説明

地下構造物の安全評価システムおよび安全評価方法

【課題】 地盤に関するGISデータやボーリング試験結果、構造物に関するCADデータ等から3次元モデルを作成し、3次元解析により、構造物の安全性を評価し、構造物の合理的な設計・構築を可能とする。
【解決手段】 対象となる地域に大規模地下構造物を建設する場合において、地盤に関する地盤データとトンネルや立坑などの構造物データを3次元データで与え、まず、全体解析を行う。全体解析の結果が、安全性やコストなどの基準を満たさない場合は、次に、懸念される局部の詳細解析を行う。全体解析または詳細解析の結果が基準を満たすことで、基本的な設計が完了する。全体解析および詳細解析に用いる地盤データは、ボーリング試験の結果やGISデータを、翻訳ソフトにより3次元モデルによる解析に使用可能なデータに変換して解析を行う。構造物データについてもCADデータなどを、翻訳ソフトにより変換して解析を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドトンネルや各種大規模地下空間など、地盤内に構築される大規模な地下構造物の安全性を評価し、設計を行うための地下構造物の安全評価システムおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地盤情報や構造物のモデルが3次元情報として整備されつつあり、その利用に関する発明が種々なされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、GIS(地理情報システム)などのデジタル地図データを用いて土工設計の掘削線および土量・面積を計算し設計図面を作成する土工設計支援システムが記載されている。
【0004】
特許文献2には、GISなどのデジタル地図データを用いて、道路構造や路線の選択に応じた道路設計モデルの生成、視覚化、概算工事費の算出などを可能とする3次元道路設計支援システムが記載されている。
【0005】
特許文献3には、GISデータと建設状況データを基に、3次元モデル化した地下構造物の建設進捗状況を、グラフィックとして視覚化する地下構造物建設管理システムが記載されている。
【0006】
特許文献4には、大規模構造物の設計に関し、生成した3次元CADデータと、既存のGISなどデータを組み合わせ、構造物から発せられる振動や騒音等の影響を評価する解析支援CAE装置が記載されている。
【0007】
【特許文献1】特許第3407883号公報
【特許文献2】特許第3412815号公報
【特許文献3】特開2001−109801号公報
【特許文献4】特開2003−228599号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
道路・鉄道等の地下構造物は、建設地点・ルートの計画案が提示されると計画路線に沿った地盤情報を用いた評価を行うこととなるが、既存のボーリングデータやGISデータは、数値解析に用いることを念頭において整備されていないため、直接、評価に用いるのが難しい。
【0009】
従来、地下構造物の設計は、主として2次元モデルを用いて実施されており、構造急変部、地盤急変部などの設計では3次元モデルを用いた検討もなされているが、部材単位の検討であったり、局所的な検討に留まっている。
【0010】
すなわち、従来は、基本的には軸方向、軸直角方向の2次元断面を用いて設計がなされ、軸方向の設計ではある区間に存在するセグメントやボルトの強度を総合評価した等価剛性を用いて設計し、地下構造物の平均的な挙動を評価している。一方、軸直角方向の設計では数リングを抽出し、設計荷重に対する局所的な安全性評価が実施されている。
【0011】
また、シールド工法の場合、最初に立坑を構築し、そこからシールド機を発進させるため、立坑とシールド部との間に構造の急変部が存在することになるが、解析モデルの大きさや解析手法が確立されていなかった理由で、精度の良い設計検討ができていない。
【0012】
この他、従来は、道路・鉄道路線が計画される場合に、各構造部位の挙動を反映した全体系の挙動の検討が行われておらず、路線選定及び計画に構造物の総合的な挙動は反映されていない。
【0013】
このように、地下構造物の設計においては、3次元モデルを作成して静的・動的な荷重に対する設計が困難であったため、単純化した2次元モデルを用いた設計がなされているが、曲線部を有する場合や地上へのアクセスの必要性から複雑な線形を有する場合には、一般に用いられている2次元の設計手法では限界がある。
【0014】
