地下構造物の構築方法
【課題】従来の開削工法に比較して施工幅が小さく、狭隘な場所での施工が可能であり、短い作業帯で、かつ、長期にわたり停滞することもなく、周辺住民への迷惑度も低減でき、さらに、支保工材料も少なくでき、支保工の設置撤去の作業も軽減できて施工性の向上を図れる地下構造物の構築方法を得る。
【解決手段】開削工法により掘削し、掘削壁を土留壁1と切梁とで支保し、掘削溝内にコンクリート函体3を連続して縦列に敷設する地下構造物の構築方法において、前記函体3の据付け部用の切梁7と、これに先行する土留用の切梁6とを設置し、前記両切梁6、7をそれぞれ2段構造とし、他方の切梁に反力をとって一方の切梁を推進ジャッキ11、13で交互に前進させる自走式とした。
【解決手段】開削工法により掘削し、掘削壁を土留壁1と切梁とで支保し、掘削溝内にコンクリート函体3を連続して縦列に敷設する地下構造物の構築方法において、前記函体3の据付け部用の切梁7と、これに先行する土留用の切梁6とを設置し、前記両切梁6、7をそれぞれ2段構造とし、他方の切梁に反力をとって一方の切梁を推進ジャッキ11、13で交互に前進させる自走式とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、市街地などの地下にコンクリート函体により構築する雨水幹線などの地下構造物の構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば開削工法によりコンクリート函体を連続して縦列に埋設し、雨水幹線などを構築しているが、構築方法として従来は例えば、図21に示すようにバックホーなどの掘削機で施工場所を掘削し、両側の掘削壁を鋼矢板などの土留板で土留し、この土留壁1間に腹起し部材2と切梁21とによる支保工を施工して、掘削溝内にコンクリート函体3を敷設している。
【0003】
図中22は掘削溝の上方に設置される覆工板、23は覆工板受桁、24は桁受を示す。この工法は、土留用の鋼矢板、切梁21、支保工材、覆工板22などがリース材として豊富であり、汎用性があること、また、在来の工法であって施工方法が簡便かつ一般的に広く知られていることから、一般に採用されている。
【0004】
かかる施工法において、コンクリート函体3の敷設深さによっては、図21に示すように支保工の段数を2段以上にする必要がある。
【0005】
前記従来技術は、当業者間で一般的に行われているものであり、文献公知発明にかかるものではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来工法は、腹起し材のサイズ、コンクリート函体の幅、コンクリート函体設置後の埋め戻し幅などを考慮した施工幅を必要とし、図21に示すように両側に家屋25が近接しているような狭隘な場所では施工できないおそれがある。
【0007】
また、コンクリート函体の敷設深さによっては支保工の段数を2段以上にする必要があり、かかる場合は、函体敷設に伴う支保工の盛り替えが必要で作業が煩雑になる。
【0008】
さらに、施工場所の全線または施工サイクルスパンごとに一連の作業を行うため、作業帯が長く、長期にわたり停滞するので、周辺住民に対する迷惑度が大きい。
【0009】
本発明は前記従来例の不都合を解消するものとして、従来の開削工法に比較して施工幅が小さく、狭隘な場所での施工が可能であり、短い作業帯で、かつ、長期にわたり停滞することもなく、周辺住民への迷惑度も低減でき、さらに、支保工材料も少なくでき、支保工の設置撤去の作業も軽減できて施工性の向上を図れる地下構造物の構築方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明は、開削工法により掘削し、掘削壁を土留壁と切梁とで支保し、掘削溝内に函体を連続して縦列に敷設する地下構造物の構築方法において、前記函体の据付け部用の切梁と、これに先行する土留用の切梁とを設置し、前記両切梁をそれぞれ2段構造とし、他方の切梁に反力をとって一方の切梁を推進ジャッキで交互に前進させる自走式としたことを特徴とすることを要旨とするものである。
