説明

地中構造物の構築方法

【課題】 トンネルと他の構造物を接合する際に、躯体の撤去範囲や地盤改良の範囲を縮小し、再構築する接合部材を小さくできる地中構造物の構築方法を提供すること。
【解決手段】 地山1内の既設の本線トンネル3の側方に、拡幅用セグメント19を有するランプトンネル13を設置する。拡幅用セグメント19の内周面16側には、円形保持用部材20を設ける。また、拡幅用セグメント19の外周面18側には、充填材25が充填された余掘り部23を設ける。次に、充填材25をランプトンネル13内に回収しつつ、拡幅用セグメント19を余掘り部23内に押出す。そして、接合予定部8の周辺に改良地盤を設け、接合部の型枠セグメントや充填材を撤去する。さらに、接合部に接合コンクリートを設置し、充填材やセグメント5a、セグメント14a、拡幅用セグメント19の円形保持用部材20等を撤去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中構造物の構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地下道路や地下鉄道等のトンネルの分岐・合流部分を構築する際には、複数のトンネルを接合する方法が用いられている。また、掘削断面形状を変更できるトンネル掘削機を用いて、拡幅部分を有するトンネルを構築することもある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−68333号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、複数のトンネルを接合する場合、接合したい部分が離れていると、構造物の躯体を大幅に撤去し、大きな接合部材を再構築することとなる。また、地上占有幅からの制約上、立地に架台が生じる場合がある。さらに、周囲の地盤を広範囲にわたって改良する必要が生じる場合があるが、地盤改良や凍結工法などの補助工法を多用すると、工費や工期に加え、安全性の面で課題が残る。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、トンネルと他の構造物を接合する際に、躯体の撤去範囲や地盤改良の範囲を縮小し、再構築する接合部材を小さくできる地中構造物の構築方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するための本発明は、既設構造物の近傍に、拡幅用セグメントを有するシールドトンネルを設置する工程(a)と、前記拡幅用セグメントを前記シールドトンネルの外周方向に押出す工程(b)と、前記既設構造物と前記拡幅用セグメントとの間に接合部材を設置する工程(c)とを具備することを特徴とする地中構造物の構築方法である。
【0007】
シールドトンネルは、例えば、既設構造物の側方に設置される。シールドトンネルに設けられる拡幅用セグメントは、既設構造物とシールドトンネルとの接合予定部付近に配置される。接合部材は、拡幅用セグメントと既設構造物とを、凹凸なく滑らかに接合するような形状とするのが望ましい。
【0008】
工程(a)では、拡幅用セグメントの移動予定位置に余掘り部を設け、工程(b)では、余掘り部内に拡幅用セグメントを押出す。拡幅用セグメントは、内周面側に、工程(b)の後にシールドトンネルの安定性を保つための部材を有する。
【0009】
工程(b)と工程(c)との間には、必要に応じて、既設構造物と拡幅用セグメントとの接合部付近の地山を改良する工程(d)をさらに設ける。また、工程(c)の後、シールドトンネルと既設構造物の所定の部分を撤去する工程(e)をさらに設けることにより、既設構造物の内空とシールドトンネルの内空とが一体化される。
【0010】
既設構造物は、例えば、他のシールドトンネルとする。他のシールドトンネルは、周方向の断面の一部に充填材が充填され、充填材を避けてセグメントが設置されたものであり、工程(a)では、この充填材を切削しつつ、シールドトンネルを設置する。
【0011】
