地中削孔データ解析による基盤判定方法
【課題】削孔データの解析値から直ちに基盤面を判定できるようにする。
【解決手段】地中連続壁工事における削孔機による先行削孔工の削孔データ解析による基盤判定方法であって、先行削孔工の削孔機の電流値及び吊荷重を解析して、電流値が既定値以上で、かつ吊荷重が既定値以下を判定基準として、基盤面位置を判定する。そして、解析値として、解析値FA={電流値×(錐総重量−吊荷重)}/係数γ(ただし、係数γ:基盤層を判定するための指標係数)を用いて、解析値FA>1で、基盤層と判定する。
【解決手段】地中連続壁工事における削孔機による先行削孔工の削孔データ解析による基盤判定方法であって、先行削孔工の削孔機の電流値及び吊荷重を解析して、電流値が既定値以上で、かつ吊荷重が既定値以下を判定基準として、基盤面位置を判定する。そして、解析値として、解析値FA={電流値×(錐総重量−吊荷重)}/係数γ(ただし、係数γ:基盤層を判定するための指標係数)を用いて、解析値FA>1で、基盤層と判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中連続壁工事における削孔データ解析に基づく基盤判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば地下ダム等の地中連続壁工事では、遮水壁を基盤層に確実に根入して造成することが重要である。
このような地中連続壁工事において、対象地盤の土質条件、地盤改良処理機の能力や仕様に応じた自動判定により、誰もが同じ着底判定結果を得られる施工管理方法が特許文献1に提案されている。
その提案内容は、施工場所の土質構成とN値データ等が明解なボーリングデータ採取位置の近傍に掘削貫入の試験施工を行い、地盤改良処理機の貫入深度、貫入速度、貫入所要時間、撹拌掘削軸の吊り荷重値、電動機の負荷電流値又は負荷トルク値の各計測値を貫入深度毎に採取して、着底予想の判定基準値に採用する。続く実施工でも同じく地盤改良処理機の貫入深度、貫入速度、吊り荷重値、電動機の負荷電流値又は負荷トルク値を測定し、その測定値が一定の条件を満たすか否かをそれぞれ監視し、いずれか一の条件が満たされると支持層へ着底したと判定するものである。
【0003】
具体的には、貫入深度が着底予想深度へ到達した段階から着底判定の監視体制に入り、(a)電動機の負荷電流又は負荷トルクの測定値が着底予想負荷電流値又は負荷トルク値を上回り、その測定値が設定された判定経過時間まで持続すること、(b)地盤改良処理機の吊り荷重の測定値が着底予想吊り荷重値以下となり、その測定値が設定された判定経過時間まで持続すること、(c)地盤改良処理機の貫入速度の測定値が着底予想貫入速度より以下となり、その測定値が設定された判定経過時間まで持続するか又は判定貫入距離まで到達したこと、をそれぞれ監視し、少なくとも上記(a)〜(c)のいずれか一の条件が満たされると支持層へ着底したと判定すること、を特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−160550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の発明は、測定値が設定された判定経過時間まで持続するか監視を継続する必要があった。
【0006】
本発明の課題は、削孔データの解析値から直ちに基盤面を判定できるようにすること、ならびに深さ方向の連続性を確認することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、地中連続壁工事における削孔機による先行削孔工の削孔データ解析による基盤判定方法であって、前記先行削孔工の削孔機の電流値及び吊荷重を解析して、前記電流値が既定値以上で、かつ前記吊荷重が既定値以下を判定基準として、基盤面位置を判定することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の地中削孔データ解析による基盤判定方法であって、前記電流値の既定値は250Aで、前記吊荷重の既定値は錐総重量の0.5〜0.85の範囲の値であることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の地中削孔データ解析による基盤判定方法であって、解析値として次式、
解析値FA={電流値×(錐総重量−吊荷重)}/係数γ
係数γ:基盤層を判定するための指標係数
を用いることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の地中削孔データ解析による基盤判定方法であって、係数γは、
γ=電流値の判定基準×吊荷重の判定基準
であることを特徴とする。
また、吊荷重の判定基準は、
吊荷重の判定基準=錐総重量×係数μ
係数μ:吊荷重の判定係数
