説明

地下水位の測定方法

【課題】簡単な操作及び装置構成により、地盤の地下水位を正確に能率よく測定できる方法を提供する。
【解決手段】長さ方向所定間隔置きに内外を透通する横穴11を設けた中空ロッド1を地盤Gの所定深さまで垂直に貫入させたのち、電気抵抗の変化を検出する機能を備えた計測器4Aに接続した計測用絶縁ケーブル3Aを中空ロッド1内に挿入し、絶縁ケーブル3Aの先端側の電極部31aが中空ロッド1内に浸入した地下水Wの水面WFに達した際の電極間の電気抵抗の変化を検出し、検出時の絶縁ケーブル3Aの挿入長さから地下水位WLを測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤の事前調査等として地下水の状態を判定するのに利用する地下水位の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地震による地盤液状化に対処するため、一般住宅の如き小規模建築物を対象とした地盤についても、地質構成と共に地下水位を調べることが要望されている。しかしながら、通常の地盤調査に採用されているボーリング調査は、大掛かりな作業になってコストが高く付くことに加え、戸建住宅用の宅地等では作業スペースの確保も難しいという問題があった。しかも、ボーリング調査の穿内水位は上方の傾向にあり、今までは安全側のために問題視されなかったが、本来は不要な液状化対策のために大きなコスト負担を強いられる懸念があった。
【0003】
一方、戸建住宅の地盤調査には、従来よりJIS規格に制定されたスウェーデン式サウンディング試験が行われている。このサウンディング試験は、図6に示すように、下端に掘進スクリュー部材(通称:スクリューポイント)21が装着された鉄製またはステンレス鋼製の中実ロッド2を地盤Gに垂直に突き立て、このロッド2の上部にクランプ22及びハンドル23を取り付け、まずクランプ22上に複数枚の円盤状の錘24(10kgが2枚と25kgが3枚で計95kg、載荷用クランプの重さ5kgとの合計で100 kg)を順次載せてロッド2の沈み込みを観察して記録する。そして、全部の錘24を載せた段階でロッド1の沈み込みがない場合、ハンドル23による回転で掘進させ、ロッド2表面の25cm刻みの目盛り2aにより、当該ロッド2が25cm沈み込むのに要した回転回数を記録してゆく。なお、ロッド2は最長1mであるため、継ぎ足しながら所定深度(通常は地下10m)まで掘進させる。また、掘進スクリュー部材21の基端側はロッド2よりも径大になっている。図中の25は掘進位置の地表に載置した底板である。
【0004】
しかして、このサウンディング試験では、上記の記録データを解析して土質を粘性土や砂質土等に分類するが、その試験後の引き抜いたロッド2表面の濡れ度合を観察し、水濡れの位置から地下水位WLを判定することも行われている。しかるに、このような方法では、引き抜いたロッド2表面の時間経過に伴う乾きや、逆に孔壁に付いた水滴や泥等の付着により、本来の地下水による水濡れ位置が判別困難であったり、誤って判定されることも多く、地下水位の測定方法として信頼性に乏しかった。
【0005】
そこで、このようなスウェーデン式サウンディング試験と同時に地下水位も測定できるようにした地下水位測定装置が提案されている(特許文献1,2)。この測定装置は、前記同様のロッドに長さ方向一定間隔置き(通常25cm間隔)に貫通孔(径方向の横穴)を設け、これら貫通孔にフェルトや脱脂綿の如き湿潤性部材を詰めたものであり、前記同様にスウェーデン式サウンディング試験を行ったのち、該ロッドを引き抜いて各貫通孔の湿潤性部材の水分吸収状態を調べて地下水位を判定するようにしている。
【特許文献1】特開2000−180243
【特許文献2】特開2000−221030
