説明

地下貯水槽の堆砂装置

【課題】 地下貯水槽内に流入する石等を沈殿させ、点検、保守が容易な堆砂装置を提供する。
【解決手段】 貯水空間形成ブロック1を組立てたブロック組立構造体6と、壁7と、天板8と、シート材9を備えた地下貯水槽Iのブロック組立構造体6に、流入口10に対応する個所の貯水空間形成ブロック1を抜いて形成した開口部16を設ける。開口部16の四方の周縁には、流水口を備えた仕切壁17を取り外し可能に設ける。上記仕切壁17の内側に、四隅部に沿って配置した上下方向の支柱部材19と、隣接する支柱部材19同士の間に配置した水平方向の梁部材20からなる荷重伝達用枠体18を設けて堆砂装置15を形成する。流入口10より雨水と共に流入する石等は、仕切壁17の内側で沈殿させる。仕切壁17の点検や保守は、開口部16の内側に入った作業者により、荷重伝達用枠体18の支柱部材19と梁部材20の大きな開口を通して実施させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下貯水槽の流入口付近に設けて、水と共に流れ込む石や砂利、土の塊等を沈殿させるための地下貯水槽の堆砂装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、地下には、貯水槽(雨水貯留浸透施設)を設けて、降雨時に雨水を一時的に貯留できるようにし、この貯留した雨水を徐々に下水に流したり、周囲の地中に徐々に浸透させたりすることにより、洪水の発生を抑制することが行われている。
【0003】
又、上記地下貯水槽に貯留した雨水は、防火用水や、花壇や畑の散水等に利用することも考えられている。
【0004】
上記のような地下貯水槽を構築する場合、近年では、樹脂製の貯水空間形成ブロック(骨格ブロック)として、図3に示すように、平面形状が正方形で且つ所定の厚み寸法を有する水平構造部2と、該水平構造部2の上面より垂直方向に突出する単数又は複数の支柱部3(図3では支柱部3が単数の形式の場合が示してある)とを一体にして備え、且つ上記水平構造部2には、上下方向に水を通過させるための図示しない透口(開口)を設けてなる構成の貯水空間形成ブロック1が多く用いられるようになってきている。
【0005】
この種の貯水空間形成ブロック1を用いて地下貯水槽を構築する場合は、図3に示すように、地面4を掘り下げて平面形状が矩形(正方形を含む)の凹部(貯水部)5を形成する。
【0006】
次いで、上記凹部5の内側にて、上記樹脂製の貯水空間形成用のブロック1を、水平方向に縦横の2方向に配列すると共に上下方向に多段に積層して直方体(立方体を含む)形状に組み立てて、上下に位置する水平構造部2の間の内部に貯水空間を備えたブロック組立構造体(空間保持骨格)6を形成する。
【0007】
この際、上記貯水空間形成ブロック1は、水平方向の縦横2方向に配列して組み立てるときに、隣接する貯水空間形成ブロック1同士で、上記平面形状正方形の水平構造部2の外周端面を互いに突き合せて、この突合せ部分を、図示しない連結手段(固定手段)により連結する。これにより、組み立てられた上記ブロック組立構造体6では、或る高さ位置毎に、水平面内で各貯水空間形成ブロック1の水平構造部2が連続して配置された構造が形成されるようにして、該ブロック組立構造体6に対して外周より作用する水平方向の荷重を、上記各貯水空間形成ブロック1の各水平構造部2に作用する圧縮荷重として受けて支持することができるようにしてある。
【0008】
又、上記貯水空間形成ブロック1は、上下方向に多段に積層して配置するときには、最も下段の貯水空間形成ブロック1を、支柱部3が上向きとなる通常姿勢に配置すると共に、その上側に、上下を反転させた姿勢の別の貯水空間形成ブロック1を配置して、上下方向に対向配置される両者の支柱部3同士を突き合せて、この突合せ部分を、図示しない連結手段(固定手段)により連結するようにしてある。更に、その真上に、上記と同様に通常姿勢と上下反転姿勢で上下に組み合わせて連結した貯水空間形成ブロック1の組を、所定の段数で重ねて配置するようにしてある。これにより、組み立てられた上記ブロック組立構造体6では、上下方向に積層配置されている各貯水空間形成ブロック1の支柱部3が上下に連続して配置された構造が形成されるようにして、該ブロック組立構造体6に対して上方より作用する鉛直方向の荷重を、上記上下方向に連続配置された上記各貯水空間形成ブロック1の支柱部3に作用する圧縮荷重として受けて支持することができるようにしてある。
