説明

地中熱交換式温度管理装置

【課題】低コストでハウス内の根域付近の土壌温度を管理することができる地中熱交換式温度管理装置を提供する。
【解決手段】ハウス1内の地中の根域付近とそれより深い位置にパイプ3,4を敷設し、ハウス内の暖気を両パイプに送り込める構成とする。動作モード1により、根域付近とそれより深い蓄熱層の両方に暖気が送られ、所定の上限温度に達したら、動作モード2に切り替え、蓄熱層のみに暖気を送り込む。根域付近の温度の過上昇を防ぎ、植物の生育適温を維持できるとともに、十分熱を蓄えることができ、ハウス内の温度が所定の下限温度を下回った場合は、動作モード3により、蓄熱層に蓄えた熱をハウス内に放出し、根域付近の温度が低下した場合は、動作モード4により、蓄熱層に蓄えた熱により根域付近を加温する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用ハウス内の地中に蓄熱し、地中温度及び地上温度を作物の生育促進に適した温度に管理する地中熱交換式温度管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
農業用ハウス(以下、単に「ハウス」と称する)内の作物(例えば菊)の生育促進のため、作物の根域付近を適温に維持する必要があることから、ハウスの地中にパイプを埋設し、そこに温水のような熱媒体を通すことで、作物が栽培されている土壌を暖房する地中熱交換式の温度管理が従来より行われている。
【0003】
例えば、特許文献1は、石油又はガスを熱源とするボイラーにより温水を作り、その温水をハウス内の土壌に埋設されたパイプに通すことで、地中を温める。
【0004】
また、特許文献2は、耕作用地中より深い泥水状の蓄熱地中にパイプを布設し、集熱器で温められた温水を蓄熱地中に送ることで蓄熱する。また、温水に代わって、暖気を蓄熱地中に送ることで蓄熱する。
【特許文献1】特開2007−244278号公報
【特許文献2】特開平5−260857号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1については、温水を生成するのに必要な燃料費が高く、大きな経済的負担となる。また、特許文献2については、泥水状の蓄熱地中に長期間にわたって熱を蓄える構造であって、作物の根域付近の土壌を適温に維持する温度管理を行うことができない。
【0006】
そこで、本発明の目的は、低コストでハウス内の根域付近の土壌温度を管理することができる地中熱交換式温度管理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の地中熱交換式温度管理装置の構成は、地中で水平方向に延びる根域加温用パイプ(3)と、根域加温用パイプより深い地中で水平方向に延びる蓄熱用パイプ(4)と、地上の第一の開口部から延びて途中の分岐位置で分岐し根域加温用パイプと蓄熱用パイプそれぞれの吸入側端部と連通する第三のパイプ(7)と、地上の第二の開口部から延びて途中の分岐位置で分岐し根域加温用パイプと蓄熱用パイプそれぞれの排出側と連通する第四のパイプ(8)と、第三のパイプの第一の開口部から空気を根域加温用パイプに送り、第四のパイプの第二の開口部から排出させる第一のファン(9)と、第三のパイプの第一の開口部から空気を蓄熱用パイプに送り、第四のパイプの第二の開口部から排出させる第二のファン(10)と、地上の温度を検出する第一の温度センサ(21)と、根域加温用パイプ付近の地中温度を検出する第二の温度センサ(25)と、第一、第二の温度センサの検出温度に基づいて、第一のファン及び第二のファンの回転オン/オフ切替制御を行う制御部とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の地中熱交換式温度管理装置は、好ましくは、上記構成において、さらに、 第三のパイプの第一の開口部を開閉するための第一の切替弁(13)と、第四のパイプの第二の開口部を開閉するための第二の切替弁(14)とを備え、前記制御部は、第二の温度センサが所定の下限地中温度未満を検出すると、第一及び第二の切替弁を閉状態にし、第一のファンと第二のファンを互いに回転方向が逆になるように回転させ、根域加温用パイプと蓄熱用パイプ間で空気を循環させることを特徴とする。
