説明

地下道の構築方法

【課題】函形地中構造体の推進に伴って箱形パイプルーフの内側の土砂を箱形パイプルーフと共に押し出して函形地中構造体による地下道を構築する際に、到達立坑の規模をさらに小さくすることのできる地下道の構築方法を提供する。
【解決手段】箱形パイプルーフ11を形成する周方向に並べて配置された各列の箱形パイプ部材12は、所定の長さの単位パイプ部材13を圧入方向Xに連設接合することによって構成される。箱型パイプルーフ11の矩形断面の底辺部11aに配置される列の箱形パイプ部材12は、発進立坑20側の後端部分に、単位パイプ部材13よりも短い長さの調整パイプ部材14が取り付けられることで、箱型パイプルーフ11の矩形断面の上辺部11bに配置される列の箱形パイプ部材12の先端部よりも、調整パイプ部材14の長さ分だけ先端部を到達立坑21側に突出させた状態で、内側の土砂30と共に到達立坑21に押し出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下道の構築方法に関し、特に箱型パイプルーフを地中に形成した後に、発進立坑から函形地中構造体を推進して箱型パイプルーフを内側の土砂と共に到達立坑に押し出すことにより、箱型パイプルーフを函形地中構造体と置換して、函形地中構造体による地下道を形成する地下道の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、既存の鉄道や道路の下方地盤にこれらを横断する状態で地下道を構築する方法として、既設の鉄道や道路を下方から支えるパイプルーフを形成し、パイプルーフに支保工を施しながら、これの下方地盤を掘削して地下道を構築する工法が一般的に採用されてきたが、このような工法は、パイプルーフの下方に、地下道の断面形状より相当程度大きな断面形状の作業空間を形成する必要があることから、効率の良い施工方法ではなく、また上方の既存の鉄道や道路に影響を及ぼしやすい。
【0003】
このようなことから、地中に形成したパイプルーフを、フリクションカット部材を地中に残置したまま函形地中構造体と置換することで地下道を構築する方法が開発されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の地下道の構築方法では、フリクションカット部材を備える箱形パイプ部材を、例えば発進立坑から到達立坑に向けて並列状態で圧入することで、函形地中構造体の外周形状と対応する矩形断面を備える箱形パイプルーフを地中に形成し、しかる後に、この箱形パイプルーフの端面に、例えばコンクリート製の函形地中構造体の端面を当接させ、この函形地中構造体の先端の切羽面の土砂を掘削排除しながら、ジャッキを用いて函形地中構造体を推進させることで、フリクションカット部材を地中に残置したまま、箱形パイプルーフを到達立坑に押し出して函形地中構造体と置換することにより、函形地中構造体による地下道を形成する。
【0004】
また、特許文献1の地下道の構築方法では、地中に形成した箱形パイプルーフの端面に函形地中構造体の端面を当接させた後、函形地中構造体の先端の切羽面の土砂を、函形地中構造体の中空内部での作業によって掘削排除しながら函形地中構造体を推進させるようになっており、掘削作業に多くの手間がかかると共に、工期もかかることから、例えば函形地中構造体の先端の切羽面を覆って土留部材を配設し、函形地中構造体の推進に伴って箱形パイプルーフの内側の土砂を箱形パイプルーフと共に押し出して、到達立坑において押し出された箱形パイプルーフの解体作業や土砂の掘削排除を行うようにした施工法も開発されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−29597号公報
【特許文献2】特許第3887383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、特許文献2の施工法によれば、到達立坑において、押し出された函形パイプルーフの解体作業や土砂の掘削排除を行うようになっているが、特に箱形パイプルーフの矩形断面の側辺部の高さが例えば2〜3m程度の、小断面の箱形パイプルーフの場合には、図6(a),(b)に示すように、箱形パイプルーフ50の各列の箱形パイプ部材51を構成する単位パイプ部材52を安全に撤去するには、到達立坑53の押し出し方向の幅として、少なくとも2本の単位パイプ部材52分の長さを越える幅を必要としていた。
【0007】