【0009】
上記のように凹部5内で組み立てたブロック組立構造体6は、その外周に壁(側壁)7を設けると共に上面に天板8を取り付け、更に、周囲を、雨水の貯留や浸透の目的に応じて遮水シートや透水シートや保護シートを適宜選択あるいは組み合わせて用いるシート材9で覆った後、上側から土を埋め戻すことにより、地下貯水槽Iを構築するようにしてある。
【0010】
又、上記地下に埋設された地下貯水槽Iには、雨水等を流入させるための流入口10と、河川等への排水を行う必要がある場合は、そのための流出口11が設けられている。
【0011】
ところで、上記地下貯水槽Iでは、地面等に降った雨水が排水溝を伝って流入してくるような場合には、流入する雨水に石や砂利、土の塊等が混じって流れ込むことがある。
【0012】
上記貯水空間形成ブロック1を組み立てて構築されている上記ブロック組立構造体6では、その内部に形成されている空隙部が、作業者が入って作業するには狭いため、上記石や砂利、土の塊等が、上記地下貯水槽Iの内底部に広がって沈殿してしまうと、該沈殿物を除去することが困難である。よって、該沈殿物の堆積に伴って、地下貯水槽Iの貯水可能な容積が次第に減少してしまうという問題が生じる。
【0013】
そのために、図3、図4に示すような堆砂用の手段が従来提案されている。
【0014】
かかる堆砂用の手段は、地下貯水槽Iの内部における上記流入口10を取り囲む位置に、図示しない流水口(開口)を備えた樹脂製の仕切壁12が、該地下貯水槽Iの内底部から天井付近まで立ち上がるように設けられている。更に、水平構造部2の一角が、たとえば、1/4円状に切り欠かれた構造の切欠付き貯水空間形成ブロック13を、水平面内で中央部に沈殿物回収用の作業孔14が形成されるように4つ組み合わせ、この4つ一組の切欠付き貯水空間形成ブロック13を、上記仕切壁12の内側に、仕切壁12の外側の他の貯水空間形成ブロック1と同様に上下方向に積層して取り付けてなる構成としてある。 かかる堆砂用の手段によれば、上記仕切壁12における図示しない流水口を、半径約10mmの大きさとすることにより、上記仕切壁12の内側を沈殿槽として機能させて、上記流入口10より石や砂利、土の塊等が雨水と共に流入するときに、これらを沈殿させることができて、地下貯水槽Iにおける上記仕切壁12の外側の領域に沈殿物の堆積を防止できるとされている(たとえば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0015】
又、上記仕切壁12の内側で生じる堆積物は、該仕切壁12の内側に設置されている各切欠付き貯水空間形成ブロック13の切欠き部により形成された作業孔14に作業者が入って除去作業を行うことが可能になるようにしてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特許第4163088号公報
【特許文献2】特許第4316601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ところが、特許文献1、2に示された形式の地下貯水槽Iの堆砂用の手段は、作業孔14を形成するために切欠付き貯水空間形成ブロック13が必要とされるが、この切欠付き貯水空間形成ブロック13は、仕切壁の外側で組み立てられる通常の貯水空間形成ブロック1とは形状が異なる特殊ブロックであるため、該貯水空間形成ブロック1とは別に製造しなければならない。よって、上記地下貯水槽Iに堆砂用の手段を装備する場合の経済性に劣るという問題がある。