【0011】
請求項1記載の本発明によれば、2段構成の切梁は、他方の段の切梁に反力をとって一方の段の切梁が前進し、これを交互に繰り返して尺取虫的に自走式で前進する。よて、支保工材料を少なくでき、また、支保工の設置撤去の作業も少なくなり、施工性が向上する。
【0012】
また、従来の開削工法に比較して作業帯が短く、施工の進行に伴い作業帯が順次移動するから、周辺住民への迷惑度が軽減する。
【0013】
さらに、施工幅も小さくでき狭隘な場所での施工が可能となる。
【0014】
請求項2記載の発明は、前記土留用の切梁は、掘削溝の深さ方向において上段と中段に配置し、後方の函体に反力をとって前進する架台上に設置されることを要旨とするものである。
【0015】
請求項2記載の本発明によれば、函体の敷設深さによって切梁を2段にする場合でも、支保工の盛り替えが不要で施工性がよい。そして、切梁が設置される架台も自走するから作業帯の移動はスムーズに行える。
【0016】
請求項3記載の発明は、函体の据付け部用の切梁は、先行する土留用の切梁と上部と敷設した函体の上部に設置されることを要旨とするものである。
【0017】
請求項3記載の本発明によれば、函体の据付け部用の切梁は、先行する土留用の切梁と上部と敷設した函体の上部に設置されるから、前記切梁設置のための部材を別途格別に用意する必要がなく、作業現場に設置する部材の削減を図れるだけでなく、作業性も向上できる。
【発明の効果】
【0018】
以上述べたように本発明の地下構造物の構築方法は、開削工法で函体を敷設する場合に、切梁を自走式としたから、狭隘な場所での施工も可能となり、作業帯も短くでき、かつ、施工の進行に伴い作業帯を順次移動できるから周辺住民への迷惑度も軽減できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面について本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は本発明の地下構造物の構築方法の実施形態を示す要部である切梁の側面図、図2は同上要部である先行土留用の切梁の平面図、図3は同上要部である先行土留用とコンクリート函体据付け部用の切梁の正面図、図4はコンクリート函体の据付け部用の切梁の平面図で、地下構造物として複数のコンクリート函体3を縦列に連続させて埋設し雨水幹線などを構築する場合を例にとって説明する。
【0020】
図5に示すように開削工法によりバックホーなどの掘削機4で掘削した掘削溝5の掘削壁に鋼矢板などを打設して土留壁1を築造し、この両側の土留壁1間に先行土留用の切梁6とコンクリート函体据付け部用の切梁7とが配設される。図中8は薄型の板状の腹起し部材を示す。
【0021】
先行土留用の切梁6から説明する。切梁6はやぐら状の架台9の上に上部と中部の2段構造で設置され、架台9は架台推進ジャッキ10により自走式に前進するよう構成されている。
【0022】
上部と中部の2段構造の切梁6は、それぞれがさらに前後に2基配置されるとともに上下2段に構成されており、下段の切梁6aの上に上段の切梁6bがスライド自在に組合されており、架台9は下段の切梁6aに対してスライド自在に組合されている。
【0023】
この前後の切梁6間にはそれぞれ推進ジャッキ11が配設されており、自走式に構成される。図中12は鋼矢板支保工ジャッキを示す。
【0024】
コンクリート函体3の据付け部用の切梁7は、図1、図3、図4に示すように前記上段の切梁6aの上部に上下2段構成で配設され、下段の切梁7aの上に上段の切梁7bがスライド自在に組合わさり、下段の切梁7aは前記上部に位置する切梁6の上段の切梁6bの上に架台9を介してスライド自在に配置される。
【0025】
上下段の切梁7a、7bはそれぞれ前後に3基配設され、進行方向1番目と2番目の切梁7の間に推進ジャッキ13が配設されて自走式に構成される。
【0026】
進行方向2番目と3番目の切梁7は結合部材14で連結され、間隔が固定され、この2番目と3番目の切梁7の間に形成される空間にコンクリート函体3が吊り下されることになる。
