説明

地中挿入用具

【課題】膨張管の膨張率が局部的に大きくなるようなことがなく、耐久性を有する地中挿入用具を提供すること。
【解決手段】地中に貫入された試錐管23内に地中挿入用具1を挿入し、試錐管23の貫通孔23aを介して汚染土壌への浄化剤の供給または地下水の吸水の地中作業を行う。第一流通管および第二流通管7a,7b,7cと、外管3と、所定の間隔を隔てて外管3の外周に嵌合された複数の膨張管とを備える。各膨張管の両端部を外管3の外周に気密に緊縛することで、各膨張管内に外部と気密に区画された区画室13a,13b,13c,13dを形成する。地中挿入用具1を試錐管23内に挿入して各膨張管を拡径させた状態で、試錐管23の貫通孔23aと第二流通管7a,7b,7cとを介して地中作業を行う。弾性材料からなる被覆管6a,6b,6c,6dによって各膨張管をそれぞれ気密に被覆する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に貫入された試錐管内に挿入して汚染土壌への浄化剤の供給または地下水の回収の少なくとも何れか一方の作業を行うための地中挿入用具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されている従来の地中挿入用具は、1本の流体流通管と1本の空気供給管とを並列に配置し、その両管の外周側に複数の膨張管を上下に離間させて配設した移動体ユニットとして構成されている。該移動体ユニットを浄化用試錐管内に挿入して、浄化用の試錐管の長手方向に所定の間隔を隔てて設けられた複数の連通孔のうち何れか所望の連通孔を、上下で隣り合う膨張管の間に位置付けたのち、空気供給管を介して複数の膨張管に空気を供給し、複数の膨張管を拡径させて試錐管の内周面に複数の膨張管を圧接させる。そして、流体流通管を通じて供給したオゾンガスを、上下で隣り合う膨張管の間に位置する試錐管の連通孔を介して地中に供給することで浄化作業を行うようにしている。このような従来の地中挿入用具の複数の膨張管は、流体流通管と空気供給管とを並列状態で固定した上下一対の口金の外周部にそれぞれ両端部が嵌合されたゴム製のチューブからなり、それらのチューブの嵌合部を環状の締付部材でそれぞれ緊縛することで機密にされた閉空間がチューブ内に形成されていた。
【特許文献1】特開2007−61663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の地中挿入用具は、試錐管の内径と膨張管の外径との隙間が大きいほど試錐管内に地中挿入用具を挿入しやすいので、試錐管の内径との隙間を十分確保すべく、拡径する前の複数の膨張管の外径は試錐管の内径に比べて比較的小径に形成されていた。
このため、複数の膨張管の外周面が試錐管の内周面に所定の面圧で圧接するまで複数の膨張管を拡径させたとき、試錐管の内周面に圧接した膨張管の外周部分はそれ以上拡径できないので、上下一対の口金の外周面と試錐管の内周面との間の隙間に膨張管の一部が侵入して膨張管が局部的にさらに膨張しようとする。このような局部的に膨張した部分は、試錐管の内周面に圧接した膨張管の外周部分に比べて膨張率が大きいので、地中挿入用具の長期間の使用で、膨張管の拡径と縮径とが何度も繰返して行われていると、細かい亀裂が発生しやすい。このような亀裂の発生した部分は、長期間の使用でオゾンガスに晒され続けると劣化して、やがて孔が開いてしまい、膨張管としての機能を有しなくなり、地中挿入用具の耐久性を低下させていた。
【0004】
本発明はこのような問題を解消するためになされたもので、拡径する前の膨張管の外径と試錐管の内径との隙間を十分確保するよう膨張管の外径を小径に形成した場合でも膨張管の膨張率が局部的に大きくなるようなことがなく、耐久性を有する地中挿入用具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するために、本発明に係る地中挿入用具は、地中に貫入された試錐管内に挿入され、前記試錐管の長手方向中途部に穿設された貫通孔を介して汚染土壌への浄化剤の供給または地下水の吸水の少なくとも何れか一方の地中作業を行うための地中挿入用具であって、平行に並べて配置された第一流通管および第二流通管と、これらの流通管を一体的に固定する固定部材と、前記各流通管の長手方向に沿って所定の間隔を隔てて配置され、前記固定部材の外周に嵌合された可撓性の弾性材料からなる複数の膨張管とを備え、前記複数の膨張管のそれぞれの両端部を前記固定部材の外周に気密に緊縛することで、前記各膨張管内に外部と気密に区画された区画室をそれぞれ形成し、前記各膨張管に対応する前記第一流通管の部位に第一連通孔をそれぞれ穿設し、前記第二流通管の長手方向中途部における前記各膨張管が隣り合う間の部位に第二連通孔を穿設し、前記第一流通管の第一連通孔を介して流体を前記各区画室に供給したりその供給した流体を前記各区画室から排出することで前記各膨張管を拡径または縮径させ、前記地中挿入用具を前記試錐管内に挿入して前記各膨張管を拡径させた状態で、隣り合う膨張管の間に位置する前記試錐管の貫通孔と前記第二流通管の第二連通孔とを介して前記地中作業を行う地中挿入用具において、前記各膨張管の少なくとも拡径または縮径させる部位を、可撓性の弾性材料からなる被覆管によってそれぞれ気密に被覆ものである。
【0006】
請求項2に記載した発明に係る地中挿入用具は、請求項1に記載の地中挿入用具において、流体を前記各区画室に供給する前の状態では、前記各膨張管の拡径または縮径させる部位の内径が前記固定部材の外径と略同一になるように前記各膨張管を形成する一方、前記被覆管を、前記各膨張管を被覆する前の状態での外径が前記試錐管の内径と略同一になるように予め形成し、前記被覆管によって前記各膨張管を気密に被覆した状態では、前記各被覆管と前記各膨張管との間の空間が負圧に保持されていることを特徴とするものである。
【0007】