【0009】
本発明の地中熱交換式温度管理装置の別の構成は、地中で水平方向に延びる根域加温用パイプ(3)と、根域加温用パイプより深い地中で水平方向に延びる蓄熱用パイプ(4)と、地上の第一の開口部から延びて途中の分岐位置で分岐し根域加温用パイプと蓄熱用パイプそれぞれの吸入側端部と連通する第三のパイプ(7)と、地上の第二の開口部から延びて途中の分岐位置で分岐し根域加温用パイプと蓄熱用パイプそれぞれの排出側と連通する第四のパイプ(8)と、第三のパイプの第一の開口部から空気を根域加温用パイプ及び蓄熱用パイプに送り、第四のパイプの第二の開口部から排出させるファン(10)と、根域加温用パイプと第三のパイプとを開閉するための第一の切替弁(15)と、地上の温度を検出する第一の温度センサ(21)と、根域加温用パイプ付近の地中温度を検出する第二の温度センサ(25)と、第一又は第二の温度センサの検出温度に基づいて、第一の切替弁の開閉切替制御を行う制御部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ハウス内の暖気を地中の根域付近の層とそれより深い層の2層に送り込む構成とすることで、蓄熱層に熱を蓄え、且つ地中の根域付近及びハウス内の温度をきめ細かく適温に維持することができる。
【0011】
また、熱は地中の土壌自体(パイプの周囲の土)に蓄える構造であり、特別な蓄熱媒体を地中に設ける必要はなく、また太陽光により温められた空気による蓄熱を行うため、加温、蓄熱に必要なエネルギー費用を削減でき、低いランニングコストでの温度管理を可能とする。また、温水などの液体をパイプ内に流通させず、空気を流通させる構成とすることにより、装置構造を簡易化でき且つメンテナンスも容易することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。しかしながら、かかる実施の形態例が、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0013】
<第1の構成例>
図1は、本発明の実施の形態における地中温度管理装置の第1の構成例を示す図である。ハウス1は、一重又は二重のビニールハウス又はガラスハウスなどの植物・作物栽培用の農業用ハウスである。保温用カーテンフィルム2は、ハウス1内を上下に区画し、必要に応じてカーテンフィルム2で覆うことにより、暖気の上昇を抑え、地面付近の保温効果を高めることができる。
【0014】
このハウス1内の地中の地下50cm〜80cm程度に、根域加温用パイプ3を水平に埋設し、さらにこの根域加温用パイプ3より深い地下100cm〜160cm程度に蓄熱用パイプ4を水平に埋設する。根域加温用パイプ3は、作物の根を加温するためのパイプであり、作物の根域付近に敷設される。蓄熱用パイプ4は、土壌に熱を蓄えるためのパイプである。なお、作物の浅根性又は深根性の違いにより、各パイプ3、4の埋設深さは、上述した数値に限らず、適宜調節される。
【0015】
根域加温用パイプ3と蓄熱用パイプ4の両端には、地上に延びるパイプ7、8が連通している。パイプ7、8は、地上の開口部7a、8aから地中方向に延び、途中の分岐位置7d、8dで分岐し、それぞれ根域加温用パイプ3と蓄熱用パイプ4と連通する。パイプ7は吸入用パイプであり、吸入用ファン9、10が通路に設けられており、その地上開口部(吸入口)7aからハウス内1の空気(暖気)を吸入し、それぞれ根域加温用パイプ3及び蓄熱用パイプ4に空気を送り込む。また、パイプ8は排出用パイプであり、パイプ7の吸入口7aから吸入された空気は、それぞれ根域加温用パイプ3及び蓄熱用パイプ4を通り、パイプ8の地上開口部(排出口)8aから排出される。なお、吸入用ファン9、10の設置位置は、パイプ7に限らず、パイプ8であってもよく、さらには、地中の根域加温用パイプ3及び蓄熱用パイプ4であってもよい。
