地中構造物の構築方法
【課題】立坑を建設しなくとも小断面トンネル群からなる地中構造物を構築することが可能な地中構造物の構築方法を提供する。
【解決手段】複数の小断面トンネル1,・・・の側面間を連結した小断面トンネル群10によって地山を囲繞し、その囲繞された地山を掘削して構築する地中構造物の構築方法である。
この方法では、シールド掘削機21を掘進させて先行トンネル2を構築し、その先行トンネルの周面の2箇所から先行トンネルから離隔する方向に2本の枝トンネル3A,3Bを構築し、その2本の枝トンネルのそれぞれの周面の間隔を置いた複数の位置から複数の並行する小断面トンネルを構築するための小断面シールド掘削機15を発進させ、小断面トンネルが所定の位置に到達したところで小断面シールド掘削機を折り返させて略U字形の小断面トンネルを複数構築して小断面トンネル群を形成する。
【解決手段】複数の小断面トンネル1,・・・の側面間を連結した小断面トンネル群10によって地山を囲繞し、その囲繞された地山を掘削して構築する地中構造物の構築方法である。
この方法では、シールド掘削機21を掘進させて先行トンネル2を構築し、その先行トンネルの周面の2箇所から先行トンネルから離隔する方向に2本の枝トンネル3A,3Bを構築し、その2本の枝トンネルのそれぞれの周面の間隔を置いた複数の位置から複数の並行する小断面トンネルを構築するための小断面シールド掘削機15を発進させ、小断面トンネルが所定の位置に到達したところで小断面シールド掘削機を折り返させて略U字形の小断面トンネルを複数構築して小断面トンネル群を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下道路の分岐・合流部、地下鉄の駅舎、大断面トンネル、地下備蓄施設又は地下駐車場などの地中構造物を構築する際の構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地中に大断面の地中構造物を構築する方法として、特許文献1〜3などに開示されているように、地山を複数の小断面トンネルで囲繞して大断面トンネルの外殻を形成した後に内部の地山を掘削する方法が知られている。
【0003】
これらの方法では、小断面トンネルを構築するシールド掘削機を発進及び到達させる基地として、上方が地表面に開口された立坑を発進側と到達側に構築し、その立坑間に小断面トンネル群を構築している。
【特許文献1】特公平7−86320号公報
【特許文献2】特許第3084500号公報
【特許文献3】特開2000−310100号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この立坑の建設費及び工期は、トンネルの深度が深くなればなるほど嵩む上に、都心部においては立坑を建設する場所の用地買収などが難しく工事の着手が遅れたり、ルートを変更せざるをえない状況になったりするなどの問題が発生するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、立坑を建設しなくとも小断面トンネル群からなる地中構造物を構築することが可能な地中構造物の構築方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明は、複数の小断面トンネルの側面間を連結した小断面トンネル群によって地山を囲繞し、その囲繞された地山を掘削して構築する地中構造物の構築方法において、前記地中構造物を構築する地点に向けてシールド掘削機を掘進させて先行トンネルを構築し、その先行トンネルの周面の2箇所から先行トンネルから離隔する方向に2本の枝トンネルを構築し、その2本の枝トンネルのそれぞれの周面の間隔を置いた複数の位置から複数の並行する小断面トンネルを構築するための小断面シールド掘削機を発進させ、前記小断面トンネルが所定の位置に到達したところで前記小断面シールド掘削機を折り返させるとともに該小断面シールド掘削機によって構築された往路の小断面トンネルと並行するように復路の小断面トンネルを構築することで略U字形の小断面トンネルを複数構築し、先行して構築された小断面トンネル間の隙間に小断面トンネルを構築して側面間を連結した小断面トンネル群によって地山を囲繞する地中構造物の構築方法であることを特徴とする。
【0007】
ここで、前記U字形の小断面トンネルを構築した前記小断面シールド掘削機を、再び折り返させてその小断面シールド掘削機が発進した地点まで掘進させることによって長円形の小断面トンネルとすることもできる。
【0008】
また、前記小断面シールド掘削機を折り返すところに構築される小断面トンネルの曲率部の一部を切削可能な部材で形成することもできる。
【発明の効果】
【0009】
このように構成された本発明の地中構造物の構築方法は、先行トンネルの周面から延伸された枝トンネルから小断面シールド掘削機を発進させ、その小断面シールド掘削機を折り返させることで構築される略U字形の小断面トンネルを複数連結して小断面トンネル群を構築する。
【0010】
このように立坑を建設しなくても小断面トンネル群によって地山を囲繞した地中構造物を構築することができるので、立坑を建設する場合に発生する用地問題や建設費及び工期の増加などの問題によって地中構造物の建設が制限されることがない。
【0011】
また、複数の長円形の小断面トンネルを連結させて地中構造物を構築するようにすれば、小断面トンネル群によって地山の全周を囲むことができる。
【0012】
さらに、曲率部の一部を切削可能な材料によって構築することで、地中構造物に外部から容易にトンネルを接続させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の最良の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0014】
図1は本実施の形態の地中構造物の構築方法によって構築された地中構造物としての分岐・合流部100の概略構成を示す平面図である。
【0015】
この分岐・合流部100は、地下道路の分岐・合流部や地下鉄の駅舎として地中に構築されるもので、そこにアクセスするためのトンネルが接続されている。
【0016】
本実施の形態の地中構造物の構築方法では、まず、図2に示すように分岐・合流部100に接続するトンネルを先行トンネル2として構築する。
【0017】