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のスウェーデン式サウンディング試験機を利用する今までの地下水位測定装置は、大まかにしか測定できず、正確な地下水位を知ることができない上、含水比の高い地盤の場合には地下水位より上方に測定される可能性があるため、判定結果に充分な信頼性が得られず、また手間及び時間を要して作業性が悪いという難点があった。
【0007】
本発明は、上述の情況に鑑み、簡単な操作及び装置構成により、地盤の地下水位を正確に能率よく測定できる方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための手段を添付図面の参照符号を付して示せば、請求項1の発明にかかる地下水位の測定方法は、長さ方向所定間隔置きに内外を透通する横穴11を設けた中空ロッド1を地盤Gの所定深さまで垂直に貫入させたのち、電気抵抗の変化を検出する機能を備えた計測器4A又は4Bに接続した計測用絶縁ケーブル3A又は3Bを該中空ロッド1内に挿入し、この絶縁ケーブル3A,3Bの先端側の電極部31a〜33aが中空ロッド1内に浸入した地下水の水面WFに達した際の電極間の電気抵抗の変化を検出し、この検出時の該絶縁ケーブル3A,3Bの挿入長さから地下水位WLを測定することを特徴としている。
【0009】
請求項2の発明は、前記請求項1の地下水位の測定方法において、絶縁ケーブル3Aが1芯線からなると共に、中空ロッド1が導電性材料からなり、該絶縁ケーブル3Aの先端側の電極部31aと電極を構成する中空ロッド1との間の電気抵抗の変化を検出する構成としている。
【0010】
請求項3の発明は、前記請求項1の地下水位の測定方法において、絶縁ケーブル3Aが芯線のワイヤー31を絶縁被覆したものからなる構成としている。
【0011】
請求項4の発明は、前記請求項1の地下水位の測定方法において、絶縁ケーブル3Bが2芯線であり、該絶縁ケーブル3Bの両芯線32,33に対応する先端側の電極部32a,33a間の電気抵抗の変化を検出する構成としている。
【0012】
請求項5の発明は、前記請求項1〜4の何れかの地下水位の測定方法において、下端に掘進スクリュー部材12が装着された前記横穴11付きの中空ロッド1を荷重負荷及び回転によって地盤Gに垂直に掘進貫入させたのち、この中空ロッド1内に絶縁ケーブル3A,3Bを挿入して地下水位WLを測定する構成としている。
【0013】
請求項6の発明は、前記請求項1〜4の何れかの地下水位の測定方法において、下端に掘進スクリュー部材21が装着された中実ロッド2を荷重負荷及び回転によって地盤に垂直に掘進貫入させ、次いで該中実ロッド2を地上へ抜出したのち、その抜出孔Hに前記横穴11付きの中空ロッド1を貫入し、この中空ロッド1内に前記絶縁ケーブル3A,3Bを挿入して地下水位WLを測定する構成としている。
【0014】
請求項7の発明は、前記請求項6の地下水位の測定方法において、抜出孔Hに貫入させる中空ロッド1の下端に掘進スクリュー部材12が装着されてなる構成としている。
【発明の効果】
【0015】
次に、本発明の効果について、図面の参照符号を付して説明する。まず、請求項1の発明にかかる地下水位の測定方法では、横穴11付きの中空ロッド1を地盤Gの帯水層WZまで垂直に貫入させると、地下水位WLより下位になる横穴11から地下水Wが該中空ロッド1の中空部10に浸入し、その水面WFが地下水位WLと同レベルに達して安定化する。従って、この状態で該中空ロッド1内に計測用絶縁ケーブル3A又は3Bを挿入してゆくことにより、その先端側の電極部31a〜33aが該中空ロッド1内の水面WFに達した際に水の導電性によって電極間の電気抵抗が変化(減少)し、この変化が計測器4A又は4Bにて検出されるため、この時の該絶縁ケーブル3A,3Bの挿入長さから地下水位WLを測定できる。
【0016】
