説明

地中埋設管交換工事用引込装置

【課題】 既設のマンホールを使用し得る大型の引込装置を提供する。
【解決手段】 独立した二つのスライダ1,2と、このスライダに着脱可能な移動体3とで構成されている。スライダは、フレーム10,20と、このフレームに設けられたスライドレール13,23と、このスライドレールに沿って進退可能に設けられたスライド部12,22と、このスライド部を進退させるアクチュエータ11,21を備えている。移動体は、クランプ手段を有するクランプフレーム31と、このクランプフレームの両側に設けられ、上記スライダのスライド部に着脱可能なスライド連結部4,5を備えている。二つのスライダの中間に移動体を配置し、スライド部に移動体のスライド連結部を連結して使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中埋設管の交換工事において使用される引込装置に関し、特に、下水道等に使用するために過去に埋設された既設管を交換する際、交換すべき既設管の内部に予め挿入した引込管に破砕カッタおよび交換用の新設管を連結したうえで、当該引込管を引き込んで上記破砕カッタおよび新設管を移動させるための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、既設の下水道管はコンクリート製または陶製のヒューム管が使用されており、これを長期間使用したことにより老朽化が進行し、交換すべき時期に達している既設管が存在している。これを新しく塩化ビニル製などの管に交換するためには、既設管を掘り起こし、新設管を埋め戻すという方法が考えられる。しかし、既設の下水道管等は道路に沿って埋設されていることが一般的であるため、これを掘り起こすためには、道路の交通を遮断したうえでアスファルト等の舗装面を剥離することから始めなければならず、交通渋滞を招来するのみならず、工事の長期化・大規模化をも招来することとなっていた。
【0003】
そこで、これらの問題点を解消するために、既設管を破砕しつつ内径を拡張し、その内部に新設管を挿入することにより、既設管を掘り起こすことなく新設管を敷設する工事方法が提案されている(特許文献1参照)。そして、このような工法を実施するためには、既設管を破砕するための破砕カッタおよびこれに連続する新設管を移動させるための駆動装置が必要であった。従来は、いわゆる油圧ジャッキと呼ばれる油圧装置によって発進立坑から推進させるか、または、牽引装置によって到達立坑から引き込む方法が採用されていた(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−6393号公報(2−4頁、図1・図2)
【特許文献2】特開平10−46984号公報(3−4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記工法に使用する前掲の装置は、大きな圧縮・引張駆動を出力させるため、装置全体が大型に構成されていた(特許文献2参照)。これは、油圧シリンダ等のアクチュエータによる進退方向の駆動力を無駄なく伝達させるため、装置全体を一体的に構成したことによるためであった。
【0005】
しかしながら、装置全体が大型化することにより、当該装置が設置できる立坑の掘削が必要となるのみならず、既設管が埋設されている両端、すなわち既設立坑(マンホール)との連結について別途工事を要することとなっていた。その理由は、既設のマンホールでは、開口部分が小さく当該マンホール内に設置することができなかったためであった。そこで、既存のマンホールを利用する場合には、当該マンホールの開口部を拡張するためのドリル工事(いあわゆるはつり工事)を行い、開口部分を十分に広げたうえでマンホール内に設置しなければならなかった。この場合、工事終了後にマンホールの開口部の修復工事が必要となるものであった。
【0006】
他方、既設のマンホールをそのまま利用しようとする場合、引込装置を小型に設計したものを使用することが考えられるが、装置を小型にすることによって出力の低下を招来することとなり、上述のとおり、既設管を破壊しつつ新設管を埋設する工法においては、必要かつ十分な出力を安定して得ることができず、工事が難航するであろうことが予想されるものであった。
【0007】
