)中に注入し固化させ、重量500kgのガラス固化体を製造する。このガラス固化体は高レベル放射性廃棄物貯蔵施設に送られ、そこで発熱量や放射能レベルを低下させるため、30〜50年間貯蔵する(中間貯蔵)。ガラス固化体1本あたりの放射能は、製造直後では2×1016ベクレルであったものが、その後54年の冷却期間を経た場合の埋設時には4×1015ベクレルになる。該中間貯蔵後、このガラス固化体を外径0.82m、長さ1.73m、厚さ0.19mの炭素鋼円筒容器に入れ、重量5.6トンのオーバーパックとする。この高レベル放射性廃棄物オーバーパックが高レベル放射性廃棄物緩衝材(外形寸法;φ2.22m x 3.13mL 材料:ベントナイト70wt% ケイ砂30wt% 放射線遮蔽厚さ;0.7m)に周囲を覆われる形で地中に埋設される。該緩衝材に含まれるベントナイトは、水分を与えると膨潤する性質があるため、周囲から該オーバーパックに向かう地下水の流れを止める自己止水機能を有している。該オーバーパックの中心軸を水平方向とする横置き方式の場合、高レベル放射性廃棄物処分坑道が水平方向に離間して平行に複数掘削される。該処分坑道の水平方向ピッチは9.99mである。該処分坑道内に該オーバーパックが該処分坑道長手方向ピッチ3.13mの間隔で、その周囲を厚さ0.7mの該緩衝材で覆う形で埋設される。図108にガラス固化体、オーバーパック、緩衝材を示す(非特許文献27)。埋設場所としては、内陸部の深度1,000mの硬岩系岩盤帯と沿岸部の深度500mの軟岩系岩盤帯が検討されている。
軟岩系岩盤帯の人工の地下構造物として、ローマの地下下水道、ナポリやカッパドキアの地下都市が挙げられ、それぞれ、2600年、2000年、1700年余の耐久性が実証されており、これらの外にも軟岩地層帯の地下住居で100年以上の長期耐久性を示す実証例をイラン、中国、スペイン、メキシコ、チュニジア、オーストラリアなどで挙げることができる。
硬岩系岩盤帯に構築された人工の地下空洞で長期耐久性を実証し得ている例は極めて少ない。
放射性廃棄物の地中埋設のための掘削工法としてはNATM工法とTBM工法が検討されている。
高レベル放射性廃棄物地層処分では、1000年の超長期に亘って、有害な放射性核種が生物圏に漏れださないという安全性が求められている。
この超長期の安全性を確保し得る高レベル放射性廃棄物地層処分場の立地条件としては、地殻変動地域、火山活動地域、地震地帯は回避すべきと考えられる。日本国内でこれらを回避することは困難であるが、こうした地域で超長期の安全性を確保するためには、極めて高度な技術検討と高価な対策設備を要する反面、超長期の現象の予測技術の不確かさを払底することが困難であるという不都合が想定される。地殻変動が少なく地盤が安定しており、地震や火山が無いことから、先カンブリア紀(5.7億年前)の岩石からなる卓状地(クラトン;安定大陸)が放射性廃棄物の地層処分の適地として示されている。北米大陸のカナダ卓状地、アフリカ大陸、オーストラリア、スウェーデン・フィンランドにまたがるバルト卓状地などが安定地盤の例として挙げられている(非特許文献29)。
近年、ゴンドワナ超大陸を含む大陸地殻の成長過程に関する国際共同研究が進められている(例えば、非特許文献66。)。これらの研究が進めば、より安全な高レベル放射性廃棄物地層処分場の選定に役立つと思われる。
高レベル放射性廃棄物地層処分場の立地条件として、地盤安定度の外に、放射線遮蔽容器の耐腐食性および微生物に対する耐性についても考慮されるべきである。該オーバーパック容器の炭素鋼への影響を考慮すると、アルカリ性土壌地域で周辺の地下水位が該高レベル放射性廃棄物地層処分場よりも低い地域が高レベル放射性廃棄物地層処分場の適地として、より望ましい。高レベル放射性廃棄物地層処分において、1000年の超長期に亘ってより確実な安全性を求めるには、高レベル放射性廃棄物の地層処分場としての適地を、国境を越えて求めるべきという考え方が成立し得る。適地では高レベル放射性廃棄物の地層処分ビジネスが成立し得ると考えられる。低レベル放射性廃棄物の処分についても同様の状況と考えられる。
【0006】
地下立地式原子力発電所についての実績と技術検討について以下に記す。
地下立地式原子力発電所が種々の観点から検討されている。土かぶり30mの地下空洞内設置の地下立地式原子力発電所で冷却系の故障事故を想定した場合、ヨウ素、クリプトンの大気漏洩量は、地上立地式の百分の1以下と推算されている(非特許文献30)。1986年4月チェルノブイリの地上立地式原子力発電所の爆発事故で、放射性核種はヨーロッパ全域に拡散し、百万人を超える被爆者を出した。1978年8月にシベリア、サハ共和国のヤクーツク市西方700kmのクラトン4の深度560mで20キロトン(広島原爆と同等)の地下核実験が実施された。1998年3月に、爆心直上の地表で計測した平均線量率は毎時0.05マイクロシーベルトであった(非特許文献31)。日本の「原子力災害対策特別措置法」(1999年12月17日法律第156号)に定められた原子力施設の異常事態発生の際の通報基準値としての空間放射線量率は毎時5マイクロシーベルトであるから、クラトン4の地表での放射線量率は放射線衛生上問題となるレベルではなかった。計測時点で、地中の爆心点では放射能の強さが8.8×1013ベクレルのセシウム137が残存していると推定されており、地表まで300m余の厚さの永久凍土による放射線遮蔽効果を示す例とされている。
従来において、積極的に検討されることが少なかったようだが、最近、土の放射線遮蔽機能に着目して、珪藻土や高含水率土砂の放射線遮蔽機能の活用が検討されている(非特許文献32、33)。
1100〜1200MW級の地下立地式原子力発電所用の地下空洞の大きさは、幅あるいは直径が60m、高さ80m程度の規模が必要とされている(非特許文献34、35)。
大規模地下空洞の実績として、日本の水力発電所の地下発電設備を収容している地下空洞の大きさが、幅25m、高さ45mであることから、該地下立地式原子力発電所を収容できる地下空洞は、未経験の大規模地下構造体となる。
これまでに海外では6基の地下立地式原子力発電所が建設、運転されたが、多くは小型の実験炉規模であり、300MW級の商用規模のものはフランス、Chooz(地下空洞幅21m、長さ42m、高さ42m)のもののみで、それも、約13年間の運転実績をあげた後、1980年5月に閉鎖されている(非特許文献35)。
地下立地式原子力発電所の可否検討の一環として、地震発生時の地中と地表の揺れの程度が比較調査された。1976〜1989年の約200回の地震について、神奈川県城山水力発電所の深度240mの地下発電設備空洞内および地上部の加速度を計測したところ、地下での加速度は平均的には地上部の約1/2であった(非特許文献35)。
同様に、1990〜1998年の344回の地震について、岩手県釜石鉱山の深度615mの花崗閃緑岩地盤中の地下坑道内および地上部の加速度を計測したところ、地下での加速度は平均的には地上部の約1/2であった(非特許文献36)。
地下構造物の経済的施工方法検討の一環として、幅8m、高さ8m、深度50mの地下空洞を相模川近辺の上総層群と呼ばれる堆積軟岩地盤に構築し、地下坑道壁面の加速度および応力が1990年から1993年に亘って計測された。この間にあった地震の時、地上に比べオーダーが小さい揺れしか地下では観測されていない(非特許文献37)。この地下空洞施工、計測を通じて、多数の節理・き裂が存在する硬岩に比べ、堆積軟岩地盤は「盤」としての均一性が高い、支保を軽くできるなどの知見が得られている(非特許文献37)。
1976年に死者24万人という世界史上第2位の人的被害を出した中国唐山市の大地震(マグニチュード7.8、日本の気象庁の震度階級で震度7、震源深度12km)の際、震源直上の唐山炭鉱の深度800mの地下炭鉱坑道内では、震度4であって、地下の1,100名の炭坑労働者は全員生還したのに対し、地上では炭鉱建物は全壊して約2,000名が死亡した(非特許文献38)。
いずれも地下の方が地上よりも地震発生時の揺れが少ないことを示しているが、更に、地上建物の上層部では、揺れが増幅することが指摘されている(非特許文献35)。原子力発電所の立地条件として、日本国内では、現状の第三紀(約6550万年前〜約260万年前)以前の岩盤上での地上立地式原子力発電所に対して、第四紀(約260万年前〜現在)地盤立地での地上立地式原子力発電所、地下立地式原子力発電所、海上立地式原子力発電所(浮揚式、着底式、人工島式)の技術的検討がされている(非特許文献7、34)。
【0007】
地表に豊富に存在する土や類似の組成を有する廃棄物を強度部材として適用するための技術動向について以下に記す。
水硬性石灰を土と混合し以下のような炭酸化反応により硬化させる技術として、古代中国の版築、古代ローマのローマンセメント、古代インドのモルタルのダム、明治期の日本の長七たたきの防波堤などがあげられ、多くの構築物で長期安定性の実績が示されている(非特許文献39〜42、57、67、68)。
(化1) Ca(OH) + CO → CaCO + H
また最近では、微生物の代謝活動により固化させようするバイオグラウトが検討されている(非特許文献43)。
これらは無尽蔵で安価な土が主たる素材であり、加熱が不要で、複雑な機器や高度の技術を要しない低エネルギーの工法であるので、発展途上国などを含め適用範囲が広いと思われる。
製鋼スラグ中に含まれるCaOの炭酸化反応により製鋼スラグを固化させる技術が開発されている(非特許文献44〜47)。これらはコンクリートに比べ、アルカリ害が少ないことから環境保全にも適している。
【0008】
【特許文献1】堀内澄夫(清水建設)・ほか, 特開平03−233016,(出願; 1991. 10.17).
【特許文献2】堀内澄夫(清水建設)・ほか, 特開2002−266345, (出願; 2002. 9. 18).
【特許文献3】萩本博美(大豊建設)・ほか, 特公平6−60554, (出願; 1886. 6. 16).
【特許文献4】風間広志(清水建設), 特許第2849605, (出願; 1990. 6. 29).
【特許文献5】志関彰男(戸田建設), 特公平8−19825, (出願; 1991. 4. 5.).
【特許文献6】梨本裕(前田建設)・ほか, 特開2004−52408, (出願; 2002. 7. 22).
【特許文献7】福森謙一(日本スピードショア), 特開2006−70437, (出願; 2004. 8.31).
【特許文献8】鈴木隆夫(大成建設)・ほか, 特開2001−201593, (出願;2000. 1. 18).
【特許文献9】今田徹(東京都立大)・ほか, (特許権者;首都高速道路公団), 特許第2979044号, (出願; 1991. 6. 21).
【0009】
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【非特許文献69】西垣誠(岡山大学)・ほか, 世界の2、3の所における地下ダム技術, 地下水学会誌, 46−2(2004), 113−130.
【非特許文献70】高橋幹二(京都大学), 地下原子力発電所の検討の現状, 日本原子力学会誌, 24−1(1982), 38−45.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
持続可能な社会の構築のため、種々のデーター分析や対応技術などの検討が進められている(例えば、非特許文献48〜50。)。
【0011】
地球温暖化対策の一環として二酸化炭素吸収源である植生の創出、および食糧危機対策の一環として農地の創生を図り得る技術として地下ダムが挙げられる。地中の土壌粒子の間隙に浸透貯水する地下ダムは地上ダムなどと比較して以下の利点を有する(非特許文献2など)。
(1)水没地域を伴わない貯水システム
自然環境への影響が少なく、住民移転の社会問題も生じない
(2)蒸発散が少ない
乾季の貯水水位の低下が少なく、年間を通して安定した水利用が可能
(3)貯水水質が衛生的
殺菌処理せずに生活用水として使用可能
(4)提体が安定しており、崩壊の危険性が無い
貯水水圧は提体下流側の地山が支えてくれるので提体の剛性、強度要求が低い
異常増水時においても、緊急放水などの処置を必要とせず、管理が不要
(5)再生可能資源の利用
化石水の井戸と異なり、上流域の降雨により貯水が補充されるため、取水しても枯渇の恐れがない
一方で、地下ダムは以下の問題点を有する(非特許文献2、69など)。
(1)建設適地選定が困難
建設適地の選定には地下の地質構造の把握が不可欠であり、地質調査の負担が大きい
(2)貯水効率が低い
貯水量は地層の間隙率に依存し、貯水域容積の10〜30%程度
(3)下流域の地下水位が低下する
(4)貯水域土壌の塩類集積
貯水域の植生への影響を低減させるため、地下水位を1.5m以深とするなど技術的解決は可能
(5)地下ダム建設実績が少なく、その設計、施工、運用方法が未確立である
効果的で低コストの地下ダムとするためには、施工個所の地質、地下水流、経年降水量、建設機
搬入経路、貯水利用形態などの状況に適合させる必要があるが、様々なケースへの対応方法が明
確にされていない
農業灌漑用地下ダム施工候補地域として、未開拓であることから、農地拡大の余地がある半乾燥地域の季節河川周辺が考えられ、アフリカのサヘル地域、ブラジル北東部、中国北方地域などの地域が挙げられる。これらの地域での地下ダム施工では、重機搬入が困難なため、開削工法のみが適用されている。しかしこの工法では掘削溝の土留め支保工の制限により、提体の深度が10数m以浅に制限されている。地下ダムでは、漏水を防ぐため提体の底部を不透水帯に食い込ませて施工する根入れが必要であることから、重機を使用しない開削工法の場合では地下ダム施工可能場所が浅い不透水帯の地域に限定される。
しかも開削工法では、提高が浅いため貯水量が少なく、乾季に必要な地下水位を保持できない非効率な地下ダムとなっている場合が多い。地下ダムの適地として挙げられている化石谷では一般的に不透水帯を成す基盤岩の上に高透水性の、礫、砂、シルトなどが堆積した地質構造となっており、要施工提体の大部分は掘削容易な堆積層中であるため、高度な土木工事機器が無くても、古来のカナート職人の様に手堀りでも掘削は可能である。こうした半乾燥地帯の化石谷では、ワジ(枯れ川)を溢れさせて雨季に流下する大量の河川水を乾季のために貯水できる10m以深の提高を有する中規模地下ダムを、安価に、最小限の掘削土量で、高度な土木工事機器および高度な技術を要せずに施工が可能とする技術が求められている。
大別した各種の地下ダム工法の比較例(非特許文献6)によれば、開削工法では、汎用掘削機で施工可能だが、深くなるにつれて掘削土量が増し、経済効率が悪くなる。深度は10数m以浅である。注入工法では、オーガー、注入プラントが必要であり、深くなるにつれて孔曲がりにより遮水性が低下する。深度は40m以浅である。矢板工法では、バイブロハンマー等専用機械が必要でジョイント部の止水処理、腐食対策に課題がある。深度は40m以浅である。地下連続壁工法では、大型の専用掘削機と高精度の姿勢制御が必要である。深度は100m以深が可能である。
現状では、いずれの前記従来工法も、安価に、最小限の掘削土量で、高度な土木工事機器および高度な技術を要せずに必要な深度の地下ダムの施工が可能という課題を満足させることはできない。
【0012】
大断面の地下構造体であるトンネル、地下河川、地下貯油槽、LNG地下タンク施工の場合、従来のシールド工法,NATM工法では切羽が大断面であるため、地山の応力や地下水流を乱す影響が大きく、シールドセグメントやロックボルトなどの大規模な支保工および止水対策が必要である。近年に開発された、MMST工法など(特許文献3〜6、非特許文献7,8)外環部分を先に小径トンネルを掘削連結して環状シールドを形成した後に内部地山を掘削排土して内部空間を地下構造体として利用する工法では、複数の切羽で掘削作業が同時進行できるという長所がある。しかし、工程が複雑な組み合わせになっており、高度な専用土木機器および機材が必要である。
石油およびLPGの水封式地下貯槽では、貯槽周辺の地山の地下水経路を閉塞させるための入念なグラウト工が必要である。貯槽より30m程度上部位置に水封トンネルと、それから櫛の刃状に水封ボーリングを設けて周辺の地下水の圧力で貯槽からの貯留物の漏出を封じるための付帯設備、および岩盤タンクへの流入地下水のためにタンク下部に集水タンクを設け、ポンプで排水制御する付帯設備が必要となる(非特許文献9〜14)。水封式地下貯槽では遮蔽性を地山に求めているところから、透水係数の高い堆積層は避けられ、硬岩地帯が選定されている。
圧縮空気貯蔵ガスタービン発電パイロットプラントでは、軟質岩盤帯での施工が想定され、8MPaの地中高圧タンクとして周方向16分割のコンクリート覆工板をゴムシートで内張し外側をコンクリート裏込めとしている(非特許文献19)。出力2MWの発電機で直径6m、長さ57m、容量1600mのパイロットプラントレベルの地下高圧タンク技術が大容量の商用規模に適用できるかは不明である。
マイナス27℃、常圧でDME(ジメチルエーテル)を地下貯蔵する方法では、地山へのコンクリート吹きつけ程度の簡易シーリングの貯槽壁面とし、貯槽周辺の地下水が凍結し、漏洩経路となる岩盤のき裂を閉塞することで気密性を確保する方式が提案されている(非特許文献18)。この方式では、地下貯槽の上部に櫛の歯状の給水管列を設ける付帯工事が必要となる。
二酸化炭素や天然ガスの地中帯水層貯留では、地震や地殻変動が少ない地域でしかも充分な止水能力のあるキャップロックを有する帯水層であるという地域的制約と長期間の洩れ挙動の推定の不明確さが問題である。上方に凸の形状となるキャップロックを有する帯水層が好ましいが、周辺は褶曲地層帯であることが多い地域でしかも漏れ経路としての水みちとなり得る活断層や活撓曲が無いという適地選択の制約がある。
地中帯水層貯留はまだ開発途上の未成熟な段階の技術であるが、貯留後の漏洩を最小限とするために、入念な地質調査に基づいた適地選定や貯留流体の長期間の挙動シミュレーション計算(貯留流体と様々な地質成分との長期間の反応を予測するため拠り所となる長期間の実証データが整備されていない。また、地震や地殻変動など不確定要因の影響を含めた予測精度の検証が課題となっている。)および貯留後の注意深いモニタリングが必要とされ、いずれもコスト高につながる難点を有している。
硬岩層に大断面空洞を施工する場合、難掘削であるため、重装備の掘削機器で多大な工事期間と工費を要することに加え、周辺住民や地盤応力への影響から、発破掘削の制限を受ける場合がある。また、硬岩層では地殻変動ひずみの逃げ場所が少ないので、断層破砕帯への入念な対処が必要になる。
掘削地域の地質の制限と地殻変動の影響を受けることなく、超長期に亘って漏洩無く、安定に機能し得る大断面の地下貯槽を、重装備の掘削機器、高度な技術を要せずに、しかも周辺地山の応力、地下水流系を乱すことなく、安価に施工する技術が求められている。
【0013】
2003年統計で日本国内原子力発電所63基、合計発電量59.35GWで、年間約1,800本の高レベル放射性廃棄物ガラス固化体相当分および約6,000本の低レベル放射性廃棄物ドラム缶相当分の放射性廃棄物が発生している。2003年統計で全世界の原子力発電所498基、総発電量435.49GWで年間約13,000本の高レベル放射性廃棄物ガラス固化体相当分および44,000本の低レベル放射性廃棄物ドラム缶相当分の放射性廃棄物が発生している。
横置き方式で、高レベル放射性廃棄物ガラス固化体配置の水平、垂直、長手方向ピッチをそれぞれ、10 x 10 x3.13mとすると、1本当たり313mの地中スペースが必要となる。高レベル放射性廃棄物ガラス固化体の地層処分に必要な年間地中スペースは、日本国内で56万m、世界全体で409万mとなる。
高レベル放射性廃棄物地層処分では、埋設場所として、内陸部の深度1000mの硬岩系岩盤帯と沿岸部の深度500mの軟岩系岩盤帯が検討されている。容器腐食損壊、容器密閉性の消失後の放射性核種の地中移行が地下水の挙動、岩盤のクリープ変形、地震との関連について検討されている(非特許文献27)が、設定されている1000年の耐用年数の間の各挙動の推定精度については更に検討の余地がある。
高レベル放射線源としてのガラス固化体は、厚さ5mmのステンレス鋼板容器(キャニスター)、厚さ19mmの炭素鋼厚板容器(オーバーパック)、厚さ0.7mの緩衝材(70wt%ベントナイト、30wt%ケイ砂)と多重防護されている。高レベル放射性廃棄物地層埋設位置から生物圏まで500m余の距離間に存在する地山に対しては特別な処置はされておらず、放射性核種の移動経路を与える機能を有する有るがままの媒体と見なされており、防護手段としての役割は定量的に期待されていない。この地山に多重防護の機能を付与する技術検討は進展していない。埋設個所に想定される天変地異など最悪の状況に耐え、1000年という超長期間に亘って放射性核種の生物圏への移行を確実に阻止できるのだということを一般公衆に納得して貰える地層処分技術の早期確立が望まれている。
国際的観点においては、近年、地球温暖化対策および化石燃料価格高騰化対策に適合するエネルギー源として、原子力発電の関心が各国で高まっている。ベトナム、インドネシアなど商用規模の原子力発電所稼働実績の無い国々でも、2015年〜2020年の稼働を目指した建設が計画されており、安全な放射性廃棄物処理技術の確立に対する要求は将来更に高まると予想される。
一方で、安全性を保証出来るレベルの放射性廃棄物処理技術は確立していない現状であって、放射性廃棄物処理技術開発のために国際的な情報交換、取り組みが進められている段階である(例えば、非特許文献51。)。
【0014】
原子力発電所を地下立地式とすることの利点として、以下が挙げられている(非特許文献70)。
(1)地形や地表の土地利用形態に左右されない
(2)気象条件に左右されない
(3)耐震性に優れる
(4)事故時の放射線遮蔽効果、FP(核分裂生成物)格納性が高い
(5)内圧、外的飛来物などに対する強度が高い
(6)景観保護
(7)施設の廃棄処分の面で利点を有する可能性がある
従って、土地利用や立地選定の選択性を拡げるのに役立ち、ひいては需要地接近により経済性も高まり、それに加えて想定事故時の安全性向上にも寄与しうるものと考えられている(非特許文献70)。
一方で、以下の欠点が挙げられている(非特許文献70)。
(1)地下構造物はその信頼性評価や構造物の監視可能性の面で問題がある
(2)立地可能な岩盤条件が限定される
(3)付加的地下水対策の必要性
(4)施設の拡充や計画変更、工法等に対する制約がある
(5)工費と工期の増大につながる
原子力発電所で炉心溶融の過酷事故が発生した場合、放射性核種の周辺への拡散を防止させる封じ込め機能(コンテインメント)を確実なものとすることが重要であることは1986年の露国チェルノブイリと1979年の米国スリーマイル島の2例の事故被害の差で証明されている。1951年以来、総計で1500回余の地下核実験が米国、ロシア、フランス、イギリス、中国、インド、パキスタン、北朝鮮で実施されているが、一部を除いて地下核実験場周辺の放射能被害は重大な問題とされてはいない。
地下立地式原子力発電所であれば、過酷事故発生時の放射性核種放出源と地表との間の拡散経路が限定されることから、放射性核種の拡散を防止あるいは遅延させ得る封じ込め手段を講ずることがより容易となる。
しかし現状では、前記の欠点や、地下に大断面の所要空間を施工するための工法や耐震構造設計、過酷事故発生を想定した放射性核種拡散低減あるいは拡散遅延構造についての具体的な見通しが明確ではないなどの課題が未解決であることから、世界的にみても地下立地式の原子力発電所の建設は進んでいない現状である。
これらの課題を解決できれば、前記のように多くの利点を有する地下立地式原子力発電所の施工が可能となる。
【0015】
既存の地中存在物に悪影響を与えることなく、その機能を強化すること、機能を修復すること、地下水あるいはカビによる変質や劣化を防止すること、地震あるいは地殻変動による損壊を防止すること、既存の地中存在物を発生源とする有害物質が周辺へ拡散する可能性を排除することなどが求められることがある。