他のシールドトンネルは、拡幅用セグメントを有するものとしてもよい。この場合、工程(c)より前に、他のシールドトンネルに設けられた拡幅用セグメントを外周方向に移動させ、工程(c)で、他のシールドトンネルの拡幅用セグメントと、拡幅用セグメントとを接合する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、トンネルと他の構造物を接合する際に、躯体の撤去範囲や地盤改良の範囲を縮小し、再構築する接合部材を小さくできる地中構造物の構築方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面に基づいて、本発明の第1の実施の形態について詳細に説明する。図1は、合流トンネル33の平面図である。図1に示すように、地山1内の合流トンネル33は、本線トンネル3とランプトンネル13とを一体化して構築される。第1の実施の形態では、図1のA−Aに示す位置において、本線トンネル3とランプトンネル13とを一体化する方法について説明する。
【0014】
図2は、地山1内に構築された本線トンネル3の断面図である。合流トンネル33を構築するには、まず、図2に示すように、地山1内に坑4を掘削して本線トンネル3を構築する。本線トンネル3は、シールド機のスキンプレートとセグメントを同時に拡幅してトンネル断面を拡幅できるような、既往のシールド機を用いて構築される。
【0015】
本線トンネル3のセグメントは、通常のセグメント5、外殻セグメント7、型枠セグメント9からなる。通常のセグメント5は、地山1に掘削された坑4の壁面に沿って配置されるセグメント5bと、ランプトンネル13(図3)の通過予定位置10に沿って坑4の内部に配置されるセグメント5aからなり、D型に近い形に配置される。セグメント5は、鋼製等とする。
【0016】
外殻セグメント7は、本線トンネル3とランプトンネル13との接合予定部8付近のセグメント5の外周面側に、坑4の壁面に沿って配置される。外殻セグメント7は鋼製等であり、必要に応じて内部に充填材(図示せず)が充填される。外殻セグメント7は、本線トンネル3とランプトンネル13を接合して得られる合流トンネル33(図7)の断面が卵型となるように本線トンネル3のセグメント5の形状を調整するために、設置される。
【0017】
型枠セグメント9は、ランプトンネル13(図3)の通過予定位置10に、坑4の壁面に沿って設置される。型枠セグメント9は、シールド機によって切削可能な材質(FRP製等)である。型枠セグメント9と、セグメント5aとの間には、充填材11が充填される。充填材11は、貧配合モルタル、ソイルモルタル等である。
【0018】
図3は、本線トンネル3の側方にランプトンネル13を構築した状態での断面図を示す。合流トンネル33を構築するには、図2に示すような本線トンネル3を構築した後、図3に示すように、本線トンネル3の型枠セグメント9と充填材11とを一部分を残して切削し、坑22を形成してランプトンネル13を構築する。本線トンネル3とランプトンネル13との間に残置される型枠セグメント9および充填材11の幅は、例えば、50cm程度する。ランプトンネル13は、シールド機の通過後にセグメントを移動させてトンネル断面を拡幅できるような、既往のシールド機を用いて構築される。
【0019】
ランプトンネル13のセグメント14は、通常のセグメント14、拡幅用セグメント19からなる。通常のセグメント14は、地山1に掘削された坑22の壁面に沿って配置されるセグメント14bと、本線トンネル3のセグメント5aに沿って配置されるセグメント14aからなる。セグメント14は、鋼製等とする。
【0020】
拡幅用セグメント19は、本線トンネル3とランプトンネル13との接合予定部8付近に配置される。拡幅用セグメント19は、ヒンジ21を用いてセグメント14bと連結される。拡幅用セグメント19は、内周面16側に、円形保持用部材20を有する。拡幅用セグメント19は、鋼製等とする。なお、坑22を掘削する際に、拡幅用セグメント19の外周面18側に余掘り部23が設けられ、余掘り部23内に充填材25が充填される。
【0021】
図4は、拡幅セグメント19を余掘り部23内に押出した状態での断面図を示す。図3に示すようなランプトンネル13を構築した後、セグメント14aの形状を保持するための仮設支保工15を設置する。そして、押出し装置(図示せず)等を用いて、図4に示すように、拡幅用セグメント19をセグメント14の外周面18方向に押す。押された拡幅用セグメント19は、ヒンジ21を中心として回転し、余掘り部23内に移動する。このとき、拡幅用セグメント19の円形保持用部材20がセグメント14aとセグメント14bとの間に配置されるので、ランプトンネル13の安定性が維持される。なお、余掘り部23内の充填材25は、ランプトンネル13の内部に回収される。充填材25は、回収されるまで固化しないような材質とする。
【0022】
