説明

地中熱交換器、及びそれを利用したヒートポンプ

【課題】例え冷媒回路に繋がった配管が破損しても、前記配管内の冷媒や潤滑油などが土壌に流れ込まないようにする。
【解決手段】管状に形成された本体管(22)の内部に熱媒体が封入され、地中において土壌から採熱を行って熱媒体を相変化させる地中熱交換部(21)を設ける。地中熱交換部(21)に接続されて熱媒体が導入される副熱交換部(25)を設ける。本体管(22)は、縦向きに地中に埋設する。副熱交換部(25)は、熱源側熱交換器(80)を収容する室外機(30)(熱源機(30))に設ける。そして、熱源側熱交換器(80)では、副熱交換部(25)に導入された熱媒体の相変化を利用して該熱媒体と熱交換を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌から採熱を行う地中熱交換器、及びそれを利用したヒートポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷凍サイクルによって暖房を行ういわゆるヒートポンプ式暖房システムには、熱源として地中熱を用いて冷媒を蒸発させるようにしたものがある。このような地中熱を利用したヒートポンプ式暖房システムには、地中から地中熱の回収を行う地中熱交換器が用いられる(例えば特許文献1を参照)。特許文献1の地中熱交換器では、熱媒体(2次媒体)を内部に有したパイプ(本明細書では埋設パイプと呼ぶ)を地中に埋設し、埋設パイプ内の熱媒体を地中熱によって蒸発させる。そして、その埋設パイプからパイプを分岐させてその分岐パイプに熱交換器(説明の便宜のため熱源側熱交換器とよぶ)を取り付け、その熱源側熱交換器で回収した熱をヒートポンプ式暖房システムの熱源として使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第WO2004/111559号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の例では、熱源側熱交換器が埋設パイプの上方、すなわち、地表に面して取り付けられている。熱源側熱交換器は配管でヒートポンプ式暖房システムの冷媒回路に繋がっているので、例えば、経年変化等によってその配管が破損すると、冷媒回路管内の冷媒や潤滑油などが土壌に流れ込む可能性がある。
【0005】
本発明は前記の問題に着目してなされたものであり、例え冷媒回路に繋がった配管が破損しても、前記配管内の冷媒や潤滑油などが土壌に流れ込まないようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するため、第1の発明は、
熱源側熱交換器(80)と利用側熱交換器(60)とを有して蒸気圧縮式冷凍サイクルを行う冷媒回路(10)を備えたヒートポンプであって、
管状に形成された本体管(22)の内部に熱媒体が封入され、地中において土壌から採熱を行って前記熱媒体を相変化させる地中熱交換部(21)と、
前記地中熱交換部(21)に接続されて前記熱媒体が導入される副熱交換部(25)を備え、
前記本体管(22)は、縦向きに地中に埋設され、
前記副熱交換部(25)は、前記熱源側熱交換器(80)を収容する熱源機(30)に設けられ、
前記熱源側熱交換器(80)は、前記副熱交換部(25)に導入された前記熱媒体の相変化を利用して該熱媒体と熱交換を行うことを特徴とする。
【0007】
この構成では、副熱交換部(25)を熱源機(30)内に設けた。そのため、例え、冷媒回路(10)を構成する配管(11)が破損したとしても、配管(11)内の冷媒や潤滑油などは、熱源機(30)内に留まることになる。
【0008】
また、第2の発明は、
第1の発明のヒートポンプにおいて、
前記冷媒回路(10)は、前記熱源側熱交換器(80)が蒸発器として機能し、且つ前記利用側熱交換器(60)が凝縮器として機能するように冷媒が循環することを特徴とする。
【0009】
この構成では、ヒートポンプにおいて、地中の温熱を利用した運転(例えば空調システムの暖房運転)を行うことができる。
【0010】
また、第3の発明は、
第2の発明のヒートポンプにおいて、
前記地中熱交換部(21)内で蒸発した前記熱媒体を前記副熱交換部(25)に搬送する搬送装置(201)を備えたことを特徴とする。
【0011】
この構成では、搬送装置(201)によって、本体管(22)内の気体状の熱媒体が搬送されるので、例えば、本体管(22)と副熱交換部(25)との間の配管の圧力損失が大きい場合などに、熱媒体を効果的に循環させることが可能になる。
【0012】
また、第4の発明は、
第2又は第3の発明のヒートポンプにおいて、
前記冷媒回路(10)に接続されて空気と熱交換を行う空気熱交換器(401)を備え、
前記冷媒回路(10)は、前記空気熱交換器(401)が凝縮器として機能し、且つ前記利用側熱交換器(60)が蒸発器として機能するように冷媒が循環する第1運転モードと、前記熱源側熱交換器(80)が蒸発器として機能し、且つ前記利用側熱交換器(60)が凝縮器として機能するように冷媒が循環する第2運転モードと、前記熱源側熱交換器(80)および前記空気熱交換器(401)が蒸発器として機能し、且つ前記利用側熱交換器(60)が凝縮器として機能するように冷媒が循環する第3運転モードを切替える冷媒切換部(304)を備えていることを特徴とする。
【0013】
この構成では、例えば、空気熱交換器(401)を使用すれば空気の冷熱を利用した運転が可能になり、地中熱交換部(21)を使用した場合には地中の温熱を利用した運転が可能になる。
【0014】
また、第5の発明は、
第1の発明のヒートポンプにおいて、
前記冷媒回路(10)は、膨張機構(70)と、冷媒の循環方向を可逆に切り換える四路切換弁(303)とを備え、
前記四路切換弁(303)と前記膨張機構(70)との間に、前記熱源側熱交換器(80)と、該熱源側熱交換器(80)と直列接続された空気熱交換器(401)とを備えたことを特徴とする。
【0015】
この構成では、例えば利用側熱交換器(60)が蒸発器として機能するように冷媒を冷媒回路(10)で循環させると、熱源側熱交換器(80)では殆ど熱交換が行われないが、空気熱交換器(401)では、空気との熱交換が行われる。
【0016】
また、利用側熱交換器(60)が凝縮器として機能するように冷媒を冷媒回路(10)で循環させると、例えば空気熱交換器(401)を室外に設置して外気温が地中の温度よりも低い場合には、空気熱交換器(401)では殆ど熱交換が行われないが、熱源側熱交換器(80)では、熱交換が行われる。一方、外気温が地中の温度よりも高い場合には、空気熱交換器(401)と熱源側熱交換器(80)の両方で熱交換が行われる。
【0017】
また、第6の発明は、
第1の発明のヒートポンプにおいて、
前記本体管(22)と前記副熱交換部(25)との間に設けられ、前記前記副熱交換部(25)内で蒸発した前記熱媒体を地中熱交換部(21)に搬送する搬送装置(201)と、
前記本体管(22)に設けられ、該本体管(22)の底まで延びて、液状の前記熱媒体を前記副熱交換部(25)から該本体管(22)の底に導入する冷房用液配管(202)と、を備え、
前記冷媒回路(10)は、前記熱源側熱交換器(80)が凝縮器として機能し、且つ前記利用側熱交換器(60)が蒸発器として機能するように冷媒が循環することを特徴とする。
【0018】
この構成では、前記熱源側熱交換器(80)が凝縮器として機能し、且つ前記利用側熱交換器(60)が蒸発器として機能する。そのため、ヒートポンプを、地中の冷熱を利用するシステム(例えば冷房システム)として使用できる。
【0019】
また、第7の発明は、
第1の発明のヒートポンプにおいて、
前記本体管(22)と前記副熱交換部(25)との間に設けられ、前記副熱交換部(25)内で蒸発した前記熱媒体を地中熱交換部(21)に搬送する搬送装置(201)と、
前記本体管(22)に設けられ、該本体管(22)の底まで延びて、液状の前記熱媒体を前記副熱交換部(25)から該本体管(22)の底に導入する冷房用液配管(202)と、
前記本体管(22)に設けられ、液状の前記熱媒体を前記副熱交換部(25)から該本体管(22)の内周面に導入する暖房用液配管(23)と、
を備えたことを特徴とする。
【0020】
この構成では、熱源側熱交換器(80)を蒸発器としても使用できるし、凝縮器としても使用できる。すなわち、このヒートポンプは、地中の温熱の利用した運転と、及び冷熱の利用した運転とが可能なヒートポンプ(例えば冷暖房システム)を構成することができる。
【0021】
また、第8の発明は、
第1から第4、及び第7の発明のうちの何れか1つのヒートポンプにおいて、
前記地中熱交換部(21)は、
前記本体管(22)の上部に設けられ、液状の前記熱媒体を前記副熱交換部(25)から該本体管(22)内に導入する液配管(23)と、
前記本体管(22)内の気体状の熱媒体を、接続された前記副熱交換部(25)内に導入するガス配管(24)と、
