地中レーダ装置
【課題】計測結果に含まれる不要成分を抑制して計測結果のS/N比を向上することを目的とする。
【解決手段】地中からの反射波に基づく受信信号と波源11から発生する送信信号(参照信号)との相互相関処理を行う相関処理部31と、相関処理部31から発生するパルス圧縮波信号をディジタル信号に変換するA/Dコンバータ32と、A/Dコンバータ32からのディジタル信号を時間軸上でずらす時間軸補正処理を行って元のディジタル信号に対して位相のずれたパルス圧縮波信号パターンを少なくとも1つ以上生成する時間軸補正処理部33と、A/Dコンバータ32から出力される元のパルス圧縮波信号データ及び時間軸補正処理部33で生成された位相のずれたパルス圧縮波信号データを格納するメモリ34と、メモリ34に格納した信号データを積算する積算処理部35とを備える。
【解決手段】地中からの反射波に基づく受信信号と波源11から発生する送信信号(参照信号)との相互相関処理を行う相関処理部31と、相関処理部31から発生するパルス圧縮波信号をディジタル信号に変換するA/Dコンバータ32と、A/Dコンバータ32からのディジタル信号を時間軸上でずらす時間軸補正処理を行って元のディジタル信号に対して位相のずれたパルス圧縮波信号パターンを少なくとも1つ以上生成する時間軸補正処理部33と、A/Dコンバータ32から出力される元のパルス圧縮波信号データ及び時間軸補正処理部33で生成された位相のずれたパルス圧縮波信号データを格納するメモリ34と、メモリ34に格納した信号データを積算する積算処理部35とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中の埋設物を探知するための地中レーダ装置に関し、特に、計測結果に含まれる不要成分を抑制して、計測結果における所望信号と不要成分の比(S/N比)の向上を図るようにした地中レーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の地中レーダ装置としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。この地中レーダ装置は、地上に設置したレーダ装置の送信アンテナから地中に向かって電波を送出し、地中からの反射波をレーダ装置の受信アンテナで受信することにより、地中の埋設物を探知するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3039509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、地中に向かって送出した電波の一部は地中に透過するが、大部分は地表面で反射するため、地表面からの反射波の強い影響により、地中の埋設物からの反射波を検出することが困難となる。このため、従来では、地表面反射波の影響を低減するためにSTC(Sensitivity Time Control)処理を行っている。しかし、埋設物が深い位置にありその反射波が微弱な場合には、測定結果において、不要成分の影響により埋設物からの反射波が覆い隠され、深い位置の埋設物の探知精度が十分とは言えなかった。
【0005】
探知精度を向上するため、計測結果に含まれる不要成分を抑制して測定結果におけるS/N比(所望信号と不要成分の比)を向上させるとよい。地中レーダ装置の測定結果に含まれる不要成分としては、外部からの到来波、回路内で発生する熱雑音等に起因する非定常的な不要成分と、地表面や地中の小石や空洞等、本来探知の対象としない物体からの反射等に起因する定常的な不要成分とがある。前者の非定常的な不要成分は、一般的に測定毎に変化する成分であるため、複数回の測定で得られる受信信号を積算し平均化する平均化処理によって抑制可能である。一方、後者の定常的な不要成分は、同じ条件での測定の繰返しでは変化しない成分であり、前記平均化処理によって抑制することが難しいという問題がある。
【0006】
ここで、定常的な不要成分について詳述する。
地中レーダ装置の測定結果は、一般的に、波形の中で主体となるメインローブとこのメインローブの両側に付随するサイドローブ(若しくはリンギング)からなるパルス状の波形として捉えられる。このパルス状波形におけるサイドローブ部分が、計測結果に含まれる定常的な不要成分である。例えば、地表面からの反射波、地中の小石や空洞からの反射波及び探知対象の埋設物からの反射波がそれぞれ時間差をもって受信された場合を考える。この計測結果は、図21に示すように3つのパルス状の波形が重畳されたものが現れる。この場合、図示のように、一般的に地中からの反射波の振幅に比べて地表面からの反射波の振幅は極めて大きい。このため、探知対象の埋設物が深くその反射波が微弱な場合には、地表面からの反射波のサイドローブ部分によって埋設物からの反射波のメインローブ部分が埋もれてしまい探知精度が大きく劣化することになる。このサイドローブ部分の波形は、送信信号の特性、信号伝搬経路の特性、受信信号からの計測結果への処理方法に拠るものであり、同じ条件での測定の繰返しでは変化しない。このため、定常的な不要成分としてのサイドローブ部分は、前述の平均化処理によって抑制することが難しい。
【0007】
本発明は上記問題点に着目してなされたもので、測定結果に含まれる定常的な不要成分を効果的に抑制して計測結果における所望信号と不要成分の比(S/N比)の向上を図るようにした地中レーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため、本発明では、電磁波送信部から地中に向けて電磁波を送出し、電磁波受信部で前記電磁波に基づく反射波を受信し、前記電磁波受信部の受信信号に基づいて地中に埋設された埋設物を探知する地中レーダ装置において、前記電磁波受信部の受信信号に基づいて得られたパルス状信号を、その信号位相及び信号波形のサイドローブ形状のどちらか一方を異ならせて複数生成する信号生成部と、該信号生成部で生成された複数のパルス状信号を積算する積算処理部と、を備えて構成したことを特徴とする。
【0009】
かかる構成では、電磁波送信部から地中に向けて電磁波を送出し、電磁波受信部で前記電磁波に基づく反射波を受信する。信号生成部は、電磁波受信部からの受信信号に基づいて得られたパルス状信号を、その信号位相及び信号波形のサイドローブ形状のどちらか一方を異ならせて複数生成する。積算処理部は、信号生成部で生成された複数のパルス状信号を積算処理する。これにより、積算処理部の積算処理で得られるパルス状信号の波形における不要成分であるサイドローブ部分の振幅が抑制されたパルス状信号が得られ、計測結果のS/N比が向上するようになる。
【0010】
信号生成部が信号位相を異ならせる構成では、請求項2のように、前記信号生成部は、前記電磁波受信部の受信信号から得られた前記パルス状信号に基づいて当該パルス状信号と位相をずらした少なくとも1つのパルス状信号パターンを生成し、前記積算処理部は、前記電磁波受信部の受信信号から得られたパルス状信号と前記位相をずらしたパルス状信号とを積算処理する構成とする。
【0011】
信号生成部が信号波形のサイドローブ形状を異ならせる構成では、請求項3のように、前記信号生成部は、前記電磁波送信部から複数回送出した電磁波に基づいて前記電磁波受信部で受信される複数の受信信号に基づいて、前記サイドローブ形状の異なる複数のパルス状信号を生成する構成であり、前記積算処理部は、前記信号生成部で生成されたサイドローブ形状の異なる複数のパルス状信号を積算する構成とする。
【0012】
前記パルス状信号は、請求項4のように、前記電磁波送信部の電磁波送信信号と同期する相互相関処理用の参照信号と前記電磁波受信部の前記受信信号との相互相関処理を行って得られるパルス圧縮波信号とするとよい。
【0013】
また、請求項5のように、前記電磁波送信部から送出されたパルス状波形の信号に基づく反射波を受信した前記電磁波受信部から出力されるパルス状受信信号としてもよい。
【0014】
請求項2の構成において、パルス状信号が請求項4のようにパルス圧縮波信号である場合、前記信号生成部は、具体的には、請求項6のように、前記参照信号と前記受信信号との相互相関処理を行う相関処理部と、該相互相関処理から得られたパルス圧縮波信号をディジタル信号に変換するA/D変換部と、該A/D変換部からのディジタル信号を時間軸上でずらす時間軸補正処理を行って前記位相をずらしたパルス圧縮波信号パターンを生成する時間軸補正処理部と、前記A/D変換部から出力されるパルス圧縮波信号データ及び前記時間軸補正処理部で生成された位相をずらしたパルス圧縮波信号データを格納する信号記憶部と、を備え、前記積算処理部は、前記信号記憶部に格納した信号データを積算する構成とするとよい。
【0015】
また、請求項2の構成において、パルス状信号が請求項5のようにパルス状受信信号である場合、前記信号生成部は、具体的には、請求項7のように、前記電磁波受信部から得られたパルス状受信信号をディジタル信号に変換するA/D変換部と、該A/D変換部からのディジタル信号を時間軸上でずらす時間軸補正処理を行って前記位相をずらしたパルス状受信信号パターンを生成する時間軸補正処理部と、前記A/D変換部から出力されるパルス状受信信号データ及び前記時間軸補正処理部で生成された位相をずらしたパルス状受信信号データを格納する信号記憶部と、を備え、前記積算処理部は、前記信号記憶部に格納した信号データを積算する構成とするとよい。
【0016】
請求項3の構成において、パルス状信号が請求項4のようにパルス圧縮波信号である場合、請求項8のように、前記信号生成部で、相関処理部の相互相関処理で得られたサイドローブ形状の異なる複数のパルス圧縮波信号をディジタル信号に変換し、各パルス圧縮波信号の前記ディジタル信号データを信号記憶部に格納し、前記積算処理部で、前記信号記憶部に格納した信号データを積算する構成とするとよい。
【0017】
また、請求項3の構成において、パルス状信号が請求項5のようにパルス状受信信号である場合、請求項9のように、前記信号生成部で、前記電磁波受信部から出力されるサイドローブ形状の異なる複数のパルス状受信信号をディジタル信号に変換し、各パルス状受信信号の前記ディジタル信号データを信号記憶部に格納し、前記積算処理部で、前記信号記憶部に格納した信号データを積算する構成とするとよい。
【0018】
請求項3の構成において、パルス状信号が請求項4のようにパルス圧縮波信号である場合、請求項10のように、前記信号生成部は、前記電磁波送信部の送信アンテナ位置と前記電磁波受信部の受信アンテナ位置をそれぞれ可変制御し、異なる送受信アンテナ配置毎に電磁波を送出させ、電磁波送出毎に得られる各受信信号についてそれぞれ相互相関処理を行って前記複数のパルス圧縮波信号を生成する構成とするとよい。
【0019】
また、請求項3の構成において、パルス状信号が請求項5のようにパルス状受信信号である場合、請求項11のように、前記電磁波送信部の送信アンテナ位置と前記電磁波受信部の受信アンテナ位置をそれぞれ可変制御し、異なる送受信アンテナ配置毎に電磁波を送出させ、電磁波送出毎に前記電磁波受信部からパルス状受信信号を出力する構成とするとよい。
【0020】
