説明

地中孔の掘削方法及びその装置

【課題】掘削流体を用いて地中孔を掘削するにあたって、被圧水を伴った含水層に逢着しても含水層からの被圧水の流出やこれに伴う土砂噴出によって地中孔の掘削が妨げられることを防止する地中孔の掘削方法を提供する。
【解決手段】ドリルパイプを用いて地中孔を掘削するに当り、含水層に逢着したとき、ドリルパイプ内部を通ってドリルパイプ先端に設けられた掘削ビットのノズルから噴射しドリルパイプの外周通路を通って排出する掘削流体の注入圧を昇圧すると共に、掘削流体の排出部に含水層からの被圧水の圧力に対抗する背圧を付与し、被圧水の圧力と背圧とをバランスさせながら掘削する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中孔の掘削方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に導水管路等の地中管を布設する技術として、地表から地中に任意の計画曲線に沿う管路を掘削することができる弧状推進工技術がある(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0003】
この技術によれば、ドリルパイプの先端に掘削ツールを装着して、地表から地中に進入する計画曲線に沿って、所望の孔の方位、傾斜、位置に応じて孔の軌跡を調整しながら地中孔を形成することができ、例えば河川の下や海底下や山地の地中の岩石層を通る地中孔を形成することができる。
【0004】
地中孔の掘削には掘削流体を用いる。掘削流体は、通常、掘削ツールのドリルパイプ内部を通り、先端の掘削ビットのノズルから噴射して、地中孔内とドリルパイプ外側との間を通って発進点に戻り、循環利用する。このような掘削流体は、掘削で生じる掘り屑や土砂を発進点に運搬する役割を担っている。また、掘削流体としては、例えば清水や粘性を有する泥水が用いられる。より詳細には、例えば、山地の地中に登り勾配の地中孔を掘削するときには清水が用いられ、山地の地中に水平あるいは下り勾配の地中孔を掘削するときには粘性を有する泥水が用いられる。
【0005】
このような地中孔を施工しているときに、例えば被圧水を伴った含水層に逢着すると、含水層からの被圧水の流出により掘削流体が希釈されてしまう。粘性を有する泥水を掘削流体として用いる地中孔の掘削では、その掘削流体が希釈されてしまうと、掘削で生じる掘り屑や土砂の運搬に支障をきたし、掘削流体が使用不可能となるおそれがある。また、岩盤が破砕されている破砕層は、砕かれた岩石破片の間に隙間が多い状態となっており、その隙間には水が含まれて被圧水を伴った含水層となっている場合がある。そして、このような破砕層に逢着すると、被圧水の流出に伴って大量の土砂が地中孔内に噴出することがある。このような土砂噴出が発生すると、地中孔内とドリルパイプ外側との間が土砂で詰まって、掘削流体の循環利用が妨げられたり、ドリルパイプの進退が妨げられるおそれがある。
【0006】
このような問題を回避するための従来技術として、予め把握されている含水層に薬液を注入することにより含水層から出る被圧水が地中孔内へ流出することを止める技術が知られている。しかしながら、薬液注入による含水層からの被圧水の流出防止技術は、含水層の存在区域によっては施工の困難性が高く、また高コストであるといった問題がある。
【0007】
また、含水層の存在区域を事前に把握できないことも多く、このような場合、地中孔の掘削中に被圧水を伴った含水層に逢着して被圧水の流出が発生すると、地中孔内から薬液注入を行うこととしても、例えば注入した薬液が被圧水の水圧によって完全に注入しきれずに途中にとどまってしまうなど、施工の困難性が高い。
【0008】
また、従来の地中ボーリング装置の口元のシールは激しく摩耗する欠点があった。
【特許文献1】特開平10―317883号公報
【特許文献2】特許第3542108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、掘削流体を用いて地中孔を掘削するにあたって、被圧水を伴った含水層に逢着しても含水層からの被圧水の流出やこれに伴う土砂噴出によって地中孔の掘削が妨げられることを防止する地中孔の掘削方法を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、上記地中孔の掘削方法を好適に実施することができる装置を提供する。
【0011】
上記方法は、掘削流体を用いる背圧付与技術を提供するが、上記装置は、そのとき起こるシール機能を確実に永続的にかつ効果的に達成する技術も併せて提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成する本発明の地中孔の掘削方法は、
