説明

地下構造物の構築方法

【課題】据付現場にて人手等を必要とせず、搬送後短時間で機能を発揮させることができる地下構造物の構築方法を提供する。
【解決手段】地下構造物1を組み立て、組立後の地下構造物を据付現場へ搬送し、地下構造物を、据付現場に予め形成された埋設空間20に、搬送状態のまま埋設する地下構造物の構築方法。組立後の構造物を袋状収容部材11に収容して搬送し、構造物を袋状収容部材と共に埋設空間に埋設することができる。袋状収容部材を用いることで、組立後の構造物の荷積みや、据付現場での荷卸しを容易に行うことができると共に、袋状収容部材も地下構造物の一部として機能させることができる。地下構造物を雨水貯留構造体とした場合には、遮水性の袋状収容部材を利用することができる。地下構造物を雨水浸透構造体とした場合には、透水性の袋状収容部材を利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の構造部材からなる構造物を地下に埋設する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地下又は地中には、地下鉄駅舎や地下駐車場等の大規模施設や、電気、電話、水道、ガス等のための共同溝、地下タンク、雨水貯留浸透構造体等、大小種々の構造物が埋設されている。
【0003】
上記地下構造物のうち、コンクリート製品単体からなる構造物等、埋設する前に既に構造物として完成しているものは、工場等から完成品として据付現場に搬送されて埋設される。一方、複数の構造部材からなる構造物は、搬送効率を考慮し、組立前の複数の構造部材を据付現場へ搬送し、据付現場にて複数の構造部材を用いて構造体を組み立てた後地下に埋設したり、構造物の組立と埋設を並行して行う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記複数の構造部材からなる地下構造物の構築方法では、搬送効率は高まるものの、据付現場において構造体を組み立てる必要があるため、組立作業に人手や組立スペースが必要になると共に、搬送後に構造物の機能を発揮させるまでに長い時間が掛かるという問題があった。特に、地震等の被災地では、これらの問題が顕著であった。
【0005】
そこで、本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、据付現場において組立作業に要する人手や組立スペースが不要で、搬送後短時間で機能を発揮させることができる地下構造物の構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本願は、地下構造物の構築方法であって、複数の構造部材からなる構造物を組み立て、該構造物を組み立てた状態で据付現場へ搬送し、該構造物を、前記据付現場に形成された埋設空間に、搬送状態のまま埋設することを特徴とする。
【0007】
そして、本発明によれば、地下に埋設される構造物を組み立てた後搬送するため、据付現場において人手や組立スペースを必要としない。また、予め形成された埋設空間に、地下構造物を搬送状態のままで埋設するため、搬送後短時間で構造物の機能を発揮させることができる。さらに、構造物の在庫管理・搬入・施工の一連の作業を安全、容易かつ正確に行うことができる。
【0008】
上記地下構造物の構築方法において、前記構造物を組み立てた状態で袋状収容部材に収容して搬送し、該構造物を該袋状収容部材と共に前記埋設空間に埋設することができる。袋状収容部材を用いて搬送することで、組立後の構造物の荷積みや、据付現場での荷卸しをリフト等を用いて容易に行うことができると共に、袋状収容部材も地下構造物の一部として機能させることができる。また、袋状収容部材によって内部の構造物を保護することができる。さらに、袋状収容部材を色分けしたり、文字や図柄を直接袋状収容部材の外面に表記することができ、管理や視認性、デザイン性の向上を図ることも可能となる。
【0009】
上記地下構造物の構築方法において、前記地下構造物を雨水貯留構造体とし、前記袋状収容部材に遮水性を有するものを用いることができる。これにより、埋設時に別途遮水部材で雨水貯留構造体を覆う必要がなく、埋設作業を容易に行うことができると共に、搬送後、より迅速に雨水貯留構造体の機能を発揮させることが可能となる。
【0010】
また、前記地下構造物を雨水浸透構造体とし、前記袋状収容部材に透水性を有するものを用いることができる。これにより、埋設時に別途浸透部材で雨水浸透構造体を覆う必要がなく、埋設作業を容易に行うことができると共に、搬送後、より迅速に雨水浸透構造体の機能を発揮させることが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、据付現場において組立作業に要する人手や組立スペースが不要で、搬送後短時間で機能を発揮させることができる地下構造物の構築方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る地下構造物の構築方法の一実施の形態を示すフローチャートであり、(a)は地下構造物の組立工程、(b)は荷積み工程、(c)は搬送工程、(d)は荷卸し工程、(e)は埋設工程、(f)は埋設完了状態を各々示す。
