説明

地下構造物用蓋の取替工法

【課題】下桝の上面にボルトを立設させることが困難な場合であっても、既存の下桝を利用して、受枠と下桝とをボルト緊結固定することが可能な、地下構造物用蓋の取替工法を提供する。
【解決手段】既設の地下構造物用蓋の受枠を撤去した後、既設の地下構造物用の下桝20の側壁に装着孔21を削孔し、一端が装着孔21に挿入可能であるとともに、他端が下桝20の上面よりも上方に位置して下桝20の鉛直方向に立設するよう予め曲げ加工された曲げボルト50,51を、下桝20に固定し、新設する地下構造物用蓋の受枠41を、その上面を周辺の舗装30の高さに合わせて設置して曲げボルト50,51と緊結固定する。その後、受枠41の下面と下桝20の上面との間の空間に据付基礎を構築し、受枠41の周囲の空洞部に舗装材を打設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下構造物用の下桝の開口部上に設置されている既設の地下構造物用蓋を撤去し、新設の地下構造物用蓋を設置するための地下構造物用蓋の取替工法に関する。
【0002】
なお、本願明細書でいう「下桝」とは、その開口部を地表に向けて竪穴状に構築される下水道のマンホール、汚水桝、上水道及びガスの地中弁室、地中に横穴状に延設されるカルバート、共同溝、洞道、あるいは地中に設置される箱状の上水道及びガスのバルブピット、電気通信のブロックマンホール等を総称する。
【0003】
また、本願明細書でいう「地下構造物用蓋」とは、上記各下桝の開口部上に配置され、下桝内部と地上とを連通する受枠と、この受枠によって支持され、前記開口部を開閉可能に閉塞する蓋本体とを有するマンホール蓋、大型鉄蓋、汚水桝蓋、共同溝用鉄蓋、送電用鉄蓋、配電用鉄蓋、消火栓蓋、制水弁蓋、仕切弁蓋、空気弁蓋、ガス配管用蓋、量水器蓋等を総称する。
【背景技術】
【0004】
近年、地下構造物用蓋を下桝の開口部上に設置する際に、下桝の上面にアンカーを打ち込んだり、予めインサートナットを配した下桝を用いるなどし、ボルトを立設して、受枠と下桝とを上記ボルトで一体に緊結固定する安全対策を施すことが行われてきている(例えば特許文献1)。
【0005】
例えば、地下構造物が下水道管路施設である場合、下水の排除方式によって、汚水と雨水とを同一の管路で排除する合流式下水道と、汚水と雨水とを別々の管路で排除する分流式下水道とに分類されるが、特に、前者の合流式下水道においては、集中豪雨に見舞われた場合、大量の雨水が下水道管路に一気に流入する。このため、地下構造物(下桝)と地下構造物用蓋(受枠)とをボルトで一体に緊結固定することにより、管路内の空気圧力が局所的に急激に上昇したり、あるいは雨水そのものが急激に上昇し、それに伴う空気圧力の上昇によって、地下構造物(下桝)の上端部に設置されている地下構造物用蓋(受枠)が外れて飛散することを防止している。
【0006】
また、下水道管路施設以外の地下構造物であっても、地下構造物用蓋の周辺の舗装路面が、大型車両の走行による振動や経年劣化等による沈下又は破損により、地下構造物(下桝)から地下構造物用蓋が受枠ごと外れて飛散する虞があり、地下構造物用蓋(受枠)と地下構造物(下桝)とをボルトで一体に緊結固定することが行われるようになってきている。
【0007】
このような受枠と下桝とのボルト緊結固定は、地下構造物用蓋を新設する場合のほか、老朽化又は破損した地下構造物用蓋を取り替える場合にも行われ、その取替工法として、種々の工法が検討されている(例えば特許文献2、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−009265号公報
【特許文献2】特開2006−233754号公報
【特許文献3】特開2005−220733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の特許文献1〜3に記載されているように、受枠と下桝とを緊結固定するためのボルトを、下桝の上面から立設させることが可能である場合は問題なくボルト緊結固定することが可能であるが、既設の下桝の上面にボルトを立設させるためのインサートナットがない場合や、下桝の上面の幅が狭いことや、下桝の上面が劣化して強度がないことにより、雌ネジを形成したアンカーナットを下桝の上面に打ち込むことができない場合には、下桝ごと取り替える必要があり、多大なコストと労力を要するという問題があった。
