説明

地下構造物構築用の置換部材および地下構造物並びにその構築工法

【課題】覆工エレメント自体を合理的に薄くした置換用支承部材およびその部材を使用した地中構造物を提供すること。
【解決手段】 中空の地下構造物を構築する場合に使用され、かつ掘削機を保持する略角形の先導管の後部に接続して前記略角形の先導管に代わって置き換えるように配置される地下構造物構築用の置換部材において、前記置換部材23は、前記略角形の先導管の断面外側外形と略同じとなるように、薄形覆工エレメント3と、これを支承する仮支承部材14により構成されていることを特徴とする地下構造物構築用の置換部材。前記の置換部材23が用いられて前記略角形の先導管と置き換えるように置換部材23を地盤に推進する地下構造物の構築工法。地下構造物構築用の置換部材23における覆工エレメント3が用いられている地下構造物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、トンネル、人道、暗きょうなどの地下構造物を構築する場合に使用する地下構造物構築用の置換部材および地下構造物並びにその構築工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル、人道、暗きょうなどの地下構造物を構築する方法として、狭巾のプレストレスコンクリート部材を天井部または側壁部あるいは床部に多数配置するようにしたPCR工法(プレストレスト・コンクリート・ルーフ工法)、またはURT工法(Under Rail Way/Road Tunnelling)、あるいはHEP&JES(Hight Speed Element Pull & Jointed Element Structure Method)工法等の地下構造物の構築工法が知られている(例えば、特許文献1〜2参照)。
【0003】
また、これまでの地下構造物を形成する為には、一定の大きさの掘削装置を掘削前方に設け、これにあわせる大きさで地下構造物を形成する覆工エレメントの大きさを決めていた。
【0004】
従来の工法の場合は、例えば、図12に示すように、先端部に掘削用カッター8を有すると共にその後部にオーガー9を備え、掘削装置を内臓し正面ほぼ正四角形である一定の大きさの掘削先管10を掘削進行方向の前方に設け、その後部に、順次鋼製先導管11を直列に接続し、鋼製先導管11の外形の大きさにほぼあわせて、狭巾のプレキャスト製のプレストレストコンクリート部材からなる覆工エレメント3aを接続し、覆工エレメント3aの後部に、推進装置12を係合して、前記覆工エレメント3aを推進して、図13(a)に示すよう鋼製先導管11により発進立坑17から到達立坑18まで敷設した後、発進立坑17側に覆工エレメント3aを接続して推進し、次いで図13(b)に示すように、多数の覆工エレメント3aにより発進立坑17から到達立坑18まで置き換えて一体化した後、図13(c)に示すように、内空側の地盤を掘削して、図16および図17に示すような地下構造物1を構築していた。
【0005】
また、前記の場合に、鋼製先導管11の側部には、一対のアングル材等のガイド部材が設けられているため、これに覆工エレメント3aを係合させるために、図14に示すように、前記の覆工エレメント3aには、上下方向に間隔をおくと共に、部材長手方向に連続して、一対のアングル材等のガイド部材7が設けられて、覆工エレメント3a同士の間隔を確保するようにしている。前記の場合には、ガイド部材7相互が係合された状態では、覆工エレメント3a間では、ガイド部材上目地部6aと、ガイド部材間目地部6bと、ガイド部材下目地部6cに分断され、各分断された目地部6a〜6cそれぞれについて、ウォータージェットによる洗浄および土砂の吸引排土を行い、モルタル等の硬化性充填材の充填作業を行う必要があるという問題もある。
【0006】
また、地下構造物1のコーナー部には、断面矩形状の鋼製基準管2が埋め込み配置されている共に、その基準管2間に多数のプレキャスト覆工エレメント3aが、横方向あるいは上下方向に並べられて埋め込み配置されている。
【0007】
また、矩形状に天井部および側壁部に覆工エレメント3aを並べて地下構造物1を構築する場合に、地下構造物1の内空側の掘削土砂の掘削量を少なくする目的のために、図示を省略するが、掘削作業する側の作業用エレメントを前記鋼製中空覆工エレメント本体に取り外し可能に、かつ内空側に大きく張り出すように設けて、地中に圧入した後、作業用エレメントの内側を掘削した後、鋼製中空覆工エレメント本体から作業用エレメントを取外すようにして、掘削土砂を少なくするようにした、鋼製中空覆工エレメント本体と作業用エレメントとの組み合わせ構成についても知られている(例えば、特許文献2参照)。
しかし、この場合には、最初に鋼製中空覆工エレメントを全体に配置した後、鋼製中空覆工エレメント内にコンクリートを充填する形態であり、鋼製中空覆工エレメント自体を薄くすることについては、示唆または開示されていない。
【特許文献1】特開2004−68255号公報
【特許文献2】特開2004−360371号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記のように、これまで地下構造物を形成するためには、一定の大きさの掘削装置を、掘削装置の前方に設け、その掘削装置の正面外形形状にあわせる大きさで、地下構造物を形成する覆工エレメントの正面形状の大きさを決められており、さらに掘削量を低減するために、従来の発明では、地下構造物の内空断面の掘削土量を削減する為に、覆工エレメントにおける内空側に、中空等の作業用エレメントを着脱可能に固定する点までは提案されている。
前記の作業用エレメントを覆工エレメントの内空側よりに設けることにより、内空側の掘削排出する土砂の掘削土量を低減することは知られているが、覆工エレメント自体を薄い部材にすることまでは、考えられていない。