前記液配管(23)から導入された液状の前記熱媒体を受けて本体管(22)の内周面に拡散させる拡散板(504)と、
を備えていることを特徴とする。
【0022】
また、第9の発明は、
第8の発明のヒートポンプにおいて、
前記本体管(22)は、内周面に、周方向の溝(507)が形成されていることを特徴とする。
【0023】
また、第10の発明は、
第8の発明のヒートポンプにおいて、
前記拡散板(504)は、前記本体管(22)の長手方向に間隔をあけて複数設けられていることを特徴とする。
【0024】
また、第11の発明は、
第1から第4、及び第7の発明のうちの何れか1つのヒートポンプにおいて、
前記地中熱交換部(21)は、液状の前記熱媒体を前記副熱交換部(25)から導入する螺旋状の液配管(23)が前記本体管(22)に設けられ、
前記液配管(23)には、液状の前記熱媒体を本体管(22)の内周面に導入する流出孔(502)が複数設けられていることを特徴とする。
【0025】
また、第12の発明は、
第1から第4、及び第7の発明のうちの何れか1つのヒートポンプにおいて、
前記地中熱交換部(21)は、前記本体管(22)の上部に、液状の前記熱媒体を前記副熱交換部(25)から前記本体管(22)の内周面に導入する液配管(23)を備え、
前記液配管(23)は、前記本体管(22)内で複数の分岐管(501)に分岐していることを特徴とする。
【0026】
また、第13の発明は、
第12の発明のヒートポンプにおいて、
前記分岐管(501)には、複数種類の長さのものがあり、
それぞれの分岐管(501)は、先端から液状の前記熱媒体を前記本体管(22)の内周面に導入することを特徴とする。
【0027】
また、第14の発明は、
第12の発明のヒートポンプにおいて、
それぞれの分岐管(501)は、前記本体管(22)の内周面に沿って該本体管(22)の長手方向に延びる延在部(503)を有し、
それぞれの延在部(503)には、前記本体管(22)の内周面に液状の前記熱媒体を導入する流出孔(502)が複数設けられていることを特徴とする。
【0028】
これらの構成では、本体管(22)の内周面を、液状の熱媒体で均一に濡らすことが可能になる。
【0029】
また、第15の発明は、
第1から第14の発明のうちの何れか1つのヒートポンプにおいて、
前記地中熱交換部(21)は、複数設けられ、
それぞれの地中熱交換部(21)は、1つの副熱交換部(25)に並列に配管接続されていることを特徴とする。
【0030】
この構成では、複数の地中熱交換部(21)によって地中熱の温熱あるいは冷熱の採熱が行われる。
【0031】
また、第16の発明は、
土壌から採熱を行う地中熱交換器であって、
管状に形成された本体管(22)の内部に熱媒体が封入され、地中において土壌から採熱を行って前記熱媒体を相変化させる地中熱交換部(21)と、
ヒートポンプの熱源側熱交換器(80)を収容する熱源機(30)に設けられ、前記地中熱交換部(21)に接続されて前記熱媒体が導入され、該熱媒体が、熱交換を行う副熱交換部(25)と、
を備えたことを特徴とする。
【0032】
この構成では、副熱交換部(25)を熱源機(30)内に設けたため、例え、冷媒回路(10)を構成する配管(11)が破損したとしても、配管(11)内の冷媒や潤滑油などは、熱源機(30)内に留まることになる。
【0033】
また、第17の発明は、
第16の発明の地中熱交換器において、
前記地中熱交換部(21)は、
前記本体管(22)の上部に設けられ、液状の前記熱媒体を前記副熱交換部(25)から該本体管(22)内に導入する液配管(23)と、
前記本体管(22)内の気体状の熱媒体を接続された前記熱交換部(27,28)内に導入するガス配管(24)と、
前記液配管(23)から導入された液状の前記熱媒体を受けて本体管(22)の内周面に拡散させる拡散板(504)と、
を備えていることを特徴とする。
【0034】
また、第18の発明は、
第17の発明の地中熱交換器において、
前記本体管(22)は、内周面に、周方向の溝(507)が形成されていることを特徴とする。
【0035】
また、第19の発明は、
第17の発明の地中熱交換器において、
前記拡散板(504)は、前記本体管(22)の長手方向に間隔をあけて複数設けられていることを特徴とする。
【0036】
また、第20の発明は、
第16の発明の地中熱交換器において、
前記地中熱交換部(21)は、液状の前記熱媒体を前記副熱交換部(25)から導入する螺旋状の液配管(23)が前記本体管(22)に設けられ、
前記液配管(23)には、液状の前記熱媒体を本体管(22)の内周面に導入する流出孔(502)が複数設けられていることを特徴とする。
【0037】
また、第21の発明は、
第16の発明の地中熱交換器において、
前記地中熱交換部(21)は、前記本体管(22)の上部に、液状の前記熱媒体を前記副熱交換部(25)から前記本体管(22)の内周面に導入する液配管(23)を備え、
前記液配管(23)は、前記本体管(22)内で複数の分岐管(501)に分岐していることを特徴とする。
【0038】
また、第22の発明は、
第21の発明の地中熱交換器において、
前記分岐管(501)には、複数種類の長さのものがあり、
それぞれの分岐管(501)は、先端から液状の前記熱媒体を前記本体管(22)の内周面に導入することを特徴とする。
【0039】
また、第23の発明は、
第21の発明の地中熱交換器において、
それぞれの分岐管(501)は、前記本体管(22)の内周面に沿って該本体管(22)の長手方向に延びる延在部(503)を有し、
それぞれの延在部(503)には、前記本体管(22)の内周面に液状の前記熱媒体を導入する流出孔(502)が複数設けられていることを特徴とする。
【0040】
これらの発明によれば、本体管(22)の内周面を、液状の熱媒体で均一に濡らすことが可能になる。
【発明の効果】
【0041】
第1の発明によれば、破損した配管(11)から漏れ出した冷媒回路(10)内の冷媒や潤滑油などが熱源機(30)内に留まるので、冷媒や潤滑油などが土壌に流れ込まないようにすることができる。すなわち、本発明は環境負荷がより小さなヒートポンプを提供することが可能になる。
【0042】
また、第2の発明によれば、地中の温熱を利用したヒートポンプ(例えば空調システム)において、第1の発明の効果を得ることが可能になる。
【0043】
また、第3の発明によれば、熱媒体を効果的に循環させることが可能になるので、システムの効率が向上する。
【0044】
また、第4の発明によれば、地中の温熱を利用した運転(例えば暖房運転)と空気の冷熱を利用した運転(例えば冷房運転)の両方を行うようにシステムを構成した場合に、前記の効果を得ることが可能になる。
【0045】
また、第5の発明によれば、利用側熱交換器(60)の機能が凝縮器及び蒸発器の何れであっても、熱源側熱交換器(80)(地中熱交換部(21))、及び空気熱交換器(401)の少なくとも一方が熱交換を行う。それゆえ、冷媒回路(10)において効率のよい冷凍サイクルを行うことが可能になる。
【0046】
また、第6の発明によれば、地中の冷熱を利用したヒートポンプにおいて、前記の効果を得ることが可能になる。
【0047】
また、第7の発明によれば、温熱を利用した運転(例えば暖房運転)と冷熱を利用した運転(例えば冷房運転)の両方を、地中熱交換部(21)によって行うようにシステムを構成した場合にも、前記の効果を得ることが可能になる。
【0048】
また、第8から第14の発明によれば、本体管(22)の内周面を、液状の熱媒体で均一に濡らすことが可能になるので、地中熱交換部(21)において、液状の熱媒体を効率よく蒸発させることが可能になる。
【0049】
また、第15の発明によれば、地中熱交換部(21)が複数設けられたことによって、ヒートポンプの効率が向上する。
【0050】
また、副熱交換部(25)を共用したことにより、地中熱交換部(21)の複数設置が容易になる。例えば、副熱交換部(25)を地中熱交換部(21)毎に設けることも考えられるが、その場合には冷媒回路(10)を分岐させる必要がある。この冷媒回路(10)には、気体状の冷媒と液体状の冷媒が混在しているので、冷媒回路(10)の分岐には困難がともなう場合がある。しかしながら、副熱交換部(25)を共用すればこのような分岐が不要になり、容易にシステムを構築できるのである。
【0051】
また、第16の発明によれば、破損した配管(11)から漏れ出した冷媒回路(10)内の冷媒や潤滑油などが熱源機(30)内に留まるので、冷媒や潤滑油などが土壌に流れ込まないようにすることができる。すなわち、本発明は環境負荷がより小さな地中熱交換器を提供することが可能になる。
【0052】
また、第17から第23の発明によれば、本体管(22)の内周面を、液状の熱媒体で均一に濡らすことが可能になるので、液状の熱媒体を効率よく蒸発させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、本発明の実施形態1に係る空調システムのシステム図である。