本発明は、上記諸点にかんがみてなされたものであって、その目的とするところは、既設のマンホールを使用し得る大型の引込装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明は、独立した二つのスライダと、このスライダに着脱可能な移動体とを備えた地中埋設管交換工事用引込装置であって、上記スライダは、フレームと、このフレームに設けられたスライドレールと、このスライドレールに沿って進退可能に設けられたスライド部と、このスライド部を進退させるアクチュエータとを備え、上記移動体は、クランプ手段を有するクランプフレームと、このクランプフレームの両側に設けられ、上記スライダのスライド部に着脱可能なスライド連結部とを備え、上記二つのスライダを引込方向の左右両側に配置するとともに、この中間に上記移動体を配置し、上記スライド部に上記移動体のスライド連結部を連結するとき、上記スライダのアクチュエータによりスライド部を介して上記移動体を進退可能にしてなることを特徴とする地中埋設管交換工事用引込装置を要旨とする。
【0009】
上記構成によれば、独立する二つのスライダは、当該スライダのスライド部が移動体のスライド連結部に連結されることによって、装置全体が一体的に構成されるものであるから、当該連結を解除した状態では、二つのスライダおよび移動体は、それぞれ独立した部材として搬送可能となる。従って、既設立坑(マンホール)の内部に装置を搬入・設置する際には、上記二つのスライダおよび移動体を個別に搬入し、既設立坑(マンホール)の内部において容易に合体させることができる。また、移動体のスライド連結部は、スライダに備えられている進退可能なスライド部に連結されるのであるから、このスライド部がスライドレールに沿って進退方向が制御される以上、移動体の進退方向への移動は、スライドレールに沿ったものとなる。
【0010】
また、本発明は、独立した二つのスライダと、このスライダを連結するスライダ結合手段と、上記スライダに着脱可能な移動体とを備えた地中埋設管交換工事用引込装置であって、上記スライダは、フレームと、このフレームに設けられたスライドレールと、このスライドレールに沿って進退可能に設けられたスライド部と、このスライド部を進退させるアクチュエータとを備え、上記スライダ結合手段は、適宜長さを有する連結フレームと、この連結フレームの両端付近に設けられ、上記スライダの先端付近に着脱可能なスライダ結合部と、このスライダ結合部の近傍に突設された押圧部材とを備え、上記移動体は、クランプ手段を有するクランプフレームと、このクランプフレームの両側に設けられ、上記スライダのスライド部に着脱可能なスライド連結部とを備え、上記二つのスライダを引込方向の左右両側に配置するとともに、この中間に上記移動体を配置し、上記スライド部に上記移動体のスライド連結部を連結するとき、上記スライダのアクチュエータによりスライド部を介して上記移動体を進退可能にし、上記スライダ結合手段のスライダ結合部を上記スライダの対向端縁付近に装着するとき、左右に分離する二つのスライダの端部を結合させてなることを特徴とする地中埋設管交換工事用引込装置をも要旨としている。
【0011】
上記構成によれば、二つのスライダ、スライダ結合手段、および、移動体は、それぞれ独立した部材として構成されるため、既設立坑(マンホール)の開口部を経由して内部に搬入することができる。そして、既設立坑内においては、二つのスライダの中間に移動体を配置し、スライド部とスライド連結部とを連結することにより、装置全体の合体を概略終了させることができ、独立するスライダの端部同士をスライダ結合手段によって結合することにより、一層強固に一体化させることとなる。また、このスライダ結合手段には、押圧部材が備えられていることから、この押圧部材を既設立坑(マンホール)の内壁に当接させることにより、引込作業時に生じる反力を分散支持することができる。
【0012】
上記発明におけるスライダ結合手段の連結フレームは、長手方向に向かって弧状に形成することができ、この場合、上記スライダ結合手段をスライダに装着するとき、連結フレームの膨出側を外向きにしてなることが好ましい。
【0013】
上記構成により、独立するスライダの端部同士をスライダ結合手段によって結合するとき、連結フレームが移動体の移動範囲(実質的な作業空間)の内部に連結フレームが存在せず、作業空間を広く活用することができる。すなわち、連結フレームが、既設立坑(マンホール)の内壁の曲率に合った弧状に形成されることにより、当該連結フレームが既設立坑(マンホール)の内壁表面に沿って配置されることとなるから、移動体の進退や引込管の搬出を阻害することがない。
【0014】