【0009】
前記のような内空側に作業用エレメントを設ける工法により、地下構造物の施工コストをより低減することはできるが、より一層地下構造物の施工コストを低減する構造および施工方法が望まれる。
【0010】
本発明は、覆工エレメント自体を合理的に薄くし、より一層の地下構造物の施工コストを低減することが可能な、地下構造物構築用の置換部材および地下構造物並びにその構築工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の課題を有利に解決するために、第1発明の地下構造物構築用の置換部材においては、中空の地下構造物を構築する場合に使用され、かつ掘削機の後部または後方において接続して、地中に配置される地下構造物構築用の置換部材において、前記置換部材は、略角形の前記掘削機の断面外側外形と略同じとなるように、薄形覆工エレメントと、これを支承する仮支承部材により構成されていることを特徴とする。
第2発明の地下構造物構築用の置換部材においては、中空の地下構造物を構築する場合に使用され、かつ掘削機の後部または後方において接続して、地中に配置される地下構造物構築用の置換部材において、前記置換部材は、略角形の前記掘削機の断面外側外形と略同じとなるように、薄形覆工エレメントと、その薄形覆工エレメントの地下構造物内空側表面およびその反対側裏面のそれぞれに配置されて前記薄形覆工エレメントを支承する各仮支承部材により構成されていることを特徴とする。
第3発明では、第1または第2発明の地下構造物構築用の置換部材において、仮支承部材の断面外形形状は、略角形の掘削機の外形から必要とされる薄形覆工エレメントの断面形状を除いた外形形状とされていることを特徴とする。
第4発明では、第1〜第3発明のいずれかに記載の地下構造物構築用の置換部材において、薄形覆工エレメントの断面形状が、半径方向の内空側の下面および半径方向菱外側の外面で、アーチを形成するための円弧状または多角形アーチを形成するための傾斜面とされていることを特徴とする。
第5発明では、第1発明〜第4発明のいずれかの地下構造物構築用の置換部材において、薄形覆工エレメントを支承する仮支承部材の両側部に、隣接する仮支承部材のガイド部材に係合して、薄形覆工エレメント同士の間隔を保持するガイド部材を有することを特徴とする。
第6発明の地下構造物の構築工法においては、第1発明〜第5発明のいずれかの地下構造物構築用の置換部材の前部を、掘削機の後部または後方において分離しないように固定し、前記置換部材の後部を推進機に分離しないように固定した状態で、置換部材を地盤に推進することを特徴とする。
第7発明の地下構造物においては、第1発明〜第5発明のいずれかの地下構造物構築用の置換部材が用いられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1発明によると、掘削機の後部または後方において接続して、地中に配置される地下構造物構築用の置換部材において、前記置換部材は、略角形の前記掘削機の断面外側外形と略同じとなるように、薄形覆工エレメントと、これを支承する仮支承部材により構成されているので、地下構造物を構築する場合に、略角形の掘削機の後部の断面外形形状に納まるようにしながら、薄形覆工エレメントの使用が可能になり、従来のように、略角形の先導管の後部の断面外形形状に合わせるように大きくしないですむので、安価な薄形覆工エレメントを使用して地下構造物を構築することができるので、安価な地下構造物を構築することができる。
第2発明によると、薄形覆工エレメントの断面形状を、地下構造物の断面形状に合せて、トンネル(地下構造物)半径方向の内空側表面とその反対側裏面とが平行な面としたり、地下構造物における天井部あるいは側壁部あるいは床部の理想的なアーチ形状に近づけた合理的な断面形状とすることができる。
第3発明によると、仮支承部材の断面外形形状は、略角形の掘削機の外形から必要とされる薄形覆工エレメントの断面形状を除いた状態の外形形状とされているので、略角形の掘削機の外形内において、薄形覆工エレメントの位置を設定して残りの部分を仮支承部材の断面形状とすればよいので、薄形覆工エレメントおよび仮支承部材の断面形状の自由度が向上する。
第4発明によると、薄形覆工エレメントの断面形状が、半径方向の内空側の下面および半径方向菱外側の外面で、アーチを形成するための円弧状または多角形アーチを形成するための傾斜面とされているので、地下構造物の天井部または側壁部あるいは床部の断面を薄形の合理的な断面形状にすることができ、地下構造物の内側空間を、略角形の先導管の後部にほぼ同断面の外形形状の厚肉の覆工エレメントを設置して地下構造物を構築する従来の場合に比べて、より内空側の空間を大きくすることができる。
第5発明によると、薄形覆工エレメントを支承する仮支承部材の両側部に、隣接する仮支承部材のガイド部材に係合して、薄形覆工エレメント同士の間隔を保持するガイド部材を有するので、仮支承部材のガイド部材を利用して、隣り合う薄形覆工エレメント相互管の間隔を保持することができ、薄形覆工エレメントにガイド部材を設ける必要がないので、薄形覆工エレメントの断面形状を単純にすることができる。
第6発明によると、掘削機の後部または後方において分離しないように固定し、前記置換部材の後部を推進機に分離しないように固定した状態で、置換部材を地盤に推進するので、仮支承部材を介在させるだけで、略角形の掘削機の後端部または掘削機に後続する先導管の後端部に、容易に簡単に薄形の覆工エレメントを配置した状態で地中に推進させて、天井部あるいは側壁部あるいは床部に、合理的な断面の地下構造物を容易に構築することができる。