例えば、既存のトンネルや地下貯留槽で破砕帯を貫通している部分で、今後発生が予想される地殻変動や地震に対して該トンネルの耐久性を強化しようとする場合、既存の地下ダムの提体の一部の損壊により低下した貯水機能を修復する場合、埋蔵文化財の地下水やカビによる劣化を防止しようとする場合、既存の高レベル放射性廃棄物地層処分場や廃棄物最終処分場などの有害物質がそれらの外へ拡散する可能性を排除しようとする場合、などがその例として挙げられる。しかし、低コストでこれらの要求に対応できる技術は未だ開発されていない。
【0016】
以下に、密閉型の地中浸透貯留槽について説明する。地下浸透貯留の実例としては、前記の地下ダム、二酸化炭素の帯水層貯留、雨水の地下貯水槽の底面を透水シートとして周辺土壌に拡散浸透させる方式が挙げられる。いずれも貯留域は人為的に密閉されてはいないため、貯留物が散失する可能性がある。
従来、密閉型の地中浸透貯留槽施工の実績が無かった理由として、以下が挙げられる。
(1)浸透貯留は土壌粒子の間隙空間に流体を貯留する方式であることから、貯留の容積効率が10〜30%と低いため、貯留流体容量の3〜10倍の容積の密閉容器の施工が必要となり、大容量の地下貯槽の低コスト施工技術が無かった
(2)浸透貯留であるから、密閉容器の内側の地山はそのままにして、殻体を成す密閉容器のみを地下に低コストで施工する技術が無かった
(3)以下に述べる密閉型の地中浸透貯留槽の利点が一般的に理解されていなかった
密閉型の地中浸透貯留槽の利点として以下が挙げられる。
(a)未利用の都市部大深度地下に大容量の冷熱貯槽、温熱貯槽を施工すれば夏季の温熱、冬季の冷熱の有効活用が図られ、省エネに寄与出来る
(b)比較的に土壌の間隙率が高く、掘削容易な堆積層帯に、周辺へ悪影響を及ぼさない形で、大容量で完全密閉の二酸化炭素浸透貯留槽を低コストで施工可能となる
(c)都市部港湾近郊の大深度地下に、周辺へ悪影響を及ぼさない形で、大容量で完全密閉の天然ガス浸透貯留槽を低コストで施工可能となる
【0017】
大深度地下の空間活用状況について以下に記す。
通常は土地所有者等による利用がなされていない大都市圏の地下空間の公共的活用を目的として、2000年4月に大深度地下の公共的利用に関する特別措置法が施行された。
大深度とは、地下40m以深と既存構築物の支持地盤上面から10m以深のうちのいずれか深い方の地下が対象地域となる。対称地域は首都圏、中部圏、近畿圏の三大都市圏である。
大深度地下空間利用の対象事業は、道路、河川、鉄道、電気通信、電気、水道、下水道等の公共性の高い事業である。事業者は国土交通大臣あるいは管轄都道府県知事の認可を受けて事業を施行する。
バブル景気で大都市圏の地価高騰が常態化していた時代に、直近の未利用空間として大深度地下が関心を集め、調査、準備期間を経て成立した該法律であるが、その後経済情勢も変化し、その適用例としては、2007年の神戸市の地下送水管(直径2.4m、長さ12.8km)と東京都の外かく環状道路(大泉−東名高速間、長さ16km)の2例に留まっている。
大深度地下空間利用の事業対象として前記のように道路などが挙げられているが、一般的に地価の高い大都市圏で、移動のためのエネルギやコストの面でメリットがある直近の大空間を要する対象として、以下が挙げられる。物流拠点、温熱・冷熱蓄熱槽、廃棄物処分場、下水処理場、ゴミ選別リサイクル工場、大型スポーツ施設などである。
都会地では、世界的に共通してビルの高層化が進んでいる。ビルを長柱近似したときの高さと横幅の比、すなわちアスペクト比は必然的に増大傾向にある。アスペクト比の増大に伴って、地上立地式ビルの耐震設計の困難度は増大する。また、エレベータ運行時の加減速度は利用者の不快感や安全面への考慮から、限度があり、従って、エレベータの運行速度には限度がある。従って、アスペクト比の増大に伴って、高層ビルの水平断面内のエレベータ用面積割合をある程度確保しておかないと、待ち時間が増加する。結果として、有効床面積割合を向上させることが困難となるため、ビルの高層化は限界に近づいてきている。
地球温暖化対策として、移動エネルギを低減出来るコンパクトシティやエコエネ都市の観点からも、高層ビルが密集するような都会地において、耐震性に優れ、施工費用の少ない大容量構造体が望まれている。
一方で、そうした都会地において、大深度地下の活用率は極めて低い状況にある。
【0018】
本発明の目的の第1は、安価に、最小限の掘削土量で、高度な土木工事機器および高度な技術を要せずに必要な深度の地下ダムの施工を可能とする地下ダム施工方法を提供することである。
本発明の目的の第2は、施工地域の地質の制限と地殻変動の影響を受けることなく、超長期に亘って漏洩無く、安定に機能し得る大断面の地下貯槽を、重装備の掘削機器、高度な技術を要せずに、しかも周辺地山の応力、地下水流系を乱すことなく、安価に施工する技術を提供することである。
本発明の目的の第3は、施工地域の地質の制限と地殻変動の影響を受けることなく、超長期に亘って漏洩無く、安定に機能し得る大容量の密閉型の浸透貯留式地下貯槽を、重装備の掘削機器、高度な技術を要せずに、しかも周辺地山の応力、地下水流系を乱すことなく、安価に、最小限の排土量で施工する技術を提供することである。
本発明の目的の第4は、原子力発電所における使用済み核燃料の再処理で発生する高レベル放射性廃棄物の地層処分において、1000年という超長期に亘って放射性核種の生物圏への移行を確実に阻止し得る高レベル放射性廃棄物の地層処分方法を提供することである。
本発明の目的の第5は、大断面の地下空洞内に設置され、我が国原子力委員会が1978年に定めた発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針における耐震重要度分類でAクラスに相当する地震力に耐え得る強度を有し、過酷事故が発生したとしても放射性核種の周辺への漏洩・拡散を防止・低減あるいは遅延させることが出来ると共に廃炉処理までを含めたライフサイクルコストが安価でしかも安全性の高い地下立地式原子力発電所の構造設計案を提供することである。
本発明の目的の第6は、既存の地中存在物に対して、それに悪影響を与えることなく、その機能を強化すること、その機能を修復すること、地下水あるいはカビによる変質や劣化を防止すること、地震あるいは地殻変動による損壊を防止すること、既存の地中存在物を発生源とする有害物質が周辺へ拡散する可能性を排除することが可能な技術を提供することである。
本発明の目的の第7は、施工地域の上方あるいは近傍に既存する地上構造物あるいは地中構造物に影響を与えることなく、また大規模な支保工を必要とせずに大断面の大深度地下構造物を施工する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載した地下構造体の施工方法は、
構築しようとする地下構造体の所定相当領域あるいは該地下構造体の所定相当の近傍領域に作業坑道を形成する第1工程と、
前記第1工程で得られた作業坑道内壁面の一方側の地山を所定幅で、所定深さ、かつ所定長さによって決められる容積の空領域を形成した後、前記一方側の地山と対向する前記作業坑道内壁面の前記容積と同等若しくは略同等容積部位又は前記作業坑道の作業空間が確保出来る程度の容積部位に、前記地下構造体の一部を構成する構成部材が少なくとも含まれている充填物で充填領域を形成するか、あるいは前記充填領域を先に形成した後、前記空領域を形成するかのいずれかひとつを含む第2工程と、
該第2工程を前記地下構造体の少なくとも所定相当領域内において複数回繰り返し、該地下構造体の構成部材が順次新たに形成される充填領域の充填物により施工される第3工程とを含むことを特徴とする地下構造体の施工方法である。
前記地下構造体の所定相当領域とは該地下構造体の構築を計画している領域であり、該地下構造体の所定相当の近傍領域とは該地下構造体の構築を計画している領域の近傍の領域のことである。
本発明による地下構造体の施工方法は、該地下構造体の所定相当領域領域、すなわち該地下構造体の構築を計画している領域の上方の地表から全体的に掘り下げる開削工法ではない。該地下構造体の構築を計画している領域あるいはその近傍に小断面の作業坑道を形成する。そして、該作業坑道の一方側の地山に所定幅で、所定深さ、かつ所定長さによって決められる容積の空領域を形成する。該作業坑道の断面は、作業空間が確保出来る大きさと形状であることが必要であるが、その断面形状が矩形であり、前記一方側が上方側の例で説明すると、所定幅は該作業坑道断面の横幅と略同等であることが望ましい。所定深さは該作業坑道の高さよりも小であることが望ましい。この段階で該作業坑道の断面は当初に比べ、所定深さで所定幅の分だけ断面積が増加する。その後、該作業坑道の該一方側に対向する内壁面、すなわち、下面側に該容積と同等若しくは略同等容積部位又は前記作業坑道の作業空間が確保出来る程度の容積部位に、前記地下構造体の一部を構成する構成部材が少なくとも含まれている充填物で充填領域を形成する。これにより、該作業坑道の断面積は当初の断面積と略同等となる。該作業坑道の断面の高さは当初の高さと略同等となる。これにより、作業空間は確保される。該作業坑道の断面は作業空間が確保される必要最小限の程度の大きさであるから、堅固な支保工や大規模な地下水対応作業が不要となる。該作業坑道の下面側に充填した充填物には、構築しようとしている該地下構造体の構成部材が含まれているので、該所定深さと略同等の高さ分地下構造体が施工されたことになる。空領域形成と充填領域に地下構造体の構成部材を充填する組み合わせのサイクルを上方に向かって複数回繰り返すことで、基本的には該作業坑道の断面の大きさと形状を保持したまま段階的に地下構造体を施工する方法である。作業空間が確保出来れば、充填領域形成の後で空領域を形成する方法でもよい。
該第2、3工程において充填領域が地下構造体の所定相当領域外にある場合は充填物に地下構造体の構成部材が含まれる必要は無い。この場合、前工程における空領域形成時に発生した排土を充填物とすることで、元の地山と類似の組成の地山を残すことが出来るので環境影響を最小限とすることが出来る。
【0020】
NATM工法やシールド工法など従来のトンネル掘削方法では、切羽を長手方向に移動させながら掘削する。
MMST工法においては地下構造物を取り囲むようにしてシールド工法による小径トンネルを間隔をおいて多数築造し、小径トンネル間を掘削、コンクリートを充填して小径トンネル同士を一体化して環状の連続壁を形成した後、連続壁内側の地山を掘削して地下空間を有する地下構造物を形成する工法である。多数の小径トンネルはシールド掘進機で長手方向に掘削し形成される(非特許文献7)。
これらの従来工法では、工事の進行に伴って、坑道の容積が増大する。これは、坑道掘削による地山への影響力が、工事の進行と共に変化し、増大することになる。工事の進行と共に強まる影響力と地山の耐力とのバランスが崩れる時に、カタストロフィック的に、山はねや地下水の噴出が起こる。
こうした従来工法に対して、請求項1の発明では、該第1工程のみにおいて切羽を坑道の長手方向に移動させながら掘削するが、それ以降の該第2工程および該第3工程では、掘削側の切羽および充填側の作業位置は坑道の突端ではなく坑道の側面にあることと、掘削および充填の作業位置を坑道の横手方向に移動させるという方式であることが従来工法と根本的に異なっている。
また、該充填領域は充填物で地山を埋め戻すことになり、該作業坑道の地山に占める容積は工事作業の初期から終期に至るまで略一定に保たれる。
【0021】
請求項1の発明により、以下の効果を生ずる。
(a)該地下構造体の施工工事の初期から終期に至るまで、最小限の断面積の作業坑道で工事を進行させることができる。従って、作業坑道の支保工のスパンが短いため、支保工の剛性を低く出来る。そのため、支保工機材の軽量化、分割組立構造化が可能となる。また、該作業坑道の断面積を必要最小限に出来ることから、地山の応力や地下水流系を乱すことを少なくすることが出来るため、環境保全に適する地下構造体施工工法である。そのため、該地下構造体施工領域の上方の既存の地上構造物に影響を与えずに該地下構造体を施工できることから、都市部の大深度地下に地下構造体を施工する場合に適した地下構造体の施工方法である。
(b)該地下構造体の施工工事の初期から終期に至るまで、該作業坑道壁面積は略一定で、該作業坑道の壁面位置が横手方向に移動する。このことから、工事の進行に伴って地山に対する該作業坑道の影響は変化するが、長手方向に作業坑道を延長させていく従来工法に比べその変化は緩慢である。従って、該作業坑道壁面から湧出する地下水量の変化は緩慢である。また、山はねの要因となる、地山の残留応力が緩やかに緩和されるため、山はねのエネルギーを低減させることができる。これらのことから、地下水の止水対策が簡略化出来ると共に、山はね発生件数の低減と山はね強度を低減することができる。
(c)該第3工程で、該作業坑道の断面形状を略一定に保つことが出来る。このため、作業枠体の構造を統一化出来て、しかもそれを繰り返し使用することが出来る。従って、該作業枠体機材総数量を低減可能であり、最小限の予備品在庫量で該作業枠体機材損壊時に交換対応が可能となる。
(d)請求項1の発明は非開削工法であるので、該地下構造体の施工位置の地下深度、土かぶりの深さによって支保工規模や総排土量、必要とされる技術内容や機器が影響されることは少ない。従って、大深度地下構造体施工に適している。
(e)該第1工程により施工される該作業坑道の施工位置は、該地下構造体の構築を計画している領域の長手方向の略全域に亘る位置に対応する場合が多い。従って、該第1工程において施工される該作業坑道は、該地下構造体施工のための地質調査坑道の役割を果たす。これにより、該第1工程の段階で地質情報、地下水情報が得られることから、その後の該地下構造体施工作業方法、必要機材の選定を的確に判断することが出来る。該第1工程において施工された段階の該作業坑道を削孔の出発点とし、横手方向に複数の地質調査用のボーリングを実施し、該地下構造体の構築を計画している領域全域の地質および地下水流の情報を簡便に得ることが出来る。従来の地質調査用のボーリング工では、その調査削孔の出発点が地表であるために大深度域の地質調査の場合、深い調査ボーリングを地表から多数削孔する必要があった。本発明では、該第1工程で施工した該作業坑道は該地下構造体の構築を計画している領域内あるいはその近傍に施工される。従って該作業坑道を削孔の出発点とすれば、調査ボーリング深さを必要最小限とすることが出来る。該調査ボーリング深さが浅いことから、該調査ボーリング削孔のための機器を該作業坑道内に設置できる程度の小規模の機器とすることが出来る。この調査ボーリングの削孔は3次元的に任意の必要な方向に削孔する。この削孔には、NATM工法におけるロックボルト用の削孔技術および機器が応用できる。本発明に関わるこれらの調査作業において、該地下構造体の施工位置の地下深度が異なっても、技術的困難さや調査費用が影響を受けることは少ない。該調査ボーリング作業と平行して、必要に応じ、該地下構造体の構築を計画している領域の止水グラウト注入作業、あるいは該地下構造体の構築を計画している領域(すなわち施工作業実施領域)の地下水位を下げる処置を行う。
(f)該第1工程において該作業坑道を複数施工する場合、それぞれの該作業坑道を該第3工程の出発点とすることが出来ることから、複数の該作業坑道で同時進行的に第3工程の作業を進行できるため、工期短縮が図られる。
(g)従来工法は切羽が坑道の長手方向突端部にあり、工事の進行と共に、切羽位置は坑道長手方向に移動し坑道長さは伸長変化する。従って、工事遂行の助けとなるべき解析計算において、従来工法は不均質な地山中にあるめくら孔の問題となり、坑道突端部の切羽周辺は3次元モデル解析が必要とされ、所要の計算精度を保持するためには、分割要素数を多くする必要がある。しかも工事の進行に伴って計算モデル形状を伸長変化させる必要があるため、計算の規模、時間、費用が増大する。本発明では、該作業坑道の断面形状は長手方向にも略一定であるので、計算モデル形状は略不変である。また、解析計算は平面ひずみ問題として概算出来るので、2次元モデル解析が可能となり、2次元モデル解析が可能となり、分割要素数を少なくし、境界条件を単純化し、解析計算を簡易化・迅速化・低コスト化出来る。
(h)該作業坑道内における作業形態について、該作業坑道の一方側において空領域を形成するための地山掘削作業を実施し、一方側と対向する側において該充填領域を形成する充填作業などを含む該地下構造体施工作業を実施する。該作業坑道内において、作業内容と作業位置が一定している。言い換えれば、作業内容が単純で作業動線が一定であるため、作業員に対する作業訓練を簡略化できると共に、作業機器も簡略化、小型化、軽量化、ロボットによる自動作業化が出来る。単純で軽負荷の作業であるため、高度な技術および重装備の掘削機器、大規模なエネルギ源設備を必要としない。従って、該地下構造体施工のために、作業員を現地調達可能であり、重機搬入路を建設する必要もない。これらのことから、従来工法に比べ、請求項1の発明は、該地下構造体施工場所の選定においてその自由度が高い。
【0022】
本発明の請求項2に記載した地下構造体の施工方法は、前記第3工程において、複数回繰り返し工程のうちの直前工程で施工された該充填領域の地下構造体の構成部材とその次の工程で施工される地下構造体の構成部材の接触界面の1部あるいは接触界面全体を連結接合させることにより、前記直前工程において形成された地下構造体の構成部材とその次の工程で形成される地下構造体の構成部材とを順次一体構造化することを特徴とする請求項1記載の地下構造体の施工方法である。
【0023】
請求項2の発明により、全体として剛性を有する大断面の地下構造体を大規模な支保工を必要とせずに施工することが出来る。逆に充填物が廃棄物などの場合には、該接触界面を人為的に強固に連結接合しなくてもよい。
【0024】
本発明の請求項3に記載した地下構造体の施工方法は、前記第3工程において、充填物により隣接する地山に圧縮残留応力を付与させることを特徴とする請求項1記載の地下構造体の施工方法である。
【0025】
請求項3の発明により、以下の効果を生ずる。
(a)地下構造体を施工する地下領域ではその位置の地下深度と地表までの間の地山の密度に応じてランキン土圧(説明を後に記す。)が圧縮応力として働く。該第3工程において充填物によってその位置のランキン土圧に等しい圧縮残留応力を隣接地山に付与させれば、該地下構造体施工後の周辺地山の土圧分布を該地下構造体施工前の土圧分布と略同等とすることが出来る。従って、本発明により、該地下構造体の施工による周辺の地山への環境影響を最小限とすることが出来る。
(b)該地下構造体が管体形状あるいは殻体形状であってその内側の地山を排除して内部空間を活用する地下構造体の場合、該内側の地山を排除する前の時点で外側地山と内側地山では該地下構造体を介して応力が平衡している。その後内側の地山を排除する際に、内側の土圧が消滅するがその応力に相当する分だけ該地下構造体は弾性変形する。しかし管体形状あるいは殻体形状の地下構造体のこの弾性変形の程度は内側の地山を排除する前に付与した圧縮残留応力の大きさと該地下構造体の剛性に依存するが、地山の変形に比べて小さいことが多いので、該内側地山を排除する前に該地下構造体が受けていた土圧と該内側地山を排除した後に該地下構造体が受ける土圧との差は大きくならないことが多い。
(c)圧縮残留応力を地山に付与する方法のひとつとして、充填物を充填する際に締め固める方法がある。この締め固めにより、地山と該地下構造体との間に空洞が形成されることを防止できる。圧縮残留応力を地山に付与することにより、結果として地山から該地下構造体に働く土圧の局所的分布が平滑化される。これにより、該地下構造体の長期耐久性が向上するという効果がもたらされる。
(d)該地下構造体が殻体形状の地下貯留槽の場合において、隣接する地山に付与させる圧縮残留応力の大きさを前記ランキン土圧と略同等とすることではなく、貯留槽に貯留する流体の密度に応じて異なる値とする選択も可能である。貯留槽運用時の内部貯留流体による殻体内圧を想定し、その想定内圧とランキン土圧との関係から該第3工程において付与すべき圧縮残留応力値を規定する。こうすることで、貯留槽運用時の殻体の変形を最小化することが出来る。
【0026】
本発明の請求項4に記載した地下構造体の施工方法は、請求項1記載の地下構造体の施工方法において、該地下構造体の構成部材を形成するための該充填領域に充填される充填物は機能層、強度層および緩和層のいずれか一つの層で形成するか、あるいはこれらの組み合わせの層からなることを特徴とする請求項1ないし3記載の地下構造体の施工方法である。
【0027】
請求項4の発明により、以下の効果を生ずる。
(a)該充填領域の少なくとも一部の充填物は該地下構造体の構成部材となる。該地下構造体の運用目的に応じて特定される機能を有する層を機能層とする。例えば、該充填領域に気体、液体、固体、熱の透過を防止する機能を有する機能層を含めれば、二酸化炭素、原油、食糧、熱エネルギなどの貯留槽としての適用が可能である。放射線の遮蔽機能を有する機能層を含めれば、高レベル放射性廃棄物の地層処分や地下立地式原子力発電所の多重防護の手段として適用可能である。変形に対する抵抗力の高い高弾性係数の機能層とすれば、該地下構造体に所要の剛性を付与することが出来る。
(b)地下構造体の運用目的に応じてその機能を長時間保持させるために必要な強度・剛性・耐久性を有する層を強度層とする。地下構造体の構成部材の一部を強度層とすることで、機能層の強度負担を軽減することが出来るため、材質選定の自由度を拡大出来る。地下構造体が地下高圧タンクであれば、耐圧強度を保持した強度層が選定される。機能をほじす多層構造を有する該充填領域において、複数の層のうちの1層あるいは複数層は、該地下構造体の運用機能を長期に亘って維持出来るに充分な強度および長期耐久性を有する強度層とする。こうすることにより、強度以外の特性を有する他の機能層のそれぞれに強度機能を付与する必要性が少なくなるため、各層への充填材の選択の自由度が拡大する。
(c)地殻変動などにより、地下構造体と隣接地山との間にミスマッチが生じ得る。該地下構造体が隣接地山と剛に近い形で接触している場合に、地山の局所的な変形が該地下構造体に応力集中を生じさせる可能性が大である。地山と該地下構造体の間に地山の局所的変形を緩和させて該地下構造体に伝達する緩和層を設けることで前記応力集中域の応力分布を平滑化し、最大応力値を低下させることが出来る。この緩和層には、この外に、地震振動の伝達を緩和させる機能も付与する。管体形状あるいは殻体形状の地下構造体施工の際に、該機能層および該強度層の内側と外側を挟む形でこの緩和層を地山と接して配設させる構造とすると、管体あるいは殻体の内側の地山を排除する際に、発破掘削など振動を伴う高速掘削法の適用が可能となる。発破掘削などの振動が緩和層で和らげられ、管体あるいは殻体の損傷が回避出来る。緩和層は、内部摩擦角、圧縮弾性係数あるいはせん断変形抵抗が小さい性質を有する。
【0028】
本発明の請求項5に記載した地下構造体の施工方法は、地下構造体の施工方法において、以下の(a)と少なくとも(b)、(c)のうちの一つとの組み合わせの機能を有する作業枠体であって、
(a)該作業坑道の内壁面の土留め支保機能、
(b)作業枠体自重、作業員、作業機材、レール、搬出中のズリや排土、搬入中の充填材の合計重量に作業反力を加えた総荷重を支持可能とする荷重支持機能、
(c)地山壁に対して圧縮残留応力を付与する押圧機能、
前記(a)、(b)の機能を保持しながら、該充填領域内にある作業枠体を取り外し、該充填領域内から取り外した作業枠体を新たに形成する空領域に組付けることを特徴とする請求項1記載の地下構造体の施工方法である。
【0029】
請求項5の発明により、以下の効果を生ずる。
