地中構造物および止水構造の補修方法
【課題】二以上の躯体を連設してなる地中構造物であって、躯体間に設けた止水構造を簡易迅速に補修することが可能な地中構造物を提供することを課題とする。
【解決手段】二以上の躯体を連設してなる地中構造物1であって、躯体10同士の繋ぎ目を止水する止水構造20と、少なくとも一方の躯体10に埋設された凍結管30とを具備しており、凍結管30は、止水構造20よりも地盤G側を通るように配管されている、ことを特徴とする。なお、凍結管30に通じる注入口31および排出口32は、躯体10の内面に設けることが好ましい。
【解決手段】二以上の躯体を連設してなる地中構造物1であって、躯体10同士の繋ぎ目を止水する止水構造20と、少なくとも一方の躯体10に埋設された凍結管30とを具備しており、凍結管30は、止水構造20よりも地盤G側を通るように配管されている、ことを特徴とする。なお、凍結管30に通じる注入口31および排出口32は、躯体10の内面に設けることが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中構造物および止水構造の補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二以上の躯体(例えば、ボックスカルバート、セグメントリング、推進管など)を連設して構築した地中構造物であって、躯体同士の繋ぎ目に止水構造を設けた地中構造物が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この止水構造は、十分な柔軟性(追従性)を具備しているが、地震や地盤沈下などによって地中構造物の周辺地盤に想定外の地盤変形が発生すると、躯体間に想定以上の目開き量やズレが生じ、止水機能が損なわれる場合がある。止水機能を回復すべく止水構造を補修する場合には、躯体間に設けられていた止水板等を一旦取り除く必要があるが、止水板等を取り除くと、地下構造物内への地下水や土砂等の流入が懸念されることから、止水構造の周辺地盤に対して、地上や立坑内から地盤改良を施す必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−90100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、例えば地中構造物が大深度に構築されている場合や地上に作業用地を確保できない場合には、地上からの地盤改良が困難なものとなり、補修工事の長期化を招くとともに補修費用の増大化を招くことになる。また、地中構造物の陰に隠れてしまうような箇所(例えば、地中構造物の下側の地盤など)に対しては、地盤改良を行えない場合もある。
【0006】
このような観点から、本発明は、複数の躯体を連設してなる地中構造物であって、躯体間に設けた止水構造を簡易迅速に補修することが可能な地中構造物を提供することを課題とし、さらには、複数の躯体を連設してなる地中構造物の止水構造を簡易迅速に補修することが可能な止水構造の補修方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決する本発明に係る地中構造物は、複数の躯体を連設してなる地中構造物であって、隣り合う前記躯体同士の繋ぎ目を止水する止水構造と、少なくとも一方の前記躯体に埋設された凍結管とを具備しており、前記凍結管は、前記止水構造よりも地盤側を通るように配管されている、ことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、躯体に埋設した凍結管に冷却液を通流するだけで、止水構造の周辺地盤を凍結させることができる。すなわち、本発明によれば、補修対象となる止水構造の周辺地盤に簡易迅速に止水対策を施すことが可能になるので、止水構造の補修(交換や再構築を含む)を簡易迅速に行うことが可能となる。また、本発明によれば、止水構造よりも地盤側を通るように凍結管を配管しているので、止水構造を補修する際に凍結管が邪魔になることはないし、補修作業中も凍結管に冷却液を通流させることができるので、周辺地盤の凍結状態を良好な状態に保ちつつ補修作業を行うことが可能になる。
【0009】
前記凍結管に通じる注入口および排出口は、例えば、前記躯体の内面に設けるとよい。このようにすると、躯体の内空側からの作業のみで、冷却液を循環させるための冷却液輸送管を注入口および排出口に接続することが可能になるので、簡易迅速に凍結作業に取り掛かることが可能になる。
【0010】
また、前記凍結管から地上に至る冷却液輸送管を、前記躯体の外側に配管しておいてもよい。このようにすると、躯体の内空側において補修作業を行うにあたり、冷却液輸送管が邪魔になることがないので、補修作業を行い易くなる。