【0027】
次にかかる切梁6、7を支保工としてコンクリート函体3を敷設する方法の概要を図5について説明する。図5は、現況の水路に雨水幹線としてのコンクリート函体3を敷設する場合で、施工場所の両側に民家が近接し、用地幅が狭隘なケースである。
【0028】
第1工程として図5(a)に示すように路線部両側に鋼矢板を打設して土留壁1を構築し、この両側の土留壁1間に先行土留用の切梁6とコンクリート函体据付け部用の切梁7とを配設する。
【0029】
そして、第2工程として、図5(b)に示すように鋼矢板上部に設置した覆工板上に掘削機4を搭載し、掘削を行いながら上部、中部と2段に配設した先行土留用の切梁6を自走式で前進させ、さらにその後方のコンクリート函体据付け部用の切梁7を自走させながら、走行クレーン17で搬入したコンクリート函体3をコンクリート函体据付け部用の切梁7間に敷設する。
【0030】
図中15はグラウトホース、16は基礎を示す。次に、図5(c)のように第3工程として裏込注入し、第4工程としてコンクリート函体据付け部用の切梁7を自走で前進させた後(図5d参照)、掘削機4で前面を掘削して先行土留用の切梁6を自走させて前進させる(図5e参照)。
【0031】
最後の工程として先行土留用の切梁6の下方で基礎16を構築し、覆工板を前方に移動して、図5(b)の第2工程に戻り、コンクリート函体3を敷設する。かかる工程を繰り返して水路を構築するが、切梁支保工を自走式とすることで、狭隘な場所での施工も可能となる。
【0032】
先行土留用の切梁6およびコンクリート函体据付け用の切梁7は、ともに前記のように自走式であるが、次に自走動作を図6〜図20について説明する。
【0033】
図6は、コンクリート函体3が、2番目と3番目のコンクリート函体据付け用の切梁7の間の空間に吊り下されて敷設され、裏込注入打設された状態である。この状態のとき、先行土留用の切梁6のうちの、下段の切梁6aに対して上段の切梁6bは前進状態にあり先端位置がずれている。また、コンクリート函体据付け用の切梁7は、上下段の切梁7a、7bの先端位置は同位置にある。
【0034】
この状態から、まず図7に示すように、コンクリート函体据付け用の切梁7のうちの上段の切梁7bのみを推進ジャッキ13を収縮させて前進させる。このとき、前進のための反力は架台9に固定されている下段の切梁7aから得る。また、前進するとき、鋼矢板支保工ジャッキ12は緩めておく。
【0035】
次に図8に示すように下段の切梁7aも推進ジャッキ13を収縮させて前進させる。
【0036】
この状態で掘削機で切羽を掘削し、上部の切梁7のうちの下段の切梁6aを推進ジャッキ11で前進させる。この前進は上段の切梁6bに反力をとって行う(図9参照)。
【0037】
さらに切羽を掘削して図10に示すように中部の先行土留用の切梁6のうちの下段の切梁6aを推進ジャッキ11で前進させる。この前進は上段の切梁6bに反力をとって行う。
【0038】
このようにして切梁6を前進させたならば、図11に示すように架台推進ジャッキ10を伸張して架台9を前進させる。このときの反力は、後方のコンクリート函体3から得る。
【0039】
次に図12に示すように先行土留用の切梁6の上部と中部のそれぞれの上段の切梁6bを、下段の切梁6aに反力をとって推進ジャッキ11で自走式に前進させる。
【0040】
こうして上段の切梁6bが前進したならば、図13に示すようにコンクリート函体据付け用の切梁7の上下段の推進ジャッキ13を伸張することで、第1番目の切梁7を前進させる。
【0041】
次に、図14、図15に示すように上下段の推進ジャッキ13を順次収縮して上段の切梁7b、下段の切梁7aを順次前進させる。
【0042】
次に図16、図17に示すように切羽を掘削した後、先行土留用の切梁6の上部と中部のそれぞれの下段の切梁6aを推進ジャッキ11で前進させる。推進の反力は上段の切梁6bにとる。
【0043】