この先行トンネル2は、シールド掘削機21によって構築されるトンネルであって、地下道路のアクセストンネルとしたり、図示しないトンネルを分岐・合流部100に別途接続して一方を本線、他方をランプトンネルとしたりして共用される。
【0018】
そして、分岐・合流部100の端部付近となる先行トンネル2の外殻には、トンネル周面の上面と下面の2箇所に開口部が設けられた円筒形の鋼製セグメント22が設置される。
【0019】
この鋼製セグメント22の開口部は設置時には閉塞されており、この鋼製セグメント22を設置した後も先行トンネル21の掘進を続け、分岐・合流部100の長手方向のもう一方の端部付近まで延伸させる。
【0020】
本実施の形態では、先行トンネル2は、分岐・合流部100の側面(図1の図面下側)に接するように平面視外側に構築された後に、鋼製セグメント22の設置後に分岐・合流部100の平面視内側に入り込むように曲って分岐・合流部100の端面から延出される。
【0021】
また、鋼製セグメント22の開口部(図示せず)からは、図2に示すように枝トンネル3(3A,3B)が延伸される。ここで、図2(a)は平面図を、図2(b)はT−T線方向の断面図を示す。
【0022】
この図2に示すように、2本の枝トンネル3A,3Bは、先行トンネル2の鋼製セグメント22の互いに対向する上面及び下面に設けられた開口部(この実施の形態では四角形状)から円弧状に上方又は下方に向けて延伸される。なお、枝トンネル3A,3Bは、鋼製セグメント22内での上下作業を避けるために、先行トンネル2の延伸方向の前後にずらして設けられた上下開口部から延伸させるようにすることもできる。
【0023】
この枝トンネル3A,3Bの構築に使用される小型推進機31A,31Bは、例えば正面視四角形の刃口を備えた程度の簡単な構成のものでよく、小型推進機31A,31Bの後方には鋼製の四角柱状箱形覆工体(図示せず)を設置してトンネルの外殻とする。
【0024】
この枝トンネル3A,3Bの内部からは、後述するように小断面シールド掘削機15を発進させるため、すべての小断面シールド掘削機15が発進できるような長さになるまで延伸させる。
【0025】
また、枝トンネル3A,3Bの先端からは、小断面シールド掘削機15による切削が可能となるように、掘削終了後に小型推進機31A,31Bを撤去する。
【0026】
この枝トンネル3の内部からは、この枝トンネル3の軸方向に直交する方向に向けて略水平に小断面シールド掘削機15(15B,15C)を発進させる(図3参照)。
【0027】
そして、この小断面シールド掘削機15によって構築される複数の小断面トンネル1,・・・は、図1,6に示すように略平行に構築され、これらの小断面トンネル1,・・・によって構成される断面視楕円状の小断面トンネル群10によって地山が囲繞される。なお、図6の小断面トンネル1A〜1Mは、トンネルを構築する順番にA〜Mの符号を付したものである。
【0028】
この小断面シールド掘削機15によって構築される小断面トンネル1は、図1の平面図に示すように、直線状の往路部11と、小断面シールド掘削機15が折り返しをおこなう半円状の曲率部12と、往路部11と略平行に設けられる復路部13と、枝トンネル3に戻るために折り返される半円状の曲率部14とから平面視略長円状に構築される。
【0029】
ここで、「略平行」とは往路部11と復路部13の間隔が略一定であることを示すが、小断面トンネル1Aなどにおいては往路部11Aと復路部13Aは略平行とはいえない部分もあり、これらを含めて並んでいると概念として「並行」という表現を適宜使用する。
【0030】
この大きさの異なる長円状の小断面トンネル1,・・・が積み重なるように構築されてその側面間が連結されることで、図1のS−S線断面図である図6に示すような小断面トンネル群10が構築される。
【0031】
また、この小断面トンネル1の外殻は、図6に示すように先行して構築されたトンネルの側面が後行のトンネルの構築時に切削されることになるので、小断面シールド掘削機15で切削が可能となる程度の強度のコンクリートによって形成される。
【0032】
なお、後行トンネルを構築する際に小断面シールド掘削機15によって切削されることがない部分には、鉄筋を配置しておくのが好ましい。
【0033】
図6に示すような往路部11の覆工部11a及び復路部13の覆工部13aは、トンネルが直線状に構築されるため、覆工部11a,13aの内周面の型枠となる移動式型枠を小断面シールド掘削機15に追従させ、掘削周面と型枠の間にコンクリートを充填することによって形成することができる。
【0034】
一方、曲率部12,14においては移動式型枠が使用できないので、図7に示すように残置式の内型枠15fを使用して覆工部12a,14aを構築する。
【0035】
すなわち、曲率部12,14においては、小断面シールド掘削機15を曲率に沿って掘進させ、円盤状の切削面15aだけでは掘り残される部分は切削面15aから側方に突出させたオーバカッタ15bによって切削させる。さらに、シールド掘削機15を中折れ構造(図示せず)にすることで、オーバカット量を低減することができる。
【0036】
そして、小断面シールド掘削機15によって掘削された空洞には、リング状の鋼製の内型枠15f,・・・をトンネルの略中央に曲率に沿って設置する。また、この内型枠15fの外周面とスキンプレート15eとの間には、円環状の妻型枠15hと隙間を埋める膨張及び収縮自在のゴム袋15iを設置して閉塞させる。
【0037】
この状態で妻型枠15hの貫通孔に接続したコンクリート打設管15gによってコンクリートを流し込み、掘削周面と内型枠15f,・・・との間をコンクリートで充満させる。
【0038】
このように充填されたコンクリートは、妻型枠15hをプレスジャッキ15d,15dで押すことによって密実化させることができる。
【0039】
また、プレスジャッキ15d,15dの伸長及び内型枠15f端面に先端を当接させた推進ジャッキ15c,15cの伸長によって小断面シールド掘削機15を掘進させることができる。
【0040】
さらに、推進ジャッキ15c,15cやプレスジャッキ15d,15dを伸ばす長さを曲率部12,14の内周側と外周側で調整することによって、小断面シールド掘削機15を所定の方向に曲げることができる。
【0041】
次に、本実施の形態の地中構造物の構築方法を説明するとともに、この実施の形態の作用について説明する。
【0042】