第7発明の地下構造物によると、第1発明〜第5発明のいずれかの地下構造物構築用の置換部材における覆工エレメントが用いられている地下構造物であるので、地下構造物の内部空間を従来の場合よりも広くした上で、薄い安価な覆工エレメントを用いることができるので、その分、安価な地下構造物を構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明を図示の一実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0014】
まず、図2および図3を参照して本発明の一実施形態の仮支承部材14を備えた置換部材23の構成について説明する。
【0015】
本発明の一実施形態の仮支承部材14を備えた置換部材23は、トンネル内空側に配置される仮支承部材14と、その仮支承部材14に支承されるプレキャストコンクリート製の覆工エレメント3と、これらの間に必要に応じ介在される後記の帯板状スペーサー24により構成されている。
【0016】
仮支承部材14は、間隔をおいて対向する側面板の外側に、部材長手方向に連続して、一対のL型鋼材の一辺が間隔をおいて対向するように配置され溶接等により固定されて、一方の側部に雌型のガイド部材7が、また、他方の側面板に雄型のガイド部材7が設けられている。前記の雌型および雄型のガイド部材7相互が嵌合された状態では、多少の遊嵌状態とされ、後に仮支承部材14を内空側に撓ませてガイド部材7相互の係合を外して撤去可能にされている。
【0017】
仮支承部材14におけるトンネル半径方向外側の外面板の一側部には、鋼板等からなる帯状仕切り板25の巾方向の基端側縁部が当接されてボルト26により着脱可能に取付けられている。前記帯状仕切り板25の先端側の他側縁は、隣接する仮支承部材14の外面板の他側縁に当接されて、ボルト26により着脱可能に帯状仕切り板25の他側縁部は取付けられている。
【0018】
また、前記の帯状仕切り板25が設けられていることにより、仮支承部材14における外面板に段差部が生じるために、帯状仕切り板25間、すなわち、仮支承部材14におけるトンネル半径方向外側の外面板の巾方向の中間部には、部材長手方向に延長するように、鋼製帯板状スペーサー24が配置されて、帯状仕切り板25における外側面と、帯板状スペーサー24との外側面がほぼ同レベルとなるように構成されている。または、帯板状スペーサー24の外側面が、帯状仕切り板25の外面よりも、僅かにトンネル半径方向で外側の位置となるように構成され、帯状仕切り板25に大きな外力が作用しないようにされている。
【0019】
前記の仮支承部材14の外側に帯板状スペーサ24を介して、覆工エレメント3が載置または当接されて、仮支承部材14と覆工エレメント3は、部材長手方向の両端部、バンド22等により結束一体化される。前記のバンド22が突出しないようにするために、仮支承部材14と覆工エレメント3に凹部を設けて収めるようにすると共にガイド部材7にバンド挿通孔を設けておくとよい。
【0020】
仮支承部材14の高さ寸法と、帯板状スペーサ24の厚さ寸法と、覆工エレメント3の厚さ寸法を合計した寸法が、ほぼ鋼製先導管11の高さ寸法になるように設定され、また仮支承部材14の巾寸法と覆工エレメント3の巾寸法が、鋼製先導管11のほぼ巾寸法となるようにされている。したがって、最後部の鋼製先導管11の後端部の受け部20に、置換部材23が容易にセット可能にされている。
【0021】
前記の帯状仕切り板25を設ける目的は、目地部6を、仮支承部材14の外側のみとなるようにし、覆工エレメント3間のみの目地部6の洗浄および土砂の吸引排出を可能にし、また、覆工エレメント3間のみの目地部6に硬化性充填材4を充填可能にし、モルタルなどの硬化性充填材4の充填量を少なくし、施工性および施工コストを低減するためである。
【0022】
また、覆工エレメント3のトンネル半径方向の外面側には、一方の覆工エレメント3の巾方向一側部に、鋼製帯状目地板27の一端側がボルト等により着脱可能可能に取付けられ、前記帯状目地板27の他側縁部は、隣接する覆工エレメント3の外面に近接または当接されて、覆工エレメント3間の目地部6が、帯状仕切り板25および帯状目地板27に並びに覆工エレメント3側面間より、筒状に閉塞されるようにされている。したがって、発進側の立坑または凹部側から、または到達側の立坑または凹部側からウォータージェットによる覆工エレメント3間のみの目地部6の洗浄および土砂の吸引除去をすればよいように構成されている。なお、一方の覆工エレメント3の巾方向一側部には、適宜の間隔をおいて前記ボルトをねじ込むための雌ねじ部材が埋め込み固定されている。
【0023】
前記のように、覆工エレメント3間の目地部6の洗浄吸引除去のみでよいので、目地部6に充填する硬化性充填材の充填作業も、この目地部6の部分のみでよいので、硬化性充填材4の充填量を格段に少なくすることができる。なお、前記覆工エレメント3には、左右方向に貫通する横締め用のPC鋼材挿通孔が間隔をおおて設けられている。
【0024】
次に、前記のような地下構造物構築用の置換部材23を用い、後に、仮支承部材14を撤去した状態の地下構造物1について図4を参照して説明する。
【0025】
図4は本発明の一実施形態の地下構造物1を示すものであって、地下構造物1における4隅のコーナー部には、内部が補強リブ(図示を省略した)等により補強された角形鋼管本体を備えた基準管2を備えており、天井部および床部における間隔をおいて隣り合う基準管2間には、基準管2の上下方向の外形寸法よりも薄い寸法の多数のプレキャスト製の覆工エレメント3がトンネル半径方向外側に変位した位置に配設され、各目地部6を洗浄して土砂を吸引排出後、一方の基準管2と多数の並列する覆工エレメント3と他方の基準管2とに渡ってPCケーブル等の横締め用のPC鋼材5が挿通配置されて、基準管2と覆工エレメント3との間の目地部6および覆工エレメント3間の目地部6にモルタル等の充填材4が充填され、また、前記PC鋼材5が基準管2の内側に緊張状態で定着されて、一体化されている。なお、基準管2と覆工エレメント3との間にモルタル等の硬化性充填材4が充填される時には、必要に応じ予め目地部6に横締めPC鋼材挿通用ダクトが形成された後、充填材4が充填される。