すなわち、到達立坑53に押し出された箱形パイプルーフ50の内側の土砂54は、上方の地盤への影響を考慮して、到達立坑53の土留壁55を越えて掘削することができないことから、箱形パイプルーフ50の矩形断面の上辺部に配置された単位パイプ部材52を撤去可能な状態となっても、内側の土砂54の安息角を考慮して、当該スパンにおける底辺部に配置された単位パイプ部材52の上方には、土砂53を残置しておく必要がある(図6(a)参照)。したがって、到達立坑53に押し出された箱形パイプルーフ50は、次のスパンにおける上辺部に配置された単位パイプ部材52を撤去可能な状態となるまで、前のスパンの底辺部に配置された単位パイプ部材52を撤去することができなくなる(図6(b)参照)。このため、到達立坑53は、箱形パイプルーフ50の押し出し方向の幅として、少なくとも2本の単位パイプ部材52分の長さを越える幅を必要していた。
【0008】
これに対して、特に狭隘な都市部においては、大きな到達立坑を構築可能な敷地を確保することが困難であり、また到達立坑の規模をできるだけ小さくすることで、大幅なコストの削減を図ることが可能である。このため、上述のような函形地中構造体の推進に伴って箱形パイプルーフの内側の土砂を箱形パイプルーフと共に押し出すことで、函形地中構造体による地下道を構築する方法においても、到達立坑の規模をさらに抑制可能とする技術の開発が望まれている。
【0009】
本発明は、函形地中構造体の推進に伴って箱形パイプルーフの内側の土砂を箱形パイプルーフと共に押し出して函形地中構造体による地下道を構築する際に、到達立坑の規模をさらに小さくすることのできる地下道の構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、発進立坑から到達立坑に向けて推進される矩形断面(正方形断面を含む)を有する函形地中構造体の外周形状に対応させて、箱形パイプ部材が周方向に並べて配置されるように、該箱形パイプ部材を発進立坑から地中に圧入することで矩形断面(正方形断面を含む)を有する箱型パイプルーフを地中に形成した後に、該箱型パイプルーフの発進立坑側の後端部に前記函形地中構造体の先端部を配置し、到達立坑に向けた前記函形地中構造体の推進に伴って前記箱型パイプルーフの内側の土砂を前記箱形パイプ部材と共に到達立坑に押し出し、押し出された前記箱形パイプ部材と前記内側の土砂とを到達立坑において撤去しながら前記箱型パイプルーフを前記函形地中構造体と置換することで、前記函形地中構造体による地下道を形成する地下道の構築方法において、周方向に並べて配置された各列の前記箱形パイプ部材は、所定の長さの単位パイプ部材を圧入方向に連設接合することによって構成されており、前記箱型パイプルーフの矩形断面の少なくとも底辺部に配置される列の前記箱形パイプ部材は、発進立坑側の後端部分に、前記単位パイプ部材よりも短い長さの調整パイプ部材が取り付けられることで、前記箱型パイプルーフの矩形断面の上辺部に配置される列の前記箱形パイプ部材の先端部よりも、前記調整パイプ部材の長さ分だけ先端部を到達立坑側に突出させた状態で、前記内側の土砂と共に到達立坑に押し出されるようになっている地下道の構築方法を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0011】
そして、本発明の地下道の構築方法は、前記調整パイプ部材が、前記箱型パイプルーフの矩形断面の底辺部に配置される列の前記箱形パイプ部材の先端を、前記箱型パイプルーフの矩形断面の上辺部内側を通る前記内側の土砂の安息角による勾配線よりも、外側に配置させる長さを備えていることが好ましい。
【0012】
また、本発明の地下道の構築方法は、前記箱型パイプルーフの矩形断面の側辺部に配置される少なくとも下部の列の前記箱形パイプ部材が、発進立坑側の後端部分に、前記単位パイプ部材より長さの短い側部調整パイプ部材が取り付けられることで、前記箱型パイプルーフの矩形断面の上辺部に配置される列の前記箱形パイプ部材の先端部よりも、前記側部調整パイプ部材の長さ分だけ先端部を到達立坑側に突出させた状態で、前記内側の土砂と共に到達立坑に押し出しされるようになっていることが好ましい。
【0013】