【0016】
なお、吸入口7a及び排出口8a(蓄熱用パイプ4と連通)は、ハウス1内で温められて上昇する空気を吸入するために、ハウス1内の上部、好ましくは、保温用カーテンフィルム2より上方側に設けられる。また、パイプ7、8は、吸入口7a、8aより低い位置で開口する別の開口部7b、8bを備える。別の開口部7b、8bは、保温用カーテンフィルム2より下方側に設けられる。第一の構成例では、別の開口部7b、8bは、パイプ7の根域加温用パイプ3と連通する分岐部分からさらに分岐した端部である。
【0017】
各パイプ7、8の地中側端部(地中パイプ3又は4との連通している箇所から突出している部分)7c、8cは、結露だまりとなっており、パイプ内で結露した水分を地中に排出可能とするために、水分透過可能なフィルタなどを介して開口させておく。
【0018】
さらに、各開口部7a、8a、7b、8bをそれぞれ開閉する弁11、12、13及び14が設けられ、さらに、パイプ7、8のそれぞれ根域加温用パイプ3と連通する分岐部分を開閉する弁15、16が設けられる。弁11、12、13及び14の設置位置は、パイプ7、8における根域加温用パイプ3と蓄熱用パイプ4との分岐位置7d、8dよりそれぞれ開口部7a、8a側である。
【0019】
温度センサが各所に設けられる。具体的には、開口部7a、8a、7b、8b付近及び根域加温用パイプ3が埋設された付近の地中に、それぞれ温度センサ21、22、23、24、25が設置される。
【0020】
制御部30は、コンピュータ装置であり、以下に説明するように、温度センサ21、22、23、24、25からの温度情報に基づいて、ファン9、10及び弁11、12、13、14、15、16の動作を制御する。初期状態として、ファン9、10は停止しており、弁11、12、13、14、15、16も閉状態とする。制御部30は、ハウス内外のいずれに設置されてもよく、有線又は無線により温度センサ、ファン、弁と電気的に接続している。
【0021】
(動作モード1)
動作モード1は、ハウス1内の空気(暖気)を根域加温用パイプ3及び蓄熱用パイプ4の両方に流すモードであり、図2は、第1の構成例における動作モード1の空気の流れを示す。
【0022】
日中、ハウス1内は太陽光により温められ、ハウス1内の温度は上昇し、暖気はハウス1内の上部に集まる。制御部30は、ハウス1内の上部の吸入口7aの温度センサ23の検知温度が加温に十分な所定温度以上となると(温度センサ25の検知温度は所定上限温度以下)、制御部30はファンと弁を次の状態にする。
【0023】
ファン 9:回転
ファン10:回転
弁11:開
弁12:開
弁13:閉
弁14:閉
弁15:開
弁16:開
これにより、吸入口7aから暖気が根域加温用パイプ3及び蓄熱用パイプ4に通り、土壌との熱交換により、根域付近の土壌が加温されるともに、蓄熱用パイプ4付近の土壌に熱が蓄積される。熱交換された空気は、排出口8aから排出される。
【0024】
温度センサ21の検知温度と温度センサ22の検知温度が一致するか、又はその差が所定温度差未満になると、熱交換量が少なくなり、最大蓄熱量に達したものと判断して、ファン9、10の動作を停止する。
【0025】
(動作モード2)
動作モード2は、ハウス1内の空気(暖気)を蓄熱用パイプ4にのみ流すモードであり、図3は、第1の構成例における動作モード2の空気の流れを示す。
【0026】
動作モード1により、暖気を地中に導入することにより、根域付近の地中温度が上昇する。そして、温度センサ25の検知温度が根域付近の所定上限温度を超えると、制御部30は、動作モード1の弁開閉状態に対して、弁15、16を閉じ、ファン9の回転を停止する。すなわち、制御部30は、ファンと弁を次の状態にする。
【0027】
ファン 9:停止
ファン10:回転
弁11:開
弁12:開
弁13:閉
弁14:閉
弁15:閉
弁16:閉