を用いることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項3または4に記載の地中削孔データ解析による基盤判定方法であって、前記解析値FA>1で、基盤層と判定することを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の地中削孔データ解析による基盤判定方法であって、前記解析値FAが1.0以上の値が、深さ方向に0.25m以上連続する箇所で、かつ深さ1.0m範囲の解析値FAの平均値が1.0以上となる箇所であって、設計基盤深度−0.5mから下方範囲に対して基盤線の判定を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、削孔データとして削孔機の電流値及び吊荷重の解析値から直ちに基盤面を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を適用した一実施形態の構成を示すもので、入力画面の一例を示した図である。
【図2】図1の入力データに基づく解析結果の出力例を示したグラフである。
【図3】本発明によるデータ解析処理の概要を示す図である。
【図4】本発明によるデータ解析の仕方を示すフローチャートである。
【図5】基盤層付近での削孔データの傾向の一例を示したグラフである。
【図6】本発明による解析値による基盤層の判定評価の一例を示したグラフである。
【図7】本発明による基盤線の判定方法の一例を示したグラフである。
【図8】本発明による解析値Fの結果出力例を示したグラフである。
【図9】本発明による解析値FA、解析基盤深度の結果出力例を示したグラフである。
【図10】本発明による錐先端深度履歴の結果出力例を示したグラフである。
【図11】本発明による数値データの結果出力例を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
本実施形態では、地中連続壁工事の削孔データ(電流値、吊荷重、削孔速度)の解析により、基盤面の上面位置を推定する。
【0016】
図1は本発明を適用した一実施形態の構成を示すもので、入力画面の一例を示した図である。
【0017】
図示のように、図表計算ソフトに自動計算機能をもたせたプログラムにより、簡単な入力だけで誰でも計算できる。
【0018】
図2は図1の入力データに基づく解析結果の出力例を示したグラフである。
【0019】
図3は本発明によるデータ解析処理の概要を示す図である。
【0020】
地中連続壁工事において、図示のように、削孔機による先行削孔工の削孔データ(減速機の電流値、削孔速度、吊荷重)を計測室の管理用パソコンにより解析して、その解析値から基盤面位置を自動的に判定計算し表示させる。
【0021】
そして、施工した全削孔データの特徴を分析し、解析に基づく独自の判定基準により基盤面位置を客観的に推定できる。
【0022】
これにより、従来、電流値の推移からオペレータや作業指揮者が経験的に基盤を判断していたのに対して、基盤確認の精度向上が図れる。
【0023】
図4は本発明によるデータ解析の仕方を示すフローチャートである。
【0024】
図示のように、プログラムを起動し(ステップS1)、基本データ(杭番号、設計基盤高、作業床高)を入力する(ステップS2)。
【0025】
続いて、先行削孔工の施工において、削孔データ(深度、電流値、吊荷重、削孔速度)を計測しておき、削孔終了後、その削孔データ(深度、電流値、吊荷重、削孔速度)を収録したファイルを読み込む(ステップS3)。
【0026】
次に、後述する解析値を計算する(ステップS4)。
【0027】
続いて、後述する判定基準に基づいて、基盤層および基盤層上面深度を判定する(ステップS5)。
【0028】
そして、解析結果を出力し(ステップS6)、処理を終了する。
【0029】
<基盤面の判定方法>
図5は基盤層付近での削孔データの傾向の一例を示したグラフである。
【0030】
1)基盤層付近での削孔データの傾向
全施工杭の削孔機(減速機)の電流値、吊荷重、削孔速度の削孔データについて分析したところ、基盤層などの硬い地層において次の傾向がみられた。
【0031】
a.電流値:負荷が少ない場合には180〜200Aであるが、硬い地層で削孔抵抗が大きくなると、電流値は250〜400Aに増加する傾向にある。
【0032】
b.吊荷重:錐上端の吊荷重計の値は、負荷が少ない場合には錐重量に近い値を示し、基盤層などの硬い地層に着底すると、吊荷重が減少する傾向にある。
【0033】
c.削孔速度:非常に硬い地層では、削孔速度をコントロールできず、削孔速度が低下する。
【0034】
上記の基盤層付近の削孔データの傾向から、以下の条件を基盤層の判定基準とした。
条件1.電流値:250A以上
条件2.吊荷重:錐総重量×(1-係数μ)以下
係数μは0.15〜0.5の範囲の値とし、試験施工の結果から決定する。
