説明

地下鉄道構築方法

【課題】駅部及び駅間部に関係なく、等幅でよく、必要用地をコンパクトにでき、駅間に設ける立坑を小さくでき、地下占有幅を狭くして、コスト的にも有利な地下鉄道構築方法を提供する。
【解決手段】所定間隔を置いて配設した一対の第1の掘進機間に第2の掘進機を連結したコ字状のシールド掘進機を用いてコ字状のトンネル40を掘削する工程と、コ字状のトンネル40の両端部のトンネル坑内から下方に地中土留壁44を打設構築する工程と、コ字状のトンネル40内にコンクリート54を打設して鉄道用トンネル22の頂版部56を構築する工程と、地中土留壁44及び頂版部56で囲まれた内部の地山を掘削して鉄道用トンネル22の残りの躯体58を構築する工程とを含み、鉄道用トンネルの残りの躯体を構築する工程では、駅間部において、短い地中土留壁を用い、並設軌道を構築する工程と、駅部52において、長い地中土留壁44を用い、単線の新設軌道60とホーム62を並べて上下2段に構築する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下鉄道構築方法に関し、コ字状のシールド掘進機と地中土留壁を用いた地下鉄道構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
都市部において、踏切解消を目的とした連続立体化事業が推進されており、その大半は高架橋によるものであるが、事業期間の長期化や沿線住宅の日照阻害を回避する必要から地下化による整備が望まれることとなる。
【0003】
この鉄道の地下化は、工事桁方式による開削工法が主流であるが、軌電停止時の限られた時間での施工が主体となるため、相当の工事期間を要するという問題がある。
【0004】
これを解消するため、コスト増とはなるがシールド工法により施工することも行われており、そのための専用のシールド機(特許文献1参照)も開発されている。
【特許文献1】特開2002−147169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなシールド工法により鉄道を施工する場合、ホーム確保のため、駅部では拡幅断面となってしまい、地下占有幅が大きくなり、必要用地幅も大きく、駅間に設ける立坑も大きく、コストも増大するという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、駅部及び駅間部に関係なく、等幅でよく、必要用地をコンパクトにでき、駅間に設ける立坑を小さくでき、地下占有幅を狭くして、コスト的にも有利な地下鉄道構築方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明の地下鉄道構築方法は、所定間隔を置いて配設した一対の第1の掘進機間に第2の掘進機を連結したコ字状のシールド掘進機を用いてコ字状のトンネルを掘削する工程と、
前記コ字状のトンネルの両端部のトンネル坑内から下方に地中土留壁を打設構築する工程と、
前記コ字状のトンネル内にコンクリートを打設して鉄道用トンネルの頂版部を構築する工程と、
前記地中土留壁及び頂版部で囲まれた内部の地山を掘削して鉄道用トンネルの残りの躯体を構築する工程と、
を含み、
前記鉄道用トンネルの残りの躯体を構築する工程では、
駅間部において、短い地中土留壁を用い、並設軌道を構築する工程と、
駅部において、長い地中土留壁を用い、単軌道とホームを並べて上下2段に構築する工程とを含むことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、コ字状のシールド掘進機と、このシールド掘進機により形成されたコ字状のトンネル内より打設構築される地中土留壁とを用いて、駅間部では並設軌道を構築し、駅部では単軌道とホームを並べて上下2段に構築することにより、駅部及び駅間部に関係なく、等幅でよく、必要用地をコンパクトにでき、駅間に設ける立坑を小さくでき、地下占有幅を狭くして、コスト的にも有利なものとすることができる。
【0009】
また、頂版部を構築した後、地中土留壁及び頂版部で囲まれた内部の地山を掘削して鉄道用トンネルの残りの躯体を構築するため、周辺地盤への影響を小さくでき、地上に既存鉄道がある場合にも軌道変状を抑制することが可能となる。
【0010】
本発明においては、
地上の2つの駅の外側に2本の既存軌道を切り回して立坑を構築する工程と、
前記一方の立坑から他方の立坑に向けて前記コ字状のシールド掘進機を発進させて前記地上の既存鉄道下に前記鉄道用トンネルを構築する工程と、
前記鉄道用トンネルの両端部でトンネル内の軌道と地上の既存軌道とを連結する工程とを含むことを特徴とする。
【0011】