これにより、根域加温用パイプ3への空気流入が停止し、根域付近の加温が止められる。所定上限温度は、栽培している植物・作物によって適宜設定されるが、上限温度を超えると、植物の生育が妨げられることになる。ただし、暖気は、蓄熱用パイプ4には流れているので、蓄熱は継続して行われる。蓄熱用パイプ4付近の地中に蓄積される熱は根域付近の土壌(地中)を加温しない。
【0028】
さらに、温度センサ21の検知温度と温度センサ22の検知温度が一致するか、又はその差が所定温度差未満になると、熱交換量が少なくなり、最大蓄熱量に達したものと判断して、ファン10の動作も停止する。
【0029】
(動作モード3)
動作モード3は、蓄熱用パイプ4付近に蓄熱された地中の熱をハウス1内に放出するモードであり、図4は、第1の構成例における動作モード3の空気の流れを示す。
【0030】
夜間、ハウス内の気温が低下した場合(ハウス内の気温が所定温度未満まで低下すると)、日中、蓄熱用パイプ4付近に蓄積された熱をハウス内に放出させる。ハウス内の気温を検知する温度センサは、温度センサ21、22、23、24のどれでもよい。制御部30は、温度センサ21、22、23、24の少なくとも一つの検知温度が所定温度未満となると、制御部30は、蓄熱用パイプ4付近に蓄積された熱をハウス内に放出させるために、ファンと弁を次の状態にする。好ましくは、保温用カーテンフィルム2により、ハウス1を上下に仕切ることで、暖気がハウス1内上部に上昇するのを抑え、ハウス1内の地上付近を効率的に加温することができる。空気の吸入口・排出口として、保温用カーテンフィルム2により低い位置の開口部7b、8bが用いられる。
【0031】
ファン 9:停止
ファン10:回転
弁11:閉
弁12:閉
弁13:開
弁14:開
弁15:開
弁16:開
これにより、吸入口7bから吸入される冷気は、蓄熱用パイプ4を通過することで熱交換され、暖気として排出口8bから排出され、ハウス1内に放出される。
【0032】
温度センサ23の検知温度と温度センサ24の検知温度が一致するか、又はその差が所定温度差未満になると、蓄積された熱量が少なくなったものと判断して、ファン10の動作を停止する。
【0033】
(動作モード4)
動作モード4は、蓄熱用パイプ4付近に蓄熱された地中の熱で根域付近の土壌を加温するモードであり、図5は、第1の構成例における動作モード4の空気の流れを示す。
【0034】
根域付近の土壌の温度が低下した場合(温度センサ25の検知温度が所定温度未満まで低下すると)、蓄熱用パイプ4付近に蓄積された熱により、根域付近の土壌を加温する。そのために、制御部30は、ファンと弁を次の状態にする。
【0035】
ファン 9:逆回転
ファン10:回転
弁11:閉
弁12:閉
弁13:閉
弁14:閉
弁15:開
弁16:開
これにより、根域加温用パイプ3と蓄熱用パイプ4による閉ループが形成され、その閉ループ内で空気を循環させることで、蓄熱用パイプ4を通過して温められた空気を根域加温用パイプ3に送り込み、根域付近の土壌を加温することができる。
【0036】
温度センサ25の検知温度が根域付近の所定上限温度を超えると、制御部30は、ファン9、10の回転を停止する。これにより、根域付近の加温が止められる。
【0037】
このように、本実施の形態例では、ハウス内の地中の根域付近とそれより深い位置にパイプを敷設し、ハウス内の暖気を両パイプに送り込める構成とする。動作モード1により、根域付近とそれより深い蓄熱層の両方に暖気が送られ、所定の上限温度に達したら、動作モード2に切り替え、蓄熱層のみに暖気を送り込む。根域付近の温度の過上昇を防ぎ、植物の生育適温を維持できるとともに、十分熱を蓄えることができる。そして、ハウス内の温度が所定の下限温度を下回った場合は、動作モード3により、蓄熱層に蓄えた熱をハウス内に放出し、根域付近の温度が低下した場合は、動作モード4により、蓄熱層に蓄えた熱により根域付近を加温する。このように、一日における気温変化に応じて、地中の根域付近及びハウス内の温度をきめ細かく適温に維持することができる。
【0038】
<第2の構成例>