さらに、本発明の地下道の構築方法は、前記側部調整パイプ部材が、前記箱型パイプルーフの矩形断面の側辺部に配置される少なくとも下部の列の前記箱形パイプ部材の先端を、前記箱型パイプルーフの矩形断面の上辺部内側を通る前記内側の土砂の安息角による勾配線よりも、外側に配置させる長さを備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の地下道の構築方法によれば、函形地中構造体の推進に伴って箱形パイプルーフの内側の土砂を箱形パイプルーフと共に押し出して函形地中構造体による地下道を構築する際に、到達立坑の規模をさらに小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の好ましい一実施形態に係る地下道の構築方法における、箱形パイプ部材を発進立坑から圧入して箱型パイプルーフを地中に形成する工程を説明する、(a)、(b)は略示縦断面図、(c)は発進立坑側から視た略示正面図である。
【図2】箱形パイプ部材の構成を説明する横断面図である。
【図3】(a)、(b)は、本発明の好ましい一実施形態に係る地下道の構築方法における、函形地中構造体を推進して箱型パイプルーフと置換する工程を説明する略示縦断面図である。
【図4】(a)、(b)は、本発明の好ましい一実施形態に係る地下道の構築方法における、到達立坑に押し出された箱形パイプ部材と内側の土砂とを撤去する工程を説明する略示縦断面図である。
【図5】本発明の好ましい一実施形態に係る地下道の構築方法における、到達立坑に押し出された箱形パイプ部材と内側の土砂とを撤去する工程を説明する略示側面図である。
【図6】(a)、(b)は、従来の、到達立坑に押し出された箱形パイプ部材と内側の土砂とを撤去する工程を説明する略示縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の好ましい一実施形態に係る地下道の構築方法は、例えば既存の鉄道や道路の下方地盤にこれらを横断する地下道を構築する方法として、例えば図1(a)〜(c)及び図3(a)、(b)に示すような、箱型パイプルーフ11を地中に形成した後に、発進立坑20から函形地中構造体10を推進して箱型パイプルーフ11を内側の土砂30と共に到達立坑21に押し出すことで、箱型パイプルーフ11を函形地中構造体10と置換して、函形地中構造体10による地下道を形成する公知の構築方法において、到達立坑21をさらにコンパクトに形成できるようにする技術として開発されたものである。
【0017】
すなわち、本実施形態の地下道の構築方法は、図1(a)〜(c)に示すように、発進立坑20から到達立坑21に向けて推進される矩形断面を有する函形地中構造体10の外周形状に対応させて、箱形パイプ部材12が周方向に並べて配置されるように、これらの箱形パイプ部材12を発進立坑20から地中に圧入することで矩形断面を有する箱型パイプルーフ11を地中に形成した後に、図3(a)、(b)に示すように、箱型パイプルーフ11の発進立坑20側の後端部に函形地中構造体10の先端部を配置し、到達立坑21に向けた函形地中構造体12の推進に伴って箱型パイプルーフ11の内側の土砂30を箱形パイプ部材12と共に到達立坑21に押し出し、押し出された箱形パイプ部材12と内側の土砂30とを到達立坑21において撤去しながら箱型パイプルーフ11を函形地中構造体10と置換することで、函形地中構造体10による地下道を形成する構築方法において採用されたものである。
【0018】
そして、本実施形態の地下道の構築方法では、周方向に並べて配置された各列の箱形パイプ部材12は、所定の長さの単位パイプ部材13を圧入方向(押し出し方向)Xに連設接合することによって構成されており、図4(a)、(b)にも示すように、箱型パイプルーフ11の矩形断面の少なくとも底辺部11a(図1(c)参照)に配置される列の箱形パイプ部材12は、発進立坑20側の後端部分に、単位パイプ部材13よりも短い長さの調整パイプ部材14が取り付けられることで、箱型パイプルーフ11の矩形断面の上辺部11b(図1(c)参照)に配置される列の箱形パイプ部材12の先端部よりも、調整パイプ部材14の長さ分だけ先端部を到達立坑21側に突出させた状態で、内側の土砂30と共に到達立坑21に押し出されるようになっている。
【0019】
また、本実施形態では、調整パイプ部材14は、箱型パイプルーフ11の矩形断面の底辺部11aに配置される列の箱形パイプ部材12の先端を、箱型パイプルーフ11の矩形断面の上辺部11b内側を通る、内側の土砂30の土質に応じた例えば60〜70度程度の安息角θによる勾配線Lよりも、外側に配置させる長さを備えている。
【0020】