本発明は、従来技術における上述のような課題の解決を図ったものであり、道路・鉄道網等の計画時に用意される、地盤に関するGISデータ、ボーリング・地形データ、構造物に関するCADデータ等から3次元モデルを作成し、3次元解析することで、構造物の静的・動的荷重に対する安全性を評価し、より合理的な構造物の設計・構築を可能とすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願の請求項1に係る発明は、対象地盤に関する既知のデータまたは測定データである地盤データと、該対象地盤内に構築される地下構造物の設計に関する構造物データを基に、前記地下造物の静的・動的荷重に対する安全性を評価するシステムであって、対象地盤および地下構造物を3次元要素に分割した3次元モデルで表わし、前記地盤データを入力するためのデータ入力手段と、入力されたデータを記憶するための記憶手段と、前記地盤データおよび構造物データから前記3次元要素に関する必要なデータを抽出して前記3次元モデルによる解析に使用可能なデータに変換するためのデータ翻訳手段と、前記データ翻訳手段によって変換された前記3次元モデルの地盤データおよび構造物データに基づいて、静的または動的荷重が作用したときの地下構造物の状態を解析し、その安全性を評価する3次元解析手段とを有することを特徴とするものである。
【0016】
ここでいう地盤データは、例えば対象地盤における地形、地質、性状、水脈、その他について、過去に測定された既知のデータや、GISデータなどのデータベース化されたデータ、あるいは対象地盤について新たに測定されるデータなどを含む概念である。
【0017】
構造物データは解析結果により修整されて行くデータであるのに対し、地盤データは対象地盤の経時的変化や造成工事、再計測などによる変化がなければ、通常は不変のデータである。
【0018】
構造物データは、CADデータなど、設計としての各部材の形状・大きさ、位置などに関する座標、材質の情報や、部材あるいは部材要素どうしの接合状態などに関するデータなどであり、解析した結果が所定の要件を満たさない場合には、比較・検討などを行い、必要に応じて設計としてのデータの修正を行うといった作業が繰り返される。
【0019】
このような地盤データや構造物データを利用するにあたり、例えば既存のGISデータや既存のソフトによるCADデータは、例えばFEM(有限要素法)やVFEMなどによる数値解析を念頭に整備されていないため、数値解析との親和性が低く、別々に解析を行うなど煩雑になっていた。また、そのため、対象範囲の全体的な解析と局部の解析についても関連性が取り難く、統一的な扱いができなかった。
【0020】
この点に関しては、本発明では、データ翻訳手段を介在させ、データフォーマットや数値解析の入出力を鑑み、その親和性を向上させている。
【0021】
例えば、既存のボーリングデータ、GISデータなどの3次元数値情報や地下構造物の3次元データに対して、データ翻訳手段としての翻訳プログラムを適用することにより、必要に応じ各データフォーマットの冗長性を確保しながら、同一プラットフォーム上でのデータ変換を可能にする。
【0022】
すなわち、データ翻訳手段としての翻訳プログラムは入力されるデータを3次元モデルとしての解析に使用可能なデータに変換するものであり、例えば入力データから解析に必要なデータと不要なデータを区別したり、解析データの種類・表示方法(単位なども含む)に応じたデータ表示・データ名に変換したり、不足のデータを差分などにより補充したり、データをソートすることなどにより、解析データ間の整合性を確保し、シームレスな解析を可能とするものである。入力データに応じて、対象工事ごとに作成する場合と、予め多種のデータに対応できるように汎用性を持たせたものとが考えられる。
【0023】
このようなデータ翻訳手段による変換により数値解析との親和性を増した3次元データおよび大規模数値解析技術を用いることで、全体系および局部系を総合的に評価するシステムを構築することができる。また、データの変換により、各種構造解析をシームレスにつなげることができ、懸念個所を抽出して詳細な解析を加えるなど、構造物の安全性評価を効率的に行うことができる。
【0024】
請求項2は、請求項1において、前記構造物データについて、FEMあるいはVFEM解析、あるいはバネ・質点系モデルによる解析などにおける地下構造物の3次元要素を、大きな分割単位で表わした全体系データの分割単位と、より小さい分割単位で表わした局部系データの分割単位を含む2段階以上の分割単位で表わし、前記全体系データを用いて解析を行い、地下構造物が全体系の安全性に関する所定の基準を満たさない場合には、該地下構造物の少なくとも基準を満たさなかった部分およびその近傍についてより小さい分割単位で表わした局部系データを用いて解析を行い、局部系についても局部系の安全性に関する所定の基準を満たさない場合には、設計変更による新たな構造物データを用いて解析を行い、地下構造物が全体系または局部系の解析のいずれかで安全性に関する所定の基準を満たすまで解析を繰り返すように構成したことを特徴とするものである。