【0018】
すなわち、上記切欠付き貯水空間形成ブロック13を樹脂による一体成形物として製造する場合は、上記貯水空間形成ブロック1を樹脂成形するための金型とは別の金型が必要になることから、コストが嵩んでしまう。
【0019】
又、上記切欠付き貯水空間形成ブロック13は、通常の貯水空間形成ブロック1と同様の構成における水平構造部2の一部が切り欠かれているものであると共に、上記貯水空間形成ブロック1における支柱部3の配置や数によっては、該支柱部3の一部が切り欠かれたり、複数の支柱部3の一部が省略された構成となっている。そのために、上記切欠付き貯水空間形成ブロック13は、通常の貯水空間形成ブロック1に比して耐力が低くなることから、地下貯水槽Iにおける上記仕切壁12の内側の該切欠付き貯水空間形成ブロック13の設置個所が、構造的に弱くなるという問題も懸念される。
【0020】
更に、上記堆砂用の手段は、仕切壁12の内側に、上記切欠付き貯水空間形成ブロック13が設置された構成であるため、上記作業孔14から仕切壁12までの間には、該切欠付き貯水空間形成ブロック13が存在している。そのために、作業孔14から仕切壁12までの距離が遠く、しかも、上記仕切壁12について上記図示しない流水口の目詰まり等の点検や保守を行う場合は、上記作業孔14に入った作業者が、上記切欠付き貯水空間形成ブロック13によって形成されている狭い空隙部を通して上記点検や保守の作業を行う必要があることから、作業性が悪いという問題もある。
【0021】
更には、上記仕切壁12の取り外しを行うためには、該仕切壁12の内側に配設されているすべての切欠付き貯水空間形成ブロック13も取り外す必要が生じるため、該仕切壁の取り外しが困難である。
【0022】
そこで、本発明は、地下貯水槽の流入口より水と共に流入する石や砂利、土の塊等を、沈殿させて、これらの沈殿物が上記地下貯水槽の内底部全体に広がって生じることを防止でき、更に、点検や保守の作業を行う際の作業性を高めることができる地下貯水槽の堆砂装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、貯水空間形成ブロックを水平方向の縦横2方向に配列すると共に積層して組立てたブロック組立構造体と、壁と、天板と、シート材と、流入口を備えた地下貯水槽における上記ブロック組立構造体の上記流入口に対応する個所に、上記貯水空間形成ブロックの形状に対応する形状の開口部を設け、更に、上記開口部の四方の周縁に取り外し可能に設けた仕切壁と、該仕切壁に設けた壁厚方向に貫通する流水口とを備えてなる構成とする。
【0024】
又、上記構成において、開口部の四方の周縁に設けた仕切壁の内側に、該仕切壁の内側の四隅部に沿って配置した上下方向に延びる支柱部材と該隣接する支柱部材同士の間を連結する水平方向の梁部材とからなる荷重伝達用枠体を設けた構成とする。
【0025】
更に、上記各構成において、仕切壁を、壁ユニットの組立構造とし、且つ該壁ユニットを、水平構造部と該水平構造部の上面に上方に突出させて設けた支柱部からなる貯水空間形成ブロックを支柱部が上方へ突出する通常姿勢と上下反転させた姿勢で上下に積層した2個一組の貯水空間形成ブロックの側面の外形に対応する形状を備える構成とする。
【0026】
更に又、上記各構成において、仕切壁の内側にフィルタを取り外し可能に設けるようにした構成とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明の地下貯水槽の堆砂装置によれば、以下のような優れた効果を発揮する。
(1)貯水空間形成ブロックを水平方向の縦横2方向に配列すると共に積層して組立てたブロック組立構造体と、壁と、天板と、シート材と、流入口を備えた地下貯水槽における上記ブロック組立構造体の上記流入口に対応する個所に、上記貯水空間形成ブロックの形状に対応する形状の開口部を設け、更に、上記開口部の四方の周縁に取り外し可能に設けた仕切壁と、該仕切壁に設けた壁厚方向に貫通する流水口とを備えてなる構成としてあるので、地下貯水槽の流入口より水と共に流入する石や砂利、土の塊等は、仕切壁により囲まれた開口部の内底部に沈殿させることができる。この開口部の内底部に堆積する沈殿物は、開口部の仕切壁の内側へ作業者が入って除去することができるため、これらの沈殿物が地下貯水槽の内底部全体に広がって生じることを防止することができる。