【0011】
前記躯体に、前記止水構造を補修する際に削られる補修対象領域を設け、前記補修対象領域の外側に前記凍結管を埋設するとよい。このようにすると、補修作業後も、凍結管を残置しておくことが可能になるので、同じ箇所を再度補修する際に凍結管を再利用することが可能になる。
【0012】
前記した課題を解決する本発明に係る止水構造の補修方法は、複数の躯体を連設してなる地中構造物に埋設した凍結管を利用して、前記躯体同士の繋ぎ目に設けた止水構造を補修する方法であって、前記止水構造よりも地盤側を通るように配管しておいた前記凍結管に冷却液を通流し、前記止水構造の周囲の地盤を凍結させた後、前記凍結管を残置した状態で、前記躯体の内空側から前記止水構造を撤去するとともに、新たな止水構造を構築する、ことを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、躯体の内空側からの作業のみで、止水構造を補修することが可能になる。加えて、本発明によれば、止水構造よりも地盤側を通るように凍結管を配管しているので、止水構造を撤去する際に凍結管が邪魔になることはないし、止水構造を撤去した状態でも、凍結管に冷却液を通流させることができるので、周辺地盤の凍結状態を良好に保ちつつ補修作業を行うことが可能になる。さらに、本発明によれば、補修作業後も、凍結管が残置されることになるので、同じ箇所を再度補修する際に再び凍結管を利用することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、躯体間に設けた止水構造を簡易迅速に補修することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の好適な実施の形態に係る地中構造物を示す斜視図である。
【図2】図1に示す地中構造物の部分縦断面図である。
【図3】図1に示す地中構造物の概略横断面図である。
【図4】(a)〜(c)は図1の地中構造物を利用した止水構造の補修方法を示す縦断面図である。
【図5】(a)および(b)は地中構造物の変形例を示す縦断面図である。
【図6】地中構造物の他の変形例を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一要素には同一の符号を用い、重複する説明は省略する。
【0017】
本実施形態では、図1に示すように、複数のボックスカルバート(躯体)10を連設することにより構成された地中構造物1と、この地中構造物1に設けられた止水構造20(図2参照)を補修する止水構造の補修方法について説明する。
【0018】
地中構造物1は、図2に示すように、複数のボックスカルバート10を地中に連設してなり、隣り合うボックスカルバート10同士の繋ぎ目を止水する止水構造20と、各ボックスカルバート10の端部に埋設された凍結管30とを具備している。
【0019】
ボックスカルバート10は、断面矩形のコンクリート部材であって、推進工法、シールド工法、開削工法等により、地中に連設されている。
本実施形態では、躯体としてボックスカルバート10を使用するが、躯体の構成は限定されるものではなく、例えば、セグメントリングや推進管など、他の躯体であってもよい。
【0020】
ボックスカルバート10の軸方向端面には、止水構造20の二次止水板22を設置するための切欠部11が形成されている。
なお、切欠部11は、必要に応じて形成されるものであって、省略してもよい。
【0021】
止水構造20は、ボックスカルバート10同士の繋ぎ目からの地下水や土砂等の浸入を防止するものであって、本実施形態では、図2に示すように、一次止水板21と二次止水板(耐震ジョイント等)22とを備えている。
【0022】
一次止水板21は、樹脂製の板材であって、ボックスカルバート10の厚さ方向の略中間に配設されている。一次止水板21は、両ボックスカルバート10,10に跨って配設されていることにより、繋ぎ目を塞いでいる。
【0023】
一次止水板21は、管状部21aと管状部21aから前後に延設された埋設部21b,21bとを備えている。
【0024】
管状部21aは、ボックスカルバート10同士の間に配置されている。管状部21aは、ボックスカルバート10,10の繋ぎ目にズレや目開きが生じた際に、伸長・変形することで所定量分追従するように構成されている。また、管状部21aは、所定量分以上のズレや目開きが生じた際は引き裂かれる。
【0025】
一次止水板21は、一方の埋設部21bが一方のボックスカルバート10に埋設されており、他方の埋設部21bが他方のボックスカルバート10に埋設されていることで繋ぎ目を塞いでいる。
