地下構造物の止水材及び当該止水材を使用した止水方法
【課題】長期間にわたって優れた止水機能を維持し、かつ安価な止水材を提供する。
【解決手段】地下構造物における間隙に設けて止水する止水材であって、ベントナイト、熱可塑性樹脂、可塑剤、吸水性樹脂を主原料として配合して成形した。また上記ベントナイトを30〜40重量%、上記熱可塑性樹脂を30〜35重量%、上記吸水性樹脂を5〜15重量%、上記可塑剤を15〜20重量%夫々配合して形成した。さらに上記熱可塑性樹脂を上記可塑剤と混合後高温加熱し、当該高温加熱した熱可塑性樹脂を上記他の主原料と配合して成形した。
【解決手段】地下構造物における間隙に設けて止水する止水材であって、ベントナイト、熱可塑性樹脂、可塑剤、吸水性樹脂を主原料として配合して成形した。また上記ベントナイトを30〜40重量%、上記熱可塑性樹脂を30〜35重量%、上記吸水性樹脂を5〜15重量%、上記可塑剤を15〜20重量%夫々配合して形成した。さらに上記熱可塑性樹脂を上記可塑剤と混合後高温加熱し、当該高温加熱した熱可塑性樹脂を上記他の主原料と配合して成形した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力、電信ケーブル管路又は下水道管路等のトンネルのセグメント部材を組み合わせて構築される構造物、その他の地下構造物の間隙に貼り付け、又は圧縮等して介在させて、この地下構造物における間隙などの漏水個所の水みちを塞いで漏水を止める止水材及び当該止水材を使用した止水方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地下構造物、特にトンネル用セグメント(以下、単に「セグメント」と言う。)の構築の際、地山とこのセグメントとの間に注入材の裏込め注入を行うので、この注入材が固化するまでの一次止水と、その後、長期的な地山からトンネル内への漏水を防止する二次止水が必要となる。その為、図13に示す様な湾曲した板体であって四辺の端縁を一定長垂下して継手面を設けて成るセグメントの隣接する二辺の継手面22の継ぎ目の接続に際しては、通常、止水材が用いられており、これらの両者の作用により、水はセグメントの内側に入ってこられない。
この様な止水材としては、水膨張ゴムから成る止水材Bが施工性や止水性能の面から優れており、多く採用されている(市場のおよそ90%と思われる。)。この水膨張ゴムから成る止水材Bは、高吸水性ポリマー等の水膨張樹脂と合成ゴムを加硫成形した定形のもので、施工に際し、接着剤を用い、セグメント21の継手面22に貼り付けて施工される。
【0003】
この継手面に貼り付けられた水膨張ゴムから成る止水材は、施工時のセグメントの組み立ての際に、ボルトとナットの締め付け力により圧縮され、止水材が有する弾性反発力によって止水を行う。また後日、継ぎ目に目開きが生じ、弾性反発力が低下しても、図14に示す様に、水を吸収すると自己膨張して、矢印方向に膨張する力が作用する。この弾性反発力又は自己膨張による接面応力σがセグメントの外側から加えられる水圧Pより大きいと止水機能は維持される。すなわちパッキン効果による止水の基本的な条件は、接面応力σ>水圧Pと言うことである。
【0004】
また止水材としてベントナイト系のものがある。これは、アスファルトや石油系ワックス等と、水膨潤性粘土であるベントナイトを混練し、これらを成形して形成した可塑性の止水材である。この止水材は、アスファルトや石油系ワックス等の水密性、柔軟性、粘着性と吸水した際のベントナイトの膨張により止水を行う。ここで使用するベントナイトは、天然に産し、土木建築材料として古くから使用されており、止水材としても安価なものとなっている。
【特許文献1】特開2000−110496
【特許文献2】特開2001−20692
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この様な止水材が用いられる地下構造物が施工される地下は、深度が深くなるにつれて地中水圧が高くなり、この止水材を地下構造物の間隙に用いて長期間にわたって止水機能を維持することに課題があった。すなわち上記前者の水膨張ゴムから成る止水材の場合、長期的な応力緩和に伴う弾性反発力の低下、又は吸水乾燥の繰り返しにより高吸水性ポリマーの流出に伴う水膨張性の低下等から止水機能が低下する恐れがあった。またこの水膨張ゴムから成る止水材の場合、価格が高価なため工事費の高騰を招いた。
【0006】
また後者のベントナイト系止水材は安価であるが、水膨潤性物質であるベントナイトが無機系であるため耐久性などの信頼性はあったが、膨潤性能が低かったため、水分を吸収し膨張後の追従性に劣っていた。つまり膨潤が期待される程度まで行われていない。その結果、長期的な使用による信頼性に劣っていた。さらにこの止水材は、可塑性を有するため復元力や弾性反発力が不足しており、トンネル掘進用ジャッキの圧力(推力)などの圧縮力を受けると塑性変形を起こし、止水機能の維持が困難になるといった問題を有していた。
【0007】
そこでこの発明は、長期間にわたって優れた止水機能を維持し、かつ安価な止水材及びこの止水材を使用した止水方法を提供して上記課題を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、地下構造物における間隙に設けて止水する止水材であって、ベントナイト、熱可塑性樹脂、可塑剤、吸水性樹脂を主原料として配合して成形した地下構造物の止水材とした。また請求項2の発明は、上記ベントナイトを30〜40重量%、上記熱可塑性樹脂を30〜35重量%、上記吸水性樹脂を5〜15重量%、上記可塑剤を15〜20重量%夫々配合して成形した上記請求項1に記載の地下構造物の止水材とした。さらに請求項3の発明は、上記熱可塑性樹脂を上記可塑剤と混合後高温加熱し、当該高温加熱した熱可塑性樹脂を上記他の主原料と配合して成形した上記請求項1又は2の何れかに記載の地下構造物の止水材とした。
【0009】
請求項4の発明は、上記請求項1乃至3の何れかに記載の地下構造物の止水材を地下構造物の間隙に介在させ、当該地下構造物の間隙から浸透してくる漏水を当該止水材のベントナイト及び吸水性樹脂が吸水することにより膨張して当該間隙を閉鎖して止水する地下構造物の止水方法とした。また請求項5の発明は、上記請求項1乃至3の何れかに記載の地下構造物の止水材を地下構造物の間隙に圧縮して介在させて当該間隙を塞いで止水し、当該箇所にさらに間隙が生じ漏水があった際には、短期的には当該止水材の復元力及び弾性反発力によって止水し、長期的には当該止水材のベントナイト及び吸水性樹脂が吸水することにより膨潤して当該間隙を閉鎖して止水する地下構造物の止水方法とした。
