説明

地下構造物及びその施工方法

【課題】漏水を早期に発見することができると共に、地下構造物の浮き上がりを防止し、容易に補修及び施工することができる地下構造物及びその施工方法を提供することを課題とする。
【解決手段】地下構造物1は、掘削された穴に載置され、プレキャストコンクリートからなるカウンターウエイトHと、底面部5と、底面部5の縁部から立設された壁面部6とを備え、プレキャストコンクリートからなる箱状体2と、を有し、底面部5の下面は、カウンターウエイトHの上面に接続部を介して接続されていることを特徴とする。これにより、カウンターウエイトHa,Hbの自重により、地下水による地下構造物1の浮き上りを防止することができる。また、カウンターウエイトH及び箱状体2に係る各部材はプレキャストコンクリート部材から形成されているため、個々の部材の搬送作業が非常に容易である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下構造物、特に戸建住宅の地下に構築する地下構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、住宅などの建物を施工する際に限られた土地を有効に利用するため、地中を掘削して形成された穴に地下構造物を構築して地下にスペースを確保することが注目されている。このようにして形成された地下構造物は、防音性、遮蔽性等に優れているため、例えば、ホームシアター、楽器の練習場、書斎、パソコン部屋及び収納庫等様々な用途に利用することができる。
【0003】
従来の地下構造物は、例えば、特許文献1に記載されているように、複数のプレキャストコンクリート部材を連結して壁を形成すると共に、鉄筋が配筋された底面部にコンクリートを打設して施工されていた。
【特許文献1】特開平11−13072号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に係る地下構造物は、底面部を施工する際に、配筋作業を行った後に、コンクリートを打設し、さらに養生を行うため施工に手間がかかり、施工期間の長期化や施工コスト高を招来するものであった。また、比較的小型の地下構造物を施工する際には、地下水の圧力によって当該地下構造物が浮き上がってしまうという問題があった。
このような観点から本発明は、地下構造物の浮き上がりを防止すると共に、容易に施工することができる地下構造物及びその施工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題に基づいて創案された発明は、掘削された穴に載置され、プレキャストコンクリートからなるカウンターウエイトと、底面部と、この底面部の縁部から立設された壁面部とを備え、プレキャストコンクリートからなる箱状体と、を有し、前記底面部の下面は、前記カウンターウエイトの上面に接続部を介して接続されていることを特徴とする。
【0006】
かかる構成によれば、カウンターウエイトの自重により、地下水による地下構造物の浮き上りを防止することができる。また、箱状体自体の軽量化を図ることができると共に、カウンターウエイト及び箱状体はプレキャストコンクリートからなるため、搬送作業が非常に容易である。また、鉄筋の配筋やコンクリートを打設する必要がないため、施工作業が非常に容易であり、施工期間を短縮することができる。
【0007】
また、請求項2に係る発明は、掘削された穴に載置され、底面部と、この底面部の縁部から立設された壁面部とを備え、プレキャストコンクリートからなる箱状体と、前記底面部に設置されたカウンターウエイトと、を有することを特徴とする。
【0008】
かかる構成によれば、カウンターウエイトの自重により、地下水による地下構造物の浮き上りを防止することができる。また、箱状体自体の軽量化を図ることができると共に、箱状体はプレキャストコンクリートからなるため、搬送作業が非常に容易である。また、鉄筋の配筋を行う必要がないため、施工作業が非常に容易であり、施工期間を短縮することができる。
【0009】
また、請求項3に係る発明は、掘削された穴に載置され、内部に空間部を備えた底面部と、この底面部の縁部から立設された壁面部と、前記底面部の上面に穿設された注入口と、を有しプレキャストコンクリートからなる箱状体と、前記空間部に前記注入口から充填材を充填して形成されたカウンターウエイトと、を有することを特徴とする。
【0010】
かかる構成によれば、カウンターウエイトの自重により、地下水による地下構造物の浮き上りを防止することができる。また、箱状体自体の軽量化を図ることができると共に、箱状体に係る各部材はプレキャストコンクリートからなるため、搬送作業が非常に容易である。また、カウンターウエイトは、箱状体の底面部に形成された空間部に充填材を充填することにより形成されるため、容易に施工することができる。
【0011】
また、請求項1に係る前記接続部は、前記接続部は、前記底面部に切り欠いて形成された第一凹部と、前記カウンターウエイトの上面に切り欠いて形成された第二凹部と、前記第一凹部及び前記第二凹部にそれぞれ当接されるL型金具と、前記L型金具を留め付ける留付具と、を有することを特徴とする。
【0012】
かかる構成によれば、箱状体及びカウンターウエイトにL型金具を当接させることにより、箱状体とカウンターウエイトの接合を容易かつ確実に行うことができる。
【0013】
また、請求項2に係る前記カウンターウエイトは、プレキャストコンクリートからなり、前記底面部に形成された受け部に嵌合されていることを特徴とする。
【0014】
かかる構成によれば、受け部にプレキャストコンクリートからなるカウンターウエイトを嵌め込むことで、カウンターウエイトを安定して載置することができる。
【0015】
また、請求項2に係る前記カウンターウエイトは、前記底面部に形成された受け部に充填材を充填して形成されていることを特徴とする。
【0016】
かかる構成によれば、受け部に充填材を充填するだけでカウンターウエイトが形成されるため、容易に施工することができる。
【0017】
また、請求項1乃至請求項3に係る前記底面部は、凹溝部を有することを特徴とする。
【0018】
かかる構成によれば、凹溝部を例えば、作業用ピットとして利用することができるため、例えば載置した荷物の移動作業に好適である。
【0019】
また、請求項1乃至請求項3係る箱状体は、複数のプレキャストコンクリート部材を、継ぎ手を介して連結して形成されており、隣り合う前記プレキャストコンクリート部材が接触する接触面から延設された漏水確認用溝を有することを特徴とする。