まず、図2に示すように分岐・合流部100の端部付近まで先行トンネル2を掘進させて鋼製セグメント22を組み立てる。その後、シールド掘削機21を分岐・合流部100に近づけるように掘進させて平面視が緩やかなS字状の先行トンネル2を構築する。
【0043】
そして、鋼製セグメント22の上面から上方に向けて円弧状の枝トンネル3Aを延伸させる。この枝トンネル3Aは長さが短いため、この構築に使用する小型推進機31Aを大掛かりなものにする必要はなく、例えば正面視矩形の全面開放型の手掘り式シールドなどが使用できる。
【0044】
ここで、地下水の状態や土質条件によっては、枝トンネル3Aを構築する部分に事前に地盤改良などをおこなって補強をおこない掘削の安全性を確保しておく。
【0045】
また、掘削後の空洞にはボックス状の覆工体(図示せず)を設置して覆工をおこなう。なお、図2(b)に示すように、鋼製セグメント22の下面から下方に向けて延伸される円弧状の枝トンネル3Bも上方の枝トンネル3Aと同様に構築する。
【0046】
続いて図3(a)に示すように、先行トンネル2の曲折部から小断面シールド掘削機15Aを発進させ、小断面トンネル1Aの往路部11Aを構築する。この往路部11Aは、曲折部を経た後の先行トンネル2に並行するように構築される。
【0047】
また、図3(a),(b)に示すように、枝トンネル3Aの周面の鋼製セグメント22に近い位置からは小断面シールド掘削機15Bが発進し、そこから枝トンネル3Aの軸方向に間隔を置いた位置からは小断面シールド掘削機15Cが発進する。
【0048】
これらの小断面シールド掘削機15A〜15Cは並行して略同一方向に向けて掘進されるので、構築された小断面トンネル1A〜1Cの往路部11A〜11Cは並行する3本の線として形成される。
【0049】
また、往路部11A〜11Cには、小断面シールド掘削機15A〜15Cの後方に追従して移動する移動式型枠(図示せず)によってコンクリート製の覆工が構築される。
【0050】
そして、図4に示すように、小断面シールド掘削機15A〜15Cを合流・分岐部100の前方端部付近まで掘進させた後に、折り返させて進行方向を反転させる。
【0051】
この折り返しは、それぞれの小断面トンネル1A〜1Cにおいて一定の曲率でおこなわれ、曲率部12A〜12Cが構築される。
【0052】
この曲率部12A〜12Cには、曲率部12周辺の一部切断平面図である図7に示すように、鋼製の内型枠15f,・・・が設置され、コンクリート製の覆工部12aが構築される。
【0053】
この曲率部12A〜12Cによって方向が反転した小断面シールド掘削機15A〜15Cは、図4(a)に示すように往路部11A〜11Cと略平行になるように掘進させ、復路部13A〜13Cを構築する。
【0054】
このようにして構築された半円状の曲率部12A〜12Cとその両端に接続される直線状の往路部11A〜11C及び復路部13A〜13Cとによって、平面視略U字形の小断面トンネル1A〜1Cが形成される。
【0055】
これらの3本の小断面トンネル1A〜1Cは、図4(a)のV―V線方向の断面図である図4(b)に示すように、水平方向に掘進させた小断面シールド掘削機15A〜15Cによって掘進方向に勾配が設けられることなく構築される。
【0056】
このため、小断面シールド掘削機15A〜15Cの上下が反転するような掘進をおこなう必要はなく、姿勢制御が容易で正確な位置に小断面トンネル1A〜1Cを構築することができる。
【0057】
そして、下側の枝トンネル3Bの内部からも小断面シールド掘削機15D,15Eを発進させて、平面視略U字形の小断面トンネル1D,1Eを構築する。図5は、小断面トンネル1A〜1Eを構築した段階での図4(a)のW―W線の方向の断面図である。
【0058】
この図5に示すように、この段階では小断面トンネル1A〜1Eの間には隙間があって側面間が連結されていないので、それぞれの小断面トンネル1A〜1E間に小断面トンネル1F〜1Mを構築して隙間を埋める(図6参照)。
【0059】
この後から構築される小断面トンネル1F〜1Mは、先行して構築された小断面トンネル1A〜1E間に小断面シールド掘削機15F〜15Mを掘進させて構築することができる。
【0060】
この小断面シールド掘削機15F〜15Mは、隣接する小断面トンネル1A〜1Eの覆工部11a〜13aを切削しながら掘進し、小断面トンネル1F〜1Mの覆工部11a〜13aを構築するために流し込まれたコンクリートが切削された小断面トンネル1A〜1Eの側面にも流れ込むことで、小断面トンネル1A〜1Mの側面間が連結されて一体の小断面トンネル群10が形成される。
【0061】
ここで、小断面トンネル1Hと小断面トンネル1Iとの間は近接しすぎており、小断面トンネル1Hを構築するために掘進させた小断面シールド掘削機15Hを折り返して小断面トンネル1Iを構築するには旋回可能となるところまで迂回させなければならなくなるため、小断面トンネル1Hと小断面トンネル1Iとは別々の小断面シールド掘削機15H,15Iで往路部11H,11Iだけを構築することとする。
【0062】
また、小断面トンネル1Lと小断面トンネル1Mについても小断面トンネル1H,1Iと同様にして構築する。
【0063】
一方、このようにして構築した小断面トンネル群10の端部の蓋を構成する曲率部12の内側から、シールド掘削機21を発進させて先行トンネル2を延伸し、図1に示すように分岐・合流部100の両側に先行トンネル2を延出させる。
【0064】
なお、この際はシールド掘削機21を通過させる曲率部12の覆工は、鉄筋を配置しないなどして切削可能な状態にしておくのが好ましい。
【0065】
そして、図1に示すように、復路部13を掘進して枝トンネル3の側方を通過した後の小断面シールド掘削機15を折り返させて曲率部14を構築する。
【0066】
このように長円状及び直線状の小断面トンネル1,・・・によって構成された小断面トンネル群10は、地山の全周を囲繞しているので、その内部の地山は周囲の地山から分離されることになってバックホウなどで安全かつ容易に掘削することができる。
【0067】
この内部掘削によって露出される小断面トンネル群10の内側面側には、コンクリートを吹き付けたり、別途、鉄筋コンクリート壁を構築したり、支持柱や支持梁を設けたりするなどして分岐・合流部100の内部構造を完成させればよい。
【0068】