(2)更に、開口部の周縁に設けられた仕切壁の内側に入った作業者は、該仕切壁に触ることが可能になる。よって、上記仕切壁に対し、流水口の目詰まり等の点検や保守を行う場合の作業性を高めることができる。又、上記仕切壁を容易に取り外すことが可能になる。
(3)通常の貯水空間形成ブロックとは別の形状の特殊な貯水空間形成ブロックの必要がないため、この特殊な貯水空間形成ブロックを製造するための金型を用意する必要はない。よって、本発明の地下貯水槽の堆砂装置を装備するために要するコストを抑制することができる。
(4)開口部の四方の周縁に設けた仕切壁の内側に、該仕切壁の内側の四隅部に沿って配置した上下方向に延びる支柱部材と該隣接する支柱部材同士の間を連結する水平方向の梁部材とからなる荷重伝達用枠体を設けた構成とすることにより、地下貯水槽は、ブロック組立構造体における開口部を設けた部分の縦剛性や水平方向剛性を、上記荷重伝達用枠体により担保することができることから、該開口部を設けた部分の強度が低下する虞を防止できる。
(5)上記仕切壁の内側には、支柱部材と梁部材とからなる枠構造の荷重伝達用枠体が配置されているのみであるため、該荷重伝達用枠体の内側から、上記仕切壁までの距離を近いものとすることができる。更に、上記荷重伝達用枠体の内側からは、支柱部材と梁部材の間に形成されている大きな開口を通して仕切壁に触ることが可能になる。よって、上記仕切壁に対し、流水口の目詰まり等の点検や保守を行う場合の作業性を高いものとすることができる。
(6)上記荷重伝達用枠体は、棒状の支柱部材と梁部材の連結により容易に製造することができる。更に、上記荷重伝達用枠体の支柱部材と梁部材の連結個所を取り外し可能とすると、上記開口部の内側から、該開口部の周縁に配置されている仕切壁を容易に取り外すことが可能になる。
(7)仕切壁を、壁ユニットの組立構造とし、且つ該壁ユニットを、水平構造部と該水平構造部の上面に上方に突出させて設けた支柱部からなる貯水空間形成ブロックを支柱部が上方へ突出する通常姿勢と上下反転させた姿勢で上下に積層した2個一組の貯水空間形成ブロックの側面の外形に対応する形状を備える構成とすることにより、地下貯水槽におけるブロック組立構造体を構成する貯水空間形成ブロックの積層段数や、該ブロック組立構造体に設ける開口部のサイズが異なる場合にも、該開口部の周縁に設けるための適切なサイズの仕切壁を、上記壁ユニットを用いて組み立てて容易に製作することができる。
(8)仕切壁の内側にフィルタを取り外し可能に設けるようにした構成とすることにより、より粒径の小さい沈殿物が、上記地下貯水槽の内底部全体に広がって堆積することを防止することができる。更に、上記フィルタのろ過性能を適宜選択することにより、上記地下貯水槽に貯留される水は、濁りがより抑制されたものとすることが可能になる。よって、該地下貯水槽に貯留される水を利用する際の利便性を高めることができる。しかも、上記フィルタは、開口部の仕切壁の内側に入った作業者によりメンテナンスを容易に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の地下貯水槽の堆砂装置の実施の一形態を示すもので、(a)は概略平面図、(b)は(a)のA−A方向矢視図である。
【図2】本発明の実施の他の形態を示す概略切断側面図である。
【図3】樹脂製の貯水空間形成ユニットを用いて構築する地下貯水槽の概要を示す切断側面図である。
【図4】地下貯水槽に装備される堆砂用の手段の一例の概要を示す切断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0030】