【0020】
かかる構成によれば、複数のプレキャストコンクリートを連結して、箱状体を形成するため、箱状体に係る各部材の軽量化をさらに図ることができる。また、プレキャストコンクリートが接触する目地から漏水が発生したとしても、水が漏水確認用溝に流れるため、底面部が水浸しになることを防止すると共に、漏水の確認作業を容易に行うことができる。
【0021】
また、本発明に係る請求項3に記載の地下構造物の施工方法であって、地面に穴を掘り、底面を整地する整地工程と、整地された前記底面に、前記箱状体を載置する載置工程と、前記空間部に、前記注入口から充填材を充填する充填工程と、を含むことを特徴とする。
【0022】
かかる構成によれば、箱状体の底面部に形成された空間部に充填材が注入されることにより、当該充填材がカウンターウエイトの役割を果たし、地下水の圧力による地下構造物の浮き上りを防止することができる。また、箱状体は、プレキャストコンクリートからなるため、各部材の搬送作業が非常に容易である。また、底部に形成された注入口から充填材を充填するだけでよいため、施工作業が非常に容易であり、施工期間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る地下構造物によれば、地下構造物の浮き上がりを防止すると共に、容易に施工することができる地下構造物及びその施工方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
[第一実施形態]
本発明の最良の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、第一実施形態に係る地下構造物の一部透視斜視図である。図2は、第一実施形態に係る地下構造物を示した図であって、図1のA−A線断面図である。図3は、第一実施形態に係る地下構造物の中間部材を示した図であって、(a)は斜視図、(b)は(a)のB−B線平面図である。図4は、第一実施形態に係る地下構造物の背面側端部部材を示した図であって、(a)は斜視図、(b)は(a)のC−C線断面図である。図5は、第一実施形態に係る地下構造物の隣り合う中間部材同士の継ぎ手構造を示した平面図である。図6は、第一実施形態に係る地下構造物の端部部材と中間部材の接触面を示した平面図である。図7は、第一実施形態に係る地下構造物の箱状体の平面図である。図8は、第一実施形態に係る地下構造物の接合部に係る図であって、(a)は、正面図、(b)は、(a)のE−E線断面図である。図9は、第一実施形態に係る施工方法を示した図であって、(a)は、カウンターウエイト載置工程、(b)は、中間部材設置工程、(c)は、背面側端部部材設置工程、(d)は、中間部材並設工程、(e)は、正面側端部部材設置工程を示した斜視図である。
なお、説明中の上下、左右、正面、背面は、図1の矢印に従うこととする。また、単に内側、外側とは、箱状体2に対する内側、外側をいう。
【0025】
第一実施形態に係る地下構造物1は、図1及び図2に示すように、掘削された穴の底面に形成された基台部Fに一定の間隔をあけて載置された一対のカウンターウエイトH(Ha,Hb)と、カウンターウエイトHの上面に接合された箱状体2とからなる。
基台部Fは、掘削された穴の底面に割栗石を敷き詰めて上面が平坦になるように形成されている。基台部Fは、必ずしも必要なものではなく、地面の性質を考慮して適宜設ければよい。
【0026】
地下構造物1は、具体的な図示はしないが、例えば戸建住宅の地下に設置されるものである。地下構造物1の上部は、例えば、一階の床で覆設され、当該床の一部に穿設された出入り口等によって、住宅の一階部分と地下構造物1とを出入り可能に形成することが好ましい。地下構造物1の用途は、ホームシアター、楽器の練習場、書斎、パソコン部屋及び収納庫等多岐に亘るが、第一実施形態においては、収納庫として使用する場合を例にして説明する。
【0027】
<箱状体>
箱状体2は、図1及び図2に示すように、地下に空間を形成する地下構造物1の本体部分である。箱状体2は、上部が開放した平面視矩形の箱状を呈し、プレキャストコンクリートからなる躯体を連結して形成されている。即ち、箱状体2は、略同形状からなる複数の中間部材3(3a〜3d)と、中間部材3の両端を塞ぐ一対の端部部材4(4a,4b)とを連結して形成されている。箱状体2は、中間部材3及び端部部材4から形成された底面部5と、底面部5の縁部から立設された壁面部6,6,6,6とを有する。
ここで、壁面部6は、正面側、背面側、左側、右側に配置されているものをそれぞれ、正面側壁面部6a、背面側壁面部6b、左側壁面部6c、右側壁面部6dとする。また、箱状体2の底面部5には、正面側壁面部6aから背面側壁面部6bに向けて連続して形成された凹溝部8が形成されている。
【0028】
<中間部材>
中間部材3は、図1及び図3に示すように、箱状体2の底面部5、左側壁面部6c及び右側壁面部6dを形成する部材である。中間部材3a〜3dは、略同等の部材であるため、中間部材3aを例にして説明する。
中間部材3aは、断面視略U字状を呈し、底面部5を形成する中間底面部11と、中間底面部11の両端から鉛直に立設し、左側壁面部6c及び右側壁面部6dを形成する一対の中間壁面部12,12とを有する。また、中間部材3は、図3の(b)に示すように、正面側の面に形成された第一シーリング溝15と、背面側の面に形成された第二シーリング溝16及びシール溝18(図2参照)と、を有する。
ここで、中間底面部11及び中間壁面部12のうち、他の中間部材3又は端部部材4と接触する正面側の面を正面側接触面13、背面側の面を背面側接触面23とする(図2参照)。
【0029】
中間底面部11は、箱状体2の底面部5を形成する部材である。中間底面部11は、下方に向けて突出した中間凹溝部14と、中間底面部11の上面に形成された第一漏水確認用溝20と、第一漏水確認用溝20から延設された第二漏水確認用溝21と、正面側接触面13に形成された第一凹部19,19と、を有する。
【0030】
中間凹溝部14は、箱状体2の最も深い位置に形成された第一底部14aと、第一底部14aの両端から立ち上がる一対の立上り部14b,14bとを有する。立上り部14b,14bの間隔は、上方に向けて拡開するように形成されている。また、立上り部14b,14bのそれぞれの表面の両縁部には、他の中間部材3又は端部部材4と連結する際に用いる継ぎ手用孔14c,14c・・・が形成されている。