このような本実施の形態の地中構造物の構築方法によれば、立坑を構築しなくとも地中に小断面トンネル群10を構築することができる。
【0069】
このため、立坑の建設費が不要な上に、立坑を建設するための用地を確保する必要がないので、全体の工期及び工事費を大幅に削減することができる。また、ルートを選定する際の制限も少なくなり、地下道路の建設がおこない易くなる。
【0070】
特に、大深度の地中に分岐・合流部100を建設するために立坑を構築しなければならないとすれば、工事費及び工期が大幅に増加することになるが、本実施の形態によれば大深度の地中にも経済的に分岐・合流部100を建設することができる。
【0071】
また、小断面シールド掘削機15は、通常のシールドトンネルの施工時と同様に、略水平方向に掘進させればよいので、小断面シールド掘削機15を上向きに掘進させて上下を反転させて折り返させるなどの特殊な掘進をおこなう必要がなく、姿勢制御が容易で施工性に優れている。
【0072】
さらに、施工性がよいため正確な位置に小断面トンネル1A〜1Mを構築することができ、施工誤差によって小断面トンネル1A〜1M間に隙間が発生することがない。
【0073】
そして、枝トンネル3A,3Bの構築や、小断面トンネル1A〜1Mの構築など、並行しておこなえる工程が多いため、大幅な工期の短縮が可能になる。
【0074】
以上、図面を参照して、本発明の最良の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0075】
例えば、前記実施の形態では、先行トンネル2の上面及び下面から正面視四角形状の枝トンネル3A,3Bを延伸させたが、これに限定されるものではなく、例えば先行トンネル2の左右側面から枝トンネルを延伸させることもできる。この際、先行トンネル2から円弧状に延伸される2本の枝トンネルは、両方とも先行トンネルより上方に向けて構築されるものであっても、両方とも下方に向けて構築されるものであってもよい。さらに、枝トンネル3A,3Bの正面視は円形や楕円形など他の形状であってもよい。
【0076】
また、前記実施の形態では、小断面トンネル群10を円筒状に形成したが、これに限定されるものではなく、例えば断面視四角形などの多角柱状や馬蹄形状など任意の断面形状に形成することができる。
【0077】
さらに、前記実施の形態では、13本の小断面トンネル1A〜1Mによって小断面トンネル群10を構成して地山を囲繞したが、これに限定されるものではなく、小断面トンネル1,・・・の径及び構築する地中構造物の大きさ及び断面形状によって適切な本数を設定すればよい。
【0078】
また、前記実施の形態では、分岐・合流部100の長手方向の両端に小断面トンネル1の曲率部12,14によって蓋状部を構築したが、これに限定されるものではなく、U字形の小断面トンネル群の開放側の地山を枝トンネル3内部から凍結や地盤改良によって補強した後に垂直壁を構築したり、枝トンネル3の内側から連続地中壁を構築したりするなど、曲率部14を設けない構成とすることもできる。
【0079】
さらに、前記実施の形態では、先行して構築した小断面トンネル1の側面を後行の小断面トンネル1の小断面シールド掘削機15によって切削して連結させたが、これに限定されるものではなく、例えば最初に構築した断面視円形の小断面トンネルの両側面に、円形の一部が欠損した月形の小断面トンネルを構築したり、円形の両側が欠損した分銅形の小断面トンネルを構築したりして連結をおこなう方法であってもよい。また、小断面トンネル間を地盤改良して連結させる方法であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の最良の実施の形態の地中構造物の概略構成を説明する平面図である。
【図2】分岐・合流部を構築する方法を説明する図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のT−T線方向の断面図である。
【図3】分岐・合流部を構築する方法を説明する図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のU−U線方向の断面図である。
【図4】分岐・合流部を構築する方法を説明する図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のV−V線方向の断面図である。
【図5】先行する小断面トンネルを構築した後の図4のW−W線方向の断面図である。
【図6】図1のS−S線方向の断面図である。
【図7】曲率部の構築方法を説明するための一部切断平面図である。
【符号の説明】
【0081】
100 分岐・合流部(地中構造物)
10 小断面トンネル群
1,1A〜1M 小断面トンネル
11 往路部
12 曲率部
13 復路部
14 曲率部
15 小断面シールド掘削機
2 先行トンネル
21 シールド掘削機
3,3A,3B 枝トンネル
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下道路の分岐・合流部、地下鉄の駅舎、大断面トンネル、地下備蓄施設又は地下駐車場などの地中構造物を構築する際の構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地中に大断面の地中構造物を構築する方法として、特許文献1〜3などに開示されているように、地山を複数の小断面トンネルで囲繞して大断面トンネルの外殻を形成した後に内部の地山を掘削する方法が知られている。
【0003】
これらの方法では、小断面トンネルを構築するシールド掘削機を発進及び到達させる基地として、上方が地表面に開口された立坑を発進側と到達側に構築し、その立坑間に小断面トンネル群を構築している。
【特許文献1】特公平7−86320号公報
【特許文献2】特許第3084500号公報