【0010】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、下桝の上面にボルトを立設させることが困難な場合であっても、既設の下桝を利用して、受枠と下桝とをボルト緊結固定することが可能な、地下構造物用蓋の取替工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の地下構造物用蓋の取替工法は、既設の地下構造物用蓋の受枠周囲の舗装及び前記既設の地下構造物用蓋の受枠を撤去する工程と、既設の地下構造物用の下桝の側壁に装着孔を削孔する工程と、一端が前記装着孔に挿入可能であるとともに、他端が前記既設の地下構造物用の下桝の上面よりも上方に位置して前記既設の地下構造物用の下桝の鉛直方向に立設するよう予め曲げ加工された曲げボルトを、前記既設の地下構造物用の下桝に固定する工程と、新設する地下構造物用蓋の受枠を、その上面を周辺の舗装の高さに合わせて設置し、前記曲げボルトと緊結固定する工程と、前記新設する地下構造物用蓋の受枠の下面と前記既設の地下構造物用の下桝の上面との間の空間に据付基礎を構築し、前記新設する地下構造物用蓋の受枠の周囲の空洞部に舗装材を打設する工程と、を有することを特徴とするものである。
【0012】
このように、曲げボルトを、既設の地下構造物用の下桝の側壁に設けた装着孔を利用して上記下桝に固定することで、下桝の上面にボルトを立設させることが困難な場合であっても、既存の下桝を利用して、受枠と下桝とをボルト緊結固定することが可能となる。
【0013】
本発明の取替工法は、前記既設の地下構造物用蓋の受枠周囲の舗装及び前記既設の地下構造物用蓋の受枠を撤去する工程と、前記既設の地下構造物用の下桝の側壁に装着孔を削孔する工程との間に、前記既設の地下構造物用の下桝を周方向に切断する工程を有するものとすることができる。これにより、既設の受枠の高さが低く、新設する受枠が高い場合等においても、既設の地下構造物用の下桝を周方向に切断し、既設の下桝の高さを低くすることにより、既設の下桝を取り替えることなく、地下構造物用蓋の取替及びボルト緊結固定を行うことができる。
【0014】
本発明の取替工法では、曲げボルトとして、前記既設の地下構造物用の下桝の側壁面に沿う形状に曲げ加工された側壁対応部を有する曲げボルトを使用することが好ましい。このように側壁対応部を有する曲げボルトを使用することで、曲げボルトを下桝に強固に固定することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の地下構造物用蓋の取替工法によれば、下桝の上面にボルトを立設させることが困難な場合であっても、既存の下桝を利用して、受枠と下桝とをボルト緊結固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の取替工法(実施形態1)において、最初の工程として既設の地下構造物用蓋の受枠周囲の舗装に切込みを入れた状態を示す断面図である。
【図2】本発明の取替工法(実施形態1)において、既設の地下構造物用蓋(受枠)を撤去後、新設する地下構造物用蓋の受枠を設置した状態を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A’断面図である。
【図3】本発明の取替工法(実施形態1)において、新設する受枠を設置後、その受枠の下面と下桝の上面との間の空間に据付基礎を構築し、新設する受枠の周囲の空洞部に舗装材を打設した状態を示す断面図である。
【図4】本発明の取替工法(実施形態1)において、下桝の側壁に装着孔を削孔するために使用する削孔装置の使用状態を示す斜視図である。
【図5】本発明の取替工法において、新設する受枠の下面と下桝の上面との間の空間に据付基礎を構築する他の実施形態(実施形態2)を示す断面図である。
【図6】本発明の取替工法において、新設する受枠の下面と下桝の上面との間の空間に据付基礎を構築する更に他の実施形態(実施形態3)を示す断面図である。
【図7】図6に示す本発明の実施形態3において、据付基礎及び新設する受枠の周囲の空洞部に舗装材を打設した状態を示す断面図である。
【図8】本発明の取替工法において、新設する受枠の下面と下桝の上面との間の空間に据付基礎を構築する更に他の実施形態(実施形態4)を示す断面図である。
【図9】本発明の取替工法(実施形態5)において、既設の受枠を撤去した後に下桝の上部を周方向に切断した状態を示す断面図である。