【0031】
ここで、中間底面部11の上面のうち、最も中間壁面部12側に近い部分を淵部Jとする。第一漏水確認用溝20は、隣り合う中間部材3や端部部材4との目地から漏水があった場合に、水の流路となる溝である。第一漏水確認用溝20は、第一実施形態においては、淵部J,Jにおいて、正面側接触面13から背面側接触面23に亘って延設されている。
なお、第一漏水確認用溝20は、第一実施形態においては上記したように形成したが、
必ずしも正面側接触面13から背面側接触面23に亘って連通して形成される必要はなく、正面側接触面13及び背面側接触面23のうち、少なくともいずれか一方の面から延設されていればよい。
【0032】
第二漏水確認用溝21は、第一漏水確認用溝20から延設された溝であって、第一漏水確認用溝20に流れた水を箱状体2の内側に向けて流すためのものである。第二漏水確認用溝21は、第一実施形態においては、第一漏水確認用溝20に対して略垂直に形成されている。
第一漏水確認用溝20及び第二漏水確認用溝21は、第一実施形態においては、共に断面視台形(図2参照)に形成されているが、これに限定されるものではなく、例えば断面視円形状や三角形状に形成してもよい。
【0033】
第一凹部19は、カウンターウエイトHa,Hbと接続される接合部Wで用いられる部分である。第一凹部19は、中間底面部11の正面側接触面13に係る縁部に、側面視矩形に切り欠いて形成された溝である。接合部Wの詳細については後記する。
【0034】
中間壁面部12は、箱状体2の壁面部6を形成する部分である。一対の中間壁面部12の内面の両縁部には、他の中間部材3又は端部部材4と連結する際に用いる継ぎ手用孔12a,12a・・・が形成されている。
【0035】
第一シーリング用切欠き部15は、図3の(b)に示すように、正面側接触面13の内側の縁部に切り欠いて形成された溝である。第一シーリング用切欠き部15は、図3の(a)に示すように、正面側接触面13のうち、中間壁面部12の上端部及び内側の縁部、中間底面部11の内側の縁部に亘って連続して形成されている。
【0036】
第二シーリング用切欠き部16は、図2及び図3の(b)に示すように、背面側接触面23の内側の縁部に切り欠いて形成された溝である。第二シーリング用切欠き部16は、背面側接触面23のうち、中間壁面部12の上端部、内側の縁部、中間底面部11の内側の縁部に亘って連続して形成されている。
【0037】
シール溝18は、図2及び図3の(b)に示すように、平面視台形状であって、背面側接触面23の形状に沿うようにして形成されている。シール構造の詳細については後記する。
【0038】
中間部材3は、予め工場等で製造され、内部に鉄筋が配筋されたプレキャストコンクリート部材である。なお、中間部材3は、第一実施形態においては上記のように形成したが、これに限定されるものではなく、使用用途等に応じて適宜設定すればよい。例えば、中間凹溝部14は必ずしも設ける必要はなく中間底面部11を平坦に形成してもよい。また、第一漏水確認用溝20、第二漏水確認用溝21は必要に応じて適宜設ければよい。また、第一実施形態においては、4つの中間部材3を用いたが、単数でもよく、所望の箱状体2の大きさに応じて適宜設定すればよい。
【0039】
<端部部材>
端部部材4は、図1及び図4に示すように、箱状体2の両端を形成する部材である。端部部材4は、正面側に配設される正面側端部部材4aと背面側に配設される背面側端部部材4bとからなる。正面側端部部材4aと背面側端部部材4bは、略同等の形状であるため、背面側端部部材4bを例にして説明する。
【0040】
背面側端部部材4bは、図4に示すように、基面部30と、基面部30の下端から垂直に張り出した端部底面部31と、基面部30の両端から垂直に張り出した一対の端部壁面部32,32と、中間部材3と接触する面に形成された第一シーリング溝35と、を有する。端部底面部31及び端部壁面部32のうち、中間部材3aと接触する正面側の面を正面側接触面33とする。
【0041】
基面部30は、板状体であって、背面側壁面部6bを形成する部分である。基面部30の下部と両側部には、端部底面部31及び端部壁面部32が形成されている。
端部底面部31は、箱状体2の底面部5を形成する部材である。端部底面部31は、下方に向けて突出した端部凹溝部34と、端部底面部31の上面に形成された第一漏水確認用溝80と、第一漏水確認用溝80から延設された第二漏水確認用溝81と、を有する。
【0042】
端部凹溝部34は、箱状体2の最も深い位置に形成された第二底部34aと、第二底部34aの両端から立ち上がる一対の立上り部34b,34bとを有する。立上り部34b,34bの間隔は、上方に向けて拡開するように形成されている。また、立上り部34b,34bのそれぞれの表面の縁部には、中間部材3aと連結する際に用いる継ぎ手用孔34c,34cが形成されている。
【0043】
ここで、端部底面部31の上面のうち、最も端部壁面部32側に係る部分を淵部K,Kとする。第一漏水確認用溝80は、淵部K,Kにおいて、正面側接触面33から基面部30に向かって延設され、隣り合う中間部材3aとの目地から漏水があった場合に、水の流路となる溝である。
【0044】
第二漏水確認用溝81は、第一漏水確認用溝80から延設された溝であって、第一漏水確認用溝80に流れた水を箱状体2の内側に向けて流すためのものである。第二漏水確認用溝81は、第一実施形態においては、第一漏水確認用溝80に対して略垂直に、基面部30に沿って形成されている。
第一漏水確認用溝80及び第二漏水確認用溝81は、第一実施形態においては、共に断面視台形(図2参照)に形成されているが、断面視円形状や三角形状に形成してもよい。
【0045】
端部壁面部32は、箱状体2の壁面部6を形成する部分である。一対の端部壁面部32の内面の縁部には、中間部材3aと連結する際に用いる継ぎ手用穴32a,32aが形成されている。
【0046】
第一シーリング用切欠き部35は、隣り合う中間部材3aの第二シーリング切欠き部16(図3の(b)参照)と重ね合わせてできたシーリング溝に、シール材を充填させて、接触面の密着性を高めるためのものである。
第一シーリング用切欠き部35は、図4の(b)に示すように、正面側接触面33の内側の縁部に切り欠いて形成された溝である。第一シーリング用切欠き部35は、正面側接触面33のうち、端部壁面部32の上端部及び内側の縁部、端部底面部31の内側の縁部に亘って連続して形成されている。シール構造の詳細については後記する。
