説明

地下構造

【課題】この発明は、平時には道路及びライフラインの配設空間として利用でき、河川に氾濫の危険があるときには放水路または貯水池として利用することのできる地下構造を得ることを課題とするものである。
【解決手段】この発明の地下構造は、河川に沿ってトンネル5を構築し、このトンネルに道路面7を設け、前記河川と連通する連絡トンネル8を設けて構成する。道路面7の下側又は側方にライフラインの配設空間12を設けることが好ましい

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、河川の氾濫を防止すると共に、道路の整備及びガス管、電線などのライフラインの配設にも寄与する地下構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
河川と地下構造とを関連づけた発明として、特開2006−52621号公報に記載された発明がある。この発明は、河川に地下を利用して道路、鉄道やライフラインを設置しようとするものであり、単に土地(公有地)の有効活用を図ろうとするものにすぎず、河川の氾濫を防止するという観点は示されていない。
地下トンネルに道路面を設け、道路面の下方を別の用途に利用する発明として、特開2004−108094号公報に記載された発明がある、この発明も河川などの水面下にトンネルを構築するものであるが、やはり河川の氾濫を防止するという観点は示されていない。
【特許文献1】特開2006−52621号公報
【特許文献2】特開2004−108094号公報 また、道路の地下に貯水池となるトンネルを建設することも現に行われているが、このトンネルを道路として利用することは考慮されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明は、平時には道路及びライフラインの配設空間として利用でき、河川に氾濫の危険があるとき(以下「危険時」という。)には放水路または貯水池として利用することのできる地下構造を得ることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明の地下構造は、河川に沿ってトンネルを構築し、このトンネルに道路面を設け、トンネルと前記河川と連通する連絡トンネルを設けて構成する。
前記道路面の下側又は道路面の側部をライフラインの配設空間とすることが好ましい。
前記トンネルは、道路面の下側が空間である場合には、道路面の上側に開口させても、道路面の下側に開口させてもよい。そして、道路面の上側と下側とは水が通過可能な構造としておくこともできる。
前記連絡トンネルの河川側開口部を河川の危険水位よりも上方に位置させる場合、連絡トンネルに水門は不要であるが、危険水位よりも下方に位置させる場合は平時に河川の水がトンネルに流入しないようにするために、水門が必要である。
また、トンネルが長距離になる場合は、トンネルへの車両の出入り便を図るために、トンネルの河川と反対側の壁に地表との連絡路を設け、この連絡路に水密な扉を設けることが好ましい。
このトンネルの上流側の端部は、壁を設けて閉塞するか、開閉可能な水門を設けて危険時に水が地表面に流出することを防止する。下流側の端部は、海や河川に開口させるか、上流端と同様に閉塞又は水門を設け、水の地表面への流出を防止する。
前記トンネルは、河川の地下や堤防の外側に構築してもよいが、堤防内に構築することが好ましい。
この明細書において前記ライフラインとは、電気・ガス・水道、通信ケーブル等の公共公益設備を意味するものとして使用する。
【発明の効果】
【0005】
この発明の地下構造において、平時は道路面を道路として利用することができる。トンネル内にライフラインを配設する場合は、道路面の下側あるいは側方をライフラインの配設空間として利用することができる。
連絡トンネルに水門を設けていない構成においては、河川の水位が危険水位を超えると河川の水が自動的に連絡トンネルを介してトンネル内に流入する。水門を設けた構成においては、水門を開くことにより河川の水がトンネル内に流入する。
したがって、トンネルを放水路又は貯水池として利用することができる。
道路面とその下方との間で水が移動できるようにしておくことにより、トンネル断面の全てを放水路ないし貯水池として利用することができる。その場合、ライフラインである電線ケーブルなどは防水処理をしておき、水によりライフラインが損傷しないように対応することが必要である。
トンネルの壁に連絡口を設けることにより、トンネルへの出入り可能な場所が増加し、トンネル内の道路の利用価値が向上する。
トンネルを堤防内に構築することにより、トンネルを公有地に構築することができ経済的である上、堤防構築時に同時にトンネルを構築することにより、堤防の構築に要する土の量も減少させることができる。また、盛り土された堤防にトンネルを構築することにより、トンネルの道路面と地表の道路面との高低差を減少することができ、自動車の通行が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下この発明の実施形態を説明する。