なお、一次止水板21の構成や固定方法等は限定されるものではない。
【0026】
二次止水板22は、一次止水板21の内側に配設される板材であって、隣り合うボックスカルバート10同士の繋ぎ目において、両ボックスカルバート10,10に跨って配設されることで当該繋ぎ目を塞いでいる。
【0027】
二次止水板22は、一端が一方のボックスカルバート10の切欠部11に、他端が他方のボックスカルバート10の切欠部11に、ボルト23を介して固定されている。
【0028】
二次止水板22は、ゴム製の波状に形成された板材であって、ボックスカルバート10同士のズレや離隔に対して、伸縮して追従するように構成されている。なお、二次止水板22の材質や構成は限定されるものではない。
【0029】
凍結管30は、冷却液を循環させることで周囲の地盤を凍結させるための管材であって、図2および図3に示すように、止水構造20よりも地盤側を通るように、ボックスカルバート10の外周面に沿ってボックスカルバート10の端部に埋設されている。
【0030】
本実施形態では、凍結管30として、ステンレス製の管材を使用することで、冷却液による酸化を防止する。そのため、凍結管30を繰り返し使用することが可能となっている。なお、凍結管30の材質や構成は限定されるものではない。
【0031】
凍結管30に通じる注入口31および排出口32は、ボックスカルバート10の内面に設けられており、ボックスカルバート10の端部には、注入口31および排出口32と凍結管30とを結ぶ注入管33および排出管34が埋設されている。
【0032】
凍結管30、注入管33および排出管34は、止水構造20を補修する際に削られる補修対象領域12の外側に埋設されている。
また、凍結管30は、ボックスカルバート10の断面内地盤G側であって、ボックスカルバート10同士の繋ぎ目周囲の地下水や土砂(地盤G)の凍結に有効な位置に埋設されている。
【0033】
凍結管30の未使用時には、注入口31および排出口32に、それぞれ栓材が設置されている。
【0034】
次に、本実施形態にかかる止水構造の補修方法について説明する。
図4(a)に示すように、地震等により大きな力が地中構造物1に作用することで、ボックスカルバート10が移動し、ボックスカルバート10同士の繋ぎ目に止水構造20の許容値(設計変位)以上の変位が生じた場合において、破損した止水構造20を補修する場合について説明する。
【0035】
まず、凍結管30に冷却液を通流することで、ボックスカルバート10同士の繋ぎ目の周囲の地盤Gを凍結させて、凍結部G1を形成する。
このとき、ボックスカルバート10の内面を保温材等で養生する(覆う)ことにより、ボックスカルバート10の内空の暖かい空気にボックスカルバート10の表面が曝されることを防止する。これにより、地盤G側と坑内(内空)側との温度差により結露が発生することや、冷却されたコンクリートが坑内の暖かい空気により温まることを防止する。なお、保温材には適宜公知の材料を使用することが可能である。
【0036】
冷却液の通流は、注入口31および排出口32に冷却液輸送管35を接続し、冷却液輸送装置36を介して冷却液を凍結管30に循環させることにより行う。本実施形態では、冷却液としてブライン(塩化ナトリウムの飽和水溶液)を使用するものとするが、冷却液は限定されるものではない。なお、冷却液輸送管35は地上部まで配管されており、地上部から冷却液を輸送してもよいし、坑内において循環するように構成されていてもよい。
【0037】
凍結部G1が形成されることで、ボックスカルバート10同士の繋ぎ目からの地下水や土砂等の流入が防止される。
【0038】
次に、図4(b)に示すように、凍結管30、注入管33および排出管34を残置した状態で、ボックスカルバート10の内空側から削孔を行い、止水構造20を撤去する。
このとき、凍結管30には引き続き冷却液が通流されており、凍結部G1による止水が維持された状態で行う。
【0039】
止水構造20を撤去したら、図4(c)に示すように、一次止水板21および二次止水板22を配設し、新たな止水構造20’を構築する。
そして、凍結部G1を解凍することにより止水構造の補修が完了する。
このとき、一次止水板21は破損状態で残置し、二次止水板(耐震ジョイント等)22のみを交換し、新たな止水構造20’を構築してもよい。
【0040】
なお、止水構造20の補修時に、ボックスカルバート10同士の繋ぎ目周辺に帯状の袋に詰められた砂を埋め戻すことで、繋ぎ目周辺の液状化を防止するとともに繰り返し凍結解凍を行うことが可能な構成としてもよい。ここで、砂は必ずしも袋に詰められている必要はない。また、継ぎ目周辺に埋め戻される材料は砂に限定されるものではなく、その他の繰り返し凍結に有効な材料を使用してもよい。この場合において、使用する材料は、前記砂と同様に帯状の袋に詰められていても詰められていなくてもよい。また、別途液状化対策を施してもよい。
