説明

地中油汚染土壌の浄化方法

【課題】地中油汚染土壌を効率的に浄化可能な地中油汚染土壌の浄化方法を提供する。
【解決手段】管の内周面と外周面とに跨って貫通する孔を周面に備えた有孔管12と有孔管12の孔11を覆うように有孔管12の外周面に設けられた油吸着材13とを備えた油吸着処理管3を地中の油汚染部2又は油汚染部2の近傍に設置し、油汚染部2の油を有孔管12内経由で吸引することによって油吸着材13に油を吸着させた後に、油吸着材13に吸着された油を分解する微生物を有孔管12内から有孔管12の孔11を通して油吸着材13に供給したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中油汚染土壌を効率的に浄化可能な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地中油汚染土壌に油を分解する微生物を供給することによって地中油汚染土壌を浄化する方法が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【特許文献1】特開平9−276837号公報
【特許文献2】特開平9−276840号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記浄化方法では、油が地中に拡散している場合に、拡散している油全体に微生物を行き渡らせることが困難であるので、地中油汚染土壌を効率的に浄化できないという課題があった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、地中油汚染土壌を効率的に浄化可能な地中油汚染土壌の浄化方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の地中油汚染土壌の浄化方法は、管の内周面と外周面とに跨って貫通する孔を周面に備えた有孔管と有孔管の孔を覆うように有孔管の外周面に設けられた油吸着材とを備えた油吸着処理管を地中の油汚染部又は油汚染部の近傍に設置し、油汚染部の油を有孔管内経由で吸引することによって油吸着材に油を吸着させた後に、油吸着材に吸着された油を分解する微生物を有孔管内から有孔管の孔を通して油吸着材に供給したことを特徴とする。
本発明の地中油汚染土壌の浄化方法は、管の内周面と外周面とに跨って貫通する孔を周面に備えた外側有孔管と外側有孔管の孔を覆うように外側有孔管の外周面に設けられた油吸着材とを備えた油吸着処理管を地中の油汚染部又は油汚染部の近傍に設置し、外側有孔管の内側に外側有孔管の軸に沿った方向に移動可能に内側有孔管を設け、内側有孔管の両端部の外周面にパッカーを設け、内側有孔管を外側有孔管内の任意の位置に止めた状態でパッカーを膨らませて内側有孔管の外周面と外側有孔管の内周面との間をパッカーにより塞いでから油汚染部の油を内側有孔管内経由で吸引することによって外側有孔管の外周面の外側に位置する油吸着材に油を吸着させた後に、油吸着材に吸着された油を分解する微生物を内側有孔管内から内側有孔管の孔及び外側有孔管の孔を通して油吸着材に供給したことを特徴とする。
油吸着材が多孔質材料により形成された被覆材で覆われたことも特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明の地中油汚染土壌の浄化方法によれば、油汚染部の油を有孔管の外周面に設けた油吸着材に集中させることができ、この有孔管の外周面に設置された油吸着材に集中した油を微生物で分解させることができるので、油汚染部の油を効率的に除去でき、地中油汚染土壌を効率的に浄化できる。
本発明の地中油汚染土壌の浄化方法によれば、内側有孔管により、油吸着処理管内の吸引箇所及び油吸着処理管内への微生物供給箇所を任意に決めることができる。従って、油吸着処理管内のどの位置でもほぼ同じ吸引力で油汚染部の油を吸引でき、油吸着処理管のどの位置にも同じように微生物を供給できるので、油吸着処理管の周囲の油汚染部の油を偏りなく除去できる。また、油吸着処理管内の吸引箇所及び油吸着処理管内への微生物供給箇所を特定することによって、油吸着処理管の周囲において油汚染の激しい油汚染部の油を集中的に除去することも可能となる。