また、請求項3の構成において、パルス状信号が請求項4のようにパルス圧縮波信号である場合、請求項12のように、前記電磁波送信部の前記電磁波送信信号、前記電磁波受信部の受信信号及び前記参照信号の少なくとも1つの信号の周波数特性を可変制御し、前記周波数特性を可変する毎に電磁波信号を送出させ、電磁波信号送出毎に得られる各受信信号について前記信号生成部でそれぞれ相互相関処理を行って前記複数のパルス圧縮波信号を生成する構成としてもよい。
【0021】
また、請求項3の構成において、パルス状信号が請求項5のようにパルス状受信信号である場合、請求項13のように、前記電磁波送信部の前記電磁波送信信号及び前記電磁波受信部の受信信号の少なくとも1つの信号の周波数特性を可変制御し、前記周波数特性を可変する毎に電磁波を送出させ、電磁波送出毎に前記電磁波受信部からパルス状受信信号を出力する構成としてもよい。
【0022】
請求項12の構成において、請求項14のように、前記電磁波送信部の電磁波送信信号と前記参照信号の周波数特性を可変制御する構成としてもよく、また、請求項15のように、前記参照信号の周波数特性を可変制御する構成としてもよい。
【0023】
請求項12又は13の構成において、請求項16のように、前記電磁波送信信号の周波数特性を可変制御する構成としてもよく、また、請求項17のように、前記電磁波受信部の受信信号の周波数特性を可変制御する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の地中レーダ装置によれば、送信した電磁波の地中からの反射波に基づく受信信号から得られたパルス状信号のサイドローブレベルを抑制できる。これにより、地表面の反射に代表される大きな反射波に起因する定常的な不要成分が抑制され、且つ、非定常的な不要成分も低減されることで、計測結果のS/N比を向上できる。従って、地中の埋設物からの反射波を精度よく検出できるようになり、地中レーダの埋設物探査精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る地中レーダ装置の第1実施形態を示す構成図
【図2】相関処理により得られるパルス圧縮波信号の例を示す図
【図3】地中に埋設物がある場合の受信信号の一例を示す図
【図4】元のパルス圧縮波と位相をずらしたパルス圧縮波を重ね合わせた様子を示す図
【図5】図4の各パルス圧縮波を積算したときのパルス圧縮波波形を示す図
【図6】本発明に係る地中レーダ装置の第2実施形態を示す構成図
【図7】サイドローブ形状の異なるパルス圧縮波を重ね合わせた様子を示す図
【図8】図7の各パルス圧縮波を積算したときのパルス圧縮波波形を示す図
【図9】本発明に係る地中レーダ装置の第3実施形態を示す構成図
【図10】波源選択部の構成例を示す図
【図11】波源選択部の別の構成例を示す図
【図12】フィルタ選択部の構成例を示す図
【図13】フィルタ選択部の別の構成例を示す図
【図14】送信信号の周波数特性のみを可変制御する例の要部構成図
【図15】送信信号の周波数特性のみを可変制御する例の別の要部構成図
【図16】参照信号の周波数特性のみを可変制御する例の要部構成図
【図17】参照信号の周波数特性のみを可変制御する例の別の要部構成図
【図18】受信信号の周波数特性のみを可変制御する例の要部構成図
【図19】本発明に係る地中レーダ装置の別の実施形態を示す構成図
【図20】本発明に係る地中レーダ装置の更に実施形態を示す構成図
【図21】地中レーダ装置の計測結果における定常的な不要成分の説明図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る地中レーダ装置の第1実施形態を示す構成図である。
図1において、本実施形態の地中レーダ装置1は、受信信号から得られたパルス状信号に基づいてこのパルス状信号と位相をずらしたパルス状信号パターンを生成し、受信信号から得られたパルス状信号と位相をずらしたパルス状信号とを積算処理して不要成分を抑制して、計測結果のS/N比を向上するようにしたもので、パルス状信号として受信信号からパルス圧縮波を得る構成としたものであり、レーダ本体2と、該レーダ本体2に取付けた車輪部3とを備え、探査エリア内でレーダ本体2を移動できる構成としている。尚、レーダ本体2に必ずしも車輪部3を設けなくともよい。この場合は、例えば車輪を有する別体の移動手段にレーダ本体2を載置してレーダ本体2を移動させるようにすればよい。
【0027】
前記レーダ本体2は、電磁波送信部4と、電磁波受信部5と、信号処理部6と、画像処理部7と、表示部8とを備えて構成される。
【0028】
前記電磁波送信部4は、地中に向けて例えばチャープ波やFM−CW波等の電磁波を送出するもので、電磁波送信信号を発生する波源部11と、該波源部11からの送信信号をアンプ13と後述する信号処理部6内の相関処理部31に分配する分配部12と、該分配部12からの送信信号を増幅する前記アンプ13と、該アンプ13で増幅した送信信号を地中に向けて送出する送信アンテナ14とを備える。
【0029】
前記電磁波受信部5は、地中から反射された電磁波を受信して受信信号を出力するもので、地中からの反射波を受信する受信アンテナ21と、該受信アンテナ21からの受信信号を増幅するアンプ22とを備える。
【0030】
前記信号処理部6は、電磁波受信部5からの受信信号と前述した分配部12から送信信号と同期する相互相関処理用の参照信号として分配された送信信号との相互相関処理を行ってパルス圧縮波を生成し、このパルス圧縮波についてノイズ低減処理を行うもので、相関処理部31と、A/Dコンバータ32と、時間軸補正処理部33と、メモリ34と、積算処理部35と、を備える。
【0031】
前記相関処理部31は、電磁波受信部5からの受信信号と電磁波送信部4の分配部12からの前記参照信号との相互相関処理を行って図2に示すような形状のパルス圧縮波を生成する。
【0032】
前記A/Dコンバータ32は、相関処理部31から出力されるアナログのパルス圧縮波を所定のサンプリング周期でサンプリングしてディジタル信号に変換する。
【0033】
前記時間軸補正処理部33は、後述するメモリ34に格納されるA/Dコンバータ32からのディジタル信号データを基に、当該ディジタル信号データを時間軸上でずらしたディジタル信号を少なくとも1つ以上作成し、A/Dコンバータ32から出力されるパルス圧縮波に対して位相をずらしたパルス圧縮波信号パターンを生成する。
【0034】
前記メモリ34は、A/Dコンバータ32からのディジタル信号データと時間軸補正処理部33で生成した信号パターンデータをそれぞれ格納する。本実施形態では、相関処理部31、A/Dコンバータ32、時間軸補正処理部33及びメモリ34で、信号生成部が構成される。
【0035】
前記積算処理部35は、メモリ34内に格納された元のディジタル信号と時間軸補正処理部33で生成した位相をずらしたディジタル信号とを積算し、積算結果を平均化して画像処理用データを生成して画像処理部7に出力する。
【0036】
前記画像処理部7は、信号処理部6からの画像処理用データに基づいて表示部8で表示する表示データを生成する。前記表示部8は、画像処理部7からの表示データを表示する。
【0037】
次に、本実施形態の地中レーダ装置1による埋設物の探査動作について説明する。
波源部11から、例えばチャープ波等の電磁波送信信号を発生し、分配部12を介してアンプ13で増幅し、送信アンテナ14から真下の地中に向けて電磁波を送出する。また、電磁波の送出と共にレーダ本体2を移動させる。電磁波は、送信アンテナ14を中心として扇状に広がって地中を伝播して行く。
【0038】
受信アンテナ21で、送信アンテナ14から送出された電磁波に基づく反射波を受信し、その受信信号を信号処理部6の相関処理部31に送出する。例えば、図1に示すように地中に埋設物9があれば、図3のような受信信号が得られる。図3の受信信号で、受信初期の高レベル部分は地表面からの反射波に基づくもので、その後の高レベル部分は埋設物9からの反射波に基づくものである。
【0039】
相関処理部31では、電磁波受信部5から受信信号が入力すると、電磁波送信部4の分配部12で分配された前記参照信号を用いて、この参照信号と前記受信信号との相互相関処理を行って、図2に示すようなパルス圧縮波を生成する。このパルス圧縮波は、主に埋設物9からの反射部分を示すメインローブの両側に、送信信号の特性、信号伝搬経路の特性等に拠るサイドローブが付随する。
【0040】
相関処理部31からのパルス圧縮波信号は、A/Dコンバータ32でディジタル信号に変換されてメモリ34に格納される。そして、この格納されたディジタル信号データを基に、時間軸補正処理部33で、ディジタル信号データを時間軸上でずらす補正処理を行って、図4に示すように、元のディジタル信号(図中、実線で示す)に対して位相のずれた補正ディジタル信号(図中、破線と一点鎖線で示す)を1個以上生成する。尚、本実施形態では、図4に示すように補正ディジタル信号を2個生成した例を示した。生成した補正ディジタル信号データは、メモリ34に格納する。
【0041】
積算処理部35では、メモリ34に格納された元のディジタル信号と補正ディジタル信号を加算し平均化する。この積算処理部35の処理によって、図5に示すような形状のパルス圧縮波信号が生成される。このパルス圧縮波信号は、元のパルス圧縮波信号と比較してメインローブの先鋭さは無くなるが、サイドローブ部分の振幅が抑制されており、パルス圧縮波信号のS/N比が向上している。尚、積算処理部35において、加算後の平均化処理は必ずしも行わなくてもよい。
【0042】
そして、画像処理部7は、積算処理部35からの図5に示す信号に基づいて表示部8で表示する表示データを生成し、表示部8で表示する。
【0043】
かかる第1実施形態の地中レーダ装置1によれば、受信信号から生成したパルス圧縮波信号に対してサイドローブの位相をずらすように時間軸上でシフトしたパルス圧縮波信号パターンをソフト的に生成し、元のパルス圧縮波信号と生成した位相のずれたパルス圧縮波信号を積算することにより、パルス圧縮波信号のサイドローブを抑制した。これにより、外部からの到来波、回路内で発生する熱雑音等に起因する非定常的な不要成分も含めて、地表面からの反射波や地中の小石や空洞等、本来探知の対象としない物体からの反射波に起因する定常的な不要成分も抑制でき、画像処理部7に送出する計測結果におけるS/N比を向上できる。従って、表示部8で表示される画像において、従来、存在する不要成分に基づく縞状の模様が低減され、埋設物9からの反射波を示す映像部分の視認性を向上できるようになり、地中の埋設物からの反射波を精度よく検出でき、地中レーダの埋設物探査精度を向上できる。
【0044】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図6は、本発明の第2実施形態を示す構成図である。尚、第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
図6において、第2実施形態の地中レーダ装置40は、パルス圧縮波の信号波形におけるサイドローブ形状を異ならせるように複数回測定を行って、サイドローブ形状が互いに異なる複数のパルス圧縮波信号を生成し、これら複数のパルス圧縮波信号を積算処理して非定常的及び定常的な各不要成分を抑制して、計測結果のS/N比を向上するようにしたものである。
【0045】
具体的には、本実施形態の地中レーダ装置40は、送信アンテナ14と受信アンテナ21の位置を可変制御可能なアンテナ位置可変機構41を備える構成である。尚、その他の構成は、図1の第1実施形態の時間軸補正処理部33がないことを除いて第1実施形態と同じ構成である。本実施形態では、前記相関処理部31、A/Dコンバータ32、メモリ34及びアンテナ位置可変機構41で、信号生成部が構成される。