ドリルパイプを用いて地中孔を掘削するに当り、含水層に逢着したとき、上記ドリルパイプ内部を通ってドリルパイプ先端に設けられた掘削ビットのノズルから噴射しドリルパイプの外周通路を通って排出する掘削流体の注入圧を昇圧すると共に、掘削流体の排出部に上記含水層からの被圧水の圧力に対抗する背圧を付与し、上記被圧水の圧力と上記背圧とをバランスさせながら掘削することを特徴とする。
【0013】
本発明の地中孔の掘削方法は、含水層に逢着したとき、上記掘削流体の注入圧を昇圧すると共に、掘削流体の排出部に含水層からの被圧水の圧力に対抗する背圧を付与し、被圧水の圧力と背圧とをバランスさせているため、含水層から出る被圧水が地中孔内へ流出することが回避され、被圧水で掘削流体が希釈されることを防止しながら地中孔を掘削することができる。また、含水層からの被圧水の流出を回避することにより、その被圧水流出に伴って土砂が地中孔内に噴出することも回避される。従って、本発明の地中孔の掘削方法によれば、被圧水を伴った含水層に逢着しても含水層からの被圧水の流出やこれに伴う土砂噴出によって地中孔の掘削が妨げられることが効果的に防止される。
【0014】
また、上記目的を達成する本発明の地中孔の掘削装置は、ドリルパイプで掘削する地中孔の入口を閉止する閉止部を設け、この閉止部には、
(a)掘削流体の排出部に含水層からの被圧水の圧力に対抗する背圧を付与する背圧付与部、および
(b)上記ドリルパイプが貫通し、外径に掘削流体の背圧を受ける筒体であって、ドリルパイプの上記地中孔内への前進後退を許容するとともにドリルパイプと一体回転する機構を有するシール
を備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明の地中孔の掘削装置によれば、掘削する地中孔の入口を閉止する閉止部に備えられた背圧付与部で、掘削流体の排出部に含水層からの被圧水の圧力に対抗する背圧を付与することによって、被圧水の圧力と背圧とをバランスさせることができる。これにより、含水層から出る被圧水が地中孔内へ流出することが回避され、被圧水で掘削流体が希釈されることを防止しながら地中孔を掘削することができる。また、含水層からの被圧水の流出を回避することにより、その被圧水流出に伴って土砂が地中孔内に噴出することも回避される。また、上記シールが、ドリルパイプが貫通し、外径に掘削流体の背圧を受ける筒体であるため、外径に水圧を受けることにより内径がドリルパイプの外径に圧着する。従って、止水のために、油圧などによる外部からの圧力によってシールに外周方向からの圧縮力を加えることが不要である。また、上記シールがドリルパイプの地中孔内への前進後退を許容するとともにドリルパイプと一体回転する機構を有しているため、シールのドリルパイプと接触している部分が、ドリルパイプを回転させることによって摩耗することが回避される。そのためドリルパイプを前進後退させても回転させても止水性能が維持され、被圧水の止水を永続的にかつ効果的に達成することができる。従って、本発明の地中孔の掘削装置によれば、被圧水を伴った含水層に逢着しても含水層からの被圧水の流出やこれに伴う土砂噴出によって地中孔の掘削が妨げられることを効果的に防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の地中孔の掘削方法やその装置によれば、被圧水を伴った含水層に逢着しても含水層からの被圧水の流出やこれに伴う土砂噴出によって地中孔の掘削が妨げられることを効果的に防止する技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の地中孔の掘削装置についての一実施形態を示す側面図である。
【図2】図1に示すA部の拡大図である。
【図3】従来の地中ボーリング装置の掘削口止水装置を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
図1は、本発明の地中孔の掘削装置についての一実施形態を示す側面図である。また、図2は、図1に示すA部の拡大図である。尚、図1に示すA部については縦断面が示されている。
【0020】
図1に示す本実施形態の地中孔の掘削装置100は、ドリルパイプ200を用いて山地の地中に計画曲線に沿う横孔を掘削する掘削装置である。
【0021】