しかして、この測定方法によれば、絶縁ケーブル3A又は3Bの電極部31a〜33aが中空ロッド1内の水面WFに達したことが瞬間的に捉えられるから、地下水位WLを極めて正確に測定できると共に、中空ロッド1内は掘進した孔壁から隔絶しているため、含水比の高い地盤でも孔壁の水分による影響を受けず、もって測定結果に高い信頼性が得られる。また、測定に際し、中空ロッド1内に上方から絶縁ケーブル3A,3Bを挿入してゆくだけでよいから、操作的に極めて簡単である上、掘進した孔壁が崩れても中空ロッド1内が土で詰まることはなく、絶縁ケーブル3A,3Bの挿入に支障を生じる懸念がないから、能率よく短時間で測定作業が完了する。
【0017】
請求項2の発明によれば、絶縁ケーブル3Aが1芯線からなり、その先端側の電極部31aと導電性材料からなる中空ロッド1との間の電気抵抗の変化を検出するようにしているから、該絶縁ケーブル3Aとして太い芯線で腰の強いものを利用することで、その中空ロッド1内への挿入を容易にでき、それだけ作業能率を向上できる。
【0018】
請求項3の発明によれば、前記1芯線の絶縁ケーブル3Aがワイヤー31を絶縁被覆したものであり、その腰が強いために中空ロッド1内への挿入が非常に容易であると共に、該絶縁ケーブル3Aとして安価な樹脂チューブ入りワイヤー線を利用できるので資材コストが低減される。
【0019】
請求項4の発明によれば、絶縁ケーブル3Bが2芯線からなり、その両芯線32,33に対応する先端側の電極部32a,33a間の電気抵抗の変化を検出するようにしているから、中空ロッド1としてプラスチック等の非導電性材料からなるものも使用できるという利点がある。
【0020】
請求項5の発明によれば、下端に掘進スクリュー部材12を有する前記横穴11付きの中空ロッド1によって地盤Gに垂直に掘進貫入させたのち、この中空ロッド1内に前記絶縁ケーブル3A,3Bを挿入して地下水位WLを測定するから、該中空ロッド1による掘進を一般的なスウェーデン式サウンディング試験に兼用できるという利点がある。
【0021】
請求項6の発明によれば、下端に掘進スクリュー部材21を有する中実ロッド2によって地盤Gに垂直に掘進貫入させたのち、この中実ロッド2を引き抜いた抜出孔Hに前記横穴11付きの中空ロッド1を貫入し、この中空ロッド1内に前記絶縁ケーブル3A又は3Cを挿入して地下水位WLを測定するという2段階の操作を行う。従って、中実ロッド2で無理なく掘進穿孔を行える一方、地下水位の測定に用いる中空ロッド1は穿孔済みの孔内に貫入するだけであるため、その中空構造の故に掘進穿孔には不充分な強度であっても支障がない。また、前段の中実ロッド2による掘進工程をスウェーデン式サウンディング試験に利用できる。
【0022】
請求項7の発明によれば、前記2段階操作での後段の地下水位測定に用いる中空ロッド1が下端に掘進スクリュー部材12を備えるから、前段の中実ロッド2による穿孔後の抜出孔Hが孔壁の崩れ等で部分的に塞がるような状態であっても、後段の中空ロッド1は軽く回転を伴って沈み込ませるだけで該抜出孔Hに充分に深く貫入できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係る地下水位の測定方法の実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。図1は本発明で用いる中空ロッド1の要部、図2は本発明の第一実施形態の測定方法、図3は同第二実施形態の測定方法、図4は本発明で用いる1芯線の計測用絶縁ケーブル3Aの先端側、図5は同2芯線の計測用絶縁ケーブル3Bの先端側、をそれぞれ示す。なお、図3及び図4においては、中空ロッド1及び中実ロッド2を模式的に簡略化して図示している。図6で示すスウェーデン式サウンディング試験用の中実ロッド2は、本発明の第二実施形態の測定方法でも用いるものである。
【0024】