【発明の効果】
【0010】
請求項1乃至5の各発明によれば、適度なゴム弾性を有し、施工時の追従性に優れ、また、施工後に地下構造物の変動により、地下構造物の継ぎ目に目開きによる間隙が生じたとしても、止水材の膨張による追従性により当該間隙を閉鎖する。さらに止水材に亀裂等が生じたとしても自己シールすることにより、止水機能を維持することが出来る。この様に優れた止水効果を発揮しながらも、ベントナイトを用いているので安価であり、地下構造物における止水に広く使用することが出来、工事費の低減に大きく寄与するものである。またこの止水材に用いられるベントナイトは、劣化や腐敗が起こらないので長期的に安定しており、吸水と乾燥の繰り返しによっても膨張性が低下しないため耐久性に優れるなど、優れた性能を有する。
【0011】
請求項2の発明によれば、各配合材の構成を限定したので、より確実に止水効果を発揮することが出来る。また請求項3の発明によれば、可塑剤と混合後、高温加熱した熱可塑性樹脂を他の主原料と配合して成形したので、この止水材の弾性力を確実に発揮することができる。さらに請求項4及び5の各発明によれば、止水材を地下構造物の間隙に設けてこの間隙を塞いで止水し、この箇所にさらに間隙が生じ漏水があった際には、短期的には当該止水材の復元力及び弾性反発力によって止水し、長期的にはこの止水材のベントナイト及び吸水性樹脂が吸水することにより膨潤して間隙を閉鎖するので、より確実に止水効果を発揮することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
ベントナイトを30〜40重量%、熱可塑性樹脂を30〜35重量%、吸水性樹脂を5〜15重量%、可塑剤を15〜20重量%を主原料として夫々配合して成形した。また上記可塑剤と混合後、高温加熱した上記熱可塑性樹脂を上記他の主原料と配合して止水材を成形した。
【0013】
さらにこれらの地下構造物の止水材を地下構造物の間隙に圧縮して介在させて当該間隙を塞いで止水し、当該箇所にさらに間隙が生じ漏水があった際には、短期的には当該止水材の復元力及び弾性反発力によって止水し、長期的には当該止水材のベントナイト及び吸水性樹脂が吸水することにより膨潤して当該間隙を閉鎖して止水する。
【実施例1】
【0014】
以下、この発明の実施例を図に基づいて説明する。
この発明の止水材は、ベントナイト、熱可塑性樹脂、可塑剤、吸水性樹脂を主原料とし、これらを配合して成形する。ベントナイトは、モンモリロナイトを主成分としたもので、膨潤性並びに止水性、粘着性等の特性を発揮させることを目的として配合するが、ベントナイトの配合量をあまり多くすると止水材全体の弾性性能が低下する。また成形された止水材としては、上記熱可塑性樹脂などの粒子にベントナイトの粒子が均一に分散した状態になっている。
【0015】
また上記熱可塑性樹脂(TPR)は、常温ではゴム弾性を有するが、高温では可塑化するため、この止水材では、弾性力を発揮させる目的で高温過熱後他の材料と混合して使用する。この熱可塑性樹脂はその主成分よって、オレフィン系(TPO)、スチレン系(TPS)、ジエン系、エステル系(TPEE)、ウレタン系(TPU)、アミド系(TPEA)、塩化ビニル系(TPVC)等多くの種類のものがあり使用出来る。スチレン系樹脂としては、SEEPタイプなどがあり、ジエン系樹脂としては、1,3−ペンタジエン系などがある。
【0016】
上記可塑剤は、一般的には、プロセスオイルと呼ばれるものであって、石油を精製して得られるオイルの一種であり、上記熱可塑性樹脂に配合することで、その加工性を容易にし、又は柔軟性を付与するために配合されるが、合成樹脂の種類毎に可塑剤の種類は限定される。
【0017】
上記吸水性樹脂は、基本的には、一般的な水膨張止水材に使用されているものと同等のもので、膨潤性能を期待して配合する。その種類は膨潤スピード、膨潤後の硬度の面から、ここでは、ポリエチレンオキサイド(PEO)を使用する。
【0018】
これらの配合物を混合して止水材は得られるが、夫々の配合物の粒子が均一になるように充分に混合することが望ましい。またこの止水材は、その性状を改善するために、さらに必要に応じて従来の止水材に用いられてきた各種添加物を配合することが出来る。この添加物としては、例えば軟化剤(鉱油、合成油、脂肪性油等)、安定剤(界面活性剤、アミン、フェノール類等)、酸化防止剤、着色剤、充填剤などが挙げられる。
【0019】
この止水材を成形する方法は、従来の止水材と同様であり、押出成形法、プレス成形法等を用いることが出来る。またここで成形される止水材の形状は様々であるが、充分な止水機能が得られる形状を選択するとともに、施工に支障を来たさない最適な形状を選択するのが望ましい。
【0020】
次にこれらの主原料の配合例を示す。
【0021】
上記の通り、この実施例の止水材の配合例としては、Bt−1、Bt−2、Bt−3及びBt−4の4つを成形した。さらに比較例として、従来の水膨張ゴムから成る止水材であるRb−1及びRb−2を成形した。これらのRb−1及びRb−2は、加硫ゴム(クロロプレン、ブチル、ニトリルなど、以下同じ)をベースとして、吸水性樹脂(SAP:ポリアクリル酸ソーダ、以下同じ)を配合したものであり、Rb−1及びRb−2に於ける相違は、Rb−1における吸水性樹脂の配合量をRb−2における吸水性樹脂の配合量より多く配合したものである。
【0022】
そしてこれらの6つの止水材の耐水圧試験を行い、比較した。ここでの耐水圧試験は、セグメントの接続の際、その継ぎ目に使用することで行ったが、当該セグメントに溝が無い平坦なものの場合を想定して行った。ここで使用する最高作用水圧としては、地下100mのものに相当する1.0Mpa≒10kgf/cm2とした。止水の基本条件は、作用水圧<接面応力であり、作用水圧は地下水圧とした。また接面応力は、短期的には当該止水材の復元力及び弾性反発力により発生し、長期的には当該止水材が膨張して発生すると考えた。その結果を図1及び図2に示す。
【0023】