(a)該作業坑道の内壁面の土留め支保機能を該作業枠体に付与する。これは該作業枠体の機能の一部である。該第3工程の進行による該作業坑道の該重心線の移動と共に支保工の必要な位置も移動する。そして、該作業坑道の該充填領域の部分では、該充填物自体が支保機能を有するので、該作業枠体による支保工は必要ではなくなる。従って、本発明では恒久的に残存させる支保工を使用しない。該作業坑道の該重心線の移動に伴って、一部部材の取り外し、組足しで移動可能な該作業枠体に支保機能を付与することで支保専用機材を省略することが出来る。該作業坑道の位置が移動してもそれに追従して作業坑道の内壁面の土留め支保機能を該作業枠体に保持させることで、該作業坑道内において常に安全に作業を実施することが出来る。
(b)該該作業坑道の空領域側と充填領域側の間の両側面の地山壁に対して、全体的にあるいは複数の凸状体をとおして部分的に押圧し、該地山壁に略平行な方向への該作業枠体の移動抵抗力を付与する。該両側面の地山壁面側の作業枠体部材を互いに離間させる方向に付勢することによって該両側面の地山壁を押圧する。該両側面の地山壁に対するこの押圧力に比例して地山壁と作業枠体との間に横ずれに対する摩擦抵抗力が生ずる。この摩擦抵抗力と前記凸状体が該地山壁に食い込むことによる横ずれ抵抗力の合計の横ずれ抵抗力により、作業枠体自重、作業員、作業機材、レール、搬出中のズリや排土、搬入中の充填材の合計重量に作業反力を加えた総荷重を該作業枠体が支持可能となる。
(c)該両側面の地山壁に対して圧縮残留応力を付与する押圧機能を該作業枠体に付与する。この押圧機能は、該作業枠体から該両側面の地山壁に対して付与する押圧力の作用点の各々においてその押圧力の大きさを連続的に調整可能とする。該作業坑道の存在位置において、該作業坑道を掘削する以前に存在していた土圧の大きさと同等の圧縮残留応力を該両側面の地山壁に対して付与することで、該作業坑道周辺の地山の土圧分布を該作業坑道掘削前の状態に近づけることが出来るため、環境影響を低減出来る。この機能により、該地下構造体の施工領域の上方あるいは近隣に既存の地上構造物およびその地中基礎工部分あるいは既存の地下構造物(例えば地下鉄トンネルなど)があったとしても、該既存の構造物の周辺の地下地盤土圧分布状態を乱さないで地下構造体の施工が可能となる。
【0030】
本発明の請求項6に記載した地下構造体の施工方法は、前記地下構造体の形状は少なくとも板体形状若しくは管体形状又は殻体形状のいずれか、又はこれらの組合せであることを特徴とする請求項1又は2地下構造体の施工方法である。
【0031】
請求項6の発明により、例えば以下に記す地下構造体の施工が可能となるという効果を生ずる。
(a)板体形状地下構造体:農業灌漑用地下ダム、塩害土壌脱塩用高透水暗渠、土壌汚染拡散防止遮水壁、地盤液状化防止遮水壁。
(b)管体形状地下構造体:トンネル、地下河川、多目的大深度大断面地下輸送施設、地面効果浮上高速走行体(エアロトレイン)用大深度地下設置式超高直線度走行路、大断面水平式トンネル運河。
(c)殻体形状地下構造体:大深度地下構造体、地下貯水槽、地下遊水槽、化石燃料用地下貯留槽、核燃料用地下貯留槽、二酸化炭素貯留地下タンク、冷熱貯蔵地下タンク、温熱貯蔵地下タンク、食糧貯蔵地下タンク、種子貯蔵地下タンク、金属備蓄地下タンク、エネルギー蓄積型ガスタービン発電設備用地下併置高圧空気タンク、風洞実験用高圧空気地下タンク、地中浸透貯留槽(殻体内に地山を包含したままでその土壌粒子の間隙に気体燃料、液体燃料、二酸化炭素、冷媒、熱媒、菌種などを貯留)、地下立地式電力貯蔵システム、地下設置型超低振動要求施設、廃棄物地下最終処分場、高レベル放射性廃棄物地層処分場、低レベル放射性廃棄物地層処分場、原子炉解体放射性廃棄物地層処分場、核兵器解体放射性廃棄物地層処分場、地下立地式原子力発電所、超大型水チェレンコフ宇宙素粒子観測施設(ハイパーカミオカンデ)、地下核シェルター、地中埋設大型タイムカプセル。
管体形状あるいは殻体形状の地下構造体の外管壁体部分あるいは外殻壁体部分のみを施工することが出来るので、その後、外管壁体あるいは外殻壁体に囲まれた内部の地山を排土するか、排土しないで内部に地山を残したままにするかの選択の自由度が得られる。例えば、球殻形状の地下構造体の場合、内容量は球殻の半径の3乗に比例する一方で、外殻壁体の厚さを一定とすれば排土量は球殻の半径の2乗におおよそ比例する。従って、該球殻体の半径を大きなものとすれば、地山の間隙率が大きい場所では、内部の地山を残したままで、その土粒子の間隙に大容量の流体を浸透貯留することができる。この場合、内部の地山の残土処理に要する工期、工費を省略できる。浸透貯留槽の上方と下方位置に小容量の空洞バッファータンクを設置すれば、貯留流体の出し入れ時間の要求に対応出来る。従来、前記の地下燃料タンク、スーパーカミオカンデ(非特許文献53、54)、高山祭りミュージアム(非特許文献55)など大断面の殻体形状の地下構造体の多くはNATM工法で施工され、ロックボルトの効果を活かし易い硬岩地層帯に施工されている。本発明による工法では、施工場所の地質の影響を受けることが少ない工法であることから、施工場所の選定の自由度が格段に拡がり、掘削容易な軟岩地帯や第4紀の沖積世土層帯にも大断面の地下構造体の施工が可能となる。軟岩地帯や沖積世の土層帯は一般的に間隙率が高いので、浸透貯留槽の施工には適した地層となる。
管体あるいは殻体が周辺土圧を支えるので、その内側の空間に施工する地下設備自体は、土圧を支える構造とする必要がないため、軽量構造とすることができる。
管体あるいは殻体に遮水機能を付与することができるため、その内側の空間に施工する地下設備自体は、地下水対策の構造とする必要がない。

以下に地面効果浮上高速走行体(エアロトレイン)用大深度地下設置式超高直線度走行路を本発明の方法により構築することで得られる効果について記す。
地面効果浮上高速走行体の案では地上立地式の走行路が検討されている。地面効果浮上高速走行体はエネルギ効率の高い高速輸送方式である(非特許文献59〜61)ことから、地球温暖化対策に適合し得る輸送機関として、早期実用化が期待されるが、走路面と翼面との距離(約10cm)の安定制御が重要である。地上立地式走行路では、突風、積雪、生物、飛来物の介入などへの対策を要することに加え、用地取得の諸制限を受ける結果、曲線路部分を無くすことが困難である。大深度地下立地式の走行路とすれば、上下方向、水平方向を含み、3次元的に超高精度の直線度を有する長距離の走行路を構築することが出来る。これは、地質の影響を受けることが少なく該緩和層を設けることが出来る本発明の工法によって構築可能となる。外管体構築後、外管体に所定の間隔で外管体の内側と外側の地山と連通する調整孔を設ける。この調整孔は内側に開閉可能な蓋を設ける。該走行路完成後運用時の定期点検の際に、該走行路の該直線度が変化している場合、該調整孔を通して該緩和層の充填材を出し入れして、該走行路の直線度を修正する。該走行路の直線度、横断面形状を超高精度に維持管理することで、該地面効果浮上高速走行体の走行中の姿勢制御システムに必要な入力パラメータを低減し、制御ロジックをシンプル化することが出来るため、走行安全システムの信頼性を向上させることが出来ると共に走行体を安価に、軽量に製作することができる。また、地下立地式走路とすることで、突風、積雪、生物、異物(例えば該走行体や走行路壁体からの脱落片、あるいは人為的な投石犯罪によるものなど)の走行路への介入などの悪影響を排除することが容易となる。
従来工法に比べ本発明の方法では、大断面の地下構造体であるほど、工費および技術的困難さの面でメリットが大きい。従って、前記の地面効果浮上高速走行体(エアロトレイン)用大深度地下設置式超高直線度走行路の外に、例えば従来方式の高速自動車道、高速鉄道、電力線、燃料輸送管、通信線、あるいは高効率低速大容量輸送システムとしての地下運河(水路中に消波手段を設けることにより波浪抵抗を最小限とし、輸送効率を向上出来ると共に、台風など気象条件に影響されない安定した信頼性の高い輸送手段となる。また、海上航行に必要な気象、海流、水深、周辺船舶との位置関係などの情報に対応する操船制御設備の多くが不要となる。)などを合体した多目的大断面大深度地下トンネルの構築が本発明により可能となる。
以下に大断面水平式トンネル運河を本発明の方法により構築することで得られる効果について記す。
海上輸送路として重要な位置を占めるパナマ運河とマラッカ・シンガポール海峡が長年の課題を抱えている。パナマ運河ではパナマックス型といわれる幅32.2m、喫水14m以下という制限を受ける船体では載貨重量9万トンが通行の限度である。最近では、パナマ運河を通行できないという制限を容認したうえで、より大型のオーバーパナマックス型船舶の需要が増加している。中東から日本、中国および韓国への海上輸送路上のマラッカ・シンガポール海峡では、通行過密状態であるのに加え、最小水深が22.5mであり、喫水21mを超える大型タンカー(28万トン超級)はロンボク海峡を経由するため約1700km航路程が長くなっている。
本発明の工法により、マレー半島狭隘部(クラ地峡など)および中米を横断するパナマ地峡付近に水深30m、幅70m、水平上高さ60mの大断面水平式トンネル運河を構築すれば、通行船体格の制限を無くすことができると共に、閘門が無いため通過時間の短縮が図れる。
小規模のトンネル運河はフランスで実績が有る。しかし、大規模運河の全ては開削工法で構築されてきた。従って、そのルート選定には、その長さがより短いことに加え、標高差が少ないことの制限を受けてきた。閘門の無い水平式が望ましいのは当然だが、開削工法の掘削土量が多くなることから、パナマ運河の様に複数段の閘門式を余儀なくされている。
本発明によれば、大断面のトンネルの構築が効率的に出来るので、ルート選定に、標高差を考慮する必要がない。水平式にできることから、閘門の建設費、運用費を省略出来ると共に、通過時間の短縮を図ることが出来る。
上記地峡では、トンネル部の長さを20km以下に出来るルートがあるので、第1段階として、1本のトンネル運河として、航行速度15km/h程度以上の船舶で、片側交互通行とする運用とし、次段階として、更に、通過時間の短縮、通過船数の増加、安全走行を図るために、トンネル部を2連あるいは4連(走行速度で区分)とする方法をとることにより、構築費用の調達が容易化されると共に、建設機器の長期繰り返し使用、構築に伴う雇用の長期安定創生が可能となる。
本発明による工法が、周辺地山への影響が少ない工法であることから、該トンネル運河の横断面の代表径をDとすると隣り合うトンネル運河の横断面の重心線の間隔を2D〜3D程度(隣り合うトンネル同士の間隔を近づけ過ぎると相互作用による応力集中係数が上昇し、既存のトンネルを弱化させるがその弊害が無視できる間隔)の近距離の位置に上記のように追加工事として次段階のトンネル運河を構築できる。近距離の間隔で多連のトンネル運河を構築できるので、開渠の運河部分との接続が容易となる。
従来のシールド工法、MMST工法、NATM工法では以下に記す理由により、直径100m級の大断面トンネル運河の掘削には適していない。TBMを用いるトンネル掘削工法では、所要全断面の切り羽を1台のTBMで掘削を可能とするというメリット追求のため、掘削面の大型化、非円形面への対応などの技術開発がなされてきて、現段階のTBMの最大径は15m級である。しかし、掘削面が大型化するにともない、掘削刃の回転トルクが増大するため、これ以上大型化しても掘削効率の向上は望めない。従って、TBMは前記の直径100m級の大断面トンネル運河の掘削には適していない。また、直径100m級のトンネルの断面全周にシールドを覆工し、あるいはロックボルト打ち込むには更なる技術開発が必要となる。
NATM工法では地山に多数のロックボルトを打ち込むので、既存トンネルに影響を与えずに、それと近距離の位置に隣接するトンネルを追加工事として構築するには、格段の注意が必要となる。
MMST工法では多数のTBMを必要とし、上記のような大断面のトンネル構築には煩雑な工事となる。また、殻体部分に多数の小径のトンネルを同時進行的に構築すること、殻体部に緩和層を設けていないことから、殻体部および、内部排土のための掘削に発破掘削が適用し難い。 本発明の工法では、管体あるいは殻体の施工において、断面形状や断面寸法が異なっても技術的困難さの差異は少ない。工期、工費は排土量に略比例し、地質差の影響を若干受ける程度である。
板体形状、管体形状、殻体形状の地下構造体の施工方法を組み合わせることにより、様々な用途、形状、地域で計画される殆どの大規模地下構造体施工のために本発明の工法は対応可能である。
【0032】
本発明の請求項7に記載した地下構造体の施工方法は、地下構造体がその長手方向端部若しくは湾曲方向端部において櫛歯状端部を有し、長手方向若しくは湾曲方向に隣り合う該地下構造体の櫛歯状端部同士を互いに入り込む形でしかも離間して長手方向若しくは湾曲方向に配列させて、その離間部に低透過係数手段および変形追従手段を介在させて、全体として複数の地下構造体の連なりをなす断続板構造若しくは断続管構造又は断続殻構造とすることを特徴とする請求項1、2又は3記載の地下構造体の施工方法である。
【0033】
請求項7の発明により、以下の効果を生ずる。
該地下構造体の構成部材は地山と物性(例えば、密度、縦弾性係数、熱膨張係数、透水係数など)が異なることが多い。従って該地下構造体の寸法が大である程、該地下構造体と地山とのミスマッチが大きくなる。従って、地山の地殻変動、地震、大気温度変化、大気圧変化、地下水位変化などによって該地下構造体を変形させようとする力が働く。そのときに該地下構造体の寸法が小さい程、ミスマッチによる該地下構造体の変形は小さい。従って、例えば地下ダムの遮水提体を例にとると、長手方向(流水の方向に直角の方向)に一体として施工する場合に比べ、長手方向に複数分割し、互いに離間した提体の連なりとする場合の方が、個々の提体の長さが短いため、地山の変化に対する破壊抵抗性は高い。但し、離間部における漏水を防ぐ必要があり、本発明では、長手方向に隣り合う該提体の櫛歯状端部が互いに入り込む形でしかも離間して長手方向に配列させる。該櫛歯状端部が互いに入り込みしかも隣り合う該提体が離間しており、その離間部を通って該提体の上流側から下流側に漏水する。しかし互いに入り込む形の櫛歯状端部により、その離間部の漏水流路はジグザグ状として、流路長を長くしている。そのジグザグ状漏水流路には変形に対する追従性が高い変形追従手段および透過係数の低い低透過係数手段を充填することで、許容限度内の漏水量でしかも破壊し難い提体とすることが出来る。本発明は、板体形状の地下ダム以外に管体形状の地下河川、殻体形状の地下溜池などにも適用できる。
【0034】
本発明の請求項8に記載した地下構造体の施工方法は、板体形状若しくは管体形状又は殻体形状を有する略相似形の複数の地下構造体を略平行移動の関係により互いに離間した配置とする全体として多重板構造若しくは多連管構造又は群設殻構造とすることを特徴とする請求項1、2又は3記載の地下構造体の施工方法である。
【0035】
請求項8の発明により、以下の効果を生ずる。
(a)板体形状の地下構造体である地下ダムを多段に施工する例について以下に記す。類似形状の複数の地下ダムを河川の流れに沿って離間させて施工すると、提体の上流側と下流側の地下水位差を低減させることが出来て、提体の耐久性を向上させることが出来ると共に、提体の漏水を低減出来る。また、多段にすることで総貯水量を増大できると共に、貯水域の地下水位の差を低減出来るので、塩害防止対策が容易化出来ると共に揚水設備を簡略化出来る。地下ダム施工により、地下水位を上げて潅漑農地拡大を図ろうとする場合に、地下水位を地表からの深度で1.5m以浅とすると、地表面での土壌水分蒸発のため、塩分濃度の高い水が上昇し、更に太陽熱や風の影響で地表部の水分が蒸散する結果、地表部の塩分濃度が上昇する場合がある。耕地として、あるいは緑陰を保つために1〜2m以浅の深度の土壌の塩分濃度を所定値以下とするには、該地下ダムによる貯水域の地下水位を1.5m以深とすることが必要となる。しかし、他方において、貯水域が河川の周辺である場合が多いので、貯水域の地表面は傾斜している可能性が高い。貯水域周辺の農地潅漑の便を考慮すると、乾季に地下水位が低下した場合においても、ハンドポンプなど低エネルギ、ロウテクの方法で揚水が可能な程度に地下水位を浅く保持したいという要求も生ずる。ワジなどに地下ダムを構築して、潅漑農地拡大を図ろうとする場合、該地下ダムを流れ方向に所定間隔をおいて複数構築し多段地下ダムとすることで、広い領域において地下水位を塩害を防止出来る1.5m以深で且つ揚水容易な7m以浅とすることが出来る。ここで所定間隔とは、河床勾配および提高によって異なるが、地下ダム提体位置とその貯水域の上流端の位置との間隔よりも小さな間隔である。多段に地下ダムを施工する場合、上流側から下流側に向けた順番で施工する。こうすることで該地下ダム施工の際に、下流側の地下ダムによって地下水位が上昇することは無く、地山から該作業坑道内への地下水流入量の増大とそれに伴う地下水対策作業の増大を回避出来る。
(b)管体形状のトンネルを平行移動の関係を有する多連トンネルとして施工する場合、全断面長手方向掘進の従来工法に比べ、本発明の工法では、小断面の作業坑道を横手方向に掘進させる工法のため、地山に対する影響が小さいので、工事中の山はねの懸念が少なく、トンネル間の間隔距離を短くすることが出来る。また、地質および地下水情報が得られている既存トンネルに、それに損傷を与えることなく、隣接する形で付加的に多連トンネルとして増築することが出来る。
(c)本発明では、前記のようにランキン土圧と略平衡する圧縮残留応力を隣接地山に付与することで周辺地山の土圧分布を乱さずに殻体形状の地下構造体を構築することが可能であるため、複数の殻体形状の地下構造体を近接して群設することが可能となる。このため、都市部の大深度地下の空間利用密度を向上させることが出来るため、コンパクトシティとして、移動エネルギを低減出来るので持続的社会構築に寄与出来る。
【0036】
本発明の請求項9に記載した地下構造体の施工方法は、管体形状又は殻体形状を有する略相似形の複数の地下構造体を拡大縮小の関係且つ包含関係により互いに離間した配置とする全体として多重管構造あるいは多重殻構造とすることを特徴とする請求項1、2又は3記載の地下構造体の施工方法である。
【0037】
請求項9の発明により、以下の効果を生ずる。
(a)多重管構造の例としては、活断層を横切って施工せざるを得ないトンネルの場合、該活断層の影響がある長手方向の範囲のみ該トンネルを取り囲む形の多重管を本発明の工法で施工する。外側管体を変形緩和機能を有する緩和層とする。この緩和層でトンネルを取り囲むことにより、活断層にずれが生じてもトンネルを変形破壊させる力を許容限度以下に低減できる。しかも本発明の工法では、地山に対する影響が小さいので、この緩和層の施工工事は、既存トンネルに損傷を与えることなく、安全度付与のための付加的なレトロフィット工事として施工出来る。
(b)多重殻構造として、高レベル放射性廃棄物の地層処分の例を挙げる。現在の検討案では、放射線発生源のガラス固化体の外側が厚さ5mmのステンレス鋼板(キャニスター)、その外側は腐食代40mmを考慮した厚さ190mmの炭素鋼厚板(オーバーパック)、更にその外側に厚さ0.7mの緩衝材(70wt%ベントナイト、30wt%ケイ砂)とするのが1セットの放射性廃棄物であり、これを10m程度の間隔を置いて地中に埋設する。1セットの放射性廃棄物はキャニスター、オーバーパック、緩衝材の、3重の放射線防護手段となっているが、その外側は何も防御手段が設けられていない深度300〜1000mの地山である。本発明による円筒タンク様殻体内に前記3重までの防護手段の該検討案の放射性廃棄物セットを3次元的に複数配置して収納すれば、該殻体内部の地山と該殻体を人口バリアとして加えることが出来るため、合わせて5重の防護手段となり、地殻変動や地下水流系の変化など不確定要因の影響を排除する事が出来て、しかも該殻体中のアルカリ度やオゾン濃度など雰囲気を調整できるため、地中微生物の挙動をコントロールすることが可能となる。該殻体の外側を更に殻体で覆う多重殻体とすることにより、安全度を更に向上させることができる。しかも、この多重殻体化は既存の放射性廃棄物セットに外乱を与えることなく、その外側に必要に応じてレトロフィット工事として追加施工が可能である。
【0038】
本発明の請求項10に記載した地下構造体の施工方法は、前記作業坑道においてこれを長手方向に区分する複数の工区に分割し、それぞれの工区において同時進行的に前記第3工程作業を進行させて地下構造体を施工することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の地下構造体の施工方法である。
【0039】
請求項10の発明により、以下の効果を生ずる。
地下ダムを施工する例を挙げる。作業坑道と地表との連通路をm個とすると、該作業坑道と該連通路の接続点を区分点として、該作業坑道を長手方向にm−1個の工区に区分することが出来、該m−1個の工区のそれぞれにおいて該第3工程の作業を同時進行させることが出来るので工期短縮が図られる。各連通路と該作業坑道との接続点間の作業坑道をさらに複数個、例えばp個の工区に区分する。該作業坑道全体ではp×(m−1)個の工区に区分される。これらのp×(m−1)個の工区において該第3工程の作業を同時進行させることが出来るので更に工期短縮が図られる。また、これにより、各工区担当の切羽面積を小さく出来る。小面積であるために、1工区内の切羽地質の差異が少なくなることから、切羽地質に適応した掘削機器の選定が容易となると共に、1工区当たりの掘削作業負荷を低減させることができるため、掘削機器を単純機構の小型軽量のものとすることが出来る。小型軽量の掘削機器を使用することで、該掘削機器の重量および作業反力を該作業枠体で支持することができると共に該作業枠体に囲まれた広くはない作業空間内での掘削作業が可能となる。各切羽が小規模であるため掘削機器を硬岩用に高エネルギ集中型とすることや軟岩用にカッターローダー型とするなど、各工区毎にその個所の地質に適合させた掘削方法選択の自由度が得られる。また、掘削機器そのものを小規模に出来るため、地質や地下構造体の形状構造の差異に対応するための機器開発費用が少なくて済む。
従来工法の大型TBMでの掘削では、掘削面積が大であることから、地質変化への対応は大規模な部品交換作業を要することに加え大断面に適応した大規模な支保工が必要となる。
該第1工程で該作業坑道の該重心線は直線あるいは滑らかな曲線の連なりの組合せとして施工される。該重心線は屈曲点を含み得る。その後の工程においてもこの該重心線の移動が略平行移動の関係を保つことで、該地下構造体施工工事の初期から終期に至るまで該作業坑道の該重心線の連続性が保たれる。その結果、該各工区においてズリの搬出、充填物の搬入、換気、排水などを滞り無く遂行することが出来る。
【0040】
本発明の請求項11に記載した地下構造体の施工方法は、地下構造体の構成部材であるレトロフィット板体、レトロフィット管体あるいはレトロフィット殻体によって既存の該地中存在物の存在領域の少なくともその一部を取り囲むことを特徴とする請求項3記載の地下構造体の施工方法である。
【0041】
請求項11の発明により、以下の効果を生ずる。
(a)地下ダムの例について記す。地下ダム構築後にその提体の一部が損傷し、漏水により貯水機能が低下した場合に、損傷個所の下流側の近傍に補修工事として提体を追加施工することにより貯水の漏洩を低減させ、地下ダムとしての機能を回復させることが出来る。
(b)水封式地下岩盤貯槽によるガス燃料や液体燃料の備蓄基地では、水封ボーリングへの給水量制御、目詰まりを誘起するバクテリアなどの水質調査、地下水位調査などの水封管理業務が必要となる。既存の水封式地下岩盤貯槽を内包する形で本発明のレトロフィット殻体で密閉する。既存の水封式地下岩盤貯槽の外側に該レトロフィット殻体を施工する工事期間中も継続して、水封式地下岩盤貯槽の業務を継続出来る。該レトロフィット殻体で密閉した後は、該地下水に密閉機能を委ねる必要が無くなるので、該水封管理業務を省略することが出来る。
