説明

地中の含水量測定用貫入ロッド

【課題】貫入試験において、貫入抵抗と併せて、地中の含水量を測定するための貫入ロッドを提供する。
【解決手段】地中の含水量測定用貫入ロッドは、地中に貫入してその含水量を測定可能な電極を周面に備えるロッド3と、必要に応じて当該ロッド3に順次継ぎ足される延長用ロッド4とを備え、ロッド3および延長用ロッド4は、各連結部位にコネクタ部9,12,13を有し、これらを電気的に接続して電極の検出信号を伝送するように構成されている。そのため、貫入ロッドを回転させても導線2,14が捻れることがないので、回転貫入を要するスェーデン式サウンディング試験にも用いることが可能となる。そればかりか、延長用ロッド4の継ぎ足し作業が簡便になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貫入試験において、貫入抵抗と併せて、地中の含水量を測定するための貫入ロッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、貫入試験としては、標準貫入試験方法(JISA1219)、オランダ式二重管コーン貫入試験方法(JISA1220)、あるいはスェーデン式サウンディング試験方法(JISA1221)が知られている。これら貫入試験は、何れも貫入ロッドを地中に貫入させてその貫入抵抗から地盤の硬度を判定するものである。
【0003】
また、近年では、貫入試験に対する要望が、地盤硬度の判定に留まらず、地盤性状の判定にまで高まっている。そこで、特許文献1(特開2000−74724号公報)に示す地下水位計測装置がある。この地下水位計測装置は、先端に錐が取付けられた有孔管を有しており、当該有孔管には導線の先端に電極が取付けられた水位センサが挿入されている。また、有孔管の周囲には複数の円孔が穿設されており、当該有孔管を地中に貫入した際、円孔から水が流水し、有孔管内に貯留される。これを水位センサが検出することにより、地中の水位を測定するように構成されている。さらに、有孔管は順次継ぎ足して延長されるものであり、所望の深度における測定を可能に構成されている。この有孔管は標準貫入試験機に用いられ、貫入抵抗に加えて地中の水位も測定するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献1】日本工業規格A1219(標準貫入試験方法)
【非特許文献2】日本工業規格A1220(オランダ式二重管コーン貫入試験方法)
【非特許文献3】日本工業規格A1221(スェーデン式サウンディング試験方法)
【0005】
【特許文献1】特開2000−74724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記装置による試験範囲は、地中の貫入抵抗および水位の測定に留まり、地中の含水量を測定することはできない。また、含水層よりも下の層に、含水量の少ない層が存在する場合、構成上、これを検出することができない。このように、上記装置では、詳細な地中の状況を知ることができず、精密な地盤性状の判定を実現することができない。これでは、地盤沈下が危惧される土地を見逃す危険がある。さらに、上記装置では、スェーデン式サウンディング試験における回転貫入を試みた場合、導線が捻れるので、当該試験に用いることができない。また、有孔管の継ぎ足しの際には、水位センサの導線を計測器から取り外して延長用の有孔管を挿入して継ぎ足すか、あるいは水位センサを有孔管から抜き出して延長用の有孔管を継ぎ足す作業を要するため、作業効率が悪い。さらに、円孔に土砂が詰まる問題も発生するため、有孔管内に水が良好に流入せず、試験を正確に行うことができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の地中の含水量測定用貫入ロッドは、上記課題に鑑みて創成されたものであり、地中に貫入してその含水量を測定可能な電極が取付けられたロッドと、必要に応じて当該ロッドに順次継ぎ足される延長用ロッドとを備える地中の含水量測定用貫入ロッドであって、前記ロッドおよび延長用ロッドは、各連結部位にコネクタ部を有し、これらを電気的に接続して前記電極の検出信号を伝送するように構成されていることを特徴とする。
【0008】
なお、前記延長用ロッドは、外管と、この内管に挿入される内管とによる二重構造を成し、外管は前記ロッドあるいは次に継ぎ足される延長用ロッドの外管に螺合接続する一方、内管はロッドあるいは次に継ぎ足される延長用ロッドの内管にコネクタ部を結合させて電気的に接続して前記電極の検出信号を伝送するように構成されていることが望ましい。
