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地下水の通水機能を有する地下構造体、その製造方法及びそのメンテナンス方法
説明

地下水の通水機能を有する地下構造体、その製造方法及びそのメンテナンス方法

【課題】地山の崩落防止機能と通水機能の両機能を偏り無く効果的に発揮できる地下水の通水機能を有する地下構造体を提供すること。また、当該通水機能が目詰まりによって低下した場合に、その低下した通水機能を回復させることが可能にすること。
【解決手段】地下構造体8の周囲に設けられ、内部に裏込め材が充填されて膨らむことにより前記地下構造体の外表面9と該外表面と対向する地山の掘削面gの両面に接した状態となっている複数列のドーナツ状袋体リング10、10、…と、隣り合う少なくとも一組の前記ドーナツ状袋体リングと前記地下構造体の外表面と前記掘削面とで形成される空間Sに設けられた透水性裏込め材のリング7、7、…と、を備えること。更に洗浄用孔を備えること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下構造体を構築することにより生じる地下水の流動阻害を防止する地下水の通水機能を有する地下構造体、その製造方法及びそのメンテナンス方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、シールド掘削機を用いて、地山に地下構造体の一例であるトンネルの覆工体を構築する場合、掘進したシールド掘削機のテール部分で、先ず複数のセグメントを互いにトンネルの円周方向にリング状に接続させてセグメントリングを構築する。そして、該セグメントリングを前記シールド掘削機の掘進力を得るためのベースにして該シールド掘削機を推進させて地山を掘削し、次のセグメントリングを先行構築された前記セグメントリングに連結するように構築し、これらを繰り返すことで地山にトンネルの覆工体を構築する。
また、前記セグメントリングの外周面(以下「外表面」とも言う)とシールド掘削機による掘削によって地山にできるトンネル用の掘削面とで作られる空隙、いわゆる、「ボイド」には、裏込め材を注入し、硬化させて地山の崩落を防止しながらトンネルの覆工体を構築する。
【0003】
しかし、地下水が流れる透水層と、該透水層を間にして上下に不透水層が在る地山にトンネルの覆工体を前記上下の不透水層に跨る配置で構築すると、前記ボイドに注入され硬化した裏込め材が地下水の流れを遮断し、該トンネルの覆工体の下流側においては、地下水の流れが減少し又は無くなり、地盤地下や水枯れが発生する問題があった。
【0004】
そこで、トンネル用の掘削面とセグメントリングで構成された前記覆工体の外表面との間(ボイド)であって地下水の流路に対応する部分に、通水性を有する裏込め材(骨材を充填したもの)を設けることにより地下水の流れを確保する技術が知られている(特許文献1)。ここで、前記「通水性を有する裏込め材」は、前記覆工体の外表面と前記トンネル用の掘削面との間であって、地下水の流路に対応する部分の全面に一様に設けられている。
【0005】
また、セグメントリングで構成された前記覆工体の外表面であって地下水の流路に対応する部分に、通気性及び通水性を有する袋体を隣同士接触して密に設け、該袋体の中に骨材を充填することによりボイドを埋め、ボイドが埋められた状態であっても前記通水性袋体の繊維間の隙間および袋体内に充填された骨材同士の隙間を通る流路によって地下水の流れを確保する技術が知られている(特許文献2)。ここで、前記「裏込め材が充填された袋体」は、前記覆工体の外表面との間であって地下水の流路に対応する部分の全面に一様に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−102945号公報
【特許文献1】特開2011−111874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載された構造では覆工体の外表面に一様に設けられた「裏込め材」が、また特許文献2に記載された構造では同じく覆工体の外表面に一様に設けられた「裏込め材の充填された袋体」が、いずれも地山の崩落防止機能と通水機能の両機能を発揮する必要がある。