【図2】図2は、地中熱交換部を地中に設置した状態を模式的に示す図である。
【図3】図3は、実施形態1の変形例に係る空調システムのシステム図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態2に係る空調システムのシステム図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態3に係る空調システムのシステム図であり、暖房運転時の状態を示す図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態3に係る空調システムの暖房運転時の状態を示す図である。
【図7】図7は、本発明の実施形態4に係る空調システムのシステム図である。
【図8】図8は、本発明の実施形態4に係る空調システムの暖房運転状態を説明する図である。
【図9】図9は、本発明の実施形態5に係る空調システムのシステム図である。
【図10】図10は、本発明の実施形態5に係る空調システムのシステム図であり、暖房運転状態を説明する図である。
【図11】図11は、地中熱交換器の変形例における断面図である。
【図12】図12は、拡散板の断面図である。
【図13】図13は、拡散板の平面図である。
【図14】図14は、溝の断面形状を示す図である。
【図15】図15は、流出孔の開口方向を説明する図である。
【図16】図16は、流出孔の周方向位置を示す図である。
【図17】図17は、分岐管の周方向位置を示す図である。
【図18】図18は、図11(E)の地中熱交換器の変形例を示す図である。
【図19】図19は、流出孔の開口方向を説明する図である。
【図20】図20は、分岐管の周方向位置を示す図である。
【図21】図21は、複数の地中熱交換部を有した空調システムの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、本発明のヒートポンプの一例として空調システムの実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。また、以下の各実施形態や変形例の説明において、一度説明した構成要素と同様の機能を有する構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0055】
《発明の実施形態1》
〈全体構成〉
実施形態1では、地中から採熱した熱によって暖房運転を行う空調システムについて説明する。図1は、本発明の実施形態1に係る空調システム(1)のシステム図である。空調システム(1)は、図1に示すように、冷媒回路(10)と地中熱交換器(20)とを備えている。この地中熱交換器(20)が地中から採熱を行う熱交換器である。また、この冷媒回路(10)には、圧縮機(50)、室内熱交換器(60)(利用側熱交換器)、膨張弁(70)、及び熱源側熱交換器(80)が配管(11)で接続されている。また、冷媒回路(10)には、冷媒が充填されている。そして、熱源側熱交換器(80)は、冷媒回路(10)の冷媒と、地中熱交換器(20)内の熱媒体(後述)とを熱交換させるようになっている。
【0056】
〈各部の構成〉
圧縮機(50)は、前記冷媒を吸入ポートから吸入して圧縮し、圧縮した冷媒を吐出ポートから吐出する。具体的には、この圧縮機(50)には、例えばスクロール圧縮機などの種々の圧縮機を採用できる。この冷媒回路(10)では、圧縮機(50)は、吐出ポートが室内熱交換器(60)に接続され、吸入ポートが熱源側熱交換器(80)に接続されている。なお、圧縮機(50)には潤滑油が必要なので、この圧縮機(50)内には潤滑油が充填されている。潤滑油の一部は、圧縮機(50)の運転に伴って、冷媒回路(10)を循環する。
【0057】
室内熱交換器(60)は、冷媒を室内空気と熱交換させるための空気熱交換器である。この室内熱交換器(60)には、例えば、クロスフィン型のフィン・アンド・チューブ熱交換器などを採用することができる。この空調システム(1)では、室内熱交換器(60)は、空気調和を行う室内に配置されたいわゆる室内機(40)に組み込まれている。また、冷媒回路(10)においては、室内熱交換器(60)の一端は、既述の通り圧縮機(50)の吐出ポートに接続され、他の一端は膨張弁(70)に接続されている。そして、暖房を行う際に、圧縮機(50)から室内熱交換器(60)へ流入した高圧冷媒の熱を室内空気に放熱させる。なお、この室内熱交換器(60)の近傍には、室内ファン(図示は省略)が設置されている。室内ファンは、調和空気を室内へ送風する。
【0058】
膨張弁(70)は、流入孔が室内熱交換器(60)に接続され、該室内熱交換器(60)から流入した冷媒を膨張させて、所定の圧力まで減圧させてから、熱源側熱交換器(80)に流出させる。膨張弁(70)は、本発明の膨張機構の一例である。
【0059】
熱源側熱交換器(80)は、地中熱交換器(20)内の熱媒体(後述)と熱交換を行うようになっている。熱源側熱交換器(80)の構成は後述する。
【0060】
上述の圧縮機(50)、膨張弁(70)、及び熱源側熱交換器(80)は、1つのケーシング内に配置されて、いわゆる室外機(30)として屋外に設置されている。この室外機(30)は、本発明の熱源機の一例である。なお、熱源側熱交換器(80)の配置には特徴があるので、この点も後に詳述する。
【0061】
地中熱交換器(20)は、土壌から熱を採熱し、熱源側熱交換器(80)と熱交換するようになっている。以下では、地中熱交換器(20)の構成について詳述する。
【0062】
〈地中熱交換器(20)の構成〉
地中熱交換器(20)は、地中熱交換部(21)、及び副熱交換部(25)を備えている。この地中熱交換部(21)と副熱交換部(25)とは、互いに配管接続されている。また、この地中熱交換器(20)内には、熱媒体として、所定の量の二酸化炭素が封入されている。この熱媒体は、後述するように、地中熱交換部(21)において地中熱によって蒸発し、副熱交換部(25)内で凝縮する。
【0063】
−地中熱交換部(21)−
地中熱交換部(21)は、地中に埋設されて土壌から採熱を行う。ここでの土壌とは、種々の地層を含む概念である。例えば、図2は、地中熱交換部(21)を地中に設置した状態を模式的に示す図である。図2に示すように、地層には、主に土砂のみで形成された層、土砂と水を含んだ層、主に水を含んだ層、さらには、岩石が連続して分布している岩盤等がある。この地中熱交換部(21)は何れの地層に設置してもよい。図2では、これらの各層に渡り地中熱交換部(21)が設置された状態を示しているが、例えば、何れか一つの地層のみにおいて地中熱交換部(21)が熱交換を行うように設置してもよい。なお、図2において、「HP」と記載されているのは、空調システム(1)の本体部分(地中熱交換部(21)以外の部分)を示している。
【0064】
この地中熱交換部(21)は、具体的には、図1に示すように、本体管(22)、液配管(23)、及びガス配管(24)を備えている。
【0065】
本体管(22)は、両端が閉じた管状に形成され、地中に縦向きに埋設される。この例では、本体管(22)は、5m程度の長さを有した鋼管で構成している。本体管(22)を埋設する場合は、垂直に地中に埋設するのが理想であるが、ある程度の傾斜は許容される。なお、この例では、本体管(22)は、その下端が10m程度に達するように埋設してある。
【0066】
液配管(23)は、副熱交換部(25)内に溜っている液状の熱媒体を本体管(22)内に戻すための配管である。この例では、液配管(23)は、本体管(22)の上方側(本体管(22)を埋設した状態で地表側となる側)から該本体管(22)内に挿入され、一端が副熱交換部(25)に接続されている。また、液配管(23)の他の一端は、本体管(22)内の上方において、本体管(22)内に開口している。
【0067】
また、ガス配管(24)は、本体管(22)内の気体状の熱媒体を副熱交換部(25)内に送るための配管である。このガス配管(24)も、本体管(22)の上方側から、該本体管(22)内に挿入され、ガス配管(24)の一端が、副熱交換部(25)に接続されている。ガス配管(24)の他の一端は、本体管(22)内の上方の空間において開口している。なお、液配管(23)及びガス配管(24)と、副熱交換部(25)との接続については後に詳述する。
【0068】
−副熱交換部(25)−
副熱交換部(25)は、地中熱交換部(21)内で蒸発した気体状の熱媒体が、ガス配管(24)を介して導入され、この気体状の熱媒体と、熱源側熱交換器(80)内の冷媒とを熱交換させるようになっている。この例では、副熱交換部(25)は、密閉容器である。そして、副熱交換部(25)は、室外機(30)内に設置されている。
【0069】
この副熱交換部(25)には、ガス配管(24)が接続され、ガス配管(24)は、副熱交換部(25)内の、該副熱交換部(25)の設置状態で上方となる側(以下、説明の便宜のため上面側と呼ぶ)で開口している。これにより、後述するように、本体管(22)内で蒸発してガス状になった熱媒体が、副熱交換部(25)内に導入される。