【図2】本発明に係る地下構造物の構築方法を適用した雨水貯留構造体を示す図であって、(a)は正面図、(b)は上面図、(c)は底面図である。である。
【図3】本発明に係る地下構造物の構築方法で袋状収容部材として使用するフレコンバッグを示す斜視図であって、(a)は構造体収容前、(b)は構造体収容後を各々示す。
【図4】図2に示した雨水貯留構造体の埋設した状態を示す概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明においては、地下構造物として雨水貯留構造体を構築する場合を例にとって説明する。
【0014】
図1は、本発明に係る地下構造物の構築方法の一実施の形態を示し、以下各々の工程について説明するが、まず、図1(a)の組立工程において組み立てられる雨水貯留構造体の構造について説明する。
【0015】
図2に示すように、この雨水貯留構造体(以下、適宜「構造体」と略称する)1は、大別して、面板部材3〜5と、側板部材9とを組み合わせて形成された本体2と、本体2の上部に設けられ、天井部が開閉可能な2つの桝7(7A、7B)とで構成される。尚、図2(b)は、図2(a)に示した桝7の蓋7aを外した状態を示している。
【0016】
面板部材3〜5、及び側板部材9は、プラスチック材料や、プラスチック材料と無機粉体とを混合した複合材料で成形され、これらの使用枚数を増減することで、構造体1の全体寸法を適宜調整することができる。
【0017】
面板部材3は、全体的に略々正四角形状に形成され、少なくとも2組の対向辺組を有する。面板部材3には、多数の開口部3aが穿設されると共に、相対向する2辺は互いに対応する位置に凸部3b及び凹部3cを有する。
【0018】
面板部材4も、面板部材3と同様に、全体的に略々正四角形状に形成され、少なくとも2組の対向辺組を有する。面板部材4には、多数の開口部4aが穿設されると共に、相対向する2辺は互いに対応する位置に凸部4b及び凹部4cを有する。図2(b)において、右上に位置する面板部材4の中央部には、円形の開口部4dが穿設される。また、開口部4dには、支持部材4eの中央部に手動ポンプ取付口4fが穿設される。一方、左下に位置する面板部材4の開口部4hには、底版フィルタ4gが設けられる。
【0019】
面板部材5も、面板部材3、面板部材4と同様に、全体的に略々正四角形状に形成され、少なくとも2組の対向辺組を有する。面板部材5には、多数の開口部5aが穿設されると共に、相対向する2辺は互いに対応する位置に凸部5b及び凹部5cを有する。面板部材5の中央部には、コーナー部を有する正方形状に開口部5dが穿設される。
【0020】
上記面板部材3及び面板部材4は、各々の凸部3bと凹部4cとが、また、凹部3cと凸部4bとが鳩尾継を構成して結合される。また、隣接する面板部材5も、凸部5bと凹部5cとが、鳩尾継を構成して結合される。
【0021】
側板部材9は、多数の開口部9aを有すると共に、コーナーアングル9bを介して直交する2つの面を含むL形の形状を有する。側板部材9をL形ではなく、平板状に形成してもよい。側板部材9は、面板部材3〜5の一面と、凹凸嵌合により結合される。隣接する上下の側板部材9は、中間板10によって連結される。
【0022】
上記のようにして組み立てられた本体2の上部には、面板部材4の開口部4d及び開口部4hの開口形状に合わせて形成された桝7が設けられる。桝7の天井部には、開閉可能な蓋7aが装着される。
【0023】
図2(b)において、右上に位置する桝7Aは、取水用の点検口として機能する。また、左下に位置する桝7Bには、流入管(不図示)が接続されると共に、桝7Bは、流入管接続用の点検口として機能する。尚、図1(a)〜(e)において、構造体1の桝7は取り外している。
【0024】
図1(a)において構造体1を組み立てた後、図1(b)に示すように、組立後の構造体1を、フレコンバッグ(袋状収容部材)11に収容し、このフレコンバッグ11に収容された構造体1を、リフトLによりトラックTに積み込む。
【0025】
フレコンバッグ11は、図3(a)に示すように、取手部11aと、構造体1の寸法に合わせて成形された収容部11bとを備え、図3(b)に示すように、構造体1の収容後、構造体1の桝7を除く上面を被覆する遮水シート12を配置した状態で、上述のようにトラックTに積み込む。尚、遮水シート12をフレコンバック11の一部として構成することも可能である。
【0026】
そして、図1(c)において、トラックTにて、フレコンバッグ11に収容された構造体1を据付現場へ搬送する。
【0027】