【0047】
端部部材4は、予め工場等で製造され、内部に鉄筋が配筋されたプレキャストコンクリート部材である。端部部材4は、第一実施形態においては、上記のように形成したが、これに限定されるものではなく、使用用途等に応じて適宜設定すればよい。例えば、端部凹溝部34は必ずしも設ける必要はなく端部底面部31を平坦に形成してもよい。また、第一漏水確認用溝80、第二漏水確認用溝81は必要に応じて適宜設ければよい。
【0048】
なお、図1に示すように、正面側端部部材4aは、隣り合う中間部材3dと接触する背面側接触面(図示省略)の形状を除いて背面側端部部材4bと略同等であるため、簡単に説明する。
正面側端部部材4aの背面側接触面は、中間部材3の背面側接触面23と同等の形状であるため、図2を参照して説明する。正面側端部部材4aの背面側接触面23は、背面側接触面23形状に沿って、シール溝18が形成されている。また、背面側接触面23の内側の縁部には、第二シーリング用切欠き部16が形成されている。
即ち、中間部材3及び端部部材4の接触面のうち、正面側接触面には、第一シーリング用切欠き部が形成されており、背面側接触面には、第二シーリング用切欠き部及びシール溝が形成されている。
【0049】
<継ぎ手構造>
次に、中間部材3及び端部部材4の継ぎ手構造について説明する。
継ぎ手Tは、中間部材3と端部部材4及び中間部材3同士を連結するために用いるものである。継ぎ手Tは、第一実施形態においては、図3及び図4に示すように、中間部材3と端部部材4との接触部分又は中間部材3同士の接触部分において、中間壁面部12、端部壁面部32及び凹溝部8の立上り部14b,34bに形成されている。継ぎ手Tは、いずれの箇所においても同等のものを用いているため、壁面部6において隣り合う中間部材3が連結される場合を例にして説明する。
【0050】
継ぎ手Tは、図5に示すように、隣り合う中間部材3,3の縁部に継ぎ手用孔12a,12aがそれぞれ形成されており、継ぎ手用孔12a,12a接触面側に、断面視コの字状を呈する一対の金具M,Mが背中合わせに設置されている。一対の金具M,Mと、中間部材3,3の接触面には貫通穴Pが穿設されており、ボルト及びナットからなる締結具Nで締結されている。なお、図中の点線部分は、金具Mのアンカー部分である。
【0051】
なお、継ぎ手Tは、上記した構造に限定されるものではない。箱状体2の大きさ、形状等を鑑みて適宜設定すればよい。また、継ぎ手Tの設置位置、個数等も適宜設定すればよい。また、必要に応じて、継ぎ手用孔12aに充填材を充填してもよい。
【0052】
<シール構造>
次に、中間部材3及び端部部材4の接触面のシール構造について説明する。シール構造Rは、中間部材3及び端部部材4の接触面にシール材を充填させることにより、接触面の密着性を高め、水の通り道を閉鎖するものである。
中間部材3と端部部材4及び中間部材3同士の接触面におけるシール構造Rは、全て同等であるため、中間部材3aと背面側端部部材4bとが接触する部分を例にして説明する。図6は、第一実施形態に係る中間部材3aと背面側端部部材4bの接触面を示した平面図である。
シール構造Rは、第一実施形態においては、箱状体2の内面側に形成されたシーリング溝17によるものと、接触面の内部に形成されたシール溝18によるものの2種類が設けられている。
【0053】
シーリング溝17は、中間部材3aに形成された第二シーリング用切欠き部16と、背面側端部部材4bに形成された第一シーリング用切欠き部35とを重ね合わせて形成されている。シーリング溝17には、公知の不定形シール材Saが充填されており、末端(紙面左側)には高発泡ポリエチレンのバックアップ材Baが充填されている。シーリング溝17は、箱状体2の内側に向けて拡開したテーパ状になっており、シール材Saを充填しやすいように形成されている。
【0054】
シール溝18は、中間部材3aの背面側接触面23に平面視台形状に形成されている。一方、対向する背面側端部部材4bの正面側接触面33は、平坦に形成されている。これにより、中間部材3aと背面側端部部材4bが接触して形成された空間部分にシール材Sbが充填されている。シール材Sbは例えば、公知の水膨張ゴムを用いている。これにより、水がシール材Sbに接触すると、自己膨張圧により、接触面の水みちを完全に閉塞して、止水効果発揮することができる。
【0055】
なお、第一実施形態においては、シール構造Rを上記したように形成したが、これに限定されるものではない。シール構造Rの設置箇所や材質、構造等は中間部材3、端部部材4の厚みや大きさに応じて適宜設定すればよい。
【0056】
<漏水確認用溝>
漏水確認用溝Uは、図7に示すように、中間部材3と端部部材4及び中間部材3同士の目地から漏水があった場合に、水の流路となるものである。漏水確認用溝Uは、図7に示すように、第一漏水確認用溝20,80と第二漏水確認用溝21,81とからなる。
第一漏水確認用溝20,80は、中間部材3及び端部部材4が連結されることにより、壁面部6に沿って連通して形成される。また、第二漏水確認用溝21,81は、第一漏水確認用溝20又は80から箱状体2の内側に向かってそれぞれ形成されている。
【0057】
これにより、中間部材3及び端部部材4の目地や中間部材3同士の目地から漏水した場合であっても、第一漏水確認用溝20,80及び第二漏水確認用溝21,81に流入するため、箱状体2の底面部5が水浸しになるのを防止して、早期に漏水を発見することができる。
【0058】
なお、第一実施形態においては、第一漏水確認用溝20,80及び第二漏水確認用溝21,81は、上記したように形成したが、これに限定されるものではない。例えば、地下構造物1に収納する物の配置位置に応じて適宜第二漏水確認用溝21,81を形成することで、確認作業をより容易に行うことができる。即ち、例えば、全ての中間部材3の中間底面部11に第二漏水確認用溝21を形成してもよい。
【0059】
以上、箱状体2の形状について説明したが、これに限定されるものではない。箱状体2は、第一実施形態においては、複数のプレキャストコンクリートを並設して形成したが、
例えば、箱状体2を1体のプレキャストコンクリートから形成してもよい。即ち、プレキャストコンクリートの数及び形状は、箱状体2の所望の大きさや形状に合わせて適宜設定すればよい。また、箱状体2の形状は、平面視矩形に形成したが、平面視円形又は他の多角形状であってもよい。また、例えば、中間部材を筒状に形成して、箱状体2の天井部分を形成してよい。
