説明

地中埋設杭の挿脱装置

【課題】リーダは非作業時には略半分の長さに縮小できるから、フロントを有する作業機に作業用アタッチメントとして取着して使用できるし、強風に速やかに対応が可能で安全性に優れており、また移動時も通常の作業機と同様に行うことが可能なので作業性に優れている地中埋設杭の引抜き装置を提供する。
【解決手段】油圧モータ32を吊下げてガイドするリーダ2は、作業機のフロント1Aに取着した内筒3に外筒5を縦方向に変位可能に挿装して構成してある。内筒3と油圧モータ32との間には、外筒5の上端に設けたガイドプーリー6を介してモータ支持索8が張設してある。内筒3には外筒5を上昇させるリーダ伸長機構10と、外筒5を降下させるリーダ縮小機構22が内設してあり、油圧シリンダ14によって作動するようにしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構築物の解体後に地中に残るコンクリートパイル、コンクリート杭等の地中埋設杭を引抜き撤去する作業、或いは地中に杭を埋設するための穿孔作業や挿設作業に用いて好適な地中埋設杭の挿脱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物その他の構築物を撤去した後の地中には、コンクリートパイル、コンクリート杭が埋設した状態で残留することから、これら地中埋設杭を撤去する作業を行う必要がある。そこで、一例として円筒の先端に掘削刃と破砕刃を設けた削孔ケーシングを地中埋設杭の外周で回転させて掘削し、地中埋設杭の上部側を露出させてその上端側を破砕するといった作業を繰り返し行い、最後に地中埋設杭を引抜くという作業を行っている。
【0003】
この種の杭抜き作業機は、特許文献1の図1に示すように、オーガ軸7を略鉛直状に吊下してガイドするリーダマスト2を備えているが、リーダマスト2はオーガ軸7と略同じ長尺物であり、これを懸垂状態に支持するために長尺のクレーンブームを有するクローラクレーン等の専用の作業機を必要としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平6−104970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、地中埋設杭の撤去には、オーガと略同じ長さのリーダを支持するクローラクレーン等の専用の作業機が必要であることから、大きな設備費が掛るという問題、作業現場に移動する際は電線や看板等に留意して走行する必要があるという問題、旋回半径が大きいことから交差点での方向転換に十分注意を払わなければならない等の理由から作業効率が悪いという問題、強風の影響を受け易いことから安定性の確保に十分注意しなければならないという問題がある。同様の問題は、アースオーガを吊下げて地盤に杭埋設孔を穿設する作業機にもある。
【0006】
本発明は上述した従来技術の欠点に鑑みなされたもので、リーダは非作業時には略半分の長さに縮小するので、油圧ショベル等のフロントを有する作業機にアタッチメントとして取着して使用することが可能であるし、強風に速やかに対応できるので安全性に優れており、また通常の作業機と同様に走行移動ができるので作業性にも優れている地中埋設杭の挿脱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するための請求項1に係る本発明を構成する手段は、作業機により支持する内筒に外筒を縦方向に変位可能に挿装して構成し、油圧モータを吊下した状態でガイドするリーダと、一端は前記内筒に連結し、前記外筒の上端に設けたガイドプーリーを介して外側に伸長し、他端側は前記油圧モータを吊下支持するモータ支持索と、前記内筒に対して前記外筒を上昇させるリーダ伸長機構と、前記内筒に対して前記外筒を降下させるリーダ縮小機構と、前記リーダ縮小機構及びリーダ伸長機構を作動する駆動源とからなる。
【0008】
また、請求項2に係る本発明を構成する手段は、作業機により支持する内筒に外筒を縦方向に変位可能に挿装して構成し、油圧モータを吊下した状態でガイドするリーダと、一端は前記内筒に連結し、前記外筒の上端に設けたガイドプーリーを介して外側に伸長し、他端側は前記油圧モータを吊下支持するモータ支持索と、前記内筒の下端と外筒の下端との間に張設した引揚用牽引索を、該内筒内に昇降可能に設けた引揚誘導輪に途中部分を巻装して構成したリーダ伸長機構と、前記内筒の上端と外筒の上端との間に張設した降下用牽引索を、該内筒内に昇降可能に設けた降下誘導輪に途中部分を巻装して構成したリーダ縮小機構と、前記内筒に設けられ、前記引揚誘導輪及び降下誘導輪を昇降させて前記リーダ縮小機構及びリーダ伸長機構を作動させる駆動源とからなる。
