説明

地中埋設箱用配管接続部の製造方法

【課題】地中埋設箱に接続する地中埋設管の本数や径が変化しても筒状接続部品付きモルタルパネルを簡単に製造することができる地中埋設箱用配管接続部の製造方法を提供する。
【解決手段】地中埋設管を接続するための筒状接続部品7を、磁石12aの吸引力によって型枠10底面の任意の部位に起立状態で複数配置し、上記型枠内における上記筒状接続部品の外側にモルタルを打設することにより、上記筒状接続部品が一体化されたモルタルパネルを形成し、この筒状接続部品付きのモルタルパネルを、4つの側壁のうち少なくとも1つの側壁に矩形状の開口を有する略箱状の地中埋設箱の開口縁部に取り付けて固定することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気ケーブルや通信ケーブル等を地中に配線する際に使用されるハンドホール、マンホール等の地中埋設箱に関し、より詳しくは、その地中埋設箱に可撓性を有する地中埋設管を接続する配管接続部の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気ケーブルや通信ケーブルを地中に埋設する際に使用されるマンホールやハンドホール等の地中埋設箱は、通常、鉄筋コンクリート製からなり工場で製作された後、現場に搬入されて地中に設置されるようになっている。また、地中埋設箱の側面には上記ケーブルを収容する地中埋設管を接続するための配管接続部が設けられている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この種の地中埋設箱は、用途に応じて各種サイズが用意されているが、大型のものは搬出、搬入時に大型の重機が必要になるだけでなく現場での作業性も悪い。そこで、運搬性、作業性を考慮した地中埋設箱として、地中埋設箱を例えば箱上部と箱下部に分割し、現場で組み立てて一体化する組立式のものが知られている。
【0004】
このような地中埋設箱の側壁下部には、地中埋設管を接続するための薄肉部分、いわゆるノックアウトが設けられており、ドリルで穿孔することによりそのノックアウトに必要な数の開口を設け、地中埋設管の接続側端部を挿入し、上記開口と地中埋設管の隙間をモルタル等によりシーリングするようになっている。
【0005】
また、地中埋設箱の側壁にノックアウトを設けず開口とし、ダクトと壁面パネルとをコンクリート打設によって一体化し、そのダクト付き壁面パネルを上記開口縁部に取り付けることによってノックアウトを構成するものも知られている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−238118号公報
【特許文献2】特開2006−101575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1の地中埋設箱では、ノックアウトに接続する地中埋設管の本数、サイズ(径)が変化するのに応じてサイズの異なる開口を接続本数分、ドリルで穿設しなければならず、特に、ノックアウトに多条敷設用の開口を穿設するには、相当の手間と時間がかかっていた。
【0008】
また、上記特許文献2の地中埋設箱では、ダクト付き壁面パネルをノックアウトの開口縁に取り付けるように構成されているため、接続部品取付け用の開口をドリル加工する必要はないものの、壁面パネルに一体化するダクトの本数や径が変化するような状況は考慮されておらず、ノックアウトにおける接続部品固定方法は、現状では確立されていない。
【0009】
本発明は以上のような従来のノックアウトの接続部品固定方法における課題を考慮してなされたものであり、地中埋設箱に接続する地中埋設管の本数や径が変化しても筒状接続部品付きモルタルパネルを簡単に製造することができる地中埋設箱用配管接続部の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、地中埋設管を接続するための筒状接続部品を、磁石の吸引力によって型枠底面の任意の部位に起立状態で複数配置し、
上記型枠内における上記筒状接続部品の外側にモルタルを打設することにより、上記筒状接続部品が一体化されたモルタルパネルを形成し、
この筒状接続部品付きのモルタルパネルを、4つの側壁のうち少なくとも1つの側壁に矩形状の開口を有する略箱状の地中埋設箱の開口縁部に取り付けて固定する地中埋設箱用配管接続部の製造方法である。