しかし、前記崩落防止機能と通水機能は、通常、一方を高めると他方が低下する関係にあるので、前記覆工体の外表面の全面に亘って両機能を偏り無く効果的に発揮するように当該「裏込め材(特許文献1)」又は「裏込め材の充填された袋体(特許文献2)」を配設することは現実的には容易ではないという問題があった。
【0008】
また特許文献1または特許文献2に記載された発明では、裏込め材として、目詰まりし難い骨材を使用し長期間にわたって地下水を通水できる構造であると記載されているが、長期間にわたって使用することにより、地下水と一緒に流れる土砂等の異物が骨材の隙間に溜まって目詰まりを起こし、通水機能が低下するという問題は避けられない。
しかし、特許文献1および特許文献2には通水性の裏込め材が目詰まり状態になった場合の対策については何ら記載されていない。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、その目的は、地山の崩落防止機能と通水機能の両機能を偏り無く効果的に発揮できる地下水の通水機能を有する地下構造体及びその製造方法を提供することにある。
また、当該通水機能が目詰まりによって低下した場合に、その低下した通水機能を回復させることが可能な地下構造体及びそのメンテナンス方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明の第1の態様に係る地下水の通水機能を有する地下構造体は、地下構造体の周囲に設けられ、内部に裏込め材が充填されて膨らむことにより前記地下構造体の外表面と該外表面と対向する地山の掘削面の両面に接した状態となっている複数列のドーナツ状袋体リングと、隣り合う少なくとも一組の前記ドーナツ状袋体リングと前記地下構造体の外表面と前記掘削面とで形成される空間に設けられた透水性裏込め材のリングと、を備えることを特徴とするものである。
【0011】
本態様によれば、互いに離間して複数列配設された「ドーナツ状袋体リング」が、地山の崩落防止機能と、更に該「ドーナツ状袋体リング」同士の間に設けられた「透水性裏込め材のリング」を両側から保持して該「透水性裏込め材のリング」の通水性及び崩落防止機能をサポートする機能を担う。そして、前記「透水性裏込め材のリング」が、通水機能を主として担い、前記「ドーナツ状袋体リング」のサポートを受けて地山の崩落防止機能も担う。
即ち、求められる各機能に対して適度に役割分担しサポートし合う形で当該「ドーナツ状袋体リング」と「透水性裏込め材のリング」とが設けられているので、地山の崩落防止機能と通水機能の両機能を地下構造体の外表面であって地下水の流路に対応する部分の全面に亘って偏り無く効果的に発揮できるようにすることができる。
【0012】
本発明の第2の態様は、第1の態様の地下水の通水機能を有する地下構造体において、前記透水性裏込め材のリングを洗浄するために前記地下構造体の前記透水性裏込め材のリングに対応する部位に設けられた開閉可能な洗浄用孔を備え、前記洗浄用孔から洗浄液を供給することで該洗浄液は前記一組のドーナツ状袋体リングによって両側からガイドされて前記透水性裏込め材のリング中を流れることにより該透水性裏込め材のリングを洗浄するように構成されていることを特徴とするものである。
【0013】
本態様によれば、前記洗浄用孔から洗浄液を供給することで該洗浄液は前記一組のドーナツ状袋体リングによって両側からガイドされて前記透水性裏込め材のリング中を流れることにより該透水性裏込め材のリングを洗浄することができる。従って、第1の態様の効果に加えて、長期間の使用によって透水性裏込め材に目詰まりが生じて通水機能が低下しても、前記洗浄用孔から洗浄液を供給して洗浄することで、通水機能を容易に回復させることが可能である。
【0014】
