説明

地下道の構築方法

【課題】タイロッド部材に所定の張力を確実に負荷して、地下道外郭構造体との摩擦力によってフリクションカット部材が地下道外郭構造体の推進方向に共移動するのを防止する。
【解決手段】地下道外郭構造体56は、元押しジャッキ58と反力壁62との間にスペーサ部材63,64を推進方向Xに重ねて配置しつつ推進されると共に、フリクションカット部材51は、反力壁62に一端部を支持固定され、張力調整装置10を介して他端部がフリクションカット部材51に連結固定されるタイロッド部材61の張力によって、地下道外郭構造体56の推進に伴う共移動が阻止される。タイロッド部材61を一旦外してスペーサ部材63,64を追加設置した後に、タイロッド部材61を張設し直して地下道外郭構造体56の推進作業を再開する際に、張力調整装置10によってタイロッド部材61に所定の張力を負荷させた後に、地下道外郭構造体56を推進させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下道の構築方法及び張力調整装置に関し、特に、地中に形成したパイプルーフを、フリクションカット部材を地中に残置したまま地下道外郭構造体と置換することにより地下道を形成する地下道の構築方法、及び該地下道の構築方法において使用する張力調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、既存の鉄道線路や道路の下方地盤にこれらを横断する状態で地下道を構築する方法として、例えば地下道の構築予定箇所である計画地下道部の上方地盤に、既設の鉄道線路や道路を下方から支えて防護するめたのパイプルーフを、例えば円形の鋼管パイプを複数横方向に並べて設置することにより形成し、パイプルーフに支保工を施しながらこれの下方地盤を掘削して地下道を構築するための作業空間を確保した後に、形枠を設置したりコンクリートを打設して地下道を構築する工法が一般的に採用されてきたが、このような工法は、パイプルーフの下方に、地下道の断面より相当程度大きな断面の作業空間を形成する必要があることから、効率の良い施工方法ではなく、また上方の既存の鉄道線路や道路等に影響を及ぼしやすい。
【0003】
このようなことから、パイプルーフの下方に作業空間を設けて地下道を構築する従来の工法に替わる工法として、地中に形成したパイプルーフを、フリクションカット部材を地中に残置したまま例えばプレキャスト製の地下道外郭構造体と置換することにより地下道を形成する地下道の構築方法が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載の地下道の構築方法では、例えば図5(a)〜(j)に示すように、矩形断面の計画地下道部50の上面に沿って配置される面にフリクションカット部材51を固定した箱形パイプ部材を含む複数本の箱形パイプ部材52を、例えば発進立坑53から到達立坑54に向けて、計画地下道部50の少なくとも上床位置50aに並列状態で圧入して(図5(a),(b)参照)、計画地下道部50を貫通するパイプルーフ55を地中に形成する(図5(c),(d)参照)。しかる後に、このパイプルーフ55の端面に、例えばプレキャストコンクリート製の矩形断面を有する地下道外郭構造体56の端面を、例えば中押しジャッキ57を介在させつつ当接させ、さらに地下道外郭構造体56の後端部に当該地下道外郭構造体56を推進させる元押しジャッキ58を設置する(図5(e),(f)参照)。そして、地下道外郭構造体56の先端の切羽面の土砂を刃口部材59等を用いて掘削排除しながら地下道外郭構造体56を推進させて、箱形パイプ部材52との固定を解除したフリクションカット部材51を地中に残置したまま、パイプルーフ55を押し出して地下道外郭構造体56と置換することにより(図5(g),(h)参照)、計画地下道部50に地下道外郭構造体56による地下道60を形成する。
【0005】
また、地下道外郭構造体56の先端の切羽面の土砂を刃口部材59等を用いて掘削排除しながら地下道外郭構造体56を推進させてパイプルーフ55と置換する工程においては(図5(g),(h)参照)、フリクションカット部材51と地下道外郭構造体56との摩擦力によって、フリクションカット部材51が地下道外郭構造体56と共に推進方向に共移動する恐れがあるので、フリクションカット部材51をタイロッド部材61を介して発進立坑53の反力壁62に連結し(図5(g)参照)、このタイロッド部材61の張力によって、フリクションカット部材51の共移動を阻止する技術も開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平1−29597号公報