【0009】
なお、最後尾の延長用ロッドのコネクタ部には、ロータリコネクタが接続されていることが望ましい。
【0010】
また、本発明の地中の含水量測定用貫入ロッドは、地中に貫入して、貫入抵抗および地中の含水量を試験データとして得る貫入試験に用いられ、地中に貫入するロッドと、その周面に取付けられて地中の含水量を測定可能な電極とを備えることを特徴とする。
【0011】
なお、前記電極は、ロッドの周面と同一もしくは同一面付近となるようにして取付けられていることが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の地中の含水量測定用貫入ロッドにおいては、ロッドおよび延長用ロッドは、各連結部位にコネクタ部を有し、これらを電気的に接続して前記電極の検出信号を伝送可能に構成されている。そのため、電極から計測器まで延びる導線を用いずとも電極の検出信号の伝送が可能となる。従って、貫入ロッドを回転させても導線が捻れることがないので、回転貫入を要するスェーデン式サウンディング試験にも用いることが可能となる。そればかりか、延長用ロッドの継ぎ足し作業が簡便になる。
【0013】
請求項2に記載の地中の含水量測定用貫入ロッドにおいては、延長用ロッドは、ロッドと螺合接続される外管と、ロッドとコネクタ部により電気的に接続される内管とから構成され、二重構造を成している。ところで、内管と外管とが一体の構成では、螺合接続により、外管と一体に内管が回転するため、コネクタ部同士に摺動摩擦が生じて劣化する。そこで、上記構成によれば、延長用ロッドの接続の際、外管と、内管とをそれぞれ別にしてロッドに接続するが可能となり、コネクタ部の連結時には摺動摩擦による劣化が生じない。
【0014】
請求項3に記載の地中の含水量測定用貫入ロッドにおいては、ロータリコネクタを介して最後尾の延長用ロッドから計測器に検出信号が伝送される。これにより、ロッドを回転貫入しても、当該ロータリコネクタより計測器側では回転が静止される。そのため、最後尾の延長用ロッドから計測器への検出信号の伝送にケーブルを用いても、当該ケーブルは捻れず、その損傷を防止することができる。
【0015】
請求項4に記載の地中の含水量測定用貫入ロッドにおいては、電極がロッドの周面に取付けられている。これにより、地中の深度毎の含水量を測定することができる。そのため、貫入抵抗と含水量とから地盤性状を高精度に判定することができる。しかも、地中では電極が土砂と確実に接触することになり、検出を良好に行うことができる。
【0016】
請求項5に記載の地中の含水量測定用貫入ロッドにおいては、電極はロッドの周面と同一もしくは同一面付近となるようにして取付けられている。ところで、電極がロッドの周面から突出する構成では、貫入抵抗の測定時に抵抗として作用し、正確な貫入抵抗の測定が妨げられる。そこで、上記構成によれば、ロッドの貫入時に電極は回転抵抗として作用せず、従って貫入抵抗を精度良く測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る地中の含水量測定用貫入ロッドの一部切欠断面図である。
【図2】本発明に係る地中の含水量測定用貫入ロッドの計測管を示す拡大断面図である。
【図3】本発明に係る地中の含水量測定用貫入ロッドの延長用ロッドを示す一部切欠拡大断面図である。
【図4】本発明に係る地中の含水量測定用貫入ロッドのロータリコネクタを示す一部切欠拡大断面図である。
【図5】本発明に係る地中の含水量測定用貫入ロッドの打撃ブロックを示す一部切欠拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1において、1は地中の含水量測定用貫入ロッド1であり、電気伝導度から地中の含水量を測定可能な電極2a,2b,2c,2dを周面に備えたロッド3と、必要に応じてこのロッド3に順次継ぎ足して連結される延長用ロッド4とから構成されている。また、このロッド3の先端にはスタッドボルト5を介してスクリューポイント6が取り付けらている。これにより、スェーデン式サウンディング試験機に取付けられてロッド3および延長用ロッド4と一体に地中へ回転貫入するように構成されている。なお、本発明の地中の含水量測定用貫入ロッド1を標準貫入試験機に用いる場合には、先端にはスクリューポイント6に代えて動的コーン(図示せず)が取付けられる。