【0035】
2)解析値と判定基準
削孔データのうち、電流値、吊荷重、削孔速度の組み合わせた解析を行う。
解析は解析値Fと解析値FAの2種類の解析式を用いて行う。
【0036】
図6は本発明による解析値による基盤層の判定評価の一例を示したグラフである。
【0037】
A.解析値F:電流値、吊荷重、削孔速度の3つのデータを用いて評価する。
解析値F={電流値×(錐重量−吊荷重)}/削孔速度/係数β
係数β:解析値の表示を調整するための係数
【0038】
B.解析値FA:電流値と吊荷重の2つのデータを用いて評価する。
解析値FA={電流値×(錐総重量−吊荷重)}/係数γ
係数γ:基盤層を判定するための指標係数
γ=電流値の判定基準×吊荷重の判定基準
=電流値の判定基準×錐総重量×係数μ
=(250A)×(錐総重量×係数μ)
(例)錐総重量=33t、係数μ=0.5の場合 係数γ=(250A)×(33t×0.5)=4125
【0039】
C.解析値の判定基準
解析値FA>1の場合、硬質層(基盤層)と判定する。
【0040】
3)基盤線の判定手順
基盤線の確認方法として、解析値FAに対して以下の3つの条件を満足する深さを「解析基盤深度」として判定する。
【0041】
図7は本発明による基盤線の判定方法の一例を示したグラフである。
【0042】
条件1:解析値FAが1.0以上の値が、深さ方向に0.25m以上連続する箇所
【0043】
条件2:深さ1.0m範囲(計算点の上下0.5m範囲)の解析値FAの平均値が1.0以上となる箇所
【0044】
条件3:基盤線の判定は、(設計基盤深度−0.5m)から下方範囲に対して行う。
【0045】
<解析結果の出力>
本システムを解析実行すると、以下の解析結果のシートが自動的に作成される。
【0046】
1)解析値Fのグラフ
図8は本発明による解析値Fの結果出力例を示したグラフである。
【0047】
2)解析値FAのグラフ、および解析基盤深度
図9は本発明による解析値FA、解析基盤深度の結果出力例を示したグラフである。
【0048】
3)錐先端深度の履歴グラフ
図10は本発明による錐先端深度履歴の結果出力例を示したグラフである。
【0049】
4)数値データ(施工データ、および解析値F、FA)
図11は本発明による数値データの結果出力例を示したグラフである。
【0050】
<基盤判定結果の活用方法>
1)削孔データから解析された解析基盤深度と、設計基盤深度と比較し大きな差がないか確認する。
2)「基盤面が判定できませんでした」というメッセージが出た場合、解析値FAが、FA<1であったという結果なので、基盤面とみなせるような解析値の変化傾向がないか、解析値FAおよび解析値Fの両方のグラフを見直す。
3)削孔傾斜データで隣接杭に孔曲がりしていないかチェックする。
【0051】
(基盤面が判定できなかった場合の対処方法の例)
1)隣接する杭の判定結果と比較し、特異な結果でないか確認する。
2)直近のボーリング柱状図と照らし合わせ、基盤面の変化や弱層となるような地質の存在の可能性を検討する。
3)必要に応じてチェックボーリングを実施し、同地点における基盤面を確認する。
4)基盤面が想定より深い、あるいは止水層として不十分な弱層の場合には、注入による対策を検討する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中連続壁工事における削孔データ解析に基づく基盤判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば地下ダム等の地中連続壁工事では、遮水壁を基盤層に確実に根入して造成することが重要である。
このような地中連続壁工事において、対象地盤の土質条件、地盤改良処理機の能力や仕様に応じた自動判定により、誰もが同じ着底判定結果を得られる施工管理方法が特許文献1に提案されている。
その提案内容は、施工場所の土質構成とN値データ等が明解なボーリングデータ採取位置の近傍に掘削貫入の試験施工を行い、地盤改良処理機の貫入深度、貫入速度、貫入所要時間、撹拌掘削軸の吊り荷重値、電動機の負荷電流値又は負荷トルク値の各計測値を貫入深度毎に採取して、着底予想の判定基準値に採用する。続く実施工でも同じく地盤改良処理機の貫入深度、貫入速度、吊り荷重値、電動機の負荷電流値又は負荷トルク値を測定し、その測定値が一定の条件を満たすか否かをそれぞれ監視し、いずれか一の条件が満たされると支持層へ着底したと判定するものである。
【0003】