図1(A)に示すように、中空ロッド1は、その長さ方向に沿って一定間隔d置きに径方向に貫通する横穴11を備え、これら横穴11で中空部10内と外部とが透通すると共に、先端に掘進スクリュー部材12が装着されている。また、同図(B)でも示すように、横穴11は上下位置で順次交互に90°向きが変わるように穿設され、これによって中空ロッド1の周方向で強度の偏りを生じないように設定されている。なお、間隔dは通常25cmに設定されるが、掘進スクリュー部材12の先端から最下位の横穴11までの距離も間隔dと等しくなっている。
【0025】
しかして、中空ロッド1は既述のスウェーデン式サウンディング試験に用いる中実ロッド2(図6参照)と同様に継ぎ足して使用されるが、その継ぎ足し部分には図1(C)(D)で示すようにジョイント部材5が使用される。このジョイント部材5は、筒状で外周に雄ねじ51が形成されており、中心孔52の両端部52aが引っ掛かり防止のためにラッパ状に開いた形状になっている。一方、中空ロッド1の両端部の内周には雌ねじ13が形成されており、該雌ねじ13にジョイント部材5の雄ねじ51を螺合することにより、図1(C)の如く上下の中空ロッド1の端面同士が直接に接する形で連結される。
【0026】
第一実施形態の測定方法では、まず図2(A)で示すように、鉄やステンレス鋼等の導電性材料からなる前記の中空ロッド1を地盤Gの所定深さまで垂直に掘進貫入させる。なお、図2(A)では図示を省略しているが、この掘進貫入に際しては、該中空ロッド1の上部に図6で示す中実ロッド2と同様にクランプ22及びハンドル23を取り付けると共に錘24を載せ、該錘24による荷重負荷とハンドル23による回転操作を行う。しかして、中空ロッド1が帯水層WZまで貫入すると、地下水位WLより下位になった横穴11から地下水Wが該中空ロッド1の中空部10に浸入し、貫入停止から数分程度で該中空ロッド1内の水面WFが地下水位WLと同レベルに達して安定化する。なお、掘進貫入は、地下の帯水層に届く深さまで行えばよいが、スウェーデン式サウンディング試験に合わせて地下10mまで行ってもよい。
【0027】
次に、図2(B)で示すように、電気抵抗の変化を検出する機能を備える計測器4Aに接続した各々1芯線からなる一対の計測用絶縁ケーブル3A,3A’の内、一方の絶縁ケーブル3A’の先端を中空ロッド1の地上部分に電気接続し、先端側に電極部31を有する他方の絶縁ケーブル3Aを該中空ロッド1の中空部10に上方から挿入してゆく。そして、この絶縁ケーブル3Aの電極部31が中空ロッド1内の水面WFに達すると、水Wの導電性によって該電極部31と電極を構成する中空ロッド1との間の電気抵抗が減少するから、この電気抵抗の変化が計測器4Aにて検出されて表示される。
【0028】
従って、この電気抵抗の変化が検出されたときの絶縁ケーブル3Aの挿入長さから、地下水位WLを正確に判定できる。すなわち、地下水位WLは、前記挿入長さより、中空ロッド1の地表面GLからの突出高さを差し引いた値である。また、このような第一実施形態の測定方法における中空ロッド1の掘進工程は、一般的なスウェーデン式サウンディング試験に利用できる。
【0029】
なお、図2(B)では1芯線の絶縁ケーブル3Aを中空ロッド1内に挿入しているが、図2(C)の如く計測器4Bに接続する2芯線の絶縁ケーブル3Bを用いてもよい。この2芯線の絶縁ケーブル3Bは、先端側にその両芯線に対応する電極部32a,33aが離間して配置しており、図示のように地盤Gの帯水層WZまで貫入した中空ロッド1内に挿入してゆき、両電極部32a,33aが共に該中空ロッド1内の水Wに接触すると、これら電極部32a,33a間の電気抵抗が減少し、この電気抵抗の変化が計測器4Aにて検出されて表示されるから、前記同様にその検出時の挿入長さから地下水位WLを正確に測定できる。
【0030】