請求項3に記載した発明に係る地中挿入用具は、請求項1または請求項2に記載の地中挿入用具において、前記各膨張管と前記各被覆管との両端部同士を重ねた状態で前記各被覆管の両端部の外周部を環状の締付部材により緊縛して前記各膨張管と前記各被覆管とを共に前記固定部材の外周部に緊縛するようにしたことを特徴とするものである。
【0008】
請求項4に記載した発明に係る地中挿入用具は、請求項1ないし請求項3のうち何れか一つに記載の地中挿入用具において、前記固定部材を、筒状の外管と、該外管内に前記第一流通管と前記第二流通管とを配置した状態でこれらの管の間隙に充填され固化することで前記外管と前記第一流通管と前記第二流通管とを一体化する樹脂等からなる充填材とで構成し、前記外管の長手方向に所定の間隔を隔てて前記外管の外周に前記複数の膨張管を嵌合し、前記複数の膨張管のそれぞれの両端部を前記外管の外周に気密に緊縛し、かつ、前記複数の膨張管と前記外管とのそれぞれの間隙に外部と気密に区画された区画室をそれぞれ形成し、前記各膨張管に対応する前記外管の部位に、前記各区画室と前記外管内とを連通する第三連通孔をそれぞれ穿設し、前記外管の長手方向において前記各膨張管が隣り合う間の前記外管の部位に、前記外管内と外部とを連通する第四連通孔を穿設し、前記第一連通孔および前記第三連通孔を介して前記各区画室と前記第一流通管内とをそれぞれ連通させる一方、前記第二流通管内と前記第四連通孔とを前記第二連通孔を介して連通させたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、地中挿入用具の各膨張管の少なくとも拡径または縮径させる部位を、可撓性の弾性材料からなる被覆管によってそれぞれ気密に被覆したので、拡径する前の膨張管の外径と試錐管の内径との隙間を十分確保するよう膨張管の外径を小径に形成した場合でも、各膨張管が拡径する際は被覆管によって拘束された状態で各膨張管が拡径するため、膨張管の一部が他の部分より著しく膨張して膨張管の膨張率が局部的に大きくなるようなことがなく、膨張管、延いては、地中挿入用具の耐久性を十分確保することができる。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、被覆管を、各膨張管を被覆する前の状態での外径が試錐管の内径と略同一になるように予め形成する一方、被覆管によって各膨張管を気密に被覆した状態では、各膨張管と各被覆管との間の空間が負圧に保持されるようにしたので、各膨張管を拡径させる前の状態では、被覆管の外径が試錐管の内径より小さくなるため、試錐管内に地中挿入用具を支障なく挿入することができる。
また、試錐管内で各膨張管を拡径させることによって被覆管も拡径する場合は、試錐管に規制されて、予め形成された外径までしか被覆管は拡径しないので、予め形成されたときの被覆管から見ると膨張率は変化しない。この結果、被覆管、延いては、地中挿入用具の耐久性を十分確保することができる。
【0011】
請求項3記載の発明によれば、締付部材により緊縛して各膨張管と各被覆管とを共に固定部材の外周部に緊縛するようにしたので、各膨張管と各被覆管とを別個の締付部材によりそれぞれ緊縛することと比べて、緊縛作業の工数および地中挿入用具の部品点数を少なくすることができる。
【0012】
請求項4記載の発明によれば、固定部材を、筒状の外管と、外管と第一流通管と第二流通管とを一体化する樹脂等からなる充填材とで構成したので、外管と第一流通管と第二流通管とを強固に一体化することができ、延いては、地中挿入用具を頑強にすることができる。
【0013】
また、各膨張管のそれぞれの両端部を外管の外周に気密に緊縛して各膨張管と外管との間隙に区画室を形成したので、各膨張管を被覆管で被覆する際、縮径して外管に密接した状態の各膨張管に各被覆管を嵌合し、これらの嵌合した各被覆管の外周面を各膨張管側に押圧して縮径させた状態で各被覆管によって各膨張管をそれぞれ気密に被覆したのち各被覆管への押圧を解除することで、各膨張管と各被覆管との間の空間を容易に負圧に保持することができる。また、各被覆管の外周面を各膨張管側に押圧して縮径させる際、各膨張管は外管に規制されて外管の外径より縮径することはないので、各被覆管の外周面を各膨張管側に強固に押圧することができ、各膨張管と各被覆管との間の空間を良好な負圧状態にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る地中挿入用具の構成を示す側面図であり、図2の(a),(b)は図1における矢視A−A,矢視B−Bにそれぞれ沿う拡大断面図であり、図2の(c)は図1における矢視C1−C1,矢視C2−C2,矢視C3−C3,矢視C4−C4に沿う拡大断面図であり、図3の(d),(e),(f)は図1における矢視D−D,矢視E−E,矢視F−Fにそれぞれ沿う拡大断面図であり、図4は図2の(a)の矢視G−Gに沿う断面図である。図1において符号1で示すものは、この実施の形態による地中挿入用具を示している。なお、この地中挿入用具1は長尺であるので、作図の都合上、図1では長手方向中途部で二分割して左右にずらして図示している。
【0015】
この地中挿入用具1は、地中Mに貫入された後述する試錐管23内に挿入され、試錐管23の貫通孔23aを介して汚染土壌への浄化剤の供給または地下水の吸水の少なくとも何れか一方の地中作業を行うためのものである。この地中挿入用具1は、鉄製またはステンレス製の円筒状の1本の外管3と、この外管3の長手方向に所定の間隔を隔てて外管3の外周に嵌合された4個の膨張管5a,5b,5c,5dと、これらの膨張管5a,5b,5c,5dの外周にそれぞれ嵌合された4個の被覆管6a,6b,6c,6dと、3本の第二流通管7a,7b,7cと、1本の第一流通管9とを備えている。
【0016】
