説明

地中探査装置、システム及び方法

地中に存在する物質の種類、3次元的位置、量を特定することが可能な低侵襲性の地中探査装置、システム及び方法を実現すること。大地に高周波電流を通流することにより出現する高周波電圧の多点計測を行い、2以上の周波数における計測結果を得、有限要素法または境界要素法またはインピーダンス網等を用いた大地モデルを使用して、実測値と計算値の誤差が小さくなるように大地モデルの局所誘電率、導電率等の未知数を変更することにより地中物質の推定を行い、大地モデルの入力情報と推定処理結果を2次元あるいは3次元表示することにより実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
この発明は地中の漏水状態、地下水脈や埋蔵資源あるいは土壌汚染の位置・形状・深度・収蔵量、土壌改善の進行状況を低侵襲性の交流電気試験手段により探査あるいは観測する計測装置に関する。さらに詳しくは、この発明は、大地に電流を通流することにより出現する電圧の多点計測を行い、2以上の周波数における計測結果を得、有限要素法または境界要素法またはインピーダンス網等を用いた大地モデルを使用して、大地モデルの局所領域の導電率と周波数別の誘電率、位置情報等を未知数量として実測値と計算値の誤差が小さくなるように未知数量を変更することにより地中物質の同定や地質の変化の検出を行い、大地モデルの入力情報と推定処理結果を2次元あるいは3次元表示することにより実現する地中探査装置に関する。
【背景技術】
地中を探査する従来技術としては、地中を部分的に掘り返す侵襲的なボーリング方法以外に、非侵襲的な地中探査方法としては1)人工的に振動を加えて局所地震を起こす音響探査方法、2)軟X線を照射して高導電率の物質からの後方散乱光を撮影するX線バック・スキャッタ法、3)マイクロ波照射による地中レーダー探査法、4)上空から近赤外線領域を撮影する赤外線撮影法、5)上空からミリ波散乱をモニターする探査方法等が知られている。
人工的に振動を加えて局所地震を起こす音響探査方法は、同一地質の領域内では物質密度がほぼ同じで音響インピーダンスが等しいので振動波の反射は殆ど発生せず、地質が異なる境界面においては物質密度が異なり音響インピーダンスが不連続であるために振動波が反射する現象を利用しているので、地質不連続面からの反射波を捉えることにより各地層の地質に対応する音速が既知であれば地層の厚みや深度を3次元的に精確に計測して可視化表示することができる。しかし、未知の物質が存在する地層は密度がほぼ同一である場合には振動波の反射が発生しないために発見することはできない欠点がある。即ち、音響探査方法では地層の深さや厚みを知ることはできるが、その地層がどのような物質で構成されているかを適切なボーリング調査を行わずに計測することはできない。例えば、地下水脈の深さや埋蔵資源の存在検知、あるいは土壌が化学物質で汚染されているか否かを計測することはできないのである。
近年実現された地中探査方法として軟X線を照射して高導電率の物質からの後方散乱光を撮影するX線バック・スキャッタ法がある。これは軟X線が電磁波と粒子の性質を合わせ持ったものであり、電磁波の表皮効果のために導電性や透磁率が低い値を有する物質あるいは誘電率の高い物質あるいは軽い原子核が含まれる物質に対しては透過性に優れるが、導電性や透磁率が高い値を有する物質あるいは誘電率の低い物質あるいは重い原子核が含まれる物質に対しては透過性が低く、散乱あるいは反射する性質を利用した探査方法である。深さ数10cm程度の浅い地中の埋設物の有無を調べるのには適した方法であるが、含水量の多い土壌ではほぼ表面付近しか探査できない欠点や地質判定が行えない欠点がある。
マイクロ波照射による地中レーダー探査法も電磁波の表皮効果のために含水量が多い土壌には電磁波が入り込めず減衰してしまうので比較的浅深度の探査にしか適用することができない。また、地質を判定することができない。
上空から近赤外線領域を撮影する赤外線撮影法では大地から輻射される近赤外光を捉えるので、地中に周囲に比して高温あるいは低温の領域が存在する等の温度に関連した情報収集には適しているが、物質の種類や深さを同定することはできない。
上空からミリ波散乱をモニターする探査方法は、太陽活動に伴って地球を取り巻くバンアレン帯から入射するミリ波が地上で散乱しており、鉄分を多く含んだ土壌はミリ波を吸収する性質を利用した探査方法である。しかし、ほぼ地表付近の地質探査にしか適用することができない欠点がある。
この他に、非侵襲あるいは低侵襲性の地中探査方法として、大地に電流を通流して、電位計測あるいは導電率計測を行う方法が知られている。
特許庁の特許電子図書館の公報テキスト検索により検索式として[請求の範囲=or(地中 地質 探査)]AND[請求の範囲=and(電流 電極)]を用いた結果では以下の文献が検索された。
埋設管の埋設位置あるいは腐食位置あるいは塗膜損傷部位の検出技術としては以下の文献が存在した。
1)特開2002−071822 G01V 1/00 大山 順彦 埋設管の位置検出方法
2)特開2003−004686 G01N 27/20 新日本製鐵(株) 積算手段を用いた埋設金属管類の防食被覆損傷位置検出方法
3)特開2003−004687 G01N 27/20 新日本製鐵(株) 2種類の周波数信号を用いた埋設金属管類の防食被覆損傷位置検出方法
4)特開2000−258280 G01M 3/18 富士電機(株);高嶋 武 水道管の漏水検知方法および装置
5)特開2001−013111 G01N 27/82 日本鋼管(株) 埋設塗覆装鋼管の塗膜損傷位置検出方法及び装置
6)特開2000−019159 G01N 27/82 日本鋼管(株) 埋設鋼管の塗膜損傷位置検出方法及び装置
7)特開2000−019158 G01N 27/82 日本鋼管(株) 埋設鋼管の塗膜損傷位置検出方法及び装置
8)特開2000−088691 G01M 3/16 西松建設(株) 漏水測定装置及び漏水測定方法
9)特開平06−094568 G01M 3/40 7324−2G 丸山製作所:(有) 漏水検出方法および漏水検出装置
文献1)は2電極を用いて直流による導電率計測を行い、測定位置を変えながら間接的に計測する方法で、埋設管を挟んだ位置で測定する場合には通流分布が変化することを利用したものであるが、含水量、埋設管径、埋設方向、埋設管種、深さ、他の埋設物の影響を受け易い欠点がある。文献2)、3)、4)、5)、6)、及び7)は電流印加電極の一方を埋設金属管にする方法である。文献8)は予め配置した多数の電極は配列上に漏水が発生した場合に電極間インピーダンスが変化することを利用した直接計測法である。文献9)は導水経路を挟んだ大地の電気抵抗が閉栓時と開栓時で変化することを利用した間接的計測方法である。
交流電気試験法を用いた地質調査の先行技術としては以下の文献が存在した。
10)特開平10−293181 G01V 3/06 応用地質(株)キャパシタ法による多チャンネル電気探査方法
12)特開2001−074850 G01V 3/08 応用地質(株) 無分極電極を用いる電気探査方法
11)特開平10−293181 G01V 3/06 応用地質(株) キャパシタ法による多チャンネル電気探査方法
13)特開平09−127253 G01V 3/08 応用地質(株) キャパシタ法によるマルチチャンネル電気探査システム
14)特開2002−156460 G01V 3/02 産学連携機構九州:(株) 電気探査方法とそれを用いた電気探査装置及び地雷探知装置