【0046】
次に、第2実施形態の埋設物探査動作をについて説明する。
波源部11からチャープ等の送信信号を発生してから、反射波の受信信号に基づいたパルス圧縮波信号をディジタル信号に変換してメモリ34に格納するまでの動作は第1実施形態と同様である。本実施形態では、上記の動作を、アンテナ位置可変機構41により送信アンテナ14と受信アンテナ21の位置を変えて複数回繰返す。送信アンテナ14と受信アンテナ21の位置を可変することにより、送受信信号の周波数に対するアンテナ感度等が変化し、信号波形、特にそのサイドローブ形状の異なるパルス圧縮波信号が生成される。
【0047】
従って、メモリ34には、図7に示すような測定回数に対応する数(図では実線、破線及び一点鎖線で示す3つの例を示す)のサイドローブ形状の異なるパルス圧縮波信号のディジタル信号データが格納される。積算処理部35で、メモリ34に格納された全てのパルス圧縮波信号データを加算し、平均化することにより、図8に示すようなサイドローブの振幅が抑制されたパルス圧縮波信号が生成される。尚、測定回数は、本実施形態の3回に限らず、2回や4回以上でもよいことは言うまでもない。
【0048】
かかる第2実施形態の地中レーダ装置40によれば、送信アンテナ14と受信アンテナ21の位置を可変して複数回測定を行うことにより、サイドローブ形状の異なるパルス圧縮波信号を複数生成し、全てのパルス圧縮波信号を加算することにより、パルス圧縮波信号のサイドローブを抑制するようにした。これにより、第1実施形態と同様に、外部からの到来波、回路内で発生する熱雑音等に起因する非定常的な不要成分も含めて、地表面からの反射波や地中の小石や空洞等、本来探知の対象としない物体からの反射波に起因する定常的な不要成分も抑制でき、画像処理部7に送出する計測結果におけるS/N比を向上できる。
【0049】
尚、送信アンテナ14と受信アンテナ21の位置の変化は、送受信アンテナ14,21の間隔を変えるようにしてもよく、送信号アンテナ14及び受信アンテナ21の地表面に対する間隔を変えるようにしてもよい。
【0050】
次に、第2実施形態と同様に、パルス圧縮波の信号波形におけるサイドローブ形状を異ならせるように複数回測定を行って、サイドローブ形状が互いに異なる複数のパルス圧縮波信号を生成し、これら複数のパルス圧縮波信号を積算処理して定常的な不要成分を抑制して、計測結果のS/N比を向上する別の実施形態について以下に説明する。
【0051】
図9は、本発明の第3実施形態を示す構成図である。尚、第2実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
図9において、第3実施形態の地中レーダ装置50は、予め設定した送信信号のみ発生する第2実施形態の波源部11に代えて、例えば、ガウシアン波やインパルス波、チャープ波、FM―CW波等のように広域の周波数成分を持った異なる送信信号を選択的に発生可能な波源選択部51と、該波源選択部51から発生する送信信号の特定の周波数域を減衰するフィルタ特性を選択的に可変可能なフィルタ選択部52とからなる波源及びフィルタ選択部53を設ける。また、アンテナ位置可変機構41はなく、送信アンテナ14及び受信アンテナ21は、第1実施形態と同様に固定状態である。その他の構成は、第2実施形態と同じである。本実施形態では、相関処理部31、A/Dコンバータ32、メモリ34、及び、波源及びフィルタ選択部53で、信号生成部が構成される。
【0052】
前記波源選択部51は、図10に示すように、例えば、ガウシアン波、インパルス波、チャープ波、FM―CW波等をそれぞれ発生するn個の波源1〜nからなる波源群51Aと、該波源群51Aの各波源1〜nを選択的に切替え可能なスイッチング回路51Bと、該スイッチング回路51Bの切替え動作を制御するコントローラ51Cとを備えて構成される。尚、波源選択部51の構成は、図11に示すように、波源を1つにしてコントローラからのパラメータ変更指令により変調器を用いて波源のパラメータを可変制御して波源からの送信波を選択的に可変するような構成でもよい。
【0053】
前記フィルタ選択部52の構成は、図12に示すように、減衰する周波数域を互いにずらしたn個のフィルタ1〜nにフィルタなしの経路も含めたフィルタ群52Aと、該フィルタ群52Aの各フィルタ1〜nを選択的に切替え可能なスイッチング回路52Bと、該スイッチング回路52Bの切替え動作を制御するコントローラ52Cとを備えて構成される。尚、フィルタ選択部52の構成は、図13に示すように、1つのパッケージ化されたフィルタを用い、このフィルタの構成素子の定数や配置等をコントローラにより可変制御してフィルタ特性を選択的に可変するような構成でもよい。
【0054】
次に、第3実施形態の地中レーダ装置50の動作を説明する。
第3実施形態の地中レーダ装置50は、電磁波送信信号と相互相関用の参照信号の両方の周波数特性を可変制御して、サイドローブ形状が互いに異なる複数のパルス圧縮波信号を生成する構成である。
【0055】
具体的には、波源選択部51のn個の波源1〜nの中から1つを選択して送信信号を発生させる。また、フィルタ選択部52のフィルタを含まない経路も含めてフィルタ1〜nを介装した経路の中から1つの経路を選択する。これにより、波源選択部51から発生した送信信号は、フィルタ選択部52の選択された経路を介して分配部12に入力する。その後は、第2実施形態と同様にして、送信アンテナ14から送信される送信波に基づいた反射波を受信アンテナで受信し、分配部12からの参照波と受信信号との相互相関処理により得られるパルス圧縮波信号をディジタル信号に変換してメモリ34に格納する。上記の測定動作を、波源選択部51とフィルタ選択部52で波源とフィルタを切替える毎に繰返し実行する。
【0056】
このようにして、送信信号と参照信号の両方の周波数特性を可変制御して、サイドローブ形状が互いに異なる複数のパルス圧縮波信号のディジタル信号データをメモリ34に格納する。そして、メモリ34に格納した全てのパルス圧縮波信号を加算すれば、パルス圧縮波信号のサイドローブが抑制され、前述した不要成分の少ないパルス圧縮波を生成でき、計測結果のS/N比を向上できる。
【0057】
尚、波源及びフィルタ選択部53の構成は、分配部12に送信する送信信号の周波数特性を可変可能な構成であればよく、図9の構成に限定されない。例えば、図9の波源選択部51のみの構成でもよく、また、1つの波源と図9のフィルタ選択部52とで構成してもよい。前者の構成によれば、波源を選択的に切替えれば送信信号の周波数特性が可変でき、後者の構成によれば、フィルタ特性を選択的に切替えれば送信信号の周波数特性が可変できる。
【0058】
上記第3実施形態では、サイドローブ形状が互いに異なる複数のパルス圧縮波信号を生成するために、電磁波送信信号と参照信号の両方の周波数特性を可変制御する構成としたが、電磁波送信信号のみ、参照信号のみそれぞれ周波数特性を可変制御する構成でもよい。
【0059】
図14及び図15に、電磁波送信信号のみ周波数特性を可変制御する場合の要部構成例を示す。尚、上述の各実施形態の構成要素と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
図14では、電磁波送信部4に、図9に示す第3実施形態の波源及びフィルタ選択部53からの送信信号を、分配部12を省略して直接アンプ13に供給する一方、同期信号発生部61と、特定の参照信号用の波源部11を設ける構成である。本実施形態も、相関処理部31、A/Dコンバータ32、メモリ34、及び、波源及びフィルタ選択部53で、信号生成部が構成される。
【0060】
図14の構成によれば、同期信号発生部61の同期信号により、波源及びフィルタ選択部53と波源部11から送信信号が互いに同期して電磁波送信信号と相互相関処理用の参照信号をそれぞれ発生する。電磁波送信信号側は、波源及びフィルタ選択部53により測定毎に送信信号の周波数特性を可変とする。これにより、送信信号の周波数特性だけを可変して、サイドローブ形状が互いに異なる複数のパルス圧縮波信号を生成することができる。
【0061】
図15では、図9の地中レーダ装置50において、電磁波送信部4に、波源及びフィルタ選択部53に代えて第1実施形態の波源部11を設け、更に、分配部12とアンプ13との間にフィルタ選択部52を設ける構成である。本実施形態は、相関処理部31、A/Dコンバータ32、メモリ34及びフィルタ選択部52で、信号生成部が構成される。
【0062】
図15の構成も図14の場合と同様で、分配部12からの送信信号の周波数特性だけを測定毎にフィルタ選択部52により可変することで、サイドローブ形状が互いに異なる複数のパルス圧縮波信号を生成することができる。
【0063】
図16及び図17に、参照信号のみ周波数特性を可変制御する場合の要部構成例を示す。尚、上述の各実施形態の構成要素と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
図16では、図14の波源及びフィルタ選択部53と波源部11とを置き換えた構成である。本実施形態は、相関処理部31、A/Dコンバータ32、メモリ34、及び、波源及びフィルタ選択部53で、信号生成部が構成される。
【0064】
図16の構成によれば、同期信号発生部61の同期信号により、波源及びフィルタ選択部53と波源部11から送信信号が互いに同期して電磁波送信信号と相互相関処理用の参照信号をそれぞれ発生する。参照信号側は、波源及びフィルタ選択部53により測定毎に参照信号の周波数特性を可変とする。これにより、参照信号の周波数特性だけを可変して、サイドローブ形状が互いに異なる複数のパルス圧縮波信号を生成することができる。
【0065】
図17では、図15のフィルタ選択部52を、分配部12とアンプ13との間ではなく、分配部12と相関処理部31との間に設ける構成である。本実施形態は、相関処理部31、A/Dコンバータ32、メモリ34及びフィルタ選択部52で、信号生成部が構成される。
【0066】
図17の構成も図16の場合と同様で、分配部12からの参照信号の周波数特性だけを測定毎にフィルタ選択部52により可変することで、サイドローブ形状が互いに異なる複数のパルス圧縮波信号を生成することができる。
【0067】
また、サイドローブ形状が互いに異なる複数のパルス圧縮波信号を生成するために、受信信号のみ周波数特性を可変制御する構成としてもよい。
【0068】
図18に、受信信号のみ周波数特性を可変制御する場合の要部構成例を示す。尚、上述の各実施形態の構成要素と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
図18では、図17のフィルタ選択部52を、電磁波送信部4ではなく、電磁波受信部5のアンプ22の後段に配置する構成である。本実施形態も、相関処理部31、A/Dコンバータ32、メモリ34及びフィルタ選択部53で、信号生成部が構成される。
【0069】
図18の構成によれば、電磁波受信部5で受信した反射波に基づいてアンプ22から出力される受信信号を、測定毎にフィルタ選択部52により可変することにより、受信信号の周波数特性だけを可変して、サイドローブ形状が互いに異なる複数のパルス圧縮波信号を生成することができる。