図1に示すように、地中孔の掘削装置100には、ドリルパイプ200で掘削する地中孔の入口に挿入されるコンダクターパイプ110と、このコンダクターパイプ110に連結されて地中孔の入口を閉止する閉止部120が設けられている。この閉止部120が、本発明にいう閉止部の実施例である。また、この閉止部120には、マニホールド121を介して設けられた4つのボールバルブ1221,1222,1223,1224と、止水ラバー123とが設けられている。
【0022】
ドリルパイプ200は、地中孔内に掘削流体を送り込む役割を担うものである。このドリルパイプ200は、管体部210と、管体部210よりも太径のツールジョイント部220とから構成されており、ツールジョイント部220にはドリルパイプ200を継ぎ足すためのねじが切ってある。また、ドリルパイプ200の先端には、図示は省略するが、地磁気を測定する測定器を有する非磁性カラーが装着されており、それに続いて、マッドモータと、マッドモータにより回転駆動される掘削ビットとが装着されている。地中孔の掘削にあたっては、ドリルパイプ200内部を通り、先端の掘削ビットのノズルから噴射して、地中孔内とドリルパイプ200外側との間を通って発進点に戻り、循環利用する、図示しない高圧ポンプを用いて送り出された掘削流体を、発進点のドリルパイプ200内部に注入する。これにより、マッドモータが回転し、その回転が掘削ビットに伝達され、地中孔が掘削される。尚、マッドモータは、略中間部分においてドリルパイプ200に対して所定の角度で折れ曲がったものである。そのため、ドリルパイプ200を軸回りに回転させない状態で掘削することにより、曲がった地中孔が形成される。また、ドリルパイプ200を軸回りに回転させた状態で掘削することにより、真っ直ぐな地中孔が形成される。
【0023】
閉止部120に設けられた4つのボールバルブ1221,1222,1223,1224は、入口を閉止した地中孔内から地中孔外に掘削流体を排出する、互いに径の異なるバルブである。被圧水を伴った含水層に逢着していないときは、これら4つのボールバルブ1221,1222,1223,1224全てを全開にした状態とする。このように、掘削流体の排出箇所にボールバルブを用いることで、掘削流体に混じった掘り屑や土砂で排出箇所が詰まることが防止される。尚、ここでは、2インチと4インチと6インチと8インチのものが用いられている。また、これら4つのボールバルブ1221,1222,1223,1224は、被圧水を伴った含水層に逢着したとき、含水層からの被圧水の圧力に対抗する背圧を付与するバルブでもある。より詳細には、4つのボールバルブ1221,1222,1223,1224のうちの、含水層からの被圧水の圧力に対応するボールバルブを閉じることで圧力損失を発生させ、その結果、被圧水の圧力に対抗する背圧が付与されることとなる。これにより、被圧水の圧力と背圧とがバランスする。4つのボールバルブ1221,1222,1223,1224のうちの径の大きいボールバルブを閉じることで、径の小さいボールバルブを閉じる場合よりも大きな背圧を付与することができる。そして、径の異なる4つのボールバルブ1221,1222,1223,1224を組み合わせることにより、地中孔内に所望の背圧が付与される。この4つのボールバルブ1221,1222,1223,1224の組み合わせが、本発明にいう排水部および背圧付与部の実施例である。尚、含水層からの被圧水の圧力に対抗する背圧としては、被圧水の圧力に均衡する背圧であってもよく、あるいは、被圧水の圧力よりも僅かに大きい背圧であってもよい。また、付与する背圧の微調整は、上記高圧ポンプにおける掘削流体を送り出す圧力の調整をボールバルブの開閉と組み合わせることによって行う。
【0024】
ここで、従来の地中ボーリング装置の口元のシールについて、図3を参照して説明する。
【0025】
図3に、従来の地中ボーリング装置の掘削口止水装置の縦断面図を例示した。
【0026】
従来の地中ボーリング装置の掘削口止水装置300は、例えば図3に示すように、止水すべき部分の外周にゴム等の弾性シール310を外嵌し、油圧などによる外部からの圧力によって弾性シール310に外周方向から圧縮力を加える形式のものであった。
【0027】
ここで、ドリルパイプは、掘削時に必要に応じて軸回りに回転させながら使用するものである。また、上述したように、弾性シール310は、止水のために弾性シール310に加える圧縮力を外部からの圧力によって加えるものである。そのため、このような弾性シール310は静止しており、ドリルパイプを回転させると、弾性シール310のドリルパイプと接触している部分が激しく摩耗するといった問題がある。
【0028】
図1,図2に戻って、本実施形態の地中孔の掘削装置100の説明を続ける。
【0029】