具体的には、貫入深度が着底予想深度へ到達した段階から着底判定の監視体制に入り、(a)電動機の負荷電流又は負荷トルクの測定値が着底予想負荷電流値又は負荷トルク値を上回り、その測定値が設定された判定経過時間まで持続すること、(b)地盤改良処理機の吊り荷重の測定値が着底予想吊り荷重値以下となり、その測定値が設定された判定経過時間まで持続すること、(c)地盤改良処理機の貫入速度の測定値が着底予想貫入速度より以下となり、その測定値が設定された判定経過時間まで持続するか又は判定貫入距離まで到達したこと、をそれぞれ監視し、少なくとも上記(a)〜(c)のいずれか一の条件が満たされると支持層へ着底したと判定すること、を特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−160550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の発明は、測定値が設定された判定経過時間まで持続するか監視を継続する必要があった。
【0006】
本発明の課題は、削孔データの解析値から直ちに基盤面を判定できるようにすること、ならびに深さ方向の連続性を確認することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、地中連続壁工事における削孔機による先行削孔工の削孔データ解析による基盤判定方法であって、前記先行削孔工の削孔機の電流値及び吊荷重を解析して、前記電流値が既定値以上で、かつ前記吊荷重が既定値以下を判定基準として、基盤面位置を判定することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の地中削孔データ解析による基盤判定方法であって、前記電流値の既定値は250Aで、前記吊荷重の既定値は錐総重量の0.5〜0.85の範囲の値であることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の地中削孔データ解析による基盤判定方法であって、解析値として次式、
解析値FA={電流値×(錐総重量−吊荷重)}/係数γ
係数γ:基盤層を判定するための指標係数
を用いることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の地中削孔データ解析による基盤判定方法であって、係数γは、
γ=電流値の判定基準×吊荷重の判定基準
であることを特徴とする。
また、吊荷重の判定基準は、
吊荷重の判定基準=錐総重量×係数μ
係数μ:吊荷重の判定係数
を用いることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項3または4に記載の地中削孔データ解析による基盤判定方法であって、前記解析値FA>1で、基盤層と判定することを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の地中削孔データ解析による基盤判定方法であって、前記解析値FAが1.0以上の値が、深さ方向に0.25m以上連続する箇所で、かつ深さ1.0m範囲の解析値FAの平均値が1.0以上となる箇所であって、設計基盤深度−0.5mから下方範囲に対して基盤線の判定を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、削孔データとして削孔機の電流値及び吊荷重の解析値から直ちに基盤面を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を適用した一実施形態の構成を示すもので、入力画面の一例を示した図である。
【図2】図1の入力データに基づく解析結果の出力例を示したグラフである。
【図3】本発明によるデータ解析処理の概要を示す図である。
【図4】本発明によるデータ解析の仕方を示すフローチャートである。
【図5】基盤層付近での削孔データの傾向の一例を示したグラフである。
【図6】本発明による解析値による基盤層の判定評価の一例を示したグラフである。
【図7】本発明による基盤線の判定方法の一例を示したグラフである。
【図8】本発明による解析値Fの結果出力例を示したグラフである。
【図9】本発明による解析値FA、解析基盤深度の結果出力例を示したグラフである。
【図10】本発明による錐先端深度履歴の結果出力例を示したグラフである。
【図11】本発明による数値データの結果出力例を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
本実施形態では、地中連続壁工事の削孔データ(電流値、吊荷重、削孔速度)の解析により、基盤面の上面位置を推定する。
【0016】
図1は本発明を適用した一実施形態の構成を示すもので、入力画面の一例を示した図である。
【0017】
図示のように、図表計算ソフトに自動計算機能をもたせたプログラムにより、簡単な入力だけで誰でも計算できる。
【0018】
図2は図1の入力データに基づく解析結果の出力例を示したグラフである。
【0019】
図3は本発明によるデータ解析処理の概要を示す図である。
【0020】
地中連続壁工事において、図示のように、削孔機による先行削孔工の削孔データ(減速機の電流値、削孔速度、吊荷重)を計測室の管理用パソコンにより解析して、その解析値から基盤面位置を自動的に判定計算し表示させる。