【特許文献2】特開平7−208067号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、上述の地下道外郭構造体56をパイプルーフ55と置換しつつ推進させてゆく工程では(図5(g),(h)参照)、地下道外郭構造体56は、元押しジャッキ58と発進立坑53の反力壁62との間に、元押しジャッキ58のストローク(例えば1m)分毎に、スペーサ63やストラッド64等のスペーサ部材を、順次重ねて追加配置しつつ元押しジャッキ58によって推進されることになる。またこのような工程では、スペーサ63やストラッド64等のスペーサ部材を発進立坑53の上方から挿入して追加配置する際に、発進立坑53の上部を横断して張設されたタイロッド部材61が邪魔になることから、タイロッド部材61を、例えば6m程度の長さの単位タイロッド部材のカプラー等を介した繋ぎ合わせ部分で一旦外して、スペーサ部材63,64を追加配置し、しかる後にタイロッド部材61を張設し直して地下道外郭構造体56の推進作業を再開する方法が採用されている。
【0007】
しかしながら、上述の地下道の構築方法では、タイロッド部材61を張設し直す作業が容易ではなく、またタイロッド部材61が張設されるフリクションカット部材51と反力壁62との間には相当の距離があるため、タイロッド部材61の重量によって当該タイロッド部材61がたわみ易くなる。このような撓みを解消するために、例えばタイロッド部材61の反力壁62への固定部におけるボルトを緊張したり、タイロッド部材61を繋ぐカプラーを締め付けたり、タイロッド部材61を下から支えるといった対策がとられていたが、十分な張力をタイロッド部材61に負荷することが困難だった。
【0008】
また、タイロッド部材61に撓みが生じていたり、タイロッド部材61に負荷される張力が不足していると、元押しジャッキ58によって地下道外郭構造体56を推進させてゆく際に、フリクションカット部材51と地下道外郭構造体56との摩擦力によって、フリクションカット部材51が推進方向に共移動するおそれを生じることになり、またフリクションカット部材51の上方の地盤に影響を与えやすくなる。
【0009】
本発明は、このような従来の課題に着目してなされたものであり、タイロッド部材を張設し直す際に、タイロッド部材に所定の張力を容易且つ確実に負荷して、フリクションカット部材と地下道外郭構造体との摩擦力によってフリクションカット部材が地下道外郭構造体の推進方向に共移動するのを効果的に防止することのできる地下道の構築方法及び該地下道の構築方法において使用する張力調整装置をを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、矩形断面の計画地下道部の上面に沿って配置される面にフリクションカット部材を固定した箱形パイプ部材を含む複数本の箱形パイプ部材を、前記計画地下道部の少なくとも上床位置の地中に並列状態で圧入して、前記計画地下道部を貫通するパイプルーフを地中に形成した後に、該パイプルーフの端面に矩形断面の地下道外郭構造体の端面を当接させ、前記地下道外郭構造体の先端の切羽面の土砂を掘削排除しながら前記地下道外郭構造体を発進立坑から元押しジャッキにより推進させて、前記箱形パイプ部材との固定を解除した前記フリクションカット部材を地中に残置したまま、前記パイプルーフを押し出して前記地下道外郭構造体と置換することにより、前記計画地下道部に前記地下道外郭構造体による地下道を形成する地下道の構築方法において、前記地下道外郭構造体は、前記元押しジャッキと前記発進立坑の反力壁との間にスペーサ部材を推進方向に順次重ねて追加配置しつつ推進されると共に、前記フリクションカット部材は、前記発進立坑の反力壁に一端部を支持固定され、張力調整装置を介在させた状態で他端部が前記フリクションカット部材に連結固定されるタイロッド部材の張力によって、前記地下道外郭構造体の推進に伴って共移動するのを阻止されるようになっており、且つ前記タイロッド部材を一旦外して前記スペーサ部材を追加設置した後に、前記タイロッド部材を張設し直して前記地下道外郭構造体の推進作業を再開する際に、前記張力調整装置によって前記タイロッド部材に所定の張力を負荷させた後に、前記地下道外郭構造体の推進作業を行う工程を含むことを特徴とする地下道の構築方法を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0011】