【0070】
次に、電磁波受信部から出力される受信信号をパルス状信号となるよう構成した本発明に係る地中レーダ装置の実施形態について説明する。
図19は、電磁波受信部から出力される受信信号がパルス状信号である本発明の地中レーダ装置の実施形態を示す構成図である。尚、第1実施形態と同一要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0071】
図19において、本実施形態の地中レーダ装置60は、電磁波送信部4からパルス状波形の信号を送信することで、電磁波受信部5から出力される受信信号がパルス状信号となる構成のものにおいて、パルス状受信信号から当該受信信号と位相をずらしたパルス状信号パターンを生成し、受信部から出力されるパルス状受信信号と位相をずらしたパルス状信号とを積算処理して不要成分を抑制するようにしたものである。
この地中レーダ装置60は、図1に示す第1実施形態の分配部12及び相関処理部31がなく、波源部11からパルス状波形の送信信号を送信すること以外は、第1実施形態と同じ構成である。
【0072】
次に、本実施形態の地中レーダ装置60による埋設物の探査動作について説明する。
波源部11から、パルス状波形の送信信号を発生し、アンプ13で増幅し、送信アンテナ14から真下の地中に向けて電磁波を送出する。受信アンテナ21は、送信アンテナ14から送出されたパルス状波形の送信信号に基づくパルス状波形の反射波を受信し、パルス状の受信信号を出力し、このパルス状受信信号は、信号処理部6のA/Dコンバータ32でディジタル信号に変換されてメモリ34に格納される。その後は、第1実施形態と同様にして、ディジタル信号データを基に、時間軸補正処理部33で元のディジタル信号に対して位相のずれた補正ディジタル信号を生成してメモリ34に格納し、積算処理部35で、メモリ34に格納された元のディジタル信号と補正ディジタル信号を加算し平均化処理する。これにより、第1実施形態と同じように、図5に示すようなパルス状受信信号が得られるので、第1実施形態と同様、外部からの到来波、回路内で発生する熱雑音等に起因する非定常的な不要成分も含めて、地表面からの反射波や地中の小石や空洞等、本来探知の対象としない物体からの反射波に起因する定常的な不要成分も抑制でき、画像処理部7に送出する計測結果におけるS/N比を向上でき、地中の埋設物からの反射波を精度よく検出でき、地中レーダの埋設物探査精度を向上できる。
【0073】
図20には、電磁波受信部5からパルス状受信信号を得る構成のものにおいて、パルス状受信信号におけるサイドローブ形状を異ならせるように複数回測定を行って、サイドローブ形状が互いに異なる複数のパルス状受信信号を得て、これら複数のパルス状受信信号を積算処理するようにした地中レーダ装置の実施形態の構成例を示す。
【0074】
図20において、本実施形態の地中レーダ装置70は、図6に示す第2実施形態の分配部12及び相関処理部31がなく、波源部11からパルス状波形の送信信号を送信すること以外は、第2実施形態と同じ構成である。尚、第2実施形態と同一要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0075】
次に、本実施形態の地中レーダ装置70の埋設物探査動作をについて説明する。
波源部11からパルス状波形の送信信号を発生してから、反射波の受信信号に基づいた電磁波受信部5からのパルス状受信信号をディジタル信号に変換してメモリ34に格納するまでの動作は図19の実施形態と同様である。本実施形態では、その後、図6の第2実施形態と同様に、上記の動作をアンテナ位置可変機構41により送信アンテナ14と受信アンテナ21の位置を変えて複数回繰返し、サイドローブ形状の異なる複数のパルス状受信信号を得て、メモリ34に格納し、積算処理部35で、メモリ34に格納された全てのパルス状受信信号データを加算・平均化する。これにより、サイドローブの振幅が抑制されたパルス状受信信号が生成され、外部からの到来波、回路内で発生する熱雑音等に起因する非定常的な不要成分も含めて、地表面からの反射波や地中の小石や空洞等、本来探知の対象としない物体からの反射波に起因する定常的な不要成分も抑制でき、画像処理部7に送出する計測結果におけるS/N比を向上でき、地中の埋設物からの反射波を精度よく検出でき、地中レーダの埋設物探査精度を向上できる。
【0076】
尚、電磁波送信部からパルス状波形の送信信号を送信して電磁波受信部からパルス状受信信号を出力する構成において、サイドローブ形状が互いに異なる複数のパルス状受信信号を得る構成としては、電磁波送信部4に、図9のように波源及びフィルタ選択部53を設けたり、図14のように波源及びフィルタ選択部53を設けたり、図15のようにフィルタ選択部52を設けたりすることにより、送信信号の周波数特性を可変制御する構成、また、図18のように電磁波受信部にフィルタ選択部52を設けて受信信号の周波数特性を可変制御する構成、及び、これらを組合わせた構成も適用できる。
【0077】
尚、上述の各実施形態では、A/Dコンバータ32から表示部8までの部分も、レーダ本体2内に設ける構成を示したが、A/Dコンバータ32から表示部8までの部分を、レーダ本体2と電気的に接続可能な外部装置として構成してもよい。
【符号の説明】
【0078】
1、40、50、60、70 地中レーダ装置
2 レーダ本体
4 電磁波送信部
5 電磁波受信部
6 信号処理部
11 波源
12 分配部
14 送信アンテナ
21 受信アンテナ
31 相関処理部
33 時間軸補正処理部
34 メモリ
35 積算処理部
41 アンテナ位置可変機構
51 波源選択部
52 フィルタ選択部
53 波源及びフィルタ選択部
61 同期信号発生部
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中の埋設物を探知するための地中レーダ装置に関し、特に、計測結果に含まれる不要成分を抑制して、計測結果における所望信号と不要成分の比(S/N比)の向上を図るようにした地中レーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の地中レーダ装置としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。この地中レーダ装置は、地上に設置したレーダ装置の送信アンテナから地中に向かって電波を送出し、地中からの反射波をレーダ装置の受信アンテナで受信することにより、地中の埋設物を探知するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3039509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、地中に向かって送出した電波の一部は地中に透過するが、大部分は地表面で反射するため、地表面からの反射波の強い影響により、地中の埋設物からの反射波を検出することが困難となる。このため、従来では、地表面反射波の影響を低減するためにSTC(Sensitivity Time Control)処理を行っている。しかし、埋設物が深い位置にありその反射波が微弱な場合には、測定結果において、不要成分の影響により埋設物からの反射波が覆い隠され、深い位置の埋設物の探知精度が十分とは言えなかった。
【0005】
探知精度を向上するため、計測結果に含まれる不要成分を抑制して測定結果におけるS/N比(所望信号と不要成分の比)を向上させるとよい。地中レーダ装置の測定結果に含まれる不要成分としては、外部からの到来波、回路内で発生する熱雑音等に起因する非定常的な不要成分と、地表面や地中の小石や空洞等、本来探知の対象としない物体からの反射等に起因する定常的な不要成分とがある。前者の非定常的な不要成分は、一般的に測定毎に変化する成分であるため、複数回の測定で得られる受信信号を積算し平均化する平均化処理によって抑制可能である。一方、後者の定常的な不要成分は、同じ条件での測定の繰返しでは変化しない成分であり、前記平均化処理によって抑制することが難しいという問題がある。
【0006】
ここで、定常的な不要成分について詳述する。
地中レーダ装置の測定結果は、一般的に、波形の中で主体となるメインローブとこのメインローブの両側に付随するサイドローブ(若しくはリンギング)からなるパルス状の波形として捉えられる。このパルス状波形におけるサイドローブ部分が、計測結果に含まれる定常的な不要成分である。例えば、地表面からの反射波、地中の小石や空洞からの反射波及び探知対象の埋設物からの反射波がそれぞれ時間差をもって受信された場合を考える。この計測結果は、図21に示すように3つのパルス状の波形が重畳されたものが現れる。この場合、図示のように、一般的に地中からの反射波の振幅に比べて地表面からの反射波の振幅は極めて大きい。このため、探知対象の埋設物が深くその反射波が微弱な場合には、地表面からの反射波のサイドローブ部分によって埋設物からの反射波のメインローブ部分が埋もれてしまい探知精度が大きく劣化することになる。このサイドローブ部分の波形は、送信信号の特性、信号伝搬経路の特性、受信信号からの計測結果への処理方法に拠るものであり、同じ条件での測定の繰返しでは変化しない。このため、定常的な不要成分としてのサイドローブ部分は、前述の平均化処理によって抑制することが難しい。
【0007】
本発明は上記問題点に着目してなされたもので、測定結果に含まれる定常的な不要成分を効果的に抑制して計測結果における所望信号と不要成分の比(S/N比)の向上を図るようにした地中レーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため、本発明では、電磁波送信部から地中に向けて電磁波を送出し、電磁波受信部で前記電磁波に基づく反射波を受信し、前記電磁波受信部の受信信号に基づいて地中に埋設された埋設物を探知する地中レーダ装置において、前記電磁波受信部の受信信号に基づいて得られたパルス状信号を、その信号位相及び信号波形のサイドローブ形状のどちらか一方を異ならせて複数生成する信号生成部と、該信号生成部で生成された複数のパルス状信号を積算する積算処理部と、を備えて構成したことを特徴とする。
【0009】
かかる構成では、電磁波送信部から地中に向けて電磁波を送出し、電磁波受信部で前記電磁波に基づく反射波を受信する。信号生成部は、電磁波受信部からの受信信号に基づいて得られたパルス状信号を、その信号位相及び信号波形のサイドローブ形状のどちらか一方を異ならせて複数生成する。積算処理部は、信号生成部で生成された複数のパルス状信号を積算処理する。これにより、積算処理部の積算処理で得られるパルス状信号の波形における不要成分であるサイドローブ部分の振幅が抑制されたパルス状信号が得られ、計測結果のS/N比が向上するようになる。
【0010】
信号生成部が信号位相を異ならせる構成では、請求項2のように、前記信号生成部は、前記電磁波受信部の受信信号から得られた前記パルス状信号に基づいて当該パルス状信号と位相をずらした少なくとも1つのパルス状信号パターンを生成し、前記積算処理部は、前記電磁波受信部の受信信号から得られたパルス状信号と前記位相をずらしたパルス状信号とを積算処理する構成とする。
【0011】
