説明

地中潅水装置

【課題】簡易な構成で、正確かつ均等な水量制御を可能とした地中潅水装置を提供する。
【解決手段】水源等から圧送ポンプ、主管及び注水管を介して地中潅水する地中潅水装置において、主管5から注水管9に至る任意の部位にジョイント7を配置し、ジョイント7には、内径が2mm以下の流路を有する固定ノズル13を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑化及び農業事業分野などにおける地中潅水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、緑化及び農業事業分野などにおいて、潅水に関わる技術として、果樹や街路樹等に、散水、追肥、薬剤散布等を、地表面から行う技術が知られている。この技術では、供給された水を含む有効成分が地中深く浸透することは無く、地表面近くに留まり、樹木の根が下方側に伸びず、地表近くを横方向に伸びて、養分を吸収する毛根の多くも地表近くで発生し、干害や酸性雨の影響を受け易く、樹勢を損なって枯れることが有った。
これを補うために、従来、高圧ジェットノズルを使用して、地中に高圧潅水する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平9−987号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の構成では、高圧ジェットノズルを通じて潅水される水量の制御が困難になるという問題があった。一般に、水量制御する場合、高圧ポンプの回転数を制御し、あるいは、リリース弁で高圧ポンプの吸い込み口に吐出水を環流させることなどが行われるが、このような制御を行う場合、流量センサーが必要になり、この測定結果に応じて、高圧ポンプの回転数の制御などを行うための制御系が必要になる。高圧潅水による現状の技術としては、1点潅水技術しか存在しなく、例えば数百点に及ぶ多点潅水の場合、膨大な数の流量センサーと制御系が必要になり、実用上、当該方法での高圧潅水は不可能になるという課題があった。そして、緑化及び農業事業分野などでは、特に、この制御系の使用が困難になるという課題もあった。
そこで、本発明の目的は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、簡易な構成で、均質かつ正確な水量制御を可能とした地中潅水装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、水源等から圧送ポンプ、主管及び注水管を介して地中潅水する地中潅水装置において、前記主管から前記注水管に至る任意の部位にジョイントを配置し、ジョイントには、内径が2mm以下の流路を有するノズルを設けたことを特徴とする。
本発明では、主管から注水管に至る任意の部位におけるジョイントに、内径が2mm以下の流路を有するノズルを設けたため、主管内の高圧圧力を制御することで、多点における各注水管からの注水量を簡単に、ほぼ均等に制御できる。
一般に、各注水管に流量センサーを設け、この計測値に従い、高圧制御を行う場合、注水管の数に対応した流量センサーが必要になり、この計測のための電源供給や信号出力を装備せざるを得ず、広大な土地に適用することは困難である。
本発明では、この制御が容易であり、上記構成の結果として、部品点数が少ないため、安価かつ信頼性に優れ、長期に亘って故障が少ない。
【0005】
この場合において、前記主管に開口部を設け、この開口部に、主管及び注水管を連通するジョイントを接続し、ジョイントには、前記主管内に臨む、内径が2mm以下の流路を有するノズルを備えてもよい。
この発明では、ジョイントを主管に設けているため、本地中潅水装置の設置作業が簡単であり、しかもノズル交換などのメンテナンスが容易になる。
【0006】
この場合において、前記ノズルは、前記主管内に臨む流路の開口部にR形状の面取りを備えてもよい。ノズルへの水の流入が円滑になり、注水量の正確、かつ均等制御を実現できる。
前記ノズルは、前記主管内の圧力増加により該ノズルの流路から押し出されると共に、前記主管内の圧力が低下すると元の位置に復帰する針弁を備えてもよい。
前記注水管の先端部に、該注水管内の圧力変動により稼動する円錐状の突起体を備えてもよい。
前記圧送ポンプと前記主管の間に圧力センサーを配置し、該圧力センサーの出力信号を圧送ポンプの駆動モーターに制御信号として入力し、当該主管に供給する圧力を制御可能としてもよい。