そして、本発明の地下道の構築方法では、前記張力調整装置によって前記タイロッド部材に負荷される所定の張力は、少なくとも、前記フリクションカット部材の重量を含めた前記フリクションカット部材に作用する上載荷重に、前記地下道外郭構造体と前記フリクションカット部材との摩擦係数を乗じた値を、前記タイロッド部材の本数で除した値の張力であることが好ましい。
【0012】
また、本発明は、上記地下道の構築方法において使用する、前記タイロッド部材の他端部の前記フリクションカット部材への連結部分に設けられる張力調整装置であって、前記フリクションカット部材に一端部が連結固定され、他端部に第1ジャッキ支圧部を有する第1接続冶具と、前記第1接続冶具の一端部と前記第1ジャッキ支圧部との間に配置される第2ジャッキ支圧部、及び前記第1ジャッキ支圧部を挟んで前記第2ジャッキ支圧部とは反対側に配置されるタイロッド締着部を、前記第1ジャッキ支圧部を遊嵌状態で貫通するロッド部材で連結してなる第2接続冶具と、前記第1接続冶具の第1ジャッキ支圧部及び前記第2接続冶具の第2ジャッキ支圧部に両端を接合してこれらの間に設けられる油圧ジャッキとからなり、該油圧ジャッキを伸張することにより、前記タイロッド締着部を前記フリクションカット部材側に引き寄せて前記タイロッド部材に所定の張力を負荷することを特徴とする張力調整装置を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0013】
そして、本発明の張力調整装置では、前記第2接続冶具の第2ジャッキ支圧部とタイロッド締着部とを連結するロッド部材が、雄ネジ部を備えるボルト部材によって構成されると共に、該ボルト部材の前記第1ジャッキ支圧部と前記第2ジャッキ支圧部との間の部分にナット部材が螺着されており、前記油圧ジャッキを伸張して前記タイロッド部材に所定の張力が負荷されたら、前記ナット部材を前記第1ジャッキ支圧部に締着することにより、前記タイロッド部材に所定の張力が負荷された状態を保持することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の地下道の構築方法又は張力調整装置よれば、タイロッド部材を張設し直す際に、タイロッド部材に所定の張力を容易且つ確実に負荷して、フリクションカット部材と地下道外郭構造体との摩擦力によってフリクションカット部材が地下道外郭構造体の推進方向に共移動するのを効果的に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の好ましい一実施形態に係る地下道の構築方法は、地中に形成したパイプルーフ55を、フリクションカット部材51を地中に残置したまま例えばプレキャストコンクリート製の地下道外郭構造体56と置換することにより地下道60を形成する地下道の構築方法において(図5(a)〜(j)参照)、地下道外郭構造体56の先端の切羽面の土砂を刃口部材59等を用いて掘削排除しながら地下道外郭構造体56を推進させ、箱形パイプ部材52との固定を解除したフリクションカット部材51を地中に残置したままパイプルーフ55を押し出して地下道外郭構造体56と置換する際に(図5(g),(h)参照)、フリクションカット部材51と地下道外郭構造体56との摩擦力によってフリクションカット部材51が地下道外郭構造体56の推進方向に共移動するのを効果的に防止できるようにするために採用されたものである。
【0016】