【0026】
同様に側壁部における間隔をおいて隣り合う基準管2間には、基準管2の左右方向の外形寸法よりも薄い多数のプレキャスト製の薄型で覆工エレメント3が並列して縦向きに、かつトンネル半径方向外側に偏心下位置に配設されて、基準管2と覆工エレメント3との間の目地部6および覆工エレメント3間の目地部6には、各目地部6を洗浄して土砂を吸引排出後、一方の基準管2と多数の並列する覆工エレメント3と他方の基準管2とに渡ってPCケーブル等の縦締め用のPC鋼材5が挿通配置された後、各目地部6にモルタル等の充填材4が充填され、一方の基準管2と覆工エレメント3と他方の基準管2とに渡ってPCケーブル等の縦締め用のPC鋼材5が挿通配置されて、前記PC鋼材5が基準管2の内側に緊張状態で定着されて、一体化されている。なお、前記と同様に基準管2と覆工エレメント3との間にモルタル等の硬化性充填材4が充填される時には、予め目地部6に縦締めPC鋼材挿通用ダクトが形成される。
【0027】
なお、前記各基準管2には、地下構造物1における直角に隣り合う内空側よりの各片の内空側に偏心した位置に、間隔をおいて部材長手方向に延長する一対のガイド部材7が設けられているが、適宜内面覆基準管2と覆工エレメント3との間にモルタル等の充填材4が充填され、基準管内部化粧仕上げがされて被覆される。
【0028】
次に、前記のような地下構造物1を構築する方法について説明する。
【0029】
本発明の場合も従来の場合と同じ部分があり、先ず、図1(a)(e)に示すように、先端部に掘削用カッター8を有すると共にその後部にオーガー9を備え、正面ほぼ正四角形であると共に狭巾で一定の大きさの掘削装置を内臓した掘削先管10を掘削進行方向の前方に設け、その後部に、順次鋼製先導管11を直列に接続する点は同様である。
【0030】
そして、発進側立坑から到達立坑に向って発進させるように、押圧用ジャッキ等を備えた推進装置12により順次推進されると共に排土されながら、図5および図6に示すように、地中13に、コーナー部に位置する鋼製基準管2と、その間の鋼製先導管11が、地下構造物1の輪郭に沿って、多数矩形状に並べて圧入設置される点も、同様である。しかし、鋼製基準管2とこれに隣接する鋼製先導管11に設けられている一対のガイド部材7が、地下構造物1の内空側に変位した位置に設けられている点が相違している。
【0031】
一対のガイド部材7を鋼製基準管2およびこれに隣接する鋼製先導管11に設ける位置を、地下構造物1の内空側に変位した位置に設けた理由は、鋼製基準管2間の鋼製先導管11に後続して、鋼製先導管11に代わって置き換えられる置換部材を、地下構造物1の内空側に位置して、後に撤去される一つまたは複数の鋼製中空の仮支承部材14と、仮支承部材14の外側に位置して、地下構造物1の本体部分を構成するための薄型の多数の覆工エレメント3とにより構成するためである。
【0032】
なお、鋼製先導管11間に位置している鋼製先導管11に設けられるガイド部材7の取付け位置は、前記のように内空側に変位した位置に設けるようにしてもよく、あるいは従来と同様に鋼製先導管11の中心軸線を中心とした対称位置に設けるようにしてもよい。
【0033】
前記のガイド部材7は、一対のアングル材の一辺を間隔をおいて内向きに対向するように設置した雌型のガイド部材7と、一対のアングル材の一辺を間隔をおいて外向きに対向するように設置した雄型のガイド部材とのいずれかにより構成されている。
【0034】
仮支承部材14と覆工エレメント3とは、推進方向の先端部外周面および後端部外周面が、バンド22等により仮結束されて一体化され、一体化された状態で、図1(b)に示すように、多数の鋼製先導管11の後端部の上板15および下板16の間に挿入されて、適宜着脱可能にボルト等により仮固定された状態で、発進立坑側から推進される。
【0035】
なお、発進立坑から到達立坑に向って直列に隣り合う鋼製先導管11相互、または鋼製先導管11と仮支承部材14との間、または仮支承部材14相互を、図1(c)に示すように溶接により仮固定するようにしてもよい。
【0036】
前記の鋼製先導管11の後端部と覆工エレメント3の先端部の仮固定、および仮支承部材14と覆工エレメント3先端部および後端部の仮結束は、発進立坑17および到達立坑18に渡って鋼製先導管11に後続して覆工エレメント3を推進配置した後、発進立坑17および到達立坑18内に位置した後、バンド22等による仮結束は解除される。
【0037】
前記の鋼製の仮支承部材14は、図2および図3に示すように、複数に分割された狭巾の仮支承部材14を、継ぎ手を兼ねたガイド部材7により連結しており、このようにすると地下構造物1の内空側掘削時に、ガイド部材7の部分の遊間により、仮支承部材14が内空側に容易に変位して、仮支承部材14の分解撤去が容易になる。
前記の仮支承部材14の両側部には、上下方向に間隔をおくと共に前後方向に延長する雌型または、雄型のガイド部材7が設けられている。一対の鋼製L型アングルの一辺が間隔をおいて前記の仮支承部材14の両側部に溶接等により固定されて、雌型または、雄型のガイド部材7が構成されている。
【0038】