第二実施形態の測定方法では、まず図3(A)で示すように、先端に掘進スクリュー部材12が装着された中実ロッド2を地盤Gの所定深さまで垂直に掘進貫入させたのち、同図(B)で示すように該中実ロッド2を引き抜いて抜出孔Hを形成する。この中実ロッド2は、図6で示すスウェーデン式サウンディング試験に使用するものと同様構成であり、その掘進貫入に際して図6で示すクランプ22及びハンドル23を取り付け、錘24による荷重負荷とハンドル23による回転操作を行う。しかして、該中空ロッド1が帯水層WZまで貫入しておれば、その抜出孔Hには地下水Wが浸出して溜まることになる。
【0031】
次に、図3(C)で示すように、抜出孔Hに前記第一実施形態で用いたものと同様の中空ロッド1を貫入させると、その地下水位WLより下位になった横穴11から地下水Wが中空部10に浸入し、該中空部10内の水面WFが地下水位WLと同レベルに達して安定化する。続いて同図(D)に示すように、前記第一実施形態の場合と同様に、計測器4Aに接続した一方の絶縁ケーブル3A’を中空ロッド1の地上部分に電気接続し、他方の絶縁ケーブル3Aを該中空ロッド1の中空部10に挿入してゆけば、その電極部31が中空ロッド1内の水面WFに達したとき、該電極部31と中空ロッド1との間の電気抵抗が減少し、この電気抵抗の変化が計測器4Aにて検出されて表示される。
【0032】
従って、この第二実施形態の測定方法においても、前記第一実施形態の場合と同様に、電気抵抗の変化が検出されたときの絶縁ケーブル3Aの挿入長さから、地下水位WLを正確に判定できる。そして、この第二実施形態では、前段の地盤Gに対する掘進穿孔を高強度の中実ロッド2にて行うから、後段の地下水位測定に用いる中空ロッド1は、前段の中実ロッド2の抜出孔H内に貫入するだけでよく、その中空構造の故に掘進穿孔には不充分な強度であっても支障がない。また、前段の中実ロッド2による掘進工程をスウェーデン式サウンディング試験に利用できる。
【0033】
なお、この第二実施形態のように2段階の操作を行う場合、後段の地下水位測定に用いる中空ロッド1として、下端に掘進スクリュー部材12を装着していない単なる横穴11付きのパイプ材も使用可能である。しかるに、地盤Gが軟弱な地層を含む場合等で、前段の中実ロッド2を引き抜いた抜出孔Hが孔壁の崩れ等によって部分的に塞がるような状態であっても、後段の中空ロッド1が掘進スクリュー部材12を備えるものであれば、軽く回転を伴って沈み込ませるだけで該抜出孔Hに充分に深く貫入できるという利点がある。また、この後段の地下水位測定では、第一実施形態と同様に1芯線の絶縁ケーブル3Aの代わりに計測器4Bに接続する2芯線の絶縁ケーブル3B〔図2(C)参照〕を用いることができる。
【0034】
1芯線の絶縁ケーブル3Aの場合、太い芯線で腰の強いものを利用することで、その中空ロッド1内への挿入が容易になるから、それだけ作業能率を向上できるという利点がある。特に、芯線がワイヤーからなるものでは、腰が強いために中空ロッド1内への挿入が非常に容易であると共に、安価な樹脂チューブ入りワイヤー線を利用できるので資材コストが低減されるという利点がある。一方、2芯線の絶縁ケーブル3Bの場合、中空ロッド1は電極としての機能が不要になるから、該中空ロッド1としてプラスチック等の非導電性材料からなるものも使用できるという利点がある。
【0035】
図4は、樹脂チューブ入りワイヤー線からなる1芯線の絶縁ケーブル3Aの構成例を示す。この絶縁ケーブル3Aは、ワイヤーの芯線31が絶縁材料の樹脂チューブ34で被包されており、その先端側で樹脂チューブ34の一部を除去することにより、芯線31の一部を露呈させて電極部31aを形成すると共に、ケーブル端にゴムや軟質プラスチックからなる先細で先端が丸い突端部35を形成している。しかして、このような突端部35を有することにより、中空ロッド1内への挿入時に横穴11やジョイント部材5等との引っ掛かりが防止されるため、、挿入操作がより容易になる。なお、この絶縁ケーブル3Aの中空ロッド1に対する挿入長さLは、電極部31aが基準Oとなる。