【特許文献3】特開2000−310100号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この立坑の建設費及び工期は、トンネルの深度が深くなればなるほど嵩む上に、都心部においては立坑を建設する場所の用地買収などが難しく工事の着手が遅れたり、ルートを変更せざるをえない状況になったりするなどの問題が発生するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、立坑を建設しなくとも小断面トンネル群からなる地中構造物を構築することが可能な地中構造物の構築方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明は、複数の小断面トンネルの側面間を連結した小断面トンネル群によって地山を囲繞し、その囲繞された地山を掘削して構築する地中構造物の構築方法において、前記地中構造物を構築する地点に向けてシールド掘削機を掘進させて先行トンネルを構築し、その先行トンネルの周面の2箇所から先行トンネルから離隔する方向に2本の枝トンネルを構築し、その2本の枝トンネルのそれぞれの周面の間隔を置いた複数の位置から複数の並行する小断面トンネルを構築するための小断面シールド掘削機を発進させ、前記小断面トンネルが所定の位置に到達したところで前記小断面シールド掘削機を折り返させるとともに該小断面シールド掘削機によって構築された往路の小断面トンネルと並行するように復路の小断面トンネルを構築することで略U字形の小断面トンネルを複数構築し、先行して構築された小断面トンネル間の隙間に小断面トンネルを構築して側面間を連結した小断面トンネル群によって地山を囲繞する地中構造物の構築方法であることを特徴とする。
【0007】
ここで、前記U字形の小断面トンネルを構築した前記小断面シールド掘削機を、再び折り返させてその小断面シールド掘削機が発進した地点まで掘進させることによって長円形の小断面トンネルとすることもできる。
【0008】
また、前記小断面シールド掘削機を折り返すところに構築される小断面トンネルの曲率部の一部を切削可能な部材で形成することもできる。
【発明の効果】
【0009】
このように構成された本発明の地中構造物の構築方法は、先行トンネルの周面から延伸された枝トンネルから小断面シールド掘削機を発進させ、その小断面シールド掘削機を折り返させることで構築される略U字形の小断面トンネルを複数連結して小断面トンネル群を構築する。
【0010】
このように立坑を建設しなくても小断面トンネル群によって地山を囲繞した地中構造物を構築することができるので、立坑を建設する場合に発生する用地問題や建設費及び工期の増加などの問題によって地中構造物の建設が制限されることがない。
【0011】
また、複数の長円形の小断面トンネルを連結させて地中構造物を構築するようにすれば、小断面トンネル群によって地山の全周を囲むことができる。
【0012】
さらに、曲率部の一部を切削可能な材料によって構築することで、地中構造物に外部から容易にトンネルを接続させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の最良の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0014】
図1は本実施の形態の地中構造物の構築方法によって構築された地中構造物としての分岐・合流部100の概略構成を示す平面図である。
【0015】
この分岐・合流部100は、地下道路の分岐・合流部や地下鉄の駅舎として地中に構築されるもので、そこにアクセスするためのトンネルが接続されている。
【0016】
本実施の形態の地中構造物の構築方法では、まず、図2に示すように分岐・合流部100に接続するトンネルを先行トンネル2として構築する。
【0017】
この先行トンネル2は、シールド掘削機21によって構築されるトンネルであって、地下道路のアクセストンネルとしたり、図示しないトンネルを分岐・合流部100に別途接続して一方を本線、他方をランプトンネルとしたりして共用される。
【0018】
そして、分岐・合流部100の端部付近となる先行トンネル2の外殻には、トンネル周面の上面と下面の2箇所に開口部が設けられた円筒形の鋼製セグメント22が設置される。
【0019】
この鋼製セグメント22の開口部は設置時には閉塞されており、この鋼製セグメント22を設置した後も先行トンネル21の掘進を続け、分岐・合流部100の長手方向のもう一方の端部付近まで延伸させる。
【0020】
本実施の形態では、先行トンネル2は、分岐・合流部100の側面(図1の図面下側)に接するように平面視外側に構築された後に、鋼製セグメント22の設置後に分岐・合流部100の平面視内側に入り込むように曲って分岐・合流部100の端面から延出される。
【0021】
また、鋼製セグメント22の開口部(図示せず)からは、図2に示すように枝トンネル3(3A,3B)が延伸される。ここで、図2(a)は平面図を、図2(b)はT−T線方向の断面図を示す。
【0022】
この図2に示すように、2本の枝トンネル3A,3Bは、先行トンネル2の鋼製セグメント22の互いに対向する上面及び下面に設けられた開口部(この実施の形態では四角形状)から円弧状に上方又は下方に向けて延伸される。なお、枝トンネル3A,3Bは、鋼製セグメント22内での上下作業を避けるために、先行トンネル2の延伸方向の前後にずらして設けられた上下開口部から延伸させるようにすることもできる。
【0023】
この枝トンネル3A,3Bの構築に使用される小型推進機31A,31Bは、例えば正面視四角形の刃口を備えた程度の簡単な構成のものでよく、小型推進機31A,31Bの後方には鋼製の四角柱状箱形覆工体(図示せず)を設置してトンネルの外殻とする。
【0024】
この枝トンネル3A,3Bの内部からは、後述するように小断面シールド掘削機15を発進させるため、すべての小断面シールド掘削機15が発進できるような長さになるまで延伸させる。
【0025】
また、枝トンネル3A,3Bの先端からは、小断面シールド掘削機15による切削が可能となるように、掘削終了後に小型推進機31A,31Bを撤去する。
【0026】
この枝トンネル3の内部からは、この枝トンネル3の軸方向に直交する方向に向けて略水平に小断面シールド掘削機15(15B,15C)を発進させる(図3参照)。
【0027】
そして、この小断面シールド掘削機15によって構築される複数の小断面トンネル1,・・・は、図1,6に示すように略平行に構築され、これらの小断面トンネル1,・・・によって構成される断面視楕円状の小断面トンネル群10によって地山が囲繞される。なお、図6の小断面トンネル1A〜1Mは、トンネルを構築する順番にA〜Mの符号を付したものである。
【0028】
この小断面シールド掘削機15によって構築される小断面トンネル1は、図1の平面図に示すように、直線状の往路部11と、小断面シールド掘削機15が折り返しをおこなう半円状の曲率部12と、往路部11と略平行に設けられる復路部13と、枝トンネル3に戻るために折り返される半円状の曲率部14とから平面視略長円状に構築される。