前記圧力センサーと前記主管の間に、逆止弁及び混合器を配置し、逆止弁及び混合器の間に、水溶性の肥料や土壌改質剤、食塩水や薬剤等の有用液体、あるいは、空気、酸素や二酸化炭素等の有用気体を混入可能としてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、主管から注水管に至る任意の部位におけるジョイントに、内径が2mm以下の流路を有するノズルを設けたため、主管内の高圧圧力を制御することで、多点における各注水管からの注水量を簡単に、ほぼ均等に流量制御できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の一実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
図1A,Bは、本発明による地中潅水装置の一実施の形態を示す。
この地中潅水装置100は、例えば砂漠の緑化や果樹園等のための恒久設置システムの一例を示す。この例の場合は、水源等から、1台の大型フィード・ポンプ1により予備圧送された潅水(=水溶性肥料、水溶性土壌改質剤や薬剤、有用気体が混在していても構わない)が、複数の高圧ポンプ3,3,3…を介して、主管5,5,5…に供給される。
各主管5の壁部には、例えばL=5m、及びW=5mの間隔で、図2に示すように、複数の開口部5Aが設けられている。
これら開口部5Aには、ジョイント7の一端が捻じ込み接続され、ジョイント7の他端には、注水管9が接続されている。各注水管9の先端部は、目的と環境により、H=0(0.5)〜10mの深さで地中に埋設されている。各注水管9の端面内径d1mmは、土壌に対する浸透力F{=(πd1/4)ΔP:ΔP=主管5内圧力}を大きくして、目詰まりを防止するために、内径d1≧4mm等の大きさが選ばれている。各注水管9の間隔Wは、例えば、2〜10m等、設置場所等により適切に選択される。
【0009】
ジョイント7には、主管5内に臨む、格納ハウジング11及び固定ノズル13が設けられている。固定ノズル13は、図3に示すように、格納ハウジング11に圧入され、格納ハウジング11は、市販の配管ジョイント7等に、圧入して構成されている。
この構成では、ジョイント7を主管5に設けたため、本地中潅水装置の設置作業がきわめて簡単になり、しかもノズル13交換のメンテナンスなどが容易になる。なお、本構成では、ノズル13を含むジョイント7が、主管5の開口部に設けられているが、これに限定されず、例えばジョイント7が注水管9の途中に設けられていてもよく、ジョイント7は、主管5から注水管9に至る任意の部位に配置が可能である。
【0010】
ノズル13は、図4に示すように、主管5内に臨む、内径d2=0.8mmの流路14を有している。内径d2は、2mm以下が望ましく、最も望ましくは、1mm以下である。ノズル13は、耐蝕且つ耐磨耗に優れた難切削材料で精密に形成され、ノズル13の内面13Aの面粗度Raは、1.6a以下、好ましくは0.80a以下である。格納ハウジング11の材質は、耐蝕性のみ担保されれば良いため、例えば、ナイロン樹脂、PPS樹脂等の各種樹脂材料や、切削の容易なSUS303等の快削ステンレス材料が適用されている。別の実施の形態として、図5に示すように、ノズル13における、主管5内に臨む流路14の開口部に、R形状の面取り12を設ける(以下、半円ノズル形状という。)ことが望ましい。ここでR=1/4×d2程度、例えばd2=2mmであれば、R=0.5mm程度が望ましい。
【0011】
図6は、ノズル13の内径d2の二乗「d2」mmと、負荷圧力=0.1MPa時の流量Q(l/min)の関係を示す。
図より、大凡、
Q=0.457d≒0.5d …(1)
の関係にあることが分かる。
【0012】
図7は、図5に示す「半円ノズル形状」のノズル13を用いた、d2=0.8mmのノズルを通る流量Q(l/min)を示す。
図より、
Q=1.1491(ΔP)0.5413≒(0.5×0.8)(10・ΔP)0.541
≒0.5d√(10・ΔP) …(2)
で概算されることが分かる。
式(2)より、負荷圧力ΔPを、ΔP=0〜10MPaに可変させた場合、ΔP=0.1MPa時の流量を基本とすると、ΔP=10MPa時の流量の割合は、
R={0.5d√(10・10)}/{0.5d√(10・0.1)}
=√(100)=10) …(3)