図1(a)(b)は本発明の地下貯水槽の堆砂装置の実施の一形態を示すもので、以下のようにしてある。
【0031】
すなわち、本発明の地下貯水槽の堆砂装置(以下、単に堆砂装置と云う)は、図1(a)(b)に符号15で示すように、図3に示したものと同様に、貯水空間形成ブロック1を水平方向の縦横2方向に配列すると共に、上下方向に多段に積層して組み立ててなるブロック組立構造体6を備えた地下貯水槽Iにおいて、流入口10より水が流入する上記ブロック組立構造体6の所定個所に、上下方向に連続して上記貯水空間形成ブロック1が存在しない開口部16を設ける。
【0032】
上記開口部16は、上記ブロック組立構造体6を形成すべく上記貯水空間形成ブロック1を上下方向に積層される各段に対応する高さ位置の水平面内で縦横2方向に配列して組み立てるときに、たとえば、図1(a)(b)に示すように、縦横2方向に2つずつ、計4つの貯水空間形成ブロック1を抜いた状態で組み立てを行うことによって形成されている。したがって、上記開口部16は、その平面形状が上記貯水空間形成ブロック1の4つ分の形状に対応する正方形となっている。
【0033】
上記開口部16の内周縁には、該開口部16の平面形状の各辺に対応する四方に、ブロック組立構造体6の下端から上端までの全面に亘る仕切壁17がそれぞれ取り外し可能に設けられている。該各仕切壁17は、その外側面が、上記開口部16の外側で上下方向に積層配置されている各段の貯水空間形成ブロック1の水平構造部2にそれぞれ接するように配置されている。
【0034】
更に、上記仕切壁17は、内側面から外側面へ壁厚方向に貫通する図示しない流水口(開口)を備えている。該仕切壁17の流水口は、たとえば、図3、図4に示した仕切壁12の図示しない流水口と同様に、半径約10mmの大きさに設定するようにすればよい。
【0035】
上記仕切壁17は、地下貯水槽Iに作用する水平土圧により上記ブロック組立構造体6を構成している各貯水空間形成ブロック1の水平構造部2に作用する荷重と同等の荷重が壁厚方向に作用しても、該仕切壁17に壁厚方向の変形が生じないような剛性を備えているものとする。
【0036】
なお、上記仕切壁17は、上記開口部16の周縁の四方にブロック組立構造体6の下端から上端までの全面に亘って設けることができるようにしてあれば、たとえば、複数の壁ユニット17aを組み立てて構築する組立構造としてもよい。この場合、上記壁ユニット17aは、図1(a)(b)に示すように、通常姿勢、すなわち、水平構造物2の上面より支柱部3が上方に突出する姿勢の貯水空間形成ブロック1と、その上側に上下反転させた姿勢、すなわち、水平構造部2の下面より支柱部3が下方に突出する姿勢の貯水空間形成ブロック1とを積層して連結した2個一組の貯水空間形成ブロック1の側面の外形に対応する形状を備えた構成とすることが好ましい。かかる形式の壁ユニット17aは、地下貯水槽Iにおけるブロック組立構造体6を構成する貯水空間形成ブロック1の積層段数や、上記開口部16のサイズが異なる場合にも、鉛直方向と水平方向に配列する該壁ユニット17aの数を適宜設定することで、適切なサイズの仕切壁17を容易に組み立てて製作することができる。
【0037】
上記仕切壁17、又は、壁ユニット17aは、樹脂製の成形物とすることが望ましい。
【0038】
更に、上記開口部16の周縁に配置された上記仕切壁17の内側には、荷重伝達用枠体18が配置されている。
【0039】
上記荷重伝達用枠体18は、上記開口部16の周縁にて周方向に隣接する仕切壁17同士の間に形成されている各コーナ部(四隅部)に沿って地下貯水槽Iの上下方向寸法の全長に亘って延びる支柱部材19と、該支柱部材19同士の間に水平方向に配置して、長手方向両端部をそれぞれ対応する支柱部材19に連結した梁部材20とからなる構成としてある。
【0040】