次に、図1(d)に示すように、据付現場において、リフトLにより構造体1を収容したフレコンバッグ11を荷卸しして、図1(e)において、予め形成された埋設空間20に、フレコンバッグ11のままで埋設する。ここで、フレコンバッグ11は、上述のように遮水性を有し、また、構造体1の上面には、遮水シート12が配置されているため、構造体1の搬送後、別途遮水部材で覆う必要がなく、より迅速に構造体1の機能を発揮させることができる。
【0028】
次に、図4に示すように、構造体1の上部に桝7を装着し、桝7の蓋7aが地面Gと同一レベルになるように埋設された構造体1に対し、手動ポンプ取付口4fに手動ポンプ13を装着する。この手動ポンプ13を操作することで、本体2の内部に貯留された雨水Wを矢印方向に排出することができる。以上で、図1(f)に示すように、構造体の構築を完了する。尚、桝7及び手動ポンプ13の取付を、図1(a)の組立工程で行うこともできる。
【0029】
上記構成を有する構造体1は、図4に示すように、地上に降った雨水が桝7(図2(b)において左下に位置する桝7B)に接続された流入管(不図示)から本体2の内部に流入し、貯留される。そして、地震等の災害が発生した際には、蓋7aを開けて手動ポンプ13を操作し、汲み上げた雨水Wを生活用水として利用することができる。
【0030】
以上のように、本実施の形態では、搬送前に雨水貯留構造体の組立を行うため、据付現場において組立作業に要する人手や組立スペースを低減し、搬送後短時間で機能を発揮させることができる。
【0031】
また、組立後の構造体1をフレコンバッグ11に収容して搬送することで、フレコンバッグ11の上部の吊りベルトを取っ手として利用してリフトLやクレーン等で持ち上げるのに適しているため玉掛け作業も容易に行えると共に、バッグ全体は軽量で折り畳みが容易で強度も大きいため便利である。さらに、フレコンバッグ11によって内部の構造体1を保護することもでき、フレコンバッグ11は劣化も少ないため、長期にわたって構造体1を保護することができる。
【0032】
さらに、構造体1の品種が増えた場合でも、フレコンバッグ11を色分けすることで、容易に品種の違いを把握することができ、油性マジック、スプレー、ペンキ等でフレコンバッグ11の外表面に文字や図柄を描くことで、デザイン性の向上や、品番等による商品管理を容易に行うことが可能となる。
【0033】
尚、本実施の形態においては、地下構造物として、雨水貯留構造体を例にとって説明したが、これに限らず、雨水浸透構造体を構築することもできる。この場合には、透水性を有するフレコンバッグを用いる。さらに、本発明は、雨水貯留浸透構造体に限らず、複数の構造部材からなる地下構造物すべてに適用可能であり、特に、袋状収容部材に収容された状態のまま埋設可能で、かつ、この袋状収容部材が構造物の一部として機能するような地下構造物に適用することが好ましい。
【符号の説明】
【0034】
1 雨水貯留構造体
2 本体
3 面板部材
3a 開口部
3b 凸部
3c 凹部
4 面板部材
4a 開口部
4b 凸部
4c 凹部
4d 開口部
4e 支持部材
4f 手動ポンプ取付口
4g 底版フィルタ
4h 開口部
5 面板部材
5a 開口部
5b 凸部
5c 凹部
5d 開口部
7(7A、7B) 桝
7a 蓋
9 側板部材
9a 開口部
9b コーナーアングル
10 中間板
11 フレコンバッグ
11a 取手部
11b 収容部
12 遮水シート
13 手動ポンプ
20 埋設空間
G 地面
L リフト
T トラック
W 雨水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の構造部材からなる構造物を組み立て、
該構造物を組み立てた状態で据付現場へ搬送し、
該構造物を、前記据付現場に形成された埋設空間に、搬送状態のまま埋設することを特徴とする地下構造物の構築方法。
【請求項2】
前記構造物を組み立てた状態で袋状収容部材に収容して搬送し、該構造物を該袋状収容部材と共に前記埋設空間に埋設することを特徴とする請求項1に記載の地下構造物の構築方法。
【請求項3】
前記地下構造物は雨水貯留構造体であって、前記袋状収容部材は遮水性を有することを特徴とする請求項2に記載の地下構造物の構築方法。
【請求項4】
前記地下構造物は雨水浸透構造体であって、前記袋状収容部材は透水性を有することを特徴とする請求項2に記載の地下構造物の構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−96106(P2013−96106A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238265(P2011−238265)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(591084654)エバタ株式会社 (35)
【Fターム(参考)】