これらの第一流通管9と第二流通管7a,7b,7cとは、平行に並べて配置されている。4個の膨張管5a,5b,5c,5dおよび被覆管6a,6b,6c,6dの、外管3の長手方向における配置間隔は、後述する試錐管23の貫通孔23a…が穿設された間隔と同一とされている。第二流通管7a,7b,7cと第一流通管9とは、それぞれの一端側が外管3の一端側から突出した状態で他端側がそれぞれ外管3内に挿入されている。第二流通管7a,7b,7cおよび第一流通管9は、それぞれの内径および外径が同一の寸法からなる鉄製またはステンレス製の円筒状の管からなる。而して、第一流通管9と第二流通管7a,7b,7cとの長手方向に沿って所定の間隔を隔てて各膨張管5a,5b,5c,5dと各被覆管6a,6b,6c,6dとは配置される。
【0017】
各膨張管5a,5b,5c,5dと各被覆管6a,6b,6c,6dとは、拡径可能な可撓性の弾性材料(例えばゴム材)からなり、膨張管5a,5b,5c,5dと被覆管6a,6b,6c,6dとは略同一の長さを有する。第二流通管7a,7b,7cと第一流通管9と外管3とは、それらの間隙に充填されて固化したエポキシ系樹脂等の樹脂等からなる充填材Qによって、強固に一体的に固定され一体化されている。外管3と固化した充填材Qとで本発明でいう「固定部材」を構成する。
【0018】
各膨張管5a,5b,5c,5dと各被覆管6a,6b,6c,6dとの両端部同士を重ねた状態で各被覆管6a,6b,6c,6dの両端部の外周部を円環状の締付部材11により緊縛して各膨張管5a,5b,5c,5dと各被覆管6a,6b,6c,6dとを共に外管3の外周部に気密に緊縛している。而して、膨張管5a,5b,5c,5dと外管3とのそれぞれの間隙に外部と気密に区画された円環状の区画室13a,13b,13c,13dがそれぞれ形成されている(図2の(c)および図8を参照)。各区画室13a,13b,13c,13dに空気(本発明でいう「流体」を構成する。)を供給したりその供給した空気を各区画室13a,13b,13c,13dから排出することで各膨張管5a,5b,5c,5dを拡径または縮径させる。
【0019】
各膨張管5a,5b,5c,5dは、外管3の外周に嵌合して組付ける前の内径が外管3の外径と略同一(好ましくは、外管3の外径より若干大きな寸法)に形成されている。このため、各区画室13a,13b,13c,13dに空気を供給して各膨張管5a,5b,5c,5dを拡径させる前の状態では、各膨張管5a,5b,5c,5dの拡径または縮径させる部位の内径が外管3の外径と略同一になっている。
【0020】
各被覆管6a,6b,6c,6dの長手方向の中間部は、図6に示すように、各膨張管5a,5b,5c,5dを被覆する前の状態での外径が、両端部に比べて大径に予め形成されている。その大径に形成された各被覆管6a,6b,6c,6dの中間部の外径は、後述する試錐管23の内径と略同じ寸法になるように予め形成されており、各被覆管6a,6b,6c,6dの両端部の内径は各膨張管5a,5b,5c,5dの外径と略同一(好ましくは、各膨張管5a,5b,5c,5dの外径より若干大きな寸法)に形成されている。
【0021】
締付部材11により緊縛されて各被覆管6a,6b,6c,6dによって各膨張管5a,5b,5c,5dがそれぞれ気密に被覆された状態では、各被覆管6a,6b,6c,6dと各膨張管5a,5b,5c,5dとの間の空間が負圧に保持され、各被覆管6a,6b,6c,6dは、各膨張管5a,5b,5c,5dの外周面に接近する方向に常に縮径している。
【0022】
外管3の長手方向において各膨張管5a,5b,5c,5dおよび各被覆管6a,6b,6c,6dが隣り合う間の外管3の部位には、外管3内と外部とを連通する第四連通孔15a,15b,15cがそれぞれ穿設されている。一方、各膨張管5a,5b,5c,5dに対応する外管3の部位には、前記各区画室13a,13b,13c,13dと外管3内とを連通する第三連通孔16a,16b,16c,16dが各区画室13a,13b,13c,13dに対応してそれぞれ穿設されている。
【0023】
第二流通管7a,7b,7cの長手方向中途部における、各膨張管5a,5b,5c,5dが隣り合う間の部位にそれぞれ第二連通孔17a,17b,17cが穿設されており、第二流通管7a,7b,7c内と各第四連通孔15a,15b,15cとはそれぞれ対応して個別に連通されている。詳しくは、第二流通管7aに穿設された第二連通孔17aを介して第二流通管7a内と第四連通孔15aとが連通され、第二流通管7bに穿設された第二連通孔17bを介して第二流通管7b内と第四連通孔15bとが連通され、第二流通管7cに穿設された第二連通孔17cを介して第二流通管7c内と第四連通孔15cとが連通されている(図3を参照)。
【0024】
また、各膨張管5a,5b,5c,5dに対応する第一流通管9の部位に第一連通孔18a,18b,18c,18dがそれぞれ穿設されており、前記各第三連通孔16a,16b,16c,16dを介して前記各区画室13a,13b,13c,13dと第一流通管9内とがそれぞれ連通されている。詳しくは、第一連通孔18aを介して第一流通管9内と第三連通孔16aおよび区画室13aとが連通され、第一連通孔18bを介して第一流通管9内と第三連通孔16bおよび区画室13bとが連通され、第一連通孔18cを介して第一流通管9内と第三連通孔16cおよび区画室13cとが連通され、第一連通孔18dを介して第一流通管9内と第三連通孔16dおよび区画室13dとが連通されている(図2の(c)を参照)。第一流通管9の第一連通孔18a,18b,18c,18dを介して空気を各区画室13a,13b,13c,13dに供給したりその供給した空気を各区画室13a,13b,13c,13dから排出することで各膨張管5a,5b,5c,5dが拡径または縮径させられる。
【0025】
外管3の他端側(図1では下端側)には、塩化ビニル等の樹脂材料からなる円柱状の栓部材19が接着剤により接着された状態で嵌合され、外管3の他端側の開口部が密栓されている(図4を参照)。また、第二流通管7a,7b,7cおよび第一流通管9のそれぞれの他端側(図1では下端側)には、塩化ビニル等の樹脂材料からなる円柱状の栓部材21が接着剤により接着された状態でそれぞれ嵌合され、各流通管7a,7b,7c,9の他端側の開口部がそれぞれ密栓されている(図4を参照)。