また、油吸着材が被覆材で覆われたので、油吸着材の損傷を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
最良の形態1
図1及び図2は本発明の最良の形態1を示し、図1は地中油汚染土壌の浄化装置を示し、図2は油吸着処理管を断面で示す。
【0007】
図1に示すように、地中油汚染土壌の浄化装置1は、機械工場のような建屋7下の地中8においてA重油や機械油で汚染された油汚染部2の位置又は油汚染部2の近傍位置(以下、油汚染部2の位置又は油汚染部2の近傍位置を目標設置位置という)に設置される油吸着処理管3と、吸引装置4と、微生物培養装置5と、油吸着処理管3と吸引装置4や微生物培養装置5とを繋ぐ連結管6とを備える。
【0008】
図2に示すように、油吸着処理管3は、管の内周面と外周面とに跨って貫通する孔11を複数個備えた有孔管12と、有孔管12の孔11を覆うように有孔管12の外周面に設けられた油吸着材13とを備える。油吸着材13としては、親油性でかつ疎水性の物質を用いればよく、例えば、椴松ファイバーを用いる。椴松ファイバーは、椴松の木屑を200℃〜500℃で焼いて糸状に形成されたものである。この椴松ファイバーが不織布などの多孔質材料により形成された被覆材としての袋15内に入れられ、この椴松ファイバーを封入した袋15が有孔管12の孔11を覆うように有孔管12の外周面に巻き付けられたりして取り付けられることによって、油吸着材13が有孔管12の孔11を覆うように有孔管12の外周面に設けられる。袋15は、油吸着処理管3が地中に形成された横孔21内の目標設置位置に設置される場合に、油吸着材13の損傷を防止するとともに、油汚染部2の油を通過させて油吸着材13に吸着させる。
【0009】
連結管6は、有孔管12と一体の管、あるいは、一端が有孔管12の他端と繋がれる無孔管(管の内周面と外周面とに跨って貫通する孔が形成されていない管)により形成される。有孔管12の一端25は塞がれる。有孔管12が地中に形成された横孔21内を経由して目標設置位置に設置されるが、この際、連結管6としては、目標設置位置から横孔21を経由して地上に届くまでの長さX以上のものを用いることによって、油吸着処理管3が目標設置位置に設置された場合に、連結管6の他端22が横孔21の入口より地上に引き出される。
【0010】
有孔管12を地中の油汚染部2又は油汚染部2の近傍に設置する方法について説明する。まず、先端に採取管を備えた図外のボーリング装置を用いてボーリング調査を行い、建屋7下の地中の油汚染部2の位置を確かめる。そして、図外の自由曲線掘削機を用いて目標設置位置を通過する横孔21を形成する。自由曲線掘削機は、曲がり可能な鋼製中空ロッドと、ロッドの先端に設けられた掘削ビットと、ロッドの先端部に設けられた位置検出センサと、鋼製中空ロッドを前後動させたり回転させたりするための駆動装置とを備える。掘削ビットは、先端に、円柱体の一端が斜めに切り落とされたような楕円形面を備える。直線状に掘削する場合には、ロッドを回転させて掘削ビットで土砂を切削しながら進行する。曲線状に掘削する場合は、ロッドの回転を止めて、掘削ビットを土砂に押し当てることによって、掘削ビットが地山からの反力を受けて曲線状に推進する。掘削始点から自由曲線掘削機を用いて目標設置位置を通過して地上に突き抜ける横孔21を形成した後に、地上に出た掘削ビットをリーマビットに付け替える。油吸着処理管3を備えた長さX以上の連結管6の他端22をリーマビットの後部に取付け、リーマビットを横孔21の終端口から横孔21内に挿入して横孔21の内壁を有孔管12の径に合うようにリーマビットで切削しながらリーマビットを横孔21の始端口まで戻す。以上により、横孔21内の目標設置位置に油吸着処理管3が設置され、連結管6の他端22が横孔21の始端口より地上に引き出される。
【0011】