【0029】
ここで、「略平行」とは往路部11と復路部13の間隔が略一定であることを示すが、小断面トンネル1Aなどにおいては往路部11Aと復路部13Aは略平行とはいえない部分もあり、これらを含めて並んでいると概念として「並行」という表現を適宜使用する。
【0030】
この大きさの異なる長円状の小断面トンネル1,・・・が積み重なるように構築されてその側面間が連結されることで、図1のS−S線断面図である図6に示すような小断面トンネル群10が構築される。
【0031】
また、この小断面トンネル1の外殻は、図6に示すように先行して構築されたトンネルの側面が後行のトンネルの構築時に切削されることになるので、小断面シールド掘削機15で切削が可能となる程度の強度のコンクリートによって形成される。
【0032】
なお、後行トンネルを構築する際に小断面シールド掘削機15によって切削されることがない部分には、鉄筋を配置しておくのが好ましい。
【0033】
図6に示すような往路部11の覆工部11a及び復路部13の覆工部13aは、トンネルが直線状に構築されるため、覆工部11a,13aの内周面の型枠となる移動式型枠を小断面シールド掘削機15に追従させ、掘削周面と型枠の間にコンクリートを充填することによって形成することができる。
【0034】
一方、曲率部12,14においては移動式型枠が使用できないので、図7に示すように残置式の内型枠15fを使用して覆工部12a,14aを構築する。
【0035】
すなわち、曲率部12,14においては、小断面シールド掘削機15を曲率に沿って掘進させ、円盤状の切削面15aだけでは掘り残される部分は切削面15aから側方に突出させたオーバカッタ15bによって切削させる。さらに、シールド掘削機15を中折れ構造(図示せず)にすることで、オーバカット量を低減することができる。
【0036】
そして、小断面シールド掘削機15によって掘削された空洞には、リング状の鋼製の内型枠15f,・・・をトンネルの略中央に曲率に沿って設置する。また、この内型枠15fの外周面とスキンプレート15eとの間には、円環状の妻型枠15hと隙間を埋める膨張及び収縮自在のゴム袋15iを設置して閉塞させる。
【0037】
この状態で妻型枠15hの貫通孔に接続したコンクリート打設管15gによってコンクリートを流し込み、掘削周面と内型枠15f,・・・との間をコンクリートで充満させる。
【0038】
このように充填されたコンクリートは、妻型枠15hをプレスジャッキ15d,15dで押すことによって密実化させることができる。
【0039】
また、プレスジャッキ15d,15dの伸長及び内型枠15f端面に先端を当接させた推進ジャッキ15c,15cの伸長によって小断面シールド掘削機15を掘進させることができる。
【0040】
さらに、推進ジャッキ15c,15cやプレスジャッキ15d,15dを伸ばす長さを曲率部12,14の内周側と外周側で調整することによって、小断面シールド掘削機15を所定の方向に曲げることができる。
【0041】
次に、本実施の形態の地中構造物の構築方法を説明するとともに、この実施の形態の作用について説明する。
【0042】
まず、図2に示すように分岐・合流部100の端部付近まで先行トンネル2を掘進させて鋼製セグメント22を組み立てる。その後、シールド掘削機21を分岐・合流部100に近づけるように掘進させて平面視が緩やかなS字状の先行トンネル2を構築する。
【0043】
そして、鋼製セグメント22の上面から上方に向けて円弧状の枝トンネル3Aを延伸させる。この枝トンネル3Aは長さが短いため、この構築に使用する小型推進機31Aを大掛かりなものにする必要はなく、例えば正面視矩形の全面開放型の手掘り式シールドなどが使用できる。
【0044】
ここで、地下水の状態や土質条件によっては、枝トンネル3Aを構築する部分に事前に地盤改良などをおこなって補強をおこない掘削の安全性を確保しておく。
【0045】
また、掘削後の空洞にはボックス状の覆工体(図示せず)を設置して覆工をおこなう。なお、図2(b)に示すように、鋼製セグメント22の下面から下方に向けて延伸される円弧状の枝トンネル3Bも上方の枝トンネル3Aと同様に構築する。
【0046】
続いて図3(a)に示すように、先行トンネル2の曲折部から小断面シールド掘削機15Aを発進させ、小断面トンネル1Aの往路部11Aを構築する。この往路部11Aは、曲折部を経た後の先行トンネル2に並行するように構築される。
【0047】
また、図3(a),(b)に示すように、枝トンネル3Aの周面の鋼製セグメント22に近い位置からは小断面シールド掘削機15Bが発進し、そこから枝トンネル3Aの軸方向に間隔を置いた位置からは小断面シールド掘削機15Cが発進する。
【0048】
これらの小断面シールド掘削機15A〜15Cは並行して略同一方向に向けて掘進されるので、構築された小断面トンネル1A〜1Cの往路部11A〜11Cは並行する3本の線として形成される。
【0049】
また、往路部11A〜11Cには、小断面シールド掘削機15A〜15Cの後方に追従して移動する移動式型枠(図示せず)によってコンクリート製の覆工が構築される。
【0050】
そして、図4に示すように、小断面シールド掘削機15A〜15Cを合流・分岐部100の前方端部付近まで掘進させた後に、折り返させて進行方向を反転させる。
【0051】
この折り返しは、それぞれの小断面トンネル1A〜1Cにおいて一定の曲率でおこなわれ、曲率部12A〜12Cが構築される。
【0052】
この曲率部12A〜12Cには、曲率部12周辺の一部切断平面図である図7に示すように、鋼製の内型枠15f,・・・が設置され、コンクリート製の覆工部12aが構築される。
【0053】
この曲率部12A〜12Cによって方向が反転した小断面シールド掘削機15A〜15Cは、図4(a)に示すように往路部11A〜11Cと略平行になるように掘進させ、復路部13A〜13Cを構築する。
【0054】
このようにして構築された半円状の曲率部12A〜12Cとその両端に接続される直線状の往路部11A〜11C及び復路部13A〜13Cとによって、平面視略U字形の小断面トンネル1A〜1Cが形成される。
【0055】