上記荷重伝達用枠体18の各支柱部材19は、上記開口部16の内側に配置されているすべての支柱部材19の縦剛性の和、すなわち、図1(a)(b)では4つの支柱部材19の縦剛性の和により、上記地下貯水槽Iにて上記ブロック組立構造体6における上記開口部16が形成されている個所に、該開口部16の外側(仕切壁17の外側)にて貯水空間形成ブロック1が上下に積層配置されている領域の縦剛性と同様の縦剛性を担保できるようにしてあるものとする。
【0041】
なお、上記各支柱部材19は、図1(b)に示すように、通常姿勢の貯水空間形成ブロック1と上下反転させた姿勢の貯水空間形成ブロック1を積層して連結した上下2個一組の貯水空間形成ブロック1の高さ寸法に応じた上下方向寸法の支柱部材ユニット19aからなる組立構造とすることが望ましい。
【0042】
かかる構成としてある支柱部材19では、地下貯水槽Iのブロック組立構造体6における通常姿勢と上下反転させた姿勢の上下2個一組の貯水空間形成ブロック1の積層段数に応じた数で、支柱部材ユニット19aを上下方向に連結することで、上記上下2個一組の貯水空間形成ブロック1の積層段数の異なるブロック組立構造体6を備える地下貯水槽Iに対し、適切な上下方向寸法の支柱部材19を容易に組み立てて製作することができる。
【0043】
上記荷重伝達用枠体18の各梁部材20は、該各梁部材20同士が上記各支柱部材19を介して連結されることで形成された平面形状方形の枠構造により、上記地下貯水槽Iにて上記ブロック組立構造体6における上記開口部16が形成されていることで貯水空間形成ブロック1の水平構造部2が存在しなくなっている領域に、該開口部16の外側(仕切壁17の外側)の領域にて貯水空間形成ブロック1の水平構造部2が水平方向の縦横2方向に並べて配列されていることに起因して得られる水平方向剛性と同様の水平方向剛性を担保できるようにしてあるものとする。
【0044】
なお、上記各梁部材20は、上記開口部16の外側で上下に積層されている貯水空間形成ブロック1の水平構造部2が配置される高さ位置、又は、その近傍となる高さ位置に配置することが好ましい。このような構成によれば、上記各梁部材20を介することにより、上記開口部16の周囲に配置されている貯水空間形成ブロック1の水平構造部2同士の間で、水平方向の荷重が効率よく伝達されるようになる。
【0045】
又、上記各梁部材20は、その長手方向両端部を、上記各支柱部材19の対応する個所に取り外し可能な連結手段で連結することが好ましい。このような構成によれば、上記開口部16の四方の周縁に配置した仕切壁17の内側で、上記荷重伝達用枠体18の組み立てと分解が可能になるため、運用中の地下貯水槽Iのメンテナンスのために上記仕切壁17を取り外す作業を行う必要が生じた場合に、その取り外し作業を容易に実施することが可能になる。
【0046】
なお、上記荷重伝達用枠体18の各部材19,20は、メッキにより耐食性を備えた棒状の鋼材や、耐食性を有する素材製の棒状の鋼材で製造するようにすればよい。
【0047】
21は上記開口部16の直上に設けるマンホールである。なお、図3及び図4では、図示する便宜上、本来、互いに接触している仕切壁17とその内側の荷重伝達用枠体18との間に隙間が記載してある。又、図3及び図4では、地下貯水槽Iにおけるシート材9の記載も省略してある。(後述する図2も同様)
その他、図3及び図4に示したものと同一のものには同一符号が付してある。
【0048】
以上の構成としてある本発明の堆砂装置15によれば、地下貯水槽Iの流入口10より水と共に石や砂利、土の塊等が流入すると、これらの石や砂利、土の塊等が仕切壁17の図示しない流水口を通過することを制限できるため、上記石や砂利、土の塊等を、上記仕切壁17により囲まれた開口部16の内底部に沈殿させることができる。
【0049】
この沈殿により開口部16の内底部に堆積する沈殿物は、定期点検時等に、上記地下貯水槽I内の水を適宜抜いた状態で、上記マンホール21より開口部16の仕切壁17の内側へ作業者が入って除去することができる。よって、これらの沈殿物が上記地下貯水槽Iの内底部全体に広がって生じることを防止することができる。
【0050】