【0060】
また、凹溝部8は、本実施形態においては、底面部5の中央に連続する一の凹を備えたものであるが、これに限定されるものではない。例えば、複数の凹溝部を形成してもよいし、中央でなく端に凹溝部を形成してもよい。また、凹溝部8の深さは、地下構造物1の用途に応じて適宜設定すればよい。
【0061】
<カウンターウエイト>
カウンターウエイトHは、図1及び図2に示すように、地下水の浮力に抵抗するために、錘の役割を担う部材である。カウンターウエイトHは、一部面取り加工を施した直方体を呈し、第一実施形態においては4体用いている。カウンターウエイトHの上面には、後記する接合部Wに用いられる第二凹部41が、中間部材3の第一凹部対応する位置に形成されている(図9の(a)参照)。
【0062】
カウンターウエイトHは、第一実施形態においては、箱状体2の下方において、凹溝部8を隔てて左右一対に配置されている。カウンターウエイトHの上面は、中間部材3の中間底面部11及び端部部材4の端部底面部31に当接されており、カウンターウエイトHの内側の側面は、中間部材3の立上り部14b及び端部部材4の立上り部34bにそれぞれ当接されている。また、凹溝部8の下面と、カウンターウエイトHの下面は面一に形成されている。
箱状体2は、中央において下方に突出する凹溝部8を有する形態であるためそれ自体は不安定な形状であるが、このように凹溝部8を挟むようにカウンターウエイトHを設置することで安定して箱状体2を設置することができる。
【0063】
なお、第一実施形態においては、カウンターウエイトHを上記したように形成したが、これに限定されるものではない。例えば、一対ではなく、一体的にカウンターウエイトを形成してもよい。
【0064】
<接合部>
接合部Wは、図1及び図8に示すように、中間部材3とカウンターウエイトHを接合する部分である。接合部Wは、図8の(b)に示すように、中間部材3の正面側接触面13に切り欠いて形成された第一凹部40と、カウンターウエイトHの上面を切り欠いて形成された第二凹部41と、第一凹部40及び第二凹部41にそれぞれ当接されたL型金具42と、L型金具42と中間部材3、L型金具42とカウンターウエイトHをそれぞれ留め付ける留付具m,m・・・と、中間部材3の側面及びカウンターウエイトHの上面にそれぞれ埋設されたインサート43と、第一凹部40及び第二凹部41に充填された充填材44とからなる。
【0065】
L型金具42は、2枚の金属板を垂直に連結した断面視L字状を呈する金具であって、一方の面が第一凹部40の側面に当接され、他方の面が第二凹部41の底面に当接されている。留付具mは、L型金具42の一の面につき二箇所ずつ設けられている。充填材44は、正面側接触面13及びカウンターウエイトHの上面が平坦になるように充填されている。第二凹部41は、中間部材3の幅寸法に合わせて、カウンターウエイトHの上面に形成されている。
【0066】
かかる構成によれば、第二凹部41は、カウンターウエイトHの上面において、予め中間部材3の正面側接触面13に対応する位置に形成されているため、中間部材3の設置作業を行う時に、位置決めを容易に行うことができる。また、L型金具42が、第一凹部40の側面と第二凹部41の底面にそれぞれ当接されるため、接合の精度を高めることができる。また、充填材44を用いて、カウンターウエイトHの上面を平坦に形成するため、隣り合う中間部材3の設置作業の妨げにならずに施工することができる。また、充填材44を充填することで、L型金具42の錆びを防止することができる。
【0067】
なお、カウンターウエイトHと中間部材3との接合部Wは、上記のように成形したが、これに限定されるものではない。例えば、第一実施形態においては、中間部材3に形成したが、端部部材4に形成してもよい。また、充填材44は必ずしも設けるものではなく、任意に設ければよい。
【0068】
<施工方法>
次に、地下構造物1の施工方法について説明する。
地下構造物1における施工方法は、地面を掘削して穴を形成し、穴の底面を整地する整地工程と、整地された地面に平坦な基台部を形成する基台部形成工程と、基台部にカウンターウエイトを載置するカウンターウエイト載置工程と、カウンターウエイトの上面に中間部材を設置する中間部材設置工程と、中間部材の背面側に端部部材を設置する背面側端部部材設置工程と、複数の中間部材を並設する中間部材並設工程と、中間部材の正面側に正面側端部部材を設置する正面側端部部材設置工程と、を含むものである。
【0069】
(整地工程)
まず、掘削機等で地面に穴を掘り、穴の底面を平坦に整地する。
(基台部形成工程)
次に、整地された地面に割栗石等を敷き詰めて、平坦な基台部Fを形成する。基台部Fの厚さは、例えば、約10cm程度に形成する(図9の(a)参照)。
【0070】
(カウンターウエイト載置工程)
次に、図9の(a)に示すように、基台部Fの上部にカウンターウエイトHを載置する。第一実施形態においては、左右一対のカウンターウエイトHa,Hbを、凹溝部8の幅をあけて載置する。カウンターウエイトHaの上面には、第二凹部41(図8の(b)参照)が予め各カウンターウエイトHの上面に4箇所ずつ形成されている。
【0071】
(中間部材設置工程)
次に、図9の(b)に示すように、カウンターウエイトHa,Hbの上面に中間部材3aを設置する。第一実施形態においては、中間部材3のうち、最も背面側に相当する中間部材3aから載置すると共に、中間部材3aとカウンターウエイトHを接合部Wで接合する。
【0072】
(背面側端部部材設置工程)
次に、図9の(c)に示すように、中間部材3aの背面側に背面側端部部材4bを設置する。中間部材3aと背面側端部部材4bの連結は、壁面部6及び凹溝部8の継ぎ手Tによって行う。
【0073】
(中間部材並設工程)
次に、図9の(d)に示すように、中間部材3aの正面側に中間部材3b設置する。カウンターウエイトHa,Hbの上面と中間部材3bを接合部Wで接続すると共に、中間部材3a及び3bを継ぎ手Tで連結する。同様の作業で、順次中間部材3c,3dを並設する。
【0074】
(正面側端部部材設置工程)
最後に、図9の(e)に示すように、最も正面側に位置する正面側端部部材4aを設置する。中間部材3dと正面側端部部材4aの連結は、壁面部6及び凹溝部8の継ぎ手T(図示省略)によって行う。
【0075】