【0041】
以上、本実施形態にかかる地中構造物によれば、凍結管30に冷却液を通流させるのみで簡易迅速に周辺地盤を凍結し、止水を行うため、簡易迅速に止水構造20の補修を行うことができる。
【0042】
また、凍結管30はボックスカルバート10の断面内に埋設されているため、凍結管30の防護が不要となる。また、ボックスカルバート10の施工範囲内に凍結管30等が配置されているため、別途、付帯工事を要することがなく、経済的である。
【0043】
また、止水構造20の近傍に凍結管30を配置することで、補修時の止水性に優れている。
ボックスカルバート(躯体)10の内空側から補修を行うため、深度の深い箇所に配置された地中構造物に対しても、補修作業を容易に行うことが可能である。
【0044】
凍結管30を維持した状態で補修を行うため、止水構造20が再び破損した場合であっても、繰り返し凍結管30を利用して止水構造20の補修を行うことができる。
また、地盤Gに止水材等を注入することなく、凍結により止水を行うため、凍結部G1の解凍を行えば、元の状態に復旧される。そのため、自然体系に影響を与えることなく、補修を行うことができる。
【0045】
以上、本発明について、好適な実施形態について説明したが、本発明は前記各実施形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、凍結管30を単列配置するものとしたが、図5(a)に示すように、凍結管30を複数列(図面では2列)配置してもよい。これにより、凍結部G1の範囲を広くして、止水効果をより向上させることができる。
【0046】
また、前記実施形態では、ボックスカルバートの内空に冷却液輸送管を配置するものとしたが、図5(b)に示すように、冷却液輸送管35をボックスカルバート10の外側に配管してもよい。これにより、躯体の内空側において補修作業を行うにあたり、冷却液輸送管が邪魔になることがないので、補修作業を行い易くなる。
【0047】
また、前記実施形態では、一体に形成されたボックスカルバートの断面内において、ボックスカルバートの外周面に沿って凍結管を配置するものとしたが、図6に示すボックスカルバート10’のように、複数の構成部材13,13,13を組み合わせることにより構成されている場合には、構成部材13毎に凍結管30を配管すればよい。なお、図6において符号14は、インバートコンクリートである。
【0048】
また、前記実施形態では、凍結管30を補修対象領域12の外側に配管するものとしたが、凍結管30の設置箇所は、凍結管30を繰り返し使用する必要がない場合において、繋ぎ目周囲の地盤Gの凍結が可能であれば、補修対象領域12の外側に限定されるものではない。
【0049】
止水構造20として、一次止水板21と二次止水板22とを備える場合について説明したが、止水構造20の構成はこれに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0050】
1 地中構造物
10 ボックスカルバート(躯体)
12 補修対象領域
20 止水構造
30 凍結管
31 注入口
32 排出口
35 冷却液輸送管
G 地盤
G1 凍結部
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中構造物および止水構造の補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二以上の躯体(例えば、ボックスカルバート、セグメントリング、推進管など)を連設して構築した地中構造物であって、躯体同士の繋ぎ目に止水構造を設けた地中構造物が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この止水構造は、十分な柔軟性(追従性)を具備しているが、地震や地盤沈下などによって地中構造物の周辺地盤に想定外の地盤変形が発生すると、躯体間に想定以上の目開き量やズレが生じ、止水機能が損なわれる場合がある。止水機能を回復すべく止水構造を補修する場合には、躯体間に設けられていた止水板等を一旦取り除く必要があるが、止水板等を取り除くと、地下構造物内への地下水や土砂等の流入が懸念されることから、止水構造の周辺地盤に対して、地上や立坑内から地盤改良を施す必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−90100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、例えば地中構造物が大深度に構築されている場合や地上に作業用地を確保できない場合には、地上からの地盤改良が困難なものとなり、補修工事の長期化を招くとともに補修費用の増大化を招くことになる。また、地中構造物の陰に隠れてしまうような箇所(例えば、地中構造物の下側の地盤など)に対しては、地盤改良を行えない場合もある。