15)特開2000−028743 G01V 3/12 三井造船(株) 埋設物探査方法および空洞検知用非接触高周波電流センサ
16)特開平07−012766 G01N 27/00 D 9115−2J 鹿島建設(株) 比抵抗利用の地下流れ特性測定方法及び装置
文献10)、11)は一般的な交流電気試験法により周波数と距離減衰の影響を補正して直流比抵抗を精度よく測定する方法について触れた文献である。文献12)は一般的な交流電気試験法により電極の充電率と直流比抵抗を測定する方法である。文献13)は交流電気試験により比抵抗を計測するシステムの実施事例である。文献14)は無限遠方電流電極を設けることにより電流経路に制約を与え、測定用電流電極の位置を変更しながら測定用電流電極周囲の電位を測定することで測定用電流電極の直下の埋設物の有無を検出する装置である。文献15)は交流電気試験により導電率を計測する方法である。文献16)はトレース流体注入と交流電気試験を併用する方法である。
また、交流電気試験法ではあるが、電位を計測するのではなく印加周波数と同じ共振周波数の検出器を使う信号追尾法(シグナル・トレーシング法)の文献としては次のものが存在した。
17)特開平06−130156 G01V 3/08 B 7256−2G 日本電信電話(株) 金属埋設物探知方法及び装置
電流の通流経路を工夫して比抵抗を数値演算で求めてトモグラフ表示させる装置の文献として次のものが存在した。
特開平05−100044 G01V 3/02 C 7256−2G ダイヤコンサルタント:(株) 自動電気探査方法
上記の先行技術においては、地中に埋設された水道管からの漏水状態に関しては工夫次第で検出することはできるのであるが、例えばガス管の埋設されている場所に近接した場所に埋設された水道管からガス管方向に対して発生した漏水や急激な漏水に伴って発生するサンドブラスト現象(砂や土砂が水流とともに噴きつける現象)の発生を検出することはできない欠点が存在している。
また、上記の先行技術においては、比抵抗(導電率)の分布状態は検出することが可能であるが、導電率は周波数によっても殆ど変化しないために、地下水脈や埋蔵資源あるいは土壌汚染の位置・深度・収蔵量、地層に含まれる物質の特定、あるいは土壌改善の進行状況を計測あるいはモニターすることはできない欠点が存在している。
本発明が解決しようとする課題は、低侵襲性の交流電気試験法により地中探査を行う技術を実現することである。さらに詳細に言えば、地下水脈や埋蔵資源あるいは土壌汚染の位置・深度・収蔵量、地層に含まれる物質の特定、あるいは土壌改善の進行状況を計測あるいはモニターすることが可能な技術的手段を実現することである。
さらに別の解決しようとする課題は、送電線や電車架線を流れる電流が大地に帰還あるいは漏洩することによって生じる交流雑音障害からの影響を受けることなく、交流電気試験法を行う方法である。
そしてさらに別の解決しようとする課題は、ガス管近傍に埋設された水道管からの漏水により発生したサンドブラスト現象を検出することである。
【発明の開示】
本発明の第一の発明は、2以上の基本発振周波数を選択可能な発振器1と、発振器1が発生した電圧信号を電流に変換する電圧電流変換器2と、電圧電流変換器2が供給する高周波電流を大地に通流するために用い大地の離れた位置に設置あるいは埋設した1対の電極3と、電極3の両端に発生する高周波電圧を測定して2点間のインピーダンスを検出する測定部4と、測定部4が出力するインピーダンス値を発振周波数毎に保持する保持部5と、保持部5が保持するインピーダンスの差を演算して発振周波数の違いによるインピーダンス差を計算する演算部6と、演算部6が演算するインピーダンス差に基づいて短時間に電極3の2点間のインピーダンスが少なくとも一方の周波数で大きく変化したことを検出判定する判定部7により構成される地中探査装置である。
また、本発明の第二の発明は、2以上の基本発振周波数を選択可能な発振器1と、発振器1が発生した電圧信号を電流に変換する電圧電流変換器2と、電圧電流変換器2が供給する高周波電流を大地に通流するために用い大地の離れた位置に設置あるいは埋設した1対の電流印加電極3と、電流印加電極3の設置場所とは異なり互いに離れた位置に設置される1対の電圧測定電極81、82と、電圧測定電極81、82の2電極間に発生する高周波電圧を測定して2点間のインピーダンスを検出する測定部4と、測定部4が出力するインピーダンス値を発振周波数毎に保持する保持部5と、保持部5が保持するインピーダンス値に基づいて印加発振周波数の違いによるインピーダンスの差を演算する演算部6により構成される地中探査装置である。
また、本発明の第三の発明は、2以上の基本発振周波数を選択可能な発振器1と、発振器1が発生した電圧信号を電流に変換する電圧電流変換器2と、電圧電流変換器2が供給する高周波電流を大地に通流するために用い大地の離れた位置に設置あるいは埋設した1対の電流印加電極3と、電流印加電極3の設置場所とは異なり互いに離れた位置に設置される2以上の総数N個の電圧測定電極81、82、・・・8Nと、N個の電圧測定電極81、82、・・・8Nから任意の1対の電極を選択して電圧を供給する電極切換部9と、電圧切換部9が選択した2電極間に発生する高周波電圧を測定して2点間のインピーダンスを検出する測定部4と、測定部4が出力するインピーダンス値を発振周波数毎に保持する保持部5と、保持部5が保持するインピーダンス値に基づいて印加発振周波数の違いによるインピーダンスの差を演算する演算部6により構成される地中探査装置である。
また、本発明の第四の発明は、2以上の基本発振周波数を選択可能な発振器1と、発振器1が発生した電圧信号を電流に変換する電圧電流変換器2と、高周波電流を大地に通流するために用い大地の離れた位置に設置あるいは埋設した少なくとも2以上の総数M個の電流印加電極31、32、・・・3Mと、電圧電流変換器2が出力する電流を電流印加電極31、32、・・・3Mから選択した任意の1対の電極に供給する電流供給選択部12と、電流印加電極31、32、・・・3Mの設置場所とは異なり互いに離れた位置に設置される2以上の総数N個の電圧測定電極81、82、・・・8Nと、N個の電圧測定電極81、82、・・・8Nから任意の1対の電極を選択して電圧を供給する電極切換部9と、電圧切換部9が選択した2電極間に発生する高周波電圧を測定して2点間のインピーダンスを検出する測定部4と、測定部4が出力するインピーダンス値を発振周波数毎に保持する保持部5と、保持部5が保持するインピーダンス値に基づいて印加発振周波数の違いによるインピーダンスの差を演算する演算部6により構成される地中探査装置である。
前記の第一から第四の発明の地中探査装置において、発振器1が発生する電圧信号が正弦波、三角波、のこぎり波、あるいは矩形波であるか、前記正弦波、三角波、のこぎり波、あるいは矩形波を基本発振周波数の整数分の1の周波数の2進最長符号系列で2相変調を施したものであることを特徴とする。
前記の第二の発明の地中探査装置において、1対の電圧測定電極81、82を電極間距離を一定値に固定して地表面を移動することが可能な機構を具備し、地表面上を移動しながら測定することを特徴とする。
前記の第三および第四の発明の地中探査装置において、総数N個の電圧測定電極81、82、・・・8Nは地表面上に2次元的に配置されたものであり、演算部6から供給される印加発振周波数の違いによるインピーダンスの差のデータに基づいて2次元マップを表示する表示部11を備えることを特徴とする。