なお、第一実施形態においては、上記のように地下構造物1を施工したが、施工方法、施工順序はこれに限定されるものではない。即ち、第一実施形態においては、中間部材3の正面側接触面13に接合部Wが形成されているため、中間部材3aから設置したが、接合部Wの配置位置によっては、他の中間部材3から設置してもよい。
【0076】
以上説明した地下構造物1によれば、カウンターウエイトHの自重により、地下水による箱状体2の浮き上りを防止することができる。また、カウンターウエイトH及び箱状体2に係る各部材はプレキャストコンクリートから形成されているため、個々の部材の搬送作業が非常に容易である。また、鉄筋の配筋やコンクリートを打設する必要がないため、施工作業が非常に容易であり、施工期間を短縮することができる。また、所望の地下構造物1の大きさに応じて適宜中間部材3の個数を変更することで、大きさを容易に設定することができる。
【0077】
また、箱状体2の底面部5に形成された凹溝部8を作業用ピットとして利用することができるため、例えば載置した荷物の移動の際に腰などへの負担を軽減して、好適に作業することができる。また、凹溝部8の両側に、カウンターウエイトHa,Hbが載置されており、カウンターウエイトHa,Hbの下面と、凹溝部8の下面は面一に形成されているため、安定性の高い地下構造物1を形成することができる。
【0078】
また、箱状体2の下方にカウンターウエイトHが備えられているため、箱状体2の内側に係る中間部材3と端部部材4の目地が露出されている。そのため、当該目地から漏水があったとしても、早期に発見し、容易に補修作業を行うことができる。
【0079】
また、中間部材3と端部部材4の目地から漏水が発生したとしても、水が第一漏水確認用溝20,80に流れるため、底面部5が水浸しになることを防止すると共に、漏水の確認作業を容易に行うことができる。また、第一漏水確認用溝20,80から箱状体2の内側に向けて第二漏水確認用溝21,81を形成したため、地下構造物1に収納する物の配置位置に応じて適宜水の流路を設定し、より早期に漏水を確認することができる。
【0080】
[第二実施形態]
次に、本発明に係る第二実施形態について説明する。なお、第一実施形態と重複する部分においては説明を省略し、第一実施形態と同一の部材は同一の符号を付すものとする。
図10は、第二実施形態を示した図であって、(a)は、全体斜視図、(b)は、接合部を示した断面図である。第二実施形態に係る地下構造物50は、カウンターウエイトHの上面と中間部材3を接続する接合部W1の構造において相違する。
【0081】
第二実施形態に係る接合部W1は、図10の(a)及び(b)に示すように、中間部材3の中間底面部11に切り欠いて形成された第三凹部51と、第三凹部51の底面から穿設された貫通孔52と、カウンターウエイトHの上面に埋設されたインサート53と、インサート53に嵌合されるボルト等の留付具54と、第三凹部51に充填された充填材55とからなる。
【0082】
このように、中間部材3とカウンターウエイトHを留付具54を用いて鉛直方向に接合してもよい。これにより、中間部材3とカウンターウエイトHとを容易に接合することができる。この際、必要に応じて中間部材3とカウンターウエイトHの間に敷きモルタルや、ライナープレート(図示省略)等を設置して、止水対策を施すことが好ましい。
【0083】
[第三実施形態]
次に、本発明に係る第三実施形態について説明する。なお、第一実施形態と重複する部分においては説明を省略し、第一実施形態と同一の部材は同一の符号を付すものとする。
図11は、第三実施形態に係る地下構造物を示した図であって、(a)は、全体斜視図、(b)は、中間部材の斜視図である。第三実施形態は、カウンターウエイトHを箱状体69の内部に載置する点において、第一実施形態と相違する。
【0084】
第三実施形態に係る地下構造物60の中間部材61,61・・・は、図11の(a)及び(b)に示すように、平坦な中間底面部62と、中間壁面部12,12とを有する。また、中間底面部62には、上面の右側に第一受け部63a、左側に第二受け部63bが形成されている。
【0085】
ここで、図11の(b)に示すように、中間底面部62の上面の4隅には、中間壁面部12,12に対して直交する方向に、それぞれ独立して立設された立壁部64,64・・・が所定の間隔をあけて形成されている。ここで、立壁部64のうち、正面側の右側に立設された立壁部を正面右側立壁部64aとし、その他をそれぞれ、背面右側立壁部64b、正面左側立壁部64c、背面左側立壁部64dとする。
【0086】
即ち、第一受け部63aは、中間壁面部12と、中間底面部62と、正面右側立壁部64aと、背面右側立壁部64bとによって囲まれて形成された部分をいう。また、第二受け部63bは、中間壁面部12と、中間底面部62と、正面左側立壁部64cと、背面左側立壁部64dとによって囲まれて形成された部分をいう。
【0087】
カウンターウエイトH’は、図11の(a)に示すように、略直方体を呈するブロック状に形成されており、第三実施形態においては、8体用いられている。カウンターウエイトH’の幅は、正面右側立壁部64aと背面右側立壁部64bの間隔及び正面左側立壁部64cと背面左側立壁部64dの間隔と略同等に形成されている。これにより、カウンターウエイトH’は、第一受け部63a、第二受け部63bに隙間無く嵌合される。
また、カウンターウエイトH’の中央側の一端面66と、立壁部64の先端面65は、面一となるように形成されているため、底面部5の中央に凹溝部68が形成されている。また、カウンターウエイトH’の上面と立壁部64の上面は、面一に形成されている。
【0088】
以上説明したように、第三実施形態に係る地下構造物60は、カウンターウエイトH’の自重により、地下水による箱状体69の浮き上りを防止することができる。また、カウンターウエイトH’が第一受け部63a及び第二受け部63bに隙間無く嵌合されているため、カウンターウエイトH’と中間部材61を複雑な接合をしなくとも安定して載置することができる。また、中間部材61の軽量化を図ることができるため、搬送作業や施工作業を容易に行うことができる。
【0089】
また、地下構造物60は、中間部材61に形成された第一受け部63a及び第二受け部63bにカウンターウエイトH’を嵌合するため、中間部材61と端部部材4及び中間部材61同士の目地が露出されている。そのため、当該目地から漏水があったとしても、早期に発見し、容易に補修作業を行うことができる。