【0006】
このような観点から、本発明は、複数の躯体を連設してなる地中構造物であって、躯体間に設けた止水構造を簡易迅速に補修することが可能な地中構造物を提供することを課題とし、さらには、複数の躯体を連設してなる地中構造物の止水構造を簡易迅速に補修することが可能な止水構造の補修方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決する本発明に係る地中構造物は、複数の躯体を連設してなる地中構造物であって、隣り合う前記躯体同士の繋ぎ目を止水する止水構造と、少なくとも一方の前記躯体に埋設された凍結管とを具備しており、前記凍結管は、前記止水構造よりも地盤側を通るように配管されている、ことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、躯体に埋設した凍結管に冷却液を通流するだけで、止水構造の周辺地盤を凍結させることができる。すなわち、本発明によれば、補修対象となる止水構造の周辺地盤に簡易迅速に止水対策を施すことが可能になるので、止水構造の補修(交換や再構築を含む)を簡易迅速に行うことが可能となる。また、本発明によれば、止水構造よりも地盤側を通るように凍結管を配管しているので、止水構造を補修する際に凍結管が邪魔になることはないし、補修作業中も凍結管に冷却液を通流させることができるので、周辺地盤の凍結状態を良好な状態に保ちつつ補修作業を行うことが可能になる。
【0009】
前記凍結管に通じる注入口および排出口は、例えば、前記躯体の内面に設けるとよい。このようにすると、躯体の内空側からの作業のみで、冷却液を循環させるための冷却液輸送管を注入口および排出口に接続することが可能になるので、簡易迅速に凍結作業に取り掛かることが可能になる。
【0010】
また、前記凍結管から地上に至る冷却液輸送管を、前記躯体の外側に配管しておいてもよい。このようにすると、躯体の内空側において補修作業を行うにあたり、冷却液輸送管が邪魔になることがないので、補修作業を行い易くなる。
【0011】
前記躯体に、前記止水構造を補修する際に削られる補修対象領域を設け、前記補修対象領域の外側に前記凍結管を埋設するとよい。このようにすると、補修作業後も、凍結管を残置しておくことが可能になるので、同じ箇所を再度補修する際に凍結管を再利用することが可能になる。
【0012】
前記した課題を解決する本発明に係る止水構造の補修方法は、複数の躯体を連設してなる地中構造物に埋設した凍結管を利用して、前記躯体同士の繋ぎ目に設けた止水構造を補修する方法であって、前記止水構造よりも地盤側を通るように配管しておいた前記凍結管に冷却液を通流し、前記止水構造の周囲の地盤を凍結させた後、前記凍結管を残置した状態で、前記躯体の内空側から前記止水構造を撤去するとともに、新たな止水構造を構築する、ことを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、躯体の内空側からの作業のみで、止水構造を補修することが可能になる。加えて、本発明によれば、止水構造よりも地盤側を通るように凍結管を配管しているので、止水構造を撤去する際に凍結管が邪魔になることはないし、止水構造を撤去した状態でも、凍結管に冷却液を通流させることができるので、周辺地盤の凍結状態を良好に保ちつつ補修作業を行うことが可能になる。さらに、本発明によれば、補修作業後も、凍結管が残置されることになるので、同じ箇所を再度補修する際に再び凍結管を利用することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、躯体間に設けた止水構造を簡易迅速に補修することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の好適な実施の形態に係る地中構造物を示す斜視図である。
【図2】図1に示す地中構造物の部分縦断面図である。
【図3】図1に示す地中構造物の概略横断面図である。
【図4】(a)〜(c)は図1の地中構造物を利用した止水構造の補修方法を示す縦断面図である。
【図5】(a)および(b)は地中構造物の変形例を示す縦断面図である。
【図6】地中構造物の他の変形例を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一要素には同一の符号を用い、重複する説明は省略する。