【0019】
図2に示すように、前記ロッド3の周面は絶縁層7で被覆されている。そして、当該ロッド3には当該絶縁層7の上からリング状の4個の前記電極2’,2b,2c,2d(以下、これら4個の電極2’,2b,2c,2dを総称して電極2’という)が通されて取付けられている。また、ロッド3には絶縁カラー8が外装させてあり、電極2’の検出面が絶縁カラー8の周面と同一もしくは同一面付近となるようにして取付けられている。さらに、ロッド3には、その中空穴3aと直交しかつ当該中空穴3aに連通する横穴3bが穿設されている。これら中空穴3aおよび横穴3bには電極2’からそれぞれ延びる導線2が通され、詳細を後述する雌コネクタ部9へ電極2’の検出信号が伝送されるよう接続されている。
【0020】
また、前記ロッド3の後端には雄ねじ部3cが形成されており、前記延長用ロッド4と螺合接続するように構成されている。さらに、当該ロッド3の後端には雌コネクタ部9が取付けられており、ロッド3の中空穴3aに当該雌コネクタ部9の係合片9aを挿入して固定されている。
【0021】
図3に示すように、前記延長用ロッド4は、外管10と、この外管10に挿入される内管11とによる二重構造を成している。外管10には、その先端に前記ロッド3の雄ねじ部3cに螺合可能な雌ねじ部10aが形成されており、一方後端にはロッド3の雄ねじ部3cと形状を同じくする雄ねじ部10bが形成されている。また、内管11は、その先端に前記ロッド3の雌コネクタ部9に接続可能な雄コネクタ部12を有しており、一方後端にはロッド3に取付けられた雌コネクタ部9と形状を同じくする雌コネクタ部13を有している。そして、内管11の雄コネクタ部12と雌コネクタ部13とは、内管11内部に通された導線14で接続されており、雄コネクタ部12から雌コネクタ部13へ検出信号を伝送するように構成されている。
【0022】
また、雌コネクタ部9,13は、ロッド3の中空穴3aの内径および外管10の貫通穴10cの内径よりも大きな外径を成している。従って、外管10および内管11は全長を同じくするものであるが、内管11の挿入時には、雌コネクタ部13が外管10の後端から露出するように位置しており、つまり延長用ロッド4の後端は、前記ロッド3の後端と同様の構成である。ここで、外管10の中空穴10cにおいては、その下端を段付き状にして収納部10dが形成されており、内管11を外管10へ挿入した状態では、内管11の雄コネクタ部12は当該収納部10d内部に位置する。また、雌コネクタ部9,13の外径は、当該収納部10dの内径より小さく形成されている。従って、外管10と内管11とから成る延長用ロッド4の継ぎ足しにおいて、雌コネクタ部9,13に雄コネクタ部12を接続させると、これら雌コネクタ部9,13および雄コネクタ部12は収納部10d内部に位置する。
【0023】
また、前記延長用ロッド4の外管10の外周には長手方向に延びる長溝10eが形成されており、例えば特許4287704号公報に示される貫入試験機のロッドチャックに取付けることができる。
【0024】
図1および図4に示すように、前記延長用ロッド4の内管11の雌コネクタ部13にはロータリコネクタ15が接続されている。さらに、このロータリコネクタ15にはケーブル16が接続されている。ロータリコネクタ15は、回転側(延長用ロッド側)と固定側(ケーブル側)との間における検出信号の伝送を行う電気部品であり、前記導線2,14および各コネクタ部9,12,13を介して伝送される検出信号をケーブル16に伝送するように構成されている。一方ケーブル16は計測器(図示せず)に接続されてこれに当該検出信号を伝送するものである。そして、計測器が検出信号を受けて、各深度あるいは各層における地中の含水量および貫入抵抗を解析して地盤性状を判定するように構成されている。
【0025】
以下、本発明に係る地中の含水量測定用貫入ロッド1の使用方法を説明する。まず、ロッド3に延長用ロッド4を1本接続した状態の貫入ロッド1を、前述の方法で貫入試験機に装着するとともに、当該延長用ロッド4の雌コネクタ部13にロータリコネクタ15を接続する。そして、貫入試験機を作動して貫入ロッド1を所定の深度まで回転貫入する。このとき、ロッド3、延長用ロッド4の外管10および内管11は、一体に回転する。さらに深い位置まで貫入ロッド1を回転貫入させるには、延長用ロッド4を継ぎ足す。
【0026】