と計算されるため、印加圧力管理により、ΔP=0.1MPa時の流量の、0〜10倍の範囲で、一義的に流量制御が可能となる。負荷圧力ΔPは、高圧ポンプ3の例えば回転数などの変更により実行される。
【0013】
図8は、式(2)において、「ΔP=ΔPx±0.1MPa」、及び「ΔP=ΔPx±0.05MPa」の設定誤差が、流量制御誤差に及ぼす影響ψ(%)を示す。この場合、
ψ=〔{0.5d√10(ΔPx±0.1)}
/{0.5d√10(ΔPx)}―1〕×100
=〔{√(ΔPx±0.1)/√ΔPx}―1〕×100) …(4)
または、
ψ=〔{0.5d√10(ΔPx±0.05)}
/{0.5d√10(ΔPx)}―1〕×100
=〔{√(ΔPx±0.05)/√ΔPx}―1〕×100) …(5)
となる。圧力制御が「±0.1MPa」の設定誤差の場合は、ΔP≧0.4MPa、「±0.05MPa」の設定誤差の場合は、ΔP≧0.2MPaの領域で、流量制御誤差が「≦10(%)RS」で、流量制御可能なことが分かる。
【0014】
更に高圧供給の場合は、圧力制御が「±0.1MPa」の設定誤差の場合は、ΔP≧5MPa、「±0.05MPa」の設定誤差の場合は、ΔP≧3MPaの領域で、流量制御誤差が「≦1(%)RS」と、印加圧力により高精度の流量制御可能なことが分かる。
実際に適用する場合、例えば、供給印加圧力が「ΔP=0.2MPa」の領域で、圧力設定誤差が0.1MPaのことはあり得ないため、当該領域での制御に限れば、更に、高精度の圧力制御、すなわち、流量制御が可能である。
本実施の形態では、主管5内への印加圧力の管理により、各注水管9への流量制御が可能となるため、多点潅水の場合に、いちいち各注水管9に、流量センサー(図示せず)などを取り付けることなく、均質な注水が可能となる。
【0015】
本実施の形態のように、高圧負荷によって潅水の流量制御を行うためには、ノズル13の最適な内径d2を選択することが重要となる。図9は、ΔP=0.1MPaの負荷圧力を連続して加えて、Q(l/min)の潅水を行った場合の最大ΣQ(l/day)を与える、ノズル13の内径d2mmを示している。図9中の、最大ΣQ(l/day)は、高圧ポンプ3の最大圧送能力が、10MPaと考えた場合に、連続供給を行った時の一日当たりの積算流量ΣQ(l/day)を示している。図9は、連続通水(潅水)した場合の流量を示している故に、タイマー機能等で、注水管理した場合は、0〜ΣQ(l/day)〜最大ΣQ(l/day)の範囲で、自由な流量供給が可能で、きめ細かな流量制御が可能である。
例えば、0〜100(l/day)〜1000(l/day)の例で見ると、かなりの大流量供給の場合でさえ、ノズル13の必要な内径d2は、d2≒0.473mmと小さく、通常のドリルでは、精密加工が困難である。
【0016】
このノズル13を流れる流速Vm/secは、
V=(Q×1000/60)/(πd/4)/100 …(6)
式(6)より、0.1MPa時は、
V=(0.6944×1000/60)/(π0.473/4)/100
≒0.66Vm/sec、
10MPa時は、その10倍の、
V≒6.59m/secの速度で流れる。
すなわち、0〜0.66〜6.6m/sec以上の流速に対応するためには、ノズル13の材質として、摩滅しない材質である、SUS316、SUS329J4L、ハステロイ等の金属、あるいは、セラミックス等の耐磨耗材料を使用することが必要となる。この材料は、加工面から見た場合は、難切削材料であり、d2≒0.473mmのような細孔を、通常のドリル加工等で、安価且つ精密に行うことは困難である。
【0017】
本実施の形態では、d2≦2mmの円柱状のノズル13を製造するにあたり、(イ)絞り加工技術を用いて、SUS316製あるいは、ハステロイ製の管を製作する。あるいは、(ロ)焼結金属技術により、同様に、SUS316製あるいは、ハステロイ製の管を製作する。(ハ)焼成技術により、セラミックス製の管、を製作する。その後、潅水の流入孔内面のR面取り(図5参照)をして、流入抵抗を軽減し、安定したノズル特性としている。
【0018】
図10は、「半円ノズル形状」のノズル13を用いた場合の、σ={上流側圧力/下流側圧力}の変化に対する「空気流量(l/min)」の変化を示している。上流側圧力=一定の条件で、下流側から真空ポンプを用いて、空気を吸引した場合、このノズル13は、σ={上流側圧力/下流側圧力}の変化に対する「空気流量(l/min)」の変化が滑らかで、安定且つ精密な流量特性を有することが分かる。