こうして下段の切梁6aを前進させたならば、次に図18に示すように上部と中部のそれぞれの上段の切梁6bを推進ジャッキ11で前進させる。
【0044】
次に図19に示すように函体据付用の切梁7の推進ジャッキ13を伸張して、図20に示すように第2番目と第3番目の切梁の間の空間にコンクリート函体3を吊下げて所定位置に設置する。この状態で図6に示した状態に戻り、これを繰返し尺取虫的に切梁6、7を順次自走式で前進させながらコンクリート函体3を敷設する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の地下構造物の構築方法の実施形態を示す要部である切梁の側面図である。
【図2】本発明の地下構造物の構築方法の実施形態を示す要部である先行土留用の切梁の平面図である。
【図3】本発明の地下構造物の構築方法の実施形態を示す要部である切梁の正面図である。
【図4】本発明の地下構造物の構築方法の実施形態を示す要部であるコンクリート函体据付け用の切梁の平面図である。
【図5】本発明の地下構造物の構築方法の実施形態を示す水路に実施した場合の工程図である。
【図6】本発明の地下構造物の構築方法の実施形態を示す要部である自走式切梁工法の第1工程図である。
【図7】本発明の地下構造物の構築方法の実施形態を示す要部である自走式切梁工法の第2工程図である。
【図8】本発明の地下構造物の構築方法の実施形態を示す要部である自走式切梁工法の第3工程図である。
【図9】本発明の地下構造物の構築方法の実施形態を示す要部である自走式切梁工法の第4工程図である。
【図10】本発明の地下構造物の構築方法の実施形態を示す要部である自走式切梁工法の第5工程図である。
【図11】本発明の地下構造物の構築方法の実施形態を示す要部である自走式切梁工法の第6工程図である。
【図12】本発明の地下構造物の構築方法の実施形態を示す要部である自走式切梁工法の第7工程図である。
【図13】本発明の地下構造物の構築方法の実施形態を示す要部である自走式切梁工法の第8工程図である。
【図14】本発明の地下構造物の構築方法の実施形態を示す要部である自走式切梁工法の第9工程図である。
【図15】本発明の地下構造物の構築方法の実施形態を示す要部である自走式切梁工法の第10工程図である。
【図16】本発明の地下構造物の構築方法の実施形態を示す要部である自走式切梁工法の第11工程図である。
【図17】本発明の地下構造物の構築方法の実施形態を示す要部である自走式切梁工法の第12工程図である。
【図18】本発明の地下構造物の構築方法の実施形態を示す要部である自走式切梁工法の第13工程図である。
【図19】本発明の地下構造物の構築方法の実施形態を示す要部である自走式切梁工法の第14工程図である。
【図20】本発明の地下構造物の構築方法の実施形態を示す要部である自走式切梁工法の第15工程図である。
【図21】従来の地下構造物構築方法の縦断正面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 土留壁 2 腹起し部材
3 コンクリート函体 4 掘削機
5 掘削溝 6、6a、6b 切梁
7、7a、7b 切梁 8 腹起し部材
9 架台 10 架台推進ジャッキ
11 推進ジャッキ 12 鋼矢板支保工ジャッキ
13 推進ジャッキ 14 結合部材
15 グラウトホース 16 基礎
17 走行クレーン 21 切梁
22 覆工板 23 覆工板受桁
24 桁受 25 家屋
【技術分野】
【0001】
本発明は、市街地などの地下にコンクリート函体により構築する雨水幹線などの地下構造物の構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば開削工法によりコンクリート函体を連続して縦列に埋設し、雨水幹線などを構築しているが、構築方法として従来は例えば、図21に示すようにバックホーなどの掘削機で施工場所を掘削し、両側の掘削壁を鋼矢板などの土留板で土留し、この土留壁1間に腹起し部材2と切梁21とによる支保工を施工して、掘削溝内にコンクリート函体3を敷設している。