本発明の第3の態様は、第2の態様の地下水の通水機能を有する地下構造体において、前記洗浄用孔は周方向に複数設けられており、一つの洗浄用孔から供給された前記洗浄液は前記透水性裏込め材のリング中を流れ、隣に位置する他の洗浄用孔から地下構造体内に回収可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0015】
本態様によれば、第2の態様と同様の効果を得られるとともに、さらに、一つの洗浄用孔から供給された前記洗浄液は前記透水性裏込め材のリング中を流れ、隣に位置する他の洗浄用孔から地下構造体内に回収可能に構成されているので、地下構造体の通水構造の目詰まりの状態に適した洗浄を行うことが可能である。
例えば、目詰りが多い部分の近くの洗浄用孔から洗浄液を注入し、他の洗浄用孔を排出孔として使用して効果的な洗浄を行うことができる。或いは目詰りがひどい部分を部分的に洗浄することも可能である。
また、洗浄に伴って透水性裏込め材のリング中から除去される目詰まり物が地下水中に放出される量を低減することができる。また洗浄液の再利用も可能である。
【0016】
本発明の第4の態様は、第1の態様から第3の態様のいずれか一つの態様の地下水の通水機能を有する地下構造体において、前記地下構造体がセグメントを周方向に複数連結することによって組み立てられたセグメントリングを複数連結した構成のトンネルの覆工体であることを特徴とするものである。
【0017】
本発明は、地下構造体がセグメントリングを複数連結した構成のトンネルの覆工体である場合に効果的である。
【0018】
本発明の第5の態様に係る地下水の通水機能を有する地下構造体の製造方法は、シールド掘削機によって掘進を行い、該シールド掘削機のテール部分でセグメントリングを連結させて地下構造体を構築するシールド工法を用い、一つのセグメントリングの外表面に設けられ、内部に裏込め材を充填して膨らませることにより前記一つのセグメントリングの外表面と該外表面と対向する地山の掘削面の両面に接した状態となるドーナツ状袋体リングを設ける工程と、隣り合う少なくとも一組の前記ドーナツ状袋体リングと前記地下構造体の外表面と前記掘削面とで形成される空間に透水性裏込め材のリングを設ける工程と、を有することを特徴とする。
【0019】
シールド工法でセグメントリングを連結させて地下構造体を構築する際に、地山の崩落防止のためにセグメントリングの外周面に裏込め材を充填する。
本態様によれば、その裏込め材の充填を、セグメントリングの外表面に設けられた袋体の中に裏込め材を充填することで前記崩落防止機能を有するドーナツ状袋体リングを設ける工程と、隣り合う少なくとも一組の前記ドーナツ状袋体リングと前記地下構造体の外表面と前記掘削面とで形成される空間に透水性裏込め材を充填して通水機能を有する透水性裏込め材のリングを設ける工程とで行う。これにより、当該地下水の通水機能を有する地下構造体を容易に製造することができる。
【0020】
本発明の第6の態様に係る地下水の通水機能を有する地下構造体のメンテナンス方法は、第1の態様から第4の態様のいずれか一つの態様の地下水の通水機能を有する地下構造体のメンテナンス方法であって、前記透水性裏込め材のリングを洗浄するために前記地下構造体の前記透水性裏込め材のリングに対応する部位に設けられた開閉可能な洗浄用孔から洗浄液を送り込み、該送り込まれた洗浄液が前記一組のドーナツ状袋体リングによって両側からガイドされて前記透水性裏込め材のリング中を流れることにより該透水性裏込め材のリングを洗浄する工程を有することを特徴とするものである。
本態様によれば、地下水の通水機能を有する地下構造体の通水機能のメンテナンスを効果的に行うことができる。
【0021】
本発明に係る第7の態様は、第6の態様の地下構造体の通水構造のメンテナンス方法において、前記洗浄する工程を複数回実施する場合に、先に実施する先洗浄工程とその後に実施する後洗浄工程において、前記後洗浄工程は前記先洗浄工程で前記洗浄液を注入した洗浄用孔とは別の洗浄用孔から洗浄液を供給し、該別の洗浄用孔の隣に位置する他の洗浄用孔から地下構造体内に回収することを特徴とするものである。
