説明

地下構造物用鉄蓋におけるテーパー嵌合解除装置

【課題】テーパー嵌合による鉄蓋の食い込みの解除を、開閉工具を用いた一連の操作で支障なく行うことができるとともに、ロック機構が簡単には解除されないようにする。
【解決手段】開閉工具18を挿入可能なバール孔を開閉可能に閉塞し、かつ、閉方向へ付勢された閉塞部材20を鉄蓋の裏面に装着し、上記閉塞部材に対して独立的に作動し、受け枠の内周に設けられた内突部22の下方に位置してロック状態となり、上記内突部の下方の位置よりも内方に移動してアンロック状態となるロック部材25を鉄蓋の裏面に回転可能に装着し、上記ロック部材は、開閉工具の先端部18aにより加圧されてアンロック位置へ移動し、記受け枠の内突部の上面に当接する係合突部26をロック部材の上部に具備し、開閉工具18を左右へ傾けることによって、上記先端部の一部が係合突部26の上面に当接し、上記先端部の他部が鉄蓋の裏面に当接して食い込みを解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄蓋がその受け枠にテーパー嵌合による食い込みを生じて受け止められる地下構造物用鉄蓋において、開閉工具を用いて上記食い込みを解除するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄蓋とそれを受け止める受け枠がテーパー嵌合による食い込みを生じる地下構造物用鉄蓋では、バールと通称される開閉工具を用いて上記食い込みを解除する。バールを差し込むいわゆるバール孔は、従来、鉄蓋の外周縁にその一部を例えばU字型に切り欠くようにして設けているが、バール孔から雨水が侵入するので、バール孔を閉塞する閉塞板を閉塞方向にばねによって付勢するなどの対策が講じられた(特開2006−233654号)。同発明の装置は雨水侵入の防止に相応の有効性を示すが、鉄蓋の外周縁を切り欠いた構造は雨水が侵入し易いため限界があった。切り欠き構造の代わりに、鉄蓋の外周縁から内方へ離れた位置に貫通状のバール孔を形成することも行なわれた。バール孔を外周縁から離してしまうと受け枠を支点としたバールを用いた梃子作用ができないため、一般的なバールによる操作では食い込みを解除することができず、特殊な専用バールを必要としたり(特開平7−90871号)、一旦バール孔からバールを抜き取り、こじり孔に差し込み直して食い込みを解除し、その後再びバールをバール孔に差し込んで開蓋したりしなければならない。これは、例えば、開蓋時に不意に鉄蓋を降して軽い食い込みを生じた程度の状況でも、上記の手順を繰り返して一々食い込みを解除しなければならないということであり、操作が煩わしいという問題がある。
【0003】
これに対して、特開2007−100294号、特開2007−100295号及び特開2007−100296号が提案されており、これらの発明は良好な止水性を実現するとともに、専用のバールを必要とせずに蓋本体の食い込みを解除できるようにするというものである。これらの発明は、何れも独立した貫通状のバール孔を有しているが、バール孔を閉鎖する可動支点蓋又は可動蓋がロック機構の操作部を兼ねるような構造であり、開蓋操作により可動支点蓋又は可動蓋がロック機構と直接的に連動する。そのため、バールで可動支点蓋又は可動蓋を押し込むことによって簡単にロック機構が解錠され、しかも専用のバールを必要とせずにそれが可能ということでもあるので、悪戯でロックが解除されたり、さらには、鉄蓋を開けてゴミの不法投棄を招く等の問題を起こされたりする恐れがある。
【0004】
