説明

地下設備用筐体

【課題】内筒体が振動によってもガタついて横ずれしない地下設備用筐体を提供する。
【解決手段】内周面2aに雌ねじ部3を有する外筒体2と、雌ねじ部3に螺合する雄ねじ部4を外周面5aに有する内筒体5と、外筒体2に対する内筒体5の固定手段6とを備え、該固定手段6は、前記雄ねじ部4の近傍で内筒体5の周壁適所を内外に貫通する開口部13を設けると共に、該開口部13に臨む内筒体5内部にボルト14を空転自在に鉛直配置し、該ボルト14にはこれの回転にて開口部13の上下端縁間を昇降するブロック19を螺着し、該ブロック19の前端には、これの昇降に応じて俯仰して前記雌ねじ部3のねじ山3a間の内周面2aに先端20aが接離自在な支持板20の基端20bを枢着し、ブロック19の上限位置で前傾姿勢の支持板20の先端20aが前記ねじ山3aの付け根を斜め上向きに押止する様に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中の水道管やガス管などに設置された仕切弁や止水栓等の各種地下設備の保護及び保守点検のために地中に埋設される地下設備用筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内周面に雌ねじ部を有する外筒体と、雌ねじ部に螺合する雄ねじ部を外周面に有する内筒体と、外筒体に螺挿された内筒体の固定手段とを備え、外筒体に螺挿された内筒体を回転することで上下高さを調整し、固定手段にてその高さを堅固に保持する様にした地下設備用筐体が開示されている。
【0003】
この地下設備用筐体における固定手段は、上記雄ねじ部の近傍で内筒体の周壁適所を内外に貫通する開口部を設けると共に、該開口部に臨む内筒体内部にボルトを空転自在に鉛直配置し、該ボルトにはこれの回転にて開口部の上下端縁間を昇降する爪片を螺着して成り、内筒体の周壁の円周方向で等間隔置きに複数配置されている。
【0004】
そして、内筒体の固定にあたっては、各爪片を水平方向に回動させて開口部から外筒体側へ突出させ、各ボルトを回して各爪片を上昇させることにより、各爪片と内筒体の雄ネジ部とで外筒体の雌ネジ部を挟み込むようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3515090号公報(図1〜図8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記地下設備用筐体の固定手段は、爪片と雄ネジ部にて外筒体の雌ネジ部を挟み込む構成であるため、外筒体に対する内筒体の直径方向へのガタつきを抑える働きは必ずしも充分ではなく、振動によって内筒体がガタついて横ずれし、それによって内筒体と地面との間に隙間ができるおそれがある。
そこで本発明では、固定手段で外筒体の雌ねじの付け根を斜め上向きに押止することにより、内筒体が振動によってもガタついて横ずれしない地下設備用筐体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に鑑み、本発明の地下設備用筐体は、内周面に雌ねじ部を有する外筒体と、雌ねじ部に螺合する雄ねじ部を外周面に有する内筒体と、外筒体に対する内筒体の固定手段とを備え、該固定手段は、前記雄ねじ部の近傍で内筒体の周壁適所を内外に貫通する開口部を設けると共に、該開口部に臨む内筒体内部にボルトを空転自在に鉛直配置し、該ボルトにはこれの回転にて開口部の上下端縁間を昇降するブロックを螺着し、該ブロックの前端には、これの昇降に応じて俯仰して前記雌ねじ部のねじ山間の内周面に先端が接離自在な支持板の基端を枢着し、ブロックの上限位置で前傾姿勢の支持板の先端が前記ねじ山の付け根を斜め上向きに押止する様に成したことを特徴とする。
又、支持板の基端下部には、ブロックの下限位置で開口部下端縁に接地して支持板の先端を上記ねじ山間の内周面より離間させ、ブロックの上昇に応じて開口部下端縁より離間して支持板の先端を上記ねじ山間の内周面に接触させる様に成した脚部を突設したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