【0011】
本発明において、内径の異なる上記筒状接続部品を組み合わせて上記型枠底面に配置することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、地中埋設箱に接続する地中埋設管の本数や径が変化しても筒状接続部品付きモルタルパネルを簡単に製造することができる地中埋設箱用配管接続部の製造方法を提供することができるという長所を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る地中埋設箱の全体構成を示す縦断面図である。
【図2】図1に示す接続部品付きパネルの斜視図である。
【図3】図1に示す接続部品付きパネル製造用の型枠および治具を示す斜視図である。
【図4】図3に示す治具の分解斜視図である。
【図5】図1に示す下部箱部品の外観を示す斜視図である。
【図6】下部箱部品の側壁開口に接続部品付きパネルを装着した状態を示す斜視図である。
【図7】図1の接続部品付きパネル取付け部分の拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に示した実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0015】
1. 地中埋設箱の全体構成
図1において、ハンドホールやマンホール等の地中埋設箱1は、上面に円形開口部2aが設けられ下方が開放されている上部枠部品2と、上部および側面のノックアウトが開放され底板部3aを有する下部箱部品3と、その下部箱部品3におけるノックアウト部分の開口を塞ぐようにして取り付けられる接続部品付きパネル4と、上記円形開口部2aと連通する状態で上記円形開口部2aの上側周縁に配置される環状の蓋枠5と、その蓋枠5に開閉自在に取り付けられる円形の蓋6とを備えている。なお、蓋6は地中埋設箱1の使用形態を説明するために示したものである。
【0016】
本実施形態では立方体からなる地中埋設箱を例に取り説明するが、地中埋設箱1の形状は立方体に限らず、直方体やその他の形状であってもよい。
【0017】
なお、上部枠部品2と下部箱部品3との接続目地部Jにおいて、下部箱部品3の接続面には凹溝(図示しない)が形成されている。
【0018】
上記接続面および凹溝にはエポキシ系樹脂接着剤が塗布され、上部枠部品2と下部箱部品3とが接続されて一体化するようになっている。また、上部枠部品2と下部箱部品3とを接続する接着剤としては、上記エポキシ系樹脂接着剤以外に、合成ウレタン系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、変性シリコン樹脂系接着剤、石膏系接着剤、α−シアノアクリレート系接着剤等を使用することができる。
【0019】
また、蓋枠5と上記円形開口部2aの上側周縁との接続についても、上記上部枠部品2と下部箱部品3とを接続する接着剤と同じ接着剤が塗布され、一体化されるようになっている。
【0020】
本実施形態では上部枠部品2と下部箱部品3とを接続し、その下部箱部品3にノックアウト部分Nが形成されている地中埋設箱を例に取り説明するが、ノックアウト部分Nを必要とする地中埋設箱であれば上記分割式に限らず一体に構成されているものであってもよい。また、上部枠部品2と下部箱部品3との間に高さ調整用の接続部品を1段または複数段含むものであってもよい。
【0021】
下部箱部品3は、方形または矩形の底板部3aと、その底板部3aの外周各辺から立設される窓枠状の側壁部3bとが一体化されており、その側壁部3bのノックアウト部分Nに形成されている開口をカバーするようにして接続部品付きパネル4が取り付けられている。
【0022】
上部枠部品2および下部箱部品3を構成しているコンクリートとしては、通常コンクリートの他、コンクリートに軽量骨材を混ぜ合わせて通常コンクリートよりも密度を低くした軽量コンクリート、またはレジンコンクリートを使用することができる。なお、上記通常コンクリート、軽量コンクリートには強度を補強するための鉄筋が埋設されるものとする。
【0023】
2. 接続部品付きパネルの構成
図2は接続部品付きパネルの構成を示す斜視図である。
【0024】
同図において、接続部品付きパネル4は、図1に示した側壁部3bのノックアウト部分Nの開口縁に取り付けられるモルタルパネル4aと、そのモルタルパネル4aに一体に設けられる筒状の接続部品7とから構成されている。