【0026】
(地中挿入用具1の製造工程)
前記地中挿入用具1は、以下のような工程によって製造される。
(1)地中挿入用具1の第二流通管7a,7b,7cおよび第一流通管9を構成することになる同一長さの4本の細管を準備する。
(2)4本の細管のそれぞれの一端の開口内に、栓部材21を接着剤を塗布してそれぞれ嵌合し、4本の細管の一端の開口部をそれぞれ密栓する。
【0027】
(3)栓部材21により一端が密栓された4本の細管を、それぞれの一端同士の長手方向における位置を揃えた状態で針金で縛って束ねる。このとき、4本の細管を平行に並べると共に、それらの細管の軸芯に沿う方向から見て、4つの軸芯によって略正方形の頂点が構成されるように4本の細管を束ねる。そして、これらの4本の細管をその長手方向中途部の数箇所に接着剤を塗布して互いに接合して一体化したのち、針金を取り外す。
【0028】
なお、4本の細管を針金で縛って束ねて接合する代わりに、図5に示すように、4本の細管Sで囲まれた空間の形状に略沿った形状に形成された保持部材22を使用し、該保持部材22の4箇所の溝部22a…に4本の細管を接着剤によりそれぞれ接着して保持部材22と4本の細管とを一体化するようにしてもよい。この場合、保持部材22は4本の細管より少し短い長さに形成して4本の細管の長手方向の略全域に亘って1つの保持部材22を配置するようにしてもよいが、短片に形成された複数の保持部材22を4本の細管の長手方向に一定の間隔を隔てて数箇所に散点させて配置するようにしてもよい。
【0029】
(4)地中挿入用具1の外管3を構成することになる1本の太管の内部に、前記(3)の工程で一体化した4本の細管を、その長手方向中途部の数箇所に接着剤を塗布しながら挿入したのち、太管の内壁に4本の細管を接着させて仮止めする。この工程においては、太管の一端側から挿入する4本の細管の一端側(栓部材21によって密栓された側)の先端は、太管の他端の開口内に前記栓部材19が嵌合されることを見越して、該栓部材19の嵌合長さより少し長い寸法だけ太管の他端から余裕を持たせた位置まで挿入する一方、4本の細管の他端側が太管の一端側から突出した状態とされる。
【0030】
(5)太管の一端側から突出した4本の細管の他端側と太管の他端側の開口から見える4本の細管の一端側との太管に対するそれぞれの位置から、太管の外周面側から見た4本の細管の軸芯の位置を太管の外周面に筆記具により線引きしたのち、前記第四連通孔15a,15b,15cと前記第三連通孔16a,16b,16c,16dとを穿設すべき太管の外周面の位置に筆記具により印を付ける。
(6)太管の他端の開口内に、栓部材19を接着剤を塗布して嵌合し、太管の他端の開口部を密栓する。
【0031】
(7)太管の一端の開口から、エポキシ系樹脂等の樹脂等からなる充填材Qを注入して4本の細管と太管との間隙に充填材Qを充填し、該充填材Qが固化することで4本の細管と太管との間隙が充填材Qによって気密に保持され、かつ、4本の細管と太管とが強固に一体化される。
(8)前記(5)の工程で印を付けた太管の外周面の各位置に、孔開け工具のドリルの先端を位置付け、太管および細管を貫通して細管内までドリルの先端を進入させることで、第四連通孔15a,15b,15cと第二連通孔17a,17b,17cとをそれぞれ一度に同軸に穿設し、第三連通孔16a,16b,16c,16dと第一連通孔18a,18b,18c,18dとを一度に同軸に穿設する。而して、太管が外管3として構成され、4本の細管が第二流通管7a,7b,7cと第一流通管9としてそれぞれ構成される。
【0032】
(9)第三連通孔16a,16b,16c,16dが穿設されたそれぞれの部位における外管3の外周に膨張管5a,5b,5c,5dを嵌合する。縮径して外管3に密接した状態の各膨張管5a,5b,5c,5dの外周に4個の被覆管6a,6b,6c,6dをそれぞれ嵌合する。そして、各膨張管5a,5b,5c,5dと各被覆管6a,6b,6c,6dとの両端部同士を重ねた状態で各被覆管6a,6b,6c,6dの一端部の外周部に締付部材11を嵌合したのち、各締付部材11の外周面に、圧縮機により圧縮力を加えて各膨張管5a,5b,5c,5dと各被覆管6a,6b,6c,6dとを共に外管3の外周部に気密に緊縛させる。
【0033】
(10)各被覆管6a,6b,6c,6dの外周面を各膨張管5a,5b,5c,5d側に押圧して縮径させ、各被覆管6a,6b,6c,6dと各膨張管5a,5b,5c,5dとの間の空間に存在する空気を外部に排出する。
(11)各膨張管5a,5b,5c,5dと各被覆管6a,6b,6c,6dとの他端部同士を重ねた状態で各被覆管6a,6b,6c,6dの他端部の外周部に他の締付部材11を嵌合する。そして、該締付部材11の外周面に、圧縮機により圧縮力を加えて各膨張管5a,5b,5c,5dと各被覆管6a,6b,6c,6dとを共に外管3の外周部に気密に緊縛させたのち、各被覆管6a,6b,6c,6dの押圧を解除する。これによって、各膨張管5a,5b,5c,5dと各被覆管6a,6b,6c,6dとの間の空間が負圧に保持される。
以上の工程によって地中挿入用具1が製造される。
【0034】
(12)最後に、第二流通管7a,7b,7cと第一流通管9とにそれぞれ高圧の空気を供給して、膨張管5a,5b,5c,5dのそれぞれの両端部や第二流通管7a,7b,7cと第一流通管9との外周部等から異常な空気漏れがないか否か検査を行う。この検査は、地中挿入用具1を水中に入れて行うことで、想定していない箇所からの気泡の発生の有無により異常な空気漏れか否かを容易に判断することができる。
【0035】
(地下水の採取方法)