また、上記発明におけるスライダ結合手段は、スライダ両端をそれぞれ結合するように二つに分割する構成とすることができる。このような構成によれば、長尺なスライドレールを備えたスライダは、スライド方向(進退方向)の両端が固定されることとなり、対向するスライダが安定する状態で設置することができる。そして、両端に分かれたスライダ結合手段のそれぞれの連結フレーム両端に設けられる押圧部材を、既設立坑(マンホール)の内壁表面に当接することにより、スライド方向(進退方向)の前後に向かって引込の反力を吸収させることができる。
【0015】
さらに、上記各発明におけるクランプ手段は、半円状切欠部を対向させつつ該クランプフレーム表面に配置され、かつ該クランプフレーム表面上を摺動する挟持部と、この挟持部に連続し、かつ同一軸によって中間位置を枢支されてなるリンク部材と、このリンク部材の先端を進退させる第二のアクチュエータとを備えた構成とすることができる。
【0016】
上記構成によれば、クランプ手段そのものを薄肉に構成することができ、移動体のクランプフレームそのものを小型化することができる。すなわち、第二のアクチュエータを操作することにより、クランプすべき引込管を両側から挟持することが可能となり、クランプフレームの表面上における部材配置によって構成させることが可能となるのである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、スライダおよび移動体を分離して搬入できることから、既設のマンホールの内部に装置を搬入することが可能となる。しかも、当該マンホール内においてスライダと移動体を連結することにより、大型の引込装置を構成させることができ、地中埋設管交換工事に必要かつ十分な引込駆動を得ることができる。
【0018】
また、スライダ結合手段を備えた発明によれば、マンホールの内部に搬入したスライダの先端同士を結合することができ、移動体の進退の基礎となるべきスライダを安定的に一体化することができる。さらに、スライダ結合手段の押圧部材をマンホールの内壁面に当接させることによって、マンホール内における装置全体の位置が固定化され、引込作業時における引込駆動の反力をマンホールの内壁に分散させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、図1に示すように、左右対称の形状に設けられた二つの独立したスライダ1,2と、さらにスライダ1,2とは独立して設けられた移動体3とで構成されており、適宜間隔に配置するスライダ1,2の中間に移動体3を配置し、移動体3の左右両側をスライダ1,2に連結することによって、一体的な引込装置を構成するものである。
【0020】
スライダ1,2は、平面の形状が略I字形となる比較的細長く構成されたフレーム10,20を備え、このフレーム10,20には、長手方向に沿って伸縮する油圧シリンダ(アクチュエータ)11,21が搭載され、この油圧シリンダ(アクチュエータ)11,21の進退ロッドにスライド部12,22が連結されて、当該スライド部12,22を進退可能に構成している。また、フレーム10,20の括れ部分には、長手方向に沿って摺動面を有するスライドレール13,23が構成されており、上記スライド部12,22の搭載を可能にしている。従って、油圧シリンダ(アクチュエータ)11,21による進退方向の駆動力によって、スライド部12,22がスライドレール13,23に沿って進退できるように構成されているのである。なお、スライダ1,2の前後端付近は、括れ部分の両側において拡幅部が形成されており、この前後端付近にアジャスタボルト14,15,24,25が備えられて自立可能になっている。
【0021】
移動体3は、中央にクランプフレーム31を備え、このクランプフレーム31には、クランプ手段30が設けられており、地中埋設管の引き込む際に当該埋設管を掴持することができるものである。このクランプフレーム31の左右両側には、スライド連結部4,5が設けられている。このスライド連結部4,5は、平行な壁面部41,51と、この壁面部41,51の上端縁において左右外側に張り出した張出部42,52とで構成され、このスライド連結部4,5をスライダ1,2のスライド部12,22に連結することにより、上述のように、スライド部12,22が進退させるとき、これに伴って移動体3を進退させることができるのである。また、上記連結により、各部1,2,3を一体化させることとなるのである。
【0022】