【図10】本発明の取替工法(実施形態5)において、上部を周方向に切断した下桝に径調整リング110を設置した状態を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A’断面図である。
【図11】本発明の取替工法(実施形態5)において、新設する受枠を設置した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
(実施形態1)
図1は、本発明の取替工法において、最初の工程として既設の地下構造物用蓋の受枠周囲の舗装に切込みを入れた状態を示す断面図である。
【0019】
既設の地下構造物用蓋10は、受枠11と受枠11に開閉可能に支持された蓋本体12とを有し、地中に埋設されている既設の地下構造物用の下桝20の開口部上に設置されている。
【0020】
この既設の地下構造物用蓋10を取り替えるにあたり、まず、既設の地下構造物用蓋10の受枠11周囲の舗装30に切込み31を入れる。本実施形態において切込み31は球面状をなす。このような球面状の切込み31は、特許第4030915号公報等により公知の球面状ブレードを有する路面カッター装置を用いて形成することができる。舗装30に切込み31を入れたら、切込み31内側の舗装30(既設の地下構造物用蓋の受枠周囲の舗装)及び既設の地下構造物用蓋10(受枠11)を撤去する。
【0021】
図2は、本発明の取替工法において、既設の地下構造物用蓋10(受枠11)を撤去後、新設する地下構造物用蓋の受枠41を設置した状態を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A’断面図である。
【0022】
既設の地下構造物用蓋10(受枠11)を撤去後、新設する地下構造物用蓋の受枠41を設置するため、まず、既設の地下構造物用の下桝20の側壁に装着孔21を削孔する。次に、曲げボルト50,51の一端を装着孔21に挿入し、下桝20に固定する。
【0023】
曲げボルト50は下桝20の直壁部に固定され、曲げボルト51は下桝20の斜壁部に固定される。具体的には、曲げボルト51は、下桝20の斜壁部20aの中央(図2(a)の平面図におけるA’の線上。以下、同じ)に固定され、曲げボルト50は、曲げボルト51を基準として周方向に120°の位置の直壁部に固定される。これらの曲げボルト50,51は、一端が装着孔21に挿入可能であるとともに、他端が下桝20の上面よりも上方に位置して下桝20の鉛直方向に立設するよう予め曲げ加工されている。また、曲げボルト50は、下桝20の直壁面に沿う形状に曲げ加工された側壁対応部50aを有し、曲げボルト51は、下桝20の斜壁面に沿う形状に曲げ加工された側壁対応部51aを有する。
【0024】
曲げボルト50は、その一端を装着孔21に貫通させ、ナット50bを螺合することにより下桝20に固定される。また、曲げボルト51も、その一端を装着孔21に貫通させ、ナット51bを螺合することにより下桝20に固定される。ただし、曲げボルト51の固定においては、下桝20の斜壁面に対応するため、ナット51bと下桝20の斜壁面との間にテーパプレート51cを介在させている。曲げボルト50,51を下桝20に固定した状態では、図2(b)に示すように、それぞれの側壁対応部50a,51aが下桝20の側壁面に沿うように位置するので、曲げボルト50a,51aを下桝20に強固に安定して固定することができる。
【0025】
曲げボルト50,51を下桝20に固定した後、曲げボルト50,51のそれぞれに嵩調整具60を螺合させる。この嵩調整具60には、その中央のボルト挿通孔にナットがインサート成形されており、曲げボルト50,51との間で螺合位置を調整できるようになっている。次に、新設する受枠41のフランジに設けられたアンカー孔に曲げボルト50,51の他端を挿通させ、受枠41を嵩調整具60の上に戴置させ、嵩調整することにより受枠41の上面の高さを周辺の舗装30の高さに合わせる。続いて、固定ブロック61を曲げボルト50,51に装着固定することにより、受枠41と曲げボルト50,51とを緊結固定する。
【0026】
図3は、本発明の取替工法において、新設する受枠41を設置後、その受枠41の下面と下桝20の上面との間の空間に据付基礎を構築し、新設する受枠41の周囲の空洞部に舗装材を打設した状態を示す断面図である。
【0027】