本態様によれば、地下水の通水機能を有する地下構造体の通水機能のメンテナンスを一層効果的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施例に係る地下水の通水機能を有する地下構造体及びその製造方法を示す縦断面図である。
【図2】同実施例に係る地下水の通水機能を有する地下構造体及びその製造方法を示す一部切欠の斜視図である。
【図3】図1のX部分における拡大図である。
【図4】図1のY−Y線断面図であり、第1のメンテナンス方法を説明する図である。
【図5】本発明に係る第2のメンテンス方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施例に係る地下水の通水機能を有する地下構造体及びその製造方法について説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
図1と図2は、地下水の通水機能を有する地下構造体を地下水が流れる地山にシールド工法を用いて製造している状態を示している。本実施例では、地下構造体8はトンネルの覆工体である。図2は図1のセグメントリングSE13が設けられる前の状態が示されている。
【0024】
本実施例に係る地下水の通水機能を有する地下構造体(トンネルの覆工体)8は、内部に裏込め材が充填されて膨らむことにより、当該地下構造体8の外表面9と、該外表面9と対向する地山Gの掘削面gの両面9、gに接した状態となっている複数列のドーナツ状袋体リング10、10、…と、隣り合う少なくとも一組の前記ドーナツ状袋体リング10、10、…と前記外表面9と前記掘削面gとで形成される空間Sに設けられた透水性裏込め材のリング7、7、…とを備えている。
該透水性裏込め材のリング7は、固化した状態で砂、礫等の骨材が互いに接触し且つ地下水が通水可能な隙間を有する構造である。該透水性裏込め材のリング7は、例えば豆砂利や砂等の地盤材、軽量骨材とセメント、泡モルタル、ポーラスコンクリート等を材料にした透水性裏込め材を充填し、固化させることで造られる。勿論この材料に限定されず、公知の他の材料を用いることが可能である。
【0025】
上記地下水の通水機能を有する地下構造体8は、シールド掘削機1によって掘進を行い、該シールド掘削機1のテール部分でセグメントリングSEを連結させて地下構造体8を構築するシールド工法を用いて製造される。
【0026】
具体的には、一つのセグメントリングSEの外表面9に設けられ、内部に裏込め材を充填して膨らませることにより前記一つのセグメントリングSEの外表面9と該外表面9と対向する地山Gの掘削面gの両面9,gに接した状態となるドーナツ状袋体リング10を設け、隣り合う少なくとも一組の前記ドーナツ状袋体リング10、10、…と前記外表面9と前記掘削面gとで形成される空間Sに透水性裏込め材のリング7を設けることで、地下水の通水機能を有する地下構造体8が製造される。
即ち、裏込め材の充填を、セグメントリングSEの外表面9に設けられた袋体の中に裏込め材を充填することで前記崩落防止機能を有するドーナツ状袋体リング10、10、…を設ける工程と、隣り合う少なくとも一組の前記ドーナツ状袋体リング10、10、…と前記外表面9と前記掘削面gとで形成される空間Sに透水性裏込め材を充填して通水機能を有する透水性裏込め材のリング7を設ける工程とで製造される。
【0027】
以下、更に具体的に説明する。
図1乃至図3において、符号1はシールド掘削機、符号2はカッタ、符号3は排土機構、符号4はシールドジャッキ、符号5はシールド掘削機1のテール部分に設けられたテールブラシである。
該シールド掘削機1は、前端開口部にカッタ2が回転自在に設けられ、テール部分には、シールド掘削機1が進行する際にセグメントリング(SE10、SE11、SE12、SE13、SE20、SE21、SE22、…)の外周面と接触して裏込め材や地下水がシールド掘削機1の内部前方へ流入するのを防止するためのテールブラシ5が設けられている。
【0028】