スライダ1,2と移動体3との連結構造について説明する。スライダ1,2のスライド部12,22には、対向側表面に上下方向に適宜範囲で突出する係止部16,26と、その両側に穿設された雌ネジ部17,18,27,28が設けられている。他方、移動体3のスライド連結部4,5には、壁面部41,51の適宜個所において上下方向に構成された係止用溝43,53と、張出部42,52に貫設された雌ネジ部44,45,54,55とが設けられている。そこで、スライダ1,2の係止部16,26が移動体3の係止用溝43,53に係入されることにより、移動体3の位置決めがなされることとなり、この状態において、上記各雌ネジ部17,18,27,28,44,45,54,55が、それぞれ対向する位置にハイテンションボルト61,62,63,64を螺入することにより、全体を連結することができる。なお、スライド部12,22の進退に係る駆動力は、ハイテンションボルト61,62,63,64によってスライド連結部4,5に伝達され、また、係止部16,26と係止用溝43,53との係止によって、スライド連結部4,5の壁面部41,51の適宜範囲に及ぼすこととなり、上記駆動力を移動体3の全体に均等に伝達させることとなる。
【0023】
次に、スライダ1,2を構成するスライド部12,22の詳細について説明する。上述のとおり、スライド部12,22は、スライドレール13,23に搭載されるものであるが、スライドレール13,23を包み込むような態様でスライド部12,22が搭載されるものである。すなわち、図2(a)に示すように、スライド部12,22は、断面形状略C字形に構成されていることから、その開口する部分を上向きにするとともに、当該開口部分の周辺部12a,12b,22a,22bの内側表面をスライドレール13,23の上部摺動面に摺接させるようにして搭載されるのである。
【0024】
従って、スライダ部12,22の内部表面がスライドレール13,23の表面に接して位置が規制されるとともに、上記開口部分の周辺部12a,12b,22a,22bが、上記スライドレール13,23の摺動面に摺接されつつ下向きの重量が支えられるようになるのである。
【0025】
また、スライド部12,22を構成する開口部分の周辺部12a,12b,22a,22bのうち、スライダ1,2が対向する側に位置する開口部周辺部12b,22bは、移動体3を載置させるための平面部12c,22cが設けられている。この平面部12c,22cは、移動体3との連結のための雌ネジ部17,18,27,28が穿設されており(図1参照)、ハイテンションボルト61〜64によって連結される状態において、移動体3の張出部42,52が載置されるのである。なお、移動体3を載置するためには、上記平面部12c,22cのほかにも、図1中に示されるように、張出当接部19,29が構成されている。この張出当接部19,29は、スライド部12,22が進退する位置から離れた個所においてスライド方向に適宜長さを有して設けられており、移動体3の張出部42,52をスライド部12,22とともに支持することができるようになっている。
【0026】
次に、移動体3に備えられるクランプ手段30の詳細について説明する。上記のように、移動体3はスライド部12,22に連結され、油圧シリンダ(アクチュエータ)11,21の操作によって進退可能であることから、この移動体3のクランプ手段30が引き込むべき管を掴持することにより、移動体3が進退するとき、掴持した管を引き込むことができるのである。そこで、地中に埋設される既設管(コンクリート管)の内部に挿入され、かつ、後端に破砕装置を備えた先導管を掴持し、これを引き込むためには、十分な掴持力が必要となる。
【0027】
そこで、本実施形態においては、図2(b)に示すように、パンタグラフ状のリンク機構を使用し、このリンク機構の上位のリンクピン32に対し油圧シリンダ33が昇降させるように配置している。そして、下位のリンクピン34の位置を一定にすることにより、下位のリンクフレーム35,36の角度を変化させるものである。この下位のリンクフレーム35,36は、下位のリンクピン34を介して反対側の掴持片37,38に連続しており、図中右側のリンクフレーム35の角度が変化すると、図中左側の掴持片37の角度が変化し、図中左側のリンクフレーム36の角度が変化すると、図中右側の掴持片38の角度が変化するものである。そして、両掴持片37,38の対向端縁に、半円状の切欠部が構成され、当該対向端縁が密着するとき中央に円形の貫通孔が形成されることとなるのである。なお、掴持片37,38の変更角度は、クランプフレーム31に穿設された規制孔39,39により規制されるものであり、この規制孔39,39に沿って掴持片37,38が拡張するとき、中央の貫通孔が左右に分割され掴持状態を解除させるのである。
【0028】