信号生成部が信号波形のサイドローブ形状を異ならせる構成では、請求項3のように、前記信号生成部は、前記電磁波送信部から複数回送出した電磁波に基づいて前記電磁波受信部で受信される複数の受信信号に基づいて、前記サイドローブ形状の異なる複数のパルス状信号を生成する構成であり、前記積算処理部は、前記信号生成部で生成されたサイドローブ形状の異なる複数のパルス状信号を積算する構成とする。
【0012】
前記パルス状信号は、請求項4のように、前記電磁波送信部の電磁波送信信号と同期する相互相関処理用の参照信号と前記電磁波受信部の前記受信信号との相互相関処理を行って得られるパルス圧縮波信号とするとよい。
【0013】
また、請求項5のように、前記電磁波送信部から送出されたパルス状波形の信号に基づく反射波を受信した前記電磁波受信部から出力されるパルス状受信信号としてもよい。
【0014】
請求項2の構成において、パルス状信号が請求項4のようにパルス圧縮波信号である場合、前記信号生成部は、具体的には、請求項6のように、前記参照信号と前記受信信号との相互相関処理を行う相関処理部と、該相互相関処理から得られたパルス圧縮波信号をディジタル信号に変換するA/D変換部と、該A/D変換部からのディジタル信号を時間軸上でずらす時間軸補正処理を行って前記位相をずらしたパルス圧縮波信号パターンを生成する時間軸補正処理部と、前記A/D変換部から出力されるパルス圧縮波信号データ及び前記時間軸補正処理部で生成された位相をずらしたパルス圧縮波信号データを格納する信号記憶部と、を備え、前記積算処理部は、前記信号記憶部に格納した信号データを積算する構成とするとよい。
【0015】
また、請求項2の構成において、パルス状信号が請求項5のようにパルス状受信信号である場合、前記信号生成部は、具体的には、請求項7のように、前記電磁波受信部から得られたパルス状受信信号をディジタル信号に変換するA/D変換部と、該A/D変換部からのディジタル信号を時間軸上でずらす時間軸補正処理を行って前記位相をずらしたパルス状受信信号パターンを生成する時間軸補正処理部と、前記A/D変換部から出力されるパルス状受信信号データ及び前記時間軸補正処理部で生成された位相をずらしたパルス状受信信号データを格納する信号記憶部と、を備え、前記積算処理部は、前記信号記憶部に格納した信号データを積算する構成とするとよい。
【0016】
請求項3の構成において、パルス状信号が請求項4のようにパルス圧縮波信号である場合、請求項8のように、前記信号生成部で、相関処理部の相互相関処理で得られたサイドローブ形状の異なる複数のパルス圧縮波信号をディジタル信号に変換し、各パルス圧縮波信号の前記ディジタル信号データを信号記憶部に格納し、前記積算処理部で、前記信号記憶部に格納した信号データを積算する構成とするとよい。
【0017】
また、請求項3の構成において、パルス状信号が請求項5のようにパルス状受信信号である場合、請求項9のように、前記信号生成部で、前記電磁波受信部から出力されるサイドローブ形状の異なる複数のパルス状受信信号をディジタル信号に変換し、各パルス状受信信号の前記ディジタル信号データを信号記憶部に格納し、前記積算処理部で、前記信号記憶部に格納した信号データを積算する構成とするとよい。
【0018】
請求項3の構成において、パルス状信号が請求項4のようにパルス圧縮波信号である場合、請求項10のように、前記信号生成部は、前記電磁波送信部の送信アンテナ位置と前記電磁波受信部の受信アンテナ位置をそれぞれ可変制御し、異なる送受信アンテナ配置毎に電磁波を送出させ、電磁波送出毎に得られる各受信信号についてそれぞれ相互相関処理を行って前記複数のパルス圧縮波信号を生成する構成とするとよい。
【0019】
また、請求項3の構成において、パルス状信号が請求項5のようにパルス状受信信号である場合、請求項11のように、前記電磁波送信部の送信アンテナ位置と前記電磁波受信部の受信アンテナ位置をそれぞれ可変制御し、異なる送受信アンテナ配置毎に電磁波を送出させ、電磁波送出毎に前記電磁波受信部からパルス状受信信号を出力する構成とするとよい。
【0020】
また、請求項3の構成において、パルス状信号が請求項4のようにパルス圧縮波信号である場合、請求項12のように、前記電磁波送信部の前記電磁波送信信号、前記電磁波受信部の受信信号及び前記参照信号の少なくとも1つの信号の周波数特性を可変制御し、前記周波数特性を可変する毎に電磁波信号を送出させ、電磁波信号送出毎に得られる各受信信号について前記信号生成部でそれぞれ相互相関処理を行って前記複数のパルス圧縮波信号を生成する構成としてもよい。
【0021】
また、請求項3の構成において、パルス状信号が請求項5のようにパルス状受信信号である場合、請求項13のように、前記電磁波送信部の前記電磁波送信信号及び前記電磁波受信部の受信信号の少なくとも1つの信号の周波数特性を可変制御し、前記周波数特性を可変する毎に電磁波を送出させ、電磁波送出毎に前記電磁波受信部からパルス状受信信号を出力する構成としてもよい。
【0022】
請求項12の構成において、請求項14のように、前記電磁波送信部の電磁波送信信号と前記参照信号の周波数特性を可変制御する構成としてもよく、また、請求項15のように、前記参照信号の周波数特性を可変制御する構成としてもよい。
【0023】
請求項12又は13の構成において、請求項16のように、前記電磁波送信信号の周波数特性を可変制御する構成としてもよく、また、請求項17のように、前記電磁波受信部の受信信号の周波数特性を可変制御する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の地中レーダ装置によれば、送信した電磁波の地中からの反射波に基づく受信信号から得られたパルス状信号のサイドローブレベルを抑制できる。これにより、地表面の反射に代表される大きな反射波に起因する定常的な不要成分が抑制され、且つ、非定常的な不要成分も低減されることで、計測結果のS/N比を向上できる。従って、地中の埋設物からの反射波を精度よく検出できるようになり、地中レーダの埋設物探査精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る地中レーダ装置の第1実施形態を示す構成図
【図2】相関処理により得られるパルス圧縮波信号の例を示す図
【図3】地中に埋設物がある場合の受信信号の一例を示す図
【図4】元のパルス圧縮波と位相をずらしたパルス圧縮波を重ね合わせた様子を示す図
【図5】図4の各パルス圧縮波を積算したときのパルス圧縮波波形を示す図
【図6】本発明に係る地中レーダ装置の第2実施形態を示す構成図
【図7】サイドローブ形状の異なるパルス圧縮波を重ね合わせた様子を示す図
【図8】図7の各パルス圧縮波を積算したときのパルス圧縮波波形を示す図
【図9】本発明に係る地中レーダ装置の第3実施形態を示す構成図
【図10】波源選択部の構成例を示す図
【図11】波源選択部の別の構成例を示す図
【図12】フィルタ選択部の構成例を示す図
【図13】フィルタ選択部の別の構成例を示す図
【図14】送信信号の周波数特性のみを可変制御する例の要部構成図
【図15】送信信号の周波数特性のみを可変制御する例の別の要部構成図
【図16】参照信号の周波数特性のみを可変制御する例の要部構成図
【図17】参照信号の周波数特性のみを可変制御する例の別の要部構成図
【図18】受信信号の周波数特性のみを可変制御する例の要部構成図
【図19】本発明に係る地中レーダ装置の別の実施形態を示す構成図
【図20】本発明に係る地中レーダ装置の更に実施形態を示す構成図
【図21】地中レーダ装置の計測結果における定常的な不要成分の説明図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る地中レーダ装置の第1実施形態を示す構成図である。
図1において、本実施形態の地中レーダ装置1は、受信信号から得られたパルス状信号に基づいてこのパルス状信号と位相をずらしたパルス状信号パターンを生成し、受信信号から得られたパルス状信号と位相をずらしたパルス状信号とを積算処理して不要成分を抑制して、計測結果のS/N比を向上するようにしたもので、パルス状信号として受信信号からパルス圧縮波を得る構成としたものであり、レーダ本体2と、該レーダ本体2に取付けた車輪部3とを備え、探査エリア内でレーダ本体2を移動できる構成としている。尚、レーダ本体2に必ずしも車輪部3を設けなくともよい。この場合は、例えば車輪を有する別体の移動手段にレーダ本体2を載置してレーダ本体2を移動させるようにすればよい。
【0027】
前記レーダ本体2は、電磁波送信部4と、電磁波受信部5と、信号処理部6と、画像処理部7と、表示部8とを備えて構成される。
【0028】
前記電磁波送信部4は、地中に向けて例えばチャープ波やFM−CW波等の電磁波を送出するもので、電磁波送信信号を発生する波源部11と、該波源部11からの送信信号をアンプ13と後述する信号処理部6内の相関処理部31に分配する分配部12と、該分配部12からの送信信号を増幅する前記アンプ13と、該アンプ13で増幅した送信信号を地中に向けて送出する送信アンテナ14とを備える。
【0029】
前記電磁波受信部5は、地中から反射された電磁波を受信して受信信号を出力するもので、地中からの反射波を受信する受信アンテナ21と、該受信アンテナ21からの受信信号を増幅するアンプ22とを備える。
【0030】
前記信号処理部6は、電磁波受信部5からの受信信号と前述した分配部12から送信信号と同期する相互相関処理用の参照信号として分配された送信信号との相互相関処理を行ってパルス圧縮波を生成し、このパルス圧縮波についてノイズ低減処理を行うもので、相関処理部31と、A/Dコンバータ32と、時間軸補正処理部33と、メモリ34と、積算処理部35と、を備える。
【0031】
前記相関処理部31は、電磁波受信部5からの受信信号と電磁波送信部4の分配部12からの前記参照信号との相互相関処理を行って図2に示すような形状のパルス圧縮波を生成する。
【0032】
前記A/Dコンバータ32は、相関処理部31から出力されるアナログのパルス圧縮波を所定のサンプリング周期でサンプリングしてディジタル信号に変換する。
【0033】
前記時間軸補正処理部33は、後述するメモリ34に格納されるA/Dコンバータ32からのディジタル信号データを基に、当該ディジタル信号データを時間軸上でずらしたディジタル信号を少なくとも1つ以上作成し、A/Dコンバータ32から出力されるパルス圧縮波に対して位相をずらしたパルス圧縮波信号パターンを生成する。
【0034】
前記メモリ34は、A/Dコンバータ32からのディジタル信号データと時間軸補正処理部33で生成した信号パターンデータをそれぞれ格納する。本実施形態では、相関処理部31、A/Dコンバータ32、時間軸補正処理部33及びメモリ34で、信号生成部が構成される。
【0035】
前記積算処理部35は、メモリ34内に格納された元のディジタル信号と時間軸補正処理部33で生成した位相をずらしたディジタル信号とを積算し、積算結果を平均化して画像処理用データを生成して画像処理部7に出力する。
【0036】
前記画像処理部7は、信号処理部6からの画像処理用データに基づいて表示部8で表示する表示データを生成する。前記表示部8は、画像処理部7からの表示データを表示する。
【0037】
次に、本実施形態の地中レーダ装置1による埋設物の探査動作について説明する。