まず従来の止水材であるRb−1及びRb−2の試験結果を図2に示す。この図2では、縦軸に接面応力(Mpa)をとり、横軸に作用水圧(Mpa)をとった。また作用水圧(地下水圧)の小さな動きに対する接面応力の動きを見るために、目盛は、横軸の単位を縦軸のものより小さな値の間隔でとった。よって、作用水圧=接面応力とする線が0の位置から小さな角度で右上がりに伸びている。これに対して、Rb−1の線5は、この線5を越える大きな値の線となっており、作用水圧0(Mpa)の時、接面応力約6.2(Mpa)であり、この位置から作用水圧1.0(Mpa)、接面応力約5.0(Mpa)の位置まで緩やかに下降する線となっている。またRb−2の線6は、Rb−1と同様に作用水圧の線を越える値の線6となっており、作用水圧0(Mpa)の時、接面応力約4.0(Mpa)であり、この位置から作用水圧1.0(Mpa)、接面応力約3.4(Mpa)の位置まで緩やかに下降する線となっている。これらのことは、Rb−1及びRb−2が何れもこの試験での作用水圧に耐えられ、かつ耐水圧試験(長期的なものではない。)において良好であったことを示している。
【0024】
また図1は、同様にBt−1、Bt−2、Bt−3及びBt−4の試験結果を示す。この図1では、縦軸に接面応力(Mpa)をとり、横軸に作用水圧(Mpa)をとったのは、上記図2と同様であるが、縦軸を図2より、小さな値の間隔でとった。これは、Bt−1、Bt−2、Bt−3及びBt−4の試験結果が接面応力1.0〜2.0(Mpa)の間に集中しているためである。ここでも作用水圧=接面応力とする線が0の位置から小さな角度で右上がりに伸びており、Bt−1、Bt−2、Bt−3及びBt−4の各線は、何れもこの線を越えた値を示している。
【0025】
ここで、Bt−1の線1は、作用水圧0(Mpa)の時、接面応力約1.9(Mpa)であり、この位置から作用水圧1.0(Mpa)、接面応力約1.9(Mpa)の位置まで殆ど変化の無い線となっている。Bt−2の線2は、作用水圧0(Mpa)の時、接面応力約1.5(Mpa)であり、この位置から作用水圧1.0(Mpa)、接面応力約1.7(Mpa)の位置まであまり変化の無い線となっている。またBt−3の線3は、作用水圧0(Mpa)の時、接面応力約0.9(Mpa)であり、この位置から作用水圧1.0(Mpa)、接面応力約1.2(Mpa)の位置まであまり変化の無い線となっている。さらにBt−4の線4は、作用水圧0(Mpa)の時、接面応力約1.25(Mpa)であり、この位置から作用水圧1.0(Mpa)、接面応力約1.5(Mpa)の位置まであまり変化の無い線となっている。
これらのことは、Bt−1、Bt−2、Bt−3及びBt−4が何れも作用水圧に耐えられ、かつ耐水圧試験(長期的なものではない。)において良好であったことを示している。
【0026】
これらの耐水圧試験では、この実施例のBt−1、Bt−2、Bt−3及びBt−4は、従来のRb−1、Rb−2ほど接面応力は高くないが、Rb−1、Rb−2と共に地下100m相当の水圧に耐え得ることが明らかになった。さらに図1のRb−1、Rb−2の各線は、右下がりなって、作用水圧を上げた場合の値が何れも下降傾向であり、これらの点での接面応力が弱かったことを示しているが、Bt−1、Bt−2、Bt−3及びBt−4の各線は、ほぼ変わらないか又は上昇傾向にあり、作用水圧の上昇があっても許容範囲内ならば安定していることが分かった
【0027】
次にこの実施例の止水材のBt−1、Bt−2、Bt−3及びBt−4と、Rb−1及びRb−2の各止水材に水道水を浸潤した際の浸漬日数における体積膨張倍率を試験し比較した。その結果を図3に示す。この図3に示す様にRb−1の線11は、他の止水材と比べずば抜けた高い値を示し、浸漬した12、3日頃から、約6.5倍の体積膨張倍率であり、その後57、8日頃まではこのまま安定した体積膨張倍率であった。Rb−2の線12は、Rb−1に比べかなり緩やかな右上がりの線と成っており、今回試験をした止水材の中では、最も低い体積膨張倍率であった。この試験を始めて57、8日頃には、体積膨張倍率は、およそ2倍程度となっている。またBt−1の線7とBt−2の線8は、Rb−2より高い体積膨張倍率を示し、互いに似た線と成っており、試験を始めて8日頃まで、Bt−1の線7が約3.1倍、Bt−2の線8が3.7倍という比較的大きな値を示し、その後は下降傾向を示し、57、8日頃には、体積膨張倍率は、およそ夫々2.6倍程度となっている。さらにBt−3の線9とBt−4の線10もRb−2の線12より高い体積膨張倍率を示し、互いに似た線と成っており、試験を開始から緩やかな上昇傾向を示し、57、8日頃には、体積膨張倍率は、およそ2.2倍程度となっている。
【0028】
これらの体積膨張倍率の試験では、Bt−1、Bt−2、Bt−3及びBt−4の夫々の値は何れも、Rb−1及びRb−2の夫々の各値の間に在り、Bt−1、Bt−2、Bt−3及びBt−4の体積膨張倍率は、Rb−1の体積膨張倍率には及ばないが、Rb−2の体積膨張倍率より高いものであることが分かった。
これらの耐水圧試験及び体積膨張倍率試験の結果から、この実施例のBt−1、Bt−2、Bt−3及びBt−4の各止水材は、従来のRbの止水材と比べ、耐水圧及び体積膨張倍率の点において、何等遜色の無いものであることが分かった。
【0029】
この様な止水材をセグメント21、21同士の接続において使用する。図4に示す様に、この止水材Aを一方のセグメント21の継手面22に自身の粘着性又は別途接着剤を使用して貼り付け、当該箇所と他方のセグメント21の継手面22とを接合させ、二つのセグメント21、21の継手面22、22をボルト23とナット24により、締め付けて行う。なおこの継手面の締め付けは、ばね鋼製のクリップ等を用いる場合もある。また止水材Aが自身の粘着性を保護する保護膜等を有する場合は、セグメント21を接合する前に、この保護膜等を取り外して締め付け作業を行う。
【0030】
この止水材Aを設けたセグメント21の止水構造では、セグメント21の継ぎ目に侵入してきた水分は、セグメント21の継手面22に貼り付けられたこの止水材Aの持つ適度なゴム弾性、追従性、粘着性により、当該箇所から内側への水分の浸入が遮断され、止水が為される。また熱可塑性樹脂を加えたことにより弾性力を強化し、圧縮力や水圧を繰り返し受けても、過度の塑性変形を起こして止水機能が低下するということが無い。さらにセグメント21の変動等により、二次的に目開きによる間隙が生じたとしても止水材中のベントナイトや吸水性樹脂が水を吸水して膨潤し、この目開きによる間隙を塞いで止水が為される。
【0031】
また図5に示すのは、他のタイプのセグメント25の接続におけるものである。上記セグメント21と異なるところは、セグメント25の継手面26に凹部27を設けており、この凹部27に止水材Aを貼り付けてセグメント25、25同士をボルト23とナット24で固定する。凹部27に止水材Aを貼り付けたことにより、接続した二つのセグメント25、25の凹部27、27によって成形された空間内で膨張するため、この空間内において確実な止水が出来る。また図5のセグメント25の場合、膨張する方向性が規制されるので体積膨張倍率の高い上記Bt−1又はBt−2の止水材が適しており、上記図4のセグメント21の場合、膨張する方向性が規制されないので体積膨張倍率の低い上記Bt−3及びBt−4の止水材が適している。