ここで、図1は、図5(g)の地下道外郭構造体56を推進させて地中に予め形成したパイプルーフ55を押し出すことにより地下道外郭構造体56と置換する工程おいて、地下道外郭構造体56の後端部分56aを除いて、計画地下道部50の地中に、地下道外郭構造体56の大半の部分を推進させた状態を示すものである。また図1に示す本実施形態では、発進立坑53において、反力壁62から推進反力を得つつ元押しジャッキ58を1ストローク分(例えば1m)伸張して地下道外郭3構造体56を前進させると共に、各ストローク毎に元押しジャッキ58を収縮して、後方の反力壁62との間にスペーサー63やストラット64等のスペーサ部材を推進方向Xに順次重ねて追加配置することにより、元押しジャッキ58を推進方向Xに移動させながら地下道外郭構造体56を推進するようになっている。さらに、図1に示す本実施形態では、パイプルーフ55を構成する箱形パイプ部材52(図5(g),(h)参照)との固定を解除されて地中に残置されたフリクションカット部材51は、その発進立坑53側の端部が、例えばH形鋼からなる鋼製端材65に一体として溶接等によって接合されており、この鋼製端材65に、一端部が発進立坑53の反力壁62に支持固定されるタイロッド部材61の他端部が張力調整装置10を介して連結固定されることによって、フリクションカット部材51は、タイロッド部材61により引っ張られて、地下道外郭構造体56との推進方向Xへの共移動が阻止されるようになっている。
【0017】
すなわち、本実施形態の地下道の構築方法は、矩形断面の計画地下道部50の上面に沿って配置される面にフリクションカット部材51を固定した箱形パイプ部材を含む複数本の箱形パイプ部材52を、計画地下道部50の少なくとも上床位置50aの地中に並列状態で圧入して、計画地下道部50を貫通するパイプルーフ55を地中に形成した後に、このパイプルーフ55の端面に矩形断面の地下道外郭構造体56の端面を当接させ、地下道外郭構造体56の先端の切羽面の土砂を掘削排除しながら地下道外郭構造体56を発進立坑53から元押しジャッキ58により推進させて、箱形パイプ部材52との固定を解除したフリクションカット部材51を地中に残置したまま、パイプルーフ55を押し出して地下道外郭構造体56と置換することにより、計画地下道部50に地下道外郭構造体56による地下道60を形成する地下道の構築方法において(図5(a)〜(j)参照)、図1に示すように、地下道外郭構造体56は、元押しジャッキ58と発進立坑53の反力壁62との間にスペーサ部材63,64を推進方向Xに順次重ねて追加配置しつつ推進されると共に、フリクションカット部材51は、発進立坑53の反力壁62に一端部を支持固定され、張力調整装置10を介在させた状態で他端部がフリクションカット部材51に連結固定されるタイロッド部材61の張力によって、地下道外郭構造体56の推進に伴って共移動するのを阻止されるようになっており、且つタイロッド部材61を一旦外してスペーサ部材63,64を追加設置した後に、タイロッド部材61を張設し直して地下道外郭構造体56の推進作業を再開する際に、張力調整装置10によってタイロッド部材61に所定の張力を負荷させた後に、地下道外郭構造体56の推進作業を行う工程を含んでいる。
【0018】
本実施形態によれば、元押しジャッキ58は、推進工事やシールド工事等に用いる公知の各種の油圧ジャッキを用いることができ、例えば1台当たり1500KN程度の押圧能力を備えていると共に、例えば1m程度のストローク長を有している。元押しジャッキ58は、地下道外郭構造体56の矩形形状の後端面に沿ってバランスよく均等に分散配置されて複数取り付けられると共に、地下道外郭構造体56の後端面との間に矩形枠状の押圧盤66を介在させた状態で、地下道外郭構造体56を到達立坑54(図5(g)参照)に向けた推進方向Xに押圧する。また元押しジャッキ58は、発進立坑53の反力壁62との間において推進方向Xに順次重ねて配置されたスペーサ部材63,64を介して反力壁62から推進反力を得つつ、地下道外郭構造体56を推進方向Xに押圧する。
【0019】
スペーサ部材63,64は、例えば鋼製やプレキャストコンクリート製の、元押しジャッキ58と反力壁62との間に介在させて推進反力を伝達する公知の各種のスペーサ部材を用いることができ、本実施形態では、長さが1mのスペーサー63と、長さが3mのストラット64とを組み合わせて使用する。すなわち、元押しジャッキ58のストローク毎に、1mの長さのスペーサー63を、先端のスペーサ部材63,64と収縮した元押しジャッキ58との間に挿入して追加配置すると共に、3体のスペーサー63毎に、これらをストラット64と置き換えながら使用する。推進方向Xに重ねて配置されたスペーサ部材63,64は、公知の技術と同様に、その後端部において、例えばH形鋼等からなる井桁枠67を介して安定した状態で反力壁62に当接することにより、反力壁62からの推進反力を、元押しジャッキ58に効率良く伝達する。