該シールド掘削機1は、シールドジャッキ4を備えており、該シールドジャッキ4に設けられているロッド4’を、後方に組み立ててあるセグメントリング(SE10、SE11、SE12、SE13、SE20、SE21、SE22、…)の前端面に押し当ててロッド4’を伸長させることによりセグメントリング(SE10、SE11、SE12、SE13、SE20、SE21、SE22、…)からの反力を受けて進行する。
【0029】
シールド掘削機1の後方部内側即ちテール部分では、複数のセグメントを互いにトンネルの円周方向にリング状に接続させてセグメントリング(例えばSE22)を構築する。そして、該セグメントリングSE22を前記シールド掘削機1の掘進力を得るためのベースにして該シールド掘削機1を推進させて地山を掘削し、次のセグメントリングSE13を先行構築された前記セグメントリングSE22に連結するように構築し、これらを繰り返すことで地山Gにトンネルの覆工体(地下構造体)8を構築する。
【0030】
ここで、地下構造体8は、袋体付きでないセグメントリング(SE20、SE21、SE22、…)と、裏込め材注入用の袋体付きセグメントリング(SE10、SE11、SE12、SE13、…)の二種類のセグメントリングSEで構成されている。袋体付きセグメントリング(SE10、SE11、SE12、SE13、…)が前記ドーナツ状袋体リング10、10、…をその周囲に有する。
そして、袋体付きでないセグメント(SE20、SE21、SE22、…)を袋体付きセグメント(SE10、SE11、SE12、SE13、…)間に挟んで互いに連結されている。即ち、袋体付きセグメント(SE10、SE11、SE12、SE13、…)が有する前記ドーナツ状袋体リング10、10、…の間の袋体付きでないセグメント(SE20、SE21、SE22、…)の周囲の前記空間Sに透水性裏込め材のリング7が位置する。
【0031】
次に、ドーナツ状袋体リング10と透水性裏込め材のリング7の設け方について説明する。図1において、セグメントリングSE11の周囲にドーナツ状袋体リング10が設けられた時点から説明する。
この時点では、図1と違って、シールド掘削機1のテールブラシ5はセグメントリングSE21の周囲に位置している。また、セグメントリングSE12の周囲は、図1と違って、接着剤で取り付けられている袋体が未だ裏込め材が充填されない、即ち膨らむ前の扁平な状態にある。尚、膨らむ前の扁平な袋体10´を破線で示した。セグメントリングSE13の周囲の袋体10´が膨らむ前の扁平な状態を示している。
この状態でテールブラシ5がセグメントリングSE21を通過し、更にセグメントリングSE12の膨らむ前の袋体(破線)10´の上を通過した直後に、該袋体(破線)10´内に裏込め材が裏込め材注入用孔11から充填され、膨らんでドーナツ状袋体リング10になる。図1はこの状態を示している。
【0032】
次に、セグメントSE21に設けられた裏込め材注入用孔11から透水性裏込め材を、セグメントSE21の外表面、該外表面に対向する地山Gの掘削面gおよび両側に位置する一組の袋体10、10で囲まれている空間S(ボイド)に注入してボイドを埋める。このとき、前記ボイドに注入された透水性裏込め材は、セグメントリングSE12の周囲に設けられたドーナツ状袋体リング10によってシールド掘削機1のテールブラシ5側に流入することが防止される。この透水性裏込め材が固化することにより透水性裏込め材のリング7になる。
前述のドーナツ状袋体リング10を設ける工程と透水性裏込め材のリング7を設ける工程を繰り返すことにより、通水機能を有する地下構造体(トンネルの覆工体)8が構築されていく。
【0033】
上記実施例では、セグメントSE12に取付けられている袋体に裏込め材を注入して膨らませた後に、セグメントSE21に設けられた裏込め材注入用孔11から透水性裏込め材7を空間Sに注入している。しかし、地山の状態に応じては、シールド掘削機1のテールブラシ5がセグメントSE21を通過した後、セグメントSE21に設けられた裏込め材注入用孔11から空間Sとなる部分に透水性裏込め材7を注入し、テールブラシ5がセグメントSE12に取付けられている膨らむ前の袋体10’を通過直後に、セグメントSE12に設けられた裏込め材注入用孔11から裏込め材を袋体10’内に注入して、ドーナツ状袋体リング10になるようにしてもよい。