【0090】
なお、第三実施形態においては、上記したように形成したが、これに限定されるものではない。地下構造物60は、第一実施形態と同様に、複数のプレキャストコンクリートを並設して形成したが、これに限定されるものではなく、プレキャストコンクリートの数及び形状は、箱状体69の所望の大きさや形状に合わせて適宜設定すればよい。
【0091】
また、受け部63の形状や個数は、前記したものに限定されるものではなく、箱状体69の大きさや形状に基づいて適宜設定すればよい。
受け部63の変形例としては、例えば、図11の(b)に係る中間底面部62の中央側に中間壁面部12と平行に新たに立壁部(図示省略)を立設し、囲繞部を形成してもよい。そして、当該囲繞部に例えばコンクリート等の充填材を充填してカウンターウエイトを形成してもよい。これにより、型枠等を形成する必要がないため、カウンターウエイトを容易に形成することができる。
【0092】
また、凹溝部68は、第三実施形態においては、底面部5の中央に連続する一の凹を備えたものであるが、これに限定されるものではない。第三実施形態に係る凹溝部68は、受け部63及びカウンターウエイトH’の個数及び位置に応じて、カウンターウエイトHと中間壁面部12の間、又は、複数のカウンターウエイトH同士の間に適宜形成される。凹溝部68の深さ、形状等は、箱状体69の形状、プレキャストコンクリートの形状等に基づいて適宜設定すればよい。
【0093】
また、中間底面部62と、カウンターウエイトH’との間にスペーサー等を敷設してカウンターウエイトH’の面の高さを適宜調節してもよい。また、立壁部64の上面に、第一漏水確認用溝、第二漏水確認用溝を適宜形成してもよい。また、受け部を、端部部材4に形成して、カウンターウエイトHを嵌合してもよい。
【0094】
また、充填材は、コンクリートに限定されるものではなく、硬化モルタル、流動化処理土等公知の充填材を用いればよい。
【0095】
[第四実施形態]
次に、本発明に係る第四実施形態について説明する。なお、第一実施形態と重複する部分においては説明を省略し、第一実施形態と同一の部材は同一の符号を付すものとする。
図12は、第四実施形態に係る地下構造物を示した図であって、(a)は、全体斜視図、(b)は、断面図である。第四実施形態は、底面部の内部にカウンターウエイトを形成する点において、第一実施形態と相違する。
【0096】
第四実施形態に係る地下構造物70の中間部材71は、図12の(b)に示すように、充填材が充填される第一空間部73a及び第二空間部73bを有することを特徴とする。
中間部材71は、中間底面部72と、中間底面部72の両端から立設する一対の中間壁面部12,12とから形成されている。中間底面部72は、中間底面部72の上面から立設された一対の第一立面部74a及び第二立面部74bと、第一立面部74a、第二立面部74bから中間壁面部12,12に向かってそれぞれ延設された第一水平面部75a、第二水平面部75bと、第一水平面部75a及び第二水平面部75bに穿設された注入口76、76とを有する。
即ち、第一空間部73aは、中間壁面部12、中間底面部72、第一立面部74a及び第一水平面部75aによって囲まれて形成されている。また、第二空間部73bは、中間壁面部12、中間底面部72、第二立面部74b及び第二水平面部75bによって囲まれて形成されている。
【0097】
ここで、箱状体79は、図12の(a)に示すように、中間部材71が4体並設され、さらに、端部部材4,4を両端に配設することにより、底面部5に連通した空間部73,73が形成されている。そして、空間部73,73に充填材が充填されて、カウンターウエイト(図示省略)が形成される。充填材は、コンクリートに限定されるものではなく、硬化モルタル、流動化処理土等公知の充填材を用いればよい。
【0098】
次に、第四実施形態に係る地下構造物70の施工方法について説明する。
地下構造物70に係る施工方法は、地面を掘削して穴を形成し、穴の底面を整地する整地工程と、整地した地面に平坦な基台部を形成する基台部形成工程と、基台部の上面に中間部材を設置する中間部材設置工程と、中間部材の背面側に端部部材を設置する背面側端部部材設置工程と、複数の中間部材を並設する中間部材並設工程と、中間部材の正面側に正面側端部部材を設置する正面側端部部材設置工程と、空間部にコンクリートを打設するコンクリート打設工程とを含むものである。
【0099】
即ち、第一実施形態と略同等の方法で箱状体79を施工する(図9参照)。そして、中間部材71,71・・・を連結することにより、隣り合う第一空間部73a,73a・・・及び第二空間部73b,73b・・・が連通されると共に、端部部材4,4で当該空間部の両端を塞ぐことにより、一の閉じられた空間部73,73が形成される。そして、この空間部に、注入口76を介して充填材を充填し、養生することにより、中間部材71の内部にカウンターウエイトが形成される。
【0100】
かかる構成によれば、充填材を空間部73に充填するだけであるため、施工が非常に容易である。即ち、配筋作業や型枠の設置・脱型作業が不要であるため、作業の省力化を図ることができる。また、中間部材71の軽量化を図ることができるため、搬送作業や設置作業を容易に行うことができる。また、端部部材4と中間部材71及び中間部材71同士の目地が露出されている。そのため、当該目地から漏水があったとしても、早期に発見し、容易に補修作業を行うことができる。
【0101】
また、中間底面部72に第一立面部74a及び第二立面部74bが立設されているため、底面部5の中央に凹溝部78が形成されている。これにより、凹溝部78を作業用ピットとして利用することができるため、例えば載置した荷物の移動の際に腰などへの負担を軽減して、好適に作業することができる。
【0102】
なお、第四実施形態においては上記したように形成したが、これに限定されるものではない。地下構造物70は、第一実施形態と同様に、複数のプレキャストコンクリートを並設して形成したが、これに限定されるものではなく、プレキャストコンクリートの数及び形状は、箱状体79の所望の大きさや形状に合わせて適宜設定すればよい。
【0103】
また、空間部73の形状や個数は、前記したものに限定されるものではなく、箱状体79の大きさや形状に基づいて適宜設定すればよい。具体的な図示は省略するが、例えば、