ここで、延長用ロッド4を継ぎ足す方法を図2に沿って説明する。なお、図2は、ロッド3と延長用ロッド4の接続を示す図であるが、ロッド3の後端は延長用ロッド4の後端と構成を同じくするものである。従って、便宜上、以下の説明においては、ロッド3の後端を延長用ロッド4の後端と仮定して、図2に沿って説明する。まず、ロータリコネクタ15を取り外してから、1本目の延長用ロッド4の外管10の雄ねじ部10bに、次の延長用ロッド4の外管10の雌ねじ部10aを螺合接続する。次に、当該外管10に内管11を挿入して、その雄コネクタ部12を1本目の延長用ロッドの内管の雌コネクタ部13に挿入して接続する。最後に、最後尾の延長用ロッド4の内管11の雌コネクタ部13にロータリコネクタ15を接続して、継ぎ足し作業は終了する。このように延長用ロッド4を順次継ぎ足すことにより、貫入ロッドは所望の深度まで回転貫入する。
【0027】
本発明の地中の含水量測定用貫入ロッド1においては、回転貫入中、先端が岩に接触すると、延長用ロッド4の外管10に応力が集中して折れてしまう場合がある。そこで、雌コネクタ部13の外径が内管11の貫通穴10cの内径よりも小さく形成されている。これにより、貫入ロッド1を引き上げるとき、外管10の後端と雌コネクタ部13が係合するため、破断部位よりも上方に連結されている内管11の全てを、地中に残すことなく確実に回収することができる。
【0028】
また、貫入試験においては、先端が岩に接触したとき、作業効率の観点から、貫入ロッド1の後端に打撃を加えて岩を粉砕し、試験を続行する場合がある。そこで、打撃を加える場合、図5に示すように、ロータリコネクタ15を取り外し、外管10の雄ねじ部10bには打撃用ブロック17が取付けられる。この打撃用ブロック17をハンマ(図示せず)で打撃することにより、岩を粉砕して試験を続行することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 地中の含水量測定用ロッド
2 導線
2’ 電極
2a 電極
2b 電極
2c 電極
2d 電極
3 ロッド
3a 中空穴
3b 横穴
3c 雄ねじ部
4 延長用ロッド
5 スタッドボルト
6 スクリューポイント
7 絶縁層
8 絶縁カラー
9 雌コネクタ部
10 外管
10a 雌ねじ部
10b 雄ねじ部
10c 貫通穴
10d 収納部
10e 長溝
11 内管
12 雄コネクタ部
13 雌コネクタ部
14 導線
15 ロータリコネクタ
16 ケーブル
17 打撃用ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に貫入してその含水量を測定可能な電極が取付けられたロッドと、必要に応じて当該ロッドに順次継ぎ足される延長用ロッドとを備える地中の含水量測定用貫入ロッドであって、
前記ロッドおよび延長用ロッドは、各連結部位にコネクタ部を有し、これらを電気的に接続して前記電極の検出信号を伝送するように構成されていることを特徴とする地中の含水量測定用貫入ロッド。
【請求項2】
前記延長用ロッドは、外管と、この内管に挿入される内管とによる二重構造を成し、外管は前記ロッドあるいは次に継ぎ足される延長用ロッドの外管に螺合接続する一方、内管はロッドあるいは次に継ぎ足される延長用ロッドの内管にコネクタ部を結合させて電気的に接続して前記電極の検出信号を伝送するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の地中の含水量測定用貫入ロッド。
【請求項3】
最後尾の延長用ロッドのコネクタ部には、ロータリコネクタが接続されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の地中の含水量測定用貫入ロッド。
【請求項4】
地中に貫入して、貫入抵抗および地中の含水量を試験データとして得る貫入試験に用いる地中の含水量測定用貫入ロッドであって、
地中に貫入するロッドと、その周面に取付けられて地中の含水量を測定可能な電極とを備えることを特徴とする地中の含水量測定用貫入ロッド。
【請求項5】
前記電極は、ロッドの周面と同一もしくは同一面付近となるようにして取付けられていることを特徴とする請求項4に記載の地中の含水量測定用貫入ロッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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