【0025】
本発明では、上述のように数値解析との親和性を増した3次元データで解析を行い、各種構造解析をシームレスにつなげることができるため、全体系から局部系の解析、あるいはその逆も容易であり、請求項2は全体系での評価により安全性などを確認できない場合でも、局部系での解析で安全性が確認できた場合には、それを設計に反映させ、全体系ででも局部系でも安全性が確認できない場合には、設計変更の形で、安全性が確認されるまで、解析を繰り返し、安全性を評価するようにしたものである。
【0026】
また、全体系と局部系の2段階の解析に限定されず、さらに範囲を狭めたより小さい分割単位で表わした局部系を含む3段階以上の解析もスムーズに行うことができる。
【0027】
本願の請求項3に係る地下構造物の安全評価方法は、対象地盤に関する標高、土層構成、各層地盤の質量、および少なくともS波速度とP波速度とポアソン比のうちいずれか2つを含む既知のデータまたは測定データである地盤データをデータ入力手段によりコンピュータに入力するとともに、該対象地盤内に構築される地下構造物の設計に関する位置、形状、中心線形、および少なくともヤング率とせん断弾性係数とポアソン比のうちいずれか2つを含む構造物データを与えて3次元地盤・構造物モデルを構築し、前記3次元地盤・構造物モデルのうち地盤部分をデータ翻訳手段により解析用3次元ばね・質点系モデルに変換し、構造物部分をデータ翻訳手段により解析用構造体要素・地盤ばねモデルに変換して、全体解析を行い、耐震性が懸念される個所を抽出し、抽出した部分について前記3次元地盤・構造物モデルを、FEM解析モデルに変換し、該FEM解析モデルについて詳細解析を行うことを特徴とするものである。
【0028】
基本的な考え方は、請求項1に係る地下構造物の安全評価システムと共通するが、請求項3はより具体的な評価方法を与えるものである。
【0029】
ここで、3次元地盤・構造物モデルは、例えば入力データとしての地盤データから、3次元CADによって地盤モデルを表現し、その上に設計による構造物データをレイアウトすることで構築することができる。
【0030】
請求項3に係る発明では、このような3次元地盤・構造物モデルに対し、解析に必要なデータを抽出するデータ翻訳手段としてのプログラムを適用することで、地盤部分については解析用3次元ばね・質点系モデルに変換し、地下構造物部分については解析用構造体要素・地盤ばねモデルに変換して、全体系の地震応答解析(全体解析)を行う。
【0031】
なお、ここで解析用構造体要素というのは、例えば地下構造物がトンネルの場合において、トンネルを模した梁を考えた場合の梁要素などである。
【0032】
全体解析の結果が、特定の要件(基準値)を満たさない場合には、地下構造物(周辺地盤に関する地盤改良などの対処も含む)に関する設計変更が必要であり、要件を満たす場合には、耐震性等が懸念される個所を抽出し、解析に必要なデータを抽出するデータ翻訳手段としてのプログラムを適用することで、抽出した部分について前記3次元地盤・構造物モデルの中の抽出した部分をFEM解析モデルに変換し、詳細解析を行う。
【0033】
詳細解析の結果が、特定の要件(基準値)を満たさない場合には、地下構造物に関する設計変更が必要であり、設計変更したものについて基準値を満たすまで詳細解析を繰り返すことになる。
【0034】
請求項4は、請求項3において、前記FEM解析モデルによる詳細解析により耐震性が懸念される個所について前記3次元地盤・構造物モデルを、さらにメッシュの細かい局部FEM解析モデルに変換し、該局部FEM解析モデルについてさらに詳細な解析を行うことを特徴とするものである。
【0035】
一例を挙げると、全体解析について、解析用3次元ばね・質点系モデルとして一辺が10km前後の矩形の範囲を解析範囲を考えた場合において、中間の局所解析として、長辺が1km程度の範囲について3次元線形FEM解析を行い、その結果からさらに細かい局所解析として、長辺が100m程度の範囲について3次元非線形FEM解析を行う場合などが相当する。
【0036】
請求項5は、請求項3または4において、前記地下構造物がトンネル構造物であることを特徴とするものである。
【0037】
請求項3、4においては、適用対象を大規模構造物一般としているのに対し、請求項5は、本発明の適用対象として、需要が多いと考えられる地下の鉄道や道路構造物としてのトンネル構造物を限定したものである。
【発明の効果】
【0038】
本発明では、既存の各種データについて数値解析との親和性を高める形で、地盤や地形の3次元数値情報および地下構造物の3次元データを用い、構造物の安全性評価を効率良く行うことができる。