図7に示すような覆工エレメント3に、仮支承部材14を仮結束した図1(d)に示すような覆工エレメント付き仮支承部材14aとした状態で、図1(e)に示すように、鋼製先導管11の後端部の受け部20に、覆工エレメント付き仮支承部材14aの先端部を嵌合配置し、必要に応じ、前記受け部20の上下の外側から、着脱可能なボルトを覆工エレメント付き支承部材14aにおける覆工エレメント3または仮支承部材14の雌ねじ部(図示を省略した)にねじ込み固定する。また、発進立坑から到達立坑方向に直列に隣り合う覆工エレメント3相互は、覆工エレメント3に貫通するように設けられたPC鋼材挿通用孔5b(図2参照)に挿通されたPC鋼材5aおよびカプラー19により、覆工エレメント3相互の直列方向の一体化が図られる。
【0039】
そして、図1(e)に示すように、覆工エレメント付き支承部材14aの後端部に支承用キャップ等の支承部材を配置した状態で、発進立坑側の推進装置12により押圧推進して、天井部の鋼製基準管2間の先に敷設された鋼製先導管11全部を、前記覆工エレメント付き仮支承部材14aに置き換える(図6a,b参照)。
【0040】
以下同様にして、図4に示すように、側壁部および床版部の鋼製基準管2間の先導管11も同様に覆工エレメント付き仮支承部材14aに置き換え、各コーナー部の鋼製基準管2と、覆工エレメント3間の目地部6および覆工エレメント3間をウォータージェットにより洗浄すると共に真空吸引して排土し、天井部および床板部における、横方向の一方の基準管2と覆工エレメント3と他方の基準管2とに渡って、PCケーブルなどの横締め用PC鋼材5を挿通配置する。
なお、前記の場合に、天井部の鋼製先導管11を推進した後に、これを覆工エレメント付き仮支承部材14aに置き換え、次に側壁部の鋼製先導管11を推進した後に、これを覆工エレメント付き仮支承部材14aに置き換え、次いで、床版部の鋼製先導管11を推進した後、これを覆工エレメント付き仮支承部材14aに置き換えた後、目地部6の洗浄を行うようにしてもよい。
【0041】
また、各側壁部における、上下方向の一方の基準管2と覆工エレメント3と他方の基準管2とに渡って、PCケーブルなどの縦締め用PC鋼材5を挿通配置する。次いで、図4に示すように、天井部および床版部の左右両端部の各コーナー部の鋼製基準管2と、覆工エレメント3間および覆工エレメント3間にモルタル等の充填材4を充填する。
同様に、側壁部の上下両端部の各コーナー部の鋼製基準管2と、覆工エレメント3間の目地部6にモルタル等の充填材4を充填する。
【0042】
各目地部6の充填材4が硬化した後、横締めPC鋼材5および縦締めPC鋼材5を緊張定着して、天井部および床版部並びに側壁部における基準管2と覆工エレメント3の一体化を図り、仮支承部材付き地下構造物躯体21を構築する。
【0043】
その後、前記仮支承部材付き地下構造物躯体21の内側部分を掘削して、中空部を形成する。この時、必要に応じ、仮支承部材14を仮受けする支保工を適宜設置する。また、基準管2と仮支承部材14とのガイド部材7相互の係合を解除する。
【0044】
仮支承部材14におけるガイド部材7と鋼製基準管2とのガイド部材7の係合を解除する手段としては、発進立坑側および到達立坑側の仮支承部材14と覆工エレメント3とのバンド等による仮結束を解除すると共に、内空側を掘削すると、仮支承部材14が内空側に撓むようになるので、仮係止部材14相互のガイド部材7による係合を解除し、地下構造物1を構築する。
【0045】
前記のように、内空側中央よりに仮支承部材14を引寄せるように天井部または床部あるいは側壁部全体を撓ませて取外したり、発進立坑側に引き戻すことにより、仮支承部材14を撤去し、地下構造物1を構築する。
【0046】
前記のように構築された地下構造物1の内面は適宜、化粧仕上げされて地下構造物1が構築される。
【0047】
また、構築すべき地下構造物1が、図8に示す断面円形のトンネル形態の地下構造物1を構築する場合には、図7に示すように、トンネル中心に向って傾斜する側面板を有し、トンネル半径方向の内空側および外側が円弧状の形態を備えた鋼製先導管11および仮支承部材14を円周の軌跡に沿って等角度間隔等に推進配置することにより、図8に示すようなトンネル形態の地下構造物1を構築することができる。
【0048】
前記のような円形トンネル形態の地下構造物1である場合には、PC鋼材を覆工エレメント3の全周に一部重複するように挿通配置して、緊張定着するようにするとよい。
【0049】
また、図9に示すように、トンネル形態の地下構造物1の天井部等をアーチ形の形態とすることにより、より力学的に合理的に薄型の覆工エレメント3を使用して、天井部を構築することができる。
【0050】
前記のようなアーチ形の形態とする場合に、掘削機を保持する略角形の先導管11の後部に接続して前記略角形の先導管に代わって置き換えるように配置される地下構造物構築用の置換部材23としては、前記略角形の先導管11の断面外側外形と略同じとなるように、側面に対して上面側と下面側が傾斜した状態の薄形覆工エレメント3と、その薄形覆工エレメント3の地下構造物内空側表面およびその反対側裏面のそれぞれに配置されて前記薄形覆工エレメント3を支承する各仮支承部材14a,14bにより構成するとよい(図10および図11参照)。
前記の場合に、前記反対側裏面に配置される仮支承部材14bは、そのまま地盤に埋め込み配置される埋め込み型の支承部材14bとしてもよい。
【0051】
覆工エレメント3における地下構造物内空側表面に配置される仮支承部材14aは、基準管2に近い仮支承部材14aでは、図10に示すように、断面三角形に近い形態となり、覆工エレメント3の裏面側の仮支承部材14bでは、断面台形形態の仮支承部材14bとなり、基準管2から順次遠ざかると、断面形態が逆転し、仮支承部材14bは徐々に断面三角形に近い状態となり、仮支承部材14aは断面台形形態に近い状態となる。
【0052】