浄化装置1を用いて地中油汚染土壌を浄化する方法を説明する。自由曲線掘削機により目標設置位置を通過する横孔21が形成される。横孔21内に挿入された油吸着処理管3が目標設置位置に設置された後に、地上に出された連結管6の他端22と吸引装置4の吸引口23とが互いに繋がれる。そして、吸引装置4が駆動して油吸着処理管3の有孔管12内を吸引すると、油吸着処理管3の周囲の油汚染部2の油が地下水とともに孔11の方向に吸引されて、地下水が油吸着材13を通過して吸引装置4に吸引され、油が油吸着材13に吸着される。その後、連結管6の他端22が吸引装置4の吸引口23から外され、連結管6の他端22と微生物培養装置5の注入口24とが互いに繋がれる。そして、微生物培養装置5において培養液で培養された微生物と培養液とが一緒に微生物培養装置5から有孔管12内に供給される。これにより、微生物が有孔管12の孔11、袋15を経由して油吸着材13に付着し、油吸着材13に付着した微生物が油吸着材13に吸着された油を分解する。つまり、油汚染部2の油が吸引により油吸着材13に集中して吸着され、微生物が有孔管12の外周面に設置された油吸着材13に孔11を通して効率的に付着するので、油吸着材13に付着した微生物が油吸着材13に吸着された油を効率的に分解する。その後、油汚染部2の油の残り具合をボーリング調査で調べ、油の残りが多ければ、さらに、吸引装置4により連結管6内及び有孔管12内を吸引して管内の水分を吸引するとともに油汚染部2の油分と地下水とを吸引して油吸着材13に油を吸着させる。尚、微生物が有孔管12内に供給された後の吸引装置4による吸引作業は、有孔管12内に供給された微生物が油吸着材13に付着して油吸着材13の油を分解するのに必要な時間を待ってから行う。例えば、有孔管12内に微生物が供給されてから1週間程度経過してから吸引作業を行う。吸引作業の後、上述と同じように、微生物を有孔管12内に供給する。つまり、油汚染部2の油の残り具合を調べながら、吸引作業と微生物供給作業とを繰り返すことによって、油汚染部2の油を除去する。
【0012】
最良の形態1によれば、有孔管12の孔11を覆うように有孔管12の外周面に設けられた油吸着材13を備えた油吸着処理管3を目標設置位置に設置し、油汚染部2の油を有孔管12内から吸引することによって油吸着材3に吸着させた後に、有孔管12内に微生物を供給することによって油吸着材13に吸着された油を微生物に分解させたので、油汚染部2の油を有孔管12の外周面に設けた油吸着材13に集中させることができ、そして油吸着材13に集中させた油を微生物で分解させることによって油汚染部2の油を効率的に除去でき、地中油汚染土壌を効率的に浄化できる。また、油吸着材13が袋15で覆われたので、油吸着材13の損傷を防止できる。
【0013】
最良の形態2
油吸着処理管3と内側有孔管33とを備えた管を用いる。即ち、図3に示すように、管の内周面と外周面とに跨って貫通する孔11を複数個備えた外側有孔管32と外側有孔管32の孔11を覆うように外側有孔管32の外周面に設けられた油吸着材13とを備えた油吸着処理管3と、管の内周面と外周面とに跨って貫通する孔39を複数個備え、外側有孔管32の内側において外側有孔管32の軸に沿った方向に移動可能に設けられた内側有孔管33と、内側有孔管33の両端部の外周面に設けられたパッカー34とを備える。そして、外側有孔管32と一体の挿入ガイド管35の他端、あるいは、外側有孔管32と繋がれる無孔管により形成された挿入ガイド管35の他端が、地上に引き出される。内側有孔管33の一端41、外側有孔管32の一端42は塞がれる。また、挿入ガイド管35の内側に、内側有孔管33と吸引装置4や微生物培養装置5とを繋ぐ連結管36を備え、連結管36の他端が地上に引き出される。パッカー34は、ゴムのような弾性体により浮輪のようなリング袋状に形成されたものであり、水のような流体を袋内に取り込んで膨らむ。尚、図示しないが、最良の形態2の浄化装置は、パッカー34に流体を供給する流体供給管と、この流体供給管に流体を供給する流体供給装置とを備える。
【0014】
最良の形態2による地中油汚染土壌の浄化方法を説明する。油吸着処理管3が目標設置位置に設置された後に、挿入ガイド管35の内側に内側有孔管33が挿入されて、内側有孔管33が外側有孔管32の内側の任意の位置に止められる。この状態で流体供給装置及び流体供給管がパッカー34内に流体を供給してパッカー34が膨らむことによって、パッカー34が内側有孔管33の外周面と外側有孔管32の内周面との間を塞ぐ。その後、連結管36の他端22と吸引装置4の吸引口23とが互いに繋がれ、吸引装置4が駆動して内側有孔管33内を吸引すると、内側有孔管33の周囲の油汚染部2の油が地下水とともに内側有孔管33の孔39の方向に吸引されて、地下水が油吸着材13を通過して吸引装置4に吸引され、油が油吸着材13に吸着される。その後、連結管36の他端22が吸引装置4の吸引口23から外され、連結管36の他端22と微生物培養装置5の注入口24とが互いに繋がれる。そして、微生物培養装置5において培養液で培養された微生物と培養液とが一緒に微生物培養装置5から内側有孔管33内に供給され、これにより、微生物が内側有孔管33内の孔39及び外側有孔管32の孔11内を通して油吸着材13に付着して、微生物が油吸着材13に吸着された油を分解する。