図6は、本発明の実施の形態における地中温度管理装置の第2の構成例を示す図である。第2の構成例は、第1の構成例と比較して、弁11、12、13、14、15、16が設けられず、ファン9、10で空気の流れを制御する。弁による通路の遮断を行わずとも、ファンによる強制的な吸入・排出により、実質的に空気の流れを制御することができる。第1の構成例よりも、装置が簡略化され、メンテナンスが容易となり、コスト削減に寄与する。
【0039】
吸入側のパイプ7の開口部は開口部7aのみとなる。さらに、排出側のパイプ8の開口部は8aのみである。
【0040】
第2の構成例では、開口部7a、8aは、保温用カーテンフィルム2より下部に設けられるが、太陽光によりハウス1内全体が十分に温まっている場合は、開口部7aから暖気を吸入可能である。もちろん、パイプ7、8をハウス1上部まで延ばし、開口部7a、8aが保温用カーテンフィルム2より上部に設けられるようにしてもよい。
【0041】
第2の構成例では、制御部30は、上述した動作モード1、動作モード2及び動作モード3の制御を実行する。
【0042】
(動作モード1)
図6は、第2の構成例における動作モード1の空気の流れを示す。具体的には、制御部30は、ハウス1内の上部の吸入口7aの温度センサ21の検知温度が加温に十分な所定温度以上となると(温度センサ25の検知温度は所定上限温度以下)、ファン9、10を以下の状態にする。
【0043】
ファン 9:回転
ファン10:回転
このように、ファン9、10の両方を回転させることで、吸入口7aからハウス1内の空気(暖気)を吸入し、根域加温用パイプ3及び蓄熱用パイプ4の両方に送り込み、地中で熱交換させ、排出口8aから排出する。
【0044】
温度センサ21の検知温度と温度センサ22の検知温度が一致するか、又はその差が所定温度差未満になると、熱交換量が少なくなり、最大蓄熱量に達したものと判断して、ファン9、10の動作を停止する。
【0045】
(動作モード2)
動作モード1の状態において、温度センサ25の検知温度が所定上限温度を超えると、制御部30は、ファン9の回転を停止させる。すなわち、制御部30は、ファンを以下の状態する。
ファン 9:停止
ファン10:回転
これにより、ハウス1内の空気(暖気)を蓄熱用パイプ4のみに流す。図7は、第2の構成例における動作モード2の空気の流れを示す。
【0046】
温度センサ21の検知温度と温度センサ22の検知温度が一致するか、又はその差が所定温度差未満になると、制御部30はファン10の動作を停止する。
【0047】
(動作モード3)
夜間、ハウス内の気温が低下した場合(ハウス内の気温が所定温度未満まで低下すると)、日中、蓄熱用パイプ4付近に蓄積された熱をハウス内に放出させる。具体的には、制御部30は、温度センサ21、22の少なくとも一つの検知温度が所定温度未満となると、制御部30は、蓄熱用パイプ4付近に蓄積された熱をハウス内に放出させるために、ファンと弁を次の状態にする。
【0048】
ファン 9:停止
ファン10:回転
これは、図7の動作モード2による空気の流れと同じであり、温度条件のみが異なる。動作モード3により、吸入口7aから吸入される冷気は、蓄熱用パイプ4を通過することで熱交換され、暖気として排出口8aから排出され、ハウス1内に放出される。好ましくは、保温用カーテンフィルム2により、ハウス1を上下に仕切ることで、暖気がハウス1内上部に上昇するのを抑え、ハウス1内の地上付近を効率的に加温することができる。
【0049】
温度センサ21の検知温度と温度センサ22の検知温度が一致するか、又はその差が所定温度差未満になると、蓄積された熱量が少なくなったものと判断して、ファン10の動作を停止する。
【0050】
<第三の構成例>
図8は、本発明の実施の形態における地中温度管理装置の第3の構成例を示す図である。第3の構成例は、第1の構成例と比較して、ファン9、10を共通化して一つのファン10により、根域加温用パイプ3と蓄熱用パイプ4の両方に暖気を送り込める位置、すなわち、パイプ7の分岐点7dより上部のパイプ7にファン10設け、さらに、排出側において、弁12、16を省略した構成である。パイプ7は、異なる高さの地上位置に2つの開口部7a、7bを備え、パイプ8も、異なる高さの地上位置に2つの開口部8a、8bを備える。