新設する受枠41の下面と下桝20の上面との間の空間に据付基礎を構築するため、本実施形態では、受枠41の内周に沿って、受枠41の内周面及びその下方の下桝20の内周面を跨ぐように内枠70を配置する。この内枠70は、常時は帯状で使用時に円筒状に変形させることができる可撓性を有するものであり、本実施形態では発泡ポリスチレンの帯状材を用いた。
【0028】
次に、受枠41の下面と下桝20の上面との間の空間及び受枠41の周囲の空洞部に行き渡るように無収縮モルタルMを充填する。これにより、新設する受枠41の下面と下桝20の上面との間の空間に据付基礎80が構築されるとともに、新設する受枠41の周囲の空洞部の下層部に下層舗装32が構築される。その後、下層舗装32の上に表層用モルタルあるいは加熱合材を、周囲の舗装30と同一高さになるように打設して表層舗装33を構築する。その後、内枠70を撤去する。
【0029】
ここで、本実施形態において、下桝20の側壁に装着孔21を削孔するために使用する削孔装置の一例を説明する。図4は、その削孔装置の使用状態を示す斜視図である。
【0030】
図4に示す削孔装置200は、固定具201を介して下桝20の開口部の直径方向に架け渡されるラック202と、このラック202に、その長手方向(下桝20の開口部の直径方向)に沿ってスライド可能に装着された削孔ドリル203とを有する。
【0031】
本実施形態において装着孔21は、図2に示すように、下桝20の斜壁部20aの中央に1箇所と、これを基準として周方向に120°の位置の直壁部20bに2箇所の合計3箇所に削孔される。
【0032】
図4は、装着孔を下桝20の斜壁部の中央に設けるときの状態を示している。下桝20の斜壁部の中央は、下桝20の直壁部の中央に設けられているステップ300と対向する位置であるので、斜壁部の中央と直壁部の中央との間に跨って、図4に示すように削孔装置200を下桝20に装着する。この状態で、削孔ドリル203を前進させることにより、下桝20の斜壁部の中央に装着孔を削孔する。
【0033】
一方、直壁部に削孔される装着孔は、斜壁部中央の装着孔を基準として周方向に120°の位置に削孔されるが、その位置を簡単に把握するため、図4の例では、マーキング治具204を使用する。このマーキング治具204は、その長手方向中央位置がラック202に装着できるようになっている。そして、マーキング治具204をラック202に装着したときに、その両端が、斜壁部中央の装着孔を基準として周方向に120°の位置に来るように長さが設定されている。したがって、図4の状態でマーキング治具204の両端が位置する箇所にマーキングをすれば、直壁部に削孔する装着孔の位置を簡単に把握することができる。そして、そのマーキングを目印として、直壁部に削孔する装着孔の位置と整合するように削孔装置200を装着し直し、装着孔を削孔する。
【0034】
なお、装着孔は、上述の削孔装置200を使用しなくとも、例えば、市販の削孔用のドリルを使用することにより削孔することもできる。
【0035】
また、上述の削孔装置200やマーキング治具204を使用しなくとも、新設する受枠のフランジに設けたアンカー孔に合わせて120°位置ごとにボルト挿通孔を穿孔した敷き鉄板またはリング状の治具を使用することもできる。これにより、装着孔の削孔位置の割り出しを簡単に行うことができ、また、曲げボルト50,51を新設する受枠のフランジに設けたアンカー孔の径にあわせて垂直に立設させることができる。
【0036】
(実施形態2)
図5は、本発明の取替工法において、新設する受枠41の下面と下桝20の上面との間の空間に据付基礎を構築する他の実施形態を示す断面図である。
【0037】
本実施形態では、内枠70に加え外枠90を使用する。外枠90は、新設する受枠41のフランジの外周に沿って配置される。外枠90は、内枠70と同様に、常時は帯状で使用時に円筒状に変形させることができる可撓性を有するものであり、本実施形態では発泡ポリスチレンの帯状材を用いた。
【0038】
本実施形態では、内枠70と外枠90との間の空間に無収縮モルタルMを充填することで、受枠41の下面と下桝20の上面との間の空間に据付基礎80を構築する。その後、内枠70及び外枠90を撤去し、受枠41の周囲の空洞部に舗装材を打設する。舗装材の種類は特に限定されず、例えば、下層舗装材として路盤材を打設し、表層舗装材として表層用モルタルあるいは加熱合材を打設することができる。
【0039】