前記第三および第四の発明の地中探査装置において、総数N個の電圧測定電極81、82、・・・8Nは地表面上に2次元的に配置されたものであり、演算部6から供給される印加発振周波数の違いによるインピーダンスの差のデータに基づいて2次元補間処理を施し、さらに得られた2次元補間値に対して前記2次元を平面とみなして互いに直交する平面上の2軸xとyに対してそれぞれ軸方向の微分処理を行い、x方向微分値とy方向微分値をベクトルの要素とみなした2次元ベクトル表示またはアローマップ表示を行う表示部11を備えることを特徴とする。
前記の地中探査装置において、電流印加電極31、32、・・・3M、電圧測定電極81、82、・・・8Nの3次元座標と地形データに基づいて印加電流順方向問題を有限要素法または境界要素法またはインピーダンス網で解いて大地モデルの電圧測定電極に出現する高周波電圧振幅値を求め、実測値と計算値の誤差が小さくなるように大地モデルの局所誘電率、導電率を変更することにより地中物質の推定を行う処理部10と、処理部10より入力情報と推定処理結果の供給を受けて2次元あるいは3次元表示処理を行う表示部11を備えることを特徴とする。
本発明の第五の発明は、2以上の基本発振周波数を選択可能な発振器1と、発振器1が発生した電圧信号を電流に変換する電圧電流変換器2と、電圧電流変換器2が供給する電流を大地に通流するために用い大地の離れた位置に設置あるいは埋設した1対の電極3と、電極3の両端に発生する電圧を測定して2点間のインピーダンスを検出する測定部4と、測定部4が出力するインピーダンス値を発振周波数毎に保持する保持部5と、保持部5が保持するインピーダンスの差を演算して発振周波数の違いによるインピーダンス差を計算する演算部6と、演算部6が演算するインピーダンス差に基づいて電極3の2点間のインピーダンスが少なくとも一方の周波数で変化したことを検出判定する判定部7により構成される地中探査システムである。
本発明の第六の発明は、2以上の基本発振周波数を選択可能な発振器1と、発振器1が発生した電圧信号を電流に変換する電圧電流変換器2と、電圧電流変換器2が供給する電流を大地に通流するために用い大地の離れた位置に設置あるいは埋設した1対の電流印加電極3と、電流印加電極3の設置場所とは異なり互いに離れた位置に設置される1対の電圧測定電極81、82と、電圧測定電極81、82の2電極間に発生する電圧を測定して2点間のインピーダンスを検出する測定部4と、測定部4が出力するインピーダンス値を発振周波数毎に保持する保持部5と、保持部5が保持するインピーダンス値に基づいて印加発振周波数の違いによるインピーダンスの差を演算する演算部6により構成される地中探査システムである。
本発明の第七の発明は、2以上の基本発振周波数を選択可能な発振器1と、発振器1が発生した電圧信号を電流に変換する電圧電流変換器2、電圧電流変換器2が供給する電流を大地に通流するために用い大地の離れた位置に設置あるいは埋設した1対の電流印加電極3と、電流印加電極3の設置場所とは異なり互いに離れた位置に設置される2以上の総数N個の電圧測定電極81、82、・・・8Nと、N個の電圧測定電極81、82、・・・8Nから任意の1対の電極を選択して電圧を供給する電極切換部9と、電圧切換部9が選択した2電極間に発生する電圧を測定して2点間のインピーダンスを検出する測定部4と、測定部4が出力するインピーダンス値を発振周波数毎に保持する保持部5と、保持部5が保持するインピーダンス値に基づいて印加発振周波数の違いによるインピーダンスの差を演算する演算部6により構成される地中探査システムである。
本発明の第八の発明は、2以上の基本発振周波数を選択可能な発振器1と、発振器1が発生した電圧信号を電流に変換する電圧電流変換器2と、電流を大地に通流するために用い大地の離れた位置に設置あるいは埋設した少なくとも2以上の総数M個の電流印加電極31、32、・・・3Mと、電圧電流変換器2が出力する電流を電流印加電極31、32、・・・3Mから選択した任意の1対の電極に供給する電流供給選択部12と、電流印加電極31、32、・・・3Mの設置場所とは異なり互いに離れた位置に設置される2以上の総数N個の電圧測定電極81、82、・・・8Nと、N個の電圧測定電極81、82、・・・8Nから任意の1対の電極を選択して電圧を供給する電極切換部9と、電圧切換部9が選択した2電極間に発生する電圧を測定して2点間のインピーダンスを検出する測定部4と、測定部4が出力するインピーダンス値を発振周波数毎に保持する保持部5と、保持部5が保持するインピーダンス値に基づいて印加発振周波数の違いによるインピーダンスの差を演算する演算部6により構成される地中探査システムである。
本発明の第九の発明は、大地の離れた位置に設置あるいは埋設した1対の電流印加電極または大地の離れた位置に設置あるいは埋設した複数の電流印加電極から選択した任意の1対の電極に異なる2以上の発振周波数の電流を通流する工程と、
大地の離れた位置に設置した1対の電圧測定電極または大地の離れた位置に設置した複数の電圧測定電極から選択した任意の1対の電極該電極間に発生する電圧を測定して2点間のインピーダンスを検出する工程と、
該インピーダンス値を上記発振周波数毎に保持する工程と、
該インピーダンス値の差を演算して発振周波数の違いによるインピーダンス差を演算する工程を有する地中探査方法である。
前記の第九の発明の地中探査方法において、前記インピーダンス差が変化したことを検出判定する工程を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
図1は、この発明の実施の形態による地中探査装置の構造を説明する図である。(実施例3)
図2は、土壌物質や様々な化学物質ごとに異なった比誘電率を持っていることを説明する図表である。
図3は、誘電率の周波数依存性とその要因を説明する図である。
図4A及び4Bは、界面分極と配向分極について説明する図である。
図5A、5B、5C及び5Dは、印加電流の周波数による誘電率の変化に起因して大地の深部地質の部分的差異によって通流経路が変わることを説明する図である。
図6A、6B、6C及び6Dは、この発明の実施の形態による地中探査装置の処理の仕組みを説明する図である。(実施例3)
図7は、この発明の実施の形態による地中探査装置の構造を説明する図である。(実施例1)
図8A、8B及び8Cは、この発明の実施の形態による漏水に伴うサンドブラスト現象を検出する動作原理を説明する図である。(実施例1)
図9は、この発明の実施の形態による地中探査装置の発振器1の構造を説明する図である。(実施例2)
図10は、この発明の実施の形態による地中探査装置の構造を説明する図である。(実施例4)
図11A及び11Bは、この発明の実施の形態による地中探査装置の大地モデルの例を説明する図である。(実施例3)
図12A及び12Bは、この発明の実施の形態による地中探査装置の大地モデルの例を説明する図である。(実施例3)
図13A、13B及び13Cは、この発明の一実施の形態による地中探査装置の構造を説明する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の発明者の一人である上田智章は、鋭意研究を重ねた結果、大地を構成する各地質構成物質や汚染物質あるいは地下水の電気導電率σは印加する電流の周波数によって殆ど変化しないが、誘電率εは大きく変化し、分布的に存在する静電容量Cも大きな変化をすることを見出した。