基準管2に近い位置では、裏面側の断面台形形態の仮支承部材14bの左右方向両側に、剛性の大きいガイド部材7を容易に設けることができるので、基準管2側の仮支承部材14bにより、確実にガイドするようにすればよく、基準管2から遠い位置では、内空側の仮支承部材14aが断面台形形態となるので、その仮支承部材14aの左右方向両側に剛性の大きいガイド部材7を容易に設けることができるので、前記仮支承部材14aにより、確実にガイドするようにすればよい。
また、基準管2間の中央部よりでは、前記実施形態の仮支承部材14により覆工エレメント3を支承するようにすればよい。
【0053】
図11には、前記の図10の状態から、基準管2と覆工エレメント3間および覆工エレメント3間の目地部6のウォータージェットによる目地部洗浄および目地部土砂の吸引排土を行った後、一方の基準管2から各覆工エレメント3および他方の基準管2に渡ってPC鋼材5を挿通配置して、目地部6に硬化性充填材4を充填・硬化して、基準管2内において緊張定着された状態が示されている。
【0054】
前記のように、覆工エレメント3のトンネル内空側表面および反対側裏面の両面に仮支承部材14(14a,14b)配置するようにすると、アーチ形態の天井部を形成することができる。また、同様に側壁部および床版部も同様な形態にすることにより、地下構造物1を円形形態に近い形態の地下構造物を構築することができる。
【0055】
前記の場合に、覆工エレメント3のトンネル内空側および裏面側(地山側)を断面円弧状等の断面曲線状としてもよく、このような場合には、仮支承部材14a,14bの覆工エレメント3側となる面を、断面円弧状等の断面曲線状にすればよい。
【0056】
なお、前記実施形態では、仮支承部材14にガイド部材を設ける形態を示したが、本発明を実施する場合、図示を省略するが、覆工エレメント3にガイド部材を設けるようにしてもよく、仮支承部材14または覆工エレメント3にガイド部材を設けるようにしてもよく、覆工エレメント3のガイド部材に対応して基準管2側にもガイド部材を設けるようにする。
【0057】
なお、前記した施工手順を含めて全体の概略施工手順を略記すると、以下のような工程になる。
(1)発進立坑(または縦孔あるいは凹部)および到達立坑(または縦孔あるいは凹部)を形成し、発進立坑側に推進架台を設ける。
(2)発進立坑側において、基準となる角コーナ部の角形基準管の前に掘削機を取り付ける。
(3)掘削機を始動し、推進装置で角形基準管2を到達立坑に向って推進する。
(4)掘削機の前方に地中障害物が無ければ、反対側の到達縦孔まで推進する。地中障害があった場合、掘削機のみを後方に引抜き、人力で障害物を取り除く(なお、この作業空間として、断面で850mm×850mmの空間を有する角形鋼管鋼管が必要となる)。
(5)先行の基準管2が推進された後、基準管2の間全てに先行先導管を推進する。後方の推進架台の上に、仮支承部材が置かれその上に覆工エレメントが置かれて、置換部材23が構成される。先導管(先行鋼管)の後端を覆工エレメントと仮支承部材14が入る程度のキャップ状の受け部20に差し込まれて固定されるか、又は溶接で固定しても良い。
覆工エレメント3の後方は、推進装置12の覆工エレメント3との接触部を同じようにキャップ状の受け部20にしても良いし、覆工エレメント3と仮支承部材14を帯状バンド22で縛るようにして一体化するか、ボルト止めして一体化する。
(6)覆工エレメント3と仮支承部材14からなる覆工エレメント付き仮支承部材14aを推進装置12で押す。推進の位置決めは先行先導管11の両脇にガイド部材が取り付けられており、最大50mm最低35mm程度が確保できる。それと同じ位置で覆工エレメント3又は仮支承部材14の両脇にもガイド部材が取り付けられている。
このガイドで所定の位置に推進装置12で推進される。
(7)覆工エレメント3又は載置部材23の長さは運搬可能な長さになっており、それより長いトンネル等を構築する場合は、覆工エレメント3をPC鋼棒5又はボルト止めで緩衝材を挟んで強固に連結されている。
(8)覆工エレメント3および仮支承部材14を備えた覆工エレメント付き仮支承部材14aが推進されて到達縦孔18に到着する。これを横方向に隣接配置される覆工エレメント付き仮支承部材14aに繰り返し、矩形断面、円形断面、アーチ状断面などの孔壁の覆工エレメント3を押し込む。
(9)覆工エレメント3同士の間の目地部をウオータージェットで洗浄すると共にバキュームで吸引排土する。トンネルの横方向にプレグラウトPC鋼材5を挿入する。
(10)洗浄された目地部とシースとプレグラウトPC鋼材5の間にモルタル(グラウト材)などの硬化性充填材4を充填する。グラウトの所定の強度が確認された後、プレグラウトPC鋼材5を緊張、定着する。これを縦横の孔壁で行う。
(11)基準管2に配筋しコンクリート28を打設する。
(12)覆工エレメント3と、仮支承部材14による仮支承部材付き地下構造物1が形成された後、その構造物1の孔壁内部の土砂を掘削する。多数の仮支承部材ユニットをガイド部材により遊嵌連結された仮支承部材14では、掘削につれて取り外しやすくなっている仮支承部材ユニットを順次取り除き、覆工エレメント3を露出させる。
(13)必要におうじ内面を化粧仕上げして、トンネルなどの地下構造物1を完成させる。
【0058】
前記各実施形態によると、薄形覆工エレメント14を支承する仮支承部材14の両側部に、隣接する仮支承部材14のガイド部材7に係合して、薄形覆工エレメント3同士の間隔を保持するガイド部材7を有するので、仮支承部材14のガイド部材7を利用して、隣り合う薄形覆工エレメント3相互管の間隔を保持することができ、薄形覆工エレメント3にガイド部材を設ける必要がないので、薄形覆工エレメント3の断面形状を単純にすることができる。
【0059】