このような構成とすることにより、前記状態に加え、鉄道連続地下化を行う場合、2本の既存軌道を切り回して立坑を構築し、既存鉄道下に鉄道用トンネルを構築することで、既存鉄道と新設鉄道との接続が容易に行え、必要用地幅をコンパクトにでき、用地買収を最小限にすることができ、しかも、駅部、駅間部を非開削で施工できるため、工期を短縮することができ、対象区間を1台のコ字状のシールド掘進機で施工するため、コストを削減することができ、また、駅部を非開削で構築できるため、工事に伴う利用者の不便を最小限にでき、しかも、対象区間の両端部に立坑を2箇所配置するのみであるため、既設軌道からの切替を短期間に行うことができることとなる。
【0012】
また、地下占有幅を狭くできるため、地上跡地に建物を建築する際には、杭打ちが容易となり、跡地の有効利用も図りやすくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1〜図9は、本発明の一実施の形態にかかる地下鉄道構築方法を用いた鉄道連続地下化の施工を示す図である。
【0015】
図1〜図4は、鉄道連続地下化の施工工程を示す図である。
【0016】
図1は鉄道連続地下化の対象となっている既存の地上の鉄道の地下化区間を示すもので、この既設鉄道10の地下化区間12には、2つの駅13のホーム14と、2本の既存軌道16とが配設されている。
【0017】
この既存鉄道10を地下化するにあたり、図2に示すように、地上の2つの駅13の外側に2本の既存軌道16を切り回して2つの立坑18を構築する。
【0018】
次いで、図3に示すように、一方の立坑18内から他方の立坑18に向けて、図9に示すコ字状のシールド掘進機20を発進させて地上の既存鉄道10下に新設の鉄道用トンネル22を構築する。
【0019】
コ字状のシールド掘進機20は、例えば、図9(1)の正面図及び(2)の平面図に示すように、所定間隔を置いて配設した一対の第1の掘進機24と、この一対の第1の掘進機24を連結する弓形の第2の掘進機26とを有している。
【0020】
第1の掘進機24は、円形断面の本体部24aの前面にカッタービット付きの円形の面盤24bを有し、この面盤24bの回転によって、本体部24aの断面形状に沿って切羽を掘削可能とされている。
【0021】
本体部24a内には、面盤24bを回転させる駆動モータ28、シールドジャッキ30、セグメント組立用のエレクター32等が配設されている。
【0022】
第2の掘進機26は、弓形状に曲折した本体部26aの前面にカッター26bを有し、本体部26a内にはシールドジャッキ34、エレクター36等が配設されている。
【0023】
また、このコ字状のシールド掘進機20は、コピーカッター38及びオーバーカッターにより、シールド掘進機20の移動方向の地山を余掘りし、地盤反力を低減し、シールドジャッキ30、34を進行方向に対し回転方向へ偏心させることにより、直進力と共に、回転力を与えたり、シールド掘進機20内より適度に固結した高濃度塑性流動化材等を強制注入することにより、シールド掘進機20に上向き力を与えたり、地山を押し付けるジャッキを装備して、ジャッキによる押付け力の反力により、シールド掘進機20に上向き力を与えるなどして、姿勢制御を容易に行えるようになっている。
【0024】
鉄道トンネル22の構築に際しては、コ字状のシールド掘進機20を用いて図5〜図8に示すようなコ字状のトンネル40掘削する。
【0025】
次いで、コ字状のトンネル40の両端部のトンネル坑内から下方に地中土留壁42、44を打設構築する。
【0026】
具体的には、図5に示す既存軌道16とのすりつけ部46の一部を形成する立坑18付近47及び図6に示す駅間部48では、長さの短い地中土留壁42を用い、図7に示す駅間部48から駅部50にかけての部位50及び駅部52では長さの長い地中土留壁44を用いるようにしている。
【0027】
次に、コ字状のトンネル40内にコンクリート54を打設して鉄道トンネル22の頂版部56を構築する。
【0028】
次いで、地中土留壁42、44及び頂版部56で囲まれた内部の地山を掘削して鉄道トンネル22の残りの躯体58を構築する。
【0029】
この場合、図5に示すすりつけ部46の一部を形成する立坑18付近47及び図6に示す駅間部48では、短い地中土留壁42に対応して浅い掘削を行い、2本の並設した新設軌道60を構築するようにしている。
【0030】
また、図7に示す駅間部48から駅部50にかけての部位50では、長い地中土留壁44に対応して深い掘削を行い、2本の並設した新設軌道60の高さを徐々に変えて構築するようにしている。
【0031】
さらに、図8に示す駅部52では、長い地中土留壁44に対応して深い掘削を行い、鉄道トンネル22を上下2段に分け、各段にそれぞれ単線の新設軌道60とホーム62とを構築するようにしている。
【0032】