【0032】
さらに図6乃至図11に示すのは、この止水材Aの断面形状を示すものであり、長方形の他、何れの形状でもよく、状況に合わせて最適な形状の断面のものを選択すればよい。図6に示すのは、断面が長方形になるように成形した止水材A1で一方の面に保護膜28を被覆している。この保護膜28は、このセグメントが梱包され、運搬等される時や施工時に止水材の粘着性が作業性を悪くすることを防ぐと共に、止水性能が低下するのを防ぐために有効であり、セグメントを接続される前に取り外される。また図7に示すのは、断面が長方形になるように成形された止水材の一方の面上に半円形の畝29を二条設けた止水材A2であり、図8に示すのは、断面が台形になるように成形した止水材A3であり、図9に示すのは、同様に、断面が半円形になるように成形した止水材A4である。
【0033】
図10に示すのは、断面が長方形になるように成形されたものの中心にゴム弾性物質層30を設けた止水材A5であり、図11に示すのは、板状のゴム弾性物質層31の表裏の各面に夫々凹部32を設け、これらの凹部32にこの止水材を設けて一体化した止水材A6である。
【0034】
この様な止水材Aをセグメントの継手面に粘着又は接着剤により固定し、その後セグメントの継手面がボルト23とナット24により、引き締められることにより、適度なゴム弾性追従性により止水すると共に、継手板の間の継ぎ目に目開き等が発生した場合は、止水材中のベントナイトや吸水性樹脂が吸水して膨張し、間隙を塞ぐことにより、水圧や圧縮力を繰り返し受けても過度な塑形変形を起こすことが無く、止水機能は、低下しない。さらに止水材中のベントナイトは、無機の鉱物であり、耐久性に優れることから、信頼性の高い止水効果を長期間に渡って得られると共に、安価であることから経済的にも優れる。
【0035】
なお上記実施例では、Bt−1、Bt−2、Bt−3及びBt−4として、止水材の具体的な配合例を記載しているが、止水材Aの配合例は、これらのものに限定するものではない。またこの止水材Aをセグメント21、25の継手面22、26の継ぎ目に貼り付け、セグメント21、25同士の接続において説明しているが、この止水材Aの用途は、セグメント21、25同士の接続に限らず、図12に示す様な開削工法におけるコンクリート40打ちの継ぎ目の止水材A、二次覆工などのコンクリート打ちの継ぎ目の止水材、既設構造物における漏水箇所の補修用の止水材、地下構造物におけるクラックの止水材、その他、既設又は新設の地下構造物用の止水材など様々な用途の止水材として使用出来る。さらに吸水性樹脂として、ポリエチレンオキサイド(PEO)を使用しているが、吸水性樹脂はポリエチレンオキサイド(PEO)に限定するものではない。また止水材Aの形状について具体的に記載しているが、これらはこの発明の必須要件ではない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明の実施例の止水材の耐水圧試験の結果を示すグラフ図である。
【図2】従来の止水材の耐水圧試験の結果を示すグラフ図である。
【図3】この発明の実施例の止水材と従来の止水材の体積膨張倍率の試験の結果を示すグラフ図である。
【図4】この発明の実施例の止水材をセグメント同士の接続に際して使用している状態を示す断面図である。
【図5】この発明の実施例の止水材を他のセグメント同士の接続に際して使用している状態を示す断面図である。
【図6】この発明の実施例の止水材を断面が長方形になるように成形した状態の斜視図である。
【図7】この発明の実施例の止水材を断面が長方形になるように成形し、一方の面上に半円形の畝を二条設けた状態の斜視図である。
【図8】この発明の実施例の止水材を断面が台形になるように成形した状態の斜視図である。
【図9】この発明の実施例の止水材を断面が半円形になるように成形した状態の斜視図である。
【図10】この発明の実施例の止水材を断面が長方形になるように成形し、その中心にゴム弾性物質層を設けた状態の斜視図である。
【図11】この発明の実施例の止水材であって、板状のゴム弾性物質層の表裏の各面に設けた凹部止水材を設けて一体化した状態の斜視図である。
【図12】この発明の実施例の止水材を開削工法におけるコンクリート打ちの継ぎ目に使用した状態の説明図である。
【図13】セグメントに止水材を貼り付けた状態を示す説明図である。
【図14】止水の基本的な条件である、止水材の復元力、弾性反発力及び膨張による接面応力σ>水圧Pを示す説明図である。
【符号の説明】
【0037】
A 止水材
21 セグメント 22 セグメントの継手面
23 ボルト 24 ナット
25 セグメント 26 セグメントの継手面
27 凹部 28 セグメントの保護膜
29 セグメントの畝 30 ゴム弾性物質層
31 ゴム弾性物質層 32 凹部
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力、電信ケーブル管路又は下水道管路等のトンネルのセグメント部材を組み合わせて構築される構造物、その他の地下構造物の間隙に貼り付け、又は圧縮等して介在させて、この地下構造物における間隙などの漏水個所の水みちを塞いで漏水を止める止水材及び当該止水材を使用した止水方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地下構造物、特にトンネル用セグメント(以下、単に「セグメント」と言う。)の構築の際、地山とこのセグメントとの間に注入材の裏込め注入を行うので、この注入材が固化するまでの一次止水と、その後、長期的な地山からトンネル内への漏水を防止する二次止水が必要となる。その為、図13に示す様な湾曲した板体であって四辺の端縁を一定長垂下して継手面を設けて成るセグメントの隣接する二辺の継手面22の継ぎ目の接続に際しては、通常、止水材が用いられており、これらの両者の作用により、水はセグメントの内側に入ってこられない。
この様な止水材としては、水膨張ゴムから成る止水材Bが施工性や止水性能の面から優れており、多く採用されている(市場のおよそ90%と思われる。)。この水膨張ゴムから成る止水材Bは、高吸水性ポリマー等の水膨張樹脂と合成ゴムを加硫成形した定形のもので、施工に際し、接着剤を用い、セグメント21の継手面22に貼り付けて施工される。