【0009】
そして、前記リーダは、前記内筒を前記作業機のフロントに着脱可能に取着する構成にするとよい。
【0010】
また、前記外筒の外面下側に配設したガイド輪と、吊下する前記油圧モータに一端を係着し、該ガイド輪を介して他端を前記内筒の上端側に係着した連動索とから構成する掘削加圧機構を設けるとよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上述の如く構成したから、下記の諸効果を奏する。
(1)リーダを内筒と外筒から構成し、油圧モータを吊下げてガイドする外筒は昇降自在に構成したから、運搬時には略半分の長さに縮小することができ、運搬性に優れている。
(2)油圧モータに削孔ケーシングやアースオーガを連結する等の引抜き或いは掘削作業の準備や、作業終了後の解体作業は外筒を降下させた状態で行うことができるから、高所作業を無くすることができるし、引抜き作業に即座に取り掛かることができる。
(3)作業中の強風に対しては、リーダを縮小することで速やかに対応することができる。
(4)本発明の挿脱装置は、フロントを有する作業機に作業用アタッチメントとして組付けて使用出来るので、取扱いが容易で利便性に優れている。
(5)フロントを有する作業機に取付けて使用できるから、長尺のクレーンブームを有する専用の引抜き作業機等は不要であり、設備費を節減できるし、杭の挿脱作業機の操作者に必要な特殊技能は不要であるから、人件費の節減と作業工程の効率化を図ることができる。
(6)掘削加圧機構は、内筒に対する外筒の上昇動作に連動して油圧モータを下方向に強制的に牽引するようにしたから、掘削刃に掘削方向への負荷を掛けることができ、掘削効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る地中埋設杭の挿脱装置の使用状態説明図である。
【図2】伸長状態のリーダの内部説明図である。
【図3】縮小状態のリーダの内部説明図である。
【図4】リーダを伸長する場合の動作説明図である。
【図5】リーダを縮小する場合の動作説明図である。
【図6】リーダで油圧モータを支持する状態の部分説明図である。
【図7】図6中のVII−VII矢示方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を地中埋設杭の引抜き装置を例に挙げて図面を参照しつつ詳述する。図1において、51は地中埋設杭の引抜き装置1による作業に用いる作業機で、該作業機51には作業用フロント51Aを有する機種であれば、油圧ショベル、バックホウ等を用いることができる。
【0014】
2は該地中埋設杭の引抜き装置1を構成し、後述する油圧モータ32を略鉛直状に吊下した状態でガイドするリーダを示す。3は該リーダ2を構成する中空の内筒で、該内筒3は横断面四角形の筒部3Aと、底板部3Bと、天板部3Cと、先端が内向きに屈曲した略コ字状に形成し、筒部3Aの一側面を覆うように固着した外筒拘持体3Dとから構成してある。4は該外筒拘持体3Dに突設した取付ブラケットで、該取付ブラケット4は前記作業用フロント51Aと着脱可能にピン結合してあり、内筒3はバケットや圧砕機等の他の作業用アタッチメントと同様に作業機51に容易に着脱できるようになっている。
【0015】
5はリーダ2を構成する外筒で、該外筒5は横断面四角形の筒部5Aと、天板部5Bとから下端が開放した筒状に構成してあり、筒部5Aの一側板には前記取付ブラケット4が遊嵌する縦長のスリット5Cが形成してある。6は前記天板部5Bの外面に設けたガイドプーリーで、該ガイドプーリー6は天板部5Bに固着した略凵字状に形成した基体6Aと、該基体6Aに軸着した一対のプーリ本体6B、6Cとから構成してある。7、7、・・・は外筒5と内筒3及び外筒拘持体3Dとの間に介装したスラストプレートで、該スラストプレート7は外筒5のガタツキや焼き付きを防止するためのものであり、砲金や合成樹脂材を用いている。
【0016】