【0034】
なお、袋体10’に注入する裏込め材は、通常使われている公知の裏込め材が使える。また、裏込め材注入用の袋体を接着したセグメント或いはセグメントリングを用いたトンネル施工方法が特開2011-21352号公報に記載されている。本発明はこの公報に記載されている袋体、該袋体をセグメントに接着する接着剤、袋体を保護するための保護シートを利用することができるものである。
【0035】
上記実施例によれば、互いに離間して複数列配設された「ドーナツ状袋体リング10、10、…」が、地山Gの崩落防止機能と、更に該「ドーナツ状袋体リング10、10、…」同士の間に設けられた「透水性裏込め材のリング7、7、…」を両側から保持して該「透水性裏込め材のリング7、7、…」の通水性及び崩落防止機能をサポートする機能を担う。そして、前記「透水性裏込め材のリング7、7、…」が、通水機能を主として担い、前記「ドーナツ状袋体リング10、10、…」のサポートを受けて地山Gの崩落防止機能も担う。
このように、求められる各機能に対して適度に役割分担しサポートし合う形で当該「ドーナツ状袋体リング10、10、…」と「透水性裏込め材のリング7、7、…」とが設けられているので、地山Gの崩落防止機能と地下水の通水機能の両機能を地下構造体8の外表面9であって地下水の流路に対応する部分の全面に亘って偏り無く効果的に発揮できるようにすることができる。
【0036】
次に、図4および図5に基づいて地下水の通水機能を有する地下構造体のメンテナンス方法を説明する。
図4は図1のYの部分における縦断面図および第1のメンテナンス方法を説明する図であり、図5は本発明の第2のメンテナンス方法を説明する図である。
【0037】
図4に示したように、不透水層である粘土層には地下水Wは流れないが、透水層である砂層には地下水Wが流れている。そのため、透水性裏込め材のリング7の部分には地下水だけでなく砂等に異物も流れ込む。そのため、長期間このような状態が続くと異物が透水性裏込め材のリング7の隙間に入り込んで溜まり、目詰まりして、地下水の通水機能を有する地下構造体全体の通水機能が低下する問題が生じる。そのため、目詰まりを解消するためのメンテナンスが必要となる。
【0038】
図3に記載した第1のメンテナンス方法は、目詰まりの原因となっている砂等を取り除き透水性裏込め材のリング7を洗浄するために、セグメントリングSE21を構成する4つのセグメントSE210に設けられた開閉可能な洗浄用孔12において、該洗浄用孔12を開いて内側より洗浄液(例えば水)を供給(図4の点線の矢印)して、目詰まりの原因となっている砂等を取り除く態様である。この際、取り除かれた砂等は地下水と共に下流側へ流れる。
また、第1のメンテナンス方法では、セグメントSE210の強度や作業効率等の観点から、洗浄用孔12と裏込め材注入用孔11を共用しているが、両者を別々に設けたり、複数設けたりする構造としても良い。
【0039】
透水性裏込め材のリング7が存在する部分は、セグメントリングSE21の外表面9、地山Gの掘削面gおよび該掘削面gと接触している一組のドーナツ状袋体リング10、10によって図1に示したように、閉じられた空間Sになっている。従ってメンテナンスを行う際、一組のドーナツ状袋体リング10、10がガイドの役割を果たし洗浄液が他の部分に漏れることなく閉じられた空間S内全体に行き渡る。これにより、目詰まりの原因となっている砂等を取り除き下流側へ流すことができ、地下水の通水機能を回復することができる。
【0040】
次に、図5に基づいて第2のメンテナンス方法を説明する。
第2のメンテナンス方法は、複数の洗浄孔12の一部を洗浄液の注入孔として使用し、他の部分の洗浄孔12を開いておいて、注入した洗浄液および地下水の通水機能を有する地下構造体の目詰まりの原因となった砂等を排出するための排出孔として利用するものであるである。
【0041】