さらに、本実施形態では、図5に示すように、箱型パイプルーフ11の矩形断面の側辺部11c(図1(c)参照)に配置される少なくとも下部の列の箱形パイプ部材12は、発進立坑20側の後端部分に、単位パイプ部材14より長さの短い側部調整パイプ部材15a,15b,15cが取り付けられることで、箱型パイプルーフ11の矩形断面の上辺部11bに配置される列の箱形パイプ部材12の先端部よりも、側部調整パイプ部材15a,15b,15cの長さ分だけ先端部を到達立坑21側に突出させた状態で、内側の土砂30と共に到達立坑21に押し出されるようになっている。さらにまた、側部調整パイプ部材15a,15b,15cは、箱型パイプルーフ11の矩形断面の側辺部11cに配置される少なくとも下部の列の箱形パイプ部材13の先端を、箱型パイプルーフ11の矩形断面の上辺部11b内側を通る、内側の土砂30のの土質に応じた例えば60〜70度程度の安息角θによる勾配線Lよりも、外側に配置させる長さを備えている。
【0021】
本実施形態の構築方法によって地下道を構築するには、従来の方法と略同様に、例えば箱形パイプ部材12を発進立坑20から圧入して箱型パイプルーフ11を地中に形成する工程として、まず、図1(a)に示すように、鉄道などの上部交通(図示省略)の両側の地盤に例えば土留鋼矢板を打設することによって土留壁22を形成することで、発進立坑20及び到達立坑21を築造する。また、発進立坑20に発進架台23及び推進機24を設置し、この推進機24によって、箱形パイプ部材12を上部交通の下方の地盤に圧入する。
【0022】
ここで、箱形パイプ部材12を構成する単位パイプ部材13は、図2に示すように、略正方形の断面形状を有する、例えば3m程度の長さの公知の筒体であり、側面に鉤状の継手部16が長手方向に連続して一体として固定されている。また単位パイプ部材13の、箱型パイプルーフ11の外周面となる部分には、フリクションカッタープレート17が取り付けられている。
【0023】
推進機24は、例えばジャッキ等による押出機構やオーガ等による内部掘削機構を備える公知の装置であり、単位パイプ部材13を圧入方向Xに継ぎ足しながら、発進立坑20から到達立坑21に向けて圧入させることにより、図1(b)に示すように、各列の箱形パイプ部材12が発進立坑20と到達立坑21との間の地中に設置される。各隣接する列の箱形パイプ部材12は、単位パイプ部材13の側面に設けられた継手部16を介して互いに接合されることで、図1(c)に示すように、矩形断面を有する函形地中構造体10の外周形状に対応する矩形断面となるように、箱形パイプ部材12が周方向に並べて配置されることになる。これによって、矩形断面を有する箱型パイプルーフ11が、発進立坑20と到達立坑21との間の地中に容易に形成されることになる。
【0024】
また、本実施形態では、上述のように、矩形断面の箱型パイプルーフ11の底辺部11aの列の箱形パイプ部材12は、発進立坑20側の後端部分に、例えば1m程度の長さの調整パイプ部材14が取り付けられることで、その先端部を、上辺部11bの列の箱形パイプ部材12の先端部よりも、到達立坑21側に例えば1m程度突出させた状態で設置されると共に、側辺部11cの列の箱形パイプ部材12は、発進立坑20側の後端部分に側部調整パイプ部材15a,15b,15cが取り付けられることで、その先端部を、上辺部11bの列の箱形パイプ部材12の先端部よりも、到達立坑21側に突出させた状態で設置されることになる(図5参照)。
【0025】
さらに、本実施形態では、地中に設置された箱型パイプルーフ11の内側の土砂23の両側の端面を覆うようにして、好ましくは土留壁22の構成部材を利用して、土留部材18を取り付ける。これによって、到達立坑21に向けた函形地中構造体12の推進に伴って、箱型パイプルーフ11の内側の土砂30を箱形パイプ部材12と共に到達立坑21に押し出してゆく際に、内側の土砂30が崩落するのを効果的に回避することが可能になる。
【0026】
そして、函形地中構造体12を推進して、箱型パイプルーフ11の内側の土砂30を箱形パイプ部材12と共に到達立坑21に押し出てゆく工程では、図3(a)、(b)に示すように、発進立坑20において、地中に埋設された箱型パイプルーフ11と反力壁25との間に函形地中構造体10を設置する。発進立坑20に設置される函形地中構造体10は、予め形成されたプレキャストコンクリート製のものであっても良く、現場打ちコンクリート製のものであっても良い。
【0027】