【0017】
本実施形態では、図1に示すように、複数のボックスカルバート(躯体)10を連設することにより構成された地中構造物1と、この地中構造物1に設けられた止水構造20(図2参照)を補修する止水構造の補修方法について説明する。
【0018】
地中構造物1は、図2に示すように、複数のボックスカルバート10を地中に連設してなり、隣り合うボックスカルバート10同士の繋ぎ目を止水する止水構造20と、各ボックスカルバート10の端部に埋設された凍結管30とを具備している。
【0019】
ボックスカルバート10は、断面矩形のコンクリート部材であって、推進工法、シールド工法、開削工法等により、地中に連設されている。
本実施形態では、躯体としてボックスカルバート10を使用するが、躯体の構成は限定されるものではなく、例えば、セグメントリングや推進管など、他の躯体であってもよい。
【0020】
ボックスカルバート10の軸方向端面には、止水構造20の二次止水板22を設置するための切欠部11が形成されている。
なお、切欠部11は、必要に応じて形成されるものであって、省略してもよい。
【0021】
止水構造20は、ボックスカルバート10同士の繋ぎ目からの地下水や土砂等の浸入を防止するものであって、本実施形態では、図2に示すように、一次止水板21と二次止水板(耐震ジョイント等)22とを備えている。
【0022】
一次止水板21は、樹脂製の板材であって、ボックスカルバート10の厚さ方向の略中間に配設されている。一次止水板21は、両ボックスカルバート10,10に跨って配設されていることにより、繋ぎ目を塞いでいる。
【0023】
一次止水板21は、管状部21aと管状部21aから前後に延設された埋設部21b,21bとを備えている。
【0024】
管状部21aは、ボックスカルバート10同士の間に配置されている。管状部21aは、ボックスカルバート10,10の繋ぎ目にズレや目開きが生じた際に、伸長・変形することで所定量分追従するように構成されている。また、管状部21aは、所定量分以上のズレや目開きが生じた際は引き裂かれる。
【0025】
一次止水板21は、一方の埋設部21bが一方のボックスカルバート10に埋設されており、他方の埋設部21bが他方のボックスカルバート10に埋設されていることで繋ぎ目を塞いでいる。
なお、一次止水板21の構成や固定方法等は限定されるものではない。
【0026】
二次止水板22は、一次止水板21の内側に配設される板材であって、隣り合うボックスカルバート10同士の繋ぎ目において、両ボックスカルバート10,10に跨って配設されることで当該繋ぎ目を塞いでいる。
【0027】
二次止水板22は、一端が一方のボックスカルバート10の切欠部11に、他端が他方のボックスカルバート10の切欠部11に、ボルト23を介して固定されている。
【0028】
二次止水板22は、ゴム製の波状に形成された板材であって、ボックスカルバート10同士のズレや離隔に対して、伸縮して追従するように構成されている。なお、二次止水板22の材質や構成は限定されるものではない。
【0029】
凍結管30は、冷却液を循環させることで周囲の地盤を凍結させるための管材であって、図2および図3に示すように、止水構造20よりも地盤側を通るように、ボックスカルバート10の外周面に沿ってボックスカルバート10の端部に埋設されている。
【0030】
本実施形態では、凍結管30として、ステンレス製の管材を使用することで、冷却液による酸化を防止する。そのため、凍結管30を繰り返し使用することが可能となっている。なお、凍結管30の材質や構成は限定されるものではない。
【0031】
凍結管30に通じる注入口31および排出口32は、ボックスカルバート10の内面に設けられており、ボックスカルバート10の端部には、注入口31および排出口32と凍結管30とを結ぶ注入管33および排出管34が埋設されている。
【0032】
凍結管30、注入管33および排出管34は、止水構造20を補修する際に削られる補修対象領域12の外側に埋設されている。
また、凍結管30は、ボックスカルバート10の断面内地盤G側であって、ボックスカルバート10同士の繋ぎ目周囲の地下水や土砂(地盤G)の凍結に有効な位置に埋設されている。
【0033】
凍結管30の未使用時には、注入口31および排出口32に、それぞれ栓材が設置されている。
【0034】
次に、本実施形態にかかる止水構造の補修方法について説明する。
図4(a)に示すように、地震等により大きな力が地中構造物1に作用することで、ボックスカルバート10が移動し、ボックスカルバート10同士の繋ぎ目に止水構造20の許容値(設計変位)以上の変位が生じた場合において、破損した止水構造20を補修する場合について説明する。