図5は、拡幅セグメント19を余掘り部23内に押出した状態での断面図を、図6は、接合部27内を掘削した状態での断面図を示す。図4に示す状態とした後、図5に示すように、接合予定部8(図4)付近の地山1を改良し、改良地盤17を形成する。次に、図6に示すように、本線トンネル3のセグメント5とランプトンネル13の拡幅用セグメント19との間の接合部27に残置されていた型枠セグメント9と充填材11とを撤去する。改良地盤17は、地山1から接合部27への水の流入を防ぐためのものであり、凍結管等を用いて、必要最小限の範囲に形成される。
【0023】
図7は、完成した合流トンネル33の断面図を示す。図6に示す状態とした後、図7に示すように、接合部27(図6)に、接合部材である接合コンクリート29を設置する。接合コンクリート29は、例えば、鋼製セグメントの内部に場所打ちコンクリートを打設したものとする。接合コンクリート29は、合流トンネル33の断面が卵型となるように、本線トンネル3とランプトンネル13とを滑らかに接合する。
【0024】
接合コンクリート29を設置した後、仮設支保工15を撤去する。また、本線トンネル3のセグメント5a、ランプトンネル13のセグメント14a、セグメント5aとセグメント14aとの間に残置された充填材11、拡幅用セグメント19の円形保持用部材20(図6)を撤去する。そして、接合コンクリート29、拡幅用セグメント19、セグメント14b、セグメント5bの内周面に沿って二次覆工コンクリート31を設置して、合流トンネル33を完成する。なお、外殻セグメント7は、合流トンネル33完成後も残置される。
【0025】
このように、第1の実施の形態では、既設構造物である本線トンネル3の側方に、拡幅用セグメント19を有するランプトンネル13を構築し、拡幅用セグメント19をランプトンネル13の外周面18方向に移動させる。これにより、本線トンネル3とランプトンネル13を接合する際に、改良地盤17の形成範囲を縮小できる。また、拡幅用セグメント19を接合部分の一部に用いるので、ランプトンネル13のセグメント撤去作業、および、接合コンクリート29の設置作業を軽減できる。
【0026】
次に、第2の実施の形態について説明する。図8は、本線トンネル43とランプトンネル45とを一体化するための各工程を示す図である。第2の実施の形態で述べる方法は、図8に示すように、第1の実施の形態と比較して本線トンネル43とランプトンネル45とが離れていて重なり部分が狭い場合(例えば、図1のB−Bに示す位置において合流トンネル33を構築する場合)に用いられる。
【0027】
図8の(a)図は、地山41内に本線トンネル43とランプトンネル45を設置した状態での断面図を示す。本線トンネル43およびランプトンネル45は、シールド機の通過後にセグメントを移動させてトンネル断面を拡幅できるような、既往のシールド機を用いて構築される。
【0028】
図8の(a)図に示す状態とするには、まず、地山41内に本線トンネル43を構築する。本線トンネル43のセグメントは、通常のセグメント47、拡幅用セグメント55、型枠セグメント71からなる。通常のセグメント47は、本線トンネル43を設置するための坑の壁面に沿って配置されるセグメント47bと、ランプトンネル45の通過予定位置に沿って配置されるセグメント47aからなる。拡幅用セグメント55は、接合予定部70付近に配置される。セグメント47と拡幅用セグメント55は、図1に示す本線トンネル3のセグメントと同様に、ランプトンネル45の通過予定位置を避けて、D型に近い形に並べられる。
【0029】
拡幅用セグメント55は、ヒンジ51を用いてセグメント47に連結される。拡幅用セグメント55は、内周面42側に形状保持用部材44を有する。拡幅用セグメント55の外周面40側には、余掘り部59が設けられる。余掘り部59には、充填材63が充填される。セグメント47、拡幅用セグメント55は、鋼製等とする。
【0030】
型枠セグメント71は、図2に示す本線トンネル3の型枠セグメント9に相当するものである。型枠セグメント71は、シールド機で切削可能な材質(FRP等)で、ランプトンネル45の通過予定位置に、本線トンネル43を構築するための坑の壁面に沿って配置される。型枠セグメント71とセグメント47との間には、充填材73が充填される。充填材73は、貧配合モルタル、ソイルモルタル等である。
【0031】
本線トンネル43を構築した後、地山41、型枠セグメント71および充填材73を切削し、ランプトンネル45を構築する。このとき、型枠セグメント71および充填材73を、50cm程度残置する。ランプトンネル45のセグメントは、通常のセグメント49、拡幅用セグメント57からなる。