【0003】
この継手面に貼り付けられた水膨張ゴムから成る止水材は、施工時のセグメントの組み立ての際に、ボルトとナットの締め付け力により圧縮され、止水材が有する弾性反発力によって止水を行う。また後日、継ぎ目に目開きが生じ、弾性反発力が低下しても、図14に示す様に、水を吸収すると自己膨張して、矢印方向に膨張する力が作用する。この弾性反発力又は自己膨張による接面応力σがセグメントの外側から加えられる水圧Pより大きいと止水機能は維持される。すなわちパッキン効果による止水の基本的な条件は、接面応力σ>水圧Pと言うことである。
【0004】
また止水材としてベントナイト系のものがある。これは、アスファルトや石油系ワックス等と、水膨潤性粘土であるベントナイトを混練し、これらを成形して形成した可塑性の止水材である。この止水材は、アスファルトや石油系ワックス等の水密性、柔軟性、粘着性と吸水した際のベントナイトの膨張により止水を行う。ここで使用するベントナイトは、天然に産し、土木建築材料として古くから使用されており、止水材としても安価なものとなっている。
【特許文献1】特開2000−110496
【特許文献2】特開2001−20692
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この様な止水材が用いられる地下構造物が施工される地下は、深度が深くなるにつれて地中水圧が高くなり、この止水材を地下構造物の間隙に用いて長期間にわたって止水機能を維持することに課題があった。すなわち上記前者の水膨張ゴムから成る止水材の場合、長期的な応力緩和に伴う弾性反発力の低下、又は吸水乾燥の繰り返しにより高吸水性ポリマーの流出に伴う水膨張性の低下等から止水機能が低下する恐れがあった。またこの水膨張ゴムから成る止水材の場合、価格が高価なため工事費の高騰を招いた。
【0006】
また後者のベントナイト系止水材は安価であるが、水膨潤性物質であるベントナイトが無機系であるため耐久性などの信頼性はあったが、膨潤性能が低かったため、水分を吸収し膨張後の追従性に劣っていた。つまり膨潤が期待される程度まで行われていない。その結果、長期的な使用による信頼性に劣っていた。さらにこの止水材は、可塑性を有するため復元力や弾性反発力が不足しており、トンネル掘進用ジャッキの圧力(推力)などの圧縮力を受けると塑性変形を起こし、止水機能の維持が困難になるといった問題を有していた。
【0007】
そこでこの発明は、長期間にわたって優れた止水機能を維持し、かつ安価な止水材及びこの止水材を使用した止水方法を提供して上記課題を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、地下構造物における間隙に設けて止水する止水材であって、ベントナイト、熱可塑性樹脂、可塑剤、吸水性樹脂を主原料として配合して成形した地下構造物の止水材とした。また請求項2の発明は、上記ベントナイトを30〜40重量%、上記熱可塑性樹脂を30〜35重量%、上記吸水性樹脂を5〜15重量%、上記可塑剤を15〜20重量%夫々配合して成形した上記請求項1に記載の地下構造物の止水材とした。さらに請求項3の発明は、上記熱可塑性樹脂を上記可塑剤と混合後高温加熱し、当該高温加熱した熱可塑性樹脂を上記他の主原料と配合して成形した上記請求項1又は2の何れかに記載の地下構造物の止水材とした。
【0009】
請求項4の発明は、上記請求項1乃至3の何れかに記載の地下構造物の止水材を地下構造物の間隙に介在させ、当該地下構造物の間隙から浸透してくる漏水を当該止水材のベントナイト及び吸水性樹脂が吸水することにより膨張して当該間隙を閉鎖して止水する地下構造物の止水方法とした。また請求項5の発明は、上記請求項1乃至3の何れかに記載の地下構造物の止水材を地下構造物の間隙に圧縮して介在させて当該間隙を塞いで止水し、当該箇所にさらに間隙が生じ漏水があった際には、短期的には当該止水材の復元力及び弾性反発力によって止水し、長期的には当該止水材のベントナイト及び吸水性樹脂が吸水することにより膨潤して当該間隙を閉鎖して止水する地下構造物の止水方法とした。
【発明の効果】
【0010】
請求項1乃至5の各発明によれば、適度なゴム弾性を有し、施工時の追従性に優れ、また、施工後に地下構造物の変動により、地下構造物の継ぎ目に目開きによる間隙が生じたとしても、止水材の膨張による追従性により当該間隙を閉鎖する。さらに止水材に亀裂等が生じたとしても自己シールすることにより、止水機能を維持することが出来る。この様に優れた止水効果を発揮しながらも、ベントナイトを用いているので安価であり、地下構造物における止水に広く使用することが出来、工事費の低減に大きく寄与するものである。またこの止水材に用いられるベントナイトは、劣化や腐敗が起こらないので長期的に安定しており、吸水と乾燥の繰り返しによっても膨張性が低下しないため耐久性に優れるなど、優れた性能を有する。
【0011】
請求項2の発明によれば、各配合材の構成を限定したので、より確実に止水効果を発揮することが出来る。また請求項3の発明によれば、可塑剤と混合後、高温加熱した熱可塑性樹脂を他の主原料と配合して成形したので、この止水材の弾性力を確実に発揮することができる。さらに請求項4及び5の各発明によれば、止水材を地下構造物の間隙に設けてこの間隙を塞いで止水し、この箇所にさらに間隙が生じ漏水があった際には、短期的には当該止水材の復元力及び弾性反発力によって止水し、長期的にはこの止水材のベントナイト及び吸水性樹脂が吸水することにより膨潤して間隙を閉鎖するので、より確実に止水効果を発揮することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
ベントナイトを30〜40重量%、熱可塑性樹脂を30〜35重量%、吸水性樹脂を5〜15重量%、可塑剤を15〜20重量%を主原料として夫々配合して成形した。また上記可塑剤と混合後、高温加熱した上記熱可塑性樹脂を上記他の主原料と配合して止水材を成形した。
【0013】
さらにこれらの地下構造物の止水材を地下構造物の間隙に圧縮して介在させて当該間隙を塞いで止水し、当該箇所にさらに間隙が生じ漏水があった際には、短期的には当該止水材の復元力及び弾性反発力によって止水し、長期的には当該止水材のベントナイト及び吸水性樹脂が吸水することにより膨潤して当該間隙を閉鎖して止水する。
【実施例1】
【0014】
以下、この発明の実施例を図に基づいて説明する。