【0003】
図中22は掘削溝の上方に設置される覆工板、23は覆工板受桁、24は桁受を示す。この工法は、土留用の鋼矢板、切梁21、支保工材、覆工板22などがリース材として豊富であり、汎用性があること、また、在来の工法であって施工方法が簡便かつ一般的に広く知られていることから、一般に採用されている。
【0004】
かかる施工法において、コンクリート函体3の敷設深さによっては、図21に示すように支保工の段数を2段以上にする必要がある。
【0005】
前記従来技術は、当業者間で一般的に行われているものであり、文献公知発明にかかるものではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来工法は、腹起し材のサイズ、コンクリート函体の幅、コンクリート函体設置後の埋め戻し幅などを考慮した施工幅を必要とし、図21に示すように両側に家屋25が近接しているような狭隘な場所では施工できないおそれがある。
【0007】
また、コンクリート函体の敷設深さによっては支保工の段数を2段以上にする必要があり、かかる場合は、函体敷設に伴う支保工の盛り替えが必要で作業が煩雑になる。
【0008】
さらに、施工場所の全線または施工サイクルスパンごとに一連の作業を行うため、作業帯が長く、長期にわたり停滞するので、周辺住民に対する迷惑度が大きい。
【0009】
本発明は前記従来例の不都合を解消するものとして、従来の開削工法に比較して施工幅が小さく、狭隘な場所での施工が可能であり、短い作業帯で、かつ、長期にわたり停滞することもなく、周辺住民への迷惑度も低減でき、さらに、支保工材料も少なくでき、支保工の設置撤去の作業も軽減できて施工性の向上を図れる地下構造物の構築方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明は、開削工法により掘削し、掘削壁を土留壁と切梁とで支保し、掘削溝内に函体を連続して縦列に敷設する地下構造物の構築方法において、前記函体の据付け部用の切梁と、これに先行する土留用の切梁とを設置し、前記両切梁をそれぞれ2段構造とし、他方の切梁に反力をとって一方の切梁を推進ジャッキで交互に前進させる自走式としたことを特徴とすることを要旨とするものである。
【0011】
請求項1記載の本発明によれば、2段構成の切梁は、他方の段の切梁に反力をとって一方の段の切梁が前進し、これを交互に繰り返して尺取虫的に自走式で前進する。よて、支保工材料を少なくでき、また、支保工の設置撤去の作業も少なくなり、施工性が向上する。
【0012】
また、従来の開削工法に比較して作業帯が短く、施工の進行に伴い作業帯が順次移動するから、周辺住民への迷惑度が軽減する。
【0013】
さらに、施工幅も小さくでき狭隘な場所での施工が可能となる。
【0014】
請求項2記載の発明は、前記土留用の切梁は、掘削溝の深さ方向において上段と中段に配置し、後方の函体に反力をとって前進する架台上に設置されることを要旨とするものである。
【0015】
請求項2記載の本発明によれば、函体の敷設深さによって切梁を2段にする場合でも、支保工の盛り替えが不要で施工性がよい。そして、切梁が設置される架台も自走するから作業帯の移動はスムーズに行える。
【0016】
請求項3記載の発明は、函体の据付け部用の切梁は、先行する土留用の切梁と上部と敷設した函体の上部に設置されることを要旨とするものである。
【0017】
請求項3記載の本発明によれば、函体の据付け部用の切梁は、先行する土留用の切梁と上部と敷設した函体の上部に設置されるから、前記切梁設置のための部材を別途格別に用意する必要がなく、作業現場に設置する部材の削減を図れるだけでなく、作業性も向上できる。
【発明の効果】
【0018】