図2に示すように物質ごとに比誘電率は異なることが知られている。比誘電率とは真空の誘電率に対する比を表している数値である。この誘電率は図3に示すように周波数依存性があることが知られている。分極しやすい物質ほど誘電率は大きい。この分極の原因には、1)空間電荷の移動に伴う界面分極と、2)物質を構成する分子や粒子の分極に関係する双極子分極と、3)原子核の移動によるイオン分極と、4)電子の移動による電子分極があることが知られている。
上記の分極のうち、界面分極と双極子分極を説明する図を図4A及び4Bに示す。界面分極とは外部から印加された電界によって粒子と粒子の隙間を荷電粒子が移動する現象である。よって界面分極は地質を構成する土砂や石の粒子径や性質に依存するところが大きいと考えられ、界面分極に依存する誘電率の変化は直流(DC)から数kHz付近の周波数において顕著に現れることが知られている。また、双極子分極は外部から印加された電界によって分子配向が揃うことによって発生する現象であり、地層に含まれる物質の分子や粒子が印加された電界によって受けるモーメント力による回転に依存するところが大きいと考えられる。
それ故、印加する電流の周波数を適切に選択して、2以上の周波数において交流電気試験を行えば、誘電率が地質を構成する物質や含有される物質に依存して変化する周波数が異なるので、物質を特定することが可能なのである。本発明の発明者の一人である上田智章はこの点に着目した。
この発明による地中探査装置によれば、2以上の基本発振周波数を選択可能な発振器1と、発振器1が発生した電圧信号を電流に変換する電圧電流変換器2、電圧電流変換器2が供給する高周波電流を大地に通流するために用い大地の離れた位置に設置あるいは埋設した1対の電極3と、電極3の両端に発生する高周波電圧を測定して2点間のインピーダンスを検出する測定部4と、測定部4が出力するインピーダンス値を発振周波数毎に保持する保持部5と、保持部5が保持するインピーダンスの差を演算して発振周波数の違いによるインピーダンス差を計算する演算部6と、演算部6が演算するインピーダンス差に基づいて短時間に電極3の2点間のインピーダンスが少なくとも一方の周波数で大きく変化したことを検出判定する判定部7により構成されており、電極の導電率は大地を構成する物質の導電率に比して非常に低いので、2端子法によってもインピーダンス計測が正確に行え、計測結果である複数の周波数によるインピーダンスの差から誘電率の変化を的確に捕捉することができ、ひいては1対の電極3間の最短電流経路近傍に起こる地中の変化を検出することができる。
好ましくは、1対の電極3を埋設ガス管の近傍に配置することである。これによって電極3間の最短電流経路近傍に埋設された水道管からの漏水に伴うサンドブラスト現象がガス管の保全に対して重大な影響を及ぼす恐れがある場合の兆候を漏水部の土壌の誘電率の変化により確実に検出することができる。これは一般の土壌の比誘電率は5から40であるのに対して、水の比誘電率は80程度であり、交流電流が漏水部に通流しやすい性質に依る。
また、好ましくは、印加する周波数を1kHzから10MHzまでに設定し、直流を印加しないことである。これによってガス管の塗膜に欠陥がある場合においても腐食の原因となる腐食電流が流れないよう防止することができ、微弱な電流においても大きなインピーダンス変化として捉えることができる。
この発明の他の局面に従うと、2以上の基本発振周波数を選択可能な発振器1と、発振器1が発生した電圧信号を電流に変換する電圧電流変換器2、電圧電流変換器2が供給する高周波電流を大地に通流するために用い大地の離れた位置に設置あるいは埋設した1対の電流印加電極3と、電流印加電極3の設置場所とは異なり互いに離れた位置に設置される1対の電圧測定電極81、82と、電圧測定電極81、82の2電極間に発生する高周波電圧を測定して2点間のインピーダンスを検出する測定部4と、測定部4が出力するインピーダンス値を発振周波数毎に保持する保持部5と、保持部5が保持するインピーダンス値に基づいて印加発振周波数の違いによるインピーダンスの差を演算する演算部6により構成されている地中探査装置であれば、電圧測定電極81、82は地表上の測定点を移動しながら測定することが可能であり、大地表面上でインピーダンスが急激に変化する点を探索することができる。
さらにこの発明の他の局面に従うと、2以上の基本発振周波数を選択可能な発振器1と、発振器1が発生した電圧信号を電流に変換する電圧電流変換器2、電圧電流変換器2が供給する高周波電流を大地に通流するために用い大地の離れた位置に設置あるいは埋設した1対の電流印加電極3と、電流印加電極3の設置場所とは異なり互いに離れた位置に設置される2以上の総数N個の電圧測定電極81、82、・・・8Nと、N個の電圧測定電極81、82、・・・8Nから任意の1対の電極を選択して電圧を供給する電極切換部9と、電圧切換部9が選択した2電極間に発生する高周波電圧を測定して2点間のインピーダンスを検出する測定部4と、測定部4が出力するインピーダンス値を発振周波数毎に保持する保持部5と、保持部5が保持するインピーダンス値に基づいて印加発振周波数の違いによるインピーダンスの差を演算する演算部6により構成される地中探査装置であれば、大地表面における電位観測により地表付近だけでなく深部の地中探査も行うことができる。即ち、地下水脈や埋蔵資源あるいは土壌汚染の位置・深度・収蔵量、地層に含まれる物質の特定、あるいは土壌改善の進行状況を計測あるいはモニターすることができる。
好ましくは、電圧測定電極81、82、・・・8Nが2次元的な網状シート上に配置されたものであり、網状シートの敷設によって大地上に電位観測点を容易に展開できるものである。また、電圧測定電極は図13AまたはBに示すように、電流印加電極と一体的な構造のものであってもよいし、図13Cのように別個に設けてもよい。
さらにこの発明の他の局面に従うと、2以上の基本発振周波数を選択可能な発振器1と、発振器1が発生した電圧信号を電流に変換する電圧電流変換器2、高周波電流を大地に通流するために用い大地の離れた位置に設置あるいは埋設した少なくとも2以上の総数M個の電流印加電極31、32、・・・3Mと、電圧電流変換器2が出力する電流を電流印加電極31、32、・・・3Mから選択した任意の1対の電極に供給する電流供給選択部12と、電流印加電極31、32、・・・3Mの設置場所とは異なり互いに離れた位置に設置される2以上の総数N個の電圧測定電極81、82、・・・8Nと、N個の電圧測定電極81、82、・・・8Nから任意の1対の電極を選択して電圧を供給する電極切換部9と、電圧切換部9が選択した2電極間に発生する高周波電圧を測定して2点間のインピーダンスを検出する測定部4と、測定部4が出力するインピーダンス値を発振周波数毎に保持する保持部5と、保持部5が保持するインピーダンス値に基づいて印加発振周波数の違いによるインピーダンスの差を演算する演算部6により構成される地中探査装置であれば、通流経路を変更することが容易であるので、地中埋設物や土壌汚染の方向性や広がり方に偏りがある場合においても適切に地中探査を行うことができる。即ち、方向性を持った地下水脈や埋蔵資源あるいは土壌汚染の位置・深度・収蔵量、地層に含まれる物質の特定、あるいは土壌改善の進行状況を精確に計測あるいはモニターすることができる。
さらにこの発明の他の局面に従うと、請求項1または請求項2または請求項3または請求項4に記載の地中探査装置において、発振器1が発生する電圧信号が正弦波、三角波、のこぎり波、あるいは矩形波であるか、前記正弦波、三角波、のこぎり波、あるいは矩形波を基本発振周波数の整数分の1の周波数の2進最長符号系列で2相変調を施したものであることを特徴とする地中探査装置であれば、送電線や電車の架線を流れる電流の大地帰還成分や電力機器からの漏えい電流の影響を受けることなく、高いS/N比でノイズに埋もれた微弱な電位を容易に捕捉することができ、強いノイズ耐性の地中探査を行うことが可能である。