【0070】
この副熱交換部(25)内には、上面側の空間に、前記熱源側熱交換器(80)が配置されている。熱源側熱交換器(80)は、副熱交換部(25)内において、気体状の熱媒体と、冷媒回路(10)の冷媒とを熱交換させる。具体的には、熱源側熱交換器(80)には、液状の冷媒が流入するので、熱源側熱交換器(80)内の冷媒は、副熱交換部(25)内の気体状の熱媒体から吸熱して蒸発する。このとき、副熱交換部(25)内の熱媒体は、凝縮して液状となって、該副熱交換部(25)の設置状態で下方となる側(以下、説明の便宜のため底面側と呼ぶ)に溜ることになる。
【0071】
また、副熱交換部(25)には、底面側から液配管(23)が挿入され、該液配管(23)は、副熱交換部(25)内の底面で開口している。これにより、液配管(23)は、副熱交換部(25)内に溜った液状の前記熱媒体を本体管(22)内に流出させることができる。
【0072】
なお、熱源側熱交換器(80)の形式は、特には限定されない。例えば、熱源側熱交換器(80)には、いわゆるプレート式熱交換器などの種々の形式のものを採用できる。
【0073】
〈運転動作〉
本実施形態では、圧縮機(50)が運転状態にされると、圧縮された冷媒(ガス冷媒)が圧縮機(50)の吐出ポートから吐出される。圧縮機(50)から吐出された冷媒は、室内熱交換器(60)へ送られる。そして、室内熱交換器(60)に流入した冷媒は、室内熱交換器(60)で室内空気へ放熱する。この室内熱交換器(60)では室内空気が加熱され、加熱された室内空気が前記室内ファンによって室内へ送り返される。室内熱交換器(60)で放熱した冷媒は、膨張弁(70)へ送られる。膨張弁(70)に流入した冷媒は、膨張弁(70)を通過する際に減圧されて液状となって、熱源側熱交換器(80)に流入する。なお、冷媒回路(10)では、圧縮機(50)の運転に伴って、圧縮機(50)用の潤滑油の一部が循環する。
【0074】
このとき、本体管(22)内では、本体管(22)の内周面と、液状の熱媒体と熱交換を行うことで、熱媒体は蒸発して気体状になる。すなわち、本体管(22)は、地中において土壌から採熱を行って熱媒体を相変化させるのである。このように熱を熱媒体に奪われた本体管(22)は土壌から採熱し、これにより、本体管(22)の熱が補われる。
【0075】
一方、気体状になった熱媒体は、ガス配管(24)を介して、副熱交換部(25)に流入する。既述の通り、熱源側熱交換器(80)には、液状の冷媒が流入しているので、熱源側熱交換器(80)内の冷媒は、副熱交換部(25)内の気体状の熱媒体から吸熱して蒸発する。これにより、副熱交換部(25)内の熱媒体は、凝縮して液状となって、該副熱交換部(25)の底面側に溜る。すなわち、熱源側熱交換器(80)は、副熱交換部(25)に導入された熱媒体の相変化を利用して該熱媒体と熱交換を行うのである。
【0076】
副熱交換部(25)の底面に溜った液状の熱媒体は、液配管(23)を介して、本体管(22)内に、該本体管(22)の上方側から導入される。本体管(22)に導入された熱媒体は、本体管(22)の内周面を伝って、本体管(22)の下方へと向かって流れて行く。このように、液状の熱媒体が本体管(22)の内周面を伝って流れることで、熱媒体は、該内周面と熱交換して再び蒸発する。蒸発した熱媒体は、ガス配管(24)を通って副熱交換部(25)内に流入する。すなわち、地中熱交換器(20)では、熱媒体が自然循環するのである。
【0077】
一般的に、ガス配管(24)等では圧力損失が起こるので、本体管(22)内の圧力によっては、十分に熱媒体を循環させることができないとも考えられる。しかしながら、地中熱交換部(21)と副熱交換部(25)との間には十分なヘッド差(H)があるので、熱媒体を容易に循環させることができる。なお、図1等において、Peは本体管(22)内の熱媒体の圧力(蒸発圧力)、Pcは、副熱交換部(25)内の熱媒体の圧力(凝縮圧力)、ΔPはガス配管(24)における圧力損失である。
【0078】
以上の動作が繰り返され、冷媒回路(10)では、熱源側熱交換器(80)が蒸発器として機能し、且つ利用側熱交換器(60)が凝縮器として機能する。
【0079】
〈本実施形態における効果〉
以上のように、本実施形態では、副熱交換部(25)を室外機(30)(熱源機)内に設けた。そのため、例え、冷媒回路(10)を構成する配管(11)が破損したとしても、破損した配管(11)から流れ出した冷媒や潤滑油などは、室外機(30)内に留まる。したがって、本実施形態では、破損した配管(11)から流出した冷媒や潤滑油などが土壌に流れ込まないようにすることができる。すなわち、本実施形態は環境負荷がより小さな空調システム(暖房システム)を提供できるのである。
【0080】
また、地中熱交換部(21)と副熱交換部(25)との間で熱媒体が自然循環するので、地中からの採熱に動力を必要としない。しかも、地中熱交換部(21)と副熱交換部(25)に分けて地中熱交換器(20)を構成したので、地中熱交換部(21)の構造が簡単になる。
【0081】
《実施形態1の変形例》
なお、例えば、前記圧力損失が大きいことなどが原因で、熱媒体の自然循環を十分に行えない場合には、地中熱交換部(21)内で蒸発した熱媒体を副熱交換部(25)に搬送するガスポンプ(201)(搬送装置)を設けてもよい。図3は、実施形態1の変形例に係る空調システムのシステム図である。この例では、図3に示すように、ガス配管(24)の途中にガスポンプ(201)を設けてある。なお、図3において、Hmaxはヘッド差、Hpumpはガスポンプ(201)による圧力上昇分である。
【0082】
《発明の実施形態2》
本発明の実施形態2では、冷房運転が可能な空調システムについて説明する。図4は、本発明の実施形態2に係る空調システム(2)のシステム図である。この空調システム(2)は、実施形態1の空調システム(1)に対してガスポンプ(201)を追加するとともに、副熱交換部(25)、及び地中熱交換部(21)の構成に変更を加えたものである。
【0083】
具体的には、ガスポンプ(201)は、ガス配管(24)の途中に設けられ、副熱交換部(25)内の気体状の熱媒体を地中熱交換部(21)内に搬送するようになっている。そのため、この例では、ガス配管(24)は、副熱交換部(25)内の上面側の空間で開口するように配置されている。
【0084】
また、熱源側熱交換器(80)は、副熱交換部(25)内の液状の熱媒体と熱交換を行うようになっている。この例では、熱源側熱交換器(80)は、副熱交換部(25)の底面に面して配置され、副熱交換部(25)に溜った液状の熱媒体に接するようになっている。
【0085】
また、地中熱交換部(21)では、実施形態1とは異なり、液配管(23)に代えて、冷房用液配管(202)が設けられている。冷房用液配管(202)は、本体管(22)の上方側から該本体管(22)内に挿入され、一端が副熱交換部(25)に接続されている。また、冷房用液配管(202)の他の一端は、本体管(22)の低面付近まで延びている。このように冷房用液配管(202)を配置したのは、該冷房用液配管(202)によって、本体管(22)の底の溜った液状の熱媒体を副熱交換部(25)に搬送するためである。
【0086】
〈運転動作〉
この空調システム(2)では、運転開始前は、地中熱交換部(21)では、本体管(22)の内周面で熱媒体が冷却されて液体となって本体管(22)の底に溜っている。また、副熱交換部(25)内には気体状の熱媒体も存在している。ここで、空調システム(2)において冷房運転を行うには、圧縮機(50)とガスポンプ(201)を運転状態にする。
【0087】
ガスポンプ(201)が運転状態になると、副熱交換部(25)内の気体状の熱媒体が地中熱交換部(21)内に搬送される。すると、本体管(22)内の圧力が上昇し、本体管(22)内に溜っている液状の熱媒体が、冷房用液配管(202)を通って副熱交換部(25)内に搬送され、副熱交換部(25)の底に溜ることになる。
【0088】
一方、圧縮機(50)が運転状態にされると、圧縮された冷媒(ガス冷媒)が圧縮機(50)の吐出ポートから吐出される。圧縮機(50)から吐出された冷媒は、熱源側熱交換器(80)へ送られる。熱源側熱交換器(80)では、熱源側熱交換器(80)内の液状の熱媒体と、副熱交換部(25)内の気体状の熱媒体とが熱交換を行う。これにより、熱源側熱交換器(80)内を流通しているガス冷媒が凝縮する。すなわち、熱源側熱交換器(80)では、副熱交換部(25)に導入された熱媒体の相変化を利用して該熱媒体と冷媒とが熱交換を行うのである。
【0089】