(c)高松塚古墳のようなカビや地下水などで劣化の恐れのある埋蔵文化財を保存するために、埋蔵領域全体を内包する形で地中に殻体を施工し、地上部はドーム状の殻体に接続し該埋蔵領域を該殻体で地中部および地上部を合わせて密閉する。該殻体で密閉することにより周辺地山からおよび地上から該埋蔵物を劣化させる条件を排除することが出来る。該殻体内部への地下水流入を阻止出来る。該殻体内部のカビや微生物を殺滅処理することや内部を弱還元性雰囲気として金属成分などの酸化を抑制するなどの劣化防止処置を管理した形で実施出来る。該殻体にセンサーを設置することにより、盗掘を防止出来る。
(d)重金属、有機溶剤、農薬、細菌などの土壌汚染物質や天然由来の砒素、水銀、あるいは放射性物質など地中有害物質が存在する地中有害領域内から該有害物質の周辺への移行・拡散を防止することを目的として、地中有害領域全体を内包する形で地中に殻体を施工する。該殻体は該有害物質を通さない仕様・構造で、形態は殻体、深皿様殻体、あるいは上下に開いた管体としてその下部は不透水層に根入れする。地中に有害物質の存在が確認された地域で、その無害化処理に長時間を要する場合に、本発明の方法で有害物質確認領域を包含する地中殻体を施工し、有害物質の周辺への拡散をまず防止する処置として適用出来る。
【0042】
本発明の請求項12に記載した地下構造体の施工方法は、地下構造体が、放射性物質を地中に多段に亘って埋設した状態でその周囲を密閉遮蔽する遮蔽殻体であって、請求項1の方法によって順次該遮蔽殻体を形成することを特徴とする請求項1記載の地下構造体の施工方法である。
【0043】
請求項12の発明により、以下の効果を生ずる。
高レベル放射性廃棄物の地層処分では、その長期安全性に関して公衆の理解がまだ充分に得られていないことから、原子力発電所を稼働している各国では地層処分場の建設地域の選定に苦慮している。地下300m以深に埋設する高レベル放射性廃棄物から地上の生物圏へ放射性核種が移行する可能性について、数種のシナリオに基づいて検討されている。そのポイントとして、耐震性、鋼製などの密閉容器の腐食開口により放射性核種が漏れ出てくる可能性と、漏れ出た放射性核種の地表への移行に関する地下水流あるいは水素ガス拡散(鋼容器が地下水で腐食されるときに発生)の関わり方などがが挙げられている。地震などで地中に新たな水みちが形成され、それが放射性核種の移行経路となる可能性、周辺地山から密閉容器への地下水の浸入の可能性など、1000年という超長期の予測解析精度の信頼性はまだ得られていないと言える。
本発明では、放射性核種および人口バリアを損傷させ得る物質および微生物を遮蔽する機能を有する遮蔽殻体によって放射性物質の保管領域全体を覆うため、背景技術の項で記した現状の高レベル廃棄物地層処分方法に比べ防護の多重性を向上させることが出来る。放射性物質を保管領域に埋設する作業を開始する以前の時期に遮蔽殻体の下部の初期施工部分を施工し、該殻体内部の地山の含水率を低下させる処置、カビや微生物などの殺滅処理、弱還元性雰囲気とする処置が可能であるため、放射性物質の周りの人工バリアの腐食損傷が起き難い環境とし、該人工バリアに対してその封じ込め機能の超長期の耐久性を付与することが出来る。遮蔽殻体の内側および外側を緩和層ではさむ構造とすれば、地震や地殻変動が起きても遮蔽殻体の封じ込め機能が低下する可能性を極めて低くすることが出来る。このことは、放射性物質の地層処分地域の選定において、地質の限定条件を拡げることが出来るため、埋設地域選択の自由度が格段に拡大する。このため地震多発地帯から離れたより安全な地域で掘削が容易な軟岩地盤帯に低廉な工費で放射性廃棄物のより密閉性の高い埋設処理が可能となる。
【0044】
本発明の請求項13に記載した地下構造体の施工方法は、地下構造体が放射性廃棄物を含み、放射性物質を多段に亘って埋設する場合において、充填物が放射性物質と埋め戻し材であることを特徴とする請求項1記載の地下構造体の施工方法である。
【0045】
請求項13の発明により、以下の効果を生ずる。
請求項1における充填物が放射性物質と埋め戻し材であり、最近接する放射性物質同士の間隔が規定値以上になるように該第3工程において充填物として放射性物質とするか埋め戻し材とするかを選択する。作業坑道の断面の寸法は充填作業を実施するのに必要な最小限の大きさとするため、支保工を簡略化出来る。放射性物質の埋設プロセスの3次元的進行方向を、下部から上方へ向けて、水平方向、傾斜方向の3種のいずれかを選択出来る。該第3工程による埋設工事の進行中、最近接する作業坑道同士の上下方向距離が所定値以下にならないよう配慮することで、該埋設工事は、3次元的に多段に配列させた複数の作業坑道で同時進行的に実施出来るので、従来方法に比べ工期を短縮出来る。
【0046】
本発明の請求項14に記載した地下構造体は、請求項1の方法で施工される以下の3種の殻体を含む地下構造体である地下立地式原子力発電所が、
(1)地中原子炉部を収容する地中原子炉部収容殻体と地中発電機部を収容する地中発電機部収容殻体の2個の殻体を共に外側殻体内に包含し、
(2)該外側殻体を貫通し、地上制御部と該外側殻体の内部とを連通する地上部への主連通路と、
(3)該外側殻体の内部において該主連通路と該地中原子炉部収容殻体内部とを連通する分岐連通路と、
(4)該外側殻体の内部において該主連通路と該地中発電機部収容殻体内部とを連通する分岐連通路と、
(5)該分岐連通路が該地中原子炉部収容殻体を貫通する部分に設けられた分岐連通路の高圧遮断手段と、
(6)該分岐連通路が該地中発電機部収容殻体を貫通する部分に設けられた分岐連通路の高圧遮断手段と、
(7)該主連通路が該外側殻体を貫通する部分に設けられた主連通路の高圧遮断手段によって構成されることを特徴とする地下立地式原子力発電所である。

【0047】
請求項14の発明により、以下の効果を生ずる。
本発明による地中原子炉収容殻体は、従来の地上立地式原子力発電所の原子炉建屋に相当する。
地中原子炉収容殻体の外側と外側殻体の内側の間の地山は放射線遮蔽機能を有していると共に流動する地下水を含まないことから流動地下水系としての放射性核種の拡散経路を有しない。外側核体は放射性核種の封じ込め機能を有する。その外側核体の外側で地表までの地山は放射線遮蔽機能を有する。従って、従来の地上立地式原子力発電所の放射性核種の拡散防護機能は5重とされているが、本発明によれば、8重の放射性核種の拡散防護機能を有するより安全な地下立地式原子力発電所を提供することが出来る。
前記3種の殻体および地上部への連通路に設けた高圧遮断手段は、過酷事故が発生してもその耐圧強度を保持させているため、炉心溶融という過酷事故が発生したとしても、国際原子力機関(IAEA)の定めた国際原子力評価尺度でレベル4(事業所外への大きなリスクを伴わない事故)にその被害を食い止めることが可能となる。本発明による地下立地式原子力発電所の殻体では、圧縮残留応力を地山に付与した状態で該殻体を施工するので、施工深度に応じて該殻体に圧縮応力として作用するランキン土圧を活用出来るため、低コストで高耐圧の殻体を地中に施工することが出来る。
廃炉に際しては、再利用可能な使用済み核燃料や核汚染されていない有用金属類などを取り出し、外側核体、地中原子炉収容殻体および発電機収容殻体はそのままの状態で残し、地中原子炉収容殻体内部、発電機収容殻体内部を埋め戻し、連通路の高圧遮蔽手段を閉じ、連通路内部も地表まで埋め戻す。こうした廃炉処置により、核汚染物質は請求項12に記載した放射性物質の地中埋設方法と同等の超長期の安全性をもって地中保管される。また、従来の廃炉処理に比べ、核汚染物質の移動、ドラム缶などへの格納処理が不要となるため、廃炉処理費用を大幅に低減できると共に、廃炉処理作業のほとんどは地中で実施されるため、該作業中に事故が起こったとしても放射性核種の周辺地上への拡散を最小限とすることが出来る。
【発明の効果】
【0048】
以上記述のように、本発明により、低レベルの技術の組合せで、小規模な土木機器で、少量の資材で、低エネルギ消費で、周辺の環境や既存構築物に与える影響が少ない状態で、規模、形状、用途、施工場所の地質、深度、インフラ条件に影響されることなく、超長期に亘ってその機能と耐久性を保持し得る種々の地下構造体を、低コストで施工することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下に本発明による実施形態について、図面を参照して説明する。
【0050】
請求項1、2、6に記載の発明に関して、地下構造体1の第1実施形態として、地中の鉛直板体形状の地下ダム提体を本発明の方法により施工する例について図1〜28で説明する。
図1(a)に構築を計画している地下構造体1(この場合、地表からの深度DbからDtの間で高さYs、長さLs、厚さXsの概略寸法を有する地下ダム提体)を示す。図1(b)には、構築しようとする地下構造体1の所定相当領域、すなわち該地下構造体の構築を計画している領域の輪郭を2点鎖線1aで示す。
該地下構造体の構築を計画している領域1aあるいはその近傍の領域1bの下部であって構築を計画している該提体の全長に対応する領域に作業坑道2を掘削する(該第1工程)。この作業坑道2の掘削に際し、地表より連通路19を予め掘削する。この作業坑道2の掘削は、隣り合う該連通路19間を一つの工区として、請求項10に記載のように、長手方向に複数個の工区に分割して、同時進行的に該第1工程により作業坑道2を施工する。該第1工程における掘削方法は、手堀り、軽量削岩機、あるいは水平掘削機などを併用してもよい。各工区において長手方向への掘削の進行に伴って、該作業坑道の内壁面8に略内接する形で切梁、腹起し、土留めパネルなどからなる図示しない作業枠体21を設置する。該作業坑道2は長さ、幅、高さが、それぞれL、X、Yに略等しい。
次段階の該第2工程、該第3工程では該作業坑道2の横手方向への作業が主体となる。その作業の準備のため、掘削機器、ズリ搬出機器、充填物搬入機器、充填物まき出し機器、充填物締め固め機器、動力線、照明設備、換気設備など、作業に必要な機器類を該作業枠体上および該地表との連通路19に設置する。要すればレール、排水設備も設置する。この段階で次段階の該第2工程および該第3工程の工事を実施する準備が完了する(図1(b))。
【0051】
該第2工程以降の説明に先立ち、矩形断面形状を有する作業坑道2の例における定義について図2、3を用いて以下に説明する。
(a)作業坑道2は、地中に設けられるものであって、地山13、充填物17あるいは壁面保護材18によってその内壁面8が囲まれ、地中で掘削および充填などにより該地下構造体1を施工するための作業を可能とする高さと幅および長さの空間を有し、地上との連通路19(図1(b)参照)を有する管状領域であるとする第1定義。
(b)重心線5は、該作業坑道2を長手方向に複数分割し、それぞれの長手方向分割位置に対応する該作業坑道断面の輪郭線3によって囲まれる閉曲面16の重心点4を該作業坑道2の該長手方向に沿って順に滑らかに連ねてなる線であるとする第2定義。
(c)該作業坑道2の該重心線5のみを共有線として共に含み、且つ互いに交差する2個の仮想の面6、7と、該作業坑道内壁面8とが交差する線9、10、11、12を境界線として、該作業坑道内壁面8を長手方向に沿って縦割りとした4個の面の領域に区分し、この4個の面に対して該重心線5を中心として時計回りに順に、面A、面B、面Cおよび面Dと名付け、この4個の面を、面Aと面Cの組と面Bと面Dの組からなる2個の組に区分けしたとき、それぞれの組を構成する2個の面は互いに隣接せず向かい合う位置関係となり、
該面Aと該面Cからなる組を第1対面とし、面Aは空領域形成側の面(該作業坑道の重心線5の移動の方向側の面)に対応し、面Cは充填領域形成側の面(該作業坑道の重心線5の移動の方向とは逆方向側の面)に対応すると共に、
該面Bと該面Dからなる組を第2対面とし、該第3工程実施中において、面Bおよび面Dは互いの間隔を略一定に保持するとする第3定義。
図2では、該作業坑道断面の輪郭線3すなわち該作業坑道2の断面形状は矩形としているが、これにとらわれず、平行四辺形、円輪を2本の平行線により部分的に切り出した形状や、上円下方の形状などでもよい。作業枠体部品の繰り返し使用を可能とし易いとの理由から、作業坑道2の断面形状は、該第2対面を構成する面Bと面Dは略平行移動の関係にあることが望ましいが、地下構造体1の形状に適応する任意の断面形状でよい。
【0052】
図3には、該地下構造体の構築を計画している領域1aと該作業坑道2の位置関係を示す。該第1工程で形成する該作業坑道2は、該地下構造体の構築を計画している領域1a内に形成されなくてもよい。該地下構造体の構築を計画している領域の近傍の領域1bに該作業坑道2を形成することが望ましいが、該地下構造体の構築を計画している領域の周辺の既存構造物との関係から、該地下構造体の構築を計画している領域1aから離れた位置に第1工程としての該作業坑道2を形成せざるを得ない状況も起こり得る。その場合は、該地下構造体の構築を計画している領域1aから離れた位置に第1工程としての該作業坑道2を形成し、外作業坑道の重心線5を該地下構造体の構築を計画している領域1aに向けて移動させながら該第2,3工程を実施する。第1工程として当初形成した該作業坑道の位置から、該作業坑道2が該地下構造体の構築を計画している領域1aに到達するまでの該第2、3工程において、使用する充填物17として空領域形成により発生した排土を用いる。そして、充填作業における締め固めにより充填領域における充填物の密度が周辺地山の密度と同等となるよう調整する。こうすることにより、第1工程として当初形成した該作業坑道2から該地下構造体の構築を計画している領域1aまでの間の該作業坑道2の移動軌跡上の地山は工事前の地山と類似した状態とすることが出来るため、この方法は環境影響の少ない工法と言える。近隣の既存の構造物との位置関係などにより、該地下構造体の構築を計画している領域1aの直上の地上への最短の連通路19を形成出来ない状況の場合は、地上との連通路19を水平方向に迂回させることにより、該第1工程としての該作業坑道2を該地下構造体の構築を計画している領域1a内に形成する方法が可能となる。
【0053】
図4〜15に該地下ダム提体を施工する過程を該提体の横手水平方向からの矢視図で示す。
図4が該作業坑道2を掘削する第1工程であって、該作業坑道2の重心線5の深度はDgである。図5、6が該作業坑道2の上部に空領域14を形成する第2工程である。図7に上部に所定距離(請求項1で所定深さに対応)Yeだけ形成した空領域14に対して下部に所定距離Yiだけ充填物17を充填した充填領域15を示す。図8は該作業坑道2の高さが当初の高さYと略同等の高さYとなり、重心線5の深度はDgとなっていることを示している。該作業坑道2の重心線5の位置はYg(=Dg−Dg≒Ye≒Yi)だけ上方(該第1対面の一方側)に移動する。
図9は該充填物17の少なくとも1部が該地下ダム提体の構成部材20と見なし得る状態(例えば硬化した状態)を示す。この段階で、該提体の計画高さYs(図1(a)参照)に対して最下部からYsの高さ分の提体が施工されたことになる。
図10、11、12、13は該第2工程の繰り返しを示している。図5〜9の施工内容と図10〜13の施工内容は基本的には同等であるので、図5〜9を第3工程の第1回目のサイクル、図10〜13を第2回目のサイクルと見なし得る。図13は該第1回目のサイクルで施工された提体(高さYs)と該第2回目のサイクルで施工された提体が連結接合され、一体構造化され(請求項2)提体高さがYsとなった状態を示している。
図14はこの第2工程を上方に向けて複数回(n回)繰り返して(第3工程)該提体高さYsが計画の提体高さYsに達した状態を示している。この状態の作業坑道2は埋め戻されて地山13と類似の状態とされ、該地下ダム提体1の施工が完了する(図15)。
【0054】
地下ダム提体の横手水平方向からの矢視図で示した図4〜15と同様の工程の推移を、図16〜26に該提体の断面図で示す。
図16に示すように、該第1工程において施工される該作業坑道2の上面を面A、下面をC、側面を面Bおよび面Dとする。この作業坑道2の重心線5の深度はDgである。面A、面B、面C、面Dに略内接する形で図示しない作業枠体21を設置する。
該面Bと該面Dとの間隔Xが該面Bと該面Dの延長面上でも略保持されるように、しかも、該面Aと平行移動の関係にあって、互いの間隔距離がYeである面Aが該作業坑道2の新たな上面(面A)となるよう該面A側を掘削する(第2工程)。この掘削によって該面Bおよび該面Dの延長面上に形成される新たな側面を面Beおよび面Deとする。該面A、該面A、該面Be、該面Deおよび該作業坑道2の長手方向に離間した2つの断面によって囲まれた空領域14(E)を形成する(図17)。
該空領域14(E)の断面の重心点を4e、この重心点4eを該作業坑道2の長手方向に沿って順に滑らかに連ねてなる重心線を5eとする。
該空領域14(E)の該面Beおよび該面Deに、新たに作業枠体21を設置し、図示しない切梁、腹起しにより、該面Be側および該面De側の地山13に接する図示しない土留めパネル(例えば特許文献7)を互いに離間する方向に付勢すると共に該面A、該面C、該面B、該面Dに略内接するように設置されている該作業枠体21に剛に連結し、該作業枠体21を一体化する。この時点で該作業坑道2の内壁面8は該面A、該面Be、該面B、該面C、該面D、該面Deで構成され(図17)、図示しない作業枠体21はこの内壁面に略内接する。
以下に該第2工程の充填作業内容について説明する。該作業坑道2の下部で該面CとYiの距離離間して互いに平行移動の関係にある面Cを想定する。該面Cは該面Cの上方に位置し、その両端は該面Bおよび該面Dと接している。該面Bおよび該面Dの1部であり、しかも、該面Cと該面Cの間に有る部分を面Biおよび面Diとする。該面C、該面C、該面Bi、該面Diおよび該作業坑道2の長手方向の両端部2つの断面によって囲まれた領域が該第2工程において充填されるべき充填領域15(I)となる。該作業坑道内の該作業枠体21のうち、該充填領域15(I)内に存在する部分のみを取り外す。
以下は充填物17が少なくとも土と石灰を含み炭酸化反応により固化させようとする版築や長七たたきと同様の場合について記す。該充填領域15(I)内およびその上方に所定高さとなるまで充填物17をまき出す。凸形状の打撃面を有する打撃具あるいはタンパーを用いてまき出された該充填物表面を打撃することにより該充填物17を締め固める。この方法により、上方側から下方側へ向かう方向の打撃力から第2対面の該面Biおよび該面Diに向かう方向の押しつけ分力を該充填物17に生じさせ、この分力により第2対面の該面Bおよび該面Dを互いに離間させる方向に作用する圧縮残留応力を該充填物17および該第2対面の該面Bおよび該面Dに接する地山13に付与する。前記の打撃具あるいはタンパーの打撃面を球面あるいは三角錐など軸対象の凸形状とすれば、締め固めにより付与される圧縮残留応力に該作業坑道2の長手方向成分も付与することが出来る。提体構築後に地殻変動あるいは貯水水圧などにより、該提体に曲げ変形が加えられた場合に、曲げ変形の曲率中心側の提体表面には圧縮応力が発生し、該曲率中心と反対側の該提体の表面には該圧縮応力と略同等の大きさの引張り応力が発生する。後に記す提体構成部材の多くは、圧縮破壊強度に比べ引張り破壊強度の方が格段に低い。従って、提体に働く引張り応力を低く保つことが提体の耐久性を維持するために重要である。前記のように、地下ダム提体の構成部材20を含む該充填物17の充填作業中に締め固めることにより、該地下ダム提体に長手方向の圧縮残留応力を付与することが出来る。前記の曲げ変形により発生する引張り応力とこの圧縮残留応力とを合算した合成応力が該提体に作用する応力となる。該圧縮残留応力を付与されていない提体に比べ、本方法では付与された圧縮残留応力分提体の破壊強度は高くなり、提体耐久性を高めることが出来る。前記のまき出しの所定高さとは、締め固め後の該充填物表面が該面Cとなるようなまき出し高さを意味する。該面C、該面C、該面Bi、該面Diおよび該作業坑道2の長手方向の両端部2つの断面によって囲まれた領域を充填領域15(I)とする(図18)。該空領域14(E)の断面の重心点を4e、この重心点4eを該作業坑道2の長手方向に沿って順に滑らかに連ねてなる重心線を5eとする。この時点で該作業坑道2の内壁面8は該面A、面B(該面B-該面Bi+該面Be)、該面C、面D(該面D-該面Di+該面De)で構成され、図示しない作業枠体21はこの内壁面に略内接する(図19)。該作業坑道2の新たな断面の幅および高さは、該第1工程終了時に施工された該作業坑道2の該断面の幅Xおよび高さYと略同等である。該面Cの深度Dbは略Dg-Y/2である。図20は、該面C、該面C、該面Bi、該面Diおよび該作業坑道2の長手方向の両端部2つの断面によって囲まれた充填領域15(I)の充填物17の少なくとも一部が炭酸化反応により硬化し地下構造体1の構成部材20とみなし得る状態になった状況を示している。すなわち、該地下ダム提体の最下部部分であって、最下部深度Dbから上方Ysの間の部分が施工されたことになる(図20)。該第2工程の空領域形成と充填領域形成とを合わせて1回のサイクルの作業とすると、この時点で該第3工程のうちの1回目のサイクルの作業が終了したことになる。この時点における該作業坑道の重心線の深度Dgは略Dg-Ysとなる。
以下に2回目のサイクルの作業内容について説明する。該面Bと該面Dとの間隔Xが該面Bと該面Dの延長面上でも略保持されるように、しかも、該面Aと平行移動の関係にあって、互いの間隔距離が略Yeである面Aが該作業坑道2の新たな上面(面A)となるよう該面A側を掘削する。この掘削によって該面Bおよび該面Dの延長面上に形成される新たな側面を面Beおよび面Deとする。該面A、該面A、該面Be、該面Deおよび該作業坑道2の長手方向に離間した2つの断面によって囲まれた空領域14(E)を形成する(図21)。前記と同様に、該面C、該面C、該面Biおよび該面Di面および該作業坑道2の長手方向の両端部2つの断面によって囲まれた領域が充填されるべき充填領域15(I)となる。これを充填領域15(I)とする。既に充填されている該充填領域15(I)の充填物17の状態を極力乱さないように該充填領域15(I)内およびその上方に所定高さとなるまで充填物17をまき出す。まき出された該充填物17の表面が該面Cとなるよう該充填物17を締め固める。該充填領域15(I)の該充填物17は凸形状の打撃面を有する打撃具あるいはタンパーを用いてまき出された該充填物表面を打撃することにより該充填物17は締め固められており、その結果として、該充填領域15(I)の該充填物表面は凹凸状になっている。従って、該充填領域15(I)と該充填領域15(I)の境界面は、該充填領域15(I)の該充填物表面の凹凸形状と略同等となる。この境界面の凹凸形状によるアンカー効果と該充填領域15(I)の該充填物17の締め固め効果により、該充填領域15(I)と該充填領域15(I)の該充填物17を連結接合させる(図22)。この時点で該作業坑道2の内壁面8は該面A、面B(該面B-該面Bi+該面Be)、該面C、面D(該面D-該面Di+該面De)で構成され、図示しない作業枠体21はこの内壁面に略内接する(図23)。図24は、該面C、該面C、該面Bi、該面Diおよび該作業坑道2の長手方向の両端部2つの断面によって囲まれた充填領域15(I)の充填物17の少なくとも一部が炭酸化反応により硬化し、前工程で形成された充填領域15(I)の充填物17の少なくとも一部と一体構造化した状況を示している。すなわち、該地下ダム提体の最下部部分であって、最下部深度Dbから上方Ysの間の部分が施工されたことになる(図24)。この時点で第2回目のサイクルの作業が終了する。この時点における該作業坑道2の重心線5の深度Dgは略Dg-2Ysとなる。
この後、該充填物17の上面が所定の計画提体天端深度Dtになるまでこのサイクルの作業を複数回繰り返す(図25)。これが該第3工程である。
該提体天端部分と地表部との間は図15の説明と同様に埋め戻す。これで目的とした地下構造体1である地下ダム提体の施工が終了することになる(図26)。
【0055】
図27、28は該作業坑道断面を矩形ではなく、上円下方の形状とした例を示す。該作業坑道上面をアーチ状とすることで、上面支保工を簡略化出来るので、該第2工程作業遂行に好都合となる。また、該作業坑道上面を三角屋根の形とすることでも同様の効果が得られる。