発進立坑20に函形地中構造体10を設置したら、例えば函形地中構造体10の後端部と反力壁25との間に、推進設備として元押しジャッキ26を取り付けて、この元押しジャッキ26を伸長することで函形地中構造体10を押し出し方向Xに前進させる。先端部が箱型パイプルーフ11の後端部に当接するまで函形地中構造体10を前進させたら、箱型パイプルーフ11の外周面に配置されたフリクションカッタープレート17を発進立坑20側に固定すると共に、反力壁25と元押しジャッキ26との間にストラット27を適宜介在させつつ、元押しジャッキ26を伸縮して函形地中構造体10を押し出し方向Xにさらに前進させる。これによって、函形地中構造体10は、箱型パイプルーフ11をこれの内側の土砂30と共に到達立坑21に押し出しながら、当該箱型パイプルーフ11と置換されるようにして地中に推進されてゆく。
【0028】
ここで、このような函形地中構造体10の推進作業において、箱型パイプルーフ11及び函形地中構造体10の外周面は、フリクションカッタープレート17によって周囲の地盤から縁切りされた状態となっているので、箱型パイプルーフ11及び函形地中構造体10の到達立坑21に向けた押し出しをスムーズに行うことが可能になる。また、箱型パイプルーフ11の内部の土砂30は、箱型パイプルーフ11と共に到達立坑20に押し出されるので、函形地中構造体10の推進に伴って函形地中構造体10の内部の作業で前方の地盤を掘削したり除去する必要がなく、これによって工期の短縮を効果的に図ることが可能になる。
【0029】
そして、本実施形態では、函形地中構造体10の推進作業が進行して、例えば矩形断面の箱型パイプルーフ11の上辺部11bの箱形パイプ部材12を構成する、先端のスパンの単位パイプ部材13の全体が土留壁22を越えて到達立坑21に押し出されたら、到達立坑21において、押し出された単位パイプ部材13と内側の土砂30とを撤去する。
【0030】
到達立坑21において、押し出された単位パイプ部材13と内側の土砂30とを撤去する工程では、箱型パイプルーフ11の内側の土砂23の押し出し方向Xの先端側の端面を覆う土留部材18(図3(a),(b)参照)を撤去した後に、図4(a),(b)に示すように、土留壁22から突出する部分の単位パイプ部材13及び土砂30の撤去作業を行う。
【0031】
かかる撤去作業は、例えば矩形断面の箱型パイプルーフ11の上辺部11bに位置する単位パイプ部材13を撤去した後に、安息角θによる勾配線Lを越えた部分の土砂30、及び先端のスパンの側辺部11cに位置する単位パイプ部材13を撤去し、最後に底辺部11aに位置する単位パイプ部材13を撤去する。
【0032】
ここで、本実施形態では、底辺部11aの箱形パイプ部材12を構成する先端のスパンの単位パイプ部材13は、箱形パイプ部材12の後端部分に調整パイプ部材14が取り付けられていることで、当該先端のスパンの単位パイプ部材13の後端は、安息角θによる勾配線Lを越えて配置されることになる。したがって、到達立坑21に押し出された先端のスパンの底辺部11aの単位パイプ部材13は、次のスパンの単位パイプ部材13が押し出されるのを待つことなく、当該先端のスパンにおける上辺部11bの単位パイプ部材13や、側辺部11cの単位パイプ部材13と共に、撤去することが可能になる。
【0033】
これによって、本実施形態の地下道の構築方法によれば、到達立坑21の押し出し方向Xの幅として、2スパン分の単位パイプ部材13の長さ以上の幅を必要としていた従来のものと比較して、1スパン分の単位パイプ部材13に調整パイプ部材14を加えた長さ以上の幅とすることができるので、到達立坑21の省面積化を効果的に図って到達立坑21の規模をさらに小さくすることが可能になる。本実施形態では、より具体的には、従来は2スパン分の単位パイプ部材13の長さとして、6m以上の到達立坑21の幅を必要としていたのに対して、1スパン分の単位パイプ部材13に調整パイプ部材14を加えた長さとして、4m以上の幅に到達立坑21を設定すれば良いので、2m分の幅の省面積化を図ることが可能になる。
【0034】
また、本実施形態によれば、箱型パイプルーフ11の側辺部11cに配置される箱形パイプ部材12は、後端部分に側部調整パイプ部材15a,15b,15cが取り付けられることで、上辺部11bに配置される列の箱形パイプ部材12の先端部よりも、側部調整パイプ部材15a,15b,15cの長さ分だけ先端部を到達立坑21側に突出させた状態で押し出されるようになっているので、先端のスパンの単位パイプ部材13が内側の土砂23と共に到達立坑21に押し出される際に、内側の土砂23が側方に崩れるのをさらに効果的に抑制することが可能になる。