更に、上記開口部16の周縁に設けられた仕切壁17の内側には、支柱部材19と梁部材20とからなる枠構造の荷重伝達用枠体18が配置されているのみであるため、該荷重伝達用枠体18の内側から、上記仕切壁17までの距離を近いものとすることができる。
【0051】
しかも、作業者は、上記荷重伝達用枠体18の内側から、該荷重伝達用枠体18の各構成部材19,20同士の間に形成されている大きな開口を通して上記仕切壁17に触ることが可能になる。
【0052】
よって、本発明の堆砂装置15は、上記仕切壁17の図示しない流水口の目詰まり等の点検や保守を行う場合の作業性を高めることができる。
【0053】
又、本発明の堆砂装置15は、上記荷重伝達用枠体18を各構成部材19,20同士の連結個所を、取り外し可能とすることで、上記開口部16の周縁に配置した仕切壁17を容易に取り外すことが可能になる。
【0054】
上記地下貯水槽Iでは、開口部16を設けた部分の縦剛性や水平方向剛性が、上記荷重伝達用枠体18により担保されていることから、該開口部16を設けた部分の強度が低下する虞はない。
【0055】
上記荷重伝達用枠体18は、鋼材製の各部材19,20の連結により容易に製造することができる。
【0056】
又、通常の貯水空間形成ブロック1とは別の形状の特殊な貯水空間形成ブロックは必要ないため、この特殊な貯水空間形成ブロックを製造するための金型を用意する必要はない。よって、本発明の堆砂装置15は、地下貯水槽Iに装備する際のコストを抑制することができる。
【0057】
次に、図2は本発明の実施の他の形態を示すもので、図1(a)(b)に示したと同様の構成において、開口部16の周縁に設けてある仕切壁17の内側に、フィルタ22を、取り外し可能に取り付けた構成としたものである。
【0058】
上記フィルタ22は、仕切壁17の内側にて、前述した荷重伝達用枠体18の各支柱部材19同士と各梁部材20同士の間に形成されている開口に露出されている個所にのみ取り付けるようにすればよい。なお、上記フィルタ22は、仕切壁17の内側の全面に取り付けるようにしてもよい。この場合は、仕切壁17に接触するように配置されている上記荷重伝達用枠体18を、一時的に取り外すようにすればよい。
【0059】
又、本実施の形態では、上記フィルタ22が、流入口10より水と一緒に地下貯水槽Iへ流入する石や砂利、土の塊等のろ過機能を発揮することから、上記仕切壁17に設ける図示しない流水口は、上記フィルタ22を健全に支持できる範囲内で、開口面積を拡大してもよい。
【0060】
更に、図示してないが、上記フィルタ22は、上記仕切壁17の内側に取り付ける構成に代えて、上記荷重伝達用枠体18における支柱部材19と梁部材20の間に形成されている開口を覆うように配置したフィルタ22を、該荷重伝達用枠体18に取り外し可能に取り付けた構成としてもよい。この場合、上記フィルタ22は、たとえば、上下の端縁部を、上下に隣接配置されている梁部材20にそれぞれ保持させるようにすればよい。又、上記フィルタ22は、左右の端縁部を隣接する支柱部材19にそれぞれ保持させるようにしたり、四方の端縁部を対応する支柱部材19と梁部材20にそれぞれ保持させるようにしてもよい。
【0061】
なお、上記フィルタ22は、空中、気水界面、水中で必要期間腐食せず、水中に混入した固体のろ過機能を発揮できるものであれば、所望されるろ過性能に応じて、定形あるいは不定形の孔の開いた金属板、金属製や樹脂製の網、多孔質材、不織布等、様々なフィルタ22を採用してよい。
【0062】
その他の構成は図1(a)(b)に示したものと同様であり、同一のものには同一の符号が付してある。
【0063】
本実施の形態の堆砂装置15によれば、上記仕切壁17の図示しない流水口を通過する水を上記フィルタ22によりろ過することで、より粒径の小さい沈殿物が、上記地下貯水槽Iの内底部全体に広がって堆積することを防止することができる。
【0064】