また、上記特開2007−100294号の発明では突っ張り部材が可動支点蓋と一体をなしているため、可動支点蓋と蓋本体の裏面との間に小石などが挟み込まれると、ロック機構が解除状態になる恐れがある。ロック機構が解除状態になるということは、豪雨などで下水道に雨水が侵入した場合に、鉄蓋に加わる押し上げ力に対抗できなくなるということであり、マンホールを開口させたり、そこに歩行者や自動車が転落したりする原因となる。特開2007−100295号及び特開2007−100296号の発明の場合も同様であり、例えば、特開2007−100295号の場合、可動支点蓋と回転部材を、圧縮ばねを介在させて下降と原位置復帰するという複雑な構成を有しているため、小石などが挟み込まれて隙間ができそこから雨水と共に土砂が侵入すると、詰まって作動不良となる恐れがある。また、特開2007−100296号についても、可動蓋と蓋本体の裏面との間に小石などが挟み込まれると、ロック機構が解除状態になる恐れがある。
【0005】
本発明の対象である地下構造物用鉄蓋は、鉄蓋とそれを受け止める受け枠がテーパー嵌合による食い込みを生じるように設定されている。しかし、鉄蓋を受け枠に嵌め合わせたときに掛かる程度の荷重(これを初期荷重と呼ぶ。)でテーパー嵌合を生じているときに、鉄蓋と受け枠との食い込みは軽度であり、バールを用いて梃子作用によりこじ開けるまでもなく、その食い込みを容易に解除することができる。例えば、人や自転車、或いは乗用車等が鉄蓋上を走行して掛かる程度の荷重は、初期荷重の範囲内と見做し得る。初期荷重を超える荷重を超過荷重と呼ぶこととすると、これは、例えば、大型トラックなどの軸荷重の大きい重車両が鉄蓋上を走行して加えられる荷重に相当し、過度の食い込みを生じる荷重ということができる。前述した各文献記載の発明は、初期荷重による軽度の食い込みの解除と、超過荷重による過度の食い込みの解除を行うのに支障はないが、しかし、特許文献2、3、4ではロック機構が解除され易いという問題がある。
【0006】
【特許文献1】特開2006−233654号
【特許文献2】特開2007−100294号
【特許文献3】特開2007−100295号
【特許文献4】特開2007−100296号
【特許文献5】特開平7−90871号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記の点に着目してなされたもので、その課題は、初期荷重による食い込みの解除と、超過荷重による過度の食い込みの解除を、1個の開閉工具を用いた一連の操作で支障なく行うことができるとともに、バール孔の閉塞部材と鉄蓋の裏面との間に小石等が挟み込まれても、ロック機構が簡単には解除されない地下構造物用鉄蓋におけるテーパー嵌合解除装置を提供することである。また、本発明の他の課題は、開閉工具を用いた一連の開蓋操作において、通常とは異なる操作を必要とすることにより、開蓋方法を察知され難い地下構造物用鉄蓋におけるテーパー嵌合解除装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するため、本発明は、鉄蓋がその受け枠にテーパー嵌合による食い込みを生じて受け止められる地下構造物用鉄蓋において、開閉工具を用いて上記食い込みを解除するための装置について、開閉工具を挿入可能なバール孔を、鉄蓋の周縁部よりも内方の位置に貫通状に設けるとともに、上記バール孔を開閉可能に閉塞し、かつ、閉方向へ付勢された閉塞部材を鉄蓋の裏面に装着し、上記閉塞部材に対して独立的に作動可能であり、受け枠の内周に設けられた内突部の下方に位置してロック状態となり、上記内突部の下方の位置よりも内方に移動してアンロック状態となるロック部材を鉄蓋の裏面に回転可能に装着し、上記ロック部材は、閉塞部材を押し下げている開閉工具の先端部により加圧されて、アンロック位置へ移動し、かつ、上記受け枠の内突部の上面に当接する係合突部をロック部材の上部に具備し、テーパー嵌合による食い込みを解除する際、上記開閉工具の先端部をバール孔に挿入した状態で左右へ傾けることによって、上記先端部の一部がアンロック状態にあるロック部材の係合突部の上面に当接してそれ以上は押し下げられない状態となり、上記先端部の他部が鉄蓋の裏面に当接して鉄蓋を押し上げ、食い込みを解除するように構成するという手段を講じたものである。