波源部11から、例えばチャープ波等の電磁波送信信号を発生し、分配部12を介してアンプ13で増幅し、送信アンテナ14から真下の地中に向けて電磁波を送出する。また、電磁波の送出と共にレーダ本体2を移動させる。電磁波は、送信アンテナ14を中心として扇状に広がって地中を伝播して行く。
【0038】
受信アンテナ21で、送信アンテナ14から送出された電磁波に基づく反射波を受信し、その受信信号を信号処理部6の相関処理部31に送出する。例えば、図1に示すように地中に埋設物9があれば、図3のような受信信号が得られる。図3の受信信号で、受信初期の高レベル部分は地表面からの反射波に基づくもので、その後の高レベル部分は埋設物9からの反射波に基づくものである。
【0039】
相関処理部31では、電磁波受信部5から受信信号が入力すると、電磁波送信部4の分配部12で分配された前記参照信号を用いて、この参照信号と前記受信信号との相互相関処理を行って、図2に示すようなパルス圧縮波を生成する。このパルス圧縮波は、主に埋設物9からの反射部分を示すメインローブの両側に、送信信号の特性、信号伝搬経路の特性等に拠るサイドローブが付随する。
【0040】
相関処理部31からのパルス圧縮波信号は、A/Dコンバータ32でディジタル信号に変換されてメモリ34に格納される。そして、この格納されたディジタル信号データを基に、時間軸補正処理部33で、ディジタル信号データを時間軸上でずらす補正処理を行って、図4に示すように、元のディジタル信号(図中、実線で示す)に対して位相のずれた補正ディジタル信号(図中、破線と一点鎖線で示す)を1個以上生成する。尚、本実施形態では、図4に示すように補正ディジタル信号を2個生成した例を示した。生成した補正ディジタル信号データは、メモリ34に格納する。
【0041】
積算処理部35では、メモリ34に格納された元のディジタル信号と補正ディジタル信号を加算し平均化する。この積算処理部35の処理によって、図5に示すような形状のパルス圧縮波信号が生成される。このパルス圧縮波信号は、元のパルス圧縮波信号と比較してメインローブの先鋭さは無くなるが、サイドローブ部分の振幅が抑制されており、パルス圧縮波信号のS/N比が向上している。尚、積算処理部35において、加算後の平均化処理は必ずしも行わなくてもよい。
【0042】
そして、画像処理部7は、積算処理部35からの図5に示す信号に基づいて表示部8で表示する表示データを生成し、表示部8で表示する。
【0043】
かかる第1実施形態の地中レーダ装置1によれば、受信信号から生成したパルス圧縮波信号に対してサイドローブの位相をずらすように時間軸上でシフトしたパルス圧縮波信号パターンをソフト的に生成し、元のパルス圧縮波信号と生成した位相のずれたパルス圧縮波信号を積算することにより、パルス圧縮波信号のサイドローブを抑制した。これにより、外部からの到来波、回路内で発生する熱雑音等に起因する非定常的な不要成分も含めて、地表面からの反射波や地中の小石や空洞等、本来探知の対象としない物体からの反射波に起因する定常的な不要成分も抑制でき、画像処理部7に送出する計測結果におけるS/N比を向上できる。従って、表示部8で表示される画像において、従来、存在する不要成分に基づく縞状の模様が低減され、埋設物9からの反射波を示す映像部分の視認性を向上できるようになり、地中の埋設物からの反射波を精度よく検出でき、地中レーダの埋設物探査精度を向上できる。
【0044】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図6は、本発明の第2実施形態を示す構成図である。尚、第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
図6において、第2実施形態の地中レーダ装置40は、パルス圧縮波の信号波形におけるサイドローブ形状を異ならせるように複数回測定を行って、サイドローブ形状が互いに異なる複数のパルス圧縮波信号を生成し、これら複数のパルス圧縮波信号を積算処理して非定常的及び定常的な各不要成分を抑制して、計測結果のS/N比を向上するようにしたものである。
【0045】
具体的には、本実施形態の地中レーダ装置40は、送信アンテナ14と受信アンテナ21の位置を可変制御可能なアンテナ位置可変機構41を備える構成である。尚、その他の構成は、図1の第1実施形態の時間軸補正処理部33がないことを除いて第1実施形態と同じ構成である。本実施形態では、前記相関処理部31、A/Dコンバータ32、メモリ34及びアンテナ位置可変機構41で、信号生成部が構成される。
【0046】
次に、第2実施形態の埋設物探査動作をについて説明する。
波源部11からチャープ等の送信信号を発生してから、反射波の受信信号に基づいたパルス圧縮波信号をディジタル信号に変換してメモリ34に格納するまでの動作は第1実施形態と同様である。本実施形態では、上記の動作を、アンテナ位置可変機構41により送信アンテナ14と受信アンテナ21の位置を変えて複数回繰返す。送信アンテナ14と受信アンテナ21の位置を可変することにより、送受信信号の周波数に対するアンテナ感度等が変化し、信号波形、特にそのサイドローブ形状の異なるパルス圧縮波信号が生成される。
【0047】
従って、メモリ34には、図7に示すような測定回数に対応する数(図では実線、破線及び一点鎖線で示す3つの例を示す)のサイドローブ形状の異なるパルス圧縮波信号のディジタル信号データが格納される。積算処理部35で、メモリ34に格納された全てのパルス圧縮波信号データを加算し、平均化することにより、図8に示すようなサイドローブの振幅が抑制されたパルス圧縮波信号が生成される。尚、測定回数は、本実施形態の3回に限らず、2回や4回以上でもよいことは言うまでもない。
【0048】
かかる第2実施形態の地中レーダ装置40によれば、送信アンテナ14と受信アンテナ21の位置を可変して複数回測定を行うことにより、サイドローブ形状の異なるパルス圧縮波信号を複数生成し、全てのパルス圧縮波信号を加算することにより、パルス圧縮波信号のサイドローブを抑制するようにした。これにより、第1実施形態と同様に、外部からの到来波、回路内で発生する熱雑音等に起因する非定常的な不要成分も含めて、地表面からの反射波や地中の小石や空洞等、本来探知の対象としない物体からの反射波に起因する定常的な不要成分も抑制でき、画像処理部7に送出する計測結果におけるS/N比を向上できる。
【0049】
尚、送信アンテナ14と受信アンテナ21の位置の変化は、送受信アンテナ14,21の間隔を変えるようにしてもよく、送信号アンテナ14及び受信アンテナ21の地表面に対する間隔を変えるようにしてもよい。
【0050】
次に、第2実施形態と同様に、パルス圧縮波の信号波形におけるサイドローブ形状を異ならせるように複数回測定を行って、サイドローブ形状が互いに異なる複数のパルス圧縮波信号を生成し、これら複数のパルス圧縮波信号を積算処理して定常的な不要成分を抑制して、計測結果のS/N比を向上する別の実施形態について以下に説明する。
【0051】
図9は、本発明の第3実施形態を示す構成図である。尚、第2実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
図9において、第3実施形態の地中レーダ装置50は、予め設定した送信信号のみ発生する第2実施形態の波源部11に代えて、例えば、ガウシアン波やインパルス波、チャープ波、FM―CW波等のように広域の周波数成分を持った異なる送信信号を選択的に発生可能な波源選択部51と、該波源選択部51から発生する送信信号の特定の周波数域を減衰するフィルタ特性を選択的に可変可能なフィルタ選択部52とからなる波源及びフィルタ選択部53を設ける。また、アンテナ位置可変機構41はなく、送信アンテナ14及び受信アンテナ21は、第1実施形態と同様に固定状態である。その他の構成は、第2実施形態と同じである。本実施形態では、相関処理部31、A/Dコンバータ32、メモリ34、及び、波源及びフィルタ選択部53で、信号生成部が構成される。
【0052】
前記波源選択部51は、図10に示すように、例えば、ガウシアン波、インパルス波、チャープ波、FM―CW波等をそれぞれ発生するn個の波源1〜nからなる波源群51Aと、該波源群51Aの各波源1〜nを選択的に切替え可能なスイッチング回路51Bと、該スイッチング回路51Bの切替え動作を制御するコントローラ51Cとを備えて構成される。尚、波源選択部51の構成は、図11に示すように、波源を1つにしてコントローラからのパラメータ変更指令により変調器を用いて波源のパラメータを可変制御して波源からの送信波を選択的に可変するような構成でもよい。
【0053】
前記フィルタ選択部52の構成は、図12に示すように、減衰する周波数域を互いにずらしたn個のフィルタ1〜nにフィルタなしの経路も含めたフィルタ群52Aと、該フィルタ群52Aの各フィルタ1〜nを選択的に切替え可能なスイッチング回路52Bと、該スイッチング回路52Bの切替え動作を制御するコントローラ52Cとを備えて構成される。尚、フィルタ選択部52の構成は、図13に示すように、1つのパッケージ化されたフィルタを用い、このフィルタの構成素子の定数や配置等をコントローラにより可変制御してフィルタ特性を選択的に可変するような構成でもよい。
【0054】
次に、第3実施形態の地中レーダ装置50の動作を説明する。
第3実施形態の地中レーダ装置50は、電磁波送信信号と相互相関用の参照信号の両方の周波数特性を可変制御して、サイドローブ形状が互いに異なる複数のパルス圧縮波信号を生成する構成である。
【0055】
具体的には、波源選択部51のn個の波源1〜nの中から1つを選択して送信信号を発生させる。また、フィルタ選択部52のフィルタを含まない経路も含めてフィルタ1〜nを介装した経路の中から1つの経路を選択する。これにより、波源選択部51から発生した送信信号は、フィルタ選択部52の選択された経路を介して分配部12に入力する。その後は、第2実施形態と同様にして、送信アンテナ14から送信される送信波に基づいた反射波を受信アンテナで受信し、分配部12からの参照波と受信信号との相互相関処理により得られるパルス圧縮波信号をディジタル信号に変換してメモリ34に格納する。上記の測定動作を、波源選択部51とフィルタ選択部52で波源とフィルタを切替える毎に繰返し実行する。
【0056】
このようにして、送信信号と参照信号の両方の周波数特性を可変制御して、サイドローブ形状が互いに異なる複数のパルス圧縮波信号のディジタル信号データをメモリ34に格納する。そして、メモリ34に格納した全てのパルス圧縮波信号を加算すれば、パルス圧縮波信号のサイドローブが抑制され、前述した不要成分の少ないパルス圧縮波を生成でき、計測結果のS/N比を向上できる。
【0057】
尚、波源及びフィルタ選択部53の構成は、分配部12に送信する送信信号の周波数特性を可変可能な構成であればよく、図9の構成に限定されない。例えば、図9の波源選択部51のみの構成でもよく、また、1つの波源と図9のフィルタ選択部52とで構成してもよい。前者の構成によれば、波源を選択的に切替えれば送信信号の周波数特性が可変でき、後者の構成によれば、フィルタ特性を選択的に切替えれば送信信号の周波数特性が可変できる。
【0058】
上記第3実施形態では、サイドローブ形状が互いに異なる複数のパルス圧縮波信号を生成するために、電磁波送信信号と参照信号の両方の周波数特性を可変制御する構成としたが、電磁波送信信号のみ、参照信号のみそれぞれ周波数特性を可変制御する構成でもよい。