【0035】
まず、凍結管30に冷却液を通流することで、ボックスカルバート10同士の繋ぎ目の周囲の地盤Gを凍結させて、凍結部G1を形成する。
このとき、ボックスカルバート10の内面を保温材等で養生する(覆う)ことにより、ボックスカルバート10の内空の暖かい空気にボックスカルバート10の表面が曝されることを防止する。これにより、地盤G側と坑内(内空)側との温度差により結露が発生することや、冷却されたコンクリートが坑内の暖かい空気により温まることを防止する。なお、保温材には適宜公知の材料を使用することが可能である。
【0036】
冷却液の通流は、注入口31および排出口32に冷却液輸送管35を接続し、冷却液輸送装置36を介して冷却液を凍結管30に循環させることにより行う。本実施形態では、冷却液としてブライン(塩化ナトリウムの飽和水溶液)を使用するものとするが、冷却液は限定されるものではない。なお、冷却液輸送管35は地上部まで配管されており、地上部から冷却液を輸送してもよいし、坑内において循環するように構成されていてもよい。
【0037】
凍結部G1が形成されることで、ボックスカルバート10同士の繋ぎ目からの地下水や土砂等の流入が防止される。
【0038】
次に、図4(b)に示すように、凍結管30、注入管33および排出管34を残置した状態で、ボックスカルバート10の内空側から削孔を行い、止水構造20を撤去する。
このとき、凍結管30には引き続き冷却液が通流されており、凍結部G1による止水が維持された状態で行う。
【0039】
止水構造20を撤去したら、図4(c)に示すように、一次止水板21および二次止水板22を配設し、新たな止水構造20’を構築する。
そして、凍結部G1を解凍することにより止水構造の補修が完了する。
このとき、一次止水板21は破損状態で残置し、二次止水板(耐震ジョイント等)22のみを交換し、新たな止水構造20’を構築してもよい。
【0040】
なお、止水構造20の補修時に、ボックスカルバート10同士の繋ぎ目周辺に帯状の袋に詰められた砂を埋め戻すことで、繋ぎ目周辺の液状化を防止するとともに繰り返し凍結解凍を行うことが可能な構成としてもよい。ここで、砂は必ずしも袋に詰められている必要はない。また、継ぎ目周辺に埋め戻される材料は砂に限定されるものではなく、その他の繰り返し凍結に有効な材料を使用してもよい。この場合において、使用する材料は、前記砂と同様に帯状の袋に詰められていても詰められていなくてもよい。また、別途液状化対策を施してもよい。
【0041】
以上、本実施形態にかかる地中構造物によれば、凍結管30に冷却液を通流させるのみで簡易迅速に周辺地盤を凍結し、止水を行うため、簡易迅速に止水構造20の補修を行うことができる。
【0042】
また、凍結管30はボックスカルバート10の断面内に埋設されているため、凍結管30の防護が不要となる。また、ボックスカルバート10の施工範囲内に凍結管30等が配置されているため、別途、付帯工事を要することがなく、経済的である。
【0043】
また、止水構造20の近傍に凍結管30を配置することで、補修時の止水性に優れている。
ボックスカルバート(躯体)10の内空側から補修を行うため、深度の深い箇所に配置された地中構造物に対しても、補修作業を容易に行うことが可能である。
【0044】
凍結管30を維持した状態で補修を行うため、止水構造20が再び破損した場合であっても、繰り返し凍結管30を利用して止水構造20の補修を行うことができる。
また、地盤Gに止水材等を注入することなく、凍結により止水を行うため、凍結部G1の解凍を行えば、元の状態に復旧される。そのため、自然体系に影響を与えることなく、補修を行うことができる。
【0045】
以上、本発明について、好適な実施形態について説明したが、本発明は前記各実施形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、凍結管30を単列配置するものとしたが、図5(a)に示すように、凍結管30を複数列(図面では2列)配置してもよい。これにより、凍結部G1の範囲を広くして、止水効果をより向上させることができる。
【0046】
また、前記実施形態では、ボックスカルバートの内空に冷却液輸送管を配置するものとしたが、図5(b)に示すように、冷却液輸送管35をボックスカルバート10の外側に配管してもよい。これにより、躯体の内空側において補修作業を行うにあたり、冷却液輸送管が邪魔になることがないので、補修作業を行い易くなる。
【0047】