図1において、符号1は河川の平時の流路、2は河川敷、3が堤防である。
堤防3の頂部分4の地下にトンネル5を構築し、トンネルの下部の堤防側方の地表面6と同じ高さの位置に道路面7を形成する。この道路面7の上部空間と河川域である堤防の河川側とを連絡トンネル8で連通する。この連絡トンネルの河川側開口部9の位置が河川の危険水位10よりも下の場合(図における8a)は、平時に河川の水がトンネル内に流入することを防止するために、連絡トンネル8aに水門11を設ける。連絡トンネルの河川側開口部9の位置が河川の危険水位よりも上の場合(図における8)は、水門を設けなくともよい。
前記道路面7の下部空間はライフラインの配設空間12とする。
【0007】
前記トンネル5は、既存の堤防に構築する場合はシールド工法により、図に示すような断面円形のトンネルを構築することが好ましいが、堤防の構築と同時にトンネルを構築する場合は鋼管や成型コンクリートを埋め込むなどの工法により構築することができる。そして、トンネル5の大きさは、2車線の車道を得るために、道路面7において5メートル程度の幅を得ることが好ましいが、1車線分でもよい。また、天井高は大型車が通行できなくとも普通車が通行できればよい。トンネルを構築する環境により適宜選択することになる。
【0008】
前記道路面7は、危険時の水圧に耐えられる強度を備えることが必要である。そして、ライフラインに耐水処理を施さない場合は、危険時においても水がライフラインの配設空間12を水没させない水密性を備えたものとする。また、ライフラインに耐水処理を施した場合やライフラインの配設空間12を道路面の側部に設けた場合は、道路面7に適宜開口部16を設けて水が上下の空間を移動できるようにして、トンネルの断面全てを放水路などとして利用できるようにする(図2)。
【0009】
前記連絡トンネル8は、トンネル5の全長に亘り、河川の氾濫を防止するために必要な断面積の連絡トンネルを、必要な数設置する。
【0010】
前記トンネル5の起点側端部は、危険時に水が流出しないように閉鎖されなければならない。平時に自動車がトンネル5の開口端から出入りするように構成する場合は、トンネル5の開口端に危険時に閉鎖するための水門を設ける必要がある。平時においても自動車がトンネルの開口端から出入りしないようにして、開口端を堤防の盛り土で封鎖するなど、トンネルの開口端を常時閉鎖しておく構成としてもよい。
【0011】
前記トンネル5の河川1と反対側の壁に、地表との連結口13が設けてあり、連絡口13と地表との間に連絡路14が設けてある。そして、連絡路14に危険時にトンネル5に流入した水が堤防外に流失しないように、水密な扉15が設けてある。
この連結路13は、トンネル5の起点側開口端を閉塞したときには必須であるが、基端側開口端を開閉可能として構成したときは必須ではない。トンネル5の終点側は常時開口としておいても平時の自動車の運行、危険時の放流に支障はないように設計可能である。
【産業上の利用可能性】
【0012】
この発明は、通常の土木技術により実施可能なものであり、道路網を増強しつつ河川の氾濫防止に寄与するものであって、産業上の利用可能性を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明実施例の断面図である。
【図2】同じくライフラインの配設空間を道路免状に設けた実施例の断面図である。
【符号の説明】
【0014】
1 河川の平時の流路
2 河川敷
3 堤防
4 堤防の頂部分
5 トンネル
6 地表面
7 道路面
8 連絡トンネル
9 河川側開口部
10 河川の危険水位
11 水門
12 ライフラインの配設空間
13 連結口
14 連結路
15 扉
16開口部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川に沿ってトンネルを構築し、このトンネルに道路面を設け、このトンネルと前記河川とを連通する連絡トンネルを設けた、地下構造
【請求項2】
道路面の下側をライフラインの配設空間とし、前記道路面の上側に前記河川と連通する連絡トンネルを設けた、地下構造
【請求項3】
連絡トンネルに水門を配設した、請求項1又は2に記載の地下構造
【請求項4】
トンネルの河川と反対側の壁と地表との間に連絡路を設け、この連絡路に水密な扉を設けた、請求項1ないし3の何れかに記載の地下構造

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−219513(P2012−219513A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86517(P2011−86517)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(501311085)
【出願人】(508257533)
【出願人】(508257544)
【出願人】(390011888)
【Fターム(参考)】