【0036】
図5は、2芯線の絶縁ケーブル3Bの構成例を示す。この絶縁ケーブル3Bでは、絶縁層36中に埋入した2本の芯線32,33のうち、一方の芯線32がケーブル先端面から突出して電極部32aを構成すると共に、ケーブル周面側での絶縁層36の切欠36aにより、芯線33の一部を露呈させて電極部33aを構成している。このように両電極部32a,33bがケーブルの端面側と周面側とに離間することにより、中空ロッド1内への挿入時に水滴等の付着で両電極部32a,33b間が導通するのを防止できる。この絶縁ケーブル3Bの中空ロッド1に対する挿入長さLは、周面側の電極部33aが基準Oとなる。
【0037】
電気抵抗の変化を検出する機能を備える計測器4A,4Bには、電線式水位計やテスター(電流計)等としての種々の市販品を利用できる。しかして、電気抵抗の変化を検出した際、指針や画面による表示以外に、ブザーや発光ランプによって使用者に知らせる方式でもよい。
【0038】
また、中空ロッド1や中実ロッド2の掘進手段として、図6では錘24による荷重負荷とハンドル23による回転操作との手動方式を例示したが、本発明では、荷重負荷を油圧シリンダー等による機械的加圧で行ったり、回転操作をモーター等で機械的に行う方式も採用可能である。更に、本発明で用いる中空ロッド1及び中実ロッド2としては、JIS規格に制定されたスウェーデン式サウンディング試験機の規定寸法に合致するものに限らず、種々の内外径を有するものを採用できる。また、ロッド先端に装着する掘進スクリュー部材についても、該サウンディング試験機のスクリューポイントとは異なる形状・構造のものも使用可能である。
【0039】
〔地下水位測定試験〕
図1で示す横穴付きの中空ロッド(外径19mm,内径7mm,横穴径4mm、横穴間隔250mm)の下端に、掘進スクリュー部材としてスウェーデン式サウンディング試験用のスクリューポイントを装着したものを使用し、次の表1に記載の5カ所の戸建住宅建築予定地において、それぞれ前記サウンディング試験法に準じ、該中空ロッドを地盤に垂直に4mの深さまで掘進貫入させたのち、表1記載の各経過時間毎に該中空ロッド内に市販の電線式水位計の計測用絶縁ケーブル(外径5mm、2芯線)を挿入し、水位計のリレー音と赤ランプ点灯を伴う指針の振り切りにより、ロッド先端の一対の電極部が該中空ロッド内の地下水の水面に達したことを確認し、その時の絶縁ケーブルの挿入長さから地下水位を測定した。一方、この地下水位の測定点から水平距離で3m離れた位置において、つぼ掘りによって直径約径0.2m,深さ約1mの観測穴を形成し、この観測穴における地下水位をメジャーで直接に測定し、これを基準水位とした。そして、前記の各測定水位について基準水位との差を調べたところ、表1の結果が得られた。







【0040】
【表1】

【0041】
上表の結果から、中空ロッドの貫入後の10分程度で該中空ロッド内の水位が安定し、しかも測定水位と実際の水位(基準水位)との差が極めて僅かであることが判る。従って、本発明の地下水位の測定方法は、簡単な装置構成により、地盤の地下水位を正確に能率よく短時間で測定できるものと言える。なお、この地下水位測定試験では地下4mまでの穿孔を行っているが、スウェーデン式サウンディング試験に合わせて地下10mまで穿孔することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の地下水位の測定方法に用いる中空ロッドを示し、(A)は要部の側面図、(B)は(A)のX−X線の断面矢視図、(C)は連結部の縦断面図、(D)は(A)のY−Y線の断面矢視図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る地下水位の測定方法を示し、(A)は中空ロッドの掘進貫入状態、(B)は1芯線の計測用絶縁ケーブルの挿入状態、(C)は2芯線の計測用絶縁ケーブルの挿入状態、のそれぞれ模式縦断面図である。