【0056】
該地下ダム提体の上下流側に、適宜の間隔で地下水位観測井を施工すると共に、該地下水位観測井の水位を継続計測し、要すれば提体の漏水補修工事を実施する。該地下ダム提体の上流側貯水域に、植林、農地開拓を実施すると共に、適宜の間隔でハンドポンプなどによる揚水井および近隣農地への潅漑用水路を施工する。これで、農業用潅漑を主目的とした地下ダムの施工が終了する。こうした地下ダムの施工により、緑地、農地拡大の効果が得られ、該地下ダム施工に要する費用および労力に対する効果に対して地域住民の理解が得られれば、当該河川域に複数の地下ダムを施工する。これは、上流側から、下流側に施工することで、該地下ダム施工中に該作業坑道内への地下水の流出を低減出来る。また、この地下ダムの施工は、工期短縮のための諸準備を調えた上で、施工場所の地下水位が低下している乾季などの時期を選定して実施することにより効率的に実施出来る。請求項8に記載のように、ワジ(枯れ川)の河川域の近接した領域に離間した複数の地下ダムを施工することで、該河川域の上流域から下流側に向けて連続した農地を開拓することが出来る。
またこの多段地下ダムにより、塩害を誘発させない範囲で貯水域の地下水位を年間を通して上昇させ得るので、貯水域は農地として効率的作付けが可能となる。これらのことから、多段地下ダム構築により集約型農業への発展が期待出来る。
【0057】
以下に充填物17の少なくとも一部である地下ダム提体の構成部材20について説明する。
該充填物17の少なくとも一部は該地下ダム提体の構成部材20となるべき材料であり、所要の遮水機能が要求される。一般的な遮水壁には透水係数1x10−7cm/s以下が要求されることが多い。
土粒子の有効径De[cm]と透水係数k[cm/s]には以下の関係(Hazenの式)があることが知られている(非特許文献56)。
[数1] k=116De(0.7+0.03t)
ここでt[℃]は水温である。
該第1、2、3工程で排出されるズリ43を分級して少なくともその一部を地下ダム提体の構成部材20として活用しようとする検討例を以下に記す。前記のように透水係数1x10−7cm/sの提体とするためには、前記Hazenの式によれば、分級して粒子径0.3μm以下の土を提体構成部材とすればよいことになる。しかし、透水係数のみによって該地下ダムの提体の構成部材20を設定するのは合理的ではない。地下ダムの漏水許容値から、提体の厚さ、透水係数が設定されるべきである。
例えば、提高30m程度の地下ダムとすれば、その下流側の地下水位は約30mであり、満水時を想定すると上下流の水位差の平均は約15mである。提体構成部材を粒子径3μmの土とすると、透水係数が1x10−5m/sレベルであって、提体の厚さを1mとし、該地下ダムが常時満水状態を維持すると想定した場合に、該提体を通して上流側から下流側への年間漏水量は該地下ダムの満水貯水量の0.8%程度となる。この程度の漏水量が許容できれば、ズリや排土を該提体構成部材として利用可能な割合が格段に向上する。
地下ダム提体の構成部材として、地上ダムの1種であるアースダムのコア部分の構成材技術が参考となる。該アースダムでは提体上流部の貯水水圧に抗して提体機能を保持させるために提体の自重を確保する必要があり、提体の厚さを非常に大きくする設計が必要となる。
これに対し、地下ダムでは提体上流部の貯水水圧は提体下流部の地山13が支持してくれるため、提体に対する強度要求は格段に低いレベルになる。従って、地上立地式のアースダムに比べ地下ダムでは提体厚さを薄くすることが出来る。
前記では排土などを分級して粒子径を小さくした土を提体として活用する例を示したが、炭酸化反応により硬化させた提体とする例について以下に記す。土に適量の水と石灰などを混合し、これを充填物17として該第3工程において充填領域15に充填する。前記の分級した土を締め固めて地下ダム提体とした際の充填方法と同様に土と石灰などの混合物を該充填領域15にまき出し、締め固める。これに使用する土が塩性土であれば、硬化には好都合であるので、脱塩せずそのまま使用する。前記の化学式1による石灰の炭酸化反応により、充填物17が硬化するので、その地下ダム提体をより強固なものとすることが出来る。排土を分級することにより粒度調整した土を利用する前記の方法に比べて、この方法の方が排土の利用率を高くすることが出来るため、排土処理負担をより軽減出来るという効果がもたらされる。
充填物17を低水分コンクリートとし、締め固め硬化させれば、更に強固でしかも漏水の殆ど無い地下ダム提体とすることが出来る。この方法の場合でも排土の一部を該コンクリートに混合することが出来れば、排土処理負担を軽減出来る。本発明の工法は開削工法ではないので、提体の体積とほぼ同等程度の必要最小限の排土量で高い提高の地下ダムの施工が可能となる。そして、高強度で透水係数の低い提体とすることが出来るから、提体厚さを薄くして、提体の曲げ変形に対する破壊抵抗性の向上が可能となる。従って、本発明の工法による地下ダムの施工においては、厚さの薄い提体で所要の遮水機能、破壊抵抗性を提体構成部材に付与すれば、排土量が少なく、貯水機能、長期耐久性を満足させ得る地下ダムを低コストで施工することが出来る。
超長期の耐久性、ライフサイクルとしての環境影響が許容されれば、該提体の一部として、遮水高分子シート、ステンレス鋼薄板の併用が可能である。
【0058】
請求項1,2に記載の方法により、地下ダム提体の最下部に小断面の作業坑道を形成し、それを上方に向けて微小距離ずつ移動させながら施工する方法では、作業坑道の断面の形状・大きさを終始略不変とする工法であることから、前記のように周辺地盤の土圧分布を大きく乱さずに提体に圧縮残留応力を付与することが出来る。前記の提体材料の多くは引張り破壊応力が低いので、提体に付与した圧縮残留応力は、提体の強度向上に効果をもたらす。提体の強度向上策として、前記の請求項3に記載の圧縮残留応力付与の外に、請求項4に記載の方法により、提体を多層構造とし、提体の厚さ方向中央部は低透水係数の材料による機能層76と強度層78とし、その上流側と下流側の地山13との間に緩和層27を配置する構造とすること、請求項8に記載の方法により、互いに略平行移動の関係となる複数の地下ダム提体を上流側から下流側に向けて並設させる多段地下ダムの構造とすること、並びに請求項7に記載の方法により、提体を一体構造とせずに長手方向に断続した複数の提体の連なりを成す断続板構造とし、しかも隣接する断続板の端部を櫛歯状として互いに入り込む形でしかも離間して長手方向に配列させて、その離間部に低透過係数手段73および変形追従手段77を介在させる構造とすること、などにより周辺の地殻変動に対しても全体として耐性のある地下ダムとすることが出来る。
地下ダム構築場所の自然環境条件や構築目的などに応じて、前記のように、地下ダム提体に圧縮残留応力を付与する方法、緩和層27を含む多層構造の提体とする方法、多段地下ダムとする方法、断続板構造の提体とする方法のいずれかひとつあるいはそれらの組合せの構造とするかを選択することが出来る。
【0059】
ワジや化石谷に施工した地下ダム上流側の貯水域が塩性土壌であっても、流水の塩分濃度が低下し、地下水位が上昇している、あるいは冠水している雨季の後期に、貯水域に適宜の間隔で複数設けた浅井戸で3〜7mの深さから地下水を汲み上げ、地下ダムの下流側に排水すること(垂直排水)で土壌塩分濃度を低下させ、塩性土壌のため未利用であったワジや化石谷周辺などに農地や植生を創成することが出来る。これにより、食糧危機対策および二酸化炭素吸収源を増大させることにより地球温暖化対策の効果がもたらされる。
本発明の工法によれば、古来からのカナート掘削技術と版築施工技術と同程度の高レベルではない技術と機材、資材で高提高の地下ダムを僻地に構築することが可能となる。
該第1工程から該第3工程までの各作業は、高度な技術を要しない。従って、現地住民への短期の作業訓練により、現地で作業員を調達出来ることから、現地の雇用創生が可能となり、貧困削減の効果がもたらされる。
【0060】
以上の説明のように、本発明による地下ダム施工工法は、必要最小限の排土量で該地下ダムが施工できること、重機を必要としないこと、施工機材、施工資材の現地への搬入量も必要最小限であること、搬入路建設も必要最小限であることなどから、僻地での建設が可能であり、従来工法に比べてエネルギ消費が格段に少なく、地球温暖化対策としても寄与できる工法である。
【0061】
請求項1、2、6に記載の発明に関して、地下構造体1の第2実施形態として、地中の水平板形状の塩性土壌脱塩用水平板型暗渠を本発明の方法により施工する例について図29〜40で説明する。
【0062】
図29に示すように、塩性土壌脱塩用水平板型暗渠である地下構造体1の所定相当領域、すなわち該地下構造体の構築を計画している領域1aの水平方向一方側の端部領域1c、あるいは該地下構造体の構築を計画している領域1aの水平方向一方側の端部領域1cの近傍1dに矩形断面形状の作業坑道2を形成する(第1工程)。
該作業坑道2に略内接する形で請求項5に記載の図示しない作業枠体21を設置する。
該作業坑道2の断面は面A、面B、面C、面Dで囲まれた形態であり、その断面の重心点4が図29に示されている。
図30に示すように、該地下構造体の構築を計画している領域1aの水平方向一方側を該作業坑道2の該第1対面の他方側(面C側)に対応させ、該作業坑道2の該第1対面の一方側(面A側)を所定距離Ye掘削し形成される該空領域14(E)の重心点4eが該作業坑道断面を含む平面内において当初の該作業坑道2の重心点4の高度(図29では地表からの深度Dgに対応)と略同等の高度とする(第2工程)。
図31に示すように、該作業坑道2の該第1対面の他方側(面C側)を充填物17で充填し形成される該充填領域15(I)の重心点4iが該作業坑道断面を含む平面内において当初の該作業坑道2の重心点4の高度(図29では地表からの深度Dgに対応)と略同等の高度とする。該充填領域15(I)の該作業坑道側の面(例えば面C)が水平面26との成す角度αは該充填物17の充填作業中の振動、打撃環境下における充填物17の安息角よりも小さな角度とする(第2工程)。こうすることで締め固めを伴う充填作業を容易化すると共に、第3工程において次のサイクルの充填作業を実施するまでの間、充填物表面を安定に維持することが出来る。
第3工程の第1回目のサイクルが終了した時点を図32、33に示す。該作業坑道2の重心点4の位置は、該地下構造体の構築を計画している領域1aの水平方向一方側の端部領域1cから水平方向にLg離れた位置であり、該重心点4の深度は当初の深度Dgと略同等のDgとなる。該地下構造体1の水平方向一方側の端部領域1cから水平距離Ysの部分が施工されたこととなる。
図34〜37に第3工程の第2回目のサイクルを示す。
図37に第3工程の第2回目のサイクルが終了した時点の状況を示す。すなわち、該地下構造体の構築を計画している領域1aの水平方向一方側の端部において地下構造体1である塩性土壌脱塩用水平板型暗渠の端部1cから水平方向Ysの間の部分が施工されたことになる(図37)。この時点における該作業坑道2の重心線5の深度Dgは略Dgとなる。
この後、該充填物17の水平方向長さが所定の計画長さYs(≒Ys)になるまでこのサイクルの作業を複数回繰り返す(図38)。これが該第3工程である。この後、面C近傍の余分な充填物17を削除する(図39)。
所定長さYsを有する塩性土壌脱塩用水平板型暗渠の所定相当領域1a外の作業坑道2を埋め戻して、地下構造体1である厚さXsを有する塩性土壌脱塩用水平板型暗渠の施工が終了した状態を図40に示す。この第2実施形態において充填物17としては、空領域14を形成する際の排土や併設する明渠の排土を分級して0.25mmの中砂以上の粒径の砂や礫とすることで、前記Hazenの式から透水係数1x10−1cm/s程度の暗渠とすることが出来る。
水平板形状の地下構造体1の他の用途として、水平板の周辺部を上方に曲げた深皿様形状とし、地下ダムの例と同程度の低透水係数の充填物17とすれば、地中溜池とすることが出来る。
【0063】
請求項1、2に記載の発明に関して、地下構造体1の第3実施形態として、地下構造体1の傾斜部分を本発明により施工する例について、断面で示す図41〜49で説明する。
【0064】
地下構造体の所定相当領域、すなわち該地下構造体の構築を計画している領域1aの傾斜部分の最下部、あるいは該地下構造体の構築を計画している領域1aの傾斜部分の最下部の近傍に該作業坑道2を形成する該第1工程(図41)。
該地下構造体の構築を計画している領域1aの傾斜部分の最下部一方側を該作業坑道内壁面8の該第1対面の他方側(面C側)に対応させ、該作業坑道内壁面8の該第1対面の一方側(面A側)に形成される該空領域14の重心点4eが該作業坑道断面を含む平面内において該作業坑道2の重心点4よりも上方側に位置するよう面B及び面Dを該第1対面の一方側(面A側)を掘削し空領域14を形成する該第2工程(図42)。
該作業坑道内壁面8の該第1対面の他方側(面C側)に形成される該充填領域15の重心点4iが該作業坑道断面を含む平面内において該作業坑道2の重心点4よりも下方側に位置すると共に、該充填領域15の該作業坑道側の面(面C)が水平面26との成す角度αは該充填物17の充填作業中の振動、打撃環境下における充填物17の安息角よりも小さな角度となるよう該第1対面の他方側(面C側)を充填物17で充填する(図43)。
作業坑道2の重心点4の深度はDgに変わる(図44)。第2対面間の距離Xは当初のXと略同等である。該地下構造体の構築を計画している領域1aの傾斜部分の最下部の端部領域1cを該地下構造体1施工作業の開始点とし、該地下構造体の構築を計画している領域1aの傾斜部分の最上部の端部領域1eに向けて図45〜49に示すように段階的に地下構造体1を施工していく方法である該第3工程。
【0065】
各工程の詳細は該第1実施形態および第2実施形態と類似である。請求項1、2に対応する第1〜3実施形態に示す方法を組み合わせることにより、作業坑道2の重心線5の横手方向移動の方向(該地下構造体1の段階的施工方向)が水平方向から鉛直上方向までの任意の方向に進められ得ることになる。
【0066】
請求項1、2、6に記載の発明に関して、地下構造体1の第4実施形態として、地下構造体1が鉛直対称面22を有する水平板体形状である例について図50〜55で説明する。
【0067】
地下構造体1が鉛直面に対して略面対称の構造である場合に、該鉛直面を鉛直対称面22とする第4定義を定める。
地下構造体の所定相当領域、すなわち該地下構造体の構築を計画している領域1aの最下部、あるいは最下部の近傍の位置を含むようにしかもその重心線5が該鉛直対称面22内となるように作業坑道2を形成する第1工程を図50に示す。該作業坑道2の断面形状は矩形であり、時計方向の順に面Ar、面B、面Al、面Dで構成されるとする。該作業坑道2の断面において、面Arと面Alの組を第1対面とし、面Bと面Dの組を第2対面とする。
ここで、次工程に移行する準備として、前記の説明を修正する。該作業坑道2の断面を該鉛直対称面22を分割面とする2つの断面に分けて説明することとする。図51に示すように、該面Bを面Brと面Blに分け、該面Dを面Drと面Dlに分ける。該作業坑道2の断面を面Ar、面Br、鉛直対称面22、面Drで構成される右側作業坑道2rと、面Al、面Dl、鉛直対称面22、面Blで構成される左側作業坑道2lとに分けて説明する。右側作業坑道2rの重心点4rと重心線5rおよび左側作業坑道2lの重心点4lと重心線5lが図示されている。鉛直対称面22からの重心点4rおよび4lまでの距離がそれぞれLgrおよびLglで図示されている。
第2工程として、右側作業坑道2rでは該鉛直対称面22に対向する面Ar側に所定深さYerとを有する空領域14rを形成する。同様に左側作業坑道2rでは該鉛直対称面22に対向する面Al側に所定深さYelとを有する空領域14lを形成する(図52)。右側作業坑道2rと左側作業坑道2rの該鉛直対称面22側に充填物17を充填する(図53)。更に充填し(図54)、第3工程の第1回目のサイクルが終了した時点の状況を図55に示す。該充填領域15の作業坑道側の面である面Crおよび面Clが水平面26との成す角度αは、第2実施形態の例で記したように、該充填物17の充填作業中の振動、打撃環境下における充填物17の安息角よりも小さな角度とする。この時点で、右側坑道2rの断面は面Ar、面Br、面Cr、面Drで構成され、左側作業坑道2lの断面は面Al、面Dl、面Cl、面Blで構成される。該鉛直対称面22から右側および左側にそれぞれYsrおよびYslだけ地下構造体1が施工されたことになる。
以降の作業は該第2実施形態と同様の作業を該鉛直対称面22に対して面対称的に左右同時に進行させる。
該鉛直対称面22は平面ではない場合もある。例えばカーブしたトンネルの重心線を含む鉛直曲面などである。
【0068】
請求項1、2、6に記載の発明に関して、地下構造体1の第5実施形態として、地下構造体1が鉛直対称面22を有する管体形状あるいは殻体形状である例について図56〜59で説明する。
【0069】
該地下構造体の構築を計画している領域の最下部1f、あるいは最下部の近傍の位置を含むようにしかもその重心線5が該鉛直対称面22内となるように該作業坑道2を形成する該第1工程(図56)。
該第3工程の第1回目のサイクルが終了した時点を図57に示す。
その後、該鉛直対称面22に対して面対称の形態を維持しながら該第3工程を繰り返して、管体形状あるいは殻体形状の該地下構造体1を段階的に施工していく状況を図58に示す。
面対称的に施工作業を進行させることで、請求項3に関して前記した方法で周辺地山13に対して与える圧縮残留応力が平衡化されるため、管体51あるいは殻体35のひずみを小さくすることが出来る。
管体51あるいは殻体35である該地下構造体1の施工が終了した状態を図59に示す。
【0070】
請求項6に記載した板体形状の地下構造体の例を図1(a)、図26、図40に示す。請求項6に記載した管体形状および殻体形状の地下構造体の例を図59に示す。
【0071】
以下に請求項7に記載の、地下構造体1がその長手方向端部において櫛歯状端部24を有し、長手方向に隣り合う該地下構造体1の櫛歯状端部24同士を互いに入り込む形でしかも離間して長手方向に配列させて、その離間部に低透過係数手段73および変形追従手段77を介在させて、全体として複数の地下構造体1の連なりをなす断続板構造とする地下ダムに関する第6実施形態について説明する。
【0072】
長大な地下ダムを一体構造とすると、地殻変動や、周辺地山13と提体の密度差、熱膨張係数の差、弾性係数の差などによる変形のため、部分的に損壊する可能性がある。
本実施形態では、各提体1の端部は櫛歯状とし、隣接する提体の端部同士は図60に水平断面図で示すように、長手方向に隣り合う該提体の櫛歯状端部24が互いに入り込む形でしかも離間して各提体を長手方向に配列させる。該櫛歯状端部24が互いに入り込みしかも隣り合う該提体が離間しており、該提体上流側の貯水は、提体の離間部を通って下流側に漏水する。しかし互いに入り込む形の櫛歯状端部24により、その離間部の漏水流路はジグザグ状として、流路長を長くしている。そのジグザグ状漏水流路25には変形に対する追従性が高い変形追従手段77を充填する。該ジグザグ状漏水流路25内にはそれを横断して透水係数の低い低透過係数手段73を部分的に設ける。
本実施形態のように、一体構造の提体とせずに離間した複数の提体の連なりとし、その離間部に変形に対する追従性が高い変形追従手段77を充填することで前記の要因による提体の損壊の可能性を低くすることが出来る。隣り合う提体の離間部に上述したジグザグ状の長い漏水流路25を設けると共に透水係数の低い低透過係数手段73を部分的に設けることにより、許容限度内の漏水量の地下ダムとすることが出来る。
【0073】
ここでは断続壁構造の地下ダムの例について説明したが、本発明により、断続管構造や断続殻構造においても同様の効果がもたらされる。
【0074】
請求項12および13に記載の方法を組み合わせた放射性廃棄物地層処分の方法に関する第7実施形態と第8実施形態について図61〜98で以下に説明する。
【0075】
放射性物質であって、地中で保管することを目的として形成され、IAEAの放射性廃棄物の分類(1982年指定)による高レベル放射性廃棄物、TRU放射性廃棄物、中レベル放射性廃棄物、低レベル放射性廃棄物の4区分のいずれかあるいはそれらの組み合わせを内容物とする容器、あるいは該4区分のいずれかあるいはそれらの組み合わせから構成されるひとつのかたまりをここでは放射性地中保管体42とする。
複数の該放射性地中保管体42を地中において所定の位置、深度で所定の間隔で離間して配置する1群を包含可能な地中の1つの閉空間領域を放射性地中保管体保管領域30とする。
該放射性地中保管体保管領域30を包含する遮蔽殻体であって、我が国原子力委員会が1978年に定めた発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針における耐震重要度分類でBクラスに相当する地震力に耐え得る強度を有すると共に、該放射性地中保管体42から漏出すると想定される放射性核種の移行を阻止するためと、人口バリアの損傷をもたらす地下水・腐食性ガス・微生物の浸入を阻止するために透気係数・透水係数・透過係数・放射線の遮蔽係数・微生物移動速度の特性を調整した1層ないし複数層の機能層76を含む遮蔽殻体を放射性地中保管体保管領域遮蔽殻体32とする。
該放射性地中保管体42を該放射性地中保管体保管領域30の下部位置から上方へ向けて請求項1に記載の方法を用いて埋設する第7実施形態について以下説明する。施工方法は以下に記す第11工程から第19工程までの工程からなり、施工工程を図56、57、58、61、65〜81、62、63の順に示す。
放射性物質を地中に埋設あるいは中間貯蔵することを目的として作製された複数の該放射性地中保管体42からなる1群を、埋設されるべき地域の地中の該放射性地中保管体保管領域30の最下部近傍に該放射性地中保管体保管領域遮蔽殻体32を施工するための作業坑道2を形成する第11工程(図56)。
該放射性地中保管体保管領域30の最下部近傍に該第11工程で形成した該作業坑道2を該放射性地中保管体保管領域遮蔽殻体32施工作業の開始点とし、図56〜58で説明した方法と類似の方法で上方に向かって薬用カプセル様形状の該放射性地中保管体保管領域遮蔽殻体32施工作業を進行させ、該放射性地中保管体保管領域遮蔽殻体初期段階施工部分29の上縁部31が全て該放射性地中保管体保管領域30の最上部33よりも高くなる高度まで該放射性地中保管体保管領域遮蔽殻体32の下方の一部であって初期段階施工部分29を請求項6記載の施工方法で施工する第12工程(図61(a)横断面、図61(b)縦断面)。
該放射性地中保管体保管領域30に該放射性地中保管体42を埋設する方法であって、該第12工程の段階まで該放射性地中保管体保管領域遮蔽殻体初期段階施工部分29施工後に、該放射性地中保管体保管領域30の最下部に所定の水平方向間隔Pxを設けてそれぞれが平行配置となる該放射性地中保管体保管のための複数の略水平な作業坑道2を形成する第13工程(図65)。
それぞれの該作業坑道2の断面を含む平面内において該第1対面の一方側(例えば面A側)に形成される空領域14の重心点4eが該作業坑道2の重心点4よりも上方側に位置するようそれぞれの該作業坑道2内で実施する第14工程(図66)。
該作業坑道断面を含む平面内において、該第1対面の他方側(面C側)に形成される該充填領域15の重心点4iが該作業坑道2の重心点4よりも下方側に位置するよう形成する充填領域15が、該作業坑道2の長手方向に所定の間隔Pyで離間して配置された複数の該放射性地中保管体42とその周りの埋め戻し材28とから構成される充填物で充填されるようそれぞれの該作業坑道2内で実施する第15工程(図68)。