好ましくは、矩形波を基本発振周波数の整数分の1の周波数の2進最長符号系列として、長周期のM系列符号を用いたものであることである。M系列符号の有する自己相関特性によって、漏えい電流や大地に蓄積した静電気(自由電荷)の影響を抑制することができる。
さらにこの発明の他の局面に従うと、請求項2に記載の地中探査装置において、1対の電圧測定電極81、82を電極間距離を一定値に固定して地表面を移動することが可能な機構を具備し、地表面上を移動しながら測定することを特徴とする地中探査装置であれば、常に電極間距離を一定値に固定した計測を行うことができるので、さらに測定精度を向上することができるだけでなく、測定時間を著しく短縮することができる。
さらにこの発明の他の局面に従うと、請求項3または請求項4に記載の地中探査装置において、総数N個の電圧測定電極81、82、・・・8Nは地表面上に2次元的に配置されたものであり、演算部6から供給される印加発振周波数の違いによるインピーダンスの差のデータに基づいて2次元マップを表示する表示部11を備えることを特徴とする地中探査装置であるので、印加周波数が変わったことによって通流経路が変わった部分のみに電流が流れた場合に電位測定面に誘起する高周波電圧の振幅を観測するのと同等の効果を得ることができる。
図5Aに示すように、導電率がσ1で誘電率がε1の特性を持った大地の地中に、導電率がσ2で誘電率がε2の特性を持った領域が存在している場合、図5Bに示すような等価回路モデルが成立する。このとき、大地を抵抗R1とコンデンサC1で表現し、領域を抵抗R2とコンデンサC2で表現することができる。いま、周波数f1においては誘電率ε1より誘電率ε2の方が大きいとすると、周波数f1においては図5Cに示すように印加電流は主として領域の方に流れている。周波数f2において領域の方の誘電率ε2が分極要因の1つの追従速度を超えたことにより著しく低下した場合には容量C2は低下するので領域のインピーダンスは高くなり、図5Dに示すように領域内には電流が集中しなくなる。従って、両者のインピーダンス測定値の差を取るということは、領域内に流れていた電流が分散したことによって生じた差異を得ることを意味し、ひいては領域内に集中的に流れていた電流に起因する電位分布パターンを得ることを意味する。この2次元電位分布パターンはダイポール性が高いので、インピーダンスの差のデータに基づいて2次元マップを表示すれば、領域直上付近に図6Cに示すようなダイポール性の強い等高線図を得ることができる。即ち、地表表面の観測から地中の深部の領域の検出が行えるという特有の効果を奏することができる。
さらにこの発明の他の局面に従うと、請求項3または請求項4に記載の地中探査装置において、総数N個の電圧測定電極81、82、・・・8Nは地表面上に2次元的に配置されたものであり、演算部6から供給される印加発振周波数の違いによるインピーダンスの差のデータに基づいて2次元補間処理を施し、さらに得られた2次元補間値に対して前記2次元を平面とみなして互いに直交する平面上の2軸xとyに対してそれぞれ軸方向の微分処理を行い、x方向微分値とy方向微分値をベクトルの要素とみなした2次元ベクトル表示またはアローマップ表示を行う表示部11を備えることを特徴とする地中探査装置であるので、片方の周波数で地中に集中して電流が流れた領域が存在する場合に、インピーダンスの差のデータに基づいて2次元補間処理を施して得られた大地表面の2次元電位マップに基づいて、電流集中部位の直上は変化が激しい性質を有したマップであるために、得られた2次元補間値に対して前記2次元を平面とみなして互いに直交する平面上の2軸xとyに対してそれぞれ軸方向の微分処理を行い、x方向微分値とy方向微分値をベクトルの要素とみなした2次元ベクトル表示またはアローマップ表示を行えば、領域内を通流する電流とほぼ同じ方向ベクトルを持った図を得ることができる。即ち、通流電流の密度変化を起こした部位を2次元ベクトル表示またはアローマップ表示という形で可視化することができる。
好ましくは、数式1を用いてベクトルを得るものであることである。

さらにこの発明の他の局面に従うと、請求項7または請求項8に記載の地中探査装置において、電流印加電極31、32、・・・3M、電圧測定電極81、82、・・・8Nの3次元座標と地形データに基づいて印加電流順方向問題を有限要素法または境界要素法またはインピーダンス網で解いて大地モデルの電圧測定電極に出現する高周波電圧振幅値を求め、実測値と計算値の誤差が小さくなるように大地モデルの局所誘電率、導電率を変更することにより地中物質の推定を行う処理部10と、処理部10より入力情報と推定処理結果の供給を受けて2次元あるいは3次元表示処理を行う表示部11を備えることを特徴とする地中探査装置であれば、大地モデルによる逐次法を用いた逆問題を解くことができるので、大地表面上のおよその領域の位置だけでなく、深さ、領域の大きさ、形状、導電率、誘電率を推定することができる。
導電率および誘電率を推定することができるので、その領域の物質を特定することができるので、漏水状態、地下水脈や埋蔵資源あるいは土壌汚染の位置・形状・深度・収蔵量、土壌改善の進行状況等を観測あるいはモニターすることができる特徴を有する。
好ましくは大地モデルとして、図11A及び11Bに示すような等価回路網を用いたインピーダンス網モデルか図12Aに示すような有限要素法モデル、あるいは図12Bに示すような境界要素法モデルを用いることである。これによって少ないパラメータ数で領域のモデル化が行え、ひいては逆問題を解くための演算時間を著しく短縮することができるのである。
【実施例】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
[実施例1]
図2は、この発明の測定原理の基となっている大地を構成する物質や化学物質等の比誘電率が異なる値を有することを説明する図である。比誘電率とは真空誘電率に対して対応する物質の分極しやすさを示す係数である。実際の誘電率εは真空誘電率にその物質の比誘電率を乗じて求めることができる。一般に誘電率は測定する周波数や温度によって異なる。
図3は誘電率の周波数依存性とその変動要因を説明する図である。誘電率は分極し易さを表す係数である。物質の分極要因としては、界面分極、双極子分極、イオン分極、電子分極の4要因が知られている。図4A及び4Bは界面分極と双極子分極を説明する図である。
界面分極は図4Aに示すように粒界の隙間に存在する荷電粒子が外部からの電界によって移動することによって発生する。界面分極は大きな質量の物質が粒界を時間をかけて移動することによって起きる現象であるので、最も低い周波数で発生する分極である。通常、直流(DC)から数kHz程度の周波数で発生し、印加周波数が数kHzを超えると移動速度が追従しなくなり、この形態での分極は発生しなくなり、誘電率が低下する。粒界の隙間の大きさや移動する荷電粒子の粘性によっても左右され、温度依存性も存在する。従って、界面分極は土壌の性質や含有する荷電粒子の種類に依存するので地質と含有物質を判断する材料となっている。
双極子分極は図4Bに示すように荷電粒子を構成する分極した分子が外部の電界によって配向を変えることによって発生する。従って、荷電粒子自体が位置を移動するのに比して短い時間で配向を変えることができるため、追従限界となる周波数は界面分極に比して高く、1MHzから100MHzとなる。この限界周波数は分子量や分子分極の大きさに応じて決まるので、分子を特定する手がかりとなるのである。