【0032】
通常のセグメント49は、セグメント49a、セグメント49bからなる。拡幅用セグメント57は、接合予定部70付近に配置される。拡幅用セグメント57は、ヒンジ53を用いてセグメント49bに連結される。拡幅用セグメント57は、内周面48側に円形保持用部材50を有する。拡幅用セグメント57の外周面46側には、余掘り部61が設けられる。余掘り部61内には、充填材65が充填される。セグメント49、拡幅用セグメント57は、鋼製等とする。
【0033】
図8の(b)図は、拡幅用セグメント55、拡幅用セグメント57を、それぞれ、余掘り部59、余掘り部61内に押出した状態での断面図を示す。ランプトンネル45を構築した後、押出し装置(図示せず)等を用いて、図8の(b)図に示すように、本線トンネル43の拡幅用セグメント55をセグメント47の外周面40方向に押す。押された拡幅用セグメント55は、ヒンジ51を中心として回転し、余掘り部59内に移動する。このとき、拡幅用セグメント55の形状保持用部材44がセグメント47aとセグメント47bの間に配置されるので、本線トンネル43の安定性が維持される。なお、余掘り部59内の充填材63は、本線トンネル43内に回収される。充填材63は、回収されるまで固化しないような材質とする。
【0034】
また、押出し装置(図示せず)等を用いて、ランプトンネル45の拡幅用セグメント57をセグメント49の外周面46方向に押す。押された拡幅用セグメント57は、ヒンジ53を中心として回転し、余掘り部61内に移動する。このとき、拡幅用セグメント57の円形保持用部材50がセグメント49aとセグメント49bとの間に配置されるので、ランプトンネル45の安定性が維持される。なお、余掘り部61内の充填材65は、ランプトンネル45内に回収される。充填材65は、回収されるまで固化しないような材質とする。
【0035】
拡幅用セグメント55、拡幅用セグメント57を移動させた後、接合予定部70付近の地山41を改良し、改良地盤67を形成する。次に、拡幅用セグメント55と拡幅用セグメント57との間の接合部69の土砂を撤去する。改良地盤67は、地山41から接合部69への水の流入を防ぐためのものであり、凍結管等を用いて、必要最小限の範囲に形成される。
【0036】
図8の(c)図は、完成した合流トンネル79の断面図を示す。接合部69の土砂を撤去した後、図8の(c)図に示すように、接合部69(図8の(b)図)に、接合部材である接合コンクリート75を設置する。接合コンクリート75は、例えば、鋼製セグメントの内部に場所打ちコンクリートを打設したものとする。
【0037】
接合コンクリート75を設置した後、本線トンネル43のセグメント47a、ランプトンネル45のセグメント49a、セグメント47aとセグメント49aとの間に残置された充填材73、拡幅用セグメント55の形状保持用部材44、拡幅用セグメント57の円形保持用部材50を撤去する。そして、接合コンクリート75、拡幅用セグメント55、拡幅用セグメント57、セグメント47b、セグメント49の内周面に沿って二次覆工コンクリート77を設置して、合流トンネル79を完成する。
【0038】
このように、第2の実施の形態では、既設構造物である本線トンネル43、その側方に構築されるランプトンネル45に、それぞれ、拡幅用セグメント55、拡幅用セグメント57を設ける。そして、拡幅用セグメント55を本線トンネル3の外周面40方向に、拡幅用セグメント57をランプトンネル45の外周面46方向に移動させる。これにより、本線トンネル43とランプトンネル45を接合する際に、改良地盤67の形成範囲を縮小できる。また、拡幅用セグメント55、拡幅用セグメント57を接合部分の一部に用いるので、本線トンネル43やランプトンネル45のセグメント撤去作業、および、接合コンクリート57の設置作業を軽減できる。
【0039】
次に、第3の実施の形態について説明する。図9は、断面が矩形の既設構造物81と、拡幅用セグメント91を有するシールドトンネル85を一体化するための各工程を示す図である。図9の(a)図は、地山83内に既設構造物81とシールドトンネル85とを設置した状態での断面図を示す。
【0040】
図9の(a)図に示す状態とするには、地山83に設置された断面が矩形の既設構造物81の側方に、シールドトンネル85を構築する。シールドトンネル85は、シールド機の通過後にセグメントを移動させてトンネル断面を拡幅できるような、既往のシールド機を用いて構築される。