図68では該放射性地中保管体42の周囲を高レベル放射性廃棄物緩衝材(例えば外形寸法;φ2.22m x 3.13mL 材料:ベントナイト70wt% ケイ砂30wt% 放射線遮蔽厚さ;0.7m)44で覆い、その外側を埋め戻し材28で充填した状況を示している。該作業坑道断面を含む平面内において、該第1対面の他方側(面C側)に形成される該充填領域15の重心点4iが該作業坑道2の重心点4よりも下方側に位置するよう形成する充填領域15が、埋め戻し材28で充填されるようそれぞれの該作業坑道2内で実施する第16工程(図72、76)。
該第14工程と該第15工程を組み合わせて1サイクルの組み合わせ工程A(図66〜69)とし、該第14工程と該第16工程を組み合わせて1サイクルの組み合わせ工程B(図70〜73)とし、1回の組み合わせ工程Aと1回あるいは連続した複数回の組み合わせ工程Bとを合わせた1サイクルの組み合わせ工程C(例えば図66〜77)において、上下方向に最近接する該放射性地中保管体42同士の間隔が上下方向の所定の間隔Pzとなるよう調整された組み合わせ工程Cからなる第17工程(例えば図66〜81)。
該第17工程を複数サイクル実施することにより、該放射性地中保管体保管領域30の地山の一部を該放射性地中保管体42と埋め戻し材28、および要すれば緩衝材44よりなる充填領域15に置き換えることにより段階的に該放射性地中保管体42を地中に所定の間隔で離間して埋設していく第18工程。
該第18工程により該放射性地中保管体保管領域30において埋設を計画された全ての該放射性地中保管体42の埋設が終了した(図62)後に、該放射性地中保管体保管領域遮蔽殻体32の未施工部分を施工、完成させ、該放射性地中保管体保管領域30を該放射性地中保管体保管領域遮蔽殻体32で密閉する第19工程(図63)。
【0076】
該放射性地中保管体42の埋設作業を開始する前に、該放射性地中保管体保管領域30の最上部33よりも高くなる高度まで該放射性地中保管体保管領域遮蔽殻体32の下方の一部であって初期段階施工部分29を施工する第12工程を実施することで、該放射性地中保管体42の埋設作業時に該放射性地中保管体保管領域遮蔽殻体32の外側から該放射性地中保管体保管領域30に流入する地下水を最小限にすることが出来る。
要すれば、図61に示した該第12工程終了後に、該放射性地中保管体保管領域遮蔽殻体32の初期段階施工部分29の内側の地山36の該放射性地中保管体保管領域30の最下部位置に加熱空気を吹き込み、あるいはおよび該放射性地中保管体保管領域遮蔽殻体32の初期段階施工部分29の上縁部31近傍から真空吸引することにより該放射性地中保管体保管領域30の含水率を低下させ、鋼製の該オーバーパックおよび該ガラス固化体のステンレス鋼容器の腐食を抑制する環境とすることが出来る。
該放射性地中保管体保管領域遮蔽殻体32は該第19工程で密閉されるから、該放射性地中保管体保管領域遮蔽殻体32内部におけるこの腐食抑制環境は超長期間に亘って維持される。このことから、該ガラス固化体のステンレス鋼容器、オーバーパック、緩衝材44のいずれかを省略、材質変更あるいは薄肉化することにより、コスト低減が期待出来る。
【0077】
該放射性地中保管体42を該放射性地中保管体保管領域30の水平方向1方側の端部位置から水平方向他方側へ向けて請求項1に記載の方法を用いて埋設する第8実施形態について以下説明する。施工方法は以下に記す第21工程から第29工程までの工程からなり、施工工程を図56、57、58、61、82〜98、64、および図63に類似の形態として順に示す。
放射性物質を地中に埋設あるいは中間貯蔵することを目的として作製された複数の放射性地中保管体42からなる1群を、埋設されるべき地域の地中の該放射性地中保管体保管領域30の最下部近傍に放射性地中保管体保管領域遮蔽殻体32を施工するための作業坑道2を形成する第21工程(図56)。
該放射性地中保管体保管領域30の最下部近傍に該第21工程で形成した該作業坑道2を該放射性地中保管体保管領域遮蔽殻体32施工作業の開始点とし、上方に向かって該放射性地中保管体保管領域遮蔽殻体32施工作業を進行させ、該放射性地中保管体保管領域遮蔽殻体初期段階施工部分の上縁部31が全て該放射性地中保管体保管領域の最上部33よりも高くなる高度まで該放射性地中保管体保管領域遮蔽殻体の下方の一部であって初期段階施工部分29を請求項6記載の施工方法で施工する第22工程(図57、58)。
該放射性地中保管体保管領域30に該放射性地中保管体42を埋設する方法であって、該第22工程の段階まで該放射性地中保管体保管領域遮蔽殻体初期段階施工部分29施工後に、該放射性地中保管体保管領域30の水平方向一方側の端部位置に所定の上下方向間隔Pzを設けてそれぞれが平行配置となる該放射性地中保管体保管のための複数の略水平な作業坑道2を形成する第23工程(図82)。
それぞれの該作業坑道2の断面を含む平面内において該第1対面の一方側(例えば面A側)に形成される空領域14の重心点4eが該作業坑道2の重心点4と略同等の高度となるようそれぞれの該作業坑道2内で実施する第24工程(図83)。
該作業坑道断面を含む平面内において、該第1対面の他方側(例えば面C側)に形成される該充填領域15の重心点4iが該作業坑道2の重心点4と略同等の高度となるよう形成する充填領域15が、該作業坑道2の長手方向に所定の間隔Pyで離間して配置された複数の該放射性地中保管体42とその周りの埋め戻し材28とから構成される充填物で充填されるようそれぞれの該作業坑道2内で実施する第25工程(図85)。
図85では該放射性地中保管体42の周囲を高レベル放射性廃棄物緩衝材(例えば外形寸法;φ2.22m x 3.13mL 材料:ベントナイト70wt% ケイ砂30wt% 放射線遮蔽厚さ;0.7m)44で覆い、その外側を埋め戻し材28で充填した状況を示している。
該作業坑道断面を含む平面内において、該第1対面の他方側(例えば面C側)に形成される該充填領域15の重心点4iが該作業坑道2の重心点4と略同等の高度となるよう形成する充填領域15が、埋め戻し材28で充填されるようそれぞれの該作業坑道2内で実施する第26工程(図89、93)。
該第24工程と該第25工程を組み合わせて1サイクルの組み合わせ工程D(図83〜86)とし、該第24工程と該第26工程を組み合わせて1サイクルの組み合わせ工程E(図87〜90)とし、1回の組み合わせ工程Dと1回あるいは連続した複数回の組み合わせ工程Eとを合わせた1サイクルの組み合わせ工程F(例えば図83〜94)において、水平方向の最近接する該放射性地中保管体42同士の間隔が水平方向の所定の間隔Pxとなるよう調整された組み合わせ工程Fからなる第27工程(例えば図83〜98)。
該第27工程を複数サイクル実施することにより、該放射性地中保管体保管領域30の地山の一部を該放射性地中保管体42と埋め戻し材28、および要すれば緩衝材44よりなる充填領域15に置き換えることにより段階的に該放射性地中保管体42を地中に所定の間隔で離間して埋設していく第28工程。
該第28工程により該放射性地中保管体保管領域30において埋設を計画された全ての該放射性地中保管体42の埋設が終了した(図64)後に、該放射性地中保管体保管領域遮蔽殻体32の未施工部分を施工、完成させ、該放射性地中保管体保管領域30を該放射性地中保管体保管領域遮蔽殻体32で密閉する第29工程(図63に類似)。
該第23〜28工程において、上下方向に離間した複数の該作業坑道2のそれぞれで、該作業坑道の該第1対面の一方側(面A側)の方向に該作業坑道2の重心線5の位置を移動させながら該放射性地中保管体42を埋設していく時に、図86、90、94で示すLgを上下方向に隣り合う該作業坑道2同士で異ならせた状態を維持しながら全体の該埋設作業を進行させていくよう工程管理することで、上下方向に隣り合う該作業坑道2が近接してそれぞれの支保機能に支障をきたすことを避けることが出来る。
【0078】
以下に該第7、8実施形態の仕様例について詳細を説明する。
該放射性地中保管体保管領域遮蔽殻体32は図63に示すように、薬用カプセルと類似の形状とする。該放射性地中保管体保管領域遮蔽殻体32の中心軸が水平となるように施工する。両端面は略半球形とし応力集中を低減する。該遮蔽殻体32は層状構造とし、その中央部はステンレス鋼板とする。該第12および該第19工程ならびに該第22および該第29工程において、各サイクル毎に該ステンレス鋼板を溶接接合して段階的に一体化する。該ステンレス鋼板は必要最小限の厚さとする。その場合、該遮蔽殻体32の局所的な屈曲や挫屈変形が起こると該殻体の密閉機能に重大な影響を及ぼすので、これらの現象の発生を防止するため、該遮蔽殻体32の微視的な断面形状を波形形状とする。該遮蔽殻体周辺に地核変動や地震が発生した時にその影響を該遮蔽殻体32内部に収容されている該放射性地中保管体42に及ぼさないようにするために、該ステンレス鋼板の外側および内側に緩和層27を設ける。
従来の高レベル放射性廃棄物地層処分の検討案では、該オーバーパック容器の炭素鋼の厚さは0.19mであって、放射線遮蔽機能のための厚さは0.15m であり、不確定要因の保証のための腐食分厚さは0.04mとして見込まれて設定されている。該オーバーパックは厚肉鋼板製であり、その製作には高度の溶接技術を要する。これは、製作費と安全性のトレードオフの関係の悩ましい状況となる。
本発明では、該遮蔽殻体32に密閉機能を付与することが可能となるため、該遮蔽殻体内部の地山36の放射線遮蔽機能を評価の対象として考慮することが可能となると共に該遮蔽殻体32内部の腐食環境条件を改善することが可能となる。言い換えれば、本発明による該遮蔽殻体32によって、包含する該高レベル放射性廃棄物を外界から隔離することが可能となるため、該オーバーパックおよび該緩衝材などの設計仕様を大幅に簡略化、低コスト化することが可能となる。
例えば、該遮蔽殻体32の寸法を円筒部の直径を200m、長さを400mとする。円筒部の内容積は約1260万mとなる。円筒部の空間利用率を50%とし、横置き方式で、高レベル放射性廃棄物ガラス固化体配置の水平、垂直、長手方向ピッチをそれぞれ、10、10、3.13mとして、該円筒部に、高レベル放射性廃棄物ガラス固化体を該オーバーパックに封入し、該緩衝材でその周囲を覆う形で埋設すると、約2万個を収容出来る。
2007年時点で前記寸法のガラス固化体換算で約2万個分の高レベル放射性廃棄物が国内で発生している。また、その後年間1400個程度の割合で発生する。
使用済み核燃料を原子炉から取り出した後4年程冷却した後、再処理され、1部はMOX燃料に加工され原子炉で再使用される。またその再処理工程で発生する高レベル放射性廃液はガラス固化体に加工され、50年程冷却した後にオーバーパック内に密閉され、最終的な地層処分される。
2020年頃に総量4万個のガラス固化体に相当する使用済み核燃料が発生するとされている。
前記寸法の1個の該放射性地中保管体保管領域遮蔽殻体32で、日本国内で発生する高レベル放射性廃棄物ガラス固化体の約14年分、全世界で発生する高レベル放射性廃棄物ガラス固化体の約0.5年分を収容できる。
前記のように該遮蔽殻体32の微視的な断面形状を波形形状としていること、並びに該遮蔽殻体32の内側と外側に緩和層27を設けていることから、完全密閉後に、大気圧変化、大気温変化、地山の温度変化、地下水流系の変化、地殻変動、地震が起こったとしても、該遮蔽殻体32の密閉機能を超長期に亘って保持し得る。また内部は密閉状態とすることができるので、該遮蔽殻体内部の地山36における微生物の活動を防止する処置を可能とすることや、弱還元性雰囲気とし該遮蔽殻体32の内部の人工バリアの劣化を遅延させるなど、不可抗力要因を排除し、超長期の安全性を保証する処置を容易化することが出来る。
該遮蔽殻体32内に封入した該高レベル放射性廃棄物を起源とする放射性核種が生物圏に移行してこないようにするための防護手段の超長期の信頼性を高めるために、該遮蔽殻体32を包含する形で、該遮蔽殻体32の外側を1個あるいは複数の新たな遮蔽殻体で覆い、請求項9に記した多重殻構造とすることが出来る。多重殻構造とすることで、該防護手段の多重性を向上することが出来るため、該高レベル放射性廃棄物地層処分の安全性を格段に向上させることが出来る。
該高レベル放射性廃棄物ガラス固化体およびそれを封入した該オーバーパックのかさ密度は地山の密度に比べて高いので、該殻体全体のかさ密度は周囲地山の密度より高くなる傾向がある。そのため、該殻体全体が周辺地山の中で沈み込む現象が起こりうる。この現象は該殻体全体および内部の該高レベル放射性廃棄物にも影響を及ぼす可能性がある。従って、該オーバーパック、緩衝材を極力軽量化した仕様とすることが望ましい。
これらの、遮蔽殻体、多重殻体の施工および該請求項1記載の方法による該高レベル放射性廃棄物埋設作業は、本発明の方法を主体として、既存の土木技術の組合せで実施出来る。
【0079】
以上説明した高レベル放射性廃棄物地層処分方法は、従来工法のみでは実現困難であり、以下に記すような本発明の工法の特徴を適用して初めて実現が可能となる。
(a)請求項1ないし6に示すように、必要最小限の断面面積の作業坑道2により、該放射性地中保管体保管領域遮蔽殻体32の施工が可能であると共に該放射性地中保管体42の埋設作業が可能であるため、排土量を必要最小限とし、支保工を簡易規模とすることが出来る。
(b)掘削作業の主体は該作業坑道2の横手方向へ向けてのものであるため、該作業坑道2を長手方向に分割した複数の工区で同時進行的に工事を遂行できる。従来の掘削方法が作業坑道の長手方向への掘削であり、切羽が該作業坑道の先端部のみの小面積であるのに対して、本発明の工法では切羽総面積を任意に拡大できるので、工期を短縮化出来る。同時に、複数の工区に分割するため、個々の工区の掘削土量を少なくできるので、掘削のために大規模な重機を必要とせずに、土質の如何を問わずに簡易掘削機器で掘削作業が可能となる。
(c)該放射性地中保管体42の埋設作業の内容が、地山掘削による空領域形成、充填領域への充填物充填という単純作業の組み合わせの繰り返しの工法であるため、該埋設作業を遠隔制御ロボットによる無人化がより容易である。
(d)該放射性地中保管体保管領域30の最上部33よりも高くなる高度まで該放射性地中保管体保管領域遮蔽殻体32の下方の一部であって初期段階施工部分29を施工した後にその内部の地山中に該高レベル放射性廃棄物を封入した該オーバーパックを埋設するので、埋設作業中に事故などにより該オーバーパックの外に該放射性核種が漏出したとしても、それが該遮蔽殻体32の外側に漏出する可能性は少ない。
(e)該遮蔽殻体内への該高レベル放射性廃棄物を封入した該オーバーパックの埋設は請求項1の方法により、該殻体内部の下部から上部へ向けて該作業坑道の重心線を上昇させながら埋設できるため、該オーバーパックを立体的に配置して埋設することが出来る。そのため、狭い敷地面積の処分場であっても大量の該オーバーパックを埋設することが出来る。1000年という超長期の安全性を阻害する要因のひとつとして、該高レベル放射性廃棄物オーバーパックが地表からの掘削ドリルで無作為的に破壊され放射性核種が掘削孔を通じて生物圏に到達するというシナリオの対策が苦慮されている。該高レベル放射性廃棄物埋設領域の水平面上の輪郭線を鉛直上方に平行移動させ、地表面上への投影した該輪郭線を含む地域の民間使用を禁じ、周辺部の掘削行為を禁止する処置を1000年間持続させるための世代間を超えた表示あるいは情報伝達処置が必要となる。本発明により、前記のように該高レベル放射性廃棄物を地中に立体配置埋設が容易となるため、地表部の占有面積が少なくて済むことになり、埋設場所の選定の自由度が拡大すると共に、前記のような不作為的な要因による放射性核種の地表部への移行の危険性を低減できる。
(f)該遮蔽殻体32により該高レベル放射性廃棄物を周辺地山から隔離することが可能となるために、安全性阻害要因としての地下水の浸入および微生物の介入を阻止することができる。
(g)請求項4に記したように、本発明の工法では、該遮蔽殻体32を多重層構造とすることが容易であるために、該安全性阻害要因が何であれ、該遮蔽殻体32を通過して該遮蔽殻体内部に進入することを阻止するために、遮蔽殻体層構造を任意に設定できる。
【0080】
原子力発電所の設備は原子炉設備とタービン発電機設備に大別される。
原子炉構成物は高レベル放射性廃棄物と同等以上の放射能を有するものから、低レベル放射性廃棄物と同等以下の放射能を有するものが含まれる。従って、原子力発電所が稼働期間終了後あるいは事故発生により、廃炉処置が必要となる場合を想定すると、原子力発電所の立地条件として、該放射性廃棄物処分の諸条件に近い立地条件が望ましい。
【0081】
以下に、請求項14に記した地下立地式原子力発電所に関する第9実施形態について図99で説明する。
【0082】
前記の本発明を応用した高レベル放射性廃棄物地層処分の場合と同様に地中に殻体を施工する。これを外側殻体37と称し、例えば、該外側殻体37の寸法を円筒部の直径を200m、長さを400mとする。該外側殻体37の構成部材20は、放射線、地下水、空気、微生物を透過しない機能を有したものとする。
この外側殻体37の内部に3個の殻体をそれぞれ離間して施工する。これらは、地中原子炉部収容殻体38、地中発電機部収容殻体39および、地中負圧・冷熱蓄熱部収容殻体40とする。
該外側殻体37の施工場所は、冷却用水の取排水の便を考慮し海水面66と略同レベルの高度が望ましい。海岸線に迫った山の地中であれば、用水路長、地山の放射線遮蔽機能の活用の面で好都合となる。
内部の3個の殻体38、39、40のそれぞれに主連通路62と連通する分岐連通路63を配設する。該主連通路62はは該外側殻体37を貫通し、該分岐連通路63と地上開口部とを連通する。主連通路62および分岐連通路63は、原子力発電システムの作動流体、冷却流体、電力、制御回路、換気配管、各種検査機器、作業員を通すためのものであり、高圧遮断手段65、65を設け、それぞれの殻体内部の流体を隔離密閉可能とする。
主連通路62および分岐連通路63は可撓性構造とする。
このような地下立地式の原子力発電所構築のための個別分離型原子炉構造技術開発には、舶用原子炉技術の一部を応用出来る。
発電機部については、動力発生機構が水車と蒸気タービンとで異なるが、大型の発電機システムを地下空洞内に設置し、運用、および安全管理する技術に関しては、ダムの地下水力発電所での実績が地下立地式原子力発電所に対しても応用できる。
【0083】
地下立地式原子力発電所の安全設備としての負圧・冷熱蓄熱タンク部56の作用について以下に説明する。
前記の新立地検討案(非特許文献34)の中で、地下立地式原子力発電所のみが有する特徴は、該原子力発電所と生物圏との連通路が特定されるという点である。
この特徴を安全面に活かすために該地中負圧・冷熱蓄熱部収容殻体40の内部に負圧・冷熱蓄熱タンク部56を設ける。該地中原子炉部収容殻体38および地中発電機部収容殻体39内部の換気は、全て減圧ポンプで吸引し、放射性核種捕獲機能を有する設備を通過させて外界に排出する構造とする。
該地中原子炉部57あるいは該地中発電機部58の個所で事故が発生し、放射性核種が地中原子炉部収容殻体38あるいは地中発電機部収容殻体39の外部へ向けて拡散する事象が発生した時に、負圧・冷熱蓄熱タンク部56に連通する分岐連通路の高圧遮断手段65を開けて該放射性核種を該負圧・冷熱蓄熱タンク部56に吸引して、外界への拡散を防止する。
該負圧・冷熱蓄熱タンク部56は浸透式として粒状の内部構成材の間隙を利用する形とし、該内部構成材を低温保持しておけば、前記のような事故発生時に放射性核種を含んだ空気あるいは高温蒸気が該負圧・冷熱蓄熱タンク部56内に吸引された時に冷却され密度が上昇し、該負圧・冷熱蓄熱タンク部56の収容気体量が増える。
このように、負圧・冷熱蓄熱タンク部56を該外側殻体37の内部に併設することにより、事故発生時に放射性核種の外界への拡散量を低減することができると共に外界への拡散時期を遅延させることが出来る。負圧・冷熱蓄熱タンク部56は、原子炉冷却材喪失事故(LOCA:Loss of Coolant Accident)発生を想定した安全施設である緊急炉心冷却装置(ECCS:Emergency Core Cooling System)を更に補完する安全対策施設として設置するものであり、充分な蓄熱容量と吸熱速度機能を付与させる。
【0084】
地下立地式原子力発電所の安全面でのメリットのひとつとしてランキン土圧の活用が挙げられる。
該発電所施工位置の深度が深い程、該外側殻体37の外面には次式で表されるランキン土圧Prが圧縮応力として働く。
[数2] Pr=γ・Dv
ここでγ[ton/m]は該外側殻体37より上方で地表23までに存在する地山の平均比重量である。
該外側殻体37施工の時に請求項3記載の方法でその施工位置の深度(例えば図99で示したDv)に対応して働く該ランキン土圧Prと同等の圧縮残留応力を該外側殻体37の外側に働かせる。こうすることで該外側殻体37をより低耐圧仕様の構造とすることができる。
該地下立地式原子力発電所の事故時に該外側殻体37に働くと想定される内圧の最高値をPimaxとする。該外側殻体37が地上に施工される場合には、Pimaxの耐圧仕様とする必要があるが、ランキン土圧Prが働く地中に施工される場合には、より低いPimax−Prの耐圧仕様でよいことになる。
該地下立地式原子力発電所が正常に運転している時には該外側殻体37には内圧が働かないで平均的には該ランキン土圧による外圧のみが働く。周辺地山の土質の非均質性に起因して、該外側殻体37に地中で実際に働くランキン土圧Prは一様ではない。該外側殻体37に働く外圧としての土圧が一様でないと、該外側殻体37が土圧によって圧縮座屈する可能性がある。
これらの事象を想定して、該外側殻体37は少なくとも以下に記すような4層構造とする。最内層および最外層は緩和層27として、その間に2層の機能性殻体49をはさんだ構造とする。該機能性殻体49の内側の層は例えばコンクリート製で充分な厚み、剛性をもたせた現行シールドセグメントを連結一体化した構造とし、該圧縮座屈に耐えうる構造とする。該該機能性殻体49の外側の層はステンレス鋼板とし、事故時のピーク内圧に耐えうる構造とし、放射性核種が該外側殻体37の外に拡散するのを防止し得る構造とする。要すれば、該ステンレス鋼板と該シールドセグメントとの間に緩和層27を設け、事故時の内圧により該ステンレス鋼板に働く応力を局所化させないようにしてもよい。
【0085】
以上のように、本発明によれば、1000MW超級の商用地下立地式原子力発電所構築に必要な大規模地下空洞を安価に、硬岩地層以外の地域であっても施工可能であり、事故発生時の放射性核種の生物圏への拡散量を最小限とすることが可能である。また、廃炉処理の際に、地下立地式原子力発電所の構造体の多くは解体も搬出も不要で、地中原子炉部収容殻体38、地中発電機部収容殻体39、地中負圧・冷熱蓄熱部収容殻体40および外側殻体37を高圧遮断手段65、65により密閉する。該高圧遮断手段65、65を溶接などで封印密閉した上で、その開閉制御系の電源を落とす。該高圧遮断手段65、65から地上開口部までの該連通路は、例えば高レベル放射性廃棄物緩衝材(材料:ベントナイト70wt% ケイ砂30wt%)44などで埋め戻し、該地下立地式原子力発電所の廃炉残部である放射性物質が収容されている該外側殻体37から地上への放射性核種の移行経路を閉鎖する。該廃炉残留部材由来の放射能被害に対する安全性を更に高めるために、該廃炉処理の際、あるいはその後であっても、密閉処理された該外側殻体37を包含する形で請求項9に記載の方法で、その外側に新たにひとつあるいは複数の遮蔽殻体を配設し多重殻遮蔽構造としてもよい。
また、該殻体37、38、39、40のそれぞれの外側に安価な素材で緩和層27を設け、全体を免震構造とすることで、高価な資材を用いる炉心を含むその周辺部の耐震構造を過剰品質とすることなくトータルとして安価でしかも耐震性に優れた原子力発電所システムとすることが出来る。また、該緩和層27を設けることにより、該殻体37、38、39、40の密閉機能を超長期に亘って保持させることが可能となる。
【0086】
以下に、浸透貯留型地下溜池に関する第10実施形態について説明する。
【0087】
該浸透貯留型地下溜池は、例えば、半乾燥地帯の化石谷のワジ(枯れ川)河川流域に施工し、該地下ダムと一体化あるいは連携構造とする例について以下説明する。前記の単なる地下ダムの機能に加え、該浸透貯留型地下溜池は以下の機能の追加を目的としている。