(実施形態3)
図6は、本発明の取替工法において、新設する受枠41の下面と下桝20の上面との間の空間に据付基礎を構築する更に他の実施形態を示す断面図である。
【0040】
本実施形態では、受枠41の下面と下桝20の上面との間の空間に据付基礎の一部として高さ調整リング100を設置する。
【0041】
すなわち、本実施形態では、先の実施形態1と同じ要領で曲げボルト50,51を下桝20に固定した後、高さ調整リング100に設けられた貫通孔に曲げボルト50,51の他端を挿通させ、高さ調整リング100を下桝20上に設置する。
【0042】
次に、先の実施形態1と同じ要領で、嵩調整具60を使用して受枠41の上面の高さを周辺の舗装30の高さに合わせ、続いて、固定ブロック61を曲げボルト50,51に装着固定することにより、受枠41と曲げボルト50,51とを緊結固定する。
【0043】
その後、図7に示すように、先の実施形態1と同じ要領で、受枠41の内周に沿って内枠70を配置し、受枠41の下面と高さ調整リング100の上面との間の空間及び受枠41の周囲の空洞部に行き渡るように無収縮モルタルMを充填する。これにより、新設する受枠41の下面と下桝20の上面との間の空間に高さ調整リング100と無収縮モルタルMとからなる据付基礎80が構築されるとともに、新設する受枠41の周囲の空洞部の下層部に下層舗装32が構築される。その後、下層舗装32の上に表層用モルタルあるいは加熱合材を、周囲の舗装30と同一高さになるように打設して表層舗装33を構築する。その後、内枠70を撤去する。
【0044】
なお、本実施形態のように高さ調整リング100を使用する形態では、その高さ調整リング100上に受枠41を載置するだけで、受枠41の上面の高さが周辺の舗装30の高さに一致する場合、嵩調整具60の使用を省略することができる。
【0045】
(実施形態4)
図8は、本発明の取替工法において、新設する受枠41の下面と下桝20の上面との間の空間に据付基礎を構築する更に他の実施形態を示す断面図である。
【0046】
本実施形態は、先の実施形態3の変形例であって、内枠70に加え外枠90を使用するものである。外枠90は、新設する受枠41のフランジの外周に沿って、受枠41のフランジの外周面及びその下方の高さ調整リング100の外周面を跨ぐように配置される。そして、内枠70と外枠90との間の空間に無収縮モルタルMを充填することで、受枠41の下面と下桝20の上面との間の空間に高さ調整リング100と無収縮モルタルMとからなる据付基礎80が構築される。その後、内枠70及び外枠90を撤去し、受枠41の周囲の空洞部に舗装材を打設する。
【0047】
(実施形態5)
本実施形態は、既設の地下構造物用蓋の受枠を撤去した後に、既設の地下構造物用の下桝を周方向に切断する工程を有するものである。
【0048】
既設の受枠の高さが低く、新設する受枠が高い場合、そのままでは既設の下桝上に新設する受枠を設置することはできないことがある。そこで、本実施形態では、図9に示すように、既設の受枠を撤去した後に下桝20の上部を周方向に切断し、新設する受枠を設置する高さ空間を確保するようにしている。
【0049】
ただし、図9に示すように下桝20が斜壁部20aを有する場合、下桝20の上部を周方向に切断すると、下桝20上部の開口部の径が大きくなり、その開口部上に新設する受枠を設置できなくなることがある。その対応として本実施形態では、図10に示すように径調整リング110を使用する。
【0050】
すなわち、本実施形態では、曲げボルト52,53を下桝20の側壁に削孔した装着孔に固定した後、径調整リング110に設けられた貫通孔に曲げボルト52,53の他端を挿通させ、径調整リング110を下桝20上に設置する。先の実施形態1では、曲げボルト50,51は下桝20の外側の側壁面に沿って立ち上げるようにしたが、本実施形態では、下桝20上部の切断による開口部の拡大に対応して、曲げボルト52,53は下桝20の内側の側壁面に沿って立ち上げるようにした。なお、曲げボルト52,53の下桝20径方向の長さは、新設する受枠のフランジに設けたアンカー孔に合わせて設定されるが、下桝20に設けた装着孔への曲げボルト52,53の差し込み長さを変えることで、下桝20径方向の長さを調整することもできる。
【0051】