図5(A)の態様では、上部のセグメントSE210の洗浄孔12を洗浄液を注入する注入孔として使用する。そして、下部のセグメントSE210の洗浄孔を閉孔13として閉じておき、左右の2つのセグメントSE210の洗浄孔12を開いておいて、注入した洗浄液および地下水の通水機能を有する地下構造体の目詰まりの原因となった砂等を排出するための排出孔として使用している。
第2のメンテナンス方法は、注入孔として使用される洗浄孔12から洗浄液を注入することにより、洗浄液と共に目詰まりの原因となっている砂等を排出孔として使用される洗浄液を注入した洗浄孔とは別の洗浄孔12から取り出すことによって行われる。
【0042】
図5(B)〜(D)は、図5(A)の注入口、排出口、閉孔13の位置を順次変えた態様である。
そして、図5(A)→(B)→(C)→(D)と連続して順次メンテナンスを行って、透水性裏込め材のリング7の全体を洗浄することにより、目詰まりの原因となっている砂等を洗浄液と一緒に排出孔として使用している洗浄孔12から構築されたトンネル内部に取り出し、地下水の通水機能を有する地下構造体のメンテナンスが終了する。
【0043】
トンネルの構築場所等により、メンテナンス間隔が長く空いてしまう場合には、目詰まりしている砂等も多く洗浄液の通りも悪いので、メンテナンスをする際に多量の洗浄液を勢い良く地下水の通水機能を有する地下構造体に注入する必要がある。つまり、図4に示した方法のように洗浄孔12の全てから一度に多量の洗浄液を勢い良く注入する第1のメンテナンス方法が適している。
【0044】
これに対して、短い間隔でメンテナンスできる場合は、地下水の通水機能を有する地下構造体の砂等における目詰まりの量も少ないので、メンテナンスする際には、図4の方法のように洗浄孔12のすべてから一度に多量の洗浄液を注入する必要はない。
そこで、第2のメンテナンス方法のように、図5(A)〜(D)の状態に対応するメンテナンスを順次行うことで、洗浄液の量も多量に使用する必要もなく、また、排出される目詰まりの原因となった砂等も少ないので効率よく取り除くことができる。
【0045】
なお、第2のメンテナンス方法では、洗浄液の注入孔及び目詰まりの原因となっている砂等の排出孔をセグメントSE210の洗浄用孔12と共用する構造を説明したが、それぞれを別々に設ける構造としてもよい。
【0046】
洗浄液を注入する装置等は、公知のものでよく、例えば注入用ポンプが等が挙げられる。また、セグメントSE210の洗浄用孔12から注入する洗浄液の流量や流速は、目詰まりした砂等を取り除くことができればよく、メンテナンスの間隔や地山等の状況によって適宜変更が可能である。
【0047】
上記の実施例では、ドーナツ状袋体リング10を周囲に有するセグメントリングと、透水性裏込め材のリング7を周囲に有するセグメントリングを交互に配置(一つずつ交互に配置)して接合した地下構造体8を説明したが、本発明はこれに限定されるものでない。例えば、隣り合う一組のドーナツ状袋体リング10を周囲に有するセグメントリングの間に、複数のセグメントリングを連結し、その複数のセグメントリングの外表面に一つの透水性裏込め材のリング7を設けた構造であってもよい。
【0048】
上記実施例では、真っ直ぐなトンネルを構築する場合について説明したが、それに限られない。掘削する方向が真っ直ぐではなくカーブを描いた曲線部分に対しても同様の方法で地下水の通水機能を有する地下構造体を製造することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 シールド掘削機、 2 カッタ、 3 排土機構、 4 シールドジャッキ、
4’ ロッド、 5 テールブラシ、 6 余堀り部、 7 透水性裏込め材のリング、
10 ドーナツ状袋体リング 10´ 膨らむ前の袋体、 11 裏込め材注入用孔、
12 洗浄用孔(注入孔、排出孔)、 13 閉孔、
SE10〜SE13 ドーナツ状袋体リングを周囲に有するセグメントリング、
SE20〜SE22 透水性裏込め材のリングを周囲に有するセグメントリング、