要するに本発明は、外筒体に内筒体を螺挿してなる地下設備用筐体において、内筒体の雄ねじ部近傍で内筒体の周壁適所を内外に貫通する開口部を設けると共に、該開口部に臨む内筒体内部にボルトを空転自在に鉛直配置し、該ボルトにはこれの回転にて開口部の上下端縁間を昇降するブロックを螺着し、該ブロックの前端には、これの昇降に応じて俯仰する支持板の基端を枢着した固定手段を設けたので、ボルトを締め付けていくとブロックが上昇して支持板の前傾度合が増し、その先端が外筒体における雌ねじ部のねじ山間内周面に接触し、かかる前傾姿勢のまま先端が前記内周面を摺接するため、ブロックの上限位置で支持板の先端は確実に雌ねじ部ねじ山の付け根に触突できると共に、支持板の先端は雌ねじ部ねじ山の付け根を斜め上向きに押止できる。
【0009】
これにより、支持板先端は雌ねじ部ねじ山に対する上方押圧力と外筒体に対する水平方向への押圧力を作用させられ、外筒体に対する内筒体の直径方向へのガタつきを抑え、振動によって内筒体がガタついて横ずれするのを防止できると共に、内筒体の外筒体への螺挿によって当然生ずる雌ねじ部ねじ山に対する雄ねじ部ねじ山の下方押圧力も相俟って内筒体を外筒体により一層強固に固定できる。
【0010】
又、本発明によれば、従来手法の様に、内筒体の外筒体への螺挿によって当然生ずる雌ねじ部ねじ山に対する雄ねじ部ねじ山の下方押圧力と、上記爪片による雌ねじ部ねじ山に対する上方押圧力とで単純に挟み込んだだけでは、雄ねじ部ねじ山と爪片は、雌ねじ部ねじ山が連設されるつる巻線の下り傾斜方向に沿って滑りやすく、内筒体の固定が緩みやすい欠点をも解消できる。
【0011】
支持板の基端下部に突設した脚部は、ブロックの下限位置で開口部下端縁に接地して支持板の先端を雌ねじ部ねじ山間の内周面より離間させることにより、内筒体を外筒体に対して支障なく回転させられる。
又、ボルトの回転によるブロックの上昇に応じて開口部下端縁より脚部が離間することにより、支持板の先端を雌ねじ部ねじ山間の内周面に接触させられ、ブロックの上限位置で支持板先端は確実に雌ねじ部ねじ山の付け根に触突させられる。
この様に単純な手法で、支持板の姿勢を制御でき、外筒体に対する内筒体の高さ調整や所望高さ位置での内筒体の外筒体に対する確実堅固な固定が可能であり、固定手段をシンプルに構成できるから、故障が少なく、製造コストをも低減できる等その実用的効果甚だ大である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る地下設備用筐体の縦断面図である。
【図2】地下設備用筐体の蓋体を除いた状態における平面図である。
【図3】内筒体の外周面の展開図である。
【図4】ブロックが下限位置にある時の固定手段を示す一部断面図である。
【図5】ブロックが途中位置にある時の固定手段を示す一部断面図である。
【図6】ブロックが上限位置にある時の固定手段を示す一部断面図である。
【図7】支持板とブロックの正面図である。
【図8】同上平面図である。
【図9】同上側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明の実施の一形態例を図面に基づいて説明する。
本発明に係る地下設備用筐体1は、内周面2aの上方から下方へ渡ってピッチの荒い雌ねじ部3を有する外筒体2と、雌ねじ部3に螺合するピッチの荒い雄ねじ部4を外周面5aの下方に有する内筒体5と、該内筒体5の円周方向で等間隔置きに複数配置された外筒体2に対する内筒体5の固定手段6とを備えている。
尚、固定手段6は、本実施例の様に複数設けることなく、内筒体5の円周上の1箇所にだけ設けても良い。
【0014】
地下設備用筐体1の外筐である外筒体2は、縦長で上下端が開口され、その外周面下方部位に外方へ水平にフランジ部7を突設している。
そして、フランジ部7上の周縁近傍から外筒体2外周面の適宜高さ位置にかけて斜辺を有する三角板状の補強リブ8を、外筒体2の円周方向で等間隔置きに複数(図示例では6箇所に)配置している。
フランジ部7において、補強リブ8間には、外筒体2の固定用のボルト孔9を貫設している。
【0015】
又、外筒体2には、これに螺挿した内筒体5の上限位置を規制するために、その外周面の上端近傍位置から内部へ進退自在に上限規制ボルト10を突入している。
更に、外筒体2の上端開口部には、螺挿した内筒体5との隙間への土砂等の流入防止用の土砂流入防止リング11(図2においては図示せず)を装着している。