また、前記実施形態では、一体に形成されたボックスカルバートの断面内において、ボックスカルバートの外周面に沿って凍結管を配置するものとしたが、図6に示すボックスカルバート10’のように、複数の構成部材13,13,13を組み合わせることにより構成されている場合には、構成部材13毎に凍結管30を配管すればよい。なお、図6において符号14は、インバートコンクリートである。
【0048】
また、前記実施形態では、凍結管30を補修対象領域12の外側に配管するものとしたが、凍結管30の設置箇所は、凍結管30を繰り返し使用する必要がない場合において、繋ぎ目周囲の地盤Gの凍結が可能であれば、補修対象領域12の外側に限定されるものではない。
【0049】
止水構造20として、一次止水板21と二次止水板22とを備える場合について説明したが、止水構造20の構成はこれに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0050】
1 地中構造物
10 ボックスカルバート(躯体)
12 補修対象領域
20 止水構造
30 凍結管
31 注入口
32 排出口
35 冷却液輸送管
G 地盤
G1 凍結部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の躯体を連設してなる地中構造物であって、
隣り合う前記躯体同士の繋ぎ目を止水する止水構造と、
少なくとも一方の前記躯体に埋設された凍結管とを具備しており、
前記凍結管は、前記止水構造よりも地盤側を通るように配管されている、ことを特徴とする地中構造物。
【請求項2】
前記凍結管に通じる注入口および排出口が、前記躯体の内面に設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の地中構造物。
【請求項3】
前記凍結管から地上に至る冷却液輸送管が前記躯体の外側に配管されている、ことを特徴とする請求項1に記載の地中構造物。
【請求項4】
前記躯体には、前記止水構造を補修する際に削られる補修対象領域が設定されており、
前記凍結管は、前記補修対象領域の外側に埋設さている、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の地中構造物。
【請求項5】
複数の躯体を連設してなる地中構造物に埋設した凍結管を利用して、前記躯体同士の繋ぎ目に設けた止水構造を補修する方法であって、
前記止水構造よりも地盤側を通るように配管しておいた前記凍結管に冷却液を通流し、前記止水構造の周囲の地盤を凍結させた後、前記凍結管を残置した状態で、前記躯体の内空側から前記止水構造を撤去するとともに、新たな止水構造を構築する、ことを特徴とする止水構造の補修方法。
【請求項1】
複数の躯体を連設してなる地中構造物であって、
隣り合う前記躯体同士の繋ぎ目を止水する止水構造と、
少なくとも一方の前記躯体に埋設された凍結管とを具備しており、
前記凍結管は、前記止水構造よりも地盤側を通るように配管されている、ことを特徴とする地中構造物。
【請求項2】
前記凍結管に通じる注入口および排出口が、前記躯体の内面に設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の地中構造物。
【請求項3】
前記凍結管から地上に至る冷却液輸送管が前記躯体の外側に配管されている、ことを特徴とする請求項1に記載の地中構造物。
【請求項4】
前記躯体には、前記止水構造を補修する際に削られる補修対象領域が設定されており、
前記凍結管は、前記補修対象領域の外側に埋設さている、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の地中構造物。
【請求項5】
複数の躯体を連設してなる地中構造物に埋設した凍結管を利用して、前記躯体同士の繋ぎ目に設けた止水構造を補修する方法であって、
前記止水構造よりも地盤側を通るように配管しておいた前記凍結管に冷却液を通流し、前記止水構造の周囲の地盤を凍結させた後、前記凍結管を残置した状態で、前記躯体の内空側から前記止水構造を撤去するとともに、新たな止水構造を構築する、ことを特徴とする止水構造の補修方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2010−255339(P2010−255339A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108336(P2009−108336)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】
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