【0051】
第3の構成例では、制御部30は、上述した動作モード1、動作モード2及び動作モード3の制御を実行する。
【0052】
(動作モード1)
制御部30は、ファン10を回転させることで、ハウス1内の空気(暖気)を根域加温用パイプ3及び蓄熱用パイプ4の両方に流す。図8は、第3の構成例における動作モード1の空気の流れを示す。具体的には、制御部30は、ハウス1内の上部の吸入口7aの温度センサ23の検知温度が加温に十分な所定温度以上となると(温度センサ25の検知温度は所定上限温度以下)、制御部30はファンと弁を次の状態にする。暖気をより効率的に吸入するための空気の吸入口・排出口として、保温用カーテンフィルム2により高い位置の開口部7a、8aが用いられる。
【0053】
ファン10:回転
弁11:開
弁12:開
弁13:閉
弁15:開
これにより、吸入口7aから暖気が根域加温用パイプ3及び蓄熱用パイプ4に通り、土壌との熱交換により、根域付近の土壌が加温されるともに、蓄熱用パイプ4付近の土壌に熱が蓄積される。熱交換された空気は、排出口8aから排出される。
【0054】
また、制御部30は、温度センサ21の検知温度と温度センサ22の検知温度が一致するか、又はその差が所定温度差未満になると、ファン10の動作を停止する。
【0055】
(動作モード2)
動作モード1の状態において、温度センサ25の検知温度が所定上限温度を超えると、制御部30は弁15を閉じる。すなわち、制御部30はファンと弁を次の状態にする。
【0056】
ファン10:回転
弁11:開
弁12:開
弁13:閉
弁15:閉
これにより、ハウス1内の空気(暖気)を蓄熱用パイプ4のみに流す。図9は、第3の構成例における動作モード2の空気の流れを示す。
【0057】
温度センサ21の検知温度と温度センサ22の検知温度が一致するか、又はその差が所定温度差未満になると、制御部30はファン10の動作を停止する。
【0058】
(動作モード3)
図10は、第3の構成例における動作モード3の空気の流れを示す。制御部30は、温度センサ21、22、23、24の少なくとも一つの検知温度が所定温度未満となると、制御部30は、蓄熱用パイプ4付近に蓄積された熱をハウス内に放出させるために、ファンと弁を次の状態にする。好ましくは、保温用カーテンフィルム2により、ハウス1を上下に仕切ることで、暖気がハウス1内上部に上昇するのを抑え、ハウス1内の地上付近を効率的に加温することができる。地上付近を効率的に温めるための空気の吸入口・排出口として、保温用カーテンフィルム2により低い位置の開口部7b、8bが用いられる。
【0059】
ファン10:回転
弁11:閉
弁12:閉
弁13:開
弁15:閉
これにより、吸入口7bから吸入される冷気は、蓄熱用パイプ4を通過することで熱交換され、暖気として排出口8bから排出され、ハウス1内に放出される。
温度センサ21の検知温度と温度センサ22の検知温度が一致するか、又はその差が所定温度差未満になると、蓄積された熱量が少なくなったものと判断して、ファン10の動作を停止する。
【0060】
上述した各構成例における温度管理制御は、好ましくは冬期における地中の根域付近の加温、ハウス内の地上部分の加温として利用されるが、夏期におけるハウス内の冷却及び土壌の冷却にも利用可能である。すなわち、ハウス内の暖気を地中で熱交換させ、冷気を排出することで、ハウス内の気温を低下させることができる。また、夜間などハウス内の温度が比較的低くなったとき、根域付近の土壌温度が適温より高いままの場合、ハウス内の空気を根域加温用パイプ3に流すことにより、根域付近の土壌温度を低下させることができる。ハウス外の冷気を導入する構成が付加されてもよい。
【0061】