【0015】
最良の形態2によれば、外側有孔管32の内側に外側有孔管32の軸に沿った方向に移動可能に設けられた内側有孔管33を用いたので、油吸着処理管3内の吸引箇所及び油吸着処理管3内への微生物供給箇所を任意に決めることができる。従って、油吸着処理管3内のどの位置でもほぼ同じ吸引力で油汚染部2の油を吸引でき、油吸着処理管3内のどの位置にも同じように微生物を供給できるので、油吸着処理管3の周囲の油汚染部2の油を偏りなく除去できるし、また、油吸着処理管3内の吸引箇所及び油吸着処理管3内への微生物供給箇所を特定することによって、油吸着処理管3の周囲において油汚染の激しい油汚染部2の油を集中的に除去することも可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
なお、横孔21は、地中で掘り止められる孔でもよい。この場合、例えば、駆動軸の先端に設けた切削ビットで地中を掘削して横孔を形成し、途中で駆動軸と切削ビットとを分離して切削ビットを地中に残して駆動軸を引き戻してから、横孔21内に油吸着処理管3を挿入して設置すればよい。
有孔管12の孔11を覆うように有孔管12の外周面に油吸着材13を巻き付けたりして取り付けた後に、この油吸着材13の外面を覆うように、不織布などの多孔質材料により形成された被覆材を取り付けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】浄化装置を示す概略構成図(最良の形態1)。
【図2】油吸着処理管の断面図(最良の形態1)。
【図3】油吸着処理管の断面図(最良の形態2)。
【符号の説明】
【0018】
1 浄化装置、2 油汚染部、3 油吸着処理管、11 孔、12 有孔管、
13 油吸着材、15 袋(被覆材)、32 外側有孔管、33 内側有孔管、
34 パッカー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管の内周面と外周面とに跨って貫通する孔を備えた有孔管と有孔管の孔を覆うように有孔管の外周面に設けられた油吸着材とを備えた油吸着処理管を地中の油汚染部又は油汚染部の近傍に設置し、油汚染部の油を有孔管内経由で吸引することによって油吸着材に油を吸着させた後に、油吸着材に吸着された油を分解する微生物を有孔管内から有孔管の孔を通して油吸着材に供給したことを特徴とする地中油汚染土壌の浄化方法。
【請求項2】
管の内周面と外周面とに跨って貫通する孔を備えた外側有孔管と外側有孔管の孔を覆うように外側有孔管の外周面に設けられた油吸着材とを備えた油吸着処理管を地中の油汚染部又は油汚染部の近傍に設置し、外側有孔管の内側に外側有孔管の軸に沿った方向に移動可能に内側有孔管を設け、内側有孔管の両端部の外周面にパッカーを設け、内側有孔管を外側有孔管内の任意の位置に止めた状態でパッカーを膨らませて内側有孔管の外周面と外側有孔管の内周面との間をパッカーにより塞いでから油汚染部の油を内側有孔管内経由で吸引することによって外側有孔管の外周面の外側に位置する油吸着材に油を吸着させた後に、油吸着材に吸着された油を分解する微生物を内側有孔管内から内側有孔管の孔及び外側有孔管の孔を通して油吸着材に供給したことを特徴とする地中油汚染土壌の浄化方法。
【請求項3】
油吸着材が多孔質材料により形成された被覆材で覆われたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の地中油汚染土壌の浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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