【0019】
図11は、別の実施の形態を示す。
この構成では、図11Aに示すように、一対のジョイント107,108により、格納ハウジング111を保持して構成される。一方のジョイント107は、例えば主管5の開口部5A(例えば、図2参照。)に捻じ込み接続され、他方のジョイント108は、注水管9に接続される。この格納ハウジング111は、図11Bに示すように、流路111Aを有し、潅水の流入孔端面に、上記と同様構成の「半円ノズル形状」のノズル13が設けられている。この構成では、市販のジョイント107,108を用いて、簡単に組み付けできる。
【0020】
図12は、別の実施の形態を示す。
この格納ハウジング113は、図12A,Bに示すように、ハウジング本体113Aの内側に動弁部113Bを備えている。この動弁部113Bは、弁体部113Cと摺動軸113Dを一体に有し、この摺動軸113Dは、ハウジング本体113Aの内側に設けた支持部113Eの孔に嵌合している。113Fはコイルばねである。弁体部113Cの先端には針弁113Gが設けられ、この針弁113Gは、図12Aの状態においては、格納ハウジング113に設けた「半円ノズル形状」のノズル13のノズル孔に嵌っている。
潅水動作が実行されている場合、すなわち高圧ポンプ等からの圧力負荷があるとき、図12C,Dに示すように、動弁部113Bは、水圧で、コイルばね113Fのばね力に抗し押されて図中左方に付勢されている。「流入側圧力=ゼロ」、すなわち圧力負荷がなくなると、図12Cに示すように、コイルばね113Fのばね力により、動弁部113Bが図中右方に付勢され、針弁113Gがノズル13のノズル孔に嵌る。このとき弁体部113Cの外周は、ハウジング本体113Aの内側の円錐状面113Hに密着する。
この種の機構では、例えば長期使用時にノズル13のノズル孔への異物の目詰まりが予測されるが、本構成では、潅水動作が停止されると、針弁113Gがノズル13のノズル孔に嵌るため、ノズル孔内の異物が押し出される。従って、長期使用時におけるノズル部への異物の目詰まりを防止でき、ノズル部の自己洗浄作用を持つ。
【0021】
図13は、別の実施の形態を示す。
115は、土壌進入防止ストッパーを示す。このストッパー115は、注水管9の端面内径d1mm(例えば図2参照。)の先端部に嵌められる。このストッパー115は、図13Aに示すように、移動軸115Aと、先端側が鋭角の円柱状突起115Bとを一体に備える。また、注水管9の先端部の内側にハウジング115Cが形成され、ハウジング115Cの内側に、移動軸115Aが貫通し、支持されている。ハウジング115Cに設けた、移動軸115Aの支持部115Dと、移動軸115Aの後端に設けた突部115Eの間に、コイルばね115Fが配置され、このコイルばね115Fにより、ストッパー115が図中上方に付勢され、この状態では、ストッパー115が注水管9の先端部を閉塞している。
【0022】
図13Aは、注水管9内部に圧力負荷を掛けない状態を示し、図13Cは、圧力負荷を掛けた状態を示している。圧力負荷が掛かると、矢印で示すように、潅水が、移動軸115Aの後端の突部115Eに掛かり、コイルばね115Fのばね力に抗し、ストッパー115を押し下げ、「h」の間隙を通じて潅水される。注水管9から供給される流量自体は、図9の例で明らかなように、0.1MPaの流量は、0.0694(l/min)=1.15cm/secと非常に小さな流量である。しかし、仮に土壌圧力により円柱状突起115Bが押し上げられ、ハウジング115Cの下端に完全密着した場合、管内圧力が最高10MPa以上の高圧となり、円柱状突起115Bを押し下げ、「h」の流路を保持するように働く。この機能を大きくするためには、ハウジング115Cの内径d3を大きく設計することが重要である。
【0023】
注水管9単体を半永久的に固定使用する{=注水管のみを挿入したままにする}場合や、砂漠や農場等のように、地中潅水装置を埋設する場合は、注水時の圧力による注水管9の抜け防止を図るために、注水管9の下端の外径d4に対し、円柱状突起115Bの外径d5を「d4<d5」とし、公園等の樹木や、貴重な巨木等の潅水で、メンテナンスを必要に応じて、注水管9を挿入・抜き出しする場合は、「d4=d5」として設計することが望ましい。