熱源側熱交換器(80)で凝縮した冷媒は、膨張弁(70)に導入され、膨張弁(70)で減圧されてから室内熱交換器(60)に導入される。室内熱交換器(60)に流入した冷媒は、室内空気から吸熱して蒸発する。これにより、室内熱交換器(60)では室内空気が冷却され、冷却された室内空気が前記室内ファンによって室内へ送り返される。室内熱交換器(60)で蒸発した冷媒は、圧縮機(50)の吸入ポートに導入される。圧縮機(50)は、この冷媒を吸入して圧縮し、再び熱源側熱交換器(80)へ吐出する。
【0090】
一方、熱源側熱交換器(80)において冷媒と熱交換を行った熱媒体は、蒸発することになる。蒸発した熱媒体は、副熱交換部(25)内の空間に溜る。そして、空間に溜った気体状の熱媒体は、ガスポンプ(201)によって、地中熱交換部(21)に搬送される。地中熱交換部(21)に搬送された熱媒体は、本体管(22)の内周面に放熱して凝縮する。すなわち、この例でも地中熱交換部(21)は、地中において土壌から採熱を行って熱媒体を相変化させるのである。
【0091】
〈本実施形態における効果〉
以上のように、冷房を行うように空調システムを構成した場合にも、実施形態1と同様に、副熱交換部(25)を室外機(30)(熱源機)内に設けることができる。それゆえ、本実施形態においても、例え、冷媒回路(10)を構成する配管(11)が破損したとしても、配管(11)内の冷媒や潤滑油などが土壌に流れ込まないようにすることができる。すなわち、本実施形態は環境負荷がより小さな空調システム(冷房システム)を提供できるのである。
【0092】
《発明の実施形態3》
本発明の実施形態3では、暖房運転と冷房運転の両方が可能な空調システムについて説明する。図5は、本発明の実施形態3に係る空調システム(3)のシステム図である。また、図6は、空調システム(2)の暖房運転時の状態を示す図である。この空調システム(3)は、図5等に示すように、実施形態1の空調システム(1)に、第1、第2熱源側熱交換部(301,302)、四路切換弁(303)、冷媒切換部(304)、及びガスポンプ(201)(搬送装置)を追加している。
【0093】
また、地中熱交換器(20)は、暖房運転と冷房運転の両方に使用できるように、実施形態1の地中熱交換器(20)に変更を加えている。具体的には、暖房時に使用していた液配管(23)(以下では暖房用液配管とも呼ぶ)に加えて、冷房用液配管(202)(実施形態2を参照)を追加している。
【0094】
〈第1、第2熱源側熱交換部(301,302)〉
本実施形態では、第1、第2熱源側熱交換部(301,302)によって、熱源側熱交換器(80)を構成している。第1熱源側熱交換部(301)は、実施形態1の熱源側熱交換器(80)と同様の機能を有している。すなわち、この第1熱源側熱交換部(301)では、気体状の熱媒体と、冷媒回路(10)の冷媒とが熱交換を行うようになっている。また、第2熱源側熱交換部(302)は、実施形態2の熱源側熱交換器(80)と同様の機能を有している。すなわち、第2熱源側熱交換部(302)では、副熱交換部(25)内の液状の熱媒体と、冷媒回路(10)の冷媒とが熱交換を行うようになっている。この第2熱源側熱交換部(302)も、副熱交換部(25)の底面に面して配置され、副熱交換部(25)に溜った液状の熱媒体に接するようになっている。
【0095】
〈四路切換弁(303)〉
四路切換弁(303)は、第1から第4ポート(P1,…,P4)を備えている。この四路切換弁(303)は、第1ポート(P1)と第4ポート(P4)とが互いに連通し且つ第2ポート(P2)と第3ポート(P3)とが互いに連通する第1状態(図5に示す状態)と、第1ポート(P1)と第2ポート(P2)とが互いに連通し且つ第3ポート(P3)と第4ポート(P4)とが互いに連通する第2状態(図6に示す状態)とを切り換えできるようになっている。この例では、四路切換弁(303)は、第1ポート(P1)が室内熱交換器(60)に接続され、第2ポート(P2)が圧縮機(50)の吐出ポートに接続されている。
【0096】
〈冷媒切換部(304)〉
冷媒切換部(304)は、第1〜第6開閉バルブ(311,…,316)、第1、第2流量調整弁(317,318)を備えている。
【0097】
第1、第2開閉バルブ(311,312)は、暖房運転時と冷房運転時とで、使用する熱交換部を切替えるためのバルブである。この空調システム(3)では、暖房運転時には第1熱源側熱交換部(301)を使用し、冷房運転時には第2熱源側熱交換部(302)を使用する。具体的には、冷媒回路(10)では、四路切換弁(303)の第3ポート(P3)が、第1開閉バルブ(311)を介して第1熱源側熱交換部(301)の一端と接続されている。また、この第3ポート(P3)は、第2開閉バルブ(312)を介して第2熱源側熱交換部(302)の一端とも接続されている。第1、第2熱源側熱交換部(301,302)、及び第1、第2開閉バルブ(311,312)を、図5のように接続することで、第1開閉バルブ(311)を閉状態、且つ第2開閉バルブ(312)を開状態とすれば第2熱源側熱交換部(302)が冷媒回路(10)に接続される(図5を参照)。また、第1開閉バルブ(311)を開状態、且つ第2開閉バルブ(312)を閉状態とすれば、第1熱源側熱交換部(301)が冷媒回路(10)に接続される(図6を参照)。
【0098】
第3、第4開閉バルブ(313,314)は、暖房運転時と冷房運転時とで、使用する液配管を切替えるためのバルブである。具体的には、この空調システム(3)では、暖房運転時には暖房用液配管(23)を使用し、冷房運転時には冷房用液配管(202)を使用する。この例では、図5に示すように、暖房用液配管(23)は、第3開閉バルブ(313)を介して副熱交換部(25)に接続され、冷房用液配管(202)は、第4開閉バルブ(314)を介して副熱交換部(25)に接続されている。このように配管することで、第3開閉バルブ(313)を閉状態、且つ第4開閉バルブ(314)を開状態とすることで、これらの液配管のうち冷房用液配管(202)のみに熱媒体が流通する(図5を参照)。また、第3開閉バルブ(313)を開状態、且つ第4開閉バルブ(314)を閉状態とすることで、これらの液配管のうち暖房用液配管(23)のみに熱媒体が流通する(図6を参照)。
【0099】
第5、第6開閉バルブ(315,316)は、暖房運転時と冷房運転時とで、気体状の熱媒体の流路を切り替えるようになっている。具体的には、図5に示すように、第5開閉バルブ(315)を閉状態、第6開閉バルブ(316)を開状態とすると、ガスポンプ(201)の吸入ポートが副熱交換部(25)に繋がり、吐出ポートが第1流量調整弁(317)を介してガス配管(24)に繋がる。これにより、副熱交換部(25)内の気体状の熱媒体を、ガスポンプ(201)によって本体管(22)に搬送することができる。このとき、第1、第2流量調整弁(317,318)の開度を調整することで、熱媒体の流量を調整することができる。
【0100】
また、第5開閉バルブ(315)を開状態、第6開閉バルブ(316)を閉状態とすると、本体管(22)と副熱交換部(25)とは、第1流量調整弁(317)を介して互いにつながることになる。これにより、本体管(22)内の気体状の熱媒体を、副熱交換部(25)に流入させることができる。このときも、第1、第2流量調整弁(317,318)の開度を調整することで、熱媒体の流量を調整することができる。
【0101】
この構成により、空気熱交換器(401)が凝縮器として機能し、且つ室内熱交換器(60)が蒸発器として機能するように冷媒が循環する第1運転モード(冷房運転)と、冷媒切換部(304)は、熱源側熱交換器(80)が蒸発器として機能し、且つ室内熱交換器(60)(利用側熱交換器)が凝縮器として機能するように冷媒が循環する第2運転モード(暖房運転)とを切替えるのである。すなわち、本実施形態の冷媒切換部(304)は、本発明の切換部の一例である。
【0102】
〈運転動作〉
空調システム(4)において冷房運転を行うには、四路切換弁(303)を第1状態に切替える。また、第1開閉バルブ(311)を閉状態、且つ第2開閉バルブ(312)を開状態として、第2熱源側熱交換部(302)を冷媒回路(10)に接続する(図5を参照)。また、第3開閉バルブ(313)を閉状態、且つ第4開閉バルブ(314)を開状態として、冷房用液配管(202)に熱媒体が流通できるようにする。また、第5開閉バルブ(315)を閉状態、且つ第6開閉バルブ(316)を開状態として、ガスポンプ(201)の吸入ポートが副熱交換部(25)に繋がるようにする。
【0103】
この状態で、圧縮機(50)とガスポンプ(201)を運転状態にする。すると、実施形態2の空調システム(2)と同様にして冷房運転が行われる。
【0104】
また、空調システム(4)において暖房運転を行うには、四路切換弁(303)を第2状態に切替える。また、第1開閉バルブ(311)を開状態、且つ第2開閉バルブ(312)を閉状態として、第1熱源側熱交換部(301)を冷媒回路(10)に接続する(図6を参照)。また、第3開閉バルブ(313)を開状態、且つ第4開閉バルブ(314)を閉状態として、暖房用液配管(23)に熱媒体が流通できるようにする。また、第5開閉バルブ(315)を開状態、且つ第6開閉バルブ(316)を閉状態として、本体管(22)と副熱交換部(25)とが、第1流量調整弁(317)を介して互いにつながるようにする。この状態で、圧縮機(50)を運転状態にする。すると、実施形態1の空調システム(1)と同様にして暖房運転が行われる。