以上述べたように本発明の地下構造物の構築方法は、開削工法で函体を敷設する場合に、切梁を自走式としたから、狭隘な場所での施工も可能となり、作業帯も短くでき、かつ、施工の進行に伴い作業帯を順次移動できるから周辺住民への迷惑度も軽減できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面について本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は本発明の地下構造物の構築方法の実施形態を示す要部である切梁の側面図、図2は同上要部である先行土留用の切梁の平面図、図3は同上要部である先行土留用とコンクリート函体据付け部用の切梁の正面図、図4はコンクリート函体の据付け部用の切梁の平面図で、地下構造物として複数のコンクリート函体3を縦列に連続させて埋設し雨水幹線などを構築する場合を例にとって説明する。
【0020】
図5に示すように開削工法によりバックホーなどの掘削機4で掘削した掘削溝5の掘削壁に鋼矢板などを打設して土留壁1を築造し、この両側の土留壁1間に先行土留用の切梁6とコンクリート函体据付け部用の切梁7とが配設される。図中8は薄型の板状の腹起し部材を示す。
【0021】
先行土留用の切梁6から説明する。切梁6はやぐら状の架台9の上に上部と中部の2段構造で設置され、架台9は架台推進ジャッキ10により自走式に前進するよう構成されている。
【0022】
上部と中部の2段構造の切梁6は、それぞれがさらに前後に2基配置されるとともに上下2段に構成されており、下段の切梁6aの上に上段の切梁6bがスライド自在に組合されており、架台9は下段の切梁6aに対してスライド自在に組合されている。
【0023】
この前後の切梁6間にはそれぞれ推進ジャッキ11が配設されており、自走式に構成される。図中12は鋼矢板支保工ジャッキを示す。
【0024】
コンクリート函体3の据付け部用の切梁7は、図1、図3、図4に示すように前記上段の切梁6aの上部に上下2段構成で配設され、下段の切梁7aの上に上段の切梁7bがスライド自在に組合わさり、下段の切梁7aは前記上部に位置する切梁6の上段の切梁6bの上に架台9を介してスライド自在に配置される。
【0025】
上下段の切梁7a、7bはそれぞれ前後に3基配設され、進行方向1番目と2番目の切梁7の間に推進ジャッキ13が配設されて自走式に構成される。
【0026】
進行方向2番目と3番目の切梁7は結合部材14で連結され、間隔が固定され、この2番目と3番目の切梁7の間に形成される空間にコンクリート函体3が吊り下されることになる。
【0027】
次にかかる切梁6、7を支保工としてコンクリート函体3を敷設する方法の概要を図5について説明する。図5は、現況の水路に雨水幹線としてのコンクリート函体3を敷設する場合で、施工場所の両側に民家が近接し、用地幅が狭隘なケースである。
【0028】
第1工程として図5(a)に示すように路線部両側に鋼矢板を打設して土留壁1を構築し、この両側の土留壁1間に先行土留用の切梁6とコンクリート函体据付け部用の切梁7とを配設する。
【0029】
そして、第2工程として、図5(b)に示すように鋼矢板上部に設置した覆工板上に掘削機4を搭載し、掘削を行いながら上部、中部と2段に配設した先行土留用の切梁6を自走式で前進させ、さらにその後方のコンクリート函体据付け部用の切梁7を自走させながら、走行クレーン17で搬入したコンクリート函体3をコンクリート函体据付け部用の切梁7間に敷設する。
【0030】
図中15はグラウトホース、16は基礎を示す。次に、図5(c)のように第3工程として裏込注入し、第4工程としてコンクリート函体据付け部用の切梁7を自走で前進させた後(図5d参照)、掘削機4で前面を掘削して先行土留用の切梁6を自走させて前進させる(図5e参照)。
【0031】
最後の工程として先行土留用の切梁6の下方で基礎16を構築し、覆工板を前方に移動して、図5(b)の第2工程に戻り、コンクリート函体3を敷設する。かかる工程を繰り返して水路を構築するが、切梁支保工を自走式とすることで、狭隘な場所での施工も可能となる。
【0032】
先行土留用の切梁6およびコンクリート函体据付け用の切梁7は、ともに前記のように自走式であるが、次に自走動作を図6〜図20について説明する。
【0033】