【0009】
本発明は、テーパー嵌合による食い込みを生じている鉄蓋とその受け枠について、開閉工具を用いて上記食い込みを、それが軽度の食い込みであるか過度の食い込みであるかを問わずに、開閉工具による一連の操作で解除し得るようにするものであり、また、バール孔から雨水を侵入させないことを目的とした装置でもある。なお、本発明は円形鉄蓋を主な対象として構成されているが、その趣旨を円形鉄蓋以外の地下構造物用鉄蓋に適用し得ることもまた当然である。
【0010】
本発明の装置では、開閉工具を挿入可能なバール孔を、鉄蓋の周縁部よりも内方の位置に貫通状に設けるとともに、上記バール孔を開閉可能に閉塞し、かつ、閉方向へ付勢された閉塞部材を鉄蓋の裏面に装着する。バール孔の位置は、後述するロック部材の係合突部に対する開閉工具の操作を考慮して決定されるが、鉄蓋の周縁部から内方へ離れ過ぎない位置を選定する。閉塞部材は、上記貫通状のバール孔の閉塞を第一義とし、かつ、閉方向へ付勢され、切り欠き状では期待できない閉塞効果を発揮する。
【0011】
上記閉塞部材に対して独立的に作動可能であり、受け枠の内周に設けられた内突部の下方に位置してロック状態となり、上記内突部の下方の位置よりも内方に移動してアンロック状態となる、ロック部材を鉄蓋の裏面に吊り下げにより回転可能に装着する。上記内突部には、受け枠の内周に環状に設けられている既存の内向きの突状構造を利用することができる。
【0012】
上記ロック部材は、閉塞部材を押し下げている開閉工具の先端部により加圧されてアンロック位置へ回転移動し、かつ、ロック部材は、その回転移動後、受け枠の上記内突部に当接してそれ以上は押し下げられない状態とする、係合突部を具備しているものとする。係合突部はロック部材の上部に位置し、前述した開閉工具の先端部によって操作され、回転移動後に係合突部が受け枠の内突部の上面に当接するように、適切な位置及び形態に設けられる。
【0013】
上記開閉工具は、先端部をバール孔に挿入した状態で左右へ傾けることによってその一部がロック部材の係合突部の上面に当接し、上記先端部の他部が鉄蓋の裏面に当接した配置を取るものとする。開閉工具による開蓋作業では、鉄蓋の中心を通る線上に沿った方向での操作が普通であるが、本発明では、バール孔の開口は鉄蓋の内外方向にやや長い形態を有し、係合突部はロック部材の上部、かつ、上記バール孔の開口範囲よりも側方にずれた位置に配置することができる。このため、ロック部材の係合突部を閉塞部材の側方に配置する構成となり、先端部をバール孔に挿入した状態で開閉工具を左右へ傾ける操作が必要になり、普通の開蓋操作と異なるので、開蓋方法を察知され難い。
【0014】
閉塞部材は、バール孔を鉄蓋の裏面にて完全に閉塞可能な大きさと形状を有し、バール孔の開口内に位置する閉塞部材の上部に開閉工具を受け止める突状部分を有し、かつ、突状部分の鉄蓋の周縁部側に、開閉工具の内方移動を止める外向きの凹段部を有しており、さらに、弾性手段によってバール孔を閉塞する方向へ付勢されていることが望ましい。突状部分はバール孔に余裕をもって収まり、かつ、上に突き出さないものとする。
【0015】
ロック部材は外方を向いたロック部を有し、ロック部は受け枠の内方に設けられた内突部の下方に位置してロック状態となり、上記内突部よりも内方に移動してアンロック状態となり、閉塞部材に対して開閉工具による操作がなされてバール孔の開口が開いても、ロック状態を維持するように、閉塞部材に対してロック部材が独立的に配置されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明は以上のように構成されかつ作用するものであるから、初期荷重による食い込みの解除と、超過荷重による過度の食い込みの解除を、1個の開閉工具を用いた一連の操作で支障なく行うことができるとともに、バール孔の閉塞部材と鉄蓋の裏面との間に小石等が挟み込まれても、ロック機構が簡単には解除されず安全性の高い地下構造物用鉄蓋におけるテーパー嵌合解除装置を提供することができる。