その目的の第1点は地下ダム貯水域での地下水位の安定維持である。該地下ダムでは上流から下流へ向かう地下水流を該地下ダム提体で止水する。しかし、貯水域で、下方への地下水の流れに対して、河川域の堆積層の下部に存在する不透水帯に止水性を期待している。この不透水帯とみなされている層の止水性が充分でない場合には貯水の一部が該不透水帯を通過して更に深部に流失し、貯水域の地下水位が低下するという事態が起こり得る。
この現象を阻止し、地下水位を安定維持させる目的で該貯水域底部に止水層を設ける。該止水層は貯水域の全底部を含む様にすれば止水性の信頼度は向上するが、費用対効果の問題が生ずる。
事前に不透水帯以深に達する複数の調査井を用いた現場透水試験により、該不透水帯のなかで透水係数の高い漏水個所が特定されれば、その領域の周辺部のみ部分的に止水層を設ける方式でもよい。
目的の第2点は塩害対策である。該地下ダムによる貯水域の地下水位は塩害が地表植物に及ばないようにするために、該貯水域が冠水する時季を除いて、地下水位を1.5m以浅にしないような構造としている。この塩害対策効果をより確実にするために、深皿型の浸透貯留型地下溜池を施工する。前記目的の第1点で説明したように止水層を貯水域底部の一部あるいは全底部を含むようにする。該止水層の上面側は塩分吸着機能の高い素材とする。該止水帯は、部分的にその厚さ方向の透水係数を調整し、そこからの漏水により、該貯水域の地下水位が低下しない程度の透水性を付与する。この領域を透水性調整層と称する。貯水域が冠水する時季では、冠水水面と透水性調整層の深度との水位差が上昇するため、透水性調整層の上側近傍に滞留している塩分濃度が高く比重の高い地下水が該透水性調整層を通過して、更に深部に流出する。その結果、該止水層上部の地下水塩分濃度は徐々に低下する。このようにすることで、塩分濃度が高く、植生が破壊されている地域であっても、植生を回復させ、農地拡大を図ることが出来る。
【0088】
請求項4および6記載に関連した第11実施形態について、図100〜103で説明する。
【0089】
該地下構造体1施工のための作業坑道2を掘削する方法であって、該地下構造体の構築を計画している領域1aの最下部1f、あるいは最下部の近傍の領域を含むように該作業坑道2を形成する第31工程(図100)。
該地下構造体1の使用目的に応じて所定の対象の通過速度あるいは伝搬割合を調整すると共に使用環境下における強度、剛性、耐久性を有する少なくとも1層の機能性管体48あるいは機能性殻体49を中央層とし、該中央層の内側面と内側の地山との間および該中央層の外側面と外側の地山との間に地山からの振動を緩和すると共に外側地山から該機能性管体48あるいは該機能性殻体49に作用する局所的な外力(例えば破砕帯などの断層のずれに起因する局所的外力)を緩和する緩和層27を設け、該緩和層27で該機能性管体48あるいは該機能性殻体49の内側と外側とをはさみこむ構造とし、該管体あるいは該殻体の内側と外側の地山に対して請求項3記載の方法で圧縮残留応力を付与させ、該第31工程で形成された該作業坑道2を施工の開始個所として、該管体あるいは殻体の内側と地上との連通路19を確保した状態で、請求項6記載の方法で所定の形状と位置を有する管体あるいは殻体を施工する第32工程(図101)。
該第32工程により該管体あるいは該殻体施工後に、該管体あるいは該殻体内部の地山36を掘削し、該機能性管体48あるいは該機能性殻体49の内側に設けた該緩和層27の破砕物を含むズリを排出し、該機能性管体48あるいは該機能性殻体49の内側に空空間50を形成する第33工程(図102)。
該第33工程により該機能性管体48あるいは該機能性殻体49の内側に該空空間50を形成した後に、該地下構造体1の使用目的に応じて必要な地下設備34を該空空間50内に施工する第34工程(図103)。
本発明により、該機能性管体48,あるいは該機能性殻体49の施工作業は図57、58で示したように小断面の該作業坑道2内で、大型の掘削重機を使用することなく遂行可能であるため、周辺の地山に振動や地下水系の変化などの悪影響を与えることが少ない。従って、本発明によれば、施工を目的とする地下設備34の上方に建築物が存在していたとしても、それに悪影響を与えることなく該地下設備34の施工が可能となる。
該機能性管体48,あるいは該機能性殻体49の内側および外側には該緩和層27が設けられており該管体48,該殻体49の内部の振動がそれらの外側へ伝搬することを低減出来るので、該第33工程において、該管体48あるいは該殻体49の内部の地山36を掘削排土する作業を実施する時に、発破掘削やロードヘッダー、カッターローダのように振動を伴うが掘削速度の高い方法を採用することが出来る。このため、全体の工期短縮と工費低減が可能となる。
また、該地下設備34が例えば地下鉄であって、該地下構造体全体の施工が完成した後の運用時に該管体48内部で振動が発生するとしても、該管体48外側の緩和層27が該振動の周辺地山への伝搬を低減させる。
【0090】
図102で、該機能性殻体49の内側の緩和層27および地山36を排除すれば、該機能性殻体49の内側の空間50は地下貯留槽として利用できる。用途としては、地下貯水槽、地下遊水槽、液体燃料地下タンク、気体燃料地下タンク、エネルギー蓄積型ガスタービン発電設備用地下併置高圧空気タンク、風洞実験用高圧空気地下タンク、二酸化炭素貯留地下タンク、冷熱貯蔵地下タンク、温熱貯蔵地下タンク、食糧貯蔵地下タンク、種子貯蔵地下タンク、地中埋設大型タイムカプセルなどである。燃料地下タンクとしては、原油、LPG、LNG、DME、コンデンセート、ナフサ、軽油などが含まれる。
【0091】
本発明によれば、図101に示した第32工程を終了した段階で該殻体49の内部の地山36を排除せずに、該地山36の土粒子の間隙に流体を浸透貯留させ、該殻体49で密閉させる浸透貯留槽を最小限の排土量で施工することが可能となる。地球温暖化対策のひとつとして、二酸化炭素を帯水層などに地中貯留する技術が検討されているが、キャップロックと称されるような自然のシール層に密閉性を委ねる方式であるため、長期に亘って漏れ出しの可能性を排除できないという課題を抱えている。
本発明によれば、殻体49の密閉機能や長期耐久性などを保証可能とするために、請求項4に記載のように多層構造とするなど任意に殻体仕様を選定でき、しかも前記のように最小限の排土量で大容量の地下浸透貯留槽の施工が可能となり、前記の帯水層貯留方式の漏れ出しの課題を解決出来る。
【0092】
以下に、大容量の二酸化炭素浸透貯留地下タンクの仕様例を示す。
直径500mの球形の二酸化炭素浸透貯留地下タンクを地下深度1000mに請求項6に記載の方法で構築する。土壌の湿潤比重量を1600kgf/m、間隙率を20%とする。地表温度を15℃とし、深度1000mの地山温度は地表より30℃上昇するとして45℃となる。熱的に周辺地山に影響を与えないようにするために貯留流体温度は周辺地山の温度と同じ45℃とする。深度1000mのランキン土圧は160kgf/cmとなり、タンク殻体の内側と外側で圧力を平衡させるとして貯留圧力は絶対圧で161kgf/cmとする。この貯留状態で二酸化炭素は超臨界状態であり、その比重量は約750kgf/mとなり、該タンク内の地山の間隙の容積約1300万mに約980万トンの二酸化炭素が浸透貯留できる。タンク殻体の厚さを緩和層を含めて1mとすると、該地下タンク施工のために必要な排土量は地表との連通路分を除いて約130万トンの規模となる。
貯留流体温度を周辺地山の温度と同じとすることで周辺地山と該タンクとの間に熱の出入りを無くすことが出来る(等温貯留)ため、以下の2点のメリットが得られる。第1点は、タンク殻体材料に断熱機能が必要とされなくなることで、殻体材料費を低減出来る。第2点は周辺地山との間に熱の出入りが無いことから、超長期に亘って貯留流体温度が変化しないので、貯留流体の温度制御のための加熱・冷却およびその制御手段が不要となる。そのため、それに関する工費や管理費を削減できる。
貯留圧力を該タンク構築深度のランキン土圧と平衡させることで、以下の2点のメリットが生ずる。第1点はタンク殻体の内側と外側の圧力が平衡しているため、タンク殻体の要求剛性および要求強度は極めて低くなる。従って、殻体厚さを薄くでき、高剛性・高強度材を使用しなくてよくなるため、材料費を低減出来る。第2点は該タンク殻体の内側と外側の圧力が平衡しているため、タンク殻体が部分的に破損した場合においても、該殻体内部の二酸化炭素が噴出することはなく、周辺地山の間隙を満たしている流体との間の二酸化炭素成分の濃度差に律速される拡散によりゆっくりと漏れ出ていく。そして、漏出二酸化炭素が地表に到達するまでには、間隙率20%の1000mという長い距離の地山が拡散経路となる。
前記のように貯留圧力をランキン土圧と同等とせずに、ランキン土圧よりも若干低い値に設定する方法とすることにより以下のようなメリットが期待できる。ランキン土圧とそれより若干低い貯留圧力との差圧分だけ該タンク殻体に圧縮残留応力が付与されることになり、該タンク殻体の引張り破壊強度が上げられることになる。また、腐食減肉などにより該タンク殻体にピンホールが貫通したとしても、該タンク殻体の外側の流体がそのピンホールを通して該タンク殻体内に流入し、該タンク殻体の内側と外側の圧力が平衡した後に、前記のように貯留二酸化炭素が拡散によりゆっくりと該ピンホールを通って流出していく。貯留圧力をランキン土圧より低くすることで、該タンク殻体の耐久性を向上させ得ると共に、該タンク殻体損傷後の流出時期を遅延させることが出来る。
該タンク殻体が破損してその内部に貯留していた二酸化炭素が漏出を開始したとしてもその漏出速度は低い。従って、該タンク殻体の外側に配設した二酸化炭素センサーにより貯留二酸化炭素の漏出が検知されてから、その後に該タンク殻体を内包する形で請求項9に記載の方法で新たに殻体を構築し既存のタンク全体を密閉すれば、既存のタンクから漏出する二酸化炭素が地表に到達する量を最小限に阻止することが出来る。
二酸化炭素浸透貯留地下タンク殻体内部に元のままの地山を残した状態でそこに二酸化炭素を浸透貯留する方法の外に、二酸化炭素の安定的固定方法として以下に説明する方法も有効な手段となり得る。
該二酸化炭素浸透貯留地下タンク殻体内部の地山の一部に、二酸化炭素を注入する前の段階で図62に示す例と類似の形で該殻体内部の地山よりも消石灰(生石灰を混入してもよい)濃度の高い複数の層を請求項9に記載の方法で離間させて構築する。その後、図63に示す例と類似の形で該タンク殻体を密閉し、地上から該タンク殻体への連通路を通して二酸化炭素を該タンク殻体内に注入する。該タンク殻体内に注入された超臨界状態の二酸化炭素と消石灰の炭酸化反応の反応速度、体積変化、熱収支、および土中のシリカやアルミナ成分と石灰のカルシウムイオンとが反応するポゾラン反応が起こるか否かなどについての実証データはまだ求められていないようである。仮に、石灰が関連する二酸化炭素吸収固定化反応により、該殻体内部の物質の体積が収縮し内部圧力が経時的に低下することが予想される場合には、その圧力低下分を見越して、該殻体内における二酸化炭素の貯留圧力をランキン土圧よりも若干高く設定してより多くの二酸化炭素を貯留することが出来る。また、上記反応により、該タンクの貯留圧の低下が認められたら、その低下分を補う形で二酸化炭素を追加的に注入することが出来る。
前記炭酸化反応により、二酸化炭素が炭酸カルシウムに変化すれば、珊瑚、貝やストロマトライトなどで30億年を超える実績を有する安定した二酸化炭素固定化反応が該殻体内で実現することになる。
本発明による二酸化炭素の地下貯留方法は、従来検討されている帯水層地下貯留方法に比べて以下のような利点を有している。
(a)密閉性の高い殻体で貯留流体を取り囲む構造であるので、超長期に亘って二酸化炭素の漏洩の可能性を確実に排除できる。貯留後の二酸化炭素の挙動に関するシミュレーション計算費用とモニタリング費用を大幅に削減出来る。
(b)本発明の方法では、キャップロックが不要であるので、適地選定の自由度が大幅に拡大する。間隙率が高く掘削容易な堆積層地帯がむしろ本発明には適地となる。二酸化炭素排出量の多い大都市圏(多くの大都市圏は河川に近い堆積層地帯に位置する)に近い堆積層内に構築出来るので、二酸化炭素輸送費を低減することが出来る。

【0093】
請求項11記載に関連した第12実施形態について、既存のトンネル68の信頼性向上対策の例を図104で説明する。
【0094】
既存のトンネル68が破砕帯67を貫通して施工されている場合、激しい地殻変動や地震が発生した時に、該破砕帯67に沿ってせん断変形が起こり、該破砕帯67を貫通している部分で既存のトンネル68が損壊する可能性がある。こうしたケースを想定して、破砕帯67を貫通している既存のトンネル68の安全性を向上させるために、該トンネル68が破砕帯67を貫通している部分を該トンネル68の外側を囲む形でしかも該トンネル68と離間した位置に、該破砕帯67にずれが生じても耐えうる強度と剛性を有する既存のトンネル保護用追加施工外側管体69を請求項5に記載の方法で設ける。
この既存のトンネル保護用追加施工外側管体69は少なくとも3層構造であり、中央部の機能性管体48とその内側と外側の緩和層27を有する構造である。該機能性管体48は、該破砕帯67にずれが生じても破損しない強度、剛性、厚さおよび長期耐久性を有する仕様とする。緩和層27は局所化する破砕帯67のずれをその周辺部を含めたより広い領域で緩和し、局所的な最大応力レベルを低減して該機能性管体48の破壊抵抗力を向上させる機能を有する仕様とする。該機能性管体48としては、現在一般的に採用されているシールドトンネルのコンクリートシールドセグメントを連結一体化した構造などが本目的に適合する。該緩和層27としては、局所的な外力を分散化させられるよう充分な厚さを有し、内部摩擦角の低い粒状体からなる層などが適用可能である。
従来、既存のトンネルの補修工事などとして、トンネル覆工裏込め注入工法が用いられている。この工法は、トンネルの場合にその管体形状の覆工と地山との間の空洞にグラウトなどを注入し、空洞を充填してトンネル管体が受ける土圧の局所的変化を和らげる方法である。しかし、この方法はトンネル管体と地山をグラウトにより接合し一体化する工法である。従って、裏込め注入した個所が活断層である場合、裏込め注入後に該活断層がせん断変形した場合には、そのせん断変形量が直接トンネル管体に伝達されることになる。
従来のトンネル覆工裏込め注入工法に比べ本発明の方法では前記のようにトンネル管体と地山とを一体化接合せず、互いのミスマッチを許容する方法であることを特徴としている。そのために、補強用のレトロフィット管体は既存トンネルと離間させて配設する。しかもレトロフィット管体に設けた緩和層と強度・剛性を有する機能層の働きにより、地山の変形が大幅に減衰された形で既存のトンネル覆工に伝達されるようになる。トンネル保護用追加施工外側管体69を追加付設することで既存トンネルの長期耐久性を向上させることが出来る。しかもこの追加工事は、工事期間中周辺地山の土圧分布の変化を最小限とした状態で施工できるため、既存トンネルの運用を停止しないで施工できる。
【0095】
本発明による工法は、該作業坑道2の横手方向の一方側に空領域14を形成し、他方側に地下構造体構成部材20による充填領域15を形成しながら、該作業坑道2の横手方向に工事を進展させていき、段階的に地下構造体1を施工していく工法であることから、TEIM(Traverse Excavating and Infilling Method)(:テイム)工法と称する。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明による請求項1、2、6に対応する地下構造体(地下ダム提体の例)施工における計画図(図1(a))と施工工事初期の第1工程の作業坑道の位置関係を示す(図1(b))横手方向矢視図である。
【図2】本発明の請求項1に示す作業坑道、作業坑道の重心線、作業坑道の第1対面、第2対面の定義に関する説明図である。
【図3】本発明による請求項1、2、6に対応する地下構造体(地下ダム提体の例)施工における該地下構造体の構築を計画している領域と施工工事初期の第1工程の作業坑道の位置関係を示す斜視図である。
【図4】本発明による請求項1、2、6に対応する地下構造体(地下ダム提体の例)の施工工程を示す横手方向矢視図である。
【図5】本発明による請求項1、2、6に対応する地下構造体(地下ダム提体の例)の施工工程を示す横手方向矢視図である。
【図6】本発明による請求項1、2、6に対応する地下構造体(地下ダム提体の例)の施工工程を示す横手方向矢視図である。
【図7】本発明による請求項1、2、6に対応する地下構造体(地下ダム提体の例)の施工工程を示す横手方向矢視図である。
【図8】本発明による請求項2に対応する地下構造体(地下ダム提体の例)の施工工程を示す横手方向矢視図である。
【図9】本発明による請求項1、2、6に対応する地下構造体(地下ダム提体の例)の施工工程を示す横手方向矢視図である。
【図10】本発明による請求項1、2、6に対応する地下構造体(地下ダム提体の例)の施工工程を示す横手方向矢視図である。
【図11】本発明による請求項1、2、6に対応する地下構造体(地下ダム提体の例)の施工工程を示す横手方向矢視図である。
【図12】本発明による請求項1、2、6に対応する地下構造体(地下ダム提体の例)の施工工程を示す横手方向矢視図である。
【図13】本発明による請求項1、2、6に対応する地下構造体(地下ダム提体の例)の施工工程を示す横手方向矢視図である。
【図14】本発明による請求項1、2、6に対応する地下構造体(地下ダム提体の例)の施工工程を示す横手方向矢視図である。
【図15】本発明による請求項1、2、6に対応する地下構造体(地下ダム提体の例)の施工工程を示す横手方向矢視図である。
【図16】本発明による請求項1、2、6に対応する地下構造体(地下ダム提体の例)の施工工程を示す作業坑道断面図である。
【図17】本発明による請求項1、2、6に対応する地下構造体(地下ダム提体の例)の施工工程を示す作業坑道断面図である。
【図18】本発明による請求項1、2、6に対応する地下構造体(地下ダム提体の例)の施工工程を示す作業坑道断面図である。
【図19】本発明による請求項1、2、6に対応する地下構造体(地下ダム提体の例)の施工工程を示す作業坑道断面図である。
【図20】本発明による請求項1、2、6に対応する地下構造体(地下ダム提体の例)の施工工程を示す作業坑道断面図である。
【図21】本発明による請求項1、2、6に対応する地下構造体(地下ダム提体の例)の施工工程を示す作業坑道断面図である。
【図22】本発明による請求項1、2、6に対応する地下構造体(地下ダム提体の例)の施工工程を示す作業坑道断面図である。
【図23】本発明による請求項1、2、6に対応する地下構造体(地下ダム提体の例)の施工工程を示す作業坑道断面図である。
【図24】本発明による請求項1、2、6に対応する地下構造体(地下ダム提体の例)の施工工程を示す作業坑道断面図である。
【図25】本発明による請求項1、2、6に対応する地下構造体(地下ダム提体の例)の施工工程を示す作業坑道断面図である。
【図26】本発明による請求項1、2、6に対応する地下構造体(地下ダム提体の例)の施工工程を示す作業坑道断面図である。
【図27】本発明による請求項1、2、6に対応する地下構造体(地下ダム提体の例)の施工工程を示す作業坑道断面図である。上円下方の断面形状の作業坑道の例である。
【図28】本発明による請求項1、2、6に対応する地下構造体(地下ダム提体の例)の施工工程を示す作業坑道断面図である。上円下方の断面形状の作業坑道の例である。
【図29】本発明による請求項1、2、6に対応する地下構造体(塩性土壌脱塩用水平板型暗渠の例)の施工工程を示す作業坑道断面図である。
【図30】本発明による請求項1、2、6に対応する地下構造体(塩性土壌脱塩用水平板型暗渠の例)の施工工程を示す作業坑道断面図である。。
【図31】本発明による請求項1、2、6に対応する地下構造体(塩性土壌脱塩用水平板型暗渠の例)の施工工程を示す作業坑道断面図である。
【図32】本発明による請求項1、2、6に対応する地下構造体(塩性土壌脱塩用水平板型暗渠の例)の施工工程を示す作業坑道断面図である。
【図33】本発明による請求項1、2、6に対応する地下構造体(塩性土壌脱塩用水平板型暗渠の例)の施工工程を示す作業坑道断面図である。
【図34】本発明による請求項1、2、6に対応する地下構造体(塩性土壌脱塩用水平板型暗渠の例)の施工工程を示す作業坑道断面図である。
【図35】本発明による請求項1、2、6に対応する地下構造体(塩性土壌脱塩用水平板型暗渠の例)の施工工程を示す作業坑道断面図である。
【図36】本発明による請求項1、2、6に対応する地下構造体(塩性土壌脱塩用水平板型暗渠の例)の施工工程を示す作業坑道断面図である。
【図37】本発明による請求項1、2、6に対応する地下構造体(塩性土壌脱塩用水平板型暗渠の例)の施工工程を示す作業坑道断面図である。
【図38】本発明による請求項1、2、6に対応する地下構造体(塩性土壌脱塩用水平板型暗渠の例)の施工工程を示す作業坑道断面図である。
【図39】本発明による請求項1、2、6に対応する地下構造体(塩性土壌脱塩用水平板型暗渠の例)の施工工程を示す作業坑道断面図である。
【図40】本発明による請求項1、2、6に対応する地下構造体(塩性土壌脱塩用水平板型暗渠の例)の施工工程を示す作業坑道断面図である。
【図41】本発明による請求項1、2に対応する地下構造体の傾斜部分の施工工程を示す作業坑道断面図である。
【図42】本発明による請求項1、2に対応する地下構造体の傾斜部分の施工工程を示す作業坑道断面図である。
【図43】本発明による請求項1、2に対応する地下構造体の傾斜部分の施工工程を示す作業坑道断面図である。
【図44】本発明による請求項1、2に対応する地下構造体の傾斜部分の施工工程を示す作業坑道断面図である。
【図45】本発明による請求項1、2に対応する地下構造体の傾斜部分の施工工程を示す作業坑道断面図である。
【図46】本発明による請求項1、2に対応する地下構造体の傾斜部分の施工工程を示す作業坑道断面図である。
【図47】本発明による請求項1、2に対応する地下構造体の傾斜部分の施工工程を示す作業坑道断面図である。
【図48】本発明による請求項1、2に対応する地下構造体の傾斜部分の施工工程を示す作業坑道断面図である。
【図49】本発明による請求項1、2に対応する地下構造体の傾斜部分の施工工程を示す作業坑道断面図である。
【図50】本発明による請求項1、2、6に対応する地下構造体が鉛直対称面を有する水平板体形状である例の施工工程を示す作業坑道断面図である。
【図51】本発明による請求項1、2、6に対応する地下構造体が鉛直対称面を有する水平板体形状である例の施工工程を示す作業坑道断面図である。
【図52】本発明による請求項1、2、6に対応する地下構造体が鉛直対称面を有する水平板体形状である例の施工工程を示す作業坑道断面図である。
【図53】本発明による請求項1、2、6に対応する地下構造体が鉛直対称面を有する水平板体形状である例の施工工程を示す作業坑道断面図である。
【図54】本発明による請求項1、2、6に対応する地下構造体が鉛直対称面を有する水平板体形状である例の施工工程を示す作業坑道断面図である。
【図55】本発明による請求項1、2、6に対応する地下構造体が鉛直対称面を有する水平板体形状である例の施工工程を示す作業坑道断面図である。
【図56】本発明による請求項1、2、6に対応する地下構造体がが鉛直対称面を有する管体形状あるいは殻体形状である例の施工工程を示す作業坑道断面図である。
【図57】本発明による請求項1、2、6に対応する地下構造体がが鉛直対称面を有する管体形状あるいは殻体形状である例の施工工程を示す作業坑道断面図である。
【図58】本発明による請求項1、2、6に対応する地下構造体が鉛直対称面を有する水平板体形状である例の施工工程を示す作業坑道断面図である。