次に、図11に示すように、先の実施形態1と同じ要領で、嵩調整具60を使用して受枠41の上面の高さを周辺の舗装30の高さに合わせ、続いて、固定ブロック61を曲げボルト50,51に装着固定することにより、受枠41と曲げボルト50,51とを緊結固定する。その後、受枠41の内周に沿って内枠70を配置し、受枠41の下面と径調整リング110の上面との間の空間及び受枠41の周囲の空洞部に行き渡るように無収縮モルタルMを充填する。これにより、新設する受枠41の下面と下桝20の上面との間の空間に径調整リング110と無収縮モルタルMとからなる据付基礎80が構築されるとともに、新設する受枠41の周囲の空洞部の下層部に下層舗装32が構築される。その後、下層舗装32の上に表層用モルタルあるいは加熱合材を、周囲の舗装30と同一高さになるように打設して表層舗装33を構築する。その後、内枠70を撤去する。
【0052】
なお、本実施形態のように径調整リング110を使用する形態では、その径調整リング110上に受枠41を載置するだけで、受枠41の上面の高さが周辺の舗装30の高さに一致する場合、嵩調整具60の使用を省略することができる。
【0053】
以上の実施形態では、下桝の側壁に削孔する装着孔を貫通孔としたが、装着孔は貫通孔ではなく有底の孔としてもよい。装着孔が有底の孔の場合、その装着孔に曲げボルトの一端を接着剤等を使用して固定すればよい。
【0054】
また、以上の実施形態では、球面状ブレードを有する路面カッター装置を用いて球面状に切込みを入れるようにしたが、切込みの形状はこれに限定されず、例えば、円筒状や方形筒状としてもよい。
【0055】
また、路面カッター装置を用いず、手工具により既設の地下構造物用蓋の受枠周囲の舗装を破砕し、舗装及び地下構造物用蓋の受枠を撤去するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
10 既設の地下構造物用蓋
11 既設の受枠
12 蓋本体
20 下桝
20a 斜壁部
20b 直壁部
21 装着孔
30 舗装
31 切込み
32 下層舗装
33 表層舗装
41 新設する受枠
50,51 曲げボルト
50a,51a 側壁対応部
50b,51b ナット
51c テーパプレート
52,53 曲げボルト
60 嵩調整具
61 固定ブロック
70 内枠
80 据付基礎
90 外枠
100 高さ調整リング
110 径調整リング
200 削孔装置
201 固定具
202 ラック
203 削孔ドリル
204 マーキング治具
M 無収縮モルタル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設の地下構造物用蓋の受枠周囲の舗装及び前記既設の地下構造物用蓋の受枠を撤去する工程と、
既設の地下構造物用の下桝の側壁に装着孔を削孔する工程と、
一端が前記装着孔に挿入可能であるとともに、他端が前記既設の地下構造物用の下桝の上面よりも上方に位置して前記既設の地下構造物用の下桝の鉛直方向に立設するよう予め曲げ加工された曲げボルトを、前記既設の地下構造物用の下桝に固定する工程と、
新設する地下構造物用蓋の受枠を、その上面を周辺の舗装の高さに合わせて設置し、前記曲げボルトと緊結固定する工程と、
前記新設する地下構造物用蓋の受枠の下面と前記既設の地下構造物用の下桝の上面との間の空間に据付基礎を構築し、前記新設する地下構造物用蓋の受枠の周囲の空洞部に舗装材を打設する工程と、
を有することを特徴とする地下構造物用蓋の取替工法。
【請求項2】
前記既設の地下構造物用蓋の受枠周囲の舗装及び前記既設の地下構造物用蓋の受枠を撤去する工程と、前記既設の地下構造物用の下桝の側壁に装着孔を削孔する工程との間に、
前記既設の地下構造物用の下桝を周方向に切断する工程を有する請求項1に記載の地下構造物用蓋の取替工法。
【請求項3】
前記曲げボルトとして、前記既設の地下構造物用の下桝の側壁面に沿う形状に曲げ加工された側壁対応部を有する曲げボルトを使用する請求項1又は2に記載の地下構造物用蓋の取替工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−96121(P2013−96121A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239172(P2011−239172)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(505295684)ヒノデホールディングス株式会社 (1)
【Fターム(参考)】