【0020】
反力壁62は、公知の技術と同様に、発進立坑53の計画地下道部50と対向する面において、コンクリートを例えば1m程度の厚さで打設することにより、容易に形成することができる。反力壁62には、例えばコンクリートアンカーを用いて井桁枠67が取り付けられると共に、タイロッド部材61の一端部が、例えばコンクリート中に埋設されることにより、或いは固定ボルトを介して支持固定される。
【0021】
タイロッド部材61は、例えば鋼棒、PC鋼線、PC鋼撚り線等からなり、その一端部が、上述のように反力壁62に支持固定されると共に、他端部が後述する張力調整装置10を介して鋼製端材65に引張り可能に連結固定されることにより、当該鋼製端材65に一体として接合されたフリクションカット部材51に連結固定される。タイロッド部材61は、地中に残置されるフリクションカット部材51の高さ位置に対応して、発進立坑53の上部を横断して取り付けられる。また、タイロッド部材61は、反力壁62から鋼製端材65に亘る各1本の連続する部材として用いることができる他、例えば6m程度の長さの単位タイロッド部材を、カプラー等を介して必要な長さに繋ぎ合わせて用いることもできる。
【0022】
本実施形態では、鋼製端材65との間に介在してタイロッド部材61の他端部をフリクションカット部材51に連結固定する張力調整装置10は、図2に示すように、鋼製端材65を介して一端部11aがフリクションカット部材51に連結固定され、他端部に第1ジャッキ支圧部13を有する第1接続冶具11と、第1接続冶具11の鋼製端材65に接続する一端部11aと第1ジャッキ支圧部13との間に配置される第2ジャッキ支圧部14、及び第1ジャッキ支圧部13を挟んで第2ジャッキ支圧部14とは反対側に配置されるタイロッド締着部15を、第1ジャッキ支圧部13を遊嵌状態で貫通するロッド部材16で連結してなる第2接続冶具12と、第1接続冶具11の第1ジャッキ支圧部13及び第2接続冶具12の第2ジャッキ支圧部14に両端を接合してこれらの間に設けられる油圧ジャッキ17とからなり、油圧ジャッキ17を伸張することにより、タイロッド締着部15をフリクションカット部材51側に引き寄せてタイロッド部材61に所定の張力を負荷するようになっている。
【0023】
第1接続冶具11は、図3及び図4にも示すように、一端部11aの接合プレート18と、他端部の第1ジャッキ支圧部13とを両側の一対の側面プレート19によって連結一体化することにより構成され、これらによって囲まれる内側に、第2接続冶具12の第2ジャッキ支圧部14をスライド移動させると共に油圧ジャッキ17を配置するための中空部を形成する。第1接続冶具11は、接合プレート18を介して固定ボルト20により鋼製端材65に固定されて、鋼製端材65から張り出した状態で取り付けられる。第1接続冶具11の第1ジャッキ支圧部13は、一対の溝形鋼21を背向させつつ間隔をおいて重ね合わせた状態で両側の接合プレート25で接合することによって形成され、一対の溝形鋼21の間隔部分を介して、第2接続冶具12のロッド部材16を遊嵌状態で貫通させるようになっている。また、第1接続冶具11には、第1ジャッキ支圧部13に隣接して、油圧ジャッキ17を下方から支持するジャッキ台22が、例えば溝形鋼を一対の側面プレート19の間に架設固定することによって設けられている。さらに、第1接続冶具11の底面部分には、第2接続冶具12の第2ジャッキ支圧部14を下方からスライド可能に支持する一対の第1スライドレール23が、例えば山形鋼をジャッキ台22と接合プレート18との間に架設固定することにより取り付けられている。さらにまた、第2接続冶具12のタイロッド締着部15を下方からスライド可能に支持する一対の第2スライドレール24が、例えば山形鋼を第1ジャッキ支圧部13から片持ち梁状に張り出して固定することにより取り付けられている。
【0024】