なお、図示の例では、コイルばね115Fが設けられているが、部品構成を単純化するために、このコイルばね115Fを排除し、ハウジング115Cの支持部115Dと、移動軸115Aの摺動間隙を隙間嵌めとして公差を管理し、注水管を土壌中に挿入後、注水圧力負荷により、固定的な隙間「h」のまま活用してもよい(不図示)。
【0024】
砂漠の緑化や果樹園等の恒久設置システムの場合、土壌耕作は基本的に行わないため、地表近くへの埋設が可能になる。また、環境変化による潅水量変更が可能なように、主管5部分は、埋設しないで、地上配置される。すなわち注水量を変更したい場合は、地上でノズル13の交換が可能になる。なお、公園やゴルフ場のような場所で使用する、可搬仕様では、ノズル13に接続される注水管9部分には、フレキシブル・チューブが使用される。
しかし、農場等では、優秀な作物を作るために、定期的に耕作することが重要である。殊に、大規模農場では、大型耕運機で耕作するため、地表近くへの埋設物が邪魔になる。このような場合には、図示は省略したが、主管5から注水管9に至るシステム全体を地中に埋設し、しかも埋設の深さを、耕作の邪魔にならないように、主管5の埋設深さHmを「H≧0.5m」とすることが望ましい。なお、注水管挿入深さhmは、目的と環境により、自由に、適切に選択される。3本の注水管の幅Lmは、前述と同様に、目的と環境により、「L=〜5m〜10m以上」の間で適切に選択される。なお、注水管先端部方向が、地下方向に向けて図示されているが、総ての「地中潅水装置」を埋設する方法の場合は、主管5の埋設深さHmを深くして、注水管先端部を主管5の上部に配置することも可能である。
【0025】
図14は、砂漠の緑化や果樹園などのための恒久設置システムの一例を示す。なお、図1と同一部分には同一符号を付して示し、説明を省略する。
この例の場合は、水源等から、1台の大型フィード・ポンプ1により予備圧送された潅水が、1台の高圧ポンプ3を介して主管5に供給され、この主管5に接続された複数の注水管9を介して潅水されるシステムである。図の列では、主管5の「A」部で、15箇所の注水管9が配置され、この構成が、「B」部、「C」部と、「Lm」の間隔を以って構成される。図の例で、「L=W=5m」として、主管5の軸方向で、10箇所の潅水ポイントを設けた場合の面積は、「M・W・(N−1)」・L。但し、Mは、一ヶ所での注水管本数、Nは、潅水ポイントで表されるため、「M・W・(N−1)=10×5×(10−1)=450m=4.5(a)」の面積の潅水管理を行うことができる。
図1の例では、各高圧ポンプ3のラインで、個別流量管理が行なえるのに対し、図14の例では、対応する潅水ポイントの供給流量が均質である。但し、注水管9の設置費用は安価なため、安価な地中潅水装置が提供される。
このように、1本の主管5から多数の注水管9を構成し、マルチ潅水する場合に、主管5の両端での圧力効果による「流量差異」を無視できるようにするためには、0.1MPaでの、ΣQ(l/day)を基準に考えた場合、ノズル13の内径をd2、ノズル13の本数をMとして、ノズル13のノズル孔総面積の100倍に相当する、主管5の流路断面積を与える、主管内径Dmmを、
≧100M・d …(7)
となるように注意することが重要である。
【0026】
例えば、図9において、ノズル13の内径は、d2=0.473mmであるので、注水管9の本数が100本の場合は、主管内径Dmmは、
D≧「≧√{100×100×(0.473)}≧47mm
程度を目安とすることが重要である。
【0027】
物理的には、主管内流速Vを小さくして、「dP=σV/2」による、主管5内での圧力降下を無視できるようにすることで、各注水管9に負荷される圧力ΔP(MPa)を均一にすることにある。仮に、「V=10cm/sec=0.1mm/sec」を設計値とすると、前述した図9の「0〜100(l/day)〜1000(l/day)」の例で見た場合、ノズル13の内径は、d2=0.473mmであるので、最大流量時を基準とした場合は、
Q=M・{最大ΣQ(l/day)}×1000/24/60/60
=100×1000(l/day)×1000(cm/l)
/24(hour/day)/60(min/hour)/60(sec/min)
≒1157(cm/sec)
従って、主管内径Dmmは、を
D=√{4×100(mm/cm)×1157(cm/sec)
/10(cm/sec)/π}
≒121mm
【0028】
また、「0〜ΣQ(l/day){at0.1MPa}」を基準とした場合は、