この発明の止水材は、ベントナイト、熱可塑性樹脂、可塑剤、吸水性樹脂を主原料とし、これらを配合して成形する。ベントナイトは、モンモリロナイトを主成分としたもので、膨潤性並びに止水性、粘着性等の特性を発揮させることを目的として配合するが、ベントナイトの配合量をあまり多くすると止水材全体の弾性性能が低下する。また成形された止水材としては、上記熱可塑性樹脂などの粒子にベントナイトの粒子が均一に分散した状態になっている。
【0015】
また上記熱可塑性樹脂(TPR)は、常温ではゴム弾性を有するが、高温では可塑化するため、この止水材では、弾性力を発揮させる目的で高温過熱後他の材料と混合して使用する。この熱可塑性樹脂はその主成分よって、オレフィン系(TPO)、スチレン系(TPS)、ジエン系、エステル系(TPEE)、ウレタン系(TPU)、アミド系(TPEA)、塩化ビニル系(TPVC)等多くの種類のものがあり使用出来る。スチレン系樹脂としては、SEEPタイプなどがあり、ジエン系樹脂としては、1,3−ペンタジエン系などがある。
【0016】
上記可塑剤は、一般的には、プロセスオイルと呼ばれるものであって、石油を精製して得られるオイルの一種であり、上記熱可塑性樹脂に配合することで、その加工性を容易にし、又は柔軟性を付与するために配合されるが、合成樹脂の種類毎に可塑剤の種類は限定される。
【0017】
上記吸水性樹脂は、基本的には、一般的な水膨張止水材に使用されているものと同等のもので、膨潤性能を期待して配合する。その種類は膨潤スピード、膨潤後の硬度の面から、ここでは、ポリエチレンオキサイド(PEO)を使用する。
【0018】
これらの配合物を混合して止水材は得られるが、夫々の配合物の粒子が均一になるように充分に混合することが望ましい。またこの止水材は、その性状を改善するために、さらに必要に応じて従来の止水材に用いられてきた各種添加物を配合することが出来る。この添加物としては、例えば軟化剤(鉱油、合成油、脂肪性油等)、安定剤(界面活性剤、アミン、フェノール類等)、酸化防止剤、着色剤、充填剤などが挙げられる。
【0019】
この止水材を成形する方法は、従来の止水材と同様であり、押出成形法、プレス成形法等を用いることが出来る。またここで成形される止水材の形状は様々であるが、充分な止水機能が得られる形状を選択するとともに、施工に支障を来たさない最適な形状を選択するのが望ましい。
【0020】
次にこれらの主原料の配合例を示す。
【0021】
上記の通り、この実施例の止水材の配合例としては、Bt−1、Bt−2、Bt−3及びBt−4の4つを成形した。さらに比較例として、従来の水膨張ゴムから成る止水材であるRb−1及びRb−2を成形した。これらのRb−1及びRb−2は、加硫ゴム(クロロプレン、ブチル、ニトリルなど、以下同じ)をベースとして、吸水性樹脂(SAP:ポリアクリル酸ソーダ、以下同じ)を配合したものであり、Rb−1及びRb−2に於ける相違は、Rb−1における吸水性樹脂の配合量をRb−2における吸水性樹脂の配合量より多く配合したものである。
【0022】
そしてこれらの6つの止水材の耐水圧試験を行い、比較した。ここでの耐水圧試験は、セグメントの接続の際、その継ぎ目に使用することで行ったが、当該セグメントに溝が無い平坦なものの場合を想定して行った。ここで使用する最高作用水圧としては、地下100mのものに相当する1.0Mpa≒10kgf/cm2とした。止水の基本条件は、作用水圧<接面応力であり、作用水圧は地下水圧とした。また接面応力は、短期的には当該止水材の復元力及び弾性反発力により発生し、長期的には当該止水材が膨張して発生すると考えた。その結果を図1及び図2に示す。
【0023】
まず従来の止水材であるRb−1及びRb−2の試験結果を図2に示す。この図2では、縦軸に接面応力(Mpa)をとり、横軸に作用水圧(Mpa)をとった。また作用水圧(地下水圧)の小さな動きに対する接面応力の動きを見るために、目盛は、横軸の単位を縦軸のものより小さな値の間隔でとった。よって、作用水圧=接面応力とする線が0の位置から小さな角度で右上がりに伸びている。これに対して、Rb−1の線5は、この線5を越える大きな値の線となっており、作用水圧0(Mpa)の時、接面応力約6.2(Mpa)であり、この位置から作用水圧1.0(Mpa)、接面応力約5.0(Mpa)の位置まで緩やかに下降する線となっている。またRb−2の線6は、Rb−1と同様に作用水圧の線を越える値の線6となっており、作用水圧0(Mpa)の時、接面応力約4.0(Mpa)であり、この位置から作用水圧1.0(Mpa)、接面応力約3.4(Mpa)の位置まで緩やかに下降する線となっている。これらのことは、Rb−1及びRb−2が何れもこの試験での作用水圧に耐えられ、かつ耐水圧試験(長期的なものではない。)において良好であったことを示している。
【0024】
また図1は、同様にBt−1、Bt−2、Bt−3及びBt−4の試験結果を示す。この図1では、縦軸に接面応力(Mpa)をとり、横軸に作用水圧(Mpa)をとったのは、上記図2と同様であるが、縦軸を図2より、小さな値の間隔でとった。これは、Bt−1、Bt−2、Bt−3及びBt−4の試験結果が接面応力1.0〜2.0(Mpa)の間に集中しているためである。ここでも作用水圧=接面応力とする線が0の位置から小さな角度で右上がりに伸びており、Bt−1、Bt−2、Bt−3及びBt−4の各線は、何れもこの線を越えた値を示している。
【0025】
ここで、Bt−1の線1は、作用水圧0(Mpa)の時、接面応力約1.9(Mpa)であり、この位置から作用水圧1.0(Mpa)、接面応力約1.9(Mpa)の位置まで殆ど変化の無い線となっている。Bt−2の線2は、作用水圧0(Mpa)の時、接面応力約1.5(Mpa)であり、この位置から作用水圧1.0(Mpa)、接面応力約1.7(Mpa)の位置まであまり変化の無い線となっている。またBt−3の線3は、作用水圧0(Mpa)の時、接面応力約0.9(Mpa)であり、この位置から作用水圧1.0(Mpa)、接面応力約1.2(Mpa)の位置まであまり変化の無い線となっている。さらにBt−4の線4は、作用水圧0(Mpa)の時、接面応力約1.25(Mpa)であり、この位置から作用水圧1.0(Mpa)、接面応力約1.5(Mpa)の位置まであまり変化の無い線となっている。
これらのことは、Bt−1、Bt−2、Bt−3及びBt−4が何れも作用水圧に耐えられ、かつ耐水圧試験(長期的なものではない。)において良好であったことを示している。
【0026】