次に、本実施形態による地中埋設管交換工事の方法について説明する。地中埋設管の交換工事の概略は、図3に示すように、既設立坑(マンホール)VH1,VH2の間に埋設される既設管OPの内部に先導管PPを挿入し(図3(a))、発進立坑として機能する発進側の既設立坑VH1において、先導管PPの末端に破砕装置CMおよび新設管NPを接続し(図3(b))、到達立坑として機能する発進側の既設立坑VH2において、先導管PPの先端を引き込むことにより行われる(図3(c))。先導管PPを1本引き込むごとに、到達側の既設立坑VH2では、先導管PPを取り除き、到達側の既設立坑VH1では、埋設すべき新設管NPを継ぎ足すことにより、新設管NPを到達側の既設立坑VH2まで移動させることにより埋設管の交換を終了するのである(図3(d),(e))。
【0029】
なお、上記工程中、既設管内部への先導管の挿入は、障害物が存在しないことから強い推進力を必要とせず、手作業により挿入することも可能であるが、既設管内に残留物が存在する場合などにおいては、図3(a)に示されるように、本実施形態の引込装置を使用して圧入することも可能である。また、図中の破砕装置は、破砕カッタ部CM1と操作部CM2とで構成され、かつ、個別に分解可能に構成されているものであって、新設管NPの2本に相当する長さを有していることから、これらを到達側の既設立坑VH2に引き込み、当該既設立坑VH2から搬出することにより上記工程が全て完了することとなる。
【0030】
ここで、到達側の既設立坑VH2に本実施形態の引込装置を設置する手順を説明する。一般的な既設立坑VH2は、内部口径に比較して開口径が小さくなっていることから、一体化した引込装置をそのまま既設立坑VH2に搬入することはできない。そのため、本実施形態のスライダ1,2および移動体3を分離した状態で、個別に既設立坑VH2に搬入し、当該既設立坑VH2の内部で合体させることによって、結果的に当該引込装置を既設立坑VH2に搬入することが可能となる。
【0031】
詳しく説明すると、図4に示すように、スライダ1,2を片方ずつ搬入し、両方が搬入されたのち、それぞれを所定の間隔で仮に設置する(図4(a),(b))。このとき、フレーム10,20の長手方向は先導管PPの引込方向に平行とし、移動体3のクランプフレーム31が設置されるべき側を先導管PPが既に挿入されている既設管OPの開口部側に配置する。次に、移動体3を搬入し、既に設置されているスライダ1,2の中間に配置する(図4(c))。このとき、クランプフレーム31が所定の側になるように向きを調整するとともに、張出部42,52をスライド部12,22および張出当接部19,29の上に載置し、ハイテンションボルト61〜64を螺入して、スライド部12,22と張出部42,52を連結する。上記のようにして、既設立坑VH2の内部で合体させた引込装置により、先導管を引き込む操作を開始するのである。
【0032】
引込方法は、クランプ手段30の掴持片37,38により先導管PPを掴持し、移動体3を引込方向に移動するのである。先導管PPの表面には、適宜間隔に小径部が構成されており、この小径部に掴持片37,38が係入することによって、確実な掴持を可能にするとともに、引込駆動力を確実に先導管PPに伝達することができる。上記移動体3の移動は、油圧シリンダ(アクチュエータ)11,21の操作により、スライド部12,22を介してなされる。移動体3が所定位置まで(油圧シリンダのストローク長だけ)移動すると、クランプ手段30による先導管PPの掴持を解除し、移動体3を元の位置まで後退させるのである。油圧シリンダ(アクチュエータ)11,21の有効ストローク長によっても異なるが、移動体3を数回(2〜3回)進退させることにより、これに相当する距離だけ先導管PPを引き込むことができ、これが1本の先導管PPの長さに相当することにより、1本の先導管PPの引込を完了する。その後、当該先導管PPを後続の先導管PPから分離し、撤去するのである。この分離後に上記移動体3の進退を再開することにより、次順位の先導管PPを引き込むことができるのである。これを繰り返し、全範囲にわたって引込を終了した時点において地中管の交換が完了するのである。
【0033】
本実施形態によれば、既設立坑(マンホール)を到達側立坑VH2として使用することができるので、引込装置を設置するための立坑を掘削する必要がなくなるものである。また、スライダ1,2と移動体3との連結はハイテンションボルト61〜64を螺入することによって行われ、非常に簡単であることから、十分な空間を確保できない既設管VH2の内部においても、短時間でかつ容易に連結することができる。
【0034】