図5A乃至5Dは本件発明に最も関係が深い測定原理を説明する図である。図5Aに示すように大地の2点に電流印加電極を設け、2極間に高周波電流を印加するものとする。大地の導電率をσ1とし誘電率をε1とする。また、地中の一部の領域内は周囲の地質とは電気的性質が異なり、導電率をσ2とし誘電率をε2とする。一般に導電率の方は周波数によって殆ど変動しない。図5Bに示すようにこの大地と領域はそれぞれ抵抗とコンデンサを並列に接続した等価回路で表すことができる。大地の等価回路の抵抗値をR1、コンデンサをC1とし、領域の等価回路の抵抗値をR2、コンデンサをC2とする。
ここで大地を土とし、領域を水がしみこんだ土とする。図2の表に見られるように土の比誘電率は5から40であり、水の比誘電率は80程度である。水分子は酸素原子1個に水素原子2個が偏って共有結合したものであるために弱い分極性を有しており、摂氏20度前後では6個から7個程度の水分子が弱い分極性で紐状に連結した構造を持っている。従って、この短い連結鎖自体も分極しており界面分極の性質がある。低い周波数f1では図5Cに示すように水分を含んだ領域の方が周囲の大地に比べて高い誘電率をもっており、それだけこの領域のインピーダンスは低くなるので、印加電流が周囲に比べて高密度に通流する。しかし、界面分極の追従速度を越えた高い周波数f2では界面分極が無くなるために誘電率は低くなり、図5Dに示すようにほぼ均質に通流するようになる。
図7に本件発明の1実施形態を示す。1は印加電流の基になる信号を発生する発振器、2は電圧信号を電流に変換する電圧電流変換器、3は電流印加電極、31、32、・・・3Mは電流印加電極、4は発振器が発生する信号に同期して検波する同期検波によりインピーダンスを測定する測定部、5は印加する周波数ごとに測定データを保持する保持部、6は周波数を変更したことによるインピーダンスの差を演算する演算部、7はインピーダンスの差によってサンドブラストか否かを判定する判定部、81、82、・・・8Nは電圧測定電極、9は任意の電圧測定電極間の電圧を選択する電圧切換部、10は大地モデルによる逆問題解析や補間処理等を行う処理部、11は表示部、12は電流印加電極を選択して電流供給経路を変更するための電流供給選択部を各々示す。ガス管に近接した位置に埋設された水道管からガス管の方向に急激な漏水が発生した場合に水流とともに土砂が吹きつけガス管を損傷させ、ガス管内に水が入り込む被害が発生する。土砂を巻き込んだ急激な漏水はサンドブラスト現象と呼ばれている。図7は地表からでは発見が遅れるサンドブラスト現象を早期に検知する検出システムの例を示している。
図7において、発振器1は2以上の発振周波数を選択可能な高周波電圧信号発振器であり、電圧信号を電流に変換する電圧電流変換器2に信号を供給している。電圧電流変換器は、サンドブラスト早期警戒対象となるガス管の近傍に埋設された2個の電極3に対して高周波電流を供給している。漏水が発生していない状態においては図7や図8Aに示すように地中の電極3間を電流がほぼ均質にガス管に沿って流れることになる。電極3間に流れる電流と電極間の土壌のインピーダンスに応じて電極には高周波電圧が発生する。図7に詳細を図示しているように測定部4は発振器1から同期検波用の高周波電圧信号の供給を受けて、電極3間に誘起した電圧を増幅した後で乗算処理を行い、高周波リップル分を低域ろ過器を通すことにより、同期検波処理を行っている。即ち、固定振幅で電流を印加した結果として電極間に発生する高周波電圧の振幅値を得ているので、電極間インピーダンスを測定していることになる。測定部4からのインピーダンス値の供給を受け、保持部5は内部のメモリに印加周波数ごとのインピーダンス値を保持している。保持部5からの測定データの供給を受け、演算部6では印加周波数を変更したことによって発生したインピーダンスの差(変化値)を演算子、判定部7に供給している。判定部7は予め設定された以上のインピーダンスの変化が短時間に起こったか否かを判定することにより、ガス管近傍に近くに埋設されている水道管からの漏水が発生し、サンドブラスト現象を発生する直前状態であることを早期検知することができる。
本実施例の動作をさらに詳細に説明する。図8Bはガス管に近接した位置に埋設された水道管が急激な漏水を引き起こしている状態を説明する図である。図8Bに図示されているように、電極3に印加された電流はよりインピーダンスが低い領域である漏水箇所に引き込まれやすい。印加電流はガス管に沿って通流されているので、漏水箇所が大きくなり、ガス管に近づくほど電流の引き込みは顕著になるのである。図8Cはガス管の切断面から見た電流密度を等高線で示した図である。低い周波数f1において急激にインピーダンスの低下が生じた場合に高い周波数f2においても測定を行い、インピーダンスの差を求めることによりサンドブラスト現象の発生を検知することができるのである。上記の実施例であれば、ガス管に近接して発生した漏水のうち、サンドブラスト現象に移行し、ガス管を損傷する恐れのある場合のみを精確に検出することが可能である。
[実施例2]
図9はこの発明の別の実施の形態による発振器1の詳細構造を説明する図である。地中には交流電気試験にとって障害となる様々な電流が流れている。大地に帯電した静電気の移動に伴う電流、送電線や電車の架線を流れる電流の大地を帰還して流れる電流、電力機器から漏洩する電流等である。これらの影響を受けることなく、微弱なインピーダンスの変化を検出する場合には図9に示すような構造の発振器を用いることが好ましい。
図9に記載されている正弦波発生器は正弦波を発生し、信号を乗算器に供給するとともに、基本周波数に同期してクロック信号をM系列発生器に供給している。M系列発生器とはL段のレジスタを用いて構成できる2進符号発生器において最も長周期の2進符号である最長符号系列(M系列符号)を発生する電子回路である。L段のレジスタを用いて発生できる最長の符号長は2のL乗−1ビット長である。M系列符号は別名擬似雑音とも呼ばれており、強い自己相関特性を有している。2進論理の“H”状態に対応して+1を、“L”状態に対応して−1を発生する場合には同一符号の0位相で乗算すると、(+1)×(+1)=1となり、(−1)×(−1)=1となる性質がある。
従って、正弦波にM系列を乗じた2相変調された電流信号の印加の結果得られる高周波電圧も印加したM系列で2相変調された正弦波と同相か逆相の信号であるため、もう一度送信波を乗算することにより同期検波と同様の復号を行うことができる。しかしながら、受信された高周波信号に直流または交流の障害電流が重畳していても擬似雑音で変調された送信波とは無相関な信号であるために、障害電流成分は擬似雑音により拡散され、M系列1周期分の相関値を取った場合には素の信号強度の符号長分の1の大きさになるのである。即ち、十分に長い符号長のM系列符号を用いることにより、計測に無関係な電流雑音を低減することができる。
上記の構成であれば、非常に大きな環境電流ノイズが存在している大地の地中探査においても障害電流の影響を受けることなく、極めて精確なインピーダンス計測を行うことが可能であり、ひいては微弱な誘電率の変化に伴うインピーダンスの差を求めることができるのである。
[実施例3]