これらの耐水圧試験では、この実施例のBt−1、Bt−2、Bt−3及びBt−4は、従来のRb−1、Rb−2ほど接面応力は高くないが、Rb−1、Rb−2と共に地下100m相当の水圧に耐え得ることが明らかになった。さらに図1のRb−1、Rb−2の各線は、右下がりなって、作用水圧を上げた場合の値が何れも下降傾向であり、これらの点での接面応力が弱かったことを示しているが、Bt−1、Bt−2、Bt−3及びBt−4の各線は、ほぼ変わらないか又は上昇傾向にあり、作用水圧の上昇があっても許容範囲内ならば安定していることが分かった
【0027】
次にこの実施例の止水材のBt−1、Bt−2、Bt−3及びBt−4と、Rb−1及びRb−2の各止水材に水道水を浸潤した際の浸漬日数における体積膨張倍率を試験し比較した。その結果を図3に示す。この図3に示す様にRb−1の線11は、他の止水材と比べずば抜けた高い値を示し、浸漬した12、3日頃から、約6.5倍の体積膨張倍率であり、その後57、8日頃まではこのまま安定した体積膨張倍率であった。Rb−2の線12は、Rb−1に比べかなり緩やかな右上がりの線と成っており、今回試験をした止水材の中では、最も低い体積膨張倍率であった。この試験を始めて57、8日頃には、体積膨張倍率は、およそ2倍程度となっている。またBt−1の線7とBt−2の線8は、Rb−2より高い体積膨張倍率を示し、互いに似た線と成っており、試験を始めて8日頃まで、Bt−1の線7が約3.1倍、Bt−2の線8が3.7倍という比較的大きな値を示し、その後は下降傾向を示し、57、8日頃には、体積膨張倍率は、およそ夫々2.6倍程度となっている。さらにBt−3の線9とBt−4の線10もRb−2の線12より高い体積膨張倍率を示し、互いに似た線と成っており、試験を開始から緩やかな上昇傾向を示し、57、8日頃には、体積膨張倍率は、およそ2.2倍程度となっている。
【0028】
これらの体積膨張倍率の試験では、Bt−1、Bt−2、Bt−3及びBt−4の夫々の値は何れも、Rb−1及びRb−2の夫々の各値の間に在り、Bt−1、Bt−2、Bt−3及びBt−4の体積膨張倍率は、Rb−1の体積膨張倍率には及ばないが、Rb−2の体積膨張倍率より高いものであることが分かった。
これらの耐水圧試験及び体積膨張倍率試験の結果から、この実施例のBt−1、Bt−2、Bt−3及びBt−4の各止水材は、従来のRbの止水材と比べ、耐水圧及び体積膨張倍率の点において、何等遜色の無いものであることが分かった。
【0029】
この様な止水材をセグメント21、21同士の接続において使用する。図4に示す様に、この止水材Aを一方のセグメント21の継手面22に自身の粘着性又は別途接着剤を使用して貼り付け、当該箇所と他方のセグメント21の継手面22とを接合させ、二つのセグメント21、21の継手面22、22をボルト23とナット24により、締め付けて行う。なおこの継手面の締め付けは、ばね鋼製のクリップ等を用いる場合もある。また止水材Aが自身の粘着性を保護する保護膜等を有する場合は、セグメント21を接合する前に、この保護膜等を取り外して締め付け作業を行う。
【0030】
この止水材Aを設けたセグメント21の止水構造では、セグメント21の継ぎ目に侵入してきた水分は、セグメント21の継手面22に貼り付けられたこの止水材Aの持つ適度なゴム弾性、追従性、粘着性により、当該箇所から内側への水分の浸入が遮断され、止水が為される。また熱可塑性樹脂を加えたことにより弾性力を強化し、圧縮力や水圧を繰り返し受けても、過度の塑性変形を起こして止水機能が低下するということが無い。さらにセグメント21の変動等により、二次的に目開きによる間隙が生じたとしても止水材中のベントナイトや吸水性樹脂が水を吸水して膨潤し、この目開きによる間隙を塞いで止水が為される。
【0031】
また図5に示すのは、他のタイプのセグメント25の接続におけるものである。上記セグメント21と異なるところは、セグメント25の継手面26に凹部27を設けており、この凹部27に止水材Aを貼り付けてセグメント25、25同士をボルト23とナット24で固定する。凹部27に止水材Aを貼り付けたことにより、接続した二つのセグメント25、25の凹部27、27によって成形された空間内で膨張するため、この空間内において確実な止水が出来る。また図5のセグメント25の場合、膨張する方向性が規制されるので体積膨張倍率の高い上記Bt−1又はBt−2の止水材が適しており、上記図4のセグメント21の場合、膨張する方向性が規制されないので体積膨張倍率の低い上記Bt−3及びBt−4の止水材が適している。
【0032】
さらに図6乃至図11に示すのは、この止水材Aの断面形状を示すものであり、長方形の他、何れの形状でもよく、状況に合わせて最適な形状の断面のものを選択すればよい。図6に示すのは、断面が長方形になるように成形した止水材A1で一方の面に保護膜28を被覆している。この保護膜28は、このセグメントが梱包され、運搬等される時や施工時に止水材の粘着性が作業性を悪くすることを防ぐと共に、止水性能が低下するのを防ぐために有効であり、セグメントを接続される前に取り外される。また図7に示すのは、断面が長方形になるように成形された止水材の一方の面上に半円形の畝29を二条設けた止水材A2であり、図8に示すのは、断面が台形になるように成形した止水材A3であり、図9に示すのは、同様に、断面が半円形になるように成形した止水材A4である。
【0033】
図10に示すのは、断面が長方形になるように成形されたものの中心にゴム弾性物質層30を設けた止水材A5であり、図11に示すのは、板状のゴム弾性物質層31の表裏の各面に夫々凹部32を設け、これらの凹部32にこの止水材を設けて一体化した止水材A6である。
【0034】
この様な止水材Aをセグメントの継手面に粘着又は接着剤により固定し、その後セグメントの継手面がボルト23とナット24により、引き締められることにより、適度なゴム弾性追従性により止水すると共に、継手板の間の継ぎ目に目開き等が発生した場合は、止水材中のベントナイトや吸水性樹脂が吸水して膨張し、間隙を塞ぐことにより、水圧や圧縮力を繰り返し受けても過度な塑形変形を起こすことが無く、止水機能は、低下しない。さらに止水材中のベントナイトは、無機の鉱物であり、耐久性に優れることから、信頼性の高い止水効果を長期間に渡って得られると共に、安価であることから経済的にも優れる。
【0035】