図6は、コンクリート函体3が、2番目と3番目のコンクリート函体据付け用の切梁7の間の空間に吊り下されて敷設され、裏込注入打設された状態である。この状態のとき、先行土留用の切梁6のうちの、下段の切梁6aに対して上段の切梁6bは前進状態にあり先端位置がずれている。また、コンクリート函体据付け用の切梁7は、上下段の切梁7a、7bの先端位置は同位置にある。
【0034】
この状態から、まず図7に示すように、コンクリート函体据付け用の切梁7のうちの上段の切梁7bのみを推進ジャッキ13を収縮させて前進させる。このとき、前進のための反力は架台9に固定されている下段の切梁7aから得る。また、前進するとき、鋼矢板支保工ジャッキ12は緩めておく。
【0035】
次に図8に示すように下段の切梁7aも推進ジャッキ13を収縮させて前進させる。
【0036】
この状態で掘削機で切羽を掘削し、上部の切梁7のうちの下段の切梁6aを推進ジャッキ11で前進させる。この前進は上段の切梁6bに反力をとって行う(図9参照)。
【0037】
さらに切羽を掘削して図10に示すように中部の先行土留用の切梁6のうちの下段の切梁6aを推進ジャッキ11で前進させる。この前進は上段の切梁6bに反力をとって行う。
【0038】
このようにして切梁6を前進させたならば、図11に示すように架台推進ジャッキ10を伸張して架台9を前進させる。このときの反力は、後方のコンクリート函体3から得る。
【0039】
次に図12に示すように先行土留用の切梁6の上部と中部のそれぞれの上段の切梁6bを、下段の切梁6aに反力をとって推進ジャッキ11で自走式に前進させる。
【0040】
こうして上段の切梁6bが前進したならば、図13に示すようにコンクリート函体据付け用の切梁7の上下段の推進ジャッキ13を伸張することで、第1番目の切梁7を前進させる。
【0041】
次に、図14、図15に示すように上下段の推進ジャッキ13を順次収縮して上段の切梁7b、下段の切梁7aを順次前進させる。
【0042】
次に図16、図17に示すように切羽を掘削した後、先行土留用の切梁6の上部と中部のそれぞれの下段の切梁6aを推進ジャッキ11で前進させる。推進の反力は上段の切梁6bにとる。
【0043】
こうして下段の切梁6aを前進させたならば、次に図18に示すように上部と中部のそれぞれの上段の切梁6bを推進ジャッキ11で前進させる。
【0044】
次に図19に示すように函体据付用の切梁7の推進ジャッキ13を伸張して、図20に示すように第2番目と第3番目の切梁の間の空間にコンクリート函体3を吊下げて所定位置に設置する。この状態で図6に示した状態に戻り、これを繰返し尺取虫的に切梁6、7を順次自走式で前進させながらコンクリート函体3を敷設する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の地下構造物の構築方法の実施形態を示す要部である切梁の側面図である。
【図2】本発明の地下構造物の構築方法の実施形態を示す要部である先行土留用の切梁の平面図である。
【図3】本発明の地下構造物の構築方法の実施形態を示す要部である切梁の正面図である。
【図4】本発明の地下構造物の構築方法の実施形態を示す要部であるコンクリート函体据付け用の切梁の平面図である。
【図5】本発明の地下構造物の構築方法の実施形態を示す水路に実施した場合の工程図である。
【図6】本発明の地下構造物の構築方法の実施形態を示す要部である自走式切梁工法の第1工程図である。
【図7】本発明の地下構造物の構築方法の実施形態を示す要部である自走式切梁工法の第2工程図である。
【図8】本発明の地下構造物の構築方法の実施形態を示す要部である自走式切梁工法の第3工程図である。
【図9】本発明の地下構造物の構築方法の実施形態を示す要部である自走式切梁工法の第4工程図である。
【図10】本発明の地下構造物の構築方法の実施形態を示す要部である自走式切梁工法の第5工程図である。
【図11】本発明の地下構造物の構築方法の実施形態を示す要部である自走式切梁工法の第6工程図である。
【図12】本発明の地下構造物の構築方法の実施形態を示す要部である自走式切梁工法の第7工程図である。