本実施形態の地中孔の掘削装置100の閉止部120に設けられた止水ラバー123は、ドリルパイプ200が貫通するシールであって、紡錘状の自緊性筒体である。また、この止水ラバー123は、掘削流体の背圧を受ける外径1232を有し、ドリルパイプ200の地中孔内への前進後退が許容されている。そのため、ドリルパイプ200を前進後退させたとき、止水ラバー123の内径1231は、ドリルパイプ200の管体部210の外径211にも、ドリルパイプ200のツールジョイント部220の外径221にも圧着する。従って、止水のために、油圧などによる外部からの圧力によって止水ラバー123に外周方向からの圧縮力を加えることが不要である。また、この止水ラバー123は、外部からの圧力による圧縮力を加えることが不要であることから、ドリルパイプ200と一体回転させることが可能であって、止水ラバー123には、ドリルパイプ200と一体回転する回転機構が備えられている。より詳細には、この止水ラバー123は、管体126に対し、ベアリング125を介して回転自在に設けられた鋼製の回転体124に、ボルト1241を用いて着脱自在に取り付けられており、回転体124とともに回転する。止水ラバー123にこのような回転機構が備えられていることにより、止水ラバー123のドリルパイプ200と接触している部分が、ドリルパイプ200を回転させることによって摩耗することが回避される。そのためドリルパイプ200を前進後退させても回転させても止水性能が維持され、被圧水の止水を永続的にかつ効果的に達成することができる。この止水ラバー123が、本発明にいうシールの実施例である。尚、止水ラバー123の回転体124に取り付けられる側には、この側を補強する鋼リングが内蔵されている。これにより、ドリルパイプ200を前進後退させて、ドリルパイプ200の管体部210よりも太径のツールジョイント部220の外径221が止水ラバー123の内径1231に圧着しているとき、止水ラバー123と回転体124との間に隙間が生じることが防止されている。
【0030】
また、この閉止部120には、リリーフバルブ127、圧力計128、およびボールバルブ129も設けられている。
【0031】
閉止部120に設けられたリリーフバルブ127は、マニホールド121やボールバルブ1221,1222,1223,1224に掘り屑や土砂が詰まるなどして急激に圧力が高まったときに自動で弁が開いて圧力を逃がすためのバルブである。
【0032】
閉止部120に設けられた圧力計128は、地中孔内の圧力を測定する計測器である。
【0033】
閉止部120に設けられたボールバルブ129は、様々な機器を接続するために設けられたバルブであって、通常は閉じられている。このボールバルブ129は、止水ラバー123の近傍に設けられており、例えば、止水ラバー123の近傍に掘り屑や土砂が堆積したときに、ボールバルブ129を開くことによって、その掘り屑や土砂が取り除かれる。
【0034】
本実施形態の地中孔の掘削装置100によれば、掘削する地中孔の入口を閉止する閉止部120に設けられた4つのボールバルブ1221,1222,1223,1224で、含水層からの被圧水の圧力に対抗する背圧を付与することによって、被圧水の圧力と背圧とをバランスさせることができる。これにより、含水層から出る被圧水が地中孔内へ流出することが回避され、被圧水で掘削流体が希釈されることを防止しながら地中孔を掘削することができる。また、含水層からの被圧水の流出を回避することにより、その被圧水流出に伴って土砂が地中孔内に噴出することも回避される。従って、被圧水を伴った含水層に逢着しても含水層からの被圧水の流出やこれに伴う土砂噴出によって地中孔の掘削が妨げられることが効果的に防止される。
【0035】
次に、本発明の地中孔の掘削方法についての一実施形態を説明する。
【0036】
ドリルパイプ200を用いて地中孔を掘削するに当り、地中孔の入口にコンダクターパイプ110を挿入する。
【0037】
次に、非磁性カラーとマッドモータと掘削ビットとがこの順に先端に装着されたドリルパイプ200を、地中孔の掘削装置100の閉止部120に設けられた止水ラバー123に貫通させる。
【0038】
次に、地中孔の入口に挿入されたコンダクターパイプ110に、上記ドリルパイプ200を止水ラバー123に貫通させた状態の閉止部120を連結して、地中孔の入口を閉止する。
【0039】
その後、図示しない高圧ポンプを用いて、掘削流体を、発進点のドリルパイプ200内部に注入する。これによりマッドモータを回転させ、その回転を掘削ビットに伝達させることで地中孔を掘削する。ドリルパイプ200は順次継ぎ足しながら、また、必要に応じてドリルパイプ200を軸回りに回転させながら地中孔を掘削する。尚、被圧水を伴った含水層に逢着していないときは、4つのボールバルブ1221,1222,1223,1224全てが全開にした状態とされている。