次に、本発明の第二の実施形態について説明する。本実施形態は、スライダ1,2および移動体3に、スライダ結合手段を付加した構成である。このスライダ結合手段は、図5に示すように、フロント側のスライダ結合手段7とリア側のスライダ結合手段8の二種類で構成されており、フロント側のスライダ結合手段7は上記先導管PPの引込方向前方に設置されるもので、リア側のスライダ結合手段8は同後方に設置されるものである。両者は僅かに大きさが異なる相似形状であるので、フロント側結合手段7を例に説明すると、この結合手段7は、円弧状に湾曲してなる連結フレーム71と、この両端付近に設けられたスライダ結合部72,73とを備えており、スライダ結合部72,73の近傍において支持される押圧部材74,75が突設されている。
【0035】
連結フレーム71は、円弧形状の膨出側を外向きにしてなる板状部材で構成され、その外側表面には、複数のリブ76,77が設けられ、当該フレーム71の強度を補っている。スライダ結合部72,73は、連結フレーム71の板状表面に直交する平面を有しており、上記スライダ1,2の上面に当接できるようになっている。押圧部材74,75は、アジャスタボルトによって構成されており、連結フレーム71の両端とスライダ結合部72,73との中間に配置される支持基部78,79を貫通することによって、当該支持基部78,79よって支持されている。この支持基部78,79の貫通孔(図示せず)には雌ネジが螺刻されており、アジャスタボルトの螺進によって突出長を調整できるようになっている。
【0036】
また、上記結合手段7のスライダ結合部72,73には、長孔が穿設されており、これを貫通するボルトB1〜B4をスライダ1,2の上面に設けられるネジ穴91〜94に螺合させることによって固定できるものである。このように、当該結合手段(フロント側)7をスライダ1,2のフロント側先端付近に装着することにより、独立した二つのスライダ1,2をフロント側において結合させることができるのである。同様に、リア側のスライダ結合手段8をスライド部1,2のリア側に固定することにより、スライダ1,2をリア側において結合させることができる。
【0037】
上記のとおり、スライダ1,2のフロント側およびリア側で結合することにより、スライダ1,2およびスライダ結合手段7,8によって、全体的に略四辺形状の一体的な構成とすることができる。そして、両スライダ1,2の中間に配置される移動体3は、上記四辺形状の内側において進退可能に配置されることとなり、当該移動体3の移動領域を確保し得るものである。また、押圧部材74,75は、上述のように、アジャスタボルトで構成されており、その突出長を調整することにより、その先端部を既設立坑(マンホール)の内壁面に当接させ、かつ、当該壁面を押圧することが可能となるから、フロント側およびリア側の双方において押圧部材74,75,84,85の先端部を上記壁面に当接することにより、スライダ1,2を含む装置全体の位置決めができることとなる。
【0038】
なお、上記スライダ結合手段7,8の連結フレーム71,81は、直線状に構成することも可能であるが、この場合、連結フレーム71,81がスライダ1,2の上方に跨って、両スライダ1,2の中間における空間を遮ることとなり得る。そこで、当該連結フレーム71,81を外向きに膨出する弧状に構成することにより、両スライダ1,2の中間における空間を有効に利用することができるのである。
【0039】
上記構成の本実施形態を既設立坑(マンホール)VH2に設置する場合には、図4(b)において示したスライダ1,2の設置後に、フロント側のスライダ結合手段7を当該既設立坑VH2に搬入し、これによりスライダ1,2のフロント側を結合する。また、図4(c)において示した移動体3の設置後に、リア側のスライダ結合手段8を搬入させ、これによりスライダ1,2のリア側を結合するのである。そして、最後にフロント側およびリア側のスライダ結合手段7,8の押圧部材74,75,84,85を調整して既設立坑VH2の壁面を押圧させることにより、引込装置全体が当該既設立坑VH2の所定位置に安定的に設置されることとなる。
【0040】
本発明の実施形態は上記のとおりであるが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様をとることができる。例えば、クランプ手段30におけるリンク部材の駆動力は油圧シリンダ33による構成としたが、これは、スライド部12,22の進退方向に移動のために油圧シリンダ11,12を使用したことから、同じ油圧ユニットから油圧を使用することによりクランプさせることができるように構成したものであって、油圧シリンダ33に代わる駆動力によりクランプさせる構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第一の実施形態を示す説明図である。
