説明

地下構造物施工用鉄筋支持金具

【課題】このような課題を解決したもので、防水シートを確実にベース金具に押し付けて固定することを可能にした地下構造物施工用鉄筋支持金具を提供する。
【解決手段】垂直の基板11の両側端を折り返して、互いに内方を向く係止部12が形成され、支保工40の前面に固定されるベース金具10と、展開時に係止部12に係止し、ベース金具10の前面との間で防水シート50を挟持する左右1対の蝶番片20a、20bを備えた蝶番状係止部材20と、一方の蝶番片20aの前面に突設され、操作杆24を着脱自在に装着する係止ピン28と、他方の蝶番片20bの前面に突設され、吊り鉄筋25をねじ込むための雌ねじ部材26と、係止ピン28に回転自在に取り付けられ、雌ねじ部材26に係止して、防水シート50をベース金具11の両端部前面に押し付けて保持する保持片29とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル、河川、港湾、又は建築等の工事における地下構造物のコンクリート施工時において、鉄筋を地下構造物の壁面に固定する地下構造物施工用鉄筋支持金具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、トンネル工事においては、地山にトンネルを穿削した後、その内面に、1次覆工コンクリートを吹付けて施工し、次いで、その表面に非通水性の防水シートを、その適所に釘止めすることにより貼設し、その後、防水シートの一部に穿孔し、そこに鉄筋支持金具を位置させ、1次覆工コンクリートより露呈させた支保工に溶接等により固着し、その前方にコンクリート型枠を構築し、次いで、防水シートとコンクリート型枠との間に、2次覆工用のコンクリートを打設していた。
【0003】
しかし、かかる施工方法では、防水シートの穿孔部分にシール材を介在させても、漏水を充分に防止することは困難であり、地山からの湧水が、2次覆工コンクリート側に浸出し、トンネル内の路面や、コンクリート層へ浸透した湧水の凍結に伴う膨脹によるコンクリート層の破壊等の原因となっている。
【0004】
そのため、防水シートに穿孔することなく、鉄筋を支持する技術として、支保工にベース金具を溶接し、蝶番状係止部材で吊り鉄筋をベース金具に係止させるようにした技術が提案されている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−34899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されている技術によると、防水シートに孔をあけることなく、簡易な作業で、防水シート表面に鉄筋支持金具を取り付けることができるが、以下のような改良すべき点があった。
【0007】
すなわち、フック状の保持具は、単に蝶番片が曲がらないように、蝶番片に設けた吊り鉄筋支持用の雌ねじ部材に係止させるだけの機能であり、防水シートをベース金具に押え付ける機能は有していなかった。そのため、鉄筋取付金具を施工した後の防水シートがベース金具の前面から浮きやすく、そのため、防水シートによじれを生じやすいという問題があった。また、吊り鉄筋を取り付ける雌ねじ部材として円筒形状のものを用いるため、雌ねじ部材としての特別な部品加工を必要とし、部品加工コストが高価になるという問題もあった。
【0008】
本発明は、このような課題を解決したもので、防水シートを確実にベース金具に押し付けて固定し、防水シートによじれが生じにくいようにするとともに、雌ねじ部材の部品加工コストの低減をはかった地下構造物施工用鉄筋支持金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1記載の地下構造物施工用鉄筋支持金具は、垂直の基板の両側端を折り返して、互いに内方を向く係止部が形成され、支保工の前面に固定されるベース金具と、展開時に前記係止部に係止し、前記ベース金具の前面との間で防水シートを挟持する左右1対の蝶番片を備えた蝶番状係止部材と、前記一方の蝶番片の前面に突設され、操作杆を着脱自在に装着する係止ピンと、前記他方の蝶番片の前面に突設され、吊り鉄筋をねじ込むための雌ねじ部材とを備えた地下構造物施工用鉄筋支持金具において、前記係止ピンに回転自在に取り付けられ、前記雌ねじ部材に係止して、前記防水シートを前記ベース金具の両端部前面に押し付けて保持する保持片を備えたことを特徴とするものである。
【0010】
請求項2記載の地下構造物施工用鉄筋支持金具は、請求項1記載の地下構造物施工用鉄筋支持金具であって、前記雌ねじ部材は、角ナットにより構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、保持片により防水シートをベース金具に押し付けて固定することができ、防水シートによじれが生じにくく、張りを持たせた状態で確実に鉄筋支持金具を取り付けることができる。また、吊り鉄筋取り付け用の雌ねじ部材として角ナットを使用することにより、市販の角ナットを使用することができ、部品加工コストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の地下構造物施工用鉄筋支持金具の実施形態を示す前方斜視図である。
【図2】地下構造物施工用鉄筋支持金具による防水シートの取り付け過程を示す平面図である。
【図3】示す地下構造物施工用鉄筋支持金具による防水シートの取り付け完了状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の地下構造物施工用鉄筋支持金具の実施形態を示す前方斜視図である。