また、本発明によれば、1個の開閉工具を用いた一連の開蓋操作において、左右へ傾けるという通常とは異なる操作を必要とすることにより、開蓋方法を察知され難くより安全性の高い地下構造物用鉄蓋におけるテーパー嵌合解除装置を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下図示の実施形態を参照して本発明をより詳細に説明する。図1は本発明に係るテーパー嵌合解除装置を適用した地下構造物用鉄蓋の一例を示す縦断面図であり、図中、11は鉄蓋、12はその受け枠であって、鉄蓋11と受け枠12とは、鉄蓋11の外周面と受け枠12の内周面がテーパー嵌合による食い込みを生じるように、垂線に対して例えば8〜10度の急傾斜角度で面接触する構成を有している。図示の地下構造物用鉄蓋は円形鉄蓋であり、その円の直径方向に相当する位置の一端側に蝶番金具13と蝶番受け14から成る蝶番装置15を具備し、他端側に本発明に係るテーパー嵌合解除装置10とロック装置16を具備している。
【0018】
図2は、上記地下構造物用鉄蓋の鉄蓋11を示す平面図であり、本発明の装置10及び蝶番装置15は、夫々の符号で示した位置の裏面に配置されている。図2は、本発明に係る後述のバール孔24とともに、こじり穴17を2か所設けたことも示している。これらのこじり穴17は、万一、本発明の装置10で食い込みが解除できなかった場合に対処するもので、超過荷重におけるテーパー嵌合による食い込みの解除に用いることを目的としている。こじり穴17は、受け枠12の上端を支点として鉄蓋11の裏面に開閉工具18をあてがい、こじ開けるので凹構造を持っているが非貫通状であり、雨水を侵入させる恐れはない。なお、図示の開閉工具18は、その先端部18aがほぼT字型に設けられており、かつまた、図4等にあらわれた平面形状においても、図7等にあらわれた側面形状においてもテーパー形状に形成されていることが分かるであろう。
【0019】
本発明の装置では、開閉工具18を挿入可能なバール孔19を、鉄蓋11の周縁部よりも内方、しかし、内方に入り込み過ぎない位置に貫通状に設ける。即ち、バール孔19の設置位置は、後述するロック部材25の係合突部26に対する開閉工具18の操作をも考慮して決定されるので、その位置は上記係合突部26に近く、鉄蓋11の周縁部から内方へ離れ過ぎない位置になる。そして、バール孔19には、その開口を開閉可能に閉塞するために閉塞部材20を鉄蓋11の裏面に装着する。閉塞部材20は、上記貫通状のバール孔19の閉塞を目的として、付勢手段21であるばねにより閉方向へ付勢されており、切り欠き状のバール孔では期待できない閉塞効果を発揮する。図示のバール孔19は、外方が方形、内方は円形鉄蓋11の半径方向に長い平面形状を有しており(図3参照)、開閉工具18の先端部18aの長さと同程度の長さの開口形態に設定されている。
【0020】
上記バール孔19は、鉄蓋11の裏面に接触して完全に閉塞可能な大きさと形状の基板部を有している閉塞部材20によって閉塞され、その閉塞部材20の、バール孔19の開口内に位置する上部には、開閉工具18の先端部18aを受け止める突状部分20aを有し、また、突状部分20aは、開閉工具18の内方移動を止める外向きの凹段部20bを有している。閉塞部材20はその基板部の周縁部にて鉄蓋11の裏面に形成した座面11aに当接し、また、バール孔19を閉塞した状態において突状部分20aがバール孔19の内部に余裕をもって収まり、かつ、上に突き出さないように設けられている。
【0021】