第2接続冶具12は、一端部の第2ジャッキ支圧部14と他端部のタイロッド締着部15とを、第1ジャッキ支圧部13を遊嵌状態で貫通するロッド部材16で連結することによって構成される。第2ジャッキ支圧部14は、一対の溝形鋼26を背向させつつ間隔をおいて重ね合わせた状態で両側の接合プレート27で接合することによって形成され、一対の溝形鋼26の間隔部分にロッド部材16を挿通して例えば固定ナット28で両側から固定することにより、ロッド部材16の一端部に第2ジャッキ支圧部14が固定される。タイロッド締着部15は、一対の溝形鋼29を背向させつつ間隔をおいて重ね合わせた状態で両側の接合プレート30で接合することによって形成され、一対の溝形鋼29の間隔部分にロッド部材16を挿通して例えば固定ナット28で両側から固定することにより、ロッド部材16の他端部にタイロッド締着部15が固定される。またタイロッド締着部15の中央部分には、一対の溝形鋼29の間隔部分にタイロッド部材61の他端部が挿通される共に、当該タイロッド部材61の他端部は、タイロッド締着ナット31を用いてタイロッド締着部15に締着固定される。これらによって、タイロッド部材61の他端部は、張力調整装置10及び鋼製端材65を介してフリクションカット部材51に連結固定されることになる。
【0025】
第1ジャッキ支圧部13と第2ジャッキ支圧部14の間に設けられる油圧ジャッキ17は、推進工事やシールド工事等に用いる公知の各種の油圧ジャッキを用いることができ、例えば300KN程度の押圧能力を備えていると共に、例えば40cm程度のストローク長を有している。また、油圧ジャッキ17は、圧力計を備えており、当該油圧ジャッキ17の伸張によって負荷されるタイロッド部材61の張力を計測できるようになっている。油圧ジャッキ17を伸張して、第2接続冶具12の第2ジャッキ支圧部14を推進方向Xに押し出すことにより、タイロッド締着部15を推進方向Xに引き込んで、タイロッド締着部15に他端部が締着されたタイロッド部材61の弛みを解消して張力を負荷したり、張力を増大させることが可能になる。油圧ジャッキ17を収縮して、第2ジャッキ支圧部14を推進方向Xと反対側に引き込むことにより、タイロッド締着部15を推進方向Xと反対側に移動させて、タイロッド部材61に負荷される張力を減少させたり、必要に応じてタイロッド部材61の他端部をタイロッド締着部15から外すことが可能になる。
【0026】
また、本実施形態では、第2接続冶具12の第2ジャッキ支圧部14とタイロッド締着部15とを連結するロッド部材16は、その略全長に亘って外周面に雄ネジ部32を備えるボルト部材によって構成されると共に、このボルト部材からなるロッド部材16の第1ジャッキ支圧部13と第2ジャッキ支圧部14との間の部分に、第1ナット部材33が螺着されている。油圧ジャッキ17を伸張してタイロッド部材61に所定の張力が負荷されたら、第1ナット部材33を第1ジャッキ支圧部13に締着することにより、油圧ジャッキ17の作動を停止しても、タイロッド部材61に所定の張力が負荷された状態を容易に保持することが可能になる。また、第1ジャッキ支圧部13とタイロッド締着部15との間の部分に螺着されている第2ナット部材34を、第1ナット部材33の反対側から第1ジャッキ支圧部13を挟み込みむようにして第1ジャッキ支圧部13に締着することにより、タイロッド部材61に所定の張力が負荷された状態を、さらに安定した状態で保持することが可能になる。
【0027】
本実施形態の地下道の構築方法によれば、地下道外郭構造体56は、元押しジャッキ58と反力壁62との間にスペーサ部材63,64を推進方向Xに順次重ねて追加配置しながら、フリクションカット部材51に連結固定されるタイロッド部材61の張力によって、フリクションカット部材51が共移動するのを阻止しつつ推進方向Xに推進される。すなわち、元押しジャッキ58のストローク分、地下道外郭構造体56を前進させたら、タイロッド部材61の張力を緩め、作業箇所のタイロッド部材61を一旦外し、スペーサー63やストラット64を元押しジャッキ58の後方に追加配置する。しかる後に、タイロッド部材61を繋いで張設し直し、張力調整装置10の油圧ジャッキ17を伸張してタイロッド部材61に所定の張力を負荷させた後に、元押しジャッキ58を伸張して地下道外郭構造体56を再度前進させる。このような工程を繰り返すことにより、計画地下道部50は、パイプルーフ55と置換されて計画地下道部50に設置される。
【0028】