【0041】
シールドトンネル85のセグメントは、通常のセグメント87と拡幅用セグメント91からなる。拡幅用セグメント91は、内周面88側に円形保持用部材92を有する。拡幅用セグメント91は、既設構造物81とシールドトンネル85の接合予定部90付近において、ヒンジ89を用いてセグメント87に連結される。拡幅用セグメント91の外周面94側には余掘り部93が設けられ、余掘り部93内には充填材95が充填される。セグメント87、拡幅用セグメント91は、鋼製等とする。
【0042】
図9の(b)図は、既設構造物81とシールドトンネル85とを一体化した状態での断面図を示す。図9の(a)図に示す状態とした後、充填材95をシールドトンネル85内に回収しつつ、拡幅用セグメント91を余掘り部93内に押出す。そして、必要に応じて接合予定部90の周囲の地山83を改良し、接合予定部90の地山83を撤去して接合コンクリート97を設置し、セグメント87の一部分や円形保持用部材92等を撤去して、図9の(b)図に示す状態とする。
【0043】
このように、第3の実施の形態では、円形トンネル以外の既設構造物81の側方に構築されるシールドトンネル45に、拡幅用セグメント91を設ける。そして、拡幅用セグメント91をシールドトンネル85の外周面94方向に移動させる。これにより、既設構造物81とシールドトンネル85を接合する際に、改良地盤の形成範囲を縮小できる。また、拡幅用セグメント91を接合部分の一部に用いるので、シールドトンネル85のセグメント撤去作業、および、接合コンクリート97の設置作業を軽減できる。
【0044】
次に、第4の実施の形態について説明する。図10は、拡幅用セグメント111を有する2つのシールドトンネル101を一体化するための各工程を示す図である。図10の(a)図は、地山115内に2本のシールドトンネル101を設置した状態での断面図を示す。
【0045】
図10の(a)図に示す状態とするには、地山115内に、2本のシールドトンネル101を順次構築する。シールドトンネル101は、シールド機の通過後にセグメントを移動させてトンネル断面を拡幅できるような、既往のシールド機を用いて構築される。
【0046】
シールドトンネル101のセグメントは、通常のセグメント105と拡幅用セグメント111からなる。拡幅用セグメント111は、内周面110側に円形保持用部材112を有する。拡幅用セグメント111は、2本のシールドトンネル101の接合予定部113付近において、ヒンジ103を用いてセグメント105に連結される。拡幅用セグメント111の外周面側には余掘り部117が設けられ、余掘り部117内には充填材107が充填される。セグメント105、拡幅用セグメント111は、鋼製等とする。
【0047】
図10の(b)図は、2本のシールドトンネル101を一体化した状態での断面図を示す。図10の(a)図に示す状態とした後、充填材107をシールドトンネル101内に回収しつつ、拡幅用セグメント111を余掘り部117内に押出す。そして、そして、必要に応じて接合予定部113の周囲の地山115を改良し、接合予定部113の地山115を撤去して接合コンクリート109を設置し、セグメント105の一部分や円形保持用部材112等を撤去して、図10の(b)図に示す状態とする。
【0048】
このように、第4の実施の形態では、2本のシールドトンネル101に、拡幅用セグメント111を設ける。そして、拡幅用セグメント111をシールドトンネル101の外周面方向に移動させる。これにより、2本のシールドトンネル101を接合する際に、改良地盤の形成範囲を縮小できる。また、拡幅用セグメント111を接合部分の一部に用いるので、シールドトンネル101のセグメント撤去作業、および、接合コンクリート109の設置作業を軽減できる。
【0049】
なお、第1から第4の実施の形態では、既設構造物(本線トンネル3、本線トンネル43、既設構造物81、シールドトンネル101)の側方に拡幅用セグメントを有するシールドトンネル(ランプトンネル13、ランプトンネル45、シールドトンネル85、シールドトンネル101)を構築し、両者を一体化する方法について説明したが、既設構造物と、拡幅用セグメントを有するシールドトンネルとの位置関係はこれに限らない。両者を上下に配置してもよい。これらの実施の形態は、鉄道や道路トンネルの合流部の他、駅舎等を構築する場合に用いることができる。
【0050】