上記の閉塞部材20は、リンク機構を用いて、バール孔19を開閉可能に閉塞する構成を有している。図示のリンク機構は、2個のリンク部材22、23から成る平行リンクを構成しており、その先端部22a、23aは閉塞部材20の下片20cに軸支され、基端部22b、23bにて取り付け金具24に軸支されている。従って、開閉工具18により閉塞部材20が加圧されると、閉塞部材20はバール孔19を閉塞した状態から鉄蓋11の内方かつ下方へ一定の姿勢を保って移動する。なお、取り付け金具24は、鉄蓋11の裏面に設けられた保持部11bに取り付けられている(図4、図5参照)。
【0022】
鉄蓋11の裏面には、前述のロック部材25が、鉄蓋11の裏面に設けられた一対の支軸部25a、25aにより、保持部11cに回転可能に軸支されている。図示のロック部材25は、ほぼU字型の正面形状を有し、その上部に左右側方を向けて一対の支軸部25a、25aを設け、また、正面前側には外方を向けた一対のロック部25b、25bが設けられている(図6参照)。上記支軸部25a、25aによりロック部材25が吊り下げられた状態では、ロック部25b、25bが受け枠12の内方に設けられた内突部27の下方に位置してロック状態となり、上記内突部27より内方に移動したときにアンロック状態となる。
【0023】
ロック部材25は、前述の一対の係合突部26、26を一体に具備している。その係合突部26、26は、上記ロック部材25の閉塞部材20の左右側方に、上部に外方へ向けて突出するように設けた配置を取るものとする。この配置によって、係合突部26、26はバール孔19から直に目視し難い位置を占め、かつ、ロック部材25を閉塞部材20に対して独立的に作動可能である。また、係合突部26、26は、ロック部材25が吊り下げられている状態において、係合突部26、26と内突部27の上面との間に所要のスペース28を設ける角度で設定されている。この角度設定により、開閉工具18によって係合突部26が加圧されロック部材25が回転移動すると、上記受け枠12の内突部27の内縁部に接触可能になり、かつまた、その状態になればそれ以上押し下げられることはなく、また、ロック部25bは内方へ後退してアンロック状態を維持する。
【0024】
ロック部材25はほぼU字型の正面形状を有しているが、U字の間の空所29は、開閉工具18の先端部18aを縦方向にして挿入可能な大きさを有する。また、先端部18aを横方向にしたとき、先端部18aが、両方の係合突部26、26に同時に接触する関係に設けられていることも必要である。このように開閉工具18の先端部18aは、一対の係合突部26、26の間隔よりもやや長く、バール孔19の長さと同程度の長さに設定されている。
【0025】
上記の内突部27は内向きの突状構造として、受け枠12の内周に環状に設けられるのであるから、既存のものを利用して設けることも可能である。27aはロックガイド部を示しており、内突部27の上面に内方が低くなる傾斜面から成り、閉蓋時に自動的にロック状態になるようにロック部材25を誘導する。27bはロック部材押さえ金具を示す。
【0026】
このように構成された本発明に係るテーパー嵌合解除装置10では、鉄蓋11がその受け枠12に受け止められ、テーパー嵌合による食い込みを生じているが、その食い込みの解除と鉄蓋11を開ける操作を、1個の開閉工具18を用いた一連の開蓋操作によって円滑に行うことができる。その手順は図8以下に図示されている。最初に、開閉工具18の先端部18aをバール孔19の長手方向に合わせ、かつ、付勢手段21の付勢力を受けてバール孔19を閉塞している、閉塞部材25に斜めに先端部18aを当てるようにし、バール孔19の内部に挿入する(図8A)。上記先端部18aに対して短めに形成したバール孔19に開閉工具18の先端部18aを挿入するための操作であり、バール孔19に挿入したなら、先端部18aを水平に直す(図8B)。
【0027】