更に、上記フィルタ22は、ろ過性能を適宜選択することにより、上記地下貯水槽Iに貯留される水の濁りをより抑制することが可能になる。よって、該地下貯水槽Iに貯留される水を利用する際の利便性を高めることができる。
【0065】
しかも、上記フィルタ22は、目詰まりした場合であっても、マンホール(図1(a)参照)から開口部16の仕切壁の内側に入った作業者が、該フィルタ22の点検や交換等のメンテナンスを容易に実施することができる。
【0066】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、地下貯水槽Iに設ける開口部16は、作業者が内側で作業するために該開口部16に求められる開口面積と、上記貯水空間形成ブロック1の水平構造部2の面積に応じて、ブロック組立構造体6に上記開口部16を形成するために水平方向の縦横2方向の配列から抜く貯水空間形成ブロック数を適宜変更してもよい。又、上記開口部16は、平面形状を長方形としてもよい。
【0067】
上記荷重伝達用枠体18は、所望される縦剛性が大きい場合は、開口部16の周縁の仕切壁17の内側における四隅部に配置された支柱部材19に加えて、該各支柱部材19の間となる個所にも支柱部材を設けた構成としてもよい。
【0068】
地下貯水槽Iのサイズや平面形状は、図示した以外の任意のサイズや平面形状であってよい。よって、上記地下貯水槽Iのブロック組立構造体6を組み立てるための貯水空間形成ブロック1の水平方向の縦横2方向の配列数、及び、上下の積層数は、自在に変更してもよい。更に、地下貯水槽Iにおける流入口10の配置に応じて、上記ブロック組立構造体6における開口部16を設ける個所は適宜変更してよい。
【0069】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0070】
I 地下貯水槽
1 貯水空間形成ブロック
2 水平構造部
3 支柱部
6 ブロック組立構造体
7 壁
8 天板
9 シート材
10 流入口
16 開口部
17 仕切壁
17a 壁ユニット
18 荷重伝達用枠体
19 支柱部材
20 梁部材
22 フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯水空間形成ブロックを水平方向の縦横2方向に配列すると共に積層して組立てたブロック組立構造体と、壁と、天板と、シート材と、流入口を備えた地下貯水槽における上記ブロック組立構造体の上記流入口に対応する個所に、上記貯水空間形成ブロックの形状に対応する形状の開口部を設け、
更に、上記開口部の四方の周縁に取り外し可能に設けた仕切壁と、
該仕切壁に設けた壁厚方向に貫通する流水口と、
を備えてなる構成を有することを特徴とする地下貯水槽の堆砂装置。
【請求項2】
開口部の四方の周縁に設けた仕切壁の内側に、該仕切壁の内側の四隅部に沿って配置した上下方向に延びる支柱部材と該隣接する支柱部材同士の間を連結する水平方向の梁部材とからなる荷重伝達用枠体を設けた請求項1記載の地下貯水槽の堆砂装置。
【請求項3】
仕切壁を、壁ユニットの組立構造とし、
且つ該壁ユニットを、水平構造部と該水平構造部の上面に上方に突出させて設けた支柱部からなる貯水空間形成ブロックを支柱部が上方へ突出する通常姿勢と上下反転させた姿勢で上下に積層した2個一組の貯水空間形成ブロックの側面の外形に対応する形状を備える構成とした請求項1又は2記載の地下貯水槽の堆砂装置。
【請求項4】
仕切壁の内側にフィルタを取り外し可能に設けるようにした請求項1、2又は3記載の地下貯水槽の堆砂装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−104166(P2013−104166A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246313(P2011−246313)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(509338994)株式会社IHIインフラシステム (104)
【Fターム(参考)】