そして、図4及び図8に示すように、各駅部52に出入り口64を構築し、図4に示すすりつけ部46を開削工法により既存軌道16と接続可能に構築して、新設軌道60と既存軌道16とを接続することで、既設軌道16からの切替を短時間で行えるようにしている。
【0033】
このように、コ字状のシールド掘進機20と、このシールド掘進機20により形成されたコ字状のトンネル22内より打設構築される地中土留壁42、44とを用いて、駅間部48では並設した新設軌道60を構築し、駅部52では単線の新設軌道60とホーム62を並べて上下2段に構築することにより、駅部52及び駅間部48に関係なく、等幅でよく、必要用地をコンパクトにでき、駅間に設ける立坑18を小さくでき、地下占有幅を狭くして、コスト的にも有利なものとすることができる。
【0034】
また、頂版部56を構築した後、地中土留壁42、44及び頂版部56で囲まれた内部の地山を掘削して鉄道用トンネル22の残りの躯体58を構築するため、周辺地盤への影響を小さくでき、地上に既存鉄道10がある場合にも軌道変状を抑制することが可能となる。
【0035】
本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において、種々の形態に変形可能である。
【0036】
例えば、前記実施の形態では、地下鉄道構築方法を用いて鉄道連続地下化を行う場合について説明したが、この例に限定されず、既存鉄道と関わりなく地下鉄道を新設する場合にも適用することが可能である。
【0037】
また、コ字状のシールド掘進機は、第2の掘進機が弓形ではなく直線状であってもよく、第1の掘進機は円形ではなくボックス形状であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施の形態にかかる地下鉄道構築方法を用いて鉄道連続地下化を行う場合の従来鉄道の状態を示す平面図である。
【図2】図1の状態から軌道を切り回して立坑を構築する状態を示す平面図である。
【図3】(1)は、図2の状態からトンネルの施工を行う状態を示す平面図で、(2)は、その縦断面図である。
【図4】図3の状態から出入り口の施工を行う状態を示す平面図である。
【図5】図3における既存鉄道とのすりつけ部の一部を形成する立坑付近のトンネルの構築状態を示す断面図である。
【図6】図3における駅間部のトンネルの構築状態を示す断面図である。
【図7】図3における駅間部から駅部にかけてのトンネルの構築状態を示す断面図である。
【図8】図3における駅部のトンネルの構築状態を示す断面図である。
【図9】(1)はコ字状のシールド掘進機の正面図、(2)はその平面図である。
【符号の説明】
【0039】
10 既存鉄道
12 地下化区間
13 駅
16 既存軌道
18 立坑
20 コ字状のシールド掘進機
22 鉄道トンネル
24 第1の掘進機
26 第2の掘進機
40 コ字状のトンネル
42、44 地中土留壁
48 駅間部
52 駅部
54 コンクリート
56 頂版部
58 残りの躯体
60 新設軌道
62 出入り口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定間隔を置いて配設した一対の第1の掘進機間に第2の掘進機を連結したコ字状のシールド掘進機を用いてコ字状のトンネルを掘削する工程と、
前記コ字状のトンネルの両端部のトンネル坑内から下方に地中土留壁を打設構築する工程と、
前記コ字状のトンネル内にコンクリートを打設して鉄道用トンネルの頂版部を構築する工程と、
前記地中土留壁及び頂版部で囲まれた内部の地山を掘削して鉄道用トンネルの残りの躯体を構築する工程と、
を含み、
前記鉄道用トンネルの残りの躯体を構築する工程では、
駅間部において、短い地中土留壁を用い、並設軌道を構築する工程と、
駅部において、長い地中土留壁を用い、単軌道とホームを並べて上下2段に構築する工程と、
を含むことを特徴とする地下鉄道構築方法。
【請求項2】
請求項1において、
地上の2つの駅の外側に2本の既存軌道を切り回して立坑を構築する工程と、
前記一方の立坑から他方の立坑に向けて前記コ字状のシールド掘進機を発進させて前記地上の既存鉄道下に前記鉄道用トンネルを構築する工程と、
前記鉄道用トンネルの両端部でトンネル内の軌道と地上の既存軌道とを連結する工程と、
を含むことを特徴とする地下鉄道構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−284895(P2007−284895A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−110527(P2006−110527)
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(000166432)戸田建設株式会社 (328)
【Fターム(参考)】