【0105】
〈本実施形態における効果〉
以上のように、暖房運転と冷房運転の両方を行うように空調システムを構成した場合にも、実施形態1と同様に、副熱交換部(25)を室外機(30)(熱源機)内に設けることができる。それゆえ、本実施形態においても、例え、冷媒回路(10)を構成する配管(11)が破損したとしても、配管(11)内の冷媒や潤滑油などが土壌に流れ込まないようにすることができる。すなわち、本実施形態は環境負荷がより小さな空調システム(冷暖房システム)を提供できるのである。
【0106】
《発明の実施形態4》
本発明の実施形態4でも、暖房運転と冷房運転の両方が可能な空調システムについて説明する。図7は、本発明の実施形態4に係る空調システム(4)のシステム図である。また、図8は、空調システム(4)の暖房運転状態を説明する図である。本実施形態の空調システム(4)は、図7や図8に示すように、実施形態1の空調システム(1)に空気熱交換器(401)、四路切換弁(303)、及び冷媒切換部(304)を追加したものである。
【0107】
空気熱交換器(401)は、冷媒回路(10)内の冷媒を室外の空気と熱交換させるための空気熱交換器である。この例では、空気熱交換器(401)は、室外機(30)に設けられている。この空気熱交換器(401)には、例えば、クロスフィン型のフィン・アンド・チューブ熱交換器などを採用することができる。
【0108】
本実施形態の冷媒切換部(304)は、第1、第2開閉バルブ(402,403)を備えている。第1、第2開閉バルブ(402,403)は、暖房運転時と冷房運転時とで、使用する熱交換器を切替えるためのバルブである。この冷媒切換部(304)は、本発明の切換部の一例である。冷媒切換部(304)は、具体的には、空気熱交換器(401)を冷媒回路(10)に接続して該空気熱交換器(401)が凝縮器として機能し、且つ室内熱交換器(60)が蒸発器として機能するように冷媒が冷媒回路(10)を循環する第1運転モード(冷房運転)と、熱源側熱交換器(80)を冷媒回路(10)に接続して該熱源側熱交換器(80)が蒸発器として機能し、且つ室内熱交換器(60)(利用側熱交換器)が凝縮器として機能するように冷媒が冷媒回路(10)を循環する第2運転モード(暖房運転)とを切替えるようになっている。つまり、この空調システム(4)では、暖房運転時には地中熱交換器(20)を使用し、冷房運転時には空気熱交換器(401)を使用するのである。
【0109】
この例では、空気熱交換器(401)が、図7等に示すように、一端が第1開閉バルブ(402)を介して四路切換弁(303)の第3ポート(P3)に接続され、空気熱交換器(401)の他の一端が膨張弁(70)に接続されている。また、本実施形態の熱源側熱交換器(80)は、第2開閉バルブ(403)を介して、四路切換弁(303)の第3ポート(P3)に接続されている。熱源側熱交換器(80)、空気熱交換器(401)、及び開閉バルブ(402,403)が、図7等に示すように接続されることで、第1開閉バルブ(402)を開状態、且つ第2開閉バルブ(403)を閉状態とすれば、空気熱交換器(401)が冷媒回路(10)に接続される(図7を参照)。また、第1開閉バルブ(402)を閉状態、且つ第2開閉バルブ(403)を開状態とすれば、熱源側熱交換器(80)が冷媒回路(10)に接続されて、地中熱交換器(20)を利用できるようになる。
【0110】
〈運転動作〉
空調システム(4)において冷房運転を行うには、四路切換弁(303)を第1状態に切替える。また、第1開閉バルブ(402)を開状態、且つ第2開閉バルブ(403)を閉状態として、空気熱交換器(401)を冷媒回路(10)に接続する(図7を参照)。この状態で、圧縮機(50)を運転して冷媒回路(10)内で冷媒を循環させれば、室内熱交換器(60)が蒸発器として機能し、空気熱交換器(401)が凝縮器して機能する。これにより、室内熱交換器(60)によって、室内の空気が冷却される。すなわち、空調システム(4)において冷房運転が行われる。
【0111】
また、空調システム(4)において暖房運転を行うには、四路切換弁(303)を第2状態に切替える(図8参照)。また、第1開閉バルブ(402)を閉状態、且つ第2開閉バルブ(403)を開状態にして、熱源側熱交換器(80)を冷媒回路(10)に接続する(図8参照)。この状態で圧縮機(50)を運転して冷媒回路(10)内で冷媒を循環させれば、実施形態1と同様に暖房運転が行われる。
【0112】
〈本実施形態における効果〉
以上のように、本実施形態によれば、暖房運転と冷房運転の両方が可能になる。そして、実施形態1と同様に、副熱交換部(25)を室外機(30)(熱源機)内に設けることができる。それゆえ、本実施形態においても、やはり、例え、冷媒回路(10)を構成する配管(11)が破損したとしても、配管(11)内の冷媒や潤滑油などが土壌に流れ込まないようにすることができる。すなわち、本実施形態は環境負荷がより小さな空調システム(冷暖房システム)を提供できるのである。
【0113】
なお、暖房運転時に、外気温の方が地中の温度よりも高い場合には、空気熱交換器(401)を利用して暖房運転を行ってもよい。
【0114】
また、熱源側熱交換器(80)および空気熱交換器(401)が蒸発器として機能し、且つ室内熱交換器(60)(利用側熱交換器)が凝縮器として機能するように冷媒が循環する第3運転モードに切替えできるように、冷媒切換部(304)を構成してもよい。
【0115】
《発明の実施形態5》
本発明の実施形態5でも、暖房運転と冷房運転の両方が可能な空調システムについて説明する。図9は、本発明の実施形態5に係る空調システム(5)のシステム図である。また、図10は、空調システム(5)の暖房運転状態を説明する図である。実施形態5の空調システム(5)は、図9及び図10に示すように、実施形態4の空調システム(4)において、空気熱交換器(401)の接続形態を変更したものである。この変更に伴って、第1、第2開閉バルブ(402,403)は不要になっている。
【0116】
〈空気熱交換器(401)〉
本実施形態でも空気熱交換器(401)は、室外機(30)に収容され、冷媒と室外空気とを熱交換させるためのものである。空気熱交換器(401)は、冷媒回路(10)において、膨張弁(70)と熱源側熱交換器(80)の間に接続されている。すなわち、空気熱交換器(401)は、熱源側熱交換器(80)と直列接続されている。このように、空気熱交換器(401)と熱源側熱交換器(80)とを接続すると、後に詳述するように、冷房運転時には、空気熱交換器(401)は熱源側熱交換器(80)よりも冷媒の流れの下流側になる。
【0117】
また、空気熱交換器(401)の近傍には、室外ファン(405)が設置されている。冷媒と熱交換した室外空気は、室外ファン(405)によって送出されるようになっている。
【0118】
〈運転動作〉
先ず、冷房運転の動作について説明する。図9に示すように、冷房運転では四路切換弁(303)が第1状態に設定される。圧縮機(50)が駆動すると、冷媒は矢印の方向に流れ、圧縮機(50)から吐出された高温高圧のガス冷媒は、熱源側熱交換器(80)に流入する。熱源側熱交換器(80)内のガス冷媒の温度は、地中温度よりも高い。そのため、地中熱交換器(20)では、副熱交換部(25)が本体管(22)よりも内部温度が高くなるだけで、ガス冷媒は、熱源側熱交換器(80)で熱媒体とほとんど熱交換することなく、高圧高温を維持したまま熱源側熱交換器(80)を通過し、空気熱交換器(401)へ流入する。このように、熱源側熱交換器(80)は、冷房運転時に熱交換器としての機能を殆んど発揮しない。
【0119】
空気熱交換器(401)では、高温高圧のガス冷媒が室外空気と熱交換する。室外空気は加熱され、室外ファン(405)によって送出される。ガス冷媒は凝縮して、液状の冷媒になる。液状の冷媒は、膨張弁(70)に送られて減圧された後、室内熱交換器(60)に流入する。室内熱交換器(60)では、液状の冷媒が室内空気と熱交換する。室内空気は、冷却され、室内ファンによって室内に送り返される。液状の冷媒は、蒸発して、再び圧縮機(50)に送られる。このように冷房運転では、空気熱交換器(401)が凝縮器として機能し、室内熱交換器(60)が蒸発器として機能する蒸気圧縮式冷凍サイクルが行われる。
【0120】