【0040】
地中孔の掘削中は、作業員が圧力計128を監視している。そして、地中孔の掘削中に地中孔内の圧力が上昇したことを圧力計128で確認すると、被圧水を伴った含水層に逢着したと判断し、一旦4つのボールバルブ1221,1222,1223,1224全てを閉じる。そして、圧力計128で、含水層からの被圧水の圧力を測定する。
【0041】
その後、上記高圧ポンプにおいて掘削流体の注入圧を昇圧すると共に、含水層からの被圧水の圧力に対応するボールバルブを閉じたまま他のボールバルブを開けて、被圧水の圧力に対抗する背圧を付与する。
【0042】
そして、含水層からの被圧水の圧力と背圧とをバランスさせながら注入した掘削流体と同等量の掘削流体を地中孔内から地中孔外に排出しつつ掘削する。
【0043】
本実施形態の地中孔の掘削方法によれば、含水層から出る被圧水が地中孔内へ流出することが回避され、被圧水で掘削流体が希釈されることを防止しながら地中孔を掘削することができる。また、含水層からの被圧水の流出を回避することにより、その被圧水流出に伴って土砂が地中孔内に噴出することも回避される。従って、被圧水を伴った含水層に逢着しても含水層からの被圧水の流出やこれに伴う土砂噴出によって地中孔の掘削が妨げられることが効果的に防止される。
【0044】
尚、上述した実施形態では、本発明にいう背圧付与部が、ボールバルブである例を挙げて説明したが、本発明にいう背圧付与部は、これに限られるものではなく、例えばピンチバルブであってもよく、あるいはボールバルブとピンチバルブとの組み合わせであってもよい。ピンチバルブを用いれば、異物によってバルブが詰まることを回避することができる。また、ボールバルブとピンチバルブとの組み合わせであれば、比較的大まかな調整はボールバルブで行い、比較的細かな調整はピンチバルブで行うことができる。
【0045】
また、上述した実施形態では、本発明にいう閉止部が、地中孔の入口に挿入されるコンダクターパイプに連結されるものである例を挙げて説明したが、本発明にいう閉止部は、これに限られるものではなく、例えばケーシングパイプに連結されるものであってもよい。尚、ケーシングパイプとは、長距離地中孔の掘削を行う際、孔壁の維持、圧力の異なる地層間の流体移動防止、堀削用ドリルパイプの孔壁抵抗を軽減することを目的として裸孔に挿入されるパイプをいう。
【符号の説明】
【0046】
100 地中孔の掘削装置
110 コンダクターパイプ
120 閉止部
121 マニホールド
1221,1222,1223,1224,129 ボールバルブ
123 止水ラバー
1231 内径
1232 外径
124 回転体
1241 ボルト
125 ベアリング
126 管体
127 リリーフバルブ
128 圧力計
200 ドリルパイプ
210 管体部
220 ツールジョイント部
211,221 外径
300 掘削口止水装置
310 弾性シール


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドリルパイプを用いて地中孔を掘削するに当り、含水層に逢着したとき、前記ドリルパイプ内部を通って該ドリルパイプ先端に設けられた掘削ビットのノズルから噴射し該ドリルパイプの外周通路を通って排出する掘削流体の注入圧を昇圧すると共に、該掘削流体の排出部に前記含水層からの被圧水の圧力に対抗する背圧を付与し、前記被圧水の圧力と前記背圧とをバランスさせながら掘削することを特徴とする地中孔の掘削方法。
【請求項2】
ドリルパイプで掘削する地中孔の入口を閉止する閉止部を設け、該閉止部には、
(a)掘削流体の排出部に含水層からの被圧水の圧力に対抗する背圧を付与する背圧付与部、および
(b)前記ドリルパイプが貫通し、外径に掘削流体の背圧を受ける筒体であって、該ドリルパイプの前記地中孔内への前進後退を許容するとともに該ドリルパイプと一体回転する機構を有するシール
を備えたことを特徴とする地中孔の掘削装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−207471(P2012−207471A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74743(P2011−74743)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(395022018)日本海洋掘削株式会社 (10)
【Fターム(参考)】