【0016】
内筒体5は、縦長で上下端が開口され、その上端開口部は下方に向かって徐々に縮径するテーパ状に形成されており、上端開口部には蓋体12を挿嵌し、この挿嵌状態で蓋体12の上面と上端開口部端面は同一平面上に位置する様に成している。
【0017】
固定手段6は、内筒体5の雄ねじ部4の近傍、即ち雄ねじ部4に相当する位置で内筒体5の周壁適所(図示例では円周方向に120度の間隔で3箇所)を内外に貫通して、雄ねじ部ねじ山4aの約2ピッチ分の長さと、これよりも短い円弧を有する略縦長矩形状の開口部13を設けている(図1〜3参照)。
【0018】
そして、各開口部13に臨む内筒体5内部の夫々には、ボルト14を空転自在に鉛直配置している。
このボルト14は、内筒体5の内周面における各開口部13上下に平行配置した一対の突片15、15a中央に貫設したボルト挿通孔16、16aに遊挿している。
又、上方突片15とボルト14の頭部との間には座金17を介装し、下方突片15aを貫通したボルト14の下端にはボルト挿通孔16aからの抜止め手段(図示例では、スナップピン)18が取付けられている。
【0019】
又、各ボルト14には、これの回転にて開口部13の上下端縁(突片15、15a)間を昇降するブロック19を螺着し、該ブロック19の前端下部には、これの昇降に応じて俯仰して外筒体2における雌ねじ部3のねじ山3a間の内周面2aに先端20aが接離自在な支持板20の基端20bを枢着し、上方突片15底面に上面が当接するブロック19の上限位置で前傾姿勢の支持板20の先端20aが雌ねじ部ねじ山3aの付け根を斜め上向きに押止する様に成している。
【0020】
ブロック19は、図7〜9に示す様に、その基部19aにボルト14を螺挿するねじ孔19bを上下方向に貫通形成し、開口部13に対峙する基部19aの正面中央には、前端下部が前方突出した側面視略L字状の張出し部19cを設け、該張出し部19cの前端下部側方には、平行ピンから成る支軸21の挿通孔19dを貫設している。
【0021】
支持板20は、平面視舌状に形成されると共に、側面視先細り状に形成され、その基端20b中央は張出し部19cに合致する凹部を切欠すると共に、基端20bの両側方には、支軸21の両端を挿通固定する固定孔20cを貫設し、該固定孔20cにブロック19の挿通孔19dを一致させて支軸21を挿通している。
これにより、ブロック19の前端下部に支持板基端20bが枢着され、支持板20は支軸21を以てブロック19に対し俯仰自在と成している。
尚、支持板20の一方の基端20b外側面(図7において右側面)には、固定孔20cと同心のビス挿通孔を設けた扁平円錐台状のビス座を突設し、該ビス座を通して支軸21の一端をビス止めしている。
【0022】
又、支持板20の基端20b下部には、下方突片15a上面に底面が当接するブロック19の下限位置で開口部13下端縁(下方突片15a上面と同一レベル)に接地して支持板先端20aを雌ねじ部ねじ山3a間の内周面2aより離間させ、ブロック19の上昇に応じて開口部13下端縁より離間して支持板先端20aを雌ねじ部ねじ山3a間の内周面2aに接触させる様に成した略山型状の脚部20dを突設している。
【0023】
上記の様に構成された地下設備用筐体1の設置あっては、先ず外筒体2に内筒体5及び土砂流入防止リング11を挿着すると共に、上限規制ボルト10を外筒体2内に突出させる。
又、内筒体5にあっては、固定手段6におけるブロック19底面を下方突片15a上面に当接させると共に、支持板20の脚部20dを下方突片15a上面と同一レベルの開口部13下端縁に接地させ、支持板20をその先端20aが外筒体2における雌ねじ部ねじ山3a間の内周面2aより離間して成る急勾配の前傾姿勢と成し、内筒体5を回転させても、支持板先端20aが外筒体2の雌ねじ部3及び内周面2aに接触しない様に成している(図4参照)。
【0024】
そして、リング地中に敷設された仕切弁、止水栓等の地下設備の周囲を囲繞する埋設立管(図示せず)の上端開口部に、内筒体5を上記の様に挿着した外筒体2の下端開口部を挿入すると共に、フランジ部7を前記埋設立管の管フランジ上に載置し、該管フランジとフランジ部7のボルト穴22にボルトを通してこれをナットで締結して管フランジ上に連結固定する。