ここで、地下道外郭構造体56の推進作業を再開する際に、張力調整装置10によって各タイロッド部材61に負荷される所定の張力は、タイロッド部材61の引張り作用によってフリクションカット部材51を発進立坑53側に引き込まず、且つフリクションカット部材51の共移動を効果的に阻止できる範囲で効率の良い値を適宜設定することができるが、少なくとも、フリクションカット部材51の重量を含めたフリクションカット部材51に作用する上載荷重に、地下道外郭構造体56(例えばコンクリート)とフリクションカット部材51(例えば鋼材)との摩擦係数(例えば0.35)を乗じた値を、タイロッド部材61の本数(図1に示す本実施形態では5本)で除した値の張力であることが好ましく、またこのような値と略等しい値の張力とすることがさらに好ましい。すなわち、5本のタイロッド部材61によって負担する合計の張力Tは、地下道外郭構造体56とフリクションカット部材51との摩擦係数をa、フリクションカット部材51に作用する上載荷重をWとした場合に、T=a×Wとすることが好ましい。地下道外郭構造体56の推進作業を再開する際にタイロッド部材61に負荷される所定の張力をこのような値とすることにより、地下道外郭構造体56の前進に伴うフリクションカット部材51の共移動を、確実に防止することが可能になる。また張力の管理を行い易くなる。
【0029】
そして、本実施形態によれば、タイロッド部材61を張設し直す際に、タイロッド部材61に所定の張力を容易且つ確実に負荷して、フリクションカット部材51と地下道外郭構造体56との摩擦力によってフリクションカット部材51が地下道外郭構造体56の推進方向Xに共移動するのを効果的に防止することが可能になる。すなわち、本実施形態によれば、タイロッド部材61を一旦外してスペーサ部材63,64を追加設置した後に、タイロッド部材61を張設し直して地下道外郭構造体56の推進作業を再開する際に、張力調整装置10によってタイロッド部材61に所定の張力を負荷させた後に、地下道外郭構造体56の推進作業を行うようになっている。したがって、例えばタイロッド部材61の反力壁62への固定部におけるボルトを緊張したり、タイロッド部材61を繋ぐカプラーを締め付けたり、タイロッド部材61を下から支えるといった困難で手間のかかる作業を要することなく、張力調整装置10の例えば油圧ジャッキ17を伸張するだけの簡単な操作により、容易にタイロッド部材61の撓みを解消したり、タイロッド部材61に所定の張力を負荷できるので、フリクションカット部材51の移動を防止するのに必要な支持力を、反力壁62から推進作業の再開の都度効率良く得ることが可能になり、これによってフリクションカット部材51が地下道外郭構造体56の推進方向Xに共移動するのを効果的に防止することが可能になる。
【0030】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、張力調整装置は、第1接続冶具と、第2接続冶具と、油圧ジャッキとからなる上述の構成の張力調整装置に限定されることなく、その他の種々の構成の張力調整装置を採用することができる。また、張力調整装置は、タイロッド部材の他端部のフリクションカット部材への連結部分に取り付ける必要は必ずしもなく、タイロッド部材のその他の部位に取り付けて用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の好ましい一実施形態に係る地下道の構築方法を説明する発進立坑の部分の要部平面図である。
【図2】本発明の好ましい一実施形態に係る張力調整装置の構成を説明する要部平面図である。
【図3】本発明の好ましい一実施形態に係る張力調整装置の構成を説明する、図2のA−Aに沿った断面図である。
【図4】本発明の好ましい一実施形態に係る張力調整装置の構成を説明する、図2のB−Bに沿った断面図である。
【図5】(a)〜(j)は、本発明の好ましい一実施形態に係る、地中に形成したパイプルーフを、フリクションカット部材を地中に残置したまま地下道外郭構造体と置換することにより地下道を形成する地下道の構築方法の工程を説明する、縦断面図及び横断面図である。
【符号の説明】
【0032】
10 張力調整装置
11 第1接続冶具
11a 第1接続冶具の一端部
12 第2接続冶具
13 第1ジャッキ支圧部
14 第2ジャッキ支圧部
15 タイロッド締着部
16 ロッド部材(ボルト部材)
17 油圧ジャッキ