図1はこの発明の別の実施の形態による地中探査装置の構造を示す図である。図1において、発振器1で発生された送信波形は電圧電流変換器2で電流に変換された後で1対の電流印加電極3の両端を介して大地に通流されている。通流の結果、地表に誘起する高周波電圧を測定する目的で設置された総数N個の電圧測定電極81、82,83,84、・・・・、8Nのうち選択された任意の2電極間に発生した高周波電圧が電圧切換部9を介して増幅器に供給されており、送信波に同期して乗算され、低域ろ過器を通されることにより同期検波処理が施されている。同期検波回路は増幅器と乗算器と低域ろ過きにより構成された測定部4により構成されている。この測定部の出力信号は、送信波の電流振幅が一定値であることによりインピーダンスに比例した値である。測定部4の出力は保持部5において測定周波数ごとに保持され、演算部6で印加周波数を変更したことによって生じたインピーダンスの差が演算され、処理部10に供給される。処理部10においては測定データであるインピーダンスの差値に基づいて複数の情報処理を行った後、必要に応じて表示部11で2次元または3次元表示処理を施すことができる構成となっている。
処理部10において施される処理についての説明を行う。2以上の周波数でインピーダンスを測定して求めた差に基づいて、電位測定電極を配置した面を平面と考えて、測定値の2次元補間値を演算して得られる図6Aと図6Bの差を演算することには次の意味がある。即ち、周波数f1で測定したインピーダンス分布と周波数f2で測定したインピーダンス分布の差が上記の処理結果と同等であり、周波数の変化に伴って電流が変化した部分のみに変化した電流密度と同値の電流を通流した際に発生する電位パターンを得ることになる。図6Cの等高線図は上記の差電流に起因して発生するはずの電位パターンであるため、周波数を変えることで誘電率が大きく変化した領域の直上にダイポールパターンとなって出現する。
この2次元補間値に対して数1による情報処理を施せば、図6Dに示すように誘電率が大きく変化した領域の直上に電流の通流方向にほぼ一致するベクトルを持った2次元図を得ることができる。表示部11において表示することができる。
上記の処理であれば、誘電率が異なる領域の直上位置の同定が容易に行える。
さらに、処理部10において、大地モデルとして、図11A及び11Bに図示のインピーダンス網か、図12Aに図示の有限要素モデルまたは図12Bに図示の境界要素モデルを用いて、実測定値と大地モデルによる計算値との誤差が小さくなるように逐次法を用いて未知数である導電率、誘電率、3次元座標、大きさ、形状を推定する逆問題を解くことが可能である。
本件発明の発明者の一人である上田智章は、1995年に発行された日本生体磁気学会論文誌No.2の7頁から13頁の「逆問題解析のための生体組織導電率推定の試み」において境界要素法モデルによる逐次法による未知数の推定処理方法について述べている。
上記の構成であれば、大地モデルを用いた地中深部の未知数量を推定することができるため、測定に用いた周波数情報と推定された導電率や誘電率情報により、地質を構成する物質や含有物質の同定が行うことができる。
[実施例4]
図10は、この発明の別の実施の形態による地中探査装置の構造を示す図である。図1との違いは電流印加電極を3個以上設置した点と、電流を供給するための電流印加電極を選択するための電流供給選択部12を設けた点のみである。
上記の構成であれば、通流方向を自由に変更することが可能であるために、地質が異なる領域が方向性を有した広がりを持つ場合においても精確にその領域を検出し、その領域の未知数を推定することができ、その領域の地質や含有物質を特定することが可能である。
開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、低侵襲性の交流電気試験によって地質やその含有物質を調べる地中探査を環境電流ノイズの影響を受けることなく精確に行うことができるという特有の効果を奏する。
また、この発明によれば、ガス管に重大な損傷を与える恐れのある近接して埋設された水道管の漏水に起因して発生するサンドブラスト現象を早期に検出することができるという特有の効果を奏する。
さらに、この発明によれば、大地モデルによる未知数量の推定処理により、地下水脈や埋蔵資源あるいは土壌汚染の位置・深度・収蔵量、地層に含まれる物質の特定、あるいは土壌改善の進行状況を計測あるいはモニターすることが可能であるという特有の効果を奏する。
また、汚染物質や資源の埋蔵位置のおよその位置を地表面上に配置した多数の電位測定電極の配置面を平面と仮定して補間処理を施した2次元分布図に基づいて作成されるベクトル図あるいはアローマップを使用して容易に同定することができるという特有の効果を奏する。
【図1】

【図2】

【図3】




【図7】


【図9】

【図10】





【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の基本発振周波数を選択可能な発振器1と、発振器1が発生した電圧信号を電流に変換する電圧電流変換器2と、電圧電流変換器2が供給する高周波電流を大地に通流するために用い大地の離れた位置に設置あるいは埋設した1対の電極3と、電極3の両端に発生する高周波電圧を測定して2点間のインピーダンスを検出する測定部4と、測定部4が出力するインピーダンス値を発振周波数毎に保持する保持部5と、保持部5が保持するインピーダンスの差を演算して発振周波数の違いによるインピーダンス差を計算する演算部6と、演算部6が演算するインピーダンス差に基づいて短時間に電極3の2点間のインピーダンスが少なくとも一方の周波数で大きく変化したことを検出判定する判定部7により構成される地中探査装置。
【請求項2】
2以上の基本発振周波数を選択可能な発振器1と、発振器1が発生した電圧信号を電流に変換する電圧電流変換器2と、電圧電流変換器2が供給する高周波電流を大地に通流するために用い大地の離れた位置に設置あるいは埋設した1対の電流印加電極3と、電流印加電極3の設置場所とは異なり互いに離れた位置に設置される1対の電圧測定電極81、82と、電圧測定電極81、82の2電極間に発生する高周波電圧を測定して2点間のインピーダンスを検出する測定部4と、測定部4が出力するインピーダンス値を発振周波数毎に保持する保持部5と、保持部5が保持するインピーダンス値に基づいて印加発振周波数の違いによるインピーダンスの差を演算する演算部6により構成される地中探査装置。
【請求項3】
2以上の基本発振周波数を選択可能な発振器1と、発振器1が発生した電圧信号を電流に変換する電圧電流変換器2と、電圧電流変換器2が供給する高周波電流を大地に通流するために用い大地の離れた位置に設置あるいは埋設した1対の電流印加電極3と、電流印加電極3の設置場所とは異なり互いに離れた位置に設置される2以上の総数N個の電圧測定電極81、82、・・・8Nと、N個の電圧測定電極81、82、・・・8Nから任意の1対の電極を選択して電圧を供給する電極切換部9と、電圧切換部9が選択した2電極間に発生する高周波電圧を測定して2点間のインピーダンスを検出する測定部4と、測定部4が出力するインピーダンス値を発振周波数毎に保持する保持部5と、保持部5が保持するインピーダンス値に基づいて印加発振周波数の違いによるインピーダンスの差を演算する演算部6により構成される地中探査装置。
【請求項4】