蓄熱用パイプ4は、一層に限らず、深さの異なる複数の層にわたって敷設されてもよい(垂直方向の並列敷設)。もちろん、同一層において、並列に敷設することもできる(水平方向の並列敷設)。根域加温用パイプ3も、ハウス内の作物作付け面下に並列に敷設可能である(水平方向の並列敷設)。
【0062】
また、暗渠用パイプ(図示せず)が地中に敷設されている場合、蓄熱用パイプ4は、暗渠用パイプより下層に敷設されることが好ましい。暗渠用パイプの下層側は、土壌内の水分がその上層側より多いため、熱容量が大きく、暗渠用パイプの上層側と比較してより多くの熱を蓄えることができるからである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施の形態における地中温度管理装置の第1の構成例を示す図である。
【図2】第1の構成例における動作モード1の空気の流れを示す図である。
【図3】第1の構成例における動作モード2の空気の流れを示す図である。
【図4】第1の構成例における動作モード3の空気の流れを示す図である。
【図5】第1の構成例における動作モード4の空気の流れを示す図である。
【図6】本発明の実施の形態における地中温度管理装置の第2の構成例を示す図であり、第2の構成例における動作モード1の空気の流れを示す図である。
【図7】第2の構成例における動作モード2、3の空気の流れを示す図である。
【図8】本発明の実施の形態における地中温度管理装置の第3の構成例を示す図であり、第3の構成例における動作モード1の空気の流れを示す図である。
【図9】第3の構成例における動作モード2の空気の流れを示す図である。
【図10】第3の構成例における動作モード3の空気の流れを示す図である。
【符号の説明】
【0064】
1:農業用ハウス、2:保温用カーテンフィルム、3:根域加温用パイプ、4:蓄熱用パイプ、7:吸入用パイプ、7a:開口部、7b:開口部、7c:結露だまり、7d:分岐位置8:排出用パイプ、8a:開口部、8b:開口部、8c:結露だまり、8d:分岐位置、9:ファン、10:ファン、11:弁、12:弁、13:弁、14:弁、15:弁、16:弁、21:温度センサ、22:温度センサ、23:温度センサ、24:温度センサ、25:温度センサ、30:制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中で水平方向に延びる根域加温用パイプと、
根域加温用パイプより深い地中で水平方向に延びる蓄熱用パイプと、
地上の第一の開口部から延びて途中の分岐位置で分岐し根域加温用パイプと蓄熱用パイプそれぞれの吸入側端部と連通する第三のパイプと、
地上の第二の開口部から延びて途中の分岐位置で分岐し根域加温用パイプと蓄熱用パイプそれぞれの排出側と連通する第四のパイプと、
第三のパイプの第一の開口部から空気を根域加温用パイプに送り、第四のパイプの第二の開口部から排出させる第一のファンと、
第三のパイプの第一の開口部から空気を蓄熱用パイプに送り、第四のパイプの第二の開口部から排出させる第二のファンと、
地上の温度を検出する第一の温度センサと、
根域加温用パイプ付近の地中温度を検出する第二の温度センサと、
第一、第二の温度センサの検出温度に基づいて、第一のファン及び第二のファンの回転オン/オフ切替制御を行う制御部とを備えることを特徴とする地中熱交換暖房装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記制御部は、第一の温度センサが所定温度以上を検出すると、第一のファン及び第二のファンを回転させ、空気を第一及び蓄熱用パイプに送り込むことを特徴とする地中熱交換暖房装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記制御部は、空気が第一及び蓄熱用パイプに送り込まれているとき、第二の温度センサが所定の上限地中温度以上を検出すると、第一のファンの回転を停止し、第二のファンの回転を維持して、蓄熱用パイプにのみ空気を送り込むことを特徴とする地中熱交換暖房装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記制御部は、第一の温度センサが所定の下限地上温度未満を検出すると、第二のファンを回転させ、空気を蓄熱用パイプに送り込むことを特徴とする地中熱交換暖房装置。