【0025】
上記モルタルパネル4aとしては、合成樹脂を混練したモルタルであるレジンモルタル、セメントに軽量細骨材を混ぜ水で練り合わせた軽量モルタルが示される。
【0026】
上記接続部品7は、地中埋設管を接続するための筒状接続部品、例えばベルマウスからなり本実施形態では6本集合配置されている。
【0027】
図3は、上記接続部品付きパネル4を製造するための型枠および治具を示した斜視図である。
【0028】
同図において、型枠10は、その底面を構成する長方形の本体10aと、その本体10aの前後両側に取り外し可能にセットされる前側板10b(ただし、同図では前側板10bを取り外した状態を示している)および後側板10cと、本体10aの左右両端から立ち上げられた右側板10dおよび左側板10eとから構成され、浅箱状に構成されている。
【0029】
なお、10fは仕切板であり、二つの接続部品付きパネル4を同時に製造するために設けられている。
【0030】
また、11は接続部品7(図中、二点鎖線で示す)を型枠10にセットするための治具であり、この治具11は、接続部品位置決め部材12と接続部品押え部材13とから構成されている。
【0031】
図4は上記治具11の分解斜視図である。
【0032】
上記接続部品位置決め部材12は、型枠10の本体10aに吸着し得るマグネットが底面に埋め込まれたマグネット部12aとそのマグネット部12aから立設されたシャフト12bと、そのシャフト12bが軸通する位置決めリング12cとから構成されている。上記位置決めリング12cの外径は、接続部品P(図3参照)の内径よりも若干小さい値に設定されている。
【0033】
また、上記シャフト12bの下部には雄ねじ部が形成されており、この雄ねじ部をマグネット部12aに貫通して形成されている雌ねじ部に螺合させることによって、マグネット部12aとシャフト12bが接続されている。
【0034】
上記接続部品押え部材13は、上記シャフト12bを軸通させるガイド孔13aを有する筒状体からなり、接続部品Pの内壁に形成されている環状の段部に上方から当接して荷重を加えることができる押圧部13bと、取手部13cとを備えている。
【0035】
図3において、接続部品Pを型枠10にセットする場合、まず、接続部品位置決め部材12のマグネット部12aを、型枠10における本体10aの所望の部位に吸着させる。次いで、位置決めリング12cをシャフト12bに通し、それにより、接続部品Pを位置決めする。
【0036】
次に、接続部品Pが位置決めされた状態で接続部品押え部材13をシャフト12bに通す。それにより、接続部品Pの下部端面が型枠10の本体10aに押え付けられ、接続部品Pが型枠10に固定される。
【0037】
上記した接続部品Pの位置決めと固定を、接続部品付きパネル4に取り付ける接続部品Pの本数分について行う。
【0038】
なお、上記位置決めリング12cの外径および上記接続部品押え部材13の押圧部13bの径が異なるものを複数用意すれば、径の異なる接続部品Pを混在して型枠10にセットすることができる。
【0039】
複数の接続部品Pを型枠10に固定した状態でその型枠10内にモルタルを打設すれば、複数の接続部品Pとモルタルパネルが一体化された接続部品付きパネル4を簡便に製造することができる。
【0040】
なお、脱型時には、シャフト12bを締め付け方向に回転させてマグネット部12bの下面からシャフト12bを突出させれば、マグネット部12bを本体10aから簡単に引き離すことができる。
【0041】
また、径の異なる接続部品Pが混在する接続部品付きパネル4も簡便に製造することができる。
【0042】
3. 地中埋設箱への取付け方法
図5は上記構成を有する接続部品付きパネル4が装着される下部箱部品3の外観を示す斜視図である。
【0043】
同図において、下部箱部品3は、矩形状の底板部3aと、その底板部3aの外周各辺から一体に立ちあげられた窓枠状の側壁部3bとを有している。
【0044】
上記各側壁部3bには上記接続部品付きパネル4を装着するための開口Sが矩形状に形成されている。
【0045】
なお、本実施形態では、下部箱部品3の各側面に開口Sを形成(4面箱抜き)したが、開口Sは側面に1箇所であってもよく、複数箇所(2面箱抜き)であってもよい。
【0046】
図6は、開口縁部S′に接続部品付きパネル4を取り付けた状態を示す斜視図である。