2以上の基本発振周波数を選択可能な発振器1と、発振器1が発生した電圧信号を電流に変換する電圧電流変換器2と、高周波電流を大地に通流するために用い大地の離れた位置に設置あるいは埋設した少なくとも2以上の総数M個の電流印加電極31、32、・・・3Mと、電圧電流変換器2が出力する電流を電流印加電極31、32、・・・3Mから選択した任意の1対の電極に供給する電流供給選択部12と、電流印加電極31、32、・・・3Mの設置場所とは異なり互いに離れた位置に設置される2以上の総数N個の電圧測定電極81、82、・・・8Nと、N個の電圧測定電極81、82、・・・8Nから任意の1対の電極を選択して電圧を供給する電極切換部9と、電圧切換部9が選択した2電極間に発生する高周波電圧を測定して2点間のインピーダンスを検出する測定部4と、測定部4が出力するインピーダンス値を発振周波数毎に保持する保持部5と、保持部5が保持するインピーダンス値に基づいて印加発振周波数の違いによるインピーダンスの差を演算する演算部6により構成される地中探査装置。
【請求項5】
請求項1〜4にのいずれか一項に記載の地中探査装置において、発振器1が発生する電圧信号が正弦波、三角波、のこぎり波、あるいは矩形波であるか、前記正弦波、三角波、のこぎり波、あるいは矩形波を基本発振周波数の整数分の1の周波数の2進最長符号系列で2相変調を施したものであることを特徴とする地中探査装置。
【請求項6】
請求項2に記載の地中探査装置において、1対の電圧測定電極81、82を電極間距離を一定値に固定して地表面を移動することが可能な機構を具備し、地表面上を移動しながら測定することを特徴とする地中探査装置。
【請求項7】
請求項3または4に記載の地中探査装置において、総数N個の電圧測定電極81、82、・・・8Nは地表面上に2次元的に配置されたものであり、演算部6から供給される印加発振周波数の違いによるインピーダンスの差のデータに基づいて2次元マップを表示する表示部11を備えることを特徴とする地中探査装置。
【請求項8】
請求項3または4に記載の地中探査装置において、総数N個の電圧測定電極81、82、・・・8Nは地表面上に2次元的に配置されたものであり、演算部6から供給される印加発振周波数の違いによるインピーダンスの差のデータに基づいて2次元補間処理を施し、さらに得られた2次元補間値に対して前記2次元を平面とみなして互いに直交する平面上の2軸xとyに対してそれぞれ軸方向の微分処理を行い、x方向微分値とy方向微分値をベクトルの要素とみなした2次元ベクトル表示またはアローマップ表示を行う表示部11を備えることを特徴とする地中探査装置。
【請求項9】
請求項7または8に記載の地中探査装置において、電流印加電極31、32、・・・3M、電圧測定電極81、82、・・・8Nの3次元座標と地形データに基づいて印加電流順方向問題を有限要素法または境界要素法またはインピーダンス網で解いて大地モデルの電圧測定電極に出現する高周波電圧振幅値を求め、実測値と計算値の誤差が小さくなるように大地モデルの局所誘電率、導電率を変更することにより地中物質の推定を行う処理部10と、処理部10より入力情報と推定処理結果の供給を受けて2次元あるいは3次元表示処理を行う表示部11を備えることを特徴とする地中探査装置。
【請求項10】
2以上の基本発振周波数を選択可能な発振器1と、発振器1が発生した電圧信号を電流に変換する電圧電流変換器2と、電圧電流変換器2が供給する電流を大地に通流するために用い大地の離れた位置に設置あるいは埋設した1対の電極3と、電極3の両端に発生する電圧を測定して2点間のインピーダンスを検出する測定部4と、測定部4が出力するインピーダンス値を発振周波数毎に保持する保持部5と、保持部5が保持するインピーダンスの差を演算して発振周波数の違いによるインピーダンス差を計算する演算部6と、演算部6が演算するインピーダンス差に基づいて電極3の2点間のインピーダンスが少なくとも一方の周波数で変化したことを検出判定する判定部7により構成される地中探査システム。
【請求項11】
2以上の基本発振周波数を選択可能な発振器1と、発振器1が発生した電圧信号を電流に変換する電圧電流変換器2と、電圧電流変換器2が供給する電流を大地に通流するために用い大地の離れた位置に設置あるいは埋設した1対の電流印加電極3と、電流印加電極3の設置場所とは異なり互いに離れた位置に設置される1対の電圧測定電極81、82と、電圧測定電極81、82の2電極間に発生する電圧を測定して2点間のインピーダンスを検出する測定部4と、測定部4が出力するインピーダンス値を発振周波数毎に保持する保持部5と、保持部5が保持するインピーダンス値に基づいて印加発振周波数の違いによるインピーダンスの差を演算する演算部6により構成される地中探査システム。
【請求項12】
2以上の基本発振周波数を選択可能な発振器1と、発振器1が発生した電圧信号を電流に変換する電圧電流変換器2と、電圧電流変換器2が供給する電流を大地に通流するために用い大地の離れた位置に設置あるいは埋設した1対の電流印加電極3と、電流印加電極3の設置場所とは異なり互いに離れた位置に設置される2以上の総数N個の電圧測定電極81、82、・・・8Nと、N個の電圧測定電極81、82、・・・8Nから任意の1対の電極を選択して電圧を供給する電極切換部9と、電圧切換部9が選択した2電極間に発生する電圧を測定して2点間のインピーダンスを検出する測定部4と、測定部4が出力するインピーダンス値を発振周波数毎に保持する保持部5と、保持部5が保持するインピーダンス値に基づいて印加発振周波数の違いによるインピーダンスの差を演算する演算部6により構成される地中探査システム。
【請求項13】
2以上の基本発振周波数を選択可能な発振器1と、発振器1が発生した電圧信号を電流に変換する電圧電流変換器2と、電流を大地に通流するために用い大地の離れた位置に設置あるいは埋設した少なくとも2以上の総数M個の電流印加電極31、32、・・・3Mと、電圧電流変換器2が出力する電流を電流印加電極31、32、・・・3Mから選択した任意の1対の電極に供給する電流供給選択部12と、電流印加電極31、32、・・・3Mの設置場所とは異なり互いに離れた位置に設置される2以上の総数N個の電圧測定電極81、82、・・・8Nと、N個の電圧測定電極81、82、・・・8Nから任意の1対の電極を選択して電圧を供給する電極切換部9と、電圧切換部9が選択した2電極間に発生する電圧を測定して2点間のインピーダンスを検出する測定部4と、測定部4が出力するインピーダンス値を発振周波数毎に保持する保持部5と、保持部5が保持するインピーダンス値に基づいて印加発振周波数の違いによるインピーダンスの差を演算する演算部6により構成される地中探査システム。
【請求項14】
大地の離れた位置に設置あるいは埋設した1対の電流印加電極または大地の離れた位置に設置あるいは埋設した複数の電流印加電極から選択した任意の1対の電極に異なる2以上の発振周波数の電流を通流する工程と、
大地の離れた位置に設置した1対の電圧測定電極または大地の離れた位置に設置した複数の電圧測定電極から選択した任意の1対の電極該電極間に発生する電圧を測定して2点間のインピーダンスを検出する工程と、
該インピーダンス値を上記発振周波数毎に保持する工程と、
該インピーダンス値の差を演算して発振周波数の違いによるインピーダンス差を演算する工程を有する地中探査方法。
【請求項15】
前記インピーダンス差が変化したことを検出判定する工程を有する請求項14に記載の地中探査方法。

【国際公開番号】WO2005/015262
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【発行日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−512913(P2005−512913)
【国際出願番号】PCT/JP2004/010446
【国際出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】