G 地山、 g 掘削面、 S 空間(ボイド) W 地下水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下構造体の周囲に設けられ、内部に裏込め材が充填されて膨らむことにより前記地下構造体の外表面と該外表面と対向する地山の掘削面の両面に接した状態となっている複数列のドーナツ状袋体リングと、
隣り合う少なくとも一組の前記ドーナツ状袋体リングと前記地下構造体の外表面と前記掘削面とで形成される空間に設けられた透水性裏込め材のリングと、を備えることを特徴とする地下水の通水機能を有する地下構造体。
【請求項2】
請求項1に記載された地下水の通水機能を有する地下構造体において、
前記透水性裏込め材のリングを洗浄するために前記地下構造体の前記透水性裏込め材のリングに対応する部位に設けられた開閉可能な洗浄用孔を備え、
前記洗浄用孔から洗浄液を供給することで該洗浄液は前記一組のドーナツ状袋体リングによって両側からガイドされて前記透水性裏込め材のリング中を流れることにより該透水性裏込め材のリングを洗浄するように構成されていることを特徴とする地下水の通水機能を有する地下構造体。
【請求項3】
請求項2に記載された地下水の通水機能を有する地下構造体において、
前記洗浄用孔は周方向に複数設けられており、
一つの洗浄用孔から供給された前記洗浄液は前記透水性裏込め材のリング中を流れ、隣に位置する他の洗浄用孔から地下構造体内に回収可能に構成されていることを特徴とする地下水の通水機能を有する地下構造体。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載された地下水の通水機能を有する地下構造体において、
前記地下構造体がセグメントを周方向に複数連結することによって組み立てられたセグメントリングを複数連結した構成のトンネルの覆工体であることを特徴とする地下水の通水機能を有する地下構造体。
【請求項5】
シールド掘削機によって掘進を行い、該シールド掘削機のテール部分でセグメントリングを連結させて地下構造体を構築するシールド工法を用い、
一つのセグメントリングの外表面に設けられ、内部に裏込め材を充填して膨らませることにより前記一つのセグメントリングの外表面と該外表面と対向する地山の掘削面の両面に接した状態となるドーナツ状袋体リングを設ける工程と、
隣り合う少なくとも一組の前記ドーナツ状袋体リングと前記地下構造体の外表面と前記掘削面とで形成される空間に透水性裏込め材のリングを設ける工程と、を有する地下水の通水機能を有する地下構造体の製造方法。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載された地下水の通水機能を有する地下構造体のメンテナンス方法であって、
前記透水性裏込め材のリングを洗浄するために前記地下構造体の前記透水性裏込め材のリングに対応する部位に設けられた開閉可能な洗浄用孔から洗浄液を送り込み、該送り込まれた洗浄液が前記一組のドーナツ状袋体リングによって両側からガイドされて前記透水性裏込め材のリング中を流れることにより該透水性裏込め材のリングを洗浄する工程を有する地下水の通水機能を有する地下構造体のメンテナンス方法。
【請求項7】
請求項5に記載された地下水の通水機能を有する地下構造体のメンテナンス方法であって、
前記洗浄する工程を複数回実施する場合に、先に実施する先洗浄工程とその後に実施する後洗浄工程において、前記後洗浄工程は前記先洗浄工程で前記洗浄液を注入した洗浄用孔とは別の洗浄用孔から洗浄液を供給し、該別の洗浄用孔の隣に位置する他の洗浄用孔から地下構造体内に回収することを特徴とする地下水の通水機能を有する地下構造体のメンテナンス方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−100664(P2013−100664A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244407(P2011−244407)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000148346)株式会社錢高組 (67)
【Fターム(参考)】