【0021】
そして、施工した全削孔データの特徴を分析し、解析に基づく独自の判定基準により基盤面位置を客観的に推定できる。
【0022】
これにより、従来、電流値の推移からオペレータや作業指揮者が経験的に基盤を判断していたのに対して、基盤確認の精度向上が図れる。
【0023】
図4は本発明によるデータ解析の仕方を示すフローチャートである。
【0024】
図示のように、プログラムを起動し(ステップS1)、基本データ(杭番号、設計基盤高、作業床高)を入力する(ステップS2)。
【0025】
続いて、先行削孔工の施工において、削孔データ(深度、電流値、吊荷重、削孔速度)を計測しておき、削孔終了後、その削孔データ(深度、電流値、吊荷重、削孔速度)を収録したファイルを読み込む(ステップS3)。
【0026】
次に、後述する解析値を計算する(ステップS4)。
【0027】
続いて、後述する判定基準に基づいて、基盤層および基盤層上面深度を判定する(ステップS5)。
【0028】
そして、解析結果を出力し(ステップS6)、処理を終了する。
【0029】
<基盤面の判定方法>
図5は基盤層付近での削孔データの傾向の一例を示したグラフである。
【0030】
1)基盤層付近での削孔データの傾向
全施工杭の削孔機(減速機)の電流値、吊荷重、削孔速度の削孔データについて分析したところ、基盤層などの硬い地層において次の傾向がみられた。
【0031】
a.電流値:負荷が少ない場合には180〜200Aであるが、硬い地層で削孔抵抗が大きくなると、電流値は250〜400Aに増加する傾向にある。
【0032】
b.吊荷重:錐上端の吊荷重計の値は、負荷が少ない場合には錐重量に近い値を示し、基盤層などの硬い地層に着底すると、吊荷重が減少する傾向にある。
【0033】
c.削孔速度:非常に硬い地層では、削孔速度をコントロールできず、削孔速度が低下する。
【0034】
上記の基盤層付近の削孔データの傾向から、以下の条件を基盤層の判定基準とした。
条件1.電流値:250A以上
条件2.吊荷重:錐総重量×(1-係数μ)以下
係数μは0.15〜0.5の範囲の値とし、試験施工の結果から決定する。
【0035】
2)解析値と判定基準
削孔データのうち、電流値、吊荷重、削孔速度の組み合わせた解析を行う。
解析は解析値Fと解析値FAの2種類の解析式を用いて行う。
【0036】
図6は本発明による解析値による基盤層の判定評価の一例を示したグラフである。
【0037】
A.解析値F:電流値、吊荷重、削孔速度の3つのデータを用いて評価する。
解析値F={電流値×(錐重量−吊荷重)}/削孔速度/係数β
係数β:解析値の表示を調整するための係数
【0038】
B.解析値FA:電流値と吊荷重の2つのデータを用いて評価する。
解析値FA={電流値×(錐総重量−吊荷重)}/係数γ
係数γ:基盤層を判定するための指標係数
γ=電流値の判定基準×吊荷重の判定基準
=電流値の判定基準×錐総重量×係数μ
=(250A)×(錐総重量×係数μ)
(例)錐総重量=33t、係数μ=0.5の場合 係数γ=(250A)×(33t×0.5)=4125
【0039】
C.解析値の判定基準
解析値FA>1の場合、硬質層(基盤層)と判定する。
【0040】
3)基盤線の判定手順
基盤線の確認方法として、解析値FAに対して以下の3つの条件を満足する深さを「解析基盤深度」として判定する。
【0041】
図7は本発明による基盤線の判定方法の一例を示したグラフである。
【0042】
条件1:解析値FAが1.0以上の値が、深さ方向に0.25m以上連続する箇所
【0043】
条件2:深さ1.0m範囲(計算点の上下0.5m範囲)の解析値FAの平均値が1.0以上となる箇所
【0044】
条件3:基盤線の判定は、(設計基盤深度−0.5m)から下方範囲に対して行う。
【0045】
<解析結果の出力>
本システムを解析実行すると、以下の解析結果のシートが自動的に作成される。
【0046】
1)解析値Fのグラフ
図8は本発明による解析値Fの結果出力例を示したグラフである。
【0047】
2)解析値FAのグラフ、および解析基盤深度
図9は本発明による解析値FA、解析基盤深度の結果出力例を示したグラフである。
【0048】
3)錐先端深度の履歴グラフ
図10は本発明による錐先端深度履歴の結果出力例を示したグラフである。
【0049】
4)数値データ(施工データ、および解析値F、FA)
図11は本発明による数値データの結果出力例を示したグラフである。
【0050】
<基盤判定結果の活用方法>
1)削孔データから解析された解析基盤深度と、設計基盤深度と比較し大きな差がないか確認する。
2)「基盤面が判定できませんでした」というメッセージが出た場合、解析値FAが、FA<1であったという結果なので、基盤面とみなせるような解析値の変化傾向がないか、解析値FAおよび解析値Fの両方のグラフを見直す。