また、前記実施形態によると、掘削機を保持する略角形の先導管11の後部に分離しないように固定し、前記置換部材23の後部を推進装置12に分離しないように固定し、前記略角形の先導管11と置き換えるように置換部材23を地盤に推進するので、仮支承部材14を介在させるだけで、略角形の先導管11の後端部に、容易に簡単に薄形の覆工エレメント3を配置して、天井部あるいは側壁部あるいは床部に、合理的な断面の地下構造物1を容易に構築することができる。
【0060】
また、前記実施形態の地下構造物構築用の置換部材23における覆工エレメント3が用いられている地下構造物1であると、地下構造物1の内部空間を従来の覆工エレメント3からなる置換部材23のみを用いる場合よりも、地下構造物1の内部空間を広くした上で、薄い安価な覆工エレメント3を用いることができるので、その分、安価な地下構造物1を構築することができる。
【0061】
前記実施形態では、鋼製先導管11の後部に覆工エレメント付き仮支承部材14aまたは置換部材23を接続している形態を示したが、本発明を実施する場合、図示を省略するが、前記鋼製先導管11を省略して掘削先管10を牽引または押圧推進させる場合には、前記掘削先管10の後部に接続するように覆工エレメント付き仮支承部材14aまたは置換部材23を配置して、これらを地中に地中土と置き換えるように推進させて配置して、地下構造物を構築するようにしてもよい。
【0062】
前記のように、本発明では、薄形覆工エレメントと、これを支承する仮支承部材により構成されている地下構造物構築用の置換部材を、(1)掘削機の後部に接続して、前進させて地中に配置するようにしてもよく、あるいは、(2)掘削機を保持する略角形の先導管の後部に接続して、前記略角形の先導管に代わって置き換えるように配置されるようにしてもよい。薄形覆工エレメントと、これを支承する仮支承部材により構成されている前記置換部材は、前記掘削機の断面外側外形と略同じとなるように、または、略角形の先導管の断面外側外形と略同じとなるようにされている地下構造物構築用の置換部材である。
【0063】
換言すると、本発明の地下構造物構築用の置換部材は、中空の地下構造物を構築する場合に使用され、かつ掘削機またはこれを保持する略角形の先導管の後部に接続して、地中土または前記略角形の先導管に代わって置き換えるように配置される地下構造物構築用の置換部材において、前記置換部材は、前記掘削機または略角形の先導管の断面外側外形と略同じとなるように、薄形覆工エレメントと、これを支承する仮支承部材により構成されている置換部材である。このような形態によると、掘削機またはこれを保持する略角形の先導管の後部に接続して、地中土または前記略角形の先導管に代わって置き換えるように配置される地下構造物構築用の置換部材において、前記置換部材は、前記掘削機または略角形の先導管の断面外側外形と略同じとなるように、薄形覆工エレメントと、これを支承する仮支承部材により構成されているので、地下構造物を構築する場合に、掘削機または略角形の先導管の後部の断面外形形状に納まるようにしながら、薄形覆工エレメントの使用が可能になり、従来のように、略角形の先導管の後部の断面外形形状に合わせるように大きくしないですむので、安価な薄形覆工エレメントを使用して地下構造物を構築することができるので、安価な地下構造物を構築することができる。
【0064】
あるいは、本発明の地下構造物構築用の置換部材は、中空の地下構造物を構築する場合に使用され、かつ掘削機またはこれを保持する略角形の先導管の後部に接続して、地中土または前記略角形の先導管に代わって置き換えるように配置される地下構造物構築用の置換部材において、前記置換部材は、前記掘削機または略角形の先導管の断面外側外形と略同じとなるように、薄形覆工エレメントと、その薄形覆工エレメントの地下構造物内空側表面およびその反対側裏面のそれぞれに配置されて前記薄形覆工エレメントを支承する各仮支承部材により構成されている。このような形態によると、薄形覆工エレメントの断面形状を、地下構造物の断面形状に合せて、トンネル(地下構造物)半径方向の内空側表面とその反対側裏面とが平行な面としたり、地下構造物における天井部あるいは側壁部あるいは床部の理想的なアーチ形状に近づけた合理的な断面形状とすることができる。
【0065】
また、本発明の地下構造物の構築工法においては、前記の地下構造物構築用の置換部材の前部を、掘削機またはこれを保持する略角形の先導管の後部に分離しないように固定し、前記置換部材の後部を推進機に分離しないように固定し、地中土または前記略角形の先導管と置き換えるように置換部材を地盤に推進する。このような工法によると、掘削機またはこれを保持する略角形の先導管の後部に分離しないように固定し、前記置換部材の後部を推進機に分離しないように固定し、地中土または前記略角形の先導管と置き換えるように置換部材を地盤に推進するので、仮支承部材を介在させるだけで、掘削機または略角形の先導管の後端部に、容易に簡単に薄形の覆工エレメントを配置して、天井部あるいは側壁部あるいは床部に、合理的な断面の地下構造物を容易に構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施形態の地下構造物を構築する場合を説明するため説明図であって、(a)は掘削装置と鋼製先導管と置換部材と推進装置を直列に編成した状態を示す側面図、(b)は鋼製先導管の後端部の受け部に置換部材の先端部を差し込んでいる状態を示す一部縦断側面図、(c)は鋼製先導管の後端部と置換部材を溶接により仮固定する形態を示す側面図、(d)は覆工エレメント付き支承部材相互を直列に連結する場合の形態を示す概略側面図、(e)は掘削装置と鋼製先導管と置換部材と推進装置を直列に編成した状態を示す側面図である。
【図2】仮支承部材に覆工エレメントを支承させた覆工エレメント付き仮支承部材相互を係合した状態を示す一部縦断斜視図である。