8はモータ支持索を示し、該モータ支持索8は基端8Aが内筒3の天板部3C外面に固着したフック9に連結し、外筒5の天板部5Bに形成した開口に挿通して前記ガイドプーリー6に掛け回して外側に伸長し、その先端8Bには油圧モータ32を取付けるようになっている。
【0017】
10はリーダ2を縮小状態から伸長状態に上昇させるためのリーダ伸長機構を示す。図4及び図5に示すように、11は該リーダ伸長機構10を構成し、内筒3の底板部3Bに固着した固定支持台で、該固定支持台11には一対の定滑車12、13が軸着してある。14は固定支持台11のブラケット11Aに軸着して立設した油圧シリンダで、該油圧シリンダ14のピストン14Aは上方に向けて突出している。
【0018】
15は該ピストン14Aに昇降可能に支持された誘導輪支持体を示す。該誘導輪支持体15は上板15A及び下板15Bと、一対の側板15C、15Cと、下板15Bに下向きに突設した一対の連結板15D、15Dとによって側方が開放した枠体に構成し、上板15Aと下板15Bとの間に補強材15Eが縦方向に固着してある。そして、一対の連結板15D、15Dにピストン14Aの先端側が軸着してあり、誘導輪支持体15は油圧シリンダ14によって昇降可能になっている。
【0019】
16、17はリーダ伸長機構10を構成し、前記誘導輪支持体15に軸支した引揚誘導輪で、該引揚誘導輪16、17は一対2組から構成してある。18は内筒3の上端角隅に軸支したガイド輪である。19は前記定滑車12と引揚誘導輪16に巻装した引揚用牽引索で、該引揚用牽引索19は基端19Aが内筒3の底板部3Bに固着したフック20に係着し、引揚誘導輪16、定滑車12、引揚誘導輪17、定滑車13、ガイド輪18に架け回して先端側19Bは内筒3の外側に伸長しており、先端19Cは外筒5の下端に固着したフック21に係着してある。
【0020】
22はリーダ縮小機構を示す。23、24は該リーダ縮小機構22を構成する一対2組の降下誘導輪を示し、該降下誘導輪23、24は前記誘導輪支持体15に軸支してある。25は内筒3の天板部3C内面に固着した取付ブラケット26に軸支した定滑車である。27は内筒3と外筒5との間に張設した降下用牽引索で、該降下用牽引索27は基端27Aを天板部3C内面に固着したフック28に係着し、降下誘導輪23、定滑車25、降下誘導輪24に架け回し、内筒3の天板部3Cの開口に挿通して外側に伸長しており、先端27Bは外筒5の天板部5B内面に固着したフック29に係着してある。
【0021】
更に、30、30は外筒5の外面に縦方向に設けた円柱からなる2本のガイドレール、31、31は該ガイドレール30に摺動可能に嵌装した上下一対のスライダーである。32は該スライダー31、31によって支持した公知の油圧モータで、該油圧モータ32の回転軸32Aにアースオーガや削孔ケーシングを嵌着して回転駆動する。
【0022】
また、33は油圧モータ32による掘削時に、油圧モータ32に下向きの牽引力を働かすことで掘削効率を高めるための掘削加圧機構を示す。34は該掘削加圧機構33を構成するガイド輪で、該ガイド輪34は前記ガイドレール30の下端に軸支してある。35は連動索を示し、該連動索35は一端35Aが油圧モータ32に係着し、前記ガイド輪34を介して上方に伸長し、他端35Bが内筒3の上端側外面に係着してある。
【0023】
本実施の形態は上述の構成からなるもので、以下にその作用について説明する。リーダ2は内筒3の取付ブラケット4を作業機51の作業用フロント51Aにピン結合することにより、作業機51に着脱可能に取付けてある。そして、リーダ2を伸長して作業を行う場合は、図4に示すように、油圧シリンダ14のピストン14Aを矢示イ方向に伸長して誘導輪支持体15を上昇させると、引揚誘導輪16、17と定滑車12、13との間が離間して、巻装してある引揚牽引索19が長くなる。
【0024】
例えば、ピストン14Aのストロークを1,5mとすると、引揚用牽引索19は定滑車12、13と引揚用誘導輪16、17との間に4巻きしてあるから、先端側は6m引揚げられる。このように、ガイド輪18を介して外筒5の下端に連結してある先端側19Bが引き上げられる結果、外筒5は所定の高さにまで上昇する。
【0025】