【0059】
図14及び図15に、電磁波送信信号のみ周波数特性を可変制御する場合の要部構成例を示す。尚、上述の各実施形態の構成要素と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
図14では、電磁波送信部4に、図9に示す第3実施形態の波源及びフィルタ選択部53からの送信信号を、分配部12を省略して直接アンプ13に供給する一方、同期信号発生部61と、特定の参照信号用の波源部11を設ける構成である。本実施形態も、相関処理部31、A/Dコンバータ32、メモリ34、及び、波源及びフィルタ選択部53で、信号生成部が構成される。
【0060】
図14の構成によれば、同期信号発生部61の同期信号により、波源及びフィルタ選択部53と波源部11から送信信号が互いに同期して電磁波送信信号と相互相関処理用の参照信号をそれぞれ発生する。電磁波送信信号側は、波源及びフィルタ選択部53により測定毎に送信信号の周波数特性を可変とする。これにより、送信信号の周波数特性だけを可変して、サイドローブ形状が互いに異なる複数のパルス圧縮波信号を生成することができる。
【0061】
図15では、図9の地中レーダ装置50において、電磁波送信部4に、波源及びフィルタ選択部53に代えて第1実施形態の波源部11を設け、更に、分配部12とアンプ13との間にフィルタ選択部52を設ける構成である。本実施形態は、相関処理部31、A/Dコンバータ32、メモリ34及びフィルタ選択部52で、信号生成部が構成される。
【0062】
図15の構成も図14の場合と同様で、分配部12からの送信信号の周波数特性だけを測定毎にフィルタ選択部52により可変することで、サイドローブ形状が互いに異なる複数のパルス圧縮波信号を生成することができる。
【0063】
図16及び図17に、参照信号のみ周波数特性を可変制御する場合の要部構成例を示す。尚、上述の各実施形態の構成要素と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
図16では、図14の波源及びフィルタ選択部53と波源部11とを置き換えた構成である。本実施形態は、相関処理部31、A/Dコンバータ32、メモリ34、及び、波源及びフィルタ選択部53で、信号生成部が構成される。
【0064】
図16の構成によれば、同期信号発生部61の同期信号により、波源及びフィルタ選択部53と波源部11から送信信号が互いに同期して電磁波送信信号と相互相関処理用の参照信号をそれぞれ発生する。参照信号側は、波源及びフィルタ選択部53により測定毎に参照信号の周波数特性を可変とする。これにより、参照信号の周波数特性だけを可変して、サイドローブ形状が互いに異なる複数のパルス圧縮波信号を生成することができる。
【0065】
図17では、図15のフィルタ選択部52を、分配部12とアンプ13との間ではなく、分配部12と相関処理部31との間に設ける構成である。本実施形態は、相関処理部31、A/Dコンバータ32、メモリ34及びフィルタ選択部52で、信号生成部が構成される。
【0066】
図17の構成も図16の場合と同様で、分配部12からの参照信号の周波数特性だけを測定毎にフィルタ選択部52により可変することで、サイドローブ形状が互いに異なる複数のパルス圧縮波信号を生成することができる。
【0067】
また、サイドローブ形状が互いに異なる複数のパルス圧縮波信号を生成するために、受信信号のみ周波数特性を可変制御する構成としてもよい。
【0068】
図18に、受信信号のみ周波数特性を可変制御する場合の要部構成例を示す。尚、上述の各実施形態の構成要素と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
図18では、図17のフィルタ選択部52を、電磁波送信部4ではなく、電磁波受信部5のアンプ22の後段に配置する構成である。本実施形態も、相関処理部31、A/Dコンバータ32、メモリ34及びフィルタ選択部53で、信号生成部が構成される。
【0069】
図18の構成によれば、電磁波受信部5で受信した反射波に基づいてアンプ22から出力される受信信号を、測定毎にフィルタ選択部52により可変することにより、受信信号の周波数特性だけを可変して、サイドローブ形状が互いに異なる複数のパルス圧縮波信号を生成することができる。
【0070】
次に、電磁波受信部から出力される受信信号をパルス状信号となるよう構成した本発明に係る地中レーダ装置の実施形態について説明する。
図19は、電磁波受信部から出力される受信信号がパルス状信号である本発明の地中レーダ装置の実施形態を示す構成図である。尚、第1実施形態と同一要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0071】
図19において、本実施形態の地中レーダ装置60は、電磁波送信部4からパルス状波形の信号を送信することで、電磁波受信部5から出力される受信信号がパルス状信号となる構成のものにおいて、パルス状受信信号から当該受信信号と位相をずらしたパルス状信号パターンを生成し、受信部から出力されるパルス状受信信号と位相をずらしたパルス状信号とを積算処理して不要成分を抑制するようにしたものである。
この地中レーダ装置60は、図1に示す第1実施形態の分配部12及び相関処理部31がなく、波源部11からパルス状波形の送信信号を送信すること以外は、第1実施形態と同じ構成である。
【0072】
次に、本実施形態の地中レーダ装置60による埋設物の探査動作について説明する。
波源部11から、パルス状波形の送信信号を発生し、アンプ13で増幅し、送信アンテナ14から真下の地中に向けて電磁波を送出する。受信アンテナ21は、送信アンテナ14から送出されたパルス状波形の送信信号に基づくパルス状波形の反射波を受信し、パルス状の受信信号を出力し、このパルス状受信信号は、信号処理部6のA/Dコンバータ32でディジタル信号に変換されてメモリ34に格納される。その後は、第1実施形態と同様にして、ディジタル信号データを基に、時間軸補正処理部33で元のディジタル信号に対して位相のずれた補正ディジタル信号を生成してメモリ34に格納し、積算処理部35で、メモリ34に格納された元のディジタル信号と補正ディジタル信号を加算し平均化処理する。これにより、第1実施形態と同じように、図5に示すようなパルス状受信信号が得られるので、第1実施形態と同様、外部からの到来波、回路内で発生する熱雑音等に起因する非定常的な不要成分も含めて、地表面からの反射波や地中の小石や空洞等、本来探知の対象としない物体からの反射波に起因する定常的な不要成分も抑制でき、画像処理部7に送出する計測結果におけるS/N比を向上でき、地中の埋設物からの反射波を精度よく検出でき、地中レーダの埋設物探査精度を向上できる。
【0073】
図20には、電磁波受信部5からパルス状受信信号を得る構成のものにおいて、パルス状受信信号におけるサイドローブ形状を異ならせるように複数回測定を行って、サイドローブ形状が互いに異なる複数のパルス状受信信号を得て、これら複数のパルス状受信信号を積算処理するようにした地中レーダ装置の実施形態の構成例を示す。
【0074】
図20において、本実施形態の地中レーダ装置70は、図6に示す第2実施形態の分配部12及び相関処理部31がなく、波源部11からパルス状波形の送信信号を送信すること以外は、第2実施形態と同じ構成である。尚、第2実施形態と同一要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0075】
次に、本実施形態の地中レーダ装置70の埋設物探査動作をについて説明する。
波源部11からパルス状波形の送信信号を発生してから、反射波の受信信号に基づいた電磁波受信部5からのパルス状受信信号をディジタル信号に変換してメモリ34に格納するまでの動作は図19の実施形態と同様である。本実施形態では、その後、図6の第2実施形態と同様に、上記の動作をアンテナ位置可変機構41により送信アンテナ14と受信アンテナ21の位置を変えて複数回繰返し、サイドローブ形状の異なる複数のパルス状受信信号を得て、メモリ34に格納し、積算処理部35で、メモリ34に格納された全てのパルス状受信信号データを加算・平均化する。これにより、サイドローブの振幅が抑制されたパルス状受信信号が生成され、外部からの到来波、回路内で発生する熱雑音等に起因する非定常的な不要成分も含めて、地表面からの反射波や地中の小石や空洞等、本来探知の対象としない物体からの反射波に起因する定常的な不要成分も抑制でき、画像処理部7に送出する計測結果におけるS/N比を向上でき、地中の埋設物からの反射波を精度よく検出でき、地中レーダの埋設物探査精度を向上できる。
【0076】
尚、電磁波送信部からパルス状波形の送信信号を送信して電磁波受信部からパルス状受信信号を出力する構成において、サイドローブ形状が互いに異なる複数のパルス状受信信号を得る構成としては、電磁波送信部4に、図9のように波源及びフィルタ選択部53を設けたり、図14のように波源及びフィルタ選択部53を設けたり、図15のようにフィルタ選択部52を設けたりすることにより、送信信号の周波数特性を可変制御する構成、また、図18のように電磁波受信部にフィルタ選択部52を設けて受信信号の周波数特性を可変制御する構成、及び、これらを組合わせた構成も適用できる。
【0077】
尚、上述の各実施形態では、A/Dコンバータ32から表示部8までの部分も、レーダ本体2内に設ける構成を示したが、A/Dコンバータ32から表示部8までの部分を、レーダ本体2と電気的に接続可能な外部装置として構成してもよい。
【符号の説明】
【0078】
1、40、50、60、70 地中レーダ装置
2 レーダ本体
4 電磁波送信部
5 電磁波受信部
6 信号処理部
11 波源
12 分配部
14 送信アンテナ
21 受信アンテナ
31 相関処理部
33 時間軸補正処理部
34 メモリ
35 積算処理部
41 アンテナ位置可変機構
51 波源選択部
52 フィルタ選択部
53 波源及びフィルタ選択部
61 同期信号発生部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波送信部から地中に向けて電磁波を送出し、電磁波受信部で前記電磁波に基づく反射波を受信し、前記電磁波受信部の受信信号に基づいて地中に埋設された埋設物を探知する地中レーダ装置において、
前記電磁波受信部の受信信号に基づいて得られたパルス状信号を、その信号位相及び信号波形のサイドローブ形状のどちらか一方を異ならせて複数生成する信号生成部と、
該信号生成部で生成された複数のパルス状信号を積算する積算処理部と、
を備えて構成したことを特徴とする地中レーダ装置。
【請求項2】
前記信号生成部は、前記電磁波受信部の受信信号から得られた前記パルス状信号に基づいて当該パルス状信号と位相をずらした少なくとも1つのパルス状信号パターンを生成し、前記積算処理部は、前記電磁波受信部の受信信号から得られたパルス状信号と前記位相をずらしたパルス状信号とを積算処理する構成とした請求項1に記載の地中レーダ装置。
【請求項3】
前記信号生成部は、前記電磁波送信部から複数回送出した電磁波に基づいて前記電磁波受信部で受信される複数の受信信号に基づいて、前記サイドローブ形状の異なる複数のパルス状信号を生成する構成であり、前記積算処理部は、前記信号生成部で生成されたサイドローブ形状の異なる複数のパルス状信号を積算する構成とした請求項1に記載の地中レーダ装置。