次に、前記地中挿入用具1を使用して、地中の土壌の汚染の程度を調査するために地下水を採取する方法の一例について図7ないし図10により説明する。図7は地下水を採取している状態を、一部を破断して示した一部断面図であり、図8は後述する試錐管23内に地中挿入用具1を挿入して膨張管5a,5b,5c,5dを拡径した状態を、試錐管23を破断して示した一部断面図であり、図9の(h)は図8における矢視H1−H1,矢視H2−H2,矢視H3−H3,矢視H4−H4に沿う拡大断面図であり、図9の(j)は図9の(h)に対応する図であって膨張管5a,5b,5c,5dを拡径する前の状態を示した拡大断面図であり、図10は図8の矢視K−K線に沿う拡大断面図である。なお、作図の都合上、図8では長手方向中途部で二分割して左右にずらして図示している。
【0036】
汚染の程度を調査するために試錐装置により地面に穿った穴内に試錐管23を挿入して地中Mに試錐管23を貫入したのち、該試錐管23内に地中挿入用具1を挿入する。試錐管23には、その長手方向に所定の間隔を隔てて該長手方向中途部に複数の貫通孔23a…が穿設されており、各膨張管5a,5b,5c,5dのうちの隣り合う膨張管間に貫通孔23aが位置するように試錐管23内に地中挿入用具1を挿入する。
【0037】
地中挿入用具1の第一流通管9には管継手を介して空気供給管27の一端部が接続され、空気供給管27の他端部には空気供給装置29が接続される。地中挿入用具1の第二流通管7a,7b,7cには、それぞれ管継手を介して流通管31a,31b,31cの各一端部が接続され、流通管31a,31b,31cの各他端部は吸水装置30に接続される。吸水装置30は流通管31a,31b,31cの3本の流通管のうちの何れか1つの流通管を任意に選択して、その選択した流通管だけを介して吸水することができる。
【0038】
而して、空気供給装置29を作動させて、空気供給管27と第一流通管9内と第一連通孔18a,18b,18c,18dと第三連通孔16a,16b,16c,16dとを介して、膨張管5a,5b,5c,5dと外管3とのそれぞれの間隙に形成された区画室13a,13b,13c,13dに所定の高圧の空気を供給し、区画室13a,13b,13c,13d内を所定の圧力に保持する。これによって、膨張管5a,5b,5c,5dが拡径され、それによって、被覆管6a,6b,6c,6dのそれぞれの外周面が試錐管23の内周面に圧接された状態で保持される。
【0039】
次に、吸水装置30を作動させて、まず流通管31aを選択して該流通管31aを介して地下水の採取を行い、その採取に引き続いて、流通管31bを選択して該流通管31bを介して地下水の採取を行ったのち、流通管31cを選択して該流通管31cを介して地下水の採取を行う。図7は、被覆管6b,6c間に位置する試錐管23の貫通孔23aと第二流通管7bと流通管31bとを介して地下水の採取を行っている状態を示している。
地中Mの深度のさらに深い部位の地下水を採取する場合は、空気供給装置29の作動を停止して、前記区画室13a,13b,13c,13d内の空気圧を低下させ、膨張管5a,5b,5c,5dを縮径させる。
【0040】
次に、流通管31cを介して地下水の採取を行ったときに被覆管6c,6d間に位置する試錐管23の貫通孔23aより1つだけ下方の貫通孔23aに被覆管6a,6b間が位置するように試錐管23内で地中挿入用具1を下方に移動させる。この場合、地中挿入用具1を下方に移動させることができるように、試錐管23は地中挿入用具1より長尺のものを使用することが前提であるのは言うまでもない。このような地下水の採取によって、地中Mの深度の浅い部位から深い部位までの地下水が採取され、その採取された地下水は、地中Mの深度ごとに別個の容器に入れられる。
【0041】
なお、地中Mに地下水が殆ど存在しない場合は、地中挿入用具1の第二流通管7a,7b,7cのうちの少なくとも何れか1つの流通管を介して、地上に設置した給水装置(図示せず)から水を供給し、その供給した水を第二流通管7a,7b,7cのうちの少なくとも何れか1つの流通管を介して吸水装置30により吸水するようにする。このとき、水の供給と吸水とは、水の供給ののち一定の時間が経過した後に吸水するか、または、第二流通管7a,7b,7cのうちの何れか一部の流通管を介して水の供給を行うと同時に他の流通管を介して吸水を行うようにしてもよい。
【0042】
地下水の採取が終了したら、地中挿入用具1を試錐管23内から一旦抜き取ることとするが、この後の浄化作業を考慮して挿入したままにしておいてもよい。
トリクロロエチレンやテトラクロロエチレン等を含む汚染物質によって土壌が汚染されている地中Mから採取された地下水には該汚染物質が溶解しているので、地下水に溶解している該汚染物質の濃度を計測装置によって測定することで、地中Mの深度ごとの土壌汚染の状態を把握することができる。
【0043】
(汚染土壌の浄化方法)
次に、前記地中挿入用具1を使用して、地中の汚染土壌を浄化する方法の一例について図11により説明する。図11は地中Mを浄化している状態を、一部を破断して示した一部断面図である。
採取した地下水における汚染物質の濃度の計測で地中Mの深度ごとの土壌汚染の状態が把握できたのち、前記流通管31a,31b,31cの各他端部を吸水装置30から取り外し、該吸水装置30に代えて浄化装置33に流通管31a,31b,31cの各他端部を接続する。該浄化装置33は、組成ガスとしてオゾンを含む浄化用ガスを地中Mに供給するための装置である。浄化装置33は流通管31a,31b,31cの3本の流通管のうちの何れか1つの流通管を任意に選択して、その選択した流通管だけを介して浄化用ガスを供給することができる。
【0044】
空気供給装置29の作動を停止して膨張管5a,5b,5c,5dを縮径させた状態で、汚染された地中Mの深度に位置する試錐管23の貫通孔23aの部位まで地中挿入用具1を試錐管23内に挿入する。そして、空気供給装置29を作動させて、膨張管5a,5b,5c,5dと外管3とのそれぞれの間隙に形成された区画室13a,13b,13c,13dに所定の高圧の空気を供給し、区画室13a,13b,13c,13d内を所定の圧力に保持して膨張管5a,5b,5c,5dを拡径する。