これらの3本の小断面トンネル1A〜1Cは、図4(a)のV―V線方向の断面図である図4(b)に示すように、水平方向に掘進させた小断面シールド掘削機15A〜15Cによって掘進方向に勾配が設けられることなく構築される。
【0056】
このため、小断面シールド掘削機15A〜15Cの上下が反転するような掘進をおこなう必要はなく、姿勢制御が容易で正確な位置に小断面トンネル1A〜1Cを構築することができる。
【0057】
そして、下側の枝トンネル3Bの内部からも小断面シールド掘削機15D,15Eを発進させて、平面視略U字形の小断面トンネル1D,1Eを構築する。図5は、小断面トンネル1A〜1Eを構築した段階での図4(a)のW―W線の方向の断面図である。
【0058】
この図5に示すように、この段階では小断面トンネル1A〜1Eの間には隙間があって側面間が連結されていないので、それぞれの小断面トンネル1A〜1E間に小断面トンネル1F〜1Mを構築して隙間を埋める(図6参照)。
【0059】
この後から構築される小断面トンネル1F〜1Mは、先行して構築された小断面トンネル1A〜1E間に小断面シールド掘削機15F〜15Mを掘進させて構築することができる。
【0060】
この小断面シールド掘削機15F〜15Mは、隣接する小断面トンネル1A〜1Eの覆工部11a〜13aを切削しながら掘進し、小断面トンネル1F〜1Mの覆工部11a〜13aを構築するために流し込まれたコンクリートが切削された小断面トンネル1A〜1Eの側面にも流れ込むことで、小断面トンネル1A〜1Mの側面間が連結されて一体の小断面トンネル群10が形成される。
【0061】
ここで、小断面トンネル1Hと小断面トンネル1Iとの間は近接しすぎており、小断面トンネル1Hを構築するために掘進させた小断面シールド掘削機15Hを折り返して小断面トンネル1Iを構築するには旋回可能となるところまで迂回させなければならなくなるため、小断面トンネル1Hと小断面トンネル1Iとは別々の小断面シールド掘削機15H,15Iで往路部11H,11Iだけを構築することとする。
【0062】
また、小断面トンネル1Lと小断面トンネル1Mについても小断面トンネル1H,1Iと同様にして構築する。
【0063】
一方、このようにして構築した小断面トンネル群10の端部の蓋を構成する曲率部12の内側から、シールド掘削機21を発進させて先行トンネル2を延伸し、図1に示すように分岐・合流部100の両側に先行トンネル2を延出させる。
【0064】
なお、この際はシールド掘削機21を通過させる曲率部12の覆工は、鉄筋を配置しないなどして切削可能な状態にしておくのが好ましい。
【0065】
そして、図1に示すように、復路部13を掘進して枝トンネル3の側方を通過した後の小断面シールド掘削機15を折り返させて曲率部14を構築する。
【0066】
このように長円状及び直線状の小断面トンネル1,・・・によって構成された小断面トンネル群10は、地山の全周を囲繞しているので、その内部の地山は周囲の地山から分離されることになってバックホウなどで安全かつ容易に掘削することができる。
【0067】
この内部掘削によって露出される小断面トンネル群10の内側面側には、コンクリートを吹き付けたり、別途、鉄筋コンクリート壁を構築したり、支持柱や支持梁を設けたりするなどして分岐・合流部100の内部構造を完成させればよい。
【0068】
このような本実施の形態の地中構造物の構築方法によれば、立坑を構築しなくとも地中に小断面トンネル群10を構築することができる。
【0069】
このため、立坑の建設費が不要な上に、立坑を建設するための用地を確保する必要がないので、全体の工期及び工事費を大幅に削減することができる。また、ルートを選定する際の制限も少なくなり、地下道路の建設がおこない易くなる。
【0070】
特に、大深度の地中に分岐・合流部100を建設するために立坑を構築しなければならないとすれば、工事費及び工期が大幅に増加することになるが、本実施の形態によれば大深度の地中にも経済的に分岐・合流部100を建設することができる。
【0071】
また、小断面シールド掘削機15は、通常のシールドトンネルの施工時と同様に、略水平方向に掘進させればよいので、小断面シールド掘削機15を上向きに掘進させて上下を反転させて折り返させるなどの特殊な掘進をおこなう必要がなく、姿勢制御が容易で施工性に優れている。
【0072】
さらに、施工性がよいため正確な位置に小断面トンネル1A〜1Mを構築することができ、施工誤差によって小断面トンネル1A〜1M間に隙間が発生することがない。
【0073】
そして、枝トンネル3A,3Bの構築や、小断面トンネル1A〜1Mの構築など、並行しておこなえる工程が多いため、大幅な工期の短縮が可能になる。
【0074】
以上、図面を参照して、本発明の最良の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0075】
例えば、前記実施の形態では、先行トンネル2の上面及び下面から正面視四角形状の枝トンネル3A,3Bを延伸させたが、これに限定されるものではなく、例えば先行トンネル2の左右側面から枝トンネルを延伸させることもできる。この際、先行トンネル2から円弧状に延伸される2本の枝トンネルは、両方とも先行トンネルより上方に向けて構築されるものであっても、両方とも下方に向けて構築されるものであってもよい。さらに、枝トンネル3A,3Bの正面視は円形や楕円形など他の形状であってもよい。
【0076】
また、前記実施の形態では、小断面トンネル群10を円筒状に形成したが、これに限定されるものではなく、例えば断面視四角形などの多角柱状や馬蹄形状など任意の断面形状に形成することができる。
【0077】
さらに、前記実施の形態では、13本の小断面トンネル1A〜1Mによって小断面トンネル群10を構成して地山を囲繞したが、これに限定されるものではなく、小断面トンネル1,・・・の径及び構築する地中構造物の大きさ及び断面形状によって適切な本数を設定すればよい。
【0078】
また、前記実施の形態では、分岐・合流部100の長手方向の両端に小断面トンネル1の曲率部12,14によって蓋状部を構築したが、これに限定されるものではなく、U字形の小断面トンネル群の開放側の地山を枝トンネル3内部から凍結や地盤改良によって補強した後に垂直壁を構築したり、枝トンネル3の内側から連続地中壁を構築したりするなど、曲率部14を設けない構成とすることもできる。
【0079】