次に、暖房運転の動作について説明する。図10に示すように、暖房運転では、四路切換弁(303)が第2状態に設定され、冷媒は矢印の方向に流れる。暖房運転では、実施形態1と同様に、室内熱交換器(60)が凝縮器として機能し、熱源側熱交換器(80)が蒸発器として機能する蒸気圧縮式冷凍サイクルが行われる。この時、空気熱交換器(401)には、室内熱交換器(60)で凝縮し膨張弁(70)で減圧された液状の冷媒が流入する。空気熱交換器(401)では室外ファン(405)が停止している。そのため、液状の冷媒は室外空気と殆んど熱交換することなく、空気熱交換器(401)を通過して、熱源側熱交換器(80)に流入する。このように、空気熱交換器(401)は、暖房運転時に熱交換器としての機能を殆んど発揮しない。
【0121】
〈本実施形態における効果〉
以上のように、本実施形態では、冷房時には地中熱交換器(20)と空気熱交換器(401)を併用することで効率的な冷房運転が可能になる。
【0122】
《発明の実施形態5の変形例》
なお、実施形態5において、暖房運転時に外気温が地中温度よりも高い場合には、空気熱交換器(401)を蒸発器として機能するようにしても構わない。
【0123】
外気温が地中温度よりも高い場合、室外空気から吸熱して冷媒を蒸発させる空気熱交換器(401)の方が、地中熱から吸熱して冷媒を蒸発させる熱源側熱交換器(80)よりも冷媒の吸熱量が大きくなる。そのため、このような場合には、室外ファン(405)を回して空気熱交換器(401)を稼動させても構わない。これにより、空調システム(5)のエネルギー利用効率を高くすることができる。
【0124】
なお、実施形態5において、熱源側熱交換器(80)と空気熱交換器(401)の冷媒回路(10)上の位置を入れ替えてもよい。
【0125】
《発明の実施形態6》
実施形態6では、地中熱交換器(20)の変形例を説明する。図11は、地中熱交換器(20)の変形例における断面図である。
【0126】
〈1〉図11(A)の例は、本体管(22)内部に拡散板(504)を備えている。
【0127】
拡散板(504)は、液配管(23)から本体管(22)内に戻された液状の熱媒体で、本体管(22)の内周面を、周方向に均一に濡らすように、液状の該熱媒体を本体管(22)の内周面に案内するようになっている。図12は、拡散板(504)の断面図である。また、図13は、拡散板(504)の平面図である。拡散板(504)は、外周の数箇所に設けたスペーサ(図示は省略)を介して本体管(22)内に固定(例えば溶接)されている。
【0128】
図12や図13からわかるように、液配管(23)から落ちてきた液状の熱媒体は、拡散板(504)の受け皿部(505)に溜る。溜った熱媒体は、受け皿部(505)の外周側の縁に設けられている切り欠き部(506)からオーバーフローして、本体管(22)の内周面を濡らす。既述の通り、切り欠き部(506)は複数箇所に設けられているので、本体管(22)の内周面は、液状の熱媒体で均一に濡れることになる。すなわち、液状の熱媒体を効率よく蒸発させることが可能になる。
【0129】
〈2〉図11(B)の例でも、本体管(22)は内部に拡散板(504)を備えている。また、本体管(22)の内周面には、周方向の溝(507)が複数形成されている。この例では、これらの溝(507)は、拡散板(504)よりも、液状熱媒体の下流側(本体管(22)の設置状態で拡散板(504)より下方)に設けられている。
【0130】
図14は、溝(507)の断面形状を示す図である。それぞれの溝(507)によって、拡散板(504)から案内された液状の熱媒体が周方向に広がり、より均一に本体管(22)の内周面が液状の熱媒体で濡れることになる。これにより、液状の熱媒体を、より効率よく蒸発させることが可能になるのである。しかも、溝(507)が複数設けられているので、本体管(22)の全長にわたり、均一な濡れを確保することが可能になる。なお、溝(507)は、螺旋状に形成してもよい。
【0131】
〈3〉図11(C)の例は、本体管(22)内部に複数の拡散板(504)を備えている。こうすることで、本体管(22)の全長にわたり、均一な濡れを確保することが可能になる。
【0132】
〈4〉図11(D)の例は、液配管(23)が螺旋状に形成され、液配管(23)には、液状の熱媒体を流出させる、複数の流出孔(502)が設けられている(図11(D)に黒丸で表示した箇所)。それぞれの流出孔(502)は、図15に示すように、流出孔(502)は、本体管(22)の内周面側を向いて開口している。また、これらの流出孔(502)は、図11(D)に示すように、本体管(22)の全長に渡って液状の熱媒体で濡れるように、長手方向になるべく均等に並ぶように配置してある。また、図16は、流出孔(502)の周方向位置を示す図である。同図に示すように、流出孔(502)の周方向位置は、一方向に偏らないようにしてあり、この例では等ピッチになっている。こうすることで、本体管(22)の全長及び全周にわたり、均一な濡れを確保することが可能になる。
【0133】
〈5〉図11(E)の例は、液配管(23)を複数の分岐管(501)に分岐させている。それぞれの分岐管(501)の先端は、本体管(22)の内周面に接している。また、図17は、分岐管(501)の周方向位置を示す図である。同図に示すように、分岐管(501)の周方向位置は、一方向に偏らないようにしてあり、この例では等ピッチ(90°間隔)になっている。こうすることで、本体管(22)の全周にわたり、均一な濡れを確保することが可能になる。
【0134】
また、図18は、図11(E)の地中熱交換器(20)の変形例を示す図である。図18に示すように、図11(E)等の例では、本体管(22)の内周面に沿うメッシュ(90)を設けてもよい。この例では、メッシュ(90)は、本体管(22)の長手方向に所定の間隔をあけて、複数個が設けられている。
【0135】
〈6〉図11(F)の例は、前記分岐管(501)の長さを複数種類にしたものである。これらの分岐管(501)は、同図に示すように、本体管(22)の全長に渡って液状の熱媒体で濡れるように、先端が長手方向になるべく均等に並ぶように配置してある。こうすることで、本体管(22)の全長及び全周にわたり、均一な濡れを確保することが可能になる。
【0136】
〈7〉図11(G)の例も、液配管(23)を複数の分岐管(501)に分岐させている。
【0137】
それぞれの分岐管(501)は、本体管(22)の内周面に沿って該本体管(22)の長手方向に延びる延在部(503)を有している。また、それぞれの延在部(503)には、液状の熱媒体を本体管(22)の内周面に流出させる、複数の流出孔(502)が複数設けられている(図11(G)に黒丸で表示した箇所)。それぞれの流出孔(502)は、図19に示すように、本体管(22)の内周面側を向いて開口している。
【0138】
また、これらの流出孔(502)は、図11(G)に示すように、本体管(22)の全長に渡って液状の熱媒体で濡れるように、長手方向になるべく均等に並ぶように配置してある。また、図20は、延在部(503)の周方向位置を示す図である。同図に示すように、延在部(503)の周方向位置は、一方向に偏らないようにしてあり、この例では等ピッチ(90°)になっている。こうすることで、本体管(22)の全長及び全周にわたり、均一な濡れを確保することが可能になる。
【0139】
《その他の実施形態》
なお、地中熱交換部(21)は、図21に示すように、複数設け、それらの地中熱交換部(21)を1つの副熱交換部(25)に並列に配管接続し、1つの副熱交換部(25)を共用しするようにしてもよい。
【0140】
また、本体管(22)の長さは例示である。前記の例よりもさらに長く(例えば10m)するなど、設置場所や利用側熱交換器(60)に必要とされる能力等の諸条件に応じて設定すればよい。
【0141】
また、空調システムに限らず、例えばく給湯システムへの応用も可能である。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明は、土壌から採熱を行う地中熱交換器、及びそれを利用したヒートポンプとして有用である。
【符号の説明】
【0143】
1 空調システム(ヒートポンプ)
10 冷媒回路
21 地中熱交換部
22 本体管
23 液配管
25 副熱交換部
30 室外機(熱源機)
60 室内熱交換器(利用側熱交換器)
70 膨張弁(膨張機構)
80 熱源側熱交換器
201 ガスポンプ(搬送装置)
304 冷媒切換部
401 空気熱交換器
501 分岐管
502 流出孔
503 延在部
504 拡散板
507 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源側熱交換器(80)と利用側熱交換器(60)とを有して蒸気圧縮式冷凍サイクルを行う冷媒回路(10)を備えたヒートポンプであって、
管状に形成された本体管(22)の内部に熱媒体が封入され、地中において土壌から採熱を行って前記熱媒体を相変化させる地中熱交換部(21)と、
前記地中熱交換部(21)に接続されて前記熱媒体が導入される副熱交換部(25)を備え、
前記本体管(22)は、縦向きに地中に埋設され、
前記副熱交換部(25)は、前記熱源側熱交換器(80)を収容する熱源機(30)に設けられ、