本発明の地下構造物施工用鉄筋支持金具(以下、鉄筋支持金具と称する)は、ベース金具10と、蝶番状係止部材20とを備えている。ベース金具10は、方形の基板11の両側端を、前方および内方へ2度直角に屈曲することにより折り返して形成した、対向コ形断面の係止部12、12を両側に有する略C形状である。蝶番状係止部材20は、2枚の方形の蝶番片20a、20bの端縁同士を、上下方向を向く枢軸23をもって枢着したものである。なお、蝶番片20a、20bは、全ての角部で面取りされており、防水シートに当たる部分で防水シートが破れるのを防止するようにしている。
【0014】
一方の蝶番片20aの前面中央部に支持ピン28が溶接により固着され、他方の蝶番片20bの前面中央に前方を向く雌ねじ部材26が溶接により固着されている。支持ピン28には、正面略フック形状をなす板状の保持片29が回転自在に取り付けられている。保持片29は、支持ピン28に固定された止めリング30によりの前後の移動が規制されている。
【0015】
雌ねじ部材26には、全長にわたって雄ねじ25aが切られた吊り鉄筋25がねじ込まれている。また、支持ピン28には円筒状の操作杆24が着脱自在に挿入されている。
なお、吊り鉄筋25をねじ込むための雌ねじ部材26として図示のような角ナット26を用いると、市販の部材が使用でき、雌ねじ部材26として特別な加工部品を使用する必要がないので、その分安価な製品とすることができる。但し、雌ねじ部材26は円筒状のもの、あるいはその他の任意の形状のものでもよい。
【0016】
図2は、図1に示す鉄筋支持金具の蝶番状係止部材20をベース金具10に取り付ける途中の状態を示す平面図、図3は、本発明の鉄筋支持金具の使用状態を示す平面図である。
【0017】
地山に穿削したトンネルの表面に吹付け施工した1次覆工コンクリート30より露呈する支保工40に、溶接等によりベース金具10を固着する。
【0018】
次いで、防水シート50の一部をベース金具10の前部へ当てた状態で、図2に示すように、蝶番片20a、20bをやや折曲げ状態として、防水シート50の前部に当接させ、操作杆24と吊り鉄筋25を両手で引き寄せることにより、蝶番片20a、20bを平坦状態に広げてベース金具10の係止部12、12へ嵌入させる。次いで、保持片29を回転させて、雌ねじ部材26へ係止させることにより、図3に示すように、保持片29の両端部とベース金具10の前面との間で防水シート50を挟み込み、防水シート50を確実にベース金具10に圧接固定する。このようにして、防水シート50に穿孔することなく容易かつ確実に段取り鉄筋25が取付けされる。
【0019】
次いで、操作杆24を、支持ピン28から取り外し、吊り鉄筋25の先端部を段取り鉄筋60に溶接するか、又は針金もしくは固定金具で留めつけることにより、段取り鉄筋60を吊下げる。
【0020】
蝶番片20a、20bをベース金具10から取り外す場合は、保持片29を反時計方向に回転させて雌ねじ部材26との係止を解き、操作杆24と吊り鉄筋25を左右に拡開させると、図2に示すように、ベース金具10の蝶番片20a、20bが折曲げ状態となり、容易にベース金具10から取りはずすことができる。
【0021】
なお、図1に示すように、ベース金具10の基板11の上端部および下端部に、前方に突出する位置決め用突起11a、11bを形成しておくことにより、防水シート50を挟んで蝶番状係止部材20をベース金具10に係止させる際に、蝶番片20a、20bの上下の位置決めが容易になり、特に防水シートが不透明の場合に有効である。但し、位置決め用突起11a、11bは設けなくても実施は可能である(図2、図3は位置決め用突起11a、11bを設けていない例である)。
【0022】
以上のように、本発明の鉄筋支持金具は、保持片29が、蝶番片20a、20bの拡開状態の保持とともに、防水シート50の押さえの機能を持っているので、施工後防水シート50がベース金具10の前面から浮き、よじれを生じるのを防止し、防水シートの張設状態を良好に保つことができる。また、雌ねじ部材26として角ナット26を用いることにより、市販の部材が使用でき、雌ねじ部材26として特別な加工部品を使用する必要がないので、その分安価な製品とすることができる。
【符号の説明】
【0023】
10 ベース金具
11 基板
12 係止部
20 蝶番状係止部材
20a、20b 蝶番片
24 操作杆
25 吊り鉄筋
26 雌ねじ部材
28 支持ピン
29 保持片
40 支保工
50 防水シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直の基板の両側端を折り返して、互いに内方を向く係止部が形成され、支保工の前面に固定されるベース金具と、展開時に前記係止部に係止し、前記ベース金具の前面との間で防水シートを挟持する左右1対の蝶番片を備えた蝶番状係止部材と、前記一方の蝶番片の前面に突設され、操作杆を着脱自在に装着する係止ピンと、前記他方の蝶番片の前面に突設され、吊り鉄筋をねじ込むための雌ねじ部材とを備えた地下構造物施工用鉄筋支持金具において、
前記係止ピンに回転自在に取り付けられ、前記雌ねじ部材に係止して、前記防水シートを前記ベース金具の両端部前面に押し付けて保持する保持片を備えたことを特徴とする地下構造物施工用鉄筋支持金具。
【請求項2】
前記雌ねじ部材は、角ナットにより構成されていることを特徴とする請求項1記載の地下構造物施工用鉄筋支持金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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