以上、添付図面を参照しながら本発明にかかる地中構造物の構築方法の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】合流トンネル33の平面図
【図2】地山1内に構築された本線トンネル3の断面図
【図3】本線トンネル3の側方にランプトンネル13を構築した状態での断面図
【図4】拡幅セグメント19を余掘り部23内に押出した状態での断面図
【図5】拡幅セグメント19を余掘り部23内に押出した状態での断面図
【図6】接合部27内を掘削した状態での断面図
【図7】完成した合流トンネル33の断面図
【図8】本線トンネル43とランプトンネル45とを一体化するための各工程を示す図
【図9】断面が矩形の既設構造物81と、拡幅用セグメント91を有するシールドトンネル85を一体化するための各工程を示す図
【図10】拡幅用セグメント111を有する2つのシールドトンネル101を一体化するための各工程を示す図
【符号の説明】
【0052】
1、41、83、115………地山
3………本線トンネル
5、5a、5b、14、14a、14b、47、47a、47b、49、49a、49b、87、105………セグメント
7………外殻セグメント
8、70、90、113………接合予定部
9………型枠セグメント
11、25、63、65、73、95、107………充填材
13………ランプトンネル
17、67………改良地盤
19、55、57、91、111………拡幅用セグメント
20、50、92、112………円形保持用部材
21、51、53、89、103………ヒンジ
23、59、61、93、117………余掘り部
27、69………接合部
29、75、97、109………接合コンクリート
33、79………合流トンネル
44………形状保持用部材
81………既設構造物
85、101………シールドトンネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設構造物の近傍に、拡幅用セグメントを有するシールドトンネルを設置する工程(a)と、
前記拡幅用セグメントを前記シールドトンネルの外周方向に押出す工程(b)と、
前記既設構造物と前記拡幅用セグメントとの間に接合部材を設置する工程(c)と、
を具備することを特徴とする地中構造物の構築方法。
【請求項2】
前記接合部材が、前記拡幅用セグメントと前記既設構造物とを、凹凸なく滑らかに接合することを特徴とする請求項1記載の地中構造物の構築方法。
【請求項3】
前記拡幅用セグメントは、前記工程(b)の後に前記シールドトンネルの安定性を保つための部材を、内周面側に有することを特徴とする請求項1記載の地中構造物の構築方法。
【請求項4】
前記工程(a)で、前記拡幅用セグメントの移動予定位置に余掘り部を設けることを特徴とする請求項1記載の地中構造物の構築方法。
【請求項5】
前記工程(b)と前記工程(c)との間に、前記既設構造物と前記拡幅用セグメントとの接合部付近の地山を改良する工程(d)をさらに具備することを特徴とする請求項1記載の地中構造物の構築方法。
【請求項6】
前記工程(c)の後、前記シールドトンネルと前記既設構造物の所定の部分を撤去する工程(e)をさらに具備することを特徴とする請求項1記載の地中構造物の構築方法。
【請求項7】
前記既設構造物が他のシールドトンネルであることを特徴とする請求項1記載の地中構造物の構築方法。
【請求項8】
前記他のシールドトンネルは、周方向の断面の一部に充填材が充填され、前記充填材を避けてセグメントが設置されたものであり、前記工程(a)で、前記充填材を掘削しつつ、前記シールドトンネルを設置することを特徴とする請求項7記載の地中構造物の構築方法。
【請求項9】
前記他のシールドトンネルは、拡幅用セグメントを有するものであり、前記工程(c)より前に、前記他のシールドトンネルに設けられた拡幅用セグメントを外周方向に移動させ、前記工程(c)で、前記他のシールドトンネルの拡幅用セグメントと、前記拡幅用セグメントとを接合することを特徴とする請求項7記載の地中構造物の構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−152644(P2006−152644A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−343590(P2004−343590)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】