【図3】本発明の第二実施形態に係る地下水位の測定方法を工程順に示し、(A)は中実ロッドの掘進貫入状態、(B)は中実ロッドの引き抜き状態、(C)は抜出孔への中空ロッドの貫入状態、(D)は1芯線の計測用絶縁ケーブルの挿入状態、のそれぞれ模式縦断面図である。
【図4】本発明で用いる1芯線の計測用絶縁ケーブルの先端側の構成例を示す斜視図である。
【図5】本発明で用いる2芯線の計測用絶縁ケーブルの先端側の構成例を示す斜視図である。
【図6】本発明及びスウェーデン式サウンディング試験に用いる中実ロッドの掘進貫入状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 中空ロッド
10 中空部
11 横穴
12 掘進スクリュー部材
2 中実ロッド
21 掘進スクリュー部材
3A 1芯線の計測用絶縁ケーブル
3B 2芯線の計測用絶縁ケーブル
31 芯線(ワイヤー)
31a 電極部
32 芯線
32a 電極部
33 芯線
33a 電極部
4A 計測器
4B 計測器
G 地盤
H 抜出孔
L 挿入長さ
W 地下水
WF 水面
WL 地下水位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ方向所定間隔置きに内外を透通する横穴を設けた中空ロッドを地盤の所定深さまで垂直に貫入させたのち、電気抵抗の変化を検出する機能を備える計測器に接続した計測用絶縁ケーブルを該中空ロッド内に挿入し、この絶縁ケーブルの先端側の電極部が中空ロッド内に浸入した地下水の水面に達した際の電極間の電気抵抗の変化を検出し、この検出時の該絶縁ケーブルの挿入長さから地下水位を測定することを特徴とする地下水位の測定方法。
【請求項2】
前記絶縁ケーブルが1芯線からなると共に、前記中空ロッドが導電性材料からなり、該絶縁ケーブルの先端側の電極部と電極を構成する中空ロッドとの間の電気抵抗の変化を検出する請求項1に記載の地下水位の測定方法。
【請求項3】
前記絶縁ケーブルが芯線のワイヤーを絶縁被覆したものからなる請求項2に記載の地下水位の測定方法。
【請求項4】
前記絶縁ケーブルが2芯線であり、該絶縁ケーブルの両導線に対応する先端側の電極部間の電気抵抗の変化を検出する請求項1に記載の地下水位の測定方法。
【請求項5】
下端に掘進スクリュー部材が装着された前記横穴付きの中空ロッドを荷重負荷及び回転によって地盤に垂直に掘進貫入させたのち、この中空ロッド内に前記絶縁ケーブルを挿入して地下水位を測定する請求項1〜4の何れかに記載の地下水位の測定方法。
【請求項6】
下端に掘進スクリュー部材が装着された中実ロッドを荷重負荷及び回転によって地盤に垂直に掘進貫入させ、次いで該中実ロッドを地上へ抜出したのち、その抜出孔に前記横穴付きの中空ロッドを貫入し、この中空ロッド内に前記絶縁ケーブルを挿入して地下水位を測定する請求項1〜4の何れかに記載の地下水位の測定方法。
【請求項7】
前記抜出孔に貫入させる中空ロッドの下端に掘進スクリュー部材が装着されてなる請求項6に記載の地下水位の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−145263(P2010−145263A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323346(P2008−323346)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(596091428)報国エンジニアリング株式会社 (10)
【Fターム(参考)】