Q=M・{最大ΣQ(l/day)}×1000/24/60/60
=100×100(l/day)×1000(cm/l)
/24(hour/day)/60(min/hour)/60(sec/min)
≒115.7(cm/sec)
従って、主管内径Dは、
D=√{4×100(mm/cm)×115.7(cm/sec)
/10(cm/sec)/π}
≒38.4mm
と概算され、式(7)における概算値と同じ数値を得る。
【0029】
図15は、別の実施の形態を示している。
水源等から、フィード・ポンプ1により、高圧ポンプ3に、一定圧力で「水」が供給されている。フィード・ポンプ1には、高圧ポンプ3への供給圧力を一定にするための、自動圧力調整弁1Aが付設されている。
高圧ポンプ3の出ロ部には吐出圧力を計測する圧力センサー51が配置され、この圧力センサー51には制御装置52が接続されている。制御装置52は、圧力センサー51からの信号を受けて、高圧ポンプ3の駆動モーターが御運転される。制御装置52は、高圧を任意の圧力で制御しつつ、タイマー機能を併せ持つ。
圧力センサー51による、任意の圧力ΔPMPaでの供給は、Q=α√ΔPの流量で、各注水管9から、均一流量で、土壌中に潅水される。比例定数αは、ジョイント7に内蔵されたノズル13の内径d2に固有の値で、供給するQ(l/min)に対応して、適切に選定される。
【0030】
圧力センサー51の下流には逆止弁53が設けられ、逆止弁53の下流には混合器54が設けられている。また、逆止弁53と混合器54の間には、水溶性肥料、土壌改質剤などの液体肥料供給ライン55と、食塩水や薬剤、酸素や空気等の有用気体供給ライン56が接続されている。一般の高圧ポンプ3では、気液混合流体を高圧吐出することは困難なため、図示の例では、混合器54の上流に、水溶性肥料、土壌改質剤、食塩水や薬剤、酸素や空気等の有用気体が供給され、混合器54で均質混合され、主管5を経て、各注水管9により土壌に供給される。混合器54には、本発明者による優れた混合性能を有する混合器技術(特公平06−087959合公報)が好適である。
【0031】
気体の粘性係数は、水「=1.01(mPas)(20℃)」に比較して、18.1(μPas)(20℃)と、1.01(mPas)/18.1(μPas)≒55.8倍も小さいため、加圧した場合に、土中を透過し易い。このため、高圧ポンプ3の停止時に、逆止弁53により、上流への逆流を抑止しながら、土中に、酸素や空気、二酸化炭素等の有用気体を供給することができる。しかし、有用微生物の存在しない土中に供給気体を、均質に拡散することは容易でなく、水とマイクイロ・バブル構造で溶融させて供給する方法の方が効果に優れると推察される。
【0032】
「水溶性肥料、土壌改質剤、食塩水や薬剤」等の液体は、流量調整弁57,58を経て、ギヤ・ポンプ59等の容積型ポンプにより、回転制御により適量制御され、逆止弁60,61を経て供給される。容積型ポンプ59では、「回転速度と供給流量」の関係が一次比例のため、流量調整弁57,58を排除して、回転速度制御により供給流量を管理・制御することが可能である。本構成は、安価構成となる。但し、精密流量制御を行う場合や、定回転速度で、流量調整弁57,58により流量制御を行う場合は、ギヤ・ポンプ59の下流に、流量センサー62が付設される。
【0033】
また、空気、酸素、二酸化炭素等の有用気体成分は、高圧ガス・ボンベ、あるいは、コンプレッサー63により供給され、圧力調整器64により定圧制御され、流量調整弁57と流量センサー65により、制御・管理して、逆止弁60を経て、上述の逆止弁53と混合器54の間に供給される。なお、有用気体の供給に関しては、一般の、安価なコンプレッサー63を使用した場合は、その加圧能力が、0.6MPa程度のため、有用気体混在潅水は、ΔP≦0.5MPaでの供給となる。一方、高圧ボンベを使用した場合は、充填圧力が大凡、15MPa程度のため、高圧ポンプ3の圧送能力状態で、マイクイロ・バブル構造で「水」に溶融させて供給することが可能である。高圧ポンプ3に対し、本発明者等による、直動式ポンプ装置(特願2007−44940号)を適用すれば、気液混合流体の高圧吐出が可能なため、高圧ポンプ3の上流に、「水溶性肥料、土壌改質剤、薬剤」等の液体や「空気、酸素、二酸化炭素等の気体」を供給できる。この結果、水中に、有用気体がマイクロ・バブル状態で混合され、ノズル13通過後、減圧によりバブル(気泡)が急激に膨張し、その後、断熱圧縮されるため、土壌の滅菌作用を生じ、土壌の改質に大きく貢献できるなどの効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施の形態を示す地中潅水装置の図であり、Aはシステム図、Bは配管の端面図である。