次いで、開閉工具18をその軸周りに90度回転させ(図9A)、さらに開閉工具18を鉄蓋11の内方へやや傾け気味に操作する。この操作で、開閉工具18は、その先端部18aの両端にてロック部材25の一対の係合突部26、26に当接し、加圧する状態となる。即ち、それまでは閉塞部材20のみに当接し、ロック部材25とは接触していなかった先端部18aが係合突部26に接触するとともに、内方へロック部材26を押圧するので、そのロック部25bが受け枠12の内突部27の下方に位置したロック状態から内方へ押し動かされ、アンロック状態とすることができる(図9B)。この状態における開閉工具18の先端部18aとロック部材25の係合突部26、26との関係は、XIIA−XIIA線断面として図12Aにも示されており、同図によれば係合突部26、26が内突部27に当接しており、先端部18aがテーパー状の下部で係合突部26、26に当たっており、上部では鉄蓋11の座面11aに当たっていることが分かる。
【0028】
ここで、開閉工具18の操作方向を図9に示したこれまでの、鉄蓋11の中心を通る線上に沿った方向での操作方向から90度変更し、上記鉄蓋11の中心を通る線方向を基準として開閉工具18を左右へ傾ける操作を行う。この操作によって生じる開閉工具18の先端部18aとロック部材25の係合突部26、26との関係は、XIIB−XIIB線の断面図として図12Bに示されている。即ち、開閉工具18を傾斜させることにより、先端部18aはその一方のみが点30にて一方の係合突部26に当接し、先端部18aの他方は点31にて鉄蓋裏面の座面11aに当接する。従って、開閉工具18の操作部を力点、点30を支点、点31を作用点とする梃子作用により、テーパー嵌合により生じている食い込みを解除することができる(図10A)。
【0029】
テーパー嵌合による食い込みが解除されることで、鉄蓋11を容易に動かすことができるようになるので、開閉工具18を受け枠12の外方に引きながら持ち上げることによって(図10B)、アンロック状態にある鉄蓋11が開かれ、ここに開蓋操作を完了することができる。なお、図11は開蓋操作の最終段階であり、ロック部材25のロック部25bが内突部27の内方を迂回し、鉄蓋11を持ち上げられる状態を示しており、この後、鉄蓋11は蝶番装置15を中心として表裏反転され開蓋状態となる。開蓋状態での作業を終えて、再び鉄蓋11を閉じるときには、蝶番装置15を中心として鉄蓋11を回転し受け枠12にテーパー嵌合させることになり、その際ロック部材25が内突部27を通過するが、その過程においてロック部25bはロックガイド部27aの傾斜面に沿って誘導され、その下方に位置してロック状態となる。
【0030】
かくして、本発明の装置10では閉塞部材20とロック部材25が連動せず独立的に作動するので、閉塞部材20が操作されてもロック部材25はそのロック状態を維持することができる。また、開閉工具18はその先端部18aの一部でロック部材25に当接しながら、同じ先端部18aの他部で鉄蓋11の裏面に当接するので、開蓋工具18を左右へ傾ける操作力で鉄蓋をこじ開け、テーパー嵌合を解除することができる。よって、本発明の装置10によればテーパー嵌合による軽度の食い込みは勿論のこと、過度の食い込みが生じていても1個の開閉工具18を用いた一連の開蓋操作により、スムーズに開蓋作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係るテーパー嵌合解除装置を適用した地下構造物用鉄蓋の一例を示す縦断面図である。
【図2】同上の装置の鉄蓋の一例を示す平面図である。
【図3】同上におけるバール孔を拡大して示す平面図である。
【図4】同上の装置を拡大して示す断面図である。
【図5】同じく開閉工具と鉄蓋の関係を示す下面図である。
【図6】同上の装置を分解して示す斜視図である。
【図7】同じく鉄蓋を透視して組立状態を示す斜視図である。
【図8】同上の装置の作動を示すものでAは操作開始直前の状態、Bは開閉工具をバール孔に挿入した状態の説明図である。
【図9】同じくAは開閉工具を90度回転した状態、Bは開閉工具を内方へ傾けた状態の説明図である。