【図13】本発明の地下構造物の構築方法の実施形態を示す要部である自走式切梁工法の第8工程図である。
【図14】本発明の地下構造物の構築方法の実施形態を示す要部である自走式切梁工法の第9工程図である。
【図15】本発明の地下構造物の構築方法の実施形態を示す要部である自走式切梁工法の第10工程図である。
【図16】本発明の地下構造物の構築方法の実施形態を示す要部である自走式切梁工法の第11工程図である。
【図17】本発明の地下構造物の構築方法の実施形態を示す要部である自走式切梁工法の第12工程図である。
【図18】本発明の地下構造物の構築方法の実施形態を示す要部である自走式切梁工法の第13工程図である。
【図19】本発明の地下構造物の構築方法の実施形態を示す要部である自走式切梁工法の第14工程図である。
【図20】本発明の地下構造物の構築方法の実施形態を示す要部である自走式切梁工法の第15工程図である。
【図21】従来の地下構造物構築方法の縦断正面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 土留壁 2 腹起し部材
3 コンクリート函体 4 掘削機
5 掘削溝 6、6a、6b 切梁
7、7a、7b 切梁 8 腹起し部材
9 架台 10 架台推進ジャッキ
11 推進ジャッキ 12 鋼矢板支保工ジャッキ
13 推進ジャッキ 14 結合部材
15 グラウトホース 16 基礎
17 走行クレーン 21 切梁
22 覆工板 23 覆工板受桁
24 桁受 25 家屋
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開削工法により掘削し、掘削壁を土留壁と切梁とで支保し、掘削溝内に函体を連続して縦列に敷設する地下構造物の構築方法において、前記函体の据付け部用の切梁と、これに先行する土留用の切梁とを設置し、前記両切梁をそれぞれ2段構造とし、他方の切梁に反力をとって一方の切梁を推進ジャッキで交互に前進させる自走式としたことを特徴とする地下構造物の構築方法。
【請求項2】
前記土留用の切梁は、掘削溝の深さ方向において上段と中段に配置し、後方の函体に反力をとって前進する架台上に設置される請求項1記載の地下構造物の構築方法。
【請求項3】
函体の据付け部用の切梁は、先行する土留用の切梁と上部と敷設した函体の上部に設置される請求項1記載の地下構造物の構築方法。
【請求項1】
開削工法により掘削し、掘削壁を土留壁と切梁とで支保し、掘削溝内に函体を連続して縦列に敷設する地下構造物の構築方法において、前記函体の据付け部用の切梁と、これに先行する土留用の切梁とを設置し、前記両切梁をそれぞれ2段構造とし、他方の切梁に反力をとって一方の切梁を推進ジャッキで交互に前進させる自走式としたことを特徴とする地下構造物の構築方法。
【請求項2】
前記土留用の切梁は、掘削溝の深さ方向において上段と中段に配置し、後方の函体に反力をとって前進する架台上に設置される請求項1記載の地下構造物の構築方法。
【請求項3】
函体の据付け部用の切梁は、先行する土留用の切梁と上部と敷設した函体の上部に設置される請求項1記載の地下構造物の構築方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2008−106530(P2008−106530A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−290899(P2006−290899)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(000189903)
【出願人】(501200491)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(000189903)
【出願人】(501200491)
【Fターム(参考)】
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