【図2】主管と注水管の関係を示す図である。
【図3】ジョイントを示す図である。
【図4】ノズルを示す図であり、Aは端面図、Bは断面図である。
【図5】ノズルの別の形態を示す図であり、Aは端面図、Bは断面図である。
【図6】ノズル内径の二乗と実測流量の関係を示す図である。
【図7】差圧と流量の関係を示す図である。
【図8】印加圧力と流量制御誤差の関係を示す図である。
【図9】ノズル内径と流量の関係を示す図である。
【図10】σ={上流側圧力/下流側圧力}の変化に対する空気流量Q(l/min)の変化を示す図である。
【図11】別の形態を示すジョイントであり、Aは正面図、Bは断面図である。
【図12】Aは格納ハウジングを示す断面図、Bはその端面図、Cは潅水時の格納ハウジングを示す断面図、Dはその端面図である。
【図13】Aはストッパーを示す断面図、Bはその端面図、Cは潅水時のストッパーを示す断面図である。
【図14】別の実施の形態を示す地中潅水装置の図であり、Aはシステム図、Bは配管の端面図である。
【図15】別の実施の形態を示す地中潅水装置の図であり、Aはシステム図、Bは配管の端面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 フィード・ポンプ
3 高圧ポンプ
5 主管
7 ジョイント
9 注水管
11 格納ハウジング
13 ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水源等から圧送ポンプ、主管及び注水管を介して地中潅水する地中潅水装置において、
前記主管から前記注水管に至る任意の部位にジョイントを配置し、ジョイントには、内径が2mm以下の流路を有するノズルを設けたことを特徴とする地中潅水装置。
【請求項2】
水源等から圧送ポンプ、主管及び注水管を介して地中潅水する地中潅水装置において、
前記主管に開口部を設け、この開口部に、主管及び注水管を連通するジョイントを接続し、ジョイントには、前記主管内に臨む、内径が2mm以下の流路を有するノズルを設けたことを特徴とする地中潅水装置。
【請求項3】
前記ノズルは、前記主管内に臨む流路の開口部にR形状の面取りを備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の地中潅水装置。
【請求項4】
前記ノズルは、前記主管内の圧力増加により該ノズルの流路から押し出されると共に、前記主管内の圧力が低下すると該ノズルの流路に嵌る針弁を備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の地中潅水装置。
【請求項5】
前記注水管の先端部に、該注水管内の圧力変動により稼動する円錐状の突起体を備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の地中潅水装置。
【請求項6】
前記圧送ポンプと前記主管の間に圧力センサーを配置し、該圧力センサーの出力信号を圧送ポンプの駆動モーターに制御信号として入力し、当該主管に供給する圧力を制御可能としたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の地中潅水装置。
【請求項7】
前記圧力センサーと前記主管の間に、逆止弁及び混合器を配置し、逆止弁及び混合器の間に、水溶性の肥料や土壌改質剤、食塩水や薬剤等の有用液体、あるいは、空気、酸素や二酸化炭素等の有用気体を混入可能としたことを特徴とする請求項6に記載の地中潅水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−187545(P2010−187545A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−31961(P2009−31961)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(509044040)株式会社つくばアグリサイエンス (1)
【出願人】(591160338)株式会社技術開発総合研究所 (12)
【Fターム(参考)】