18 接合プレート
33 第1ナット部材(ナット部材)
50 計画地下道部
51 フリクションカット部材
52 箱形パイプ部材
53 発進立坑
54 到達立坑
55 パイプルーフ
56 地下道外郭構造体
58 元押しジャッキ
60 地下道
61 タイロッド部材
62 反力壁
63 スペーサー(スペーサー部材)
64 ストラット(スペーサー部材)
65 鋼製端材
X 推進方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形断面の計画地下道部の上面に沿って配置される面にフリクションカット部材を固定した箱形パイプ部材を含む複数本の箱形パイプ部材を、前記計画地下道部の少なくとも上床位置の地中に並列状態で圧入して、前記計画地下道部を貫通するパイプルーフを地中に形成した後に、該パイプルーフの端面に矩形断面の地下道外郭構造体の端面を当接させ、前記地下道外郭構造体の先端の切羽面の土砂を掘削排除しながら前記地下道外郭構造体を発進立坑から元押しジャッキにより推進させて、前記箱形パイプ部材との固定を解除した前記フリクションカット部材を地中に残置したまま、前記パイプルーフを押し出して前記地下道外郭構造体と置換することにより、前記計画地下道部に前記地下道外郭構造体による地下道を形成する地下道の構築方法において、
前記地下道外郭構造体は、前記元押しジャッキと前記発進立坑の反力壁との間にスペーサ部材を推進方向に順次重ねて追加配置しつつ推進されると共に、前記フリクションカット部材は、前記発進立坑の反力壁に一端部を支持固定され、張力調整装置を介在させた状態で他端部が前記フリクションカット部材に連結固定されるタイロッド部材の張力によって、前記地下道外郭構造体の推進に伴って共移動するのを阻止されるようになっており、
且つ前記タイロッド部材を一旦外して前記スペーサ部材を追加設置した後に、前記タイロッド部材を張設し直して前記地下道外郭構造体の推進作業を再開する際に、前記張力調整装置によって前記タイロッド部材に所定の張力を負荷させた後に、前記地下道外郭構造体の推進作業を行う工程を含むことを特徴とする地下道の構築方法。
【請求項2】
前記張力調整装置によって前記タイロッド部材に負荷される所定の張力は、少なくとも、前記フリクションカット部材の重量を含めた前記フリクションカット部材に作用する上載荷重に、前記地下道外郭構造体と前記フリクションカット部材との摩擦係数を乗じた値を、前記タイロッド部材の本数で除した値の張力である請求項1に記載の地下道の構築方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の地下道の構築方法において使用する、前記タイロッド部材の他端部の前記フリクションカット部材への連結部分に設けられる張力調整装置であって、
前記フリクションカット部材に一端部が連結固定され、他端部に第1ジャッキ支圧部を有する第1接続冶具と、前記第1接続冶具の一端部と前記第1ジャッキ支圧部との間に配置される第2ジャッキ支圧部、及び前記第1ジャッキ支圧部を挟んで前記第2ジャッキ支圧部とは反対側に配置されるタイロッド締着部を、前記第1ジャッキ支圧部を遊嵌状態で貫通するロッド部材で連結してなる第2接続冶具と、前記第1接続冶具の第1ジャッキ支圧部及び前記第2接続冶具の第2ジャッキ支圧部に両端を接合してこれらの間に設けられる油圧ジャッキとからなり、
該油圧ジャッキを伸張することにより、前記タイロッド締着部を前記フリクションカット部材側に引き寄せて前記タイロッド部材に所定の張力を負荷することを特徴とする張力調整装置。
【請求項4】
前記第2接続冶具の第2ジャッキ支圧部とタイロッド締着部とを連結するロッド部材が、雄ネジ部を備えるボルト部材によって構成されると共に、該ボルト部材の前記第1ジャッキ支圧部と前記第2ジャッキ支圧部との間の部分にナット部材が螺着されており、前記油圧ジャッキを伸張して前記タイロッド部材に所定の張力が負荷されたら、前記ナット部材を前記第1ジャッキ支圧部に締着することにより、前記タイロッド部材に所定の張力が負荷された状態を保持する請求項3に記載の張力調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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