【0045】
次に、浄化装置33を作動させて、汚染された地中Mの深度に位置する試錐管23の貫通孔23aを介して浄化用ガスを地中Mに供給する。図11では、汚染された地中Mの深度に位置する試錐管23の貫通孔23aを被覆管6b,6c間に位置付けて、その間に位置する外管3の第四連通孔15bと、該第四連通孔15bに連通する第二流通管7bと流通管31bとを介して浄化用ガスを供給している状態を示している。
地中Mの広範の深度に亘って土壌が汚染されている場合は、上述した地下水の採取の作業と同様に地中挿入用具1を試錐管23内で適宜移動させて、浄化用ガスを供給するようにする。
【0046】
また、面積の広い領域に亘って地中Mの土壌が汚染されている場合は、汚染された領域に、適当な間隔を隔てて複数の試錐管23…を貫入したのち、それらの試錐管23…にそれぞれ地中挿入用具1を挿入すると共に空気供給管27および流通管31a,31b,31cを介して空気供給装置29および浄化装置33をそれぞれ各地中挿入用具1に接続し、流通管31a,31b,31cおよび地中挿入用具1を介して浄化用ガスを地中Mに供給する。そのとき、地中Mの地点や深度によって土壌汚染の程度が異なる場合は、供給する浄化用ガスの単位時間当たりの供給量または供給時間を各地中挿入用具1ごとにまたは各地中挿入用具1の流通管31a,31b,31cごとに適宜調整して浄化用ガスを供給するようにする。
【0047】
上述したように構成された地中挿入用具1によれば、3本の第二流通管7a,7b,7cと各第四連通孔15a,15b,15cとをそれぞれ個別に連通させたので、地中Mに貫入された試錐管23内に地中挿入用具1を挿入して汚染土壌への浄化剤の供給または地下水の回収の少なくとも何れか一方の作業を行うときに、該作業を各第二流通管7a,7b,7cごとに個別に行うことができる。このため、3本の第二流通管7a,7b,7cのうちの1つの第二流通管を選択して浄化剤の供給等の作業を行ったのち、他の第二流通管に切り替えて同作業を行うようにすることで、試錐管23内で地中挿入用具1を頻繁に移動させることなく同作業を地中Mの一定の深さに亘って行うことができるため、同作業が煩雑にならなくて済む。
【0048】
また、この実施の形態による地中挿入用具1によれば、外管3内の間隙にエポキシ系樹脂等の樹脂等からなる充填材Qを充填して3本の第二流通管7a,7b,7cと1本の第一流通管9と外管3とを一体化した後、各第四連通孔15a,15b,15cに対してそれぞれ同軸に第二連通孔17a,17b,17cを孔開け工具により第二流通管7a,7b,7cにそれぞれ穿設する一方、各第三連通孔16a,16b,16c,16dに対してそれぞれ同軸に第一連通孔18a,18b,18c,18dを孔開け工具により第一流通管9にそれぞれ穿設するようにしたので、第四連通孔15a,15b,15cと複数の第二流通管7a,7b,7cとをそれぞれ個別に連通させ、また、各区画室13a,13b,13c,13dと第一流通管9とをそれぞれ連通させる製造工程が単純になり、その分、製造コストを安価にすることができる。
【0049】
また、この実施の形態による地中挿入用具1によれば、地中挿入用具1の各膨張管5a,5b,5c,5dの拡径または縮径させる部位を、可撓性の弾性材料からなる被覆管6a,6b,6c,6dによってそれぞれ気密に被覆したので、拡径する前の膨張管5a,5b,5c,5dの外径と試錐管23の内径との隙間を十分確保するよう膨張管5a,5b,5c,5dの外径を小径に形成した場合でも、各膨張管5a,5b,5c,5dが拡径する際は被覆管6a,6b,6c,6dによって拘束された状態で各膨張管5a,5b,5c,5dが拡径するため、膨張管5a,5b,5c,5dの一部が他の部分より著しく膨張して膨張管5a,5b,5c,5dの膨張率が局部的に大きくなるようなことがなく、膨張管5a,5b,5c,5d、延いては、地中挿入用具1の耐久性を十分確保することができる。
【0050】
また、この実施の形態による地中挿入用具1によれば、被覆管6a,6b,6c,6dを、各膨張管5a,5b,5c,5dを被覆する前の状態での外径が試錐管23の内径と略同一になるように予め形成する一方、被覆管6a,6b,6c,6dによって各膨張管5a,5b,5c,5dを気密に被覆した状態では、各膨張管5a,5b,5c,5dと各被覆管6a,6b,6c,6dとの間の空間が負圧に保持されるようにしたので、各膨張管5a,5b,5c,5dを拡径させる前の状態では、各被覆管6a,6b,6c,6dの外径が試錐管23の内径より小さくなるため、試錐管23内に地中挿入用具1を支障なく挿入することができる。
【0051】
また、試錐管23内で各膨張管5a,5b,5c,5dを拡径させることによって各被覆管6a,6b,6c,6dも拡径する場合は、試錐管23に規制されて、予め形成された外径までしか被覆管6a,6b,6c,6dは拡径しないので、予め形成されたときの被覆管6a,6b,6c,6dから見ると膨張率は変化しない。この結果、被覆管6a,6b,6c,6d、延いては、地中挿入用具1の耐久性を十分確保することができる。
【0052】
また、この実施の形態による地中挿入用具1によれば、締付部材11により緊縛して各膨張管5a,5b,5c,5dと各被覆管6a,6b,6c,6dとを共に外管3の外周部に緊縛するようにしたので、各膨張管5a,5b,5c,5dと各被覆管6a,6b,6c,6dとを別個の締付部材11によりそれぞれ緊縛することと比べて、緊縛作業の工数および地中挿入用具1の部品点数を少なくすることができる。
【0053】
また、この実施の形態による地中挿入用具1によれば、本発明でいう「固定部材」を、外管3と第二流通管7a,7b,7cと第一流通管9とを一体化する樹脂等からなる充填材Qと外管3とで構成したので、外管3と第二流通管7a,7b,7cと第一流通管9とを強固に一体化することができ、延いては、地中挿入用具1を頑強にすることができる。
【0054】