【図59】本発明による請求項1、2、6に対応する地下構造体がが鉛直対称面を有する管体形状あるいは殻体形状である例の施工工程を示す作業坑道断面図である。
【図60】本発明による請求項7に対応する櫛歯状端部を有する断続板構造の地下ダム提体の例の説明図である。
【図61】本発明による請求項12および13に記載の方法を組み合わせた放射性廃棄物地層処分の方法を示す説明図である。薬用カプセル様形状の放射性地中保管体保管領域遮蔽殻体であって図61(a)がその横断面図、図61(b)がその縦断面図である。
【図62】本発明による請求項12および13に記載の方法を組み合わせた放射性廃棄物地層処分の方法を示す説明図である。薬用カプセル様形状の放射性地中保管体保管領域遮蔽殻体であって図62(a)がその横断面図、図62(b)がその縦断面図である。
【図63】本発明による請求項12および13に記載の方法を組み合わせた放射性廃棄物地層処分の方法を示す説明図である。薬用カプセル様形状の放射性地中保管体保管領域遮蔽殻体であって図63(a)がその横断面図、図63(b)がその縦断面図である。
【図64】本発明による請求項12および13に記載の方法を組み合わせた放射性廃棄物地層処分の方法を示す説明図である。薬用カプセル様形状の放射性地中保管体保管領域遮蔽殻体であって、その横断面図である。
【図65】本発明による請求項13に記載の方法により、放射性地中保管体保管領域へ放射性地中保管体を埋設する作業の詳細工程を作業坑道の断面で示す説明図である。
【図66】本発明による請求項13に記載の方法により、放射性地中保管体保管領域へ放射性地中保管体を埋設する作業の詳細工程を作業坑道の断面で示す説明図である。
【図67】本発明による請求項13に記載の方法により、放射性地中保管体保管領域へ放射性地中保管体を埋設する作業の詳細工程を作業坑道の断面で示す説明図である。
【図68】本発明による請求項13に記載の方法により、放射性地中保管体保管領域へ放射性地中保管体を埋設する作業の詳細工程を作業坑道の断面で示す説明図である。
【図69】本発明による請求項13に記載の方法により、放射性地中保管体保管領域へ放射性地中保管体を埋設する作業の詳細工程を作業坑道の断面で示す説明図である。
【図70】本発明による請求項13に記載の方法により、放射性地中保管体保管領域へ放射性地中保管体を埋設する作業の詳細工程を作業坑道の断面で示す説明図である。
【図71】本発明による請求項13に記載の方法により、放射性地中保管体保管領域へ放射性地中保管体を埋設する作業の詳細工程を作業坑道の断面で示す説明図である。
【図72】本発明による請求項13に記載の方法により、放射性地中保管体保管領域へ放射性地中保管体を埋設する作業の詳細工程を作業坑道の断面で示す説明図である。
【図73】本発明による請求項13に記載の方法により、放射性地中保管体保管領域へ放射性地中保管体を埋設する作業の詳細工程を作業坑道の断面で示す説明図である。
【図74】本発明による請求項13に記載の方法により、放射性地中保管体保管領域へ放射性地中保管体を埋設する作業の詳細工程を作業坑道の断面で示す説明図である。
【図75】本発明による請求項13に記載の方法により、放射性地中保管体保管領域へ放射性地中保管体を埋設する作業の詳細工程を作業坑道の断面で示す説明図である。
【図76】本発明による請求項13に記載の方法により、放射性地中保管体保管領域へ放射性地中保管体を埋設する作業の詳細工程を作業坑道の断面で示す説明図である。
【図77】本発明による請求項13に記載の方法により、放射性地中保管体保管領域へ放射性地中保管体を埋設する作業の詳細工程を作業坑道の断面で示す説明図である。
【図78】本発明による請求項13に記載の方法により、放射性地中保管体保管領域へ放射性地中保管体を埋設する作業の詳細工程を作業坑道の断面で示す説明図である。
【図79】本発明による請求項13に記載の方法により、放射性地中保管体保管領域へ放射性地中保管体を埋設する作業の詳細工程を作業坑道の断面で示す説明図である。
【図80】本発明による請求項13に記載の方法により、放射性地中保管体保管領域へ放射性地中保管体を埋設する作業の詳細工程を作業坑道の断面で示す説明図である。
【図81】本発明による請求項13に記載の方法により、放射性地中保管体保管領域へ放射性地中保管体を埋設する作業の詳細工程を作業坑道の断面で示す説明図である。
【図82】本発明による請求項13に記載の方法により、放射性地中保管体保管領域へ放射性地中保管体を埋設する作業の詳細工程を作業坑道の断面で示す説明図である。
【図83】本発明による請求項13に記載の方法により、放射性地中保管体保管領域へ放射性地中保管体を埋設する作業の詳細工程を作業坑道の断面で示す説明図である。
【図84】本発明による請求項13に記載の方法により、放射性地中保管体保管領域へ放射性地中保管体を埋設する作業の詳細工程を作業坑道の断面で示す説明図である。
【図85】本発明による請求項13に記載の方法により、放射性地中保管体保管領域へ放射性地中保管体を埋設する作業の詳細工程を作業坑道の断面で示す説明図である。
【図86】本発明による請求項13に記載の方法により、放射性地中保管体保管領域へ放射性地中保管体を埋設する作業の詳細工程を作業坑道の断面で示す説明図である。
【図87】本発明による請求項13に記載の方法により、放射性地中保管体保管領域へ放射性地中保管体を埋設する作業の詳細工程を作業坑道の断面で示す説明図である。
【図88】本発明による請求項13に記載の方法により、放射性地中保管体保管領域へ放射性地中保管体を埋設する作業の詳細工程を作業坑道の断面で示す説明図である。
【図89】本発明による請求項13に記載の方法により、放射性地中保管体保管領域へ放射性地中保管体を埋設する作業の詳細工程を作業坑道の断面で示す説明図である。
【図90】本発明による請求項13に記載の方法により、放射性地中保管体保管領域へ放射性地中保管体を埋設する作業の詳細工程を作業坑道の断面で示す説明図である。
【図91】本発明による請求項13に記載の方法により、放射性地中保管体保管領域へ放射性地中保管体を埋設する作業の詳細工程を作業坑道の断面で示す説明図である。
【図92】本発明による請求項13に記載の方法により、放射性地中保管体保管領域へ放射性地中保管体を埋設する作業の詳細工程を作業坑道の断面で示す説明図である。
【図93】本発明による請求項13に記載の方法により、放射性地中保管体保管領域へ放射性地中保管体を埋設する作業の詳細工程を作業坑道の断面で示す説明図である。
【図94】本発明による請求項13に対応する放射性地中保管体保管領域遮蔽殻体の初期段階施工部分施工後に、その内部の放射性地中保管体保管領域へ放射性地中保管体を埋設する作業の詳細工程を作業坑道の断面で示す説明図である。
【図95】本発明による請求項13に記載の方法により、放射性地中保管体保管領域へ放射性地中保管体を埋設する作業の詳細工程を作業坑道の断面で示す説明図である。
【図96】本発明による請求項13に記載の方法により、放射性地中保管体保管領域へ放射性地中保管体を埋設する作業の詳細工程を作業坑道の断面で示す説明図である。
【図97】本発明による請求項13に対応する放射性地中保管体保管領域遮蔽殻体の期段階施工部分施工後に、その内部の放射性地中保管体保管領域へ放射性地中保管体を埋設する作業の詳細工程を作業坑道の断面で示す説明図である。
【図98】本発明による請求項13に記載の方法により、放射性地中保管体保管領域へ放射性地中保管体を埋設する作業の詳細工程を作業坑道の断面で示す説明図である。
【図99】本発明による請求項14に対応する地下立地式原子力発電所の構造を示す説明図である。
【図100】本発明による請求項4および6に対応する地下構造体の施工工程を示す説明図である。
【図101】本発明による請求項4および6に対応する地下構造体の施工工程を示す説明図である。
【図102】本発明による請求項4および6に対応する地下構造体の施工工程を示す説明図である。
【図103】本発明による請求項4および6に対応する地下構造体の施工工程を示す説明図である。
【図104】本発明による請求項11に対応する既存トンネルの破砕帯貫通部分を補強するレトロフィット工事を示す説明図である。
【図105】従来の地下ダム構造例である。
【図106】従来のMMST工法説明図である。
【図107】従来の液化プロパンガスの水封式地下貯槽の説明図である。
【図108】従来検討の高レベル放射性廃棄物地層処分の人工バリアの説明図である。
【符号の説明】
【0097】
1 地下構造体
1a 地下構造体の構築を計画している領域
1b 地下構造体の構築を計画している領域の近傍の領域
1c 地下構造体の構築を計画している領域の水平方向1方側の端部領域
1d 地下構造体の構築を計画している領域の水平方向1方側の端部領域の近傍の領域
1e 地下構造体の構築を計画している領域の水平方向他方側の端部領域
1f 管体あるいは殻体を成す該地下構造体の構築を計画している領域の水平方向中央部で且つ最下部の領域
2 作業坑道
3 作業坑道断面の輪郭線
4 作業坑道断面の輪郭線によって囲まれる閉曲面の重心点
5 該作業坑道の重心線
6、7 作業坑道の該重心線のみを共有点として共に含み互いに交差する2個の仮想の面
8 作業坑道の内壁面
9、10、11、12 仮想の面6、7と該作業坑道の内壁面8とが交差する線
13 地山
14 空領域
15 充填領域
16 作業坑道断面の輪郭線3によって囲まれる閉曲面
17 充填物
18 作業坑道壁面保護材
19 作業坑道と地上との連通路
20 地下構造体構成部材
21 作業枠体
22 鉛直対称面
23 地表
24 櫛歯状端部
25 ジグザグ状漏水流路
26 水平面
27 緩和層
28 埋め戻し材
29 放射性地中保管体保管領域遮蔽殻体の初期段階施工部分
30 放射性地中保管体保管領域
31 放射性地中保管体保管領域遮蔽殻体の初期段階施工部分の上縁部
32 放射性地中保管体保管領域遮蔽殻体
33 放射性地中保管体保管領域の最上部
34 地下設備
35 殻体
36 管体内部あるいは殻体内部の地山
37 外側殻体
38 地中原子炉部収容殻体
39 地中発電機部収容殻体
40 地中負圧・冷熱蓄熱部収容殻体
41 負圧タンク
42 放射性地中保管体
43 ズリ
44 緩衝材
45 地下ダム掘削埋め戻し部
46 遮水プラスチックキャンバス
47 不透水帯
48 機能性管体
49 機能性殻体
50 空空間
51 管体
52 地下立地式原子力発電所の施工領域
53 外側殻体の初期段階施工部分
54 外側殻体の初期段階施工部分の上縁部
55 地下立地式原子力発電所の施工領域の最上部
56 地下立地式原子力発電所の安全設備としての負圧・冷熱蓄熱タンク部
57 地下立地式原子力発電所の地中原子炉部
58 地下立地式原子力発電所の地中発電機部
59 地下立地式原子力発電所の地上制御部
60 地下立地式原子力発電所の地上部出入り口
61 地下立地式原子力発電所の冷却水取排水口
62 地下立地式原子力発電所の地上部への主連通路
63 地下立地式原子力発電所の分岐連通路
64 地下立地式原子力発電所の地上部への主連通路の高圧遮断手段
65 地下立地式原子力発電所の分岐連通路の高圧遮断手段
66 海水面
67 破砕帯
68 既存のトンネル
69 既存のトンネル保護用追加施工外側管体
70 既存の地中存在物
71 レトロフィット管体
72 レトロフィット殻体
73 低透過係数手段
74 レトロフィット板体
75 レトロフィット深皿様殻体
76 機能層
77 変形追従手段
78 強度層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構築しようとする地下構造体の所定相当領域あるいは該地下構造体の所定相当の近傍領域に作業坑道を形成する第1工程と、
前記第1工程で得られた作業坑道内壁面の一方側の地山に所定幅で、所定深さ、かつ所定長さによって決められる容積の空領域を形成した後、前記一方側の地山と対向する前記作業坑道内壁面の前記容積と同等若しくは略同等容積部位又は前記作業坑道の作業空間が確保出来る程度の容積部位に、前記地下構造体の一部を構成する構成部材が少なくとも含まれている充填物で充填領域を形成するか、あるいは前記充填領域を先に形成した後、前記空領域を形成するかのいずれかひとつを含む第2工程と、
該第2工程を前記地下構造体の少なくとも所定相当領域内において複数回繰り返し、該地下構造体の構成部材が順次新たに形成される充填領域の充填物により施工される第3工程とを含むことを特徴とする地下構造体の施工方法。
【請求項2】
前記第3工程において、複数回繰り返し工程のうちの直前工程で施工された該充填領域の地下構造体の構成部材とその次の工程で施工される地下構造体の構成部材の接触界面の1部あるいは接触界面全体を連結接合させることにより、前記直前工程において形成された地下構造体の構成部材とその次の工程で形成される地下構造体の構成部材とを順次一体構造化することを特徴とする請求項1記載の地下構造体の施工方法。
【請求項3】
前記第3工程において、充填物により隣接する地山に圧縮残留応力を付与させることを特徴とする請求項1記載の地下構造体の施工方法。
【請求項4】
請求項1記載の地下構造体の施工方法において、該地下構造体の構成部材を形成するための該充填領域に充填される充填物は機能層、強度層および緩和層のいずれか一つの層で形成するか、あるいはこれらの組み合わせの層からなることを特徴とする請求項1ないし3記載の地下構造体の施工方法。
【請求項5】
地下構造体の施工方法において、以下の(a)と少なくとも(b)、(c)のうちの一つとの組み合わせの機能を有する作業枠体であって、
(a)該作業坑道の内壁面の土留め支保機能、
(b)作業枠体自重、作業員、作業機材、レール、搬出中のズリや排土、搬入中の充填材の合計重量に作業反力を加えた総荷重を支持可能とする荷重支持機能、
(c)地山壁に対して圧縮残留応力を付与する押圧機能、
前記(a)、(b)の機能を保持しながら、該充填領域内にある作業枠体を取り外し、該充填領域内から取り外した作業枠体を新たに形成する空領域に組付けることを特徴とする請求項1記載の地下構造体の施工方法。
【請求項6】
前記地下構造体の形状は少なくとも板体形状若しくは管体形状又は殻体形状のいずれか、又はこれらの組合せであることを特徴とする請求項1又は2地下構造体の施工方法。
【請求項7】
地下構造体がその長手方向端部若しくは湾曲方向端部において櫛歯状端部を有し、長手方向若しくは湾曲方向に隣り合う該地下構造体の櫛歯状端部同士を互いに入り込む形でしかも離間して長手方向若しくは湾曲方向に配列させて、その離間部に低透過係数手段および変形追従手段を介在させて、全体として複数の地下構造体の連なりをなす断続板構造若しくは断続管構造又は断続殻構造とすることを特徴とする請求項1、2又は3記載の地下構造体の施工方法。
【請求項8】
板体形状若しくは管体形状又は殻体形状を有する略相似形の複数の地下構造体を略平行移動の関係により互いに離間した配置とする全体として多重板構造若しくは多連管構造又は群設殻構造とすることを特徴とする請求項1、2又は3記載の地下構造体の施工方法。
【請求項9】
管体形状又は殻体形状を有する略相似形の複数の地下構造体を拡大縮小の関係且つ包含関係により互いに離間した配置とする全体として多重管構造あるいは多重殻構造とすることを特徴とする請求項1、2又は3記載の地下構造体の施工方法。
【請求項10】
前記作業坑道においてこれを長手方向に区分する複数の工区に分割し、それぞれの工区において同時進行的に前記第3工程作業を進行させて地下構造体を施工することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の地下構造体の施工方法。
【請求項11】
地下構造体の構成部材であるレトロフィット板体、レトロフィット管体あるいはレトロフィット殻体によって既存の該地中存在物の存在領域の少なくともその一部を取り囲むことを特徴とする請求項3記載の地下構造体の施工方法。
【請求項12】
地下構造体が、放射性物質を地中に多段に亘って埋設した状態でその周囲を密閉遮蔽する遮蔽殻体であって、請求項1の方法によって順次該遮蔽殻体を形成することを特徴とする請求項1記載の地下構造体の施工方法。
【請求項13】
地下構造体が放射性廃棄物を含み、放射性物質を多段に亘って埋設する場合において、充填物が放射性物質と埋め戻し材であることを特徴とする請求項1記載の地下構造体の施工方法。
【請求項14】
請求項1の方法で施工される以下の3種の殻体を含む地下構造体である地下立地式原子力発電所は、
(1)地中原子炉部を収容する地中原子炉部収容殻体と地中発電機部を収容する地中発電機部収容殻体の2個の殻体を共に外側殻体内に包含し、
(2)該外側殻体を貫通し、地上制御部と該外側殻体の内部とを連通する地上部への主連通路と、
(3)該外側殻体の内部において該主連通路と該地中原子炉部収容殻体内部とを連通する分岐連通路と、
(4)該外側殻体の内部において該主連通路と該地中発電機部収容殻体内部とを連通する分岐連通路と、
(5)該分岐連通路が該地中原子炉部収容殻体を貫通する部分に設けられた分岐連通路の高圧遮断手段と、
(6)該分岐連通路が該地中発電機部収容殻体を貫通する部分に設けられた分岐連通路の高圧遮断手段と、
(7)該主連通路が該外側殻体を貫通する部分に設けられた主連通路の高圧遮断手段によって構成されることを特徴とする地下立地式原子力発電所。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【図64】
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【図65】
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【図66】
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【図67】
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【図68】
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【図69】
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【図70】
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【図71】
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【図72】
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【図73】
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【図74】
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【図75】
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【図76】
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【図77】
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【図78】
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【図79】
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【図80】
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【図81】
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【図82】
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【図83】
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【図84】
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【図85】
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【図86】
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【図87】
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【図88】
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【図89】
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【図90】
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【図91】
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【図92】
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【図93】
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【図94】
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【図95】
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【図96】
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【図97】
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【図98】
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【図99】
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【図100】
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【図101】
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【図102】
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【図103】
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【図104】
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【図105】
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【図106】
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【図107】
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【図108】
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【公開番号】特開2009−24368(P2009−24368A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−187505(P2007−187505)
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【特許番号】特許第4150063号(P4150063)
【特許公報発行日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(301052227)
【Fターム(参考)】