【請求項4】
前記パルス状信号は、前記電磁波送信部の電磁波送信信号と同期する相互相関処理用の参照信号と前記電磁波受信部の前記受信信号との相互相関処理を行って得られるパルス圧縮波信号である請求項1〜3のいずれか1つに記載の地中レーダ装置。
【請求項5】
前記パルス状信号は、前記電磁波送信部から送出されたパルス状波形の信号に基づく反射波を受信した前記電磁波受信部から出力されるパルス状受信信号である請求項1〜3のいずれか1つに記載の地中レーダ装置。
【請求項6】
前記信号生成部は、前記参照信号と前記受信信号との相互相関処理を行う相関処理部と、該相関処理部から得られたパルス圧縮波信号をディジタル信号に変換するA/D変換部と、該A/D変換部からのディジタル信号を時間軸上でずらす時間軸補正処理を行って前記位相をずらしたパルス圧縮波信号パターンを生成する時間軸補正処理部と、前記A/D変換部から出力されるパルス圧縮波信号データ及び前記時間軸補正処理部で生成された位相をずらしたパルス圧縮波信号データを格納する信号記憶部と、を備え、前記積算処理部は、前記信号記憶部に格納した信号データを積算する構成とした請求項2に従属する請求項4に記載の地中レーダ装置。
【請求項7】
前記信号生成部は、前記電磁波受信部から出力されるパルス状受信信号をディジタル信号に変換するA/D変換部と、該A/D変換部からのディジタル信号を時間軸上でずらす時間軸補正処理を行って前記位相をずらしたパルス状受信信号パターンを生成する時間軸補正処理部と、前記A/D変換部から出力されるパルス状受信信号データ及び前記時間軸補正処理部で生成された位相をずらしたパルス状受信信号データを格納する信号記憶部と、を備え、前記積算処理部は、前記信号記憶部に格納した信号データを積算する構成とした請求項2に従属する請求項5に記載の地中レーダ装置。
【請求項8】
前記信号生成部で、相関処理部の相互相関処理で得られたサイドローブ形状の異なる複数のパルス圧縮波信号をディジタル信号に変換し、各パルス圧縮波信号の前記ディジタル信号データを信号記憶部に格納し、前記積算処理部で、前記信号記憶部に格納した信号データを積算する構成とした請求項3に従属する請求項4に記載の地中レーダ装置。
【請求項9】
前記信号生成部で、前記電磁波受信部から出力されるサイドローブ形状の異なる複数のパルス状受信信号をディジタル信号に変換し、各パルス状受信信号の前記ディジタル信号データを信号記憶部に格納し、前記積算処理部で、前記信号記憶部に格納した信号データを積算する構成とした請求項3に従属する請求項5に記載の地中レーダ装置。
【請求項10】
前記電磁波送信部の送信アンテナ位置と前記電磁波受信部の受信アンテナ位置をそれぞれ可変制御し、異なる送受信アンテナ配置毎に電磁波を送出させ、電磁波送出毎に得られる各受信信号について前記信号生成部でそれぞれ相互相関処理を行って前記複数のパルス圧縮波信号を生成する構成とした請求項3に従属する請求項4又は8に記載の地中レーダ装置。
【請求項11】
前記電磁波送信部の送信アンテナ位置と前記電磁波受信部の受信アンテナ位置をそれぞれ可変制御し、異なる送受信アンテナ配置毎に電磁波を送出させ、電磁波送出毎に前記電磁波受信部からパルス状受信信号を出力する構成とした請求項3に従属する請求項5又は9に記載の地中レーダ装置。
【請求項12】
前記電磁波送信部の前記電磁波送信信号、前記電磁波受信部の受信信号及び前記参照信号の少なくとも1つの信号の周波数特性を可変制御し、前記周波数特性を可変する毎に電磁波を送出させ、電磁波送出毎に得られる各受信信号について前記信号生成部でそれぞれ相互相関処理を行って前記複数のパルス圧縮波信号を生成する構成とした請求項3に従属する請求項4又は8に記載の地中レーダ装置。
【請求項13】
前記電磁波送信部の前記電磁波送信信号及び前記電磁波受信部の受信信号の少なくとも1つの信号の周波数特性を可変制御し、前記周波数特性を可変する毎に電磁波を送出させ、電磁波送出毎に前記電磁波受信部からパルス状受信信号を出力する構成とした請求項3に従属する請求項5又は9に記載の地中レーダ装置。
【請求項14】
前記電磁波送信部の電磁波送信信号と前記参照信号の周波数特性を可変制御する構成である請求項12に記載の地中レーダ装置。
【請求項15】
前記参照信号の周波数特性を可変制御する構成である請求項12に記載の地中レーダ装置。
【請求項16】
前記電磁波送信信号の周波数特性を可変制御する構成である請求項12又は13に記載の地中レーダ装置。
【請求項17】
前記電磁波受信部の受信信号の周波数特性を可変制御する構成である請求項12又は13に記載の地中レーダ装置。
【請求項1】
電磁波送信部から地中に向けて電磁波を送出し、電磁波受信部で前記電磁波に基づく反射波を受信し、前記電磁波受信部の受信信号に基づいて地中に埋設された埋設物を探知する地中レーダ装置において、
前記電磁波受信部の受信信号に基づいて得られたパルス状信号を、その信号位相及び信号波形のサイドローブ形状のどちらか一方を異ならせて複数生成する信号生成部と、
該信号生成部で生成された複数のパルス状信号を積算する積算処理部と、
を備えて構成したことを特徴とする地中レーダ装置。
【請求項2】
前記信号生成部は、前記電磁波受信部の受信信号から得られた前記パルス状信号に基づいて当該パルス状信号と位相をずらした少なくとも1つのパルス状信号パターンを生成し、前記積算処理部は、前記電磁波受信部の受信信号から得られたパルス状信号と前記位相をずらしたパルス状信号とを積算処理する構成とした請求項1に記載の地中レーダ装置。
【請求項3】
前記信号生成部は、前記電磁波送信部から複数回送出した電磁波に基づいて前記電磁波受信部で受信される複数の受信信号に基づいて、前記サイドローブ形状の異なる複数のパルス状信号を生成する構成であり、前記積算処理部は、前記信号生成部で生成されたサイドローブ形状の異なる複数のパルス状信号を積算する構成とした請求項1に記載の地中レーダ装置。
【請求項4】
前記パルス状信号は、前記電磁波送信部の電磁波送信信号と同期する相互相関処理用の参照信号と前記電磁波受信部の前記受信信号との相互相関処理を行って得られるパルス圧縮波信号である請求項1〜3のいずれか1つに記載の地中レーダ装置。
【請求項5】
前記パルス状信号は、前記電磁波送信部から送出されたパルス状波形の信号に基づく反射波を受信した前記電磁波受信部から出力されるパルス状受信信号である請求項1〜3のいずれか1つに記載の地中レーダ装置。
【請求項6】
前記信号生成部は、前記参照信号と前記受信信号との相互相関処理を行う相関処理部と、該相関処理部から得られたパルス圧縮波信号をディジタル信号に変換するA/D変換部と、該A/D変換部からのディジタル信号を時間軸上でずらす時間軸補正処理を行って前記位相をずらしたパルス圧縮波信号パターンを生成する時間軸補正処理部と、前記A/D変換部から出力されるパルス圧縮波信号データ及び前記時間軸補正処理部で生成された位相をずらしたパルス圧縮波信号データを格納する信号記憶部と、を備え、前記積算処理部は、前記信号記憶部に格納した信号データを積算する構成とした請求項2に従属する請求項4に記載の地中レーダ装置。
【請求項7】
前記信号生成部は、前記電磁波受信部から出力されるパルス状受信信号をディジタル信号に変換するA/D変換部と、該A/D変換部からのディジタル信号を時間軸上でずらす時間軸補正処理を行って前記位相をずらしたパルス状受信信号パターンを生成する時間軸補正処理部と、前記A/D変換部から出力されるパルス状受信信号データ及び前記時間軸補正処理部で生成された位相をずらしたパルス状受信信号データを格納する信号記憶部と、を備え、前記積算処理部は、前記信号記憶部に格納した信号データを積算する構成とした請求項2に従属する請求項5に記載の地中レーダ装置。
【請求項8】
前記信号生成部で、相関処理部の相互相関処理で得られたサイドローブ形状の異なる複数のパルス圧縮波信号をディジタル信号に変換し、各パルス圧縮波信号の前記ディジタル信号データを信号記憶部に格納し、前記積算処理部で、前記信号記憶部に格納した信号データを積算する構成とした請求項3に従属する請求項4に記載の地中レーダ装置。
【請求項9】
前記信号生成部で、前記電磁波受信部から出力されるサイドローブ形状の異なる複数のパルス状受信信号をディジタル信号に変換し、各パルス状受信信号の前記ディジタル信号データを信号記憶部に格納し、前記積算処理部で、前記信号記憶部に格納した信号データを積算する構成とした請求項3に従属する請求項5に記載の地中レーダ装置。
【請求項10】
前記電磁波送信部の送信アンテナ位置と前記電磁波受信部の受信アンテナ位置をそれぞれ可変制御し、異なる送受信アンテナ配置毎に電磁波を送出させ、電磁波送出毎に得られる各受信信号について前記信号生成部でそれぞれ相互相関処理を行って前記複数のパルス圧縮波信号を生成する構成とした請求項3に従属する請求項4又は8に記載の地中レーダ装置。
【請求項11】
前記電磁波送信部の送信アンテナ位置と前記電磁波受信部の受信アンテナ位置をそれぞれ可変制御し、異なる送受信アンテナ配置毎に電磁波を送出させ、電磁波送出毎に前記電磁波受信部からパルス状受信信号を出力する構成とした請求項3に従属する請求項5又は9に記載の地中レーダ装置。
【請求項12】
前記電磁波送信部の前記電磁波送信信号、前記電磁波受信部の受信信号及び前記参照信号の少なくとも1つの信号の周波数特性を可変制御し、前記周波数特性を可変する毎に電磁波を送出させ、電磁波送出毎に得られる各受信信号について前記信号生成部でそれぞれ相互相関処理を行って前記複数のパルス圧縮波信号を生成する構成とした請求項3に従属する請求項4又は8に記載の地中レーダ装置。
【請求項13】
前記電磁波送信部の前記電磁波送信信号及び前記電磁波受信部の受信信号の少なくとも1つの信号の周波数特性を可変制御し、前記周波数特性を可変する毎に電磁波を送出させ、電磁波送出毎に前記電磁波受信部からパルス状受信信号を出力する構成とした請求項3に従属する請求項5又は9に記載の地中レーダ装置。
【請求項14】
前記電磁波送信部の電磁波送信信号と前記参照信号の周波数特性を可変制御する構成である請求項12に記載の地中レーダ装置。
【請求項15】
前記参照信号の周波数特性を可変制御する構成である請求項12に記載の地中レーダ装置。
【請求項16】
前記電磁波送信信号の周波数特性を可変制御する構成である請求項12又は13に記載の地中レーダ装置。
【請求項17】
前記電磁波受信部の受信信号の周波数特性を可変制御する構成である請求項12又は13に記載の地中レーダ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
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【図10】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2010−210394(P2010−210394A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−56388(P2009−56388)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】
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