また、各膨張管5a,5b,5c,5dのそれぞれの両端部を外管3の外周に気密に緊縛して各膨張管5a,5b,5c,5dと外管3との間隙に区画室13a,13b,13c,13dを形成したので、各膨張管5a,5b,5c,5dを被覆管6a,6b,6c,6dで被覆する際、縮径して外管3に密接した状態の各膨張管5a,5b,5c,5dに各被覆管6a,6b,6c,6dを嵌合し、これらの嵌合した各被覆管6a,6b,6c,6dの外周面を各膨張管5a,5b,5c,5d側に押圧して縮径させた状態で各被覆管6a,6b,6c,6dによって各膨張管5a,5b,5c,5dをそれぞれ気密に被覆したのち各被覆管6a,6b,6c,6dへの押圧を解除することで、各膨張管5a,5b,5c,5dと各被覆管6a,6b,6c,6dとの間の空間を容易に負圧に保持することができる。
【0055】
また、各被覆管6a,6b,6c,6dの外周面を各膨張管5a,5b,5c,5d側に押圧して縮径させる際、各膨張管5a,5b,5c,5dは外管3に規制されて外管3の外径より縮径することはないので、各被覆管6a,6b,6c,6dの外周面を各膨張管5a,5b,5c,5d側に強固に押圧することができ、各膨張管5a,5b,5c,5dと各被覆管6a,6b,6c,6dとの間の空間を良好な負圧状態にすることができる。
【0056】
なお、上述した実施の形態は本発明を説明するための一例であり、本発明は、前記の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲と明細書との全体から読み取れる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更後の地中挿入用具もまた、本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0057】
例えば、上述した実施の形態においては、各膨張管5a,5b,5c,5dと各被覆管6a,6b,6c,6dとの両端部同士を重ねた状態で各被覆管6a,6b,6c,6dの両端部の外周部を共通の締付部材11により緊縛して各膨張管5a,5b,5c,5dと各被覆管6a,6b,6c,6dとを共に外管3の外周部に緊縛することで、主に、各膨張管5a,5b,5c,5dの拡径または縮径させる部位を被覆管6a,6b,6c,6dによってそれぞれ気密に被覆した例を示したが、本発明は、このような構成に囚われることなく、各膨張管5a,5b,5c,5dの両端部を締付部材によりそれぞれ緊縛して外管3の外周部に緊縛したのち、各膨張管5a,5b,5c,5dをそれぞれ被覆管によって完全に被覆して各被覆管の両端部を別個の締付部材により緊縛し、各被覆管を外管3の外周部に直接密接させて緊縛するようにしてもよい。
また、上述した実施の形態においては、4個の膨張管5a,5b,5c,5dを外管3に取り付けた例を示したが、本発明は、このような構成に囚われることなく、膨張管および被覆管や第二流通管の個数を1つずつ少なくした構造のものでもよい。
【0058】
また、逆に、外管3をさらに長尺な管材を使用して、該外管3の外周部に5個以上の膨張管および被覆管を取り付け、かつ、その個数に応じて、外管3および第一流通管9にそれぞれ穿設する第三連通孔および第一連通孔の各個数を5個以上にすると共に、外管3内に配置する第二流通管の本数と外管3および第二流通管にそれぞれ穿設する第四連通孔および第二連通孔の各個数とをそれぞれ4つ以上にするようにしてもよい。この場合、第二流通管と第一流通管とを外管3内に平行に並べると共に、それらの管の軸芯に沿う方向から見て、各軸芯によって略正多角形の頂点が構成されるように第二流通管と第一流通管とを外管3の内周面に沿って配置する。このようにすることで、各第四連通孔に対してそれぞれ同軸に第二連通孔を孔開け工具により第二流通管にそれぞれ穿設することができ、かつ、各第三連通孔に対してそれぞれ同軸に第一連通孔を孔開け工具により第一流通管にそれぞれ穿設することができる。
【0059】
このように地中挿入用具1を構成することで、汚染土壌への浄化剤の供給または地下水の回収の作業において適宜選択して使用することができる第二流通管の個数が多くなり、試錐管23内で地中挿入用具1を移動させる頻度が一層低減される。
【0060】
また、上述した実施の形態においては、膨張管5a,5b,5c,5dと外管3とのそれぞれの間隙に形成された区画室13a,13b,13c,13d内に空気を供給して膨張管5a,5b,5c,5dを拡径する例を示したが、空気に代えて窒素ガス等の他の気体または水もしくは作動油等の液体からなる流体を供給して各膨張管5a,5b,5c,5dを拡径するようにしてもよい。
【0061】
また、上述した実施の形態においては、本発明でいう「固定部材」を、外管3と第二流通管7a,7b,7cと第一流通管9とを一体化する樹脂等からなる充填材Qと外管3とで構成する例を示したが、これに代えて、本発明でいう「固定部材」を複数の貫通孔が穿設された複数の円柱状の口金(特許文献1に示されている従来の地中挿入用具の口金と同等のもの)としてもよい。この場合は、該口金を適宜間隔を隔てて8個設け、これらの口金の貫通孔に第二流通管7a,7b,7cと第一流通管9とをそれぞれ個別に挿入して第二流通管7a,7b,7cおよび第一流通管9と各貫通孔とのそれぞれの隙間を気密とする一方、各膨張管5a,5b,5c,5dの両端部の管内に前記口金をそれぞれ嵌合すると共に、各膨張管5a,5b,5c,5dに各被覆管6a,6b,6c,6dを嵌合してそれらの両端部同士を重ねた状態で各被覆管6a,6b,6c,6dの両端部の外周部を円環状の締付部材により緊縛して各膨張管5a,5b,5c,5dと各被覆管6a,6b,6c,6dとを共に前記口金の外周部に気密に緊縛する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1は本発明の実施の形態に係る地中挿入用具の構成を示す側面図である。