さらに、前記実施の形態では、先行して構築した小断面トンネル1の側面を後行の小断面トンネル1の小断面シールド掘削機15によって切削して連結させたが、これに限定されるものではなく、例えば最初に構築した断面視円形の小断面トンネルの両側面に、円形の一部が欠損した月形の小断面トンネルを構築したり、円形の両側が欠損した分銅形の小断面トンネルを構築したりして連結をおこなう方法であってもよい。また、小断面トンネル間を地盤改良して連結させる方法であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の最良の実施の形態の地中構造物の概略構成を説明する平面図である。
【図2】分岐・合流部を構築する方法を説明する図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のT−T線方向の断面図である。
【図3】分岐・合流部を構築する方法を説明する図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のU−U線方向の断面図である。
【図4】分岐・合流部を構築する方法を説明する図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のV−V線方向の断面図である。
【図5】先行する小断面トンネルを構築した後の図4のW−W線方向の断面図である。
【図6】図1のS−S線方向の断面図である。
【図7】曲率部の構築方法を説明するための一部切断平面図である。
【符号の説明】
【0081】
100 分岐・合流部(地中構造物)
10 小断面トンネル群
1,1A〜1M 小断面トンネル
11 往路部
12 曲率部
13 復路部
14 曲率部
15 小断面シールド掘削機
2 先行トンネル
21 シールド掘削機
3,3A,3B 枝トンネル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の小断面トンネルの側面間を連結した小断面トンネル群によって地山を囲繞し、その囲繞された地山を掘削して構築する地中構造物の構築方法において、
前記地中構造物を構築する地点に向けてシールド掘削機を掘進させて先行トンネルを構築し、その先行トンネルの周面の2箇所から先行トンネルから離隔する方向に2本の枝トンネルを構築し、その2本の枝トンネルのそれぞれの周面の間隔を置いた複数の位置から複数の並行する小断面トンネルを構築するための小断面シールド掘削機を発進させ、前記小断面トンネルが所定の位置に到達したところで前記小断面シールド掘削機を折り返させるとともに該小断面シールド掘削機によって構築された往路の小断面トンネルと並行するように復路の小断面トンネルを構築することで略U字形の小断面トンネルを複数構築し、先行して構築された小断面トンネル間の隙間に小断面トンネルを構築して側面間を連結した小断面トンネル群によって地山を囲繞することを特徴とする地中構造物の構築方法。
【請求項2】
前記U字形の小断面トンネルを構築した前記小断面シールド掘削機を、再び折り返させてその小断面シールド掘削機が発進した地点まで掘進させることによって長円形の小断面トンネルとすることを特徴とする請求項1に記載の地中構造物の構築方法。
【請求項3】
前記小断面シールド掘削機を折り返すところに構築される小断面トンネルの曲率部の一部を切削可能な部材で形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の地中構造物の構築方法。
【請求項1】
複数の小断面トンネルの側面間を連結した小断面トンネル群によって地山を囲繞し、その囲繞された地山を掘削して構築する地中構造物の構築方法において、
前記地中構造物を構築する地点に向けてシールド掘削機を掘進させて先行トンネルを構築し、その先行トンネルの周面の2箇所から先行トンネルから離隔する方向に2本の枝トンネルを構築し、その2本の枝トンネルのそれぞれの周面の間隔を置いた複数の位置から複数の並行する小断面トンネルを構築するための小断面シールド掘削機を発進させ、前記小断面トンネルが所定の位置に到達したところで前記小断面シールド掘削機を折り返させるとともに該小断面シールド掘削機によって構築された往路の小断面トンネルと並行するように復路の小断面トンネルを構築することで略U字形の小断面トンネルを複数構築し、先行して構築された小断面トンネル間の隙間に小断面トンネルを構築して側面間を連結した小断面トンネル群によって地山を囲繞することを特徴とする地中構造物の構築方法。
【請求項2】
前記U字形の小断面トンネルを構築した前記小断面シールド掘削機を、再び折り返させてその小断面シールド掘削機が発進した地点まで掘進させることによって長円形の小断面トンネルとすることを特徴とする請求項1に記載の地中構造物の構築方法。
【請求項3】
前記小断面シールド掘削機を折り返すところに構築される小断面トンネルの曲率部の一部を切削可能な部材で形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の地中構造物の構築方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2007−224532(P2007−224532A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−44715(P2006−44715)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(391023518)社団法人日本建設機械化協会 (19)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(303057365)株式会社間組 (138)
【出願人】(000201478)前田建設工業株式会社 (358)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(391023518)社団法人日本建設機械化協会 (19)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(303057365)株式会社間組 (138)
【出願人】(000201478)前田建設工業株式会社 (358)
【Fターム(参考)】
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