【0047】
同図において、下部箱部品3と別に製造された接続部品付きパネル4は、開口縁部S′に嵌め込まれ、仮止めされる。
【0048】
仮止めは、接続部品付きパネル4の上面と開口縁部S′との隙間にクサビを打ち込むことによって行われる。
【0049】
次いで、接続部品付きパネル4と開口縁部S′との隙間にテープ状の水膨張ブチルゴムをバックアップ材として詰め込み、その上からさらにゴム系、エポキシ樹脂系、ウレタン樹脂系、石膏系等の接着剤を塗布し、接続部品付きパネル4を開口縁部S′に接着する。
【0050】
4. 接続部品付きパネル取付け部分の断面構造
図7は接続部品付きパネル取付け部分の拡大縦断面図である。
【0051】
同図において、下部箱部品3の側壁部3bに形成された開口Sを閉塞するようにして接続部品付きパネル4が取り付けられ、側壁部3bと一体化される。
【0052】
開口縁部S′の内側寄りには接続部品付きパネル4の外周部と係合する段部3cが形成されており、接続部品付きパネル4を位置決め(嵌め込み深さ方向において)するとともに、地中埋設箱1に加わる土圧、水圧に対して接続部品付きパネル4を反対方向から支えるようになっている。なお、図中14は、側壁部3bの開口S近傍に配設された補強用の鉄筋を示している。
【0053】
接続部品7の一方端部7aは接続部品付きパネル4に固定されており、地中埋設箱1の内部に向けて開口しており、他方端部7bは接続部品付きパネル4から外向けに突出し、図示しない地中埋設管が挿入される受け口を構成している。
【0054】
また、図中、Bは上記した水膨張ブチルゴムを示し、Cは上記した接着剤を示している。
【0055】
また、上部枠部品2と下部箱部品3の接続目地部JにはT−25荷重(後輪1軸あたり100kN,1輪あたり50kN)に耐える構造計算を行うために、上部枠部品2と下部箱部品3を接着剤で接続している。接続目地部Jに充填された接着剤は防水機能も兼ね備えている。
【0056】
なお、本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して十分に説明しているが、当該技術分野における熟練者にとって様々の変形や修正を加えて実施することは可能であり、そのような変形や修正は、本発明の課題解決思想の範囲から逸脱しない限りにおいて、本発明の技術的範囲に含まれると解されるべきである。
【符号の説明】
【0057】
1 地中埋設箱
2 上部枠部品
2a 円形開口部
3 下部箱部品
3a 底板部
3b 側壁部
3c 段部
4 接続部品付きパネル
4a モルタルパネル
5 蓋枠
6 蓋
7 接続部品
7a 一方端部
7b 他方端部
10 型枠
10a 本体
10b 前側板
10c 後側板
10d 右側板
10e 左側板
10f 仕切板
11 治具
12 接続部品位置決め部材
12a マグネット部
12b シャフト
12c 位置決めリング
13 接続部品押え部材
13a ガイド孔
13b 押圧部
13c 取手部
14 鉄筋
B 水膨張ブチルゴム
C 接着剤
J 接続目地部
S 開口
S′ 開口縁部
N ノックアウト部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中埋設管を接続するための筒状接続部品を、磁石の吸引力によって型枠底面の任意の部位に起立状態で複数配置し、
上記型枠内における上記筒状接続部品の外側にモルタルを打設することにより、上記筒状接続部品が一体化されたモルタルパネルを形成し、
この筒状接続部品付きのモルタルパネルを、4つの側壁のうち少なくとも1つの側壁に矩形状の開口を有する略箱状の地中埋設箱の開口縁部に取り付けて固定することを特徴とする地中埋設箱用配管接続部の製造方法。
【請求項2】
内径の異なる上記筒状接続部品を組み合わせて上記型枠底面に配置する請求項1に記載の地中埋設箱用配管接続部の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−246891(P2011−246891A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118607(P2010−118607)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(398062574)カナフレックスコーポレーション株式会社 (62)
【Fターム(参考)】