【図2】(a)はIIA−IIA断面図であり、(b)はIIB−IIB断面図である。
【図3】本発明が使用される工事方法の概略を示す説明図である。
【図4】使用態様を示す説明図である。
【図5】他の実施形態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0042】
1,2 スライダ
3 移動体
4,5 スライド連結部
7,8 スライダ結合手段
10,20 フレーム
11,21 油圧シリンダ(アクチュエータ)
12,22 スライド部
13,23 スライドレール
16,26 係止部
19,29 張出当接部
30 クランプ手段
31 クランプフレーム
42,52 張出部
71,81 連結フレーム
72,73 スライダ結合部
74,75,84,85 押圧部材
91,92,93,94 ネジ穴
B1,B2,B3,B4 ボルト
CM 破砕装置
NP 新設管
OP 既設管
PP 先導管
VH1 発進側の既設立坑(マンホール)
VH2 到達側の既設立坑(マンホール)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
独立した二つのスライダと、このスライダに着脱可能な移動体とを備えた地中埋設管交換工事用引込装置であって、
上記スライダは、フレームと、このフレームに設けられたスライドレールと、このスライドレールに沿って進退可能に設けられたスライド部と、このスライド部を進退させるアクチュエータとを備え、
上記移動体は、クランプ手段を有するクランプフレームと、このクランプフレームの両側に設けられ、上記スライダのスライド部に着脱可能なスライド連結部とを備え、
上記二つのスライダを引込方向の左右両側に配置するとともに、この中間に上記移動体を配置し、上記スライド部に上記移動体のスライド連結部を連結するとき、上記スライダのアクチュエータによりスライド部を介して上記移動体を進退可能にしてなることを特徴とする地中埋設管交換工事用引込装置。
【請求項2】
独立した二つのスライダと、このスライダを連結するスライダ結合手段と、上記スライダに着脱可能な移動体とを備えた地中埋設管交換工事用引込装置であって、
上記スライダは、フレームと、このフレームに設けられたスライドレールと、このスライドレールに沿って進退可能に設けられたスライド部と、このスライド部を進退させるアクチュエータとを備え、
上記スライダ結合手段は、適宜長さを有する連結フレームと、この連結フレームの両端付近に設けられ、上記スライダの先端付近に着脱可能なスライダ結合部と、このスライダ結合部の近傍に突設された押圧部材とを備え、
上記移動体は、クランプ手段を有するクランプフレームと、このクランプフレームの両側に設けられ、上記スライダのスライド部に着脱可能なスライド連結部とを備え、
上記二つのスライダを引込方向の左右両側に配置するとともに、この中間に上記移動体を配置し、上記スライド部に上記移動体のスライド連結部を連結するとき、上記スライダのアクチュエータによりスライド部を介して上記移動体を進退可能にし、上記スライダ結合手段のスライダ結合部を上記スライダの対向端縁付近に装着するとき、左右に分離する二つのスライダの端部を結合させてなることを特徴とする地中埋設管交換工事用引込装置。
【請求項3】
前記スライダ結合手段の連結フレームは、長手方向に向かって弧状に形成された連結フレームであり、上記スライダ結合手段を前記スライダに装着するとき、上記連結フレームの膨出側を外向きにしてなる請求項2記載の地中埋設管交換工事用引込装置。
【請求項4】
前記スライダ結合手段は、スライダ両端をそれぞれ結合するように二つに分割されて構成されたスライダ結合手段である請求項2または3記載の地中埋設管交換工事用引込装置。
【請求項5】
前記クランプフレームのクランプ手段は、半円状切欠部を対向させつつ該クランプフレーム表面に配置され、かつ該クランプフレーム表面上を摺動する挟持部と、この挟持部に連続し、かつ同一軸によって中間位置を枢支されてなるリンク部材と、このリンク部材の先端を進退させる第二のアクチュエータとを備えたクランプ手段である請求項1ないし4のいずれかに記載の地中埋設管交換工事用引込装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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