【0039】
全体系−局部系(構造部位)を総合的に評価するシステムにより、各種構造解析をシームレスにつなげることができ、全体系−局部系の解析を容易にしている。また、懸念個所を抽出し、そのまま詳細な解析を加えることができるという点でも、構造物の安全性評価を効率的に行うことができる。
【0040】
このように、3次元モデルを用いた解析結果を直ちに設計に反映でき、例えば、道路・鉄道路線が計画される場合に、各構造部位の挙動を反映した全体系の挙動の検討を同時に行うことができるため、路線選定および計画に構造物の総合的な挙動を反映させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
図1は、本発明の地下構造物の安全評価システムの一実施形態をフローチャートに示したものである。
【0042】
フローチャートの右側は、例えば対象となる地域に地下鉄路線などの大規模地下構造物を建設する場合の設計手順に相当し、例えば、まず地盤とシールドトンネルや立坑、その他の付帯構造物全体を3次元データで与え、全体解析を行う。
【0043】
全体解析の結果が、安全性やコスト、その他の基準(条件)を満たしている場合は、それに基づいた設計を行うことができる。全体解析の結果が、所定の必要な基準を満たさない場合には、続いて懸念される局部の詳細解析を行う。局部の詳細解析においても必要な基準を満たしていない場合は、設計における構造物データを変更し、基準を満たすまでその作業を繰り返す。
【0044】
詳細解析の対象となる局部としては、全体解析の結果で基準を満たさない部分の他、必要に応じ、連続する断面において代表的な形態や条件を与える部分あるいは最も不利と考えられる部分、立坑とシールドトンネルの接合部、その他断面が急変する箇所、構造が複雑な箇所などを加えてもよい。
【0045】
詳細解析の結果が、安全性やコスト、その他の基準を満たしている場合は、一応、設計が完了することになる。
【0046】
フローチャートの左側の部分は入力データであり、ここでは地盤データと構造物データの2種があり、それぞれデータ翻訳手段としての翻訳ソフトにより、3次元モデルによる解析に使用可能なデータに変換して解析が行われる。この変換は形式的には全体解析および詳細解析に共通するものであるが(解析方法によっては、異なる場合もある)、詳細解析では全体解析より分割単位が小さくなり、局部系についての詳細な解析がなされる。
【0047】
図2は、本発明の安全評価システムを地下構造物としてのシールドトンネルの計画に適用した場合の一実施形態におけるフローを視覚化して示したものであり、解析の流れは以下のようになる。
【0048】
(1) 3次元地盤・地下構造物モデル
ボーリング調査等の地盤調査結果から、設計対象となる地下構造物全体を包含する3次元地盤モデルAを3次元CADで構築する。この3次元地盤モデルAは、例えば、標高、土層構成、各層地盤の質量、およびS波速度・P波速度・ポアソン比のうちいずれか2つを有するものとする。
【0049】
併せてこの3次元地盤モデルAに、地下構造物としてのトンネルを構造物モデルBとしてレイアウトする。設計における構造物情報としては、例えば、位置、形状、中心線形、およびヤング率・せん断弾性係数・ポアソン比のうちいずれか2つを含むものとする。
【0050】
3次元地盤モデルAと構造物モデルBの組み合わせにより、3次元地盤・構造物モデルが構成される。
【0051】
(2) 全体解析
データ翻訳手段としての自動変換プログラムを介して、3次元地盤・地下構造物モデルのうち地盤部分を解析用のばね・質点系モデルaに自動変換し、このばね・質点系モデルaにより地盤の地震応答解析を実施する。その結果から、トンネル位置での地盤の応答変位を抽出する。
【0052】
次に、データ翻訳手段としての自動変換プログラムを介して、3次元地盤・地下構造物モデルのトンネル位置を、トンネルを模した解析用の梁・地盤ばねモデルbに自動変換し、この梁・地盤ばねモデルbを用いて3次元応答変位法で、トンネルの断面力、変形を基準値と比較する。照査結果から、耐震性が懸念される個所を抽出する。
【0053】
(3) 詳細解析
全体解析の結果、耐震性が懸念される個所について、データ翻訳手段としての自動変換プログラムを介して、3次元地盤・地下構造物モデルを、FEM解析モデルf1(ここでは3次元動的FEM解析を想定)に自動変換し、このFEM解析モデルf1について詳細解析を実施する。
【0054】
詳細解析結果を基準値と比較・照査し、例えば、図2の解析結果のように色分けなどにより評価する(作図上、色は表現していない)。このような解析結果の図から、例えば、トンネル曲線部あるいは立坑とシールドトンネルの接続部で応力が集中しているなどの状況が確認し、発生応力を設計値と比較する。