第一立面部、第二立面部の上端を覆うように水平面部を形成して、底面部5の中央に空間部を形成してもよい。これにより、当該空間部の両側に凹溝部が形成される。また、例えば、第一立面部、第二立面部を設けずに、第一水平面部と第二水平面部を連続させて一の水平面部として空間部を形成してもよい。
また、注入口76は、中間部材71を連結して形成された一の空間部73につき、最低二箇所あるのが好ましい。即ち、充填材を注入するための孔と、空気抜けのための孔があるのが好ましい。また、第一水平面部75a及び第二水平面部75bのうち少なくとも一方の上面に、前記した第一漏水確認用溝、第二漏水確認用溝を適宜形成してもよい。
【0104】
以上、本発明の実施形態において説明したが、本発明は実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に反しない範囲において適宜変更が可能である。
例えば、第一実施形態に係る地下構造物1の底面部5の上面にカウンターウエイトを設置してもよい。また、第四実施形態に係る地下構造物70の底面部5の上面にカウンターウエイトを設置してもよい。即ち、各実施形態の特徴を組み合わせて地下構造物を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】第一実施形態に係る地下構造物の一部透視斜視図である。
【図2】第一実施形態に係る地下構造物を示した図であって、図1のA−A線断面図である。
【図3】第一実施形態に係る地下構造物の中間部材を示した図であって、(a)は斜視図、(b)は(a)のB−B線平面図である。
【図4】第一実施形態に係る地下構造物の背面側端部部材を示した図であって、(a)は斜視図、(b)は(a)のC−C線平面図である。
【図5】第一実施形態に係る地下構造物の隣り合う中間部材同士の継ぎ手構造を示した平面図である。
【図6】第一実施形態に係る地下構造物の端部部材と中間部材の接触部を示した平面図である。
【図7】第一実施形態に係る地下構造物の箱状体の平面図である。
【図8】第一実施形態に係る地下構造物の接合部に係る図であって、(a)は、正面図、(b)は、(a)のE−E線断面図である。
【図9】第一実施形態に係る施工方法を示した図であって、(a)は、カウンターウエイト載置工程、(b)は、中間部材設置工程、(c)は、背面側端部部材設置工程、(d)は、中間部材並設工程、(e)は、正面側端部部材設置工程を示した斜視図である。
【図10】第二実施形態を示した図であって、(a)は、全体斜視図、(b)は、接合部を示した断面図である。
【図11】第三実施形態に係る地下構造物を示した図であって、(a)は、全体斜視図、(b)は、中間部材の斜視図である。
【図12】第四実施形態に係る地下構造物を示した図であって、(a)は、全体斜視図、(b)は、断面図である。
【符号の説明】
【0106】
1 地下構造物
2 箱状体
3 中間部材
4 端部部材
5 底面部
6 壁面部
8 凹溝部
11 中間底面部
12 中間壁面部
14 中間凹溝部
20 第一漏水確認用溝
21 第二漏水確認用溝
40 第一凹部
41 第二凹部
42 L型金具
63a 第一受け部
63b 第二受け部
73a 第一空間部
73b 第二空間部
H カウンターウエイト
W,W1接合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削された穴に載置され、プレキャストコンクリートからなるカウンターウエイトと、
底面部と、この底面部の縁部から立設された壁面部とを備え、プレキャストコンクリートからなる箱状体と、を有し、
前記底面部の下面は、前記カウンターウエイトの上面に接続部を介して接続されていることを特徴とする地下構造物。
【請求項2】
掘削された穴に載置され、底面部と、この底面部の縁部から立設された壁面部とを備え、プレキャストコンクリートからなる箱状体と、
前記底面部に設置されたカウンターウエイトと、
を有することを特徴とする地下構造物。
【請求項3】
掘削された穴に載置され、内部に空間部を備えた底面部と、この底面部の縁部から立設された壁面部と、前記底面部の上面に穿設された注入口と、を有しプレキャストコンクリートからなる箱状体と、
前記空間部に前記注入口から充填材を充填して形成されたカウンターウエイトと、
を有することを特徴とする地下構造物。
【請求項4】
前記接続部は、
前記底面部に切り欠いて形成された第一凹部と、
前記カウンターウエイトの上面に切り欠いて形成された第二凹部と、
前記第一凹部及び前記第二凹部にそれぞれ当接されるL型金具と、
前記L型金具を留め付ける留付具と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の地下構造物。
【請求項5】
前記カウンターウエイトは、プレキャストコンクリートからなり、前記底面部に形成された受け部に嵌合されていることを特徴とする請求項2に記載の地下構造物。
【請求項6】
前記カウンターウエイトは、前記底面部に形成された受け部に充填材を充填して形成されていることを特徴とする請求項2に記載の地下構造物。
【請求項7】
前記底面部には、凹溝部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の地下構造物。
【請求項8】
前記箱状体は、複数のプレキャストコンクリートを、継ぎ手を介して連結して形成されており、隣り合う前記プレキャストコンクリートが接触する接触面から延設された漏水確認用溝を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の地下構造物。
【請求項9】
請求項3に記載の地下構造物の施工方法であって、
地面に穴を掘り、底面を整地する整地工程と、
整地された前記底面に、前記箱状体を載置する載置工程と、
前記空間部に、前記注入口から充填材を充填する充填工程と、
を含むことを特徴とする地下構造物の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−214946(P2008−214946A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−53213(P2007−53213)
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【出願人】(000174884)三井ホーム株式会社 (87)
【出願人】(000137074)株式会社ホクコン (40)
【Fターム(参考)】