前記熱源側熱交換器(80)は、前記副熱交換部(25)に導入された前記熱媒体の相変化を利用して該熱媒体と熱交換を行うことを特徴とするヒートポンプ。
【請求項2】
請求項1のヒートポンプにおいて、
前記冷媒回路(10)は、前記熱源側熱交換器(80)が蒸発器として機能し、且つ前記利用側熱交換器(60)が凝縮器として機能するように冷媒が循環することを特徴とするヒートポンプ。
【請求項3】
請求項2のヒートポンプにおいて、
前記地中熱交換部(21)内で蒸発した前記熱媒体を前記副熱交換部(25)に搬送する搬送装置(201)を備えたことを特徴とするヒートポンプ。
【請求項4】
請求項2又は請求項3のヒートポンプにおいて、
前記冷媒回路(10)に接続されて空気と熱交換を行う空気熱交換器(401)を備え、
前記冷媒回路(10)は、前記空気熱交換器(401)が凝縮器として機能し、且つ前記利用側熱交換器(60)が蒸発器として機能するように冷媒が循環する第1運転モードと、前記熱源側熱交換器(80)が蒸発器として機能し、且つ前記利用側熱交換器(60)が凝縮器として機能するように冷媒が循環する第2運転モードと、前記熱源側熱交換器(80)および前記空気熱交換器(401)が蒸発器として機能し、且つ前記利用側熱交換器(60)が凝縮器として機能するように冷媒が循環する第3運転モードを切替える冷媒切換部(304)を備えていることを特徴とするヒートポンプ。
【請求項5】
請求項1のヒートポンプにおいて、
前記冷媒回路(10)は、膨張機構(70)と、冷媒の循環方向を可逆に切り換える四路切換弁(303)とを備え、
前記四路切換弁(303)と前記膨張機構(70)との間に、前記熱源側熱交換器(80)と、該熱源側熱交換器(80)と直列接続された空気熱交換器(401)とを備えたことを特徴とするヒートポンプ。
【請求項6】
請求項1のヒートポンプにおいて、
前記本体管(22)と前記副熱交換部(25)との間に設けられ、前記前記副熱交換部(25)内で蒸発した前記熱媒体を地中熱交換部(21)に搬送する搬送装置(201)と、
前記本体管(22)に設けられ、該本体管(22)の底まで延びて、液状の前記熱媒体を前記副熱交換部(25)から該本体管(22)の底に導入する冷房用液配管(202)と、を備え、
前記冷媒回路(10)は、前記熱源側熱交換器(80)が凝縮器として機能し、且つ前記利用側熱交換器(60)が蒸発器として機能するように冷媒が循環することを特徴とするヒートポンプ。
【請求項7】
請求項1のヒートポンプにおいて、
前記本体管(22)と前記副熱交換部(25)との間に設けられ、前記副熱交換部(25)内で蒸発した前記熱媒体を地中熱交換部(21)に搬送する搬送装置(201)と、
前記本体管(22)に設けられ、該本体管(22)の底まで延びて、液状の前記熱媒体を前記副熱交換部(25)から該本体管(22)の底に導入する冷房用液配管(202)と、
前記本体管(22)に設けられ、液状の前記熱媒体を前記副熱交換部(25)から該本体管(22)の内周面に導入する暖房用液配管(23)と、
を備えたことを特徴とするヒートポンプ。
【請求項8】
請求項1から請求項4、及び請求項7のうちの何れか1つのヒートポンプにおいて、
前記地中熱交換部(21)は、
前記本体管(22)の上部に設けられ、液状の前記熱媒体を前記副熱交換部(25)から該本体管(22)内に導入する液配管(23)と、
前記本体管(22)内の気体状の熱媒体を、接続された前記副熱交換部(25)内に導入するガス配管(24)と、
前記液配管(23)から導入された液状の前記熱媒体を受けて本体管(22)の内周面に拡散させる拡散板(504)と、
を備えていることを特徴とするヒートポンプ。
【請求項9】
請求項8のヒートポンプにおいて、
前記本体管(22)は、内周面に、周方向の溝(507)が形成されていることを特徴とするヒートポンプ。
【請求項10】
請求項8のヒートポンプにおいて、
前記拡散板(504)は、前記本体管(22)の長手方向に間隔をあけて複数設けられていることを特徴とするヒートポンプ。
【請求項11】
請求項1から請求項4、及び請求項7のうちの何れか1つのヒートポンプにおいて、
前記地中熱交換部(21)は、液状の前記熱媒体を前記副熱交換部(25)から導入する螺旋状の液配管(23)が前記本体管(22)に設けられ、
前記液配管(23)には、液状の前記熱媒体を本体管(22)の内周面に導入する流出孔(502)が複数設けられていることを特徴とするヒートポンプ。
【請求項12】
請求項1から請求項4、及び請求項7のうちの何れか1つのヒートポンプにおいて、
前記地中熱交換部(21)は、前記本体管(22)の上部に、液状の前記熱媒体を前記副熱交換部(25)から前記本体管(22)の内周面に導入する液配管(23)を備え、
前記液配管(23)は、前記本体管(22)内で複数の分岐管(501)に分岐していることを特徴とするヒートポンプ。
【請求項13】
請求項12のヒートポンプにおいて、
前記分岐管(501)には、複数種類の長さのものがあり、
それぞれの分岐管(501)は、先端から液状の前記熱媒体を前記本体管(22)の内周面に導入することを特徴とするヒートポンプ。
【請求項14】
請求項12のヒートポンプにおいて、
それぞれの分岐管(501)は、前記本体管(22)の内周面に沿って該本体管(22)の長手方向に延びる延在部(503)を有し、
それぞれの延在部(503)には、前記本体管(22)の内周面に液状の前記熱媒体を導入する流出孔(502)が複数設けられていることを特徴とするヒートポンプ。
【請求項15】
請求項1から請求項14のうちの何れか1つのヒートポンプにおいて、
前記地中熱交換部(21)は、複数設けられ、
それぞれの地中熱交換部(21)は、1つの副熱交換部(25)に並列に配管接続されていることを特徴とするヒートポンプ。
【請求項16】
土壌から採熱を行う地中熱交換器であって、
管状に形成された本体管(22)の内部に熱媒体が封入され、地中において土壌から採熱を行って前記熱媒体を相変化させる地中熱交換部(21)と、
ヒートポンプの熱源側熱交換器(80)を収容する熱源機(30)に設けられ、前記地中熱交換部(21)に接続されて前記熱媒体が導入され、該熱媒体が、熱交換を行う副熱交換部(25)と、
を備えたことを特徴とする地中熱交換器。
【請求項17】
請求項16の地中熱交換器において、
前記地中熱交換部(21)は、
前記本体管(22)の上部に設けられ、液状の前記熱媒体を前記副熱交換部(25)から該本体管(22)内に導入する液配管(23)と、
前記本体管(22)内の気体状の熱媒体を接続された前記熱交換部(27,28)内に導入するガス配管(24)と、
前記液配管(23)から導入された液状の前記熱媒体を受けて本体管(22)の内周面に拡散させる拡散板(504)と、
を備えていることを特徴とする地中熱交換器。
【請求項18】
請求項17の地中熱交換器において、
前記本体管(22)は、内周面に、周方向の溝(507)が形成されていることを特徴とする地中熱交換器。
【請求項19】
請求項17の地中熱交換器において、
前記拡散板(504)は、前記本体管(22)の長手方向に間隔をあけて複数設けられていることを特徴とする地中熱交換器。
【請求項20】
請求項16の地中熱交換器において、
前記地中熱交換部(21)は、液状の前記熱媒体を前記副熱交換部(25)から導入する螺旋状の液配管(23)が前記本体管(22)に設けられ、
前記液配管(23)には、液状の前記熱媒体を本体管(22)の内周面に導入する流出孔(502)が複数設けられていることを特徴とする地中熱交換器。
【請求項21】
請求項16の地中熱交換器において、
前記地中熱交換部(21)は、前記本体管(22)の上部に、液状の前記熱媒体を前記副熱交換部(25)から前記本体管(22)の内周面に導入する液配管(23)を備え、
前記液配管(23)は、前記本体管(22)内で複数の分岐管(501)に分岐していることを特徴とする地中熱交換器。
【請求項22】
請求項21の地中熱交換器において、
前記分岐管(501)には、複数種類の長さのものがあり、
それぞれの分岐管(501)は、先端から液状の前記熱媒体を前記本体管(22)の内周面に導入することを特徴とする地中熱交換器。
【請求項23】
請求項21の地中熱交換器において、
それぞれの分岐管(501)は、前記本体管(22)の内周面に沿って該本体管(22)の長手方向に延びる延在部(503)を有し、
それぞれの延在部(503)には、前記本体管(22)の内周面に液状の前記熱媒体を導入する流出孔(502)が複数設けられていることを特徴とする地中熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−78080(P2012−78080A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142962(P2011−142962)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】