【図10】同じくAは開閉工具の先端部を左右方向へ傾け食い込みを解除した状態、Bはさらに開閉工具を上方へ持ち上げつつある状態を示す説明図である。
【図11】開蓋操作の最終段階を示す断面図である。
【図12】Aは図9BのXIIA−XIIA線断面図であり、Bは図10AのXIIB−XIIB線断面図である。
【符号の説明】
【0032】
10 テーパー嵌合解除装置
11 鉄蓋
12 受け枠
13 蝶番金具
14 蝶番受け
15 蝶番装置
16 ロック装置
17 こじり穴
18 開閉工具
19 バール孔
20 閉塞部材
21 付勢手段
22、23 リンク部材
24 取り付け金具
25 ロック部材
26 係合突部
27 内突部
28 スペース
29 空所
30 支点
31 作用点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄蓋がその受け枠にテーパー嵌合による食い込みを生じて受け止められる地下構造物用鉄蓋において、開閉工具を用いて上記食い込みを解除するための装置であって、
開閉工具を挿入可能なバール孔を、鉄蓋の周縁部よりも内方の位置に貫通状に設けるとともに、上記バール孔を開閉可能に閉塞し、かつ、閉方向へ付勢された閉塞部材を鉄蓋の裏面に装着し、
上記閉塞部材に対して独立的に作動可能であり、受け枠の内周に設けられた内突部の下方に位置してロック状態となり、上記内突部の下方の位置よりも内方に移動してアンロック状態となるロック部材を鉄蓋の裏面に回転可能に装着し、
上記ロック部材は、閉塞部材を押し下げている開閉工具の先端部により加圧されてアンロック位置へ移動し、かつ、上記受け枠の内突部の上面に当接する係合突部をロック部材の上部に具備し、
テーパー嵌合による食い込みを解除する際、上記開閉工具の先端部をバール孔に挿入した状態で左右へ傾けることによって、上記先端部の一部がアンロック状態にあるロック部材の係合突部の上面に当接してそれ以上は押し下げられない状態となり、上記先端部の他部が鉄蓋の裏面に当接して鉄蓋を押し上げ、食い込みを解除するように構成された
地下構造物用鉄蓋におけるテーパー嵌合解除装置。
【請求項2】
バール孔の開口は鉄蓋の内外方向にやや長い形態を有し、係合突部はロック部材の上部、かつ、上記バール孔の開口範囲よりも側方にずれた位置に配置されている
請求項1記載の地下構造物用鉄蓋におけるテーパー嵌合解除装置。
【請求項3】
閉塞部材は、バール孔を鉄蓋の裏面にて完全に閉塞可能な大きさと形状を有し、バール孔の開口内に位置する閉塞部材の上部に鉄蓋表面とほぼ同じ高さになる突状部分を有し、かつ、突状部分の鉄蓋の周縁側に、開閉工具の内方移動を止める外向きの凹段部を有しており、さらに、弾性手段によってバール孔を閉塞する方向へ付勢されている
請求項1記載の地下構造物用鉄蓋におけるテーパー嵌合解除装置。
【請求項4】
ロック部材は外方を向いたロック部を有し、ロック部が受け枠の内方に設けられた内突部の下方に位置してロック状態となり、上記内突部よりも内方に移動してアンロック状態となり、閉塞部材に対して開閉工具による操作がなされてバール孔の開口が開いても、ロック状態を維持するように、閉塞部材に対してロック部材が独立的に配置されている
請求項1記載の地下構造物用鉄蓋におけるテーパー嵌合解除装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−197574(P2012−197574A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61287(P2011−61287)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【特許番号】特許第4763098号(P4763098)
【特許公報発行日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000214696)長島鋳物株式会社 (38)
【Fターム(参考)】