【0025】
次に、内筒体5の上端開口部端面が、これらの周辺の地表面と同一平面上に位置する様に、内筒体5を外筒体2に対し回転させて調整する。
この後、内筒体5の上端開口部からT型ボックスレンチを挿入して各ボルト14を締め付ける。
【0026】
ボルト14を締め付けていくと、ブロック19が上昇して支持板20の勾配が緩やかになって前傾度合が増し、支持板先端20aが外筒体2における雌ねじ部ねじ山3a間の内周面2aに接触し(図5参照)、かかる前傾姿勢のまま支持板先端20aが内周面2aを摺接するため、ブロック19が上方突片15の底面に当接した上限位置で支持板先端20aは確実に雌ねじ部ねじ山3aの付け根に触突できると共に、支持板先端20aは雌ねじ部ねじ山3aの付け根を斜め上向きに押止する(図1、図6参照)。
【0027】
これにより、支持板先端20aは雌ねじ部ねじ山3aに対する上方押圧力と外筒体2に対する水平方向への押圧力を作用させられ、外筒体2に対する内筒体5の直径方向へのガタつきを抑え、振動によって内筒体5がガタついて横ずれするのを防止できると共に、雌ねじ部ねじ山3aが連設されるつる巻線の下り傾斜方向(図3における雄ねじ部ねじ山4aの下り傾斜方向に同じ)に沿って滑って内筒体5の固定が緩るむこともなく、又内筒体5の外筒体2への螺挿によって当然生ずる雌ねじ部ねじ山3aに対する雄ねじ部ねじ山4aの下方押圧力も相俟って内筒体5を外筒体2により一層強固に固定できる。
【0028】
次いで、蓋体12を内筒体5の上端開口部に挿嵌した後、外筒体2の周囲を埋め戻すと共に、周囲の地表面をコンクリートやアスファルト等で舗装して地下設備用筐体1の埋設を完了する。
【0029】
又、道路面の改修工事等で蓋体12の位置を嵩上げ又は嵩下げする場合には、各ボルト14を緩めてブロック19をその下限位置まで降下させることにより、上記と逆の手順で支持板20をその先端20aが外筒体2における雌ねじ部ねじ山3a間の内周面2aより離間して成る急勾配の前傾姿勢と成して、内筒体5を外筒体2に対し自由に回転させ、内筒体5の上端開口部が所望高さに達したら再度ボルト14を締め付け、蓋体12上面まで再舗装すればよい。
【符号の説明】
【0030】
2 外筒体
2a 内周面
3 雌ねじ部
3a ねじ山
4 雄ねじ部
5 内筒体
5a 外周面
6 固定手段
13 開口部
14 ボルト
19 ブロック
20 支持板
20a 先端
20b 基端
20d 脚部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に雌ねじ部を有する外筒体と、雌ねじ部に螺合する雄ねじ部を外周面に有する内筒体と、外筒体に対する内筒体の固定手段とを備え、該固定手段は、前記雄ねじ部の近傍で内筒体の周壁適所を内外に貫通する開口部を設けると共に、該開口部に臨む内筒体内部にボルトを空転自在に鉛直配置し、該ボルトにはこれの回転にて開口部の上下端縁間を昇降するブロックを螺着し、該ブロックの前端には、これの昇降に応じて俯仰して前記雌ねじ部のねじ山間の内周面に先端が接離自在な支持板の基端を枢着し、ブロックの上限位置で前傾姿勢の支持板の先端が前記ねじ山の付け根を斜め上向きに押止する様に成したことを特徴とする地下設備用筐体。
【請求項2】
支持板の基端下部には、ブロックの下限位置で開口部下端縁に接地して支持板の先端を上記ねじ山間の内周面より離間させ、ブロックの上昇に応じて開口部下端縁より離間して支持板の先端を上記ねじ山間の内周面に接触させる様に成した脚部を突設したことを特徴とする請求項1記載の地下設備用筐体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−108319(P2013−108319A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256021(P2011−256021)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【特許番号】特許第4982624号(P4982624)
【特許公報発行日】平成24年7月25日(2012.7.25)
【出願人】(500458778)株式会社一中 (1)
【Fターム(参考)】