他方、掘削深度に伴ってリーダ2を縮小する場合は、図5に示すように、油圧シリンダ14のピストン14Aを矢示ロ方向に退行させると、誘導輪支持体15が降下して定滑車25と降下誘導輪23、24との間が離間し、これら定滑車25、降下誘導輪23、24との間に巻装してある降下用牽引索27が長くなり、外筒5に連結してある先端27Bは引き下げられることで、外筒5は降下する。これに連動して、モータ支持索8はガイドプーリー6から油圧モータ32との間が伸長し、油圧モータ32は降下する。
【0026】
また、外筒5が降下すると、油圧モータ32と内筒3の上端とが離間し、この間に張設してある連動索35が伸長して油圧モータ32は下方に牽引されるため(図3参照)、油圧モータ32に掘削方向である下向きの負荷を掛けることができる。これにより、油圧モータ32の自重のみで掘削力を作用させていた従来技術と比較してより効率的に掘削することを可能にしている。
【0027】
このように、油圧シリンダ14を駆動してピストン14Aを進退させることにより誘導輪支持体15が昇降し、これに連動して外筒5が昇降して伸長した作業状態から縮小した作業終了状態に容易に切替えることができると共に、油圧モータ32に牽引力に働かすことで掘削効率を高めることが出来る。
【0028】
なお、本実施の形態では地中埋設杭の引抜き装置を例に挙げたが、本発明装置は地盤に杭を挿設するための削孔ケーシングやアースオーガを回転駆動させる場合、杭を垂直に引抜く作業にも用いることが出来るものである。
【符号の説明】
【0029】
1 地中埋設杭の引抜き装置
2 リーダ
3 内筒
5 外筒
8 モータ支持索
8A 基端
8B 先端
10 リーダ伸長機構
14 油圧シリンダ(駆動源)
16、17 引揚誘導輪
19 引揚用牽引索
22 リーダ縮小機構
23、24 降下誘導輪
27 降下用牽引索
32 油圧モータ
33 掘削加圧機構
34 ガイド輪
35 連動索
51 作業機
51A 作業用フロント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機により支持する内筒に外筒を縦方向に変位可能に挿装して構成し、油圧モータを吊下した状態でガイドするリーダと、一端は前記内筒に連結し、前記外筒の上端に設けたガイドプーリーを介して外側に伸長し、他端側は前記油圧モータを吊下支持するモータ支持索と、前記内筒に対して前記外筒を上昇させるリーダ伸長機構と、前記内筒に対して前記外筒を降下させるリーダ縮小機構と、該リーダ縮小機構及びリーダ伸長機構を作動する駆動源とから構成してなる地中埋設杭の挿脱装置。
【請求項2】
作業機により支持する内筒に外筒を縦方向に変位可能に挿装して構成し、油圧モータを吊下した状態でガイドするリーダと、一端は前記内筒に連結し、前記外筒の上端に設けたガイドプーリーを介して外側に伸長し、他端側は前記油圧モータを吊下支持するモータ支持索と、前記内筒の下端と外筒の下端との間に張設した引揚用牽引索を、該内筒内に昇降可能に設けた引揚誘導輪に途中部分を巻装して構成したリーダ伸長機構と、前記内筒の上端と外筒の上端との間に張設した降下用牽引索を、該内筒内に昇降可能に設けた降下誘導輪に途中部分を巻装して構成したリーダ縮小機構と、前記内筒に設けられ、前記引揚誘導輪及び降下誘導輪を昇降させて前記リーダ縮小機構及びリーダ伸長機構を作動させる駆動源とから構成してなる地中埋設杭の挿脱装置。
【請求項3】
前記リーダは、前記内筒を前記作業機のフロントに着脱可能に取着する構成にしてあることを特徴とする請求項1又は2記載の地中埋設杭の挿脱装置。
【請求項4】
前記外筒の外面下側に配設したガイド輪と、吊下する前記油圧モータに一端を係着し、該ガイド輪を介して他端を前記内筒の上端側に係着した連動索とから構成してなる掘削加圧機構を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の地中埋設杭の挿脱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−252320(P2011−252320A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127217(P2010−127217)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(504430167)北都建機サービス株式会社 (13)
【Fターム(参考)】