なお上記実施例では、Bt−1、Bt−2、Bt−3及びBt−4として、止水材の具体的な配合例を記載しているが、止水材Aの配合例は、これらのものに限定するものではない。またこの止水材Aをセグメント21、25の継手面22、26の継ぎ目に貼り付け、セグメント21、25同士の接続において説明しているが、この止水材Aの用途は、セグメント21、25同士の接続に限らず、図12に示す様な開削工法におけるコンクリート40打ちの継ぎ目の止水材A、二次覆工などのコンクリート打ちの継ぎ目の止水材、既設構造物における漏水箇所の補修用の止水材、地下構造物におけるクラックの止水材、その他、既設又は新設の地下構造物用の止水材など様々な用途の止水材として使用出来る。さらに吸水性樹脂として、ポリエチレンオキサイド(PEO)を使用しているが、吸水性樹脂はポリエチレンオキサイド(PEO)に限定するものではない。また止水材Aの形状について具体的に記載しているが、これらはこの発明の必須要件ではない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明の実施例の止水材の耐水圧試験の結果を示すグラフ図である。
【図2】従来の止水材の耐水圧試験の結果を示すグラフ図である。
【図3】この発明の実施例の止水材と従来の止水材の体積膨張倍率の試験の結果を示すグラフ図である。
【図4】この発明の実施例の止水材をセグメント同士の接続に際して使用している状態を示す断面図である。
【図5】この発明の実施例の止水材を他のセグメント同士の接続に際して使用している状態を示す断面図である。
【図6】この発明の実施例の止水材を断面が長方形になるように成形した状態の斜視図である。
【図7】この発明の実施例の止水材を断面が長方形になるように成形し、一方の面上に半円形の畝を二条設けた状態の斜視図である。
【図8】この発明の実施例の止水材を断面が台形になるように成形した状態の斜視図である。
【図9】この発明の実施例の止水材を断面が半円形になるように成形した状態の斜視図である。
【図10】この発明の実施例の止水材を断面が長方形になるように成形し、その中心にゴム弾性物質層を設けた状態の斜視図である。
【図11】この発明の実施例の止水材であって、板状のゴム弾性物質層の表裏の各面に設けた凹部止水材を設けて一体化した状態の斜視図である。
【図12】この発明の実施例の止水材を開削工法におけるコンクリート打ちの継ぎ目に使用した状態の説明図である。
【図13】セグメントに止水材を貼り付けた状態を示す説明図である。
【図14】止水の基本的な条件である、止水材の復元力、弾性反発力及び膨張による接面応力σ>水圧Pを示す説明図である。
【符号の説明】
【0037】
A 止水材
21 セグメント 22 セグメントの継手面
23 ボルト 24 ナット
25 セグメント 26 セグメントの継手面
27 凹部 28 セグメントの保護膜
29 セグメントの畝 30 ゴム弾性物質層
31 ゴム弾性物質層 32 凹部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下構造物における間隙に設けて止水する止水材であって、
ベントナイト、熱可塑性樹脂、可塑剤、吸水性樹脂を主原料として配合して成形したことを特徴とする、地下構造物の止水材。
【請求項2】
上記ベントナイトを30〜40重量%、上記熱可塑性樹脂を30〜35重量%、上記吸水性樹脂を5〜15重量%、上記可塑剤を15〜20重量%夫々配合して成形したことを特徴とする、上記請求項1に記載の地下構造物の止水材。
【請求項3】
上記熱可塑性樹脂を上記可塑剤と混合後高温加熱し、当該高温加熱した熱可塑性樹脂を上記他の主原料と配合して成形したことを特徴とする、上記請求項1又は2の何れかに記載の地下構造物の止水材。
【請求項4】
上記請求項1乃至3の何れかに記載の地下構造物の止水材を地下構造物の間隙に介在させ、当該地下構造物の間隙から浸透してくる漏水を当該止水材のベントナイト及び吸水性樹脂が吸水することにより膨張して当該間隙を閉鎖して止水することを特徴とする、地下構造物の止水方法。
【請求項5】
上記請求項1乃至3の何れかに記載の地下構造物の止水材を地下構造物の間隙に圧縮して介在させて当該間隙を塞いで止水し、当該箇所にさらに間隙が生じ漏水があった際には、短期的には当該止水材の復元力及び反発弾性力によって止水し、長期的には当該止水材のベントナイト及び吸水性樹脂が吸水することにより膨潤して当該間隙を閉鎖して止水することを特徴とする、地下構造物の止水方法。
【請求項1】
地下構造物における間隙に設けて止水する止水材であって、
ベントナイト、熱可塑性樹脂、可塑剤、吸水性樹脂を主原料として配合して成形したことを特徴とする、地下構造物の止水材。
【請求項2】
上記ベントナイトを30〜40重量%、上記熱可塑性樹脂を30〜35重量%、上記吸水性樹脂を5〜15重量%、上記可塑剤を15〜20重量%夫々配合して成形したことを特徴とする、上記請求項1に記載の地下構造物の止水材。
【請求項3】
上記熱可塑性樹脂を上記可塑剤と混合後高温加熱し、当該高温加熱した熱可塑性樹脂を上記他の主原料と配合して成形したことを特徴とする、上記請求項1又は2の何れかに記載の地下構造物の止水材。
【請求項4】
上記請求項1乃至3の何れかに記載の地下構造物の止水材を地下構造物の間隙に介在させ、当該地下構造物の間隙から浸透してくる漏水を当該止水材のベントナイト及び吸水性樹脂が吸水することにより膨張して当該間隙を閉鎖して止水することを特徴とする、地下構造物の止水方法。
【請求項5】
上記請求項1乃至3の何れかに記載の地下構造物の止水材を地下構造物の間隙に圧縮して介在させて当該間隙を塞いで止水し、当該箇所にさらに間隙が生じ漏水があった際には、短期的には当該止水材の復元力及び反発弾性力によって止水し、長期的には当該止水材のベントナイト及び吸水性樹脂が吸水することにより膨潤して当該間隙を閉鎖して止水することを特徴とする、地下構造物の止水方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−57275(P2006−57275A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−238267(P2004−238267)
【出願日】平成16年8月18日(2004.8.18)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(000141060)株式会社関電工 (115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月18日(2004.8.18)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(000141060)株式会社関電工 (115)
【Fターム(参考)】
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