3)削孔傾斜データで隣接杭に孔曲がりしていないかチェックする。
【0051】
(基盤面が判定できなかった場合の対処方法の例)
1)隣接する杭の判定結果と比較し、特異な結果でないか確認する。
2)直近のボーリング柱状図と照らし合わせ、基盤面の変化や弱層となるような地質の存在の可能性を検討する。
3)必要に応じてチェックボーリングを実施し、同地点における基盤面を確認する。
4)基盤面が想定より深い、あるいは止水層として不十分な弱層の場合には、注入による対策を検討する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中連続壁工事における削孔機による先行削孔工の削孔データ解析による基盤判定方法であって、
前記先行削孔工の削孔機の電流値及び吊荷重を解析して、前記電流値が既定値以上で、かつ前記吊荷重が既定値以下を判定基準として、基盤面位置を判定することを特徴とする地中削孔データ解析による基盤判定方法。
【請求項2】
前記電流値の既定値は250Aで、前記吊荷重の既定値は錐総重量の0.5〜0.85の範囲の値であることを特徴とする請求項1に記載の地中削孔データ解析による基盤判定方法。
【請求項3】
解析値として次式、
解析値FA={電流値×(錐総重量−吊荷重)}/係数γ
係数γ:基盤層を判定するための指標係数
を用いることを特徴とする請求項1または2に記載の地中削孔データ解析による基盤判定方法。
【請求項4】
係数γは、
γ=電流値の判定基準×吊荷重の判定基準
であり、
吊荷重の判定基準は、
吊荷重の判定基準=錐総重量×係数μ
係数μ:吊荷重の判定係数
を用いることを特徴とする請求項3に記載の地中削孔データ解析による基盤判定方法。
【請求項5】
前記解析値FA>1で、基盤層と判定することを特徴とする請求項3または4に記載の地中削孔データ解析による基盤判定方法。
【請求項6】
前記解析値FAが1.0以上の値が、深さ方向に0.25m以上連続する箇所で、かつ深さ1.0m範囲の解析値FAの平均値が1.0以上となる箇所であって、設計基盤深度−0.5mから下方範囲に対して基盤線の判定を行うことを特徴とする請求項5に記載の地中削孔データ解析による基盤判定方法。
【請求項1】
地中連続壁工事における削孔機による先行削孔工の削孔データ解析による基盤判定方法であって、
前記先行削孔工の削孔機の電流値及び吊荷重を解析して、前記電流値が既定値以上で、かつ前記吊荷重が既定値以下を判定基準として、基盤面位置を判定することを特徴とする地中削孔データ解析による基盤判定方法。
【請求項2】
前記電流値の既定値は250Aで、前記吊荷重の既定値は錐総重量の0.5〜0.85の範囲の値であることを特徴とする請求項1に記載の地中削孔データ解析による基盤判定方法。
【請求項3】
解析値として次式、
解析値FA={電流値×(錐総重量−吊荷重)}/係数γ
係数γ:基盤層を判定するための指標係数
を用いることを特徴とする請求項1または2に記載の地中削孔データ解析による基盤判定方法。
【請求項4】
係数γは、
γ=電流値の判定基準×吊荷重の判定基準
であり、
吊荷重の判定基準は、
吊荷重の判定基準=錐総重量×係数μ
係数μ:吊荷重の判定係数
を用いることを特徴とする請求項3に記載の地中削孔データ解析による基盤判定方法。
【請求項5】
前記解析値FA>1で、基盤層と判定することを特徴とする請求項3または4に記載の地中削孔データ解析による基盤判定方法。
【請求項6】
前記解析値FAが1.0以上の値が、深さ方向に0.25m以上連続する箇所で、かつ深さ1.0m範囲の解析値FAの平均値が1.0以上となる箇所であって、設計基盤深度−0.5mから下方範囲に対して基盤線の判定を行うことを特徴とする請求項5に記載の地中削孔データ解析による基盤判定方法。
【図4】
【図11】
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
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【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−149463(P2012−149463A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10342(P2011−10342)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000195971)西松建設株式会社 (329)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000195971)西松建設株式会社 (329)
【Fターム(参考)】
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