【0055】
なお、以上の解析において、データ翻訳手段としての自動変換プログラムは、全体解析用のものと詳細解析用のもの、あるいは地盤用のものと地下構造物用のものを、それぞれ個別に用意してもよいし、統合した単一のプログラムとしてもよい。
【0056】
図3は、解析モデルの詳細解析(局部解析)における要素分割の一例として、立坑2とシールドトンネル3の接続部における要素分割を示したものである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の地下構造物の安全評価システムの一実施形態を示すフローチャートである。
【図2】本発明を地下構造物としてのシールドトンネルの計画に適用した場合のフローを視覚化して示した説明図である。
【図3】詳細解析(局部解析)における要素分割の一例を示す3次元FEM解析モデルの図である。
【符号の説明】
【0058】
1…地盤、2…立坑、3…トンネル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象地盤に関する既知のデータまたは測定データである地盤データと、該対象地盤内に構築される地下構造物の設計に関する構造物データを基に、前記地下構造物の静的・動的荷重に対する安全性を評価するシステムであって、対象地盤および地下構造物を3次元要素に分割した3次元モデルで表わし、前記地盤データを入力するためのデータ入力手段と、入力されたデータを記憶するための記憶手段と、前記地盤データおよび構造物データから前記3次元要素に関する必要なデータを抽出して前記3次元モデルによる解析に使用可能なデータに変換するためのデータ翻訳手段と、前記データ翻訳手段によって変換された前記3次元モデルの地盤データおよび構造物データに基づいて、静的または動的荷重が作用したときの地下構造物の状態を解析し、その安全性を評価する3次元解析手段とを有することを特徴とする地下構造物の安全評価システム。
【請求項2】
前記構造物データについて、地下構造物の3次元要素を、大きな分割単位で表わした全体系データの分割単位と、より小さい分割単位で表わした局部系データの分割単位を含む2段階以上の分割単位で表わし、前記全体系データを用いて解析を行い、地下構造物が全体系の安全性に関する所定の基準を満たさない場合には、該地下構造物の少なくとも基準を満たさなかった部分およびその近傍についてより小さい分割単位で表わした局部系データを用いて解析を行い、局部系についても局部系の安全性に関する所定の基準を満たさない場合には、設計変更による新たな構造物データを用いて解析を行い、地下構造物が全体系または局部系の解析のいずれかで安全性に関する所定の基準を満たすまで解析を繰り返すように構成したことを特徴とする請求項1記載の地下構造物の安全評価システム。
【請求項3】
対象地盤に関する標高、土層構成、各層地盤の質量、および少なくともS波速度とP波速度とポアソン比のうちいずれか2つを含む既知のデータまたは測定データである地盤データをデータ入力手段によりコンピュータに入力するとともに、該対象地盤内に構築される地下構造物の設計に関する位置、形状、中心線形、および少なくともヤング率とせん断弾性係数とポアソン比のうちいずれか2つを含む構造物データを与えて3次元地盤・構造物モデルを構築し、前記3次元地盤・構造物モデルのうち地盤部分をデータ翻訳手段により解析用3次元ばね・質点系モデルに変換し、構造物部分をデータ翻訳手段により解析用構造体要素・地盤ばねモデルに変換して、全体解析を行い、耐震性が懸念される個所を抽出し、抽出した部分について前記3次元地盤・構造物モデルを、FEM解析モデルに変換し、該FEM解析モデルについて詳細解析を行うことを特徴とする地下構造物の安全評価方法。
【請求項4】
前記FEM解析モデルによる詳細解析により耐震性が懸念される個所について前記3次元地盤・構造物モデルを、さらにメッシュの細かい局部FEM解析モデルに変換し、該局部FEM解析モデルについてさらに詳細な解析を行うことを特徴とする請求項3記載の地下構造物の安全評価方法。
【請求項5】
前記地下構造物がトンネル構造物であることを特徴とする請求項3または4記載の地下構造物の安全評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−133595(P2008−133595A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−318415(P2006−318415)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】