【図3】図2における仮支承部材と覆工エレメントを分離した状態を示す一部縦断斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態の地下構造物を構築する場合の説明図である。
【図5】本発明の一実施形態の地下構造物を構築する場合の説明図である。
【図6】本発明の一実施形態の地下構造物を構築する場合の説明図であり、(a)は先導管を発進立坑から到達立坑に先行して推進した後、覆工エレメント付き仮支承部材を発進立坑から推進している状態を示す一部縦断側面図、(b)は覆工エレメント付き仮支承部材により置き換えた状態を示す一部縦断側面図、(c)は内空側の地盤を掘削した状態を示す縦断側面図、(d)は仮支承部材を撤去した状態を示す縦断側面図である。
【図7】本発明の他の形態の覆工エレメント付き仮支承部材相互のガイド部材を係合させた状態を示す一部縦断斜視図である。
【図8】図8に示す覆工エレメント付き仮支承部材を使用して、円形の地下構造物を構築した状態を示す一部縦断正面図である。
【図9】本発明の他の形態の地下構造物を構築する場合の説明図である。
【図10】図9に示す形態の地下構造物を構築する場合の途中の状態を示す拡大縦断正面図である。
【図11】図9に示す形態の地下構造物を構築する場合の途中の状態を示す拡大縦断正面図である。
【図12】掘削装置と鋼製先導管と置換部材と推進装置を直列に編成した状態を示す側面図である。
【図13】従来工法により地下構造物を構築する場合の説明図であり、(a)は先導管を発進立坑から到達立坑に先行して推進した後、覆工エレメントを発進立坑から推進している状態を示す一部縦断側面図、(b)は覆工エレメントに置き換えた状態を示す一部縦断側面図、(c)は内空側の地盤を掘削した状態を示す縦断側面図である。
【図14】従来の覆工エレメント相互のガイド部材を係合して連結している状態およびガイド部材により目地部が分断されることを説明するための斜視図である。
【図15】従来の地下構造物の一形態を示す縦断正面図である。
【図16】従来の地下構造物のコーナー部を拡大して示す縦断正面図である。
【符号の説明】
【0067】
1 地下構造物
2 基準管
3 覆工エレメント
3a 覆工エレメント
4 充填材
5 PC鋼材
5a PC鋼材
5b PC鋼材
6 目地部
6a 目地部
6b 目地部
6c 目地部
7 ガイド部材
8 掘削用カッター
9 オーガー
10 掘削先管
11 鋼製先導管
12 推進装置
13 地中
14 仮支承部材
14a 覆工エレメント付き仮支承部材
15 上板
16 下板
17 発進立坑
18 到達立坑
20 受け部
21 仮支承部材付き地下構造物躯体
22 バンド
23 置換部材
24 帯板状スペーサー
25 仕切り板
26 ボルト
27 帯状目地板
28 コンクリート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の地下構造物を構築する場合に使用され、かつ掘削機の後部または後方において接続して、地中に配置される地下構造物構築用の置換部材において、前記置換部材は、略角形の前記掘削機の断面外側外形と略同じとなるように、薄形覆工エレメントと、これを支承する仮支承部材により構成されていることを特徴とする地下構造物構築用の置換部材。
【請求項2】
中空の地下構造物を構築する場合に使用され、かつ掘削機の後部または後方において接続して、地中に配置される地下構造物構築用の置換部材において、前記置換部材は、略角形の前記掘削機の断面外側外形と略同じとなるように、薄形覆工エレメントと、その薄形覆工エレメントの地下構造物内空側表面およびその反対側裏面のそれぞれに配置されて前記薄形覆工エレメントを支承する各仮支承部材により構成されていることを特徴とする地下構造物構築用の置換部材。
【請求項3】
仮支承部材の断面外形形状は、略角形の掘削機の外形から必要とされる薄形覆工エレメントの断面形状を除いた外形形状とされていることを特徴とする請求項1または2に記載の地下構造物構築用の置換部材。
【請求項4】
薄形覆工エレメントの断面形状が、半径方向の内空側の下面および半径方向菱外側の外面で、アーチを形成するための円弧状または多角形アーチを形成するための傾斜面とされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の地下構造物構築用の置換部材。
【請求項5】
薄形覆工エレメントを支承する仮支承部材の両側部に、隣接する仮支承部材のガイド部材に係合して、薄形覆工エレメント同士の間隔を保持するガイド部材を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の地下構造物構築用の置換部材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の地下構造物構築用の置換部材の前部を、掘削機の後部または後方において分離しないように固定し、前記置換部材の後部を推進機に分離しないように固定した状態で、置換部材を地盤に推進することを特徴とする地下構造物の構築工法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の地下構造物構築用の置換部材における覆工エレメントが用いられていることを特徴とする地下構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−247327(P2007−247327A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−74583(P2006−74583)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(000103769)オリエンタル建設株式会社 (136)
【出願人】(593025446)日本ケーモー工事株式会社 (6)
【Fターム(参考)】