【図2】図2の(a),(b)は図1における矢視A−A,矢視B−Bにそれぞれ沿う拡大断面図であり、図2の(c)は図1における矢視C1−C1,矢視C2−C2,矢視C3−C3,矢視C4−C4に沿う拡大断面図である。
【図3】図3の(d),(e),(f)は図1における矢視D−D,矢視E−E,矢視F−Fにそれぞれ沿う拡大断面図である。
【図4】図4は図2の(a)の矢視G−Gに沿う断面図である。
【図5】図5は保持部材を介在させて第二流通管と第一流通管とを固定する例を示す拡大断面図である。
【図6】図6は被覆管をその軸芯を通る面で破断した状態を示す拡大断面図である。
【図7】図7は地下水を採取している状態を、一部を破断して示した一部断面図である。
【図8】図8は試錐管内に地中挿入用具を挿入して膨張管を拡径した状態を、試錐管を破断して示した一部断面図である。
【図9】図9の(h)は図8における矢視H1−H1,矢視H2−H2,矢視H3−H3,矢視H4−H4に沿う拡大断面図であり、図9の(j)は図9の(h)に対応する図であって膨張管を拡径する前の状態を示した拡大断面図である。
【図10】図10は図8の矢視K−K線に沿う拡大断面図である。
【図11】図11は地中を浄化している状態を、一部を破断して示した一部断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 地中挿入用具
3 外管(固定部材)
5a 膨張管
5b 膨張管
5c 膨張管
5d 膨張管
6a 被覆管
6b 被覆管
6c 被覆管
6d 被覆管
7a 第二流通管
7b 第二流通管
7c 第二流通管
9 第一流通管
11 締付部材
13a 区画室
13b 区画室
13c 区画室
13d 区画室
15a 第四連通孔
15b 第四連通孔
15c 第四連通孔
16a 第三連通孔
16b 第三連通孔
16c 第三連通孔
16d 第三連通孔
17a 第二連通孔
17b 第二連通孔
17c 第二連通孔
18a 第一連通孔
18b 第一連通孔
18c 第一連通孔
18d 第一連通孔
23 試錐管
23a 貫通孔
M 地中
Q 充填材(固定部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に貫入された試錐管内に挿入され、前記試錐管の長手方向中途部に穿設された貫通孔を介して汚染土壌への浄化剤の供給または地下水の吸水の少なくとも何れか一方の地中作業を行うための地中挿入用具であって、
平行に並べて配置された第一流通管および第二流通管と、
これらの流通管を一体的に固定する固定部材と、
前記各流通管の長手方向に沿って所定の間隔を隔てて配置され、前記固定部材の外周に嵌合された可撓性の弾性材料からなる複数の膨張管とを備え、
前記複数の膨張管のそれぞれの両端部を前記固定部材の外周に気密に緊縛することで、前記各膨張管内に外部と気密に区画された区画室をそれぞれ形成し、
前記各膨張管に対応する前記第一流通管の部位に第一連通孔をそれぞれ穿設し、
前記第二流通管の長手方向中途部における前記各膨張管が隣り合う間の部位に第二連通孔を穿設し、
前記第一流通管の第一連通孔を介して流体を前記各区画室に供給したりその供給した流体を前記各区画室から排出することで前記各膨張管を拡径または縮径させ、
前記地中挿入用具を前記試錐管内に挿入して前記各膨張管を拡径させた状態で、隣り合う膨張管の間に位置する前記試錐管の貫通孔と前記第二流通管の第二連通孔とを介して前記地中作業を行う地中挿入用具において、
前記各膨張管の少なくとも拡径または縮径させる部位を、可撓性の弾性材料からなる被覆管によってそれぞれ気密に被覆したことを特徴とする地中挿入用具。
【請求項2】
請求項1に記載の地中挿入用具において、
流体を前記各区画室に供給する前の状態では、前記各膨張管の拡径または縮径させる部位の内径が前記固定部材の外径と略同一になるように前記各膨張管を形成する一方、
前記被覆管を、前記各膨張管を被覆する前の状態での外径が前記試錐管の内径と略同一になるように予め形成し、
前記被覆管によって前記各膨張管を気密に被覆した状態では、前記各被覆管と前記各膨張管との間の空間が負圧に保持されていることを特徴とする地中挿入用具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の地中挿入用具において、
前記各膨張管と前記各被覆管との両端部同士を重ねた状態で前記各被覆管の両端部の外周部を環状の締付部材により緊縛して前記各膨張管と前記各被覆管とを共に前記固定部材の外周部に緊縛するようにしたことを特徴とする地中挿入用具。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうち何れか一つに記載の地中挿入用具において、
前記固定部材を、筒状の外管と、該外管内に前記第一流通管と前記第二流通管とを配置した状態でこれらの管の間隙に充填され固化することで前記外管と前記第一流通管と前記第二流通管とを一体化する樹脂等からなる充填材とで構成し、
前記外管の長手方向に所定の間隔を隔てて前記外管の外周に前記複数の膨張管を嵌合し、
前記複数の膨張管のそれぞれの両端部を前記外管の外周に気密に緊縛し、かつ、前記複数の膨張管と前記外管とのそれぞれの間隙に外部と気密に区画された区画室をそれぞれ形成し、
前記各膨張管に対応する前記外管の部位に、前記各区画室と前記外管内とを連通する第三連通孔をそれぞれ穿設し、
前記外管の長手方向において前記各膨張管が隣り合う間の前記外管の部位に、前記外管内と外部とを連通する第四連通孔を穿設し、
前記第一連通孔および前記第三連通孔を介して前記各区画室と前記第一流通管内とをそれぞれ連通させる一方、
前記第二流通管内と前記第四連通孔とを前記第二連通孔を介して連通させたことを特徴とする地中挿入用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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