【請求項5】
請求項1において、
第三のパイプの第一の開口部を開閉するための第一の切替弁と、
第四のパイプの第二の開口部を開閉するための第二の切替弁とを備え、
前記制御部は、第二の温度センサが所定の下限地中温度未満を検出すると、第一及び第二の切替弁を閉状態にし、第一のファンと第二のファンを互いに回転方向が逆になるように回転させ、根域加温用パイプと蓄熱用パイプ間で空気を循環させることを特徴とする地中熱交換暖房装置。
【請求項6】
請求項5において、
第三のパイプは、第一の開口部より低い位置の第三の開口部をさらに備え、
第四のパイプは、第二の開口部より低い位置の第四の開口部をさらに備え、
第三の開口部を開閉するための第三の切替弁と、第四の開口部を開閉するための第四の切替弁と、第一の温度センサより低い位置の地上温度を検出する第三の温度センサとが設けられ、
第一のファンは、第三の開口部から空気を根域加温用パイプに送り、第四の開口部から排出させ、
第二のファンは、第三の開口部から空気を蓄熱用パイプに送り、第四の開口部から排出させ、
前記制御部は、第三の温度センサの検出温度に基づいて、第三及び第四の切替弁の開閉切替制御を行う制御部とを備えることを特徴とする地中熱交換暖房装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記制御部は、第三の温度センサが所定温度未満を検出すると、第一、第二の切替弁を閉状態にし、第三及び第四の切替弁を開状態にし、第二のファンを回転させ、空気を蓄熱用パイプに送り込むことを特徴とする地中熱交換暖房装置。
【請求項8】
地中で水平方向に延びる根域加温用パイプと、
根域加温用パイプより深い地中で水平方向に延びる蓄熱用パイプと、
地上の第一の開口部から延びて途中の分岐位置で分岐し根域加温用パイプと蓄熱用パイプそれぞれの吸入側端部と連通する第三のパイプと、
地上の第二の開口部から延びて途中の分岐位置で分岐し根域加温用パイプと蓄熱用パイプそれぞれの排出側と連通する第四のパイプと、
第三のパイプの第一の開口部から空気を根域加温用パイプ及び蓄熱用パイプに送り、第四のパイプの第二の開口部から排出させるファンと、
根域加温用パイプと第三のパイプとを開閉するための第一の切替弁と、
地上の温度を検出する第一の温度センサと、
根域加温用パイプ付近の地中温度を検出する第二の温度センサと、
第一又は第二の温度センサの検出温度に基づいて、第一の切替弁の開閉切替制御を行う制御部とを備えることを特徴とする地中熱交換暖房装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記制御部は、第一の温度センサが所定温度以上を検出すると、第一の切替弁を開状態にし、ファンを回転させ、空気を第一及び蓄熱用パイプに送り込むことを特徴とする地中熱交換暖房装置。
【請求項10】
請求項9において、
前記制御部は、空気が第一及び蓄熱用パイプに送り込まれているとき、第二の温度センサが所定の上限地中温度以上を検出すると、第一の切替弁を閉状態にし、蓄熱用パイプにのみ空気を送り込むことを特徴とする地中熱交換暖房装置。
【請求項11】
請求項8において、
前記制御部は、第一の温度センサが所定の下限地上温度未満を検出すると、第一の切替弁を閉状態にし、ファンを回転させ、空気を蓄熱用パイプに送り込むことを特徴とする地中熱交換暖房装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−68748(P2010−68748A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−238917(P2008−238917)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(307024967)
【Fターム(参考)】