【0035】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、側辺部に配置される箱形パイプ部材の全ての後端部分に側部調整パイプ部材を取り付ける必要は必ずしもなく、少なくとも下部の列の箱形パイプ部材に取り付けられていれば良い。到達立坑に押し出される際に、内側の土砂が側方に崩れるの抑制できる状況であれば、側辺部に配置される箱形パイプ部材に側部調整パイプ部材を取り付ける必要は必ずしもない。また、函形地中構造体と置換される箱型パイプルーフは、側辺部の箱形パイプ部として3段(3列)設けられたものに限定されることなく、2段又は4段以上設けられたものであっても良い。単位パイプ部材や調整パイプ部材の長さや大きさは、適宜設定することができる。
【符号の説明】
【0036】
10 函形地中構造体
11 箱型パイプルーフ
11a 底辺部
11b 上辺部
11c 側辺部
12 箱形パイプ部材
13 単位パイプ部材
14 調整パイプ部材
15a,15b,15c 側部調整パイプ部材
16 継手部
17 フリクションカッタープレート
20 発進立坑
21 到達立坑
22 土留壁
23 発進架台
24 推進機
25 反力壁
26 元押しジャッキ
27 ストラット
30 土砂
X 圧入方向(押し出し方向)
θ 安息角
L 勾配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発進立坑から到達立坑に向けて推進される矩形断面を有する函形地中構造体の外周形状に対応させて、箱形パイプ部材が周方向に並べて配置されるように、該箱形パイプ部材を発進立坑から地中に圧入することで矩形断面を有する箱型パイプルーフを地中に形成した後に、該箱型パイプルーフの発進立坑側の後端部に前記函形地中構造体の先端部を配置し、到達立坑に向けた前記函形地中構造体の推進に伴って前記箱型パイプルーフの内側の土砂を前記箱形パイプ部材と共に到達立坑に押し出し、押し出された前記箱形パイプ部材と前記内側の土砂とを到達立坑において撤去しながら前記箱型パイプルーフを前記函形地中構造体と置換することで、前記函形地中構造体による地下道を形成する地下道の構築方法において、
周方向に並べて配置された各列の前記箱形パイプ部材は、所定の長さの単位パイプ部材を圧入方向に連設接合することによって構成されており、
前記箱型パイプルーフの矩形断面の少なくとも底辺部に配置される列の前記箱形パイプ部材は、発進立坑側の後端部分に、前記単位パイプ部材よりも短い長さの調整パイプ部材が取り付けられることで、前記箱型パイプルーフの矩形断面の上辺部に配置される列の前記箱形パイプ部材の先端部よりも、前記調整パイプ部材の長さ分だけ先端部を到達立坑側に突出させた状態で、前記内側の土砂と共に到達立坑に押し出されるようになっている地下道の構築方法。
【請求項2】
前記調整パイプ部材は、前記箱型パイプルーフの矩形断面の底辺部に配置される列の前記箱形パイプ部材の先端を、前記箱型パイプルーフの矩形断面の上辺部内側を通る前記内側の土砂の安息角による勾配線よりも、外側に配置させる長さを備えている請求項1記載の地下道の構築方法。
【請求項3】
前記箱型パイプルーフの矩形断面の側辺部に配置される少なくとも下部の列の前記箱形パイプ部材は、発進立坑側の後端部分に、前記単位パイプ部材より長さの短い側部調整パイプ部材が取り付けられることで、前記箱型パイプルーフの矩形断面の上辺部に配置される列の前記箱形パイプ部材の先端部よりも、前記側部調整パイプ部材の長さ分だけ先端部を到達立坑側に突出させた状態で、前記内側の土砂と共に到達立坑に押し出しされるようになっている請求項1又は2記載の地下道の構築方法。
【請求項4】
前記側部調整パイプ部材は、前記箱型パイプルーフの矩形断面の側辺部に配置される少なくとも下部の列の前記箱形パイプ部材の先端を、前記箱型パイプルーフの矩形断面の上辺部内側を通る前記内側の土砂の安息角による勾配線よりも、外側に配置させる長さを備えている請求項3記載の地下道の構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−144942(P2012−144942A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5736(P2011−5736)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【出願人】(592069137)植村技研工業株式会社 (12)
【出願人】(000163110